説明

タクロリムスの修飾型剤形

本発明は、経口投与すると2以上の量のタクロリムスを放出し、第1の量のタクロリムスが即時放出剤形から0〜2時間以内に実質的に即時に放出された後に、剤形から実質的にいかなる量のタクロリムスも放出されない約1〜10時間の時間間隔があり、その後に、第2の量のタクロリムスが、遅延放出用量単位からの最初の放出から0〜2時間以内に即時に、または、約2〜12時間の時間をかけて、遅延放出用量単位から放出されるタクロリムスの修飾放出剤形を提供する。該剤形はさらにタクロリムスの追加パルスを提供するための追加量のタクロリムスを含み得る。タクロリムスの剤形は、既存のタクロリムスの組成物に比べて生物学的利用能が向上し、フラックスまたは変動が低下している。該剤形の調製方法も記載している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的利用能が向上し、薬物動態の個人間変動が低下した、タクロリムスの修飾型放出剤形に係る。
【背景技術】
【0002】
FK−506として知られるタクロリムスは、ストレプトマイセス・ツクバエンシスによって生産されるマクロライド系免疫抑制薬である。タクロリムスは、カプセル、注射剤、および軟膏剤など、種々の剤形で入手可能である。従来のカプセル剤形は、プログラフ(Prograf)(R)として市販されており、同種異系の肝臓、腎臓または心臓の移植を受ける患者における臓器の拒絶反応を予防するものとして承認されている。経口投与されたタクロリムスの、胃腸管を通じての吸収は、不完全で、かつ変動がある。タクロリムスの絶対生物学的利用能は、成人の腎臓移植患者において典型的には17±10%(N=26)であり、成人の肝臓移植患者において典型的には22±6%(N=17)であり、成人の心臓移植患者において典型的には23±9%(N=11)であり、健康なボランティアにおいて典型的には18±5%(N=16)である。この吸収は、食物の存在に影響されることが観察されている。タクロリムスが吸収される速度および割合は、断食状態で最も大きい。食物の存在およびその成分は、タクロリムスが吸収される速度および割合の両方を低下させる。プログラフ(R)は、0.5mg、1mgまたは5mgの用量で販売されており、二分割した日用量を、12時間毎に投与される。
【0003】
タクロリムスの薬物動態特性は、個人間で大きく異なる。この特性は、実質的な腸管および肝臓の初回通過効果に依存する。タクロリムスはチトクロムp450(CYP3A)の基質であり、タクロリムスの生物学的利用能はこの広範な代謝のおかげで低く、また、それは個人間で変動する。したがって、全身クリアランスとして表されるタクロリムス除去は、個人間で0.041〜0.36L・h−1・(kg体重)−1まで変動する。この変動および狭い治療指数のため、タクロリムスの全血濃度のモニタリングは、毒性の危険を最小限に抑えながら最適な効力を達成する上で不可欠である。
【0004】
0.5mg、1mgまたは5mgの用量で製造された持続放出1日1回経口カプセル剤形はアドヴァグラフ(Advagraf)(R)として市販され、成人の腎臓、肝臓または心臓の同種異系移植片受容者における移植拒絶反応の予防について表示されている。その表示は、治療が、適切な資格と設備とを有する人員による注意深いモニタリングを要すること、また、該薬剤の投与が、主に、血液のモニタリングで補完された、各患者個人における拒絶反応および耐性の臨床的な評価に基づくべきであること、を記載している。アドヴァグラフ(R)投与計画を開始してから安定状態に達するまでに数日間かかるかもしれないことを考慮すると、患者がプログラフ(R)からアドヴァグラフ(R)へ切り換えた後もタクロリムスのモニタリングは依然として必要であり、必要に応じて、同様の全身曝露を維持するために用量が調節される。1日の総用量を1:1(mg:mg)として、プログラフ(R)(1日2回)からアドヴァグラフ(R)(1日1回)に切り換えた、安定した患者において、アドヴァグラフ(R)によるタクロリムスの全身曝露(AUC0−24)は、プログラフ(R)によるものより約10%低かった。
【0005】
特許文献1、特許文献2および特許文献3は、pH4.5に調整した0.005%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液を試験液として使用する第13改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法、50rpm)に従って測定された、タクロリムスまたはその水和物の最大量の63.2%が溶出する時間(T63.2%)が0.7〜15時間であることを特徴とするマクロライド系タクロリムスを含む徐放性製剤に係る。
【0006】
特許文献4は、USPパドル法を用い、溶出媒質として0.1N HClを用いたin vitroでの放出試験において、活性材料の20%w/w未満を0.5時間以内に放出するタクロリムスを含む修飾型放出組成物に係る。修飾型放出組成物は、腸溶被覆されていてもよく、および/または、親水性または水溶性ビヒクルと1種以上の放出修飾剤との中にタクロリムスが入った固体分散体または固溶体を含んでもよく、および/または、両親媒性または疎水性のビヒクルと、所望により1種以上の放出修飾剤との中にタクロリムスが入った固体分散体または固溶体を含んでもよい。上述された出願特許文献4におけるタクロリムスの修飾型放出剤形は、タクロリムスの放出を十二指腸の先端部まで遅らせることによって、薬剤に関連する胃腸での副作用および胃腸管の基端部における比較的高水準の代謝を抑制するが(CYP3A4媒介代謝)、迅速な発現を実現できないので治療的な効用が制限されている。
【0007】
特許文献5は、基質および被包コーティングを含み、該被包コーティングが、治療に有効な量の疎水性治療活性材料と、有効な可溶化を行う量の、少なくとも1種の親水性界面活性剤と、親油性界面活性剤、トリグリセリド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される親油性添加剤との混合剤を含む固体担体の形状を有する薬学的組成物であって、該少なくとも1種の疎水性界面活性剤の、有効な可溶化を行う量とは、被包コーティング中の薬剤学的に活性な材料を部分的または全体的に可溶化するのに有効な量である。この特許によると、薬剤学的に活性な材料の固体担体は、疎水性薬剤のin vivoでの作用を促進する上で、公知の微粉状薬剤、乳濁液または可溶化された製剤に対して潜在的な利点を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,440,458号明細書
【特許文献2】米国特許第6,576,259号明細書
【特許文献3】米国特許第6,884,433号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0287352号明細書
【特許文献5】米国特許第6,569,463号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、タクロリムスの治療に関する多様な考慮点とは、広範な代謝、不完全かつ変動のある吸収、低い生物学的利用能、食物の作用および副作用である。タクロリムスの最低血中濃度が上昇すると有害な事象が増加するので、拒絶反応、毒性を回避し、コンプライアンスを向上させるために、経口投与後に患者におけるタクロリムスの全血中濃度をモニタリングおよび維持することは重要である。いかなる永続的な治療の養生法にも、ノンコンプライアンスの可能性があるので、コンプライアンスを向上させることは大切である。
この臓器移植における免疫抑制薬に適した、より効果的でコンプライアンスに沿った治療を提供する必要が、確実に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、任意の剤形がチトクロムp450系(CYP3A)の代謝領域を通過するときのタクロリムスの放出を除去する形で、タクロリムスを放出する剤形を提供することで、タクロリムスによる治療のほとんどの課題に対処する、タクロリムスの修飾型放出剤形に係る。タクロリムスの修飾型放出剤形は、即時放出成分、および、代謝の低下および生物学的利用能の向上をもたらす形で薬剤を放出する少なくとも1種の修飾型放出成分を含む。生物学的利用能の向上は、治療で要する用量を削減し、さらに、食物の作用を削減または除去する可能性があり、結果として、患者のコンプライアンスが上昇する。さらに、現在市販されている製品と比較して、より変動の低い放出プロファイルを提供するために、最高最低間比率(フラックス)を著しく低下させた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の表1に示された組成物Eの溶解プロファイルを示す。
【図2】図2は、表1および表2にそれぞれ示された組成物EおよびJ(試験TおよびT)のin vivoのデータを示す。
【図3】図3は、表2に示された組成物Kのin vivoのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の種々の態様は、以下の特徴を提供する。
1.その製剤特性により、チトクロムP450代謝を回避すると同時に、活性の早期発現を実現するために初期薬剤パルスを提供し、後に、移植された臓器の拒絶反応の危険を低下させるために、最高血漿濃度を提供するとともに最低濃度を維持するパルスを提供する、タクロリムスの剤形。
2.作用時に、第1の量のタクロリムスを即時に放出し、第2の量のタクロリムスを、所定の時間間隔を経た後に放出する、タクロリムスの剤形。
3.第1の量のタクロリムスが即時に放出され、薬剤放出の追加パルスを提供するために、追加された1以上の量のタクロリムスの各量が、それぞれ所定の時間間隔を経た後に放出される、二峰性または多峰性薬剤放出が可能なタクロリムスの剤形。
4.代謝が低下し、かつ、生物学的利用能が向上した、タクロリムスの修飾型一日一回剤形。
5.フラックスまたは変動が低下したタクロリムスの修飾放出型剤形。
6.順番に与えられた2つの即時放出剤形の投与によって実現されたC24の水準と均等または近似した水準を有するタクロリムスの修飾放出型剤形。
【0013】
上記の態様は、経口投与すると、2以上の量のタクロリムスを放出するタクロリムスの修飾型放出剤形であって、第1の量のタクロリムスが実質的に即時に放出された後に、剤形から実質的にいかなる量のタクロリムスも放出されない時間間隔があり、その後、第2の量のタクロリムスが放出される剤形によって実現する。追加の量は、順次、追加分の時間間隔の後に放出される。
【0014】
したがって、タクロリムスの修飾型放出剤形は、1つの用量単位を即時放出用量単位とし、第2の用量単位を遅延放出用量単位とする少なくとも2つの用量単位を含み、第1の量のタクロリムスは即時放出用量単位内に存在し、第2の量のタクロリムスは遅延放出用量単位内に存在する。この剤形において、第1の量のタクロリムスは、タクロリムスの総量の約10%w/wから約70%w/wの量で存在し、第2の量のタクロリムスは、タクロリムスの総量の約30%w/wから約90%w/wの量で存在する。この剤形は1以上の遅延放出用量単位を含み得る。
【0015】
一つの態様では、本発明のタクロリムスの修飾型放出剤形は、即時放出用量単位から第1の量のタクロリムスを0〜2時間以内に実質的に即時に放出した後に、剤形から実質的にいかなる量のタクロリムスも放出されない約1〜10時間の時間間隔があり、その後に、第2の量のタクロリムスが放出される。該第2の量は、遅延放出用量単位から最初の放出が行われてから、即時に、すなわち0〜2時間以内に、または、約2〜12時間の時間をかけて遅延放出用量単位から放出される。
【0016】
本発明の別の態様では、タクロリムスの修飾型放出剤形は(a)pH変化法で試験した時に、総薬剤の0〜50%が2.0時間以内に放出され、4時間後には薬剤の20〜60%が放出されており、8時間後には総薬剤の70%以上が放出されているin vitroでの放出プロファイル、および(b)5mgのタクロリムスを1回用量経口投与した後のCが約6ng/ml〜18ng/mlの範囲であり、および/または、C24が約3ng/ml〜20ng/mlの範囲であるin vivoでのプロファイル、の少なくとも一方を示す。
【0017】
本発明のまた別の態様では、タクロリムスの修飾型放出剤形は(a)pH変化法で検査すると、総薬剤の0〜50%が2.0時間以内に放出され、4時間後に薬剤の20〜60%が放出され、8時間後には総薬剤の70%以上が放出されているin vitroでの放出特性、および(b)1回用量経口投与した後の最高最低間比率が約6.5〜1.5、好ましくは約3.0〜1.5の範囲であるin vivoでの血漿プロファイル、の少なくとも一方を示す。
【0018】
本発明のまた別の態様では、タクロリムスの修飾型放出剤形は(a)pH変化法で試験した時に、総薬剤の0〜50%が2.0時間以内に放出され、4時間後には薬剤の20〜60%が放出されており、8時間後には総薬剤の70%以上が放出されているin vitroでの放出プロファイル、および(b)外挿された安定状態変動(フラックス)が本願に記載された市販製品から約40〜70%削減され、薬物動態変動の低下を示すin vivoでの血漿プロファイル、の少なくとも一方を示す。
【0019】
本発明の別の態様では、タクロリムスの修飾型放出剤形は、(i)即時放出用量単位、および(ii)1種以上の遅延放出用量単位を含み、pH変化法を用いてUSP Type II装置内で75rpmで試験された該剤形は、タクロリムスの20%超が0.5時間以内に放出され、4時間後にはタクロリムスの20〜60%が放出されており、8時間後にはタクロリムスの70%以上が放出されている状態に実質的に対応する溶解プロファイルを示す。
【0020】
本発明は、本明細書で開示された特定の系、処理工程、および成分の改良に当業者が想到する可能性があるので、これらの開示に限定されない。また、本発明の範囲は、添付した請求の範囲またはその均等物によってのみ限定されることから、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明するためにのみ使用され、限定を意図することはない。
明細書および添付した請求の範囲で用いられる、単数形の“a”、“an”および“the”は、文脈が明らかに異なる意味を示さないかぎり、複数の指示を含む。したがって、たとえば、“an active agent(活性剤)”の用語を使用した場合、1以上の活性剤を指示することを含む。
【0021】
ここに開示され、本発明の組成物および方法で使用される、「タクロリムス」の用語は、タクロリムス、その薬学的に受け入れ可能なあらゆる塩、およびそのあらゆる共役体、誘導体、錯体、プロドラッグならびに天然および合成類似物、その溶媒和化合物、水和物または無水物を含む。本発明の文脈において「薬剤」または「活性材料」を使用する場合、それは、ここで挙げた形態を含むタクロリムスを指す。無定形、結晶、多形またはタクロリムスの他の形態も、ここに含まれる。
【0022】
本願において、本発明に基づく組成物もしくはコーティング成分と関連して用いられる、または、あらゆる文脈で用いられる、「修飾型放出(modified release)」の用語は、即時放出ではない放出を意味し、制御放出(controlled release)、徐放(sustained release)、時限放出(timed release)、遅滞放出(retarded release)、延長放出(extended release)、プログラム放出(programmed release)、パルス放出(pulsatile release)、バースト放出(burst release)および遅延放出(delayed release)を包含すると解釈される。
【0023】
本願で使用される「即時」または「実質的に即時」の用語は、投与から0から2時間以内の薬剤の放出を指示し、本願で使用される「所定の時間間隔」は、一つの用量単位からの薬剤の送達と、それに続く他の用量単位からの薬剤の送達との間の時間を指す。
【0024】
本発明は、組成物がタクロリムスのパルス放出を提供するように、少なくとも1つの即時放出用量単位、および、少なくとも1つの遅延放出用量単位の少なくとも2つの用量単位を含むタクロリムスの修飾型剤形を提供する。本願において「パルス放出」の用語は、単一の剤形が、哺乳動物への投与後、実質的に即時に第1の量のタクロリムスを提供した後、「実質的に放出がない」所定の時間間隔を経て、その後、第2の量のタクロリムスを即時にまたは一定の時間にわたって放出する、「パルス(pulse)」で薬剤を放出する任意のパルス放出系を意味する。この剤形は、哺乳動物における生物学的利用能の強化、代謝の著しい低下、薬物動態変動の低下を提供し、コンプライアンスに沿った1日1回のタクロリムスの治療を患者に提供する。特定の態様では、修飾型放出剤形は、1つの即時放出用量単位および2つ以上の遅延放出用量単位を含み、薬剤を2以上のパルスで送達する。本願に記載される「用量単位」の用語は、カプセルまたはサッシェに詰められた、または錠剤に圧縮された、ビーズ、顆粒剤、ペレット剤、粒子または小型錠剤を包含し、「実質的に放出がない」所定の時間間隔を包含する異なる時間間隔で、複数の量のタクロリムスを複数のパルスとして放出し、各量は実質的に同一か異なるかして、総推奨用量を提供する。「実質的に放出がない」の用語は、総用量の約0%から約10%の範囲の、剤形からの薬剤の放出と定義される。「剤形」(または互換的に「組成物」と表現される)の用語は、薬剤が哺乳動物に投与される最終形を包含し、とりわけ錠剤、カプセルおよびサッシェを含む。本発明の文脈で用いられる哺乳動物は「人間」を指す。
【0025】
本願の文脈で使用される「pH変化法」による溶解は、pH1.2で2時間、続いてpH4.5で1時間、pH6.8で1〜3時間溶解を行い、さらにpH7.4で溶解を行うことを意味する。
【0026】
本願で使用される「固体分散体」の用語は、担体および/または不活性成分内で、通常は微粒子分散体として、分散または吸着した薬剤または活性材料を指す。担体または不活性成分は、ビーズ、ノンパレイユ種子、顆粒剤、ペレット剤、粒子および粉末およびコア錠剤から選択される。
【0027】
組成物に関する「約」の用語は、ある範囲から20%以内、好ましくは10%以内、さらに好ましくは5%以内の増減を意味する。この用語は、特に生物学的な系または処理において、ある値の10倍以内、好ましくは5倍以内、さらに好ましくは2倍以内を意味する。出願および請求の範囲において特定の値が記載される場合、他の言及がなければ、「約」の用語は、当業者によって決められた、特定の値に対する受け入れ可能な誤差範囲内であることを意味する。
【0028】
「生物学的利用能」の用語は、薬剤の投与後に、その薬剤が活性部位において利用可能となる速度および割合を表し、本願で使用される「Cmax」は哺乳動物への剤形の投与により達成されるタクロリムスの最大血漿濃度を意味する(「最高値」と同義だと考えてよい)。本願で使用される「Cmin」は、哺乳動物への剤形の投与により達成されるタクロリムスの最小血漿濃度を意味する(「最低値」と同義だと考えてよい)。「C24」の水準とは、剤形の投与から24時間経過後の血漿濃度を意味し、これは、時によって、Cminと同じ値である。本願で使用される「Tmax」は、剤形の投与後に、最大血漿濃度を達成するまでの時間を意味する。「T」と「T」が使用される場合、剤形を投与した結果、第1の最高点の最大血漿濃度を達成するまでの時間および第2の最高点の最大血漿濃度を達成するまでの時間を表し、2つの最高点は独立している。本願で使用される「安定状態変動」または「フラックス」は、フラックス=[Cmax−Cmin)/Cavg]*100%、(式中、Cavg=AUC0−τ/τ、式中、τは24時間である)と表される。%フラックスの低下は薬物動態変動の低下を示す。「最高最低間比率」は=Cmax/C24である。
【0029】
本願に記載された、市販の即時放出製品あるいは即時放出製品とは、プログラフ(R)のことであり、本願に記載された、市販の持続放出製品あるいは持続放出製品とは、アドヴァグラフ(R)のことである。
【0030】
薬物血中濃度モニタリングは、特に免疫抑制薬治療において、薬効および薬剤の安全指標を予想するのに重要な役割を果たす。全ての薬剤について薬物モニタリングが必要なわけではないが、以下の特徴、すなわち、狭い治療濃度域、高い患者間および/または患者内の薬物動態変動ならびに著しいノンコンプライアンスの危険、を満たす薬剤ではモニタリングが必要である。タクロリムスは、上記の特徴のほぼ全てを満たす薬剤の一つである。研究者は、タクロリムスによる治療の有効度を評価するにあたって、タクロリムスの全血中最低濃度(C24またはCmin)が重要な役割を果たすことを発見した。Cおよび/またはCmaxでの血中濃度がタクロリムスの毒性水準を決定する。
【0031】
これを念頭に置いて、タクロリムスの即時放出用量を順番に2回以上投与した場合に得られるC24の水準と実質的に同様の水準を有する1日1回の治療を実現し、C24の水準が、市販の持続放出製品の少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.8倍である、タクロリムスの修飾型放出剤形が開発された。特定の態様において、C24の値は、約3.0ng/mlから約20ng/ml、好ましくは3.0ng/mlから約10ng/mlの範囲である。この剤形はまた、市販の即時放出製品に対して、少なくとも約0.9から約3.0以上、好ましくは約1.0から約2.0以上のAUC0−inf/AUC0−infの値を示す。ここで、AUCの値は、それぞれ同様の条件で求められた、本願で記載された市販の即時放出製品から得られた値に対する、本発明の剤形の値の比率を表す。製品の変動および安全性を決定する最高最低間比率は、本願に記載された市販の即時放出製品では約3.5から4.5であり、市販の持続放出製品では約3.5から5.5であり、本発明の好ましい組成物では約1.5から3.0であり、本発明の組成物における変動の低下を示している。特定の組成物間で最高最低間比率が近似していた。
【0032】
薬物動態変動を表す他のパラメータは、安定状態変動または%フラックス値であり、フラックスの低下は変動の低下を示す。本発明の修飾型放出剤形において、それらの値は、本願に記載した市販の製品に対して約40%から70%低下した。
【0033】
さらに、本願に記載した、本発明に基づく修飾型放出剤形は、経口投与された時に、血漿濃度が治療濃度域内に維持される期間を引き延ばし、結果的に副作用を減少させる。特定の態様では、一定の血漿濃度またはCmaxの30%以上およびCmaxの70%以上の間の血漿濃度が、少なくとも約2〜20時間、好ましくは少なくとも約4〜10時間の期間にわたって維持される。この剤形は、市販の即時放出製品(プログラフ(R))のCmaxの約80%、好ましくは約70%、より好ましくは約50%、またはさらに好ましくは約40%の、低下したCmaxを示す。Cmax値は、約40ng/ml以下、または約20ng/ml以下、または約10ng/ml以下である。
【0034】
特定の態様において、剤形は、剤形ごとに0.5mgから10mgのタクロリムスを含有し得る。本発明の実施例では、剤形は、5mgのタクロリムスを含有する。
【0035】
本発明に基づく剤形は、上記に加えて、本願に記載された市販の即時放出製品より著しく低く、また、市販の持続放出製品よりも低い、曲線下面積データの変動係数(CV)を提供する。
【0036】
本発明に包含される、各用量単位からの任意の量のタクロリムスの放出は、急速な放出でもよく(すなわち、2時間以下の「急速放出」)、または、一定期間延長された放出でもよい(すなわち、放出時点から約2時間より長く約12時間までの「延長放出」)。したがって、急速放出および/または延長放出の各量を組み合わせて、剤形を製造することができる。該剤形は、例えば、2つの急速放出用量単位の組み合わせ、または、3つの急速放出用量単位の組み合わせ、または、第1の急速放出用量単位および第2の延長放出用量単位の組み合わせ、または、第1の延長放出用量単位および第2の急速放出用量単位の組み合わせ、または第1の急速放出用量単位および2つ以上の延長放出用量単位の組み合わせ、2つ以上の延長放出用量単位の組み合わせなどであり得る。剤形は、投与の結果、所望の拍動性プロファイルに基づいて複数の量のタクロリムスを放出する。吸収の結果、製剤に応じて、いかなる種類のパルス的または継続的プロファイルも、in vivoで生じ得る。
【0037】
パルス放出プロファイルは、タクロリムスのCYP3A4代謝を著しく抑制または回避し、生物学的利用能を強化し、有効な用量を減少させ、副作用を減少させる。生物学的利用能、すなわちAUC(曲線下面積)の増加は、薬剤の吸収に関わる患者間および患者内の変動を低下させ、結果的に、変動係数の低下または薬物動態の個人間変動の低下を提供する。
【0038】
剤形は、経口で1日1回投与される時、2つ以上のパルスまたは最高点で薬剤を放出し、特定の態様において、第1の最高点の消失フェーズと第2の最高点の吸収開始との間に十分な時間差がある場合は、2つの独立した最高点が確認されるが、他方、他の特定の態様で、第1の最高点の消失が完了する前に第2の最高点の吸収フェーズが開始する場合は、2つの独立した最高点は存在せず、1つの最高点に合体する可能性がある。2つ以上の独立した最高点が確認される場合、Tは第1の最高点の最高濃度を達成するまでの時間を表し、Tは第2の最高点の最高濃度を達成するまでの時間を表し、以下同様に続く。特定の態様で、Tは、経口投与後、約0.1〜5時間、好ましくは約0.5〜3.5時間の範囲で、Tは約3〜10時間、好ましくは約4〜8時間の範囲に含まれる。したがって、少なくとも2つの用量単位を含む、本発明のタクロリムスの徐放性剤形は、第1の用量単位のTmaxが約0.1〜5時間、好ましくは約0.5〜3.5時間、第2の用量単位のTmaxが約3〜10時間、好ましくは約4〜8時間となる剤形である。後続の用量単位の場合、後続の用量単位のTmaxは、投与時点から約5〜16時間の範囲に存在する。
【0039】
本発明の剤形
上記の段落に記載されたパルス放出プロファイルは、ここに記載した、タクロリムスの修飾型放出剤形によって実現される。
本発明は、少なくとも1つの用量単位が即時放出用量単位であり、少なくとも第2の用量単位が遅延放出用量単位である少なくとも2つの用量単位を含み、該即時放出用量単位は、タクロリムスおよび必要に応じて1つ以上の賦形剤を含有し、少なくとも1つの遅延放出用量単位は、タクロリムスおよび遅延放出成分および必要に応じて1つ以上の賦形剤を含有する、遅延放出剤形を提供する。
【0040】
本発明の一つの態様において、タクロリムスの修飾型放出剤形は、少なくとも2つの薬剤含有「用量単位」を含むカプセルであり、該カプセル内の各用量単位が、それぞれ異なる薬剤放出プロファイル、すなわち即時放出および遅延放出、を提供するカプセルである。遅延放出用量単位の制御は、用量単位のポリマー被覆によって達成される。各用量単位は、カプセルに充填された複数の薬剤含有ビーズ、ペレット剤、顆粒剤、粒子または小型錠剤を含み得る。ビーズ、ビードレット(beadlet)およびペレット剤は互換的に使用してもよく、約0.1〜2mmまたは0.3〜1.5mmの粒径を有し、粒子または顆粒剤は、いかなる適切な寸法および形状でもよく、その粒径は約1μ〜約0.3mmの範囲であり、小型錠剤は、1.5〜4mmさらには2〜4mmの粒径を有する。薬剤含有ビーズは、当該技術分野で公知のとおり、不活性成分/保持体に薬剤を添加すること、たとえば、薬剤で被覆された不活性糖ビーズ、または、薬剤と1つ以上の賦形剤またはポリマーとの両方を含む「コア」を作製することによって製造される。薬剤含有「顆粒剤」および「粒子」は、1つ以上の付加的な賦形剤またはポリマーを含む、あるいは、含まない、薬剤粒子を含む。薬剤含有ビーズとは反対に、薬剤含有顆粒剤および薬剤粒子は不活性保持体を含まない。顆粒剤は、一般的に薬剤粒子を含み、さらなる加工を必要とし、顆粒剤より小さい粒子は、通常、それ以上加工されない。ビーズ、顆粒剤および粒子は、即時放出を実現するために製剤されてもよいが、一般的に、ビーズおよび顆粒剤は遅延放出を実現するために利用される。
【0041】
カプセル剤形の他の態様では、各用量単位は、それぞれ異なる薬剤放出プロファイルを提供し得る、圧縮または成形された錠剤を含み得る。
他の態様では、剤形は、各用量単位がそれぞれ、異なる薬剤放出、すなわち即時放出および遅延放出、を提供する複数の「用量単位」を含む錠剤であり、該用量単位は、一つの錠剤に圧縮されるか、または、一つに統合されながら別個の部分として存在する(たとえば、多層錠)。例えば、薬剤含有粒子、顆粒剤またはビーズは、当該技術分野において公知の、従来の製錠手段を用いて単体の錠剤または多層錠に圧縮することができる。さらなる態様では、剤形は、内部薬剤含有コアと該内部コアを囲む少なくとも1層の薬剤含有層とを含むコーティング錠または嵌め込み錠剤であり、外部薬剤含有層は即時放出量を含み、内部薬剤含有コアは、遅延放出量を含むマトリックスポリマーまたはポリマー状コーティングを含み、2つ以上の遅延放出量に関しては、内部コアと外部層との間に挟み込まれた複数の層が、実質的に薬剤放出がされない所定の時間間隔の後に放出される、各種の遅延放出量を含む。また、さらなる態様においては、剤形は、単層または多層の浸透性剤形であり、その詳細は当業者に周知である。
【0042】
他の態様では、本発明の剤形は、第1の量のタクロリムスが、即時放出パルスを形成するために、単独および/または賦形剤との組み合わせによって、薬物学的に受け入れ可能な賦形剤中に溶解および/または分散し、第2の量のタクロリムスまたはその薬物学的に受け入れ可能な塩が、遅延放出パルスを形成するために、顆粒剤、粒子、ビーズまたはペレット剤の形態で賦形剤中に分散する、液体組成物の形態であってもよい。
【0043】
当業者が認識し、関連する文または文献に記載されるように、種々の薬剤放出プロファイルを提供する薬剤含有錠剤、ビーズ、顆粒剤または粒子を調製する方法は幾通りも存在する。そのような方法には、薬剤を適切なマトリックスに挿入すること、薬剤を適切なポリマー、賦形剤および溶媒と混合し、溶媒を蒸発させて、沈殿物または分散体を形成すること、薬剤または薬剤含有組成物を、ポリマー成分を組み込むことが必須ではないが典型的である、適切な被覆成分で被覆すること、薬剤または薬剤含有組成物を適切な親水性および/または親油性界面活性剤または添加剤と混合するか、それらで被覆すること、薬剤を薬物学的に受け入れ可能な担体またはポリマーで粒状化した後に押出しおよび球形化を行い、適切な錯化剤によって薬剤の錯体を形成すること、が含まれるが、これに限定されない。
【0044】
(a)即時放出用量単位
剤形の即時放出用量単位は、タクロリムスとともに従来の薬物学的賦形剤を、ビーズの形態で含む(ここでのビーズは、例えば、糖、デンプン、ラクトースなどのノンパレイユ種子、または、薬剤をマトリックスとして含む、もしくは、薬剤をビーズに被覆した他のビーズを指す)。即時放出薬剤含有ビーズを形成する好ましい方法は、(a)タクロリムスを、親水性および/または親油性界面活性剤、または親油性添加剤を含む他の添加剤とともに、適切な溶媒に溶解させて、透明な溶液/懸濁液を得る工程、(b)工程(a)で得た溶液/懸濁液でノンパレイユ種子を被覆する工程、および(c)必要に応じて、膜形成剤でビーズを被覆する工程を含む。
【0045】
界面活性剤は、少なくとも1つの親水性界面活性剤または親油性界面活性剤またはそれらの組み合わせを含む。HLB値が低い界面活性剤は親油性であり、HLB値が高い界面活性剤は親水性であると考えられる。親水性界面活性剤は、一般的にHLB値が適用可能ではない、アニオン性、カチオン性、両性イオン性またはおよび非イオン性界面活性剤の群から選択することができる。一般に、親油性界面活性剤は、約10未満のHLB値を有する。親水性界面活性剤または親油性界面活性剤の混合物も、本発明の範囲に含まれる。本発明の剤形を実現するために、具体的な、親水性または親油性界面活性剤またはその組み合わせの量および選択肢が、当業者によって識別される。
【0046】
好ましい界面活性剤は、ポリエトキシル化脂肪酸、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、ポリエチレングリコール脂肪酸のモノ‐およびジ‐エステル混合物、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、アルコール‐油エステル交換生成物、ポリグリセリル化脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールエステルとプロピレングリセロールエステルとの混合物、モノ‐およびジグリセリド、ステロールおよびステロール誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖エステル、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル、低級アルコール脂肪酸エステルおよびイオン性界面活性剤を含むが、これに限定されない。イオン性界面活性剤は、脂肪酸塩(カプリル酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ナトリウムラウリルスルファートナトリウムラウラート、パルミチン酸ナトリウム等)、胆汁酸塩(コール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム等)、リン脂質(卵/大豆レシチン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール)、リン酸エステル(脂肪アルコールまたは脂肪アルコールエトキシラートとリン酸またはその無水物とのエステル化製品)、カルボン酸塩(フマル酸ステルアリルナトリウム、モノ‐、ジグリセリドのクエン酸エステル)、硫酸塩およびスルホン酸塩(アシルタウリン酸塩、アルキルグリセリルエーテル硫酸塩、オクチルスルホコハク酸二ナトリウム)を含む。カチオン性界面活性剤は、臭化ヘキサデシルトリアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、アルキルピリジニウム塩、ベタイン、ラウリルベタインポリオキシエチレン‐15ココナツアミンを含むが、これに限定されない。
【0047】
好ましくは、界面活性剤は、PEG4−100 モノラウラート、PEG4−100 モノオレアート、PEG4−100 モノステアラート(monosterate)、PEG4−ジオレアート、PEG8 ジラウラート、PEG12 ジステアラート、PEG4−150 モノ,ジラウラート、PEG20 グリセリル状態(glyceryl state)、PEG35 ひまし油、例えば、PEG40 硬化ひまし油、PEG5 硬化ひまし油、PEG9 硬化ひまし油などの硬化ひまし油、PEG6 落花生油、PEG20 トウモロコシグリセリド、ポリグリセリル‐2‐ステアラート、ポリグリセリル‐2‐オレアート、ポリグリセリル‐10 ラウラート、ポリグリセリル‐2‐ジオレアート、プロピレングリコールモノカプリラートプロピレングリコールジラウラート、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸グリセロール、モノリノレン酸グリセロール、ラウリン酸グリセリル、ジステアリン、Peg24 コレステロールエーテル、ソルラン(Solulan)、PEG−20 ソルビタンモノオレアート、PEG−20 ソルビタンモノラウラート、PE−2 オレイルエーテル、PEG‐9 ラウリルエーテル、モノステアリン酸スクロース、モノラウリン酸スクロース、ポロキサマー、モノパルミチン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウムから成る群から選択される。
【0048】
本発明で使用した親油性添加剤は、親油性界面活性剤またはトリグリセリドを含む。トリグリセリドは、適切な添加剤を加えて、もしくは加えずに、周囲室温で凝固するもの、または、特定の界面活性剤および/または活性材料と組み合わせられて室温で凝固するトリグリセリドである。分画トリグリセリド、変性トリグリセリド、合成トリグリセリドおよびトリグリセリドの混合物も、本発明の範囲に含まれる。
【0049】
本発明で使用し得るトリグリセリドの例は、扁桃油、ひまし油、ココアバター、ココナツ油、トウモロコシ油、ブドウ種油、グラウンドナッツ油、あまに油、オリーブ油、パーム油、落花生油、けし油、菜種油、サル脂、ごま油、サメ肝油、大豆油、ヒマワリ油、タバコ種油、麦芽油、硬化ひまし油、硬化ココナツ油、硬化植物油、トリカプリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、グリセリル1,2−カプリラート−3−リノレアート(linolate)、グリセリル1,2−カプラート−3−ステアラート、グリセリル1,3−パルミタート−2−ブチラートを含む。好ましいトリグリセリドは、植物油、魚油、動物性脂肪、硬化植物油、部分硬化植物油、中長鎖トリグリセリドおよび構造化トリグリセリドを含む。
【0050】
典型的には、例えばエステル交換反応におけるトリグリセリド開始成分の不完全反応の結果として、少量から中程度の量のトリグリセリドを含有する、幾つかの市販の界面活性剤も、本発明の範囲に含まれる。そのような市販の界面活性剤は、本発明の組成物に含まれるトリグリセリド成分の全てまたは一部を提供するのに適しているだろう。そのようなトリグリセリドを含む界面活性剤は、例として、界面活性剤群ジュリシア(Gelucires)(ガッテフォッセ(Gattefosse)社)、メジン(Maisines)(ガッテフォッセ社)およびイムビトール(Imwitors)(ヒュールズ(Huls)社)のいくつかのメンバーを含む。これらの組成物の具体例として、ジュリシア 44/14(飽和ポリグリコール化グリセリド)、ジュリシア 50/13(飽和ポリグリコール化グリセリド)、ジュリシア 53/10(飽和ポリグリコール化グリセリド)、ジュリシア 33/01(C8〜C18飽和脂肪酸の半合成トリグリセリド)、ジュリシア 39/01(半合成グリセリド)、それ以外の、37/06、43/01、35/10、37/02、46/07、48/09、50/02、62/05等のジュリシア、メジン 35−I(リノール酸グリセリド)、およびイムビトール 742(カプリル酸/カプリン酸グリセリド)が挙げられる。さらに、上記以外の、トリグリセリドの含有量が極めて高い、市販の界面活性剤も当業者に公知である。
【0051】
好ましい親水性界面活性剤は、ビタミンE TPGSであり、親油性界面活性剤は、モノオレイン酸グリセロールまたはモノラウリン酸プロピレングリコールである。ビタミンE TPGSは、天然由来ビタミンEの水溶性形態である。これは、結晶d−アルファ−トコフェリル酸スクシナートの酸性基をポリエチレングリコール1000でエステル化することによって調製される。ビタミンE TPGSは非常に安定しており、通常の条件下では加水分解しない。ビタミンE TPGSは、吸収が困難な脂溶性薬剤の生物学的利用能を増加するために使われる。(ペセオール(Peceol)として販売される)モノオレイン酸グリセリルは、モノオレイン酸グリセリルを主としたモノグリセリドと、異なる量(quantity)のジグリセリドおよびトリグリセリドとの混合物である。該モノオレイン酸グリセリルは、オレイン酸のトリグリセリドを主成分とする植物油の部分的なグリセロール分解、または、植物もしくは動物由来のオレイン酸によるグリセロールのエステル化によって得られる。そのHLB値は3〜4である。(ラウログリコール(Lauroglycol) 90(R)およびラウログリコール FCC(R)として販売される)モノラウリン酸プロピレングリコールは、ともに4〜5の低HLB値を有する、ラウリン酸のプロピレングリコールモノおよびジ‐エステルの混合物で、製剤において可溶性が低い薬剤の生物学的利用能を増加させるために用いられる。親水性もしくは親油性界面活性剤または親油性添加材は、剤形の総質量に対して、好ましくは、約0.5質量%から約40質量%の範囲、より好ましくは、約1質量%から約20質量%の範囲で用いられる。
【0052】
他の好ましい態様では、即時放出用量単位は、適切な溶媒中でタクロリムスと適切なポリマーまたは水溶性担体とを、必要に応じて他の賦形剤を加えて、混合し、さらに、(i)この溶液を、顆粒剤、粉末、ビーズまたはペレット剤に被覆または吸着させ、必要に応じて、膜形成成分で被覆するか、または(ii)溶媒を蒸発させて乾燥混合物を生成し、その混合物をさらに粉砕するかのいずれかの方法で固体分散体を調製することで、調製される。このようにして生成されたタクロリムスの固体分散体または微粒子は、当該技術分野において公知の他のいかなる方法で調製してもよい。ビーズはその後、カプセルまたはサッシェに充填され、剤形に加えられる。
【0053】
他の態様では、即時放出用量単位は錠剤(すなわち、カプセルに充填された小型錠剤)の形態であり、例えば、当該技術分野で公知のように、直接配合処理、湿式造粒処理または乾式造粒処理を用いて調製された顆粒剤の配合物などの薬剤含有配合物を打錠機内で圧縮することによって調製される。
【0054】
したがって、即時放出用量単位は、ビーズ、ノンパレイユ種子、顆粒剤、ペレット剤、粒子およびコア錠剤から選択された不活性成分上に被覆または吸着された、水溶性担体中のタクロリムスの固体分散体である。
【0055】
有用な水溶性担体またはポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン酸化物、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリ‐イプシロンカプロラクトン、ポリグリコール化グリセリド、ポリビニルピロリドン、ポリビニル‐ポリ酢酸ビニル共重合体(PVP−PVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースを含むセルロース誘導体、ペクチン、シクロデキストリン、ガラクトマンナン、アルギン酸、カラギナート、キサンタンゴムおよびそれらの混合物を含むが、それに限定されず、水溶性担体がHPMCだと好ましい。HPMCまたはヒプロメロース(メトセル(methocel);メトセル E6 プレミアム LV)は、メチルセルロースのプロピレングリコールエーテルである。メトセル E6 プレミアム LVの2%水溶液の典型的な粘度値は、20℃で6mPasである。剤形において使用した場合、タクロリムスの水溶性担体に対する質量比は約2:1から約1:10、好ましくは約1:1から約1:4の範囲である。
【0056】
薬剤、担体および賦形剤を溶解するために使用し得る溶媒は、アセトン、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチルおよびその2つ以上の物質の混合物である。
【0057】
(b)遅延放出用量単位
本発明の遅延放出用量単位は、薬剤または上記の方法で調製された薬剤含有ビーズ、顆粒剤、ペレット剤、粒子または錠剤を、遅延放出成分でさらに被覆することによって、調製することができる。遅延放出成分は、生分解性ポリマー、水溶性または非水溶性ポリマー、腸溶性成分を含む、酵素分解性および/またはpH依存性ポリマーからなる群から選択される。コーティングの質量、コーティング成分の種類および相対量は、種々の、異なる量のコーティング成分を加えて調製された錠剤、ビーズおよび顆粒剤の個々の放出プロファイルを評価することを通じて、当業者によって容易に決定されるであろう。
【0058】
したがって、遅延放出用量単位は、ビーズ、ノンパレイユ種子、顆粒剤、ペレット剤、粒子およびコア錠剤から選択された不活性成分上に被覆または吸着した水溶性担体に含まれるタクロリムスの固体分散体であり、さらに、腸溶性コーティング成分で被覆される。
【0059】
したがって、本発明に基づく徐放性剤形は、タクロリムスを拍動的な仕方で放出し、タクロリムスの治療作用を引き延ばす。一つの態様では、タクロリムスの徐放性放出剤形は、少なくとも一つの用量単位が即時放出用量単位であり、少なくとも第2の用量単位が遅延放出用量単位である少なくとも2つの用量単位を含み、該即時放出用量単位は、タクロリムスまたはその類似体または塩、および必要に応じて1種以上の賦形剤、を含み、該少なくとも1つの遅延放出用量単位は、タクロリムスまたはその類似体または塩およびコーティング、および必要に応じて1種以上の賦形剤、を含み、該コーティングは腸溶性コーティングまたはpH依存性コーティングである。
【0060】
好ましい腸溶性コーティング成分は、セルロースポリマー、アクリル酸ポリマーおよび共重合体、ビニルポリマーおよび共重合体ならびに酵素分解性ポリマーまたはそれらの混合物、マレイン酸系ポリマーおよび共重合体、ポリビニル誘導体、ゼイン、シェラック、セルロースエステル、酢酸フタル酸セルロースならびにエチルセルロースからなる群から選択される。
【0061】
本発明で使用し得る腸溶性コーティング成分の他の例は、ポリアクリルアミド、アミラーゼアセタートフタラート、酢酸フタル酸セルロース、セルロースアセタートテレフタラート、セルロースアセタートイソフタラート、他のセルロースエステルフタラート、セルロースエーテルフタラート、ヒドロキシプロピルセルロースアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、メチルセルロースフタラート、メチルセルロースアセタートフタラート、ポリビニルアセタートフタラート、ポリビニルアセタート水素フタラート、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、フタル酸デンプンを含む炭水化物のフタル酸などのフタラート誘導体;ポリビニルアセタートフタラート(PVAP)を含む他の化合物のフタラート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(HPMCAS)、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセタートトリメリタートを含む他のセルロース誘導体、アルギン酸;カルボマー;アクリル酸およびアクリルエステル共重合体、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリルメタクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体(例えば、オイドラギット(Eudragit) Lおよびオイドラギット S)などのポリアクリル酸誘導体;スチレン−マレイン酸ジブチルフタラート共重合体、スチレン(styene)およびマレイン酸共重合体;シェラック、デンプングリコラート、ポラクリリン(polacrylin);酢酸ビニルおよびクロトン酸共重合体ならびにその混合物;特に、ポリ(メチルアクリラート、メチルメタクリラート、メタクリル酸)を含む。
【0062】
好ましい態様において、コーティング成分は、オイドラギット FS 30Dとして知られる、ポリ(メチルアクリラート、メチルメタクリラート、メタクリル酸)7:3:1である。
【0063】
コーティングはまた、pH非依存性コーティング、水溶性または水混和性コーティングおよび非水溶性または疎水性コーティングであってもよく、好ましい成分は、エチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、選択肢が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体、ポロキサマー、ステアリン酸ポリエチレン、ポリ−s−カプロラクトン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン‐ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリメタクリルポリマーおよびポリビニルアルコール、ポリエチレン酸化物ならびにその混合物からなる群から選択される。
【0064】
遅延放出用量単位は、被覆前の用量単位の質量に対して、40%以下、20%以下、10%以下の増量となる遅延放出成分であるコーティング成分で被覆される。
【0065】
他の態様では、遅延放出用量単位は、タクロリムスを、マトリックスの形態をした適切な遅延放出成分に混合または分散させることで製剤することができ、マトリックスの形態をした遅延放出成分は、水混和性ポリマー、非水溶性ポリマー、アクリルおよびメタクリル酸系ポリマーおよび共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびエチルセルロース、油および油性成分、ゴム、置換または非置換炭化水素、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸のグリセリルエステル、ミネラル、植物油およびロウからなる群から選択される。
【0066】
好ましい遅延放出成分は、本願に記載される、セルロース、セルロースエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびビニルのポリマーもしくは共重合体からなる群、または、酵素分解性ポリマーもしくは共重合体から選択される。これらの成分は、遅延放出マトリックスを提供するために特に有益である。マトリックス成分として用いられる脂肪性化合物は、脂質、ろう(例えば、カルナウバロウ)およびトリステアリン酸グリセロールを含むが、これに限定されない。活性材料をマトリックス成分と混合してから、この混合物を、顆粒剤、ペレット剤、ビーズ、粒子に製剤するか、錠剤に圧縮することができる。
【0067】
遅延放出作用を起こすための、好ましい、適正コーティング成分またはマトリックス成分は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、セルロースアセタートトリメリタートおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系ポリマー;好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルからから形成されたアクリル酸ポリマーおよび共重合体、および、商標名オイドラギット(R)(ローム・ファーマ(Rohm Pharma)社;ヴェシュテルシュタット、ドイツ)で市販される、オイドラギット(R)L30D−55およびL100−55(pH5.5以上で可溶)、オイドラギット(R)L−100(pH6.0以上で可溶)、オイドラギット(R)S(より高度なエステル化の結果、pH7.0以上で可溶)およびオイドラギット(R)NE、RL、FS 30DおよびRS(程度の異なる透過性および拡張性を持つ非水溶性ポリマー)を含む、他のメタクリル樹脂;ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、ビニルアセタートフタラート、ビニルアセタートクロトン酸共重合体、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニルポリマーおよび共重合体;アゾポリマーなどの酵素分解性ポリマー、ペクチン、キトサン、アラビノガラクトース、アミラーゼ、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ガラクトマンナン、キシランおよびグアーゴム、イナゴマメゴム、トラガカントゴムおよびカラヤゴム;ならびにシェラックを含むが、これに限定されない。異なるコーティング成分を組み合わせて使用してもよい。また、異なるポリマーを用いた多層コーティングを被覆してもよい。胃液のpHで治療剤が放出するのを防ぐための遅延放出成分の量および種類は、当業者によって決定され得る。本発明において、遅延放出成分は、用量単位の約1%w/wから約50%w/wの範囲であり得る。
【0068】
膜形成ポリマー
即時放出および/または遅延放出用量単位は、水溶性または非水溶性ポリマー、天然、半合成または合成多糖からなる群から選択される膜形成成分で被覆される。本発明で使用されるこれらの膜形成成分は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン、酢酸ポリビドン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸およびエチレン−酢酸ビニル共重合体またはその組み合わせなどのセルロース誘導体、アクリルポリマーまたは共重合体、ビニルポリマー、および、他の高分子ポリマー誘導体または合成ポリマーなどの水溶性または非水溶性ポリマー、アルギン酸、そのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、カラギーナン、ガラクトマンナン、トラガカントゴム、寒天、アラビアゴム、グアーゴム、キサンタンゴム、デンプン、カルボキシメチルアミロペクチンナトリウムなどのペクチン、キトサンなどのキチン誘導体、ポリフルクタン、イヌリンなどの他の天然、半合成、または合成多糖、ポリアクリル酸およびその塩を含むが、これに限定されない。好ましい膜形成ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン‐酢酸ビニル共重合体およびヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロースである。膜形成成分の種類と量は、当業者によって決定される。膜形成成分は、剤形の約1%から約30%w/wの範囲で被覆される。
【0069】
特定の態様では、即時放出および遅延放出用量単位の両方が膜形成ポリマーで被覆される。遅延放出用量単位は、さらに、遅延放出の効果を生み出すための遅延放出成分で被覆される。
【0070】
被覆は、従来のコーティングパン、エアレススプレー法、流動層コーティングおよび/または圧縮コーティングなど多様な方法によって行われる。タクロリムス含有溶液、膜形成成分および遅延放出成分のコーティング層は、必要に応じて、コーティング層の特性を改善する好ましい添加剤を含んでもよく、該材料は、単独または組み合わせによって用いられる、充填剤、可塑剤、付着防止剤、顔料、着色剤、結合剤、安定剤、可溶剤、孔形成剤、または当該技術分野で公知の、その他の医薬的に受け入れ可能な添加剤を含むが、これに限定されない。本組成物で用いられる特定の賦形剤は、2つ以上の役割を果たし得ることを認識されたい。
【0071】
使用された典型的な可塑剤の例は、フタル酸エステル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、クエン酸エステル、クエン酸ブチル、アセチルクエン酸トリエチル、モノグリセリド、トリアセチン、セバシン酸ジブチルおよびポリエチレングリコールを含むが、これに限定されない。
【0072】
他の賦形剤
本発明の調剤に含まれ得る他の賦形剤または添加材は、充填剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、緩衝剤、保存剤、吸収促進剤、吸上剤(wicking agent)、流動促進剤、滑沢剤等である。
【0073】
充填剤とも呼ばれる希釈剤は、典型的には担体として機能し、錠剤の圧縮およびビーズまたは顆粒剤の形成などの製造のための具体的な寸法を提供するために、医薬組成物のかさを増加させる。好ましい希釈剤は、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、微結晶性セルロース、セルロース末、乾燥デンプン、デンプン水解物、αデンプン、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウムおよび二酸化チタンを含む。
【0074】
結合剤は、系に凝集性を付与してその無損傷性を保証するために用いられる。好ましい例として、デンプン、αデンプン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレングリコールおよびロウ、アラビアゴム(acacia)、トラガカントゴムなどの天然および合成ゴム、アルギン酸ナトリウムおよびビーガム(veegum)が含まれる。
【0075】
崩壊剤は、投与後の系の崩壊を促進するために用いられる。好ましい例として、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カーボポール(carbopol)、種々のセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粘土、寒天、アラビアゴム、グアーゴム、イナゴマメ等のゴム、および架橋PVPおよび架橋カルボキシメチルセルロースなどの架橋ポリマーが含まれる。
【0076】
滑沢剤は、固着を防ぎ、系の潤滑な製造を促進する。好ましい例として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびその医薬的に受け入れ可能なアルカリ金属塩、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、カボシル(Cab―O―Sil)、シロイド(Syloid)、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、植物油およびタルクが含まれる。
【0077】
吸収促進剤は、胃腸粘膜を通じた活性剤分子の吸収の増加およびその生物学的利用能の改善を補助する。使用可能な吸収増進剤は、細胞外被不規則化化合物、溶媒、ステロイド性洗剤、胆汁酸塩、キレート剤、界面活性剤、非界面活性剤、脂肪酸等の分類に属する。例としては、EDTA、クエン酸、サリチル酸ナトリウムなどのキレート剤;ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、ポリオキシエチレン、23−ラウリルエーテルなどの界面活性剤;デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムなどの胆汁酸塩;オレイン酸、カプリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸;環状尿素、シクロデキストリンなどの非界面活性剤;およびポリソルベート、アプロチニン、アゾン、アルキル配糖体、キトサン、メントール、デキストラン硫酸等の他の物質が含まれる。
【0078】
特定の態様では、本発明の修飾型放出剤形は、剤形の総質量に対して、(a)約0.05%w/wから約50.0%w/wのタクロリムス、(b)約1.0%w/wから約40.0%w/wの親水性界面活性剤、(c)約0.1%w/wから約30.0%w/wの親油性添加剤、および(d)約1.0%w/wから約30%w/wの遅延放出成分を含む。
【0079】
特定の他の態様では、本発明の修飾型放出剤形は、(a)約0.05%w/wから約50.0%w/wのタクロリムス、(b)約1.0%w/wから約40.0%w/wの親水性界面活性剤、(c)約0.01%w/wから約30.0%w/wの親油性添加剤、(d)必要に応じて、約0.01%w/wから約10.0%w/wの親水性ポリマー、(e)約1.0%w/wから約30%w/wの遅延放出成分、および(f)約1.0%w/wから約90.0%w/wの他の賦形剤を含む。
【0080】
特定の態様では、本発明の修飾型放出剤形は、(a)約0.05%w/wから約50.0%w/wのタクロリムス、(b)約1.0%w/wから約40.0%w/wのビタミンE TPGS、(c)約0.1%w/wから約30.0%w/wの、モノオレイン酸グリセロールまたはモノラウリン酸プロピレングリコールから選択される親油性添加剤、(d)必要に応じて、約0.01%w/wから約10.0%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース、(e)約1.0%w/wから約30%w/wの、メタクリル酸共重合体またはアクリル酸ポリマーから選択される遅延放出成分、および(f)約1.0%w/wから約90.0%w/wの他の賦形剤を含む。
【0081】
特定の態様では、本発明の修飾型放出剤形は、剤形の総質量に対して、(a)約0.05%w/wから約50.0%w/wのタクロリムス、(b)約0.01%w/wから約50.0%w/wの水溶性担体、および(c)約1.0%w/wから約30%w/wの遅延放出成分を含む。
【0082】
特定の他の態様では、本発明の修飾型放出剤形は、剤形の総質量に対して、(a)約0.05%w/wから約50.0%w/wのタクロリムス、(b)約0.01%w/wから約50.0%w/wの水溶性担体、(c)約0.01%w/wから約20.0%w/wの界面活性剤、(d)約1.0%w/wから約30%w/wの遅延放出成分、および(e)約1.0%w/wから約30.0%w/wの他の賦形剤を含む。
【0083】
特定の態様では、本発明の修飾型放出剤形は、剤形の総質量に対して、(a)約0.05%w/wから約50.0%w/wのタクロリムス、(b)約0.01%w/wから約50.0%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース、(c)約0.01%w/wから約20.0%w/wの、ラウリル硫酸ナトリウムまたはジオクチルスルホコハク酸ナトリウムから選択される界面活性剤、(e)約1.0%w/wから約30%w/wの、メタクリル酸共重合体またはアクリル酸ポリマーから選択される遅延放出成分、および(f)約1.0%w/wから約30.0%w/wの他の賦形剤を含む。
【0084】
タクロリムスの修飾型放出剤形を調製する方法は、a)第1の量のタクロリムスを、必要に応じて1以上の賦形剤とともに、製剤して、即時放出用量単位を形成する工程と、b)第2の量のタクロリムスを遅延放出成分とともに製剤して、遅延放出用量単位を形成する工程と、c)必要に応じて、第3の量のタクロリムスを遅延放出成分とともに製剤して第2の遅延放出用量単位を形成する工程と、d)すべての用量単位を組み合わせて、本発明の剤形を形成する工程を含む。
【実施例】
【0085】
以下の非限定的な実施例は、本発明の態様を説明するものであり、本発明の範囲を限定するものと理解されるべきではない。発明の方法のいかなる修正も、本発明の要旨または範囲に含まれる。
【0086】
(実施例1)
本発明に従って、即時放出成分および修飾型放出成分を含む剤形を調製した。その工程は、親水性界面活性剤(ビタミンE TPGS)、タクロリムスおよび親油性界面活性剤(モノオレイン酸グリセロール)を適切な溶媒(イソプロピルアルコール)に溶解させ、それを用いてノンパレイユ種子を被覆することを含んだ。生成されたこれらのペレット剤を二部分に分割し、表1に挙げた組成物を用い、適切な被覆装置を用いて、即時放出用量単位を形成する一部分を、膜形成ポリマー溶液でさらに被覆し、遅延放出用量単位を形成する第二部分を、腸溶成分で被覆した。それぞれ所望の量に応じた、即時放出および遅延放出成分のペレット剤を、その後、カプセルに充填した。製剤によっては、遅延放出用量単位を形成する組成物の第二部分を、腸溶コーティングで被覆する前に、膜コーティング組成物で被覆することも可能である。
【0087】
【表1】

【0088】
剤形を、USP溶解装置IIを用いたpH変化法によるin vitroでの溶解プロファイル試験にかけ、サンプルをHPLCによって分析した。
【0089】
【表2】

【0090】
(実施例2)
本発明に従って、即時放出成分および修飾型放出成分を含む剤形を調製した。その工程は、親水性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、タクロリムス、水溶性担体および他の賦形剤を、適切な溶媒(エタノール、ジクロロメタンまたはそれらの混合物)に溶解させ、透明な溶液を得ることを含んだ。上記で生成された溶液を用いてノンパレイユ種子を被覆した。これらのペレット剤を二部分に分割し、表3に挙げた組成物を用い、適切な被覆装置を用いて、即時放出用量単位を形成する一部分を、膜形成ポリマー溶液でさらに被覆し、遅延放出用量単位を形成する第二部分を、腸溶成分で被覆した。それぞれ所望の量に応じた、即時放出および遅延放出成分のペレット剤を、その後、カプセルに充填した。製剤によっては、遅延放出用量単位を形成する組成物の第二部分を、腸溶コーティングで被覆する前に、膜コーティングで被覆することも可能だ。
【0091】
【表3】

【0092】
剤形を、USP溶解装置IIを用いたpH変化法によるin vitroでの溶解プロファイル試験にかけ、サンプルをHPLCによって分析した。
【0093】
【表4】

【0094】
(実施例3)薬物動態学的調査:
(a)本発明のタクロリムス組成物EおよびJ、それぞれ試験製品TおよびT、を1回用量経口投与した際の(5mgを1日1回投与)薬物動態学的プロファイルを評価し、市販の従来の即時放出製品プログラフ(R)(2.5mgを1日2回投与)、基準製品(R)、の薬物動態と比較するために、健康な人間のボランティアの小グループで調査を計画した。
調査計画:オープンラベルで、無作為で、断食後の、1回の用量での薬物動態学的調査。投与前に、健康な人間のボランティアに、一晩断食させた。個々のボランティアに、製剤を250mlの水とともに与えた。投与前および所定の時間間隔の経過後(投与から0.5、1.0、1.5、2.0、4.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、16.0、20.0、22.0、24.0、36.0時間後)に、血液サンプルを採取した。調査中、標準的な食事をボランティアに与えた。実証された分析法を用いてプラズマ分析を行い、薬物動態学的パラメータ、すなわちCmax,Tmax,C,C24,AUC0−tおよびAUC0−infを決定し、そのデータを表5に提示した。
【0095】
【表5】

【0096】
見て分かるように、AUC0−infのT/Rの値は1.55であり、T/Rの値は1.53であり、試験組成物の生物学的利用能が高いことを示している。試験製品および基準製品のC24値は近似していた。
【0097】
(b)別の人間に対するクロスオーバー調査では、30人の断食したボランティアに、5mgのタクロリムス組成物K、本発明の試験製品(T)、を1回投与し、その薬物動態学的プロファイルを(i)1日2回2.5mg投与された市販の即時放出製品、プログラフ(R)、基準製品(R)、および(ii)1日1回5mg投与された市販の持続放出製品、アドヴァグラフ(R)、基準製品(R)と比較した。薬物動態学評価を、上記の(a)の記載と同様の方法で行い、そのデータを以下の表6に提示した。
【0098】
【表6】

【0099】
上記のデータから分かるように、1日1回投与された本発明の修飾型放出組成物は、1日2回投与された市販の即時放出製品とAUC0−tおよびAUC0−infの観点から生物学的に均等で、T/Rの値が1.0となり、同じく1日1回投与された市販の持続放出製品に対して、AUC0−tに基づく相対生物学的利用能(T/R)115%を有し、該製品より良い。試験組成物のC24値は、市販の即時放出製品と近似しており、市販の持続放出製品より1.5倍良い。Rの推定安定状態変動または%フラックス値は、33.42±9.21であり、Rのそれは26.47±7.32であり、試験組成物Tのそれは13.75±5.43である。
【0100】
上記で挙げた実施例は、排他的な意図を持たない。その他多くの本発明の変形が、当業者には自明であろうし、添付した請求の範囲に含まれると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与すると2以上の量のタクロリムスを放出するタクロリムスの修飾型剤形であって、第1の量のタクロリムスが実質的に即時に放出された後に、剤形から実質的にいかなる量のタクロリムスも放出されない時間間隔があり、その後、第2の量のタクロリムスが放出され、さらに、剤形が、必要に応じて、追加の量のタクロリムスを含むタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項2】
第1の量のタクロリムスは即時放出用量単位内に存在し、第2の量のタクロリムスは遅延放出用量単位内に存在する請求項1に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項3】
第1の量のタクロリムスは、タクロリムスの総量の約10%w/wから約70%w/wの量で存在し、第2の量のタクロリムスは、タクロリムスの総量の約30%w/wから約90%w/wの量で存在する請求項2に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項4】
第1の量のタクロリムスを0〜2時間以内に実質的に即時に放出した後に、剤形から実質的にいかなる量のタクロリムスも放出されない約1〜10時間の時間間隔があり、その後に、第2の量のタクロリムスが放出され、前記第2の量がその放出された時間から0〜2時間以内に即時に、または、約2〜12時間の時間をかけて放出される請求項1に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項5】
(i)即時放出用量単位、および(ii)1種以上の遅延放出用量単位を含むタクロリムスの徐放性剤形であって、USP TypeII装置内でpH変化法を用いて試験された前記剤形が、タクロリムスの20%超が0.5時間以内に放出され、4時間後にはタクロリムスの20〜60%が放出されており、8時間後にはタクロリムスの70%以上が放出されている状態に実質的に対応する溶解プロファイルを示す修飾型放出剤形。
【請求項6】
少なくとも2つの用量単位を含むタクロリムスの修飾型放出剤形であって、少なくとも1つの用量単位が即時放出用量単位であり、少なくとも第2の用量単位が遅延放出用量単位であり、即時放出用量単位が、タクロリムスおよび必要に応じて1つ以上の賦形剤を含有し、少なくとも1つの遅延放出用量単位が、タクロリムス、遅延放出成分、および必要に応じて1つ以上の賦形剤を含有する修飾型放出剤形。
【請求項7】
遅延放出成分が遅延放出用量単位上に被覆された腸溶性、水溶性または非水溶性成分からなる群から選択される遅延放出成分である請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項8】
即時放出用量単位が、ビーズ、ノンパレイユ種子、顆粒剤、ペレット剤、粒子およびコア錠剤から選択された不活性成分上に被覆または吸着された、水溶性担体中のタクロリムスの固体分散体である請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項9】
水溶性担体が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン酸化物、ポロキサマー(polaxomer)、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリ‐エプシロン カプロラクトン、ポリグリコール化グリセリド、ポリビニルピロリドン、ポリビニル‐ポリ酢酸ビニル共重合体(PVP−PVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースを含むセルロース誘導体、ペクチン、シクロデキストリン、ガラクトマンナン、アルギン酸、カラギナート、キサンタンゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはHPMCである請求項8に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項10】
タクロリムスの水溶性担体に対する質量比が約2:1から約1:10である請求項8に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項11】
即時放出用量単位が少なくとも1つの親水性界面活性剤および少なくとも1つの親油性添加材を含む請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項12】
遅延放出用量単位が、ビーズ、ノンパレイユ種子、顆粒剤、ペレット剤、粒子およびコア錠剤から選択された不活性成分上に被覆または吸着し、さらに、腸溶性コーティング成分で被覆された、水溶性担体中のタクロリムスの固体分散体であり、請求項6に記載の修飾型放出剤形。
【請求項13】
即時放出、1つ以上の遅延放出用量単位、またはその両方が、水溶性または非水溶性ポリマー、および天然、半合成または合成多糖からなる群から選択される膜形成成分で被覆される請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項14】
腸溶性コーティング成分が、セルロースポリマー、アクリル酸ポリマーおよび共重合体、ビニルポリマーおよび共重合体ならびに酵素分解性ポリマーまたはそれらの混合物、マレイン酸系ポリマーおよび共重合体、ポリビニル誘導体、ゼイン、シェラック、セルロースエステル、酢酸フタル酸セルロースならびにエチルセルロースからなる群から選択される請求項7に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項15】
腸溶性コーティング成分が、ポリアクリルアミド、アミラーゼアセタートフタラート、酢酸フタル酸セルロース、セルロースアセタートテレフタラート、セルロースアセタートイソフタラート、他のセルロースエステルフタラート、セルロースエーテルフタラート、ヒドロキシプロピルセルロースアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、メチルセルロースフタラート、メチルセルロースアセタートフタラート、ポリビニルアセタートフタラート、ポリビニルアセタート水素フタラート、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、フタル酸デンプンを含む炭水化物のフタル酸などのフタラート誘導体;ポリビニルアセタートフタラート(PVAP)を含む他の化合物のフタラート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(HPMCAS)、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセタートトリメリタートを含む他のセルロース誘導体、アルギン酸;カルボマー、アクリル酸およびアクリルエステル共重合体、ポリメタクリル酸およびそのエステル、ポリアクリルメタクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体(例えば、オイドラギット Lおよびオイドラギット S)などのポリアクリル酸誘導体;スチレン−マレイン酸ジブチルフタラート共重合体、スチレンおよびマレイン酸共重合体、シェラック、デンプングリコラート;ポラクリリン;酢酸ビニルおよびクロトン酸共重合体;ポリ(メチルアクリラート、メチルメタクリラート、メタクリル酸)ならびにそれらの混合物からなる群から選択される請求項7に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項16】
水溶性および非水溶性成分が、エチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、選択肢が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択されるセルロース誘導体、ポロキサマー、ステアリン酸ポリエチレン、ポリ−s−カプロラクトン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン‐ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリメタクリルポリマーおよびポリビニルアルコール、ポリエチレン酸化物ならびにそれらの混合物からなる群から選択される請求項7に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項17】
遅延放出成分がマトリックスの形態であり、水混和性ポリマー、非水溶性ポリマー、アクリルおよびメタクリル酸系ポリマーおよび共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびエチルセルロース、油および油性成分、ゴム、置換または非置換炭化水素、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸のグリセリルエステル、ミネラル、植物油およびロウからなる群から選択される請求項6に記載の修飾型放出剤形。
【請求項18】
賦形剤が充填剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤および溶媒からなる群から選択される請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項19】
顆粒剤、ペレット剤、ビーズまたは小型錠剤の形態である、少なくとも1つの即時放出用量単位および少なくとも1つの遅延放出用量単位を含む、固形の経口単位剤形である請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項20】
固形の経口単位剤形が錠剤、カプセルまたはサッシェである請求項19に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項21】
請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形の調製方法であって、
a)第1の量のタクロリムスを必要に応じて1以上の賦形剤とともに製剤して、即時放出用量単位を形成する工程と、
b)第2の量のタクロリムスを遅延放出成分とともに製剤して、遅延放出用量単位を形成する工程と、
c)必要に応じて、第3の量のタクロリムスを遅延放出成分とともに製剤して第2の遅延放出用量単位を形成する工程と、
d)すべての用量単位を組み合わせて、請求項1の剤形を形成する工程と
を含む調製方法。
【請求項22】
剤形が、(a)pH変化法で試験した時に、総薬剤の0〜50%が2.0時間以内に放出され、4時間後には薬剤の20〜60%が放出されており、8時間後には総薬剤の70%以上が放出されているin vitroでの放出プロファイル、および(b)1回用量経口投与した後の最高最低間比率が約6.5〜1.5の範囲であるin vivoでの血漿プロファイル、の少なくとも一方を示す請求項1に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項23】
1日1回経口投与されたときに、1日2回投与された即時放出製品の、少なくとも約0.9から約3.0以上、好ましくは約1.0から約2.0のAUC0−inf/AUC0−infを提供する請求項1に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項24】
24時間経過後の血漿濃度(C24)が、即時放出製品の(C24)と実質的に同様であり、かつ、持続放出製品の少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.8倍である請求項1に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項25】
剤形が、(a)pH変化法で試験した時に、総薬剤の0〜50%が2.0時間以内に放出され、4時間後には薬剤の20〜60%が放出されており、8時間後には総薬剤の70%以上が放出されているin vitroでの放出プロファイル、および(b)安定状態変動(フラックス)が即時放出製品または持続放出製品から約40〜70%削減されたin vivoでの血漿プロファイル、の少なくとも一方を示す請求項1に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項26】
第1の用量単位のTmaxが約0.1〜5時間の範囲であり、第2の用量単位のTmaxが約3〜10時間の範囲である請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項27】
剤形の総質量に対して、(a)約0.05%w/wから約50.0%w/wのタクロリムス、(b)約1.0%w/wから約40.0%w/wの親水性界面活性剤、(c)約0.1%w/wから約30.0%w/wの親油性添加剤、および(d)約1.0%w/wから約30%w/wの遅延放出成分を含む請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項28】
剤形の総質量に対して、(a)約0.05%w/wから約50.0%w/wのタクロリムス、(b)約0.01%w/wから約50.0%w/wの水溶性担体、および(c)約1.0%w/wから約30%w/wの遅延放出成分を含む請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項29】
(a)約0.05%w/wから約50.0%w/wのタクロリムス、(b)約1.0%w/wから約40.0%w/wのビタミンE TPGS、(c)約0.1%w/wから約30.0%w/wの、モノオレイン酸グリセロールまたはモノラウリン酸プロピレングリコールから選択される親油性添加剤、(d)必要に応じて、約0.01%w/wから約10.0%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース、(e)約1.0%w/wから約30%w/wの、メタクリル酸共重合体またはアクリル酸ポリマーから選択される遅延放出成分、および(f)約1.0%w/wから約90.0%w/wの他の賦形剤を含む請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。
【請求項30】
剤形の総質量に対して、(a)約0.05%w/wから約50.0%w/wのタクロリムス、(b)約0.01%w/wから約50.0%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース、(c)約0.01%w/wから約20.0%w/wの、ラウリル硫酸ナトリウムまたはジオクチルスルホコハク酸ナトリウムから選択される界面活性剤、(e)約1.0%w/wから約30%w/wの、メタクリル酸共重合体またはアクリル酸ポリマーから選択される遅延放出成分、および(f)約1.0%w/wから約30.0%w/wの他の賦形剤を含む請求項6に記載のタクロリムスの修飾型放出剤形。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−522742(P2010−522742A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500442(P2010−500442)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000179
【国際公開番号】WO2009/022354
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(500445631)パナセア バイオテック リミテッド (29)
【Fターム(参考)】