説明

タクロリムスを含む固体分散体

固体分散体又は固体溶液を形成するために、親水性又は水-混和性ビヒクル中に溶解及び/又は分散されたタクロリムス(FK-506)を含む医薬組成物は、生物学的利用能を改善した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクロリムス又はそのアナローグを含み、高い生物学的利用能を有する固体分散体、より具体的には、タクロリムスの親水性ビヒクル固体溶液又は分散体;当該固体溶液又は分散体を含む医薬組成物;及び、当該固体溶液又は分散体を含む剤形、に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
タクロリムスは、FK-506又はFR-900506としても知られ、C44H69NO12に対応する以下:
【0003】
【化1】

【0004】
の化学的三環状構造を有する。タクロリムスは、白色結晶又は結晶性粉末の形態に見える。実際には水に不溶性であり、エタノールにはよく溶け、メタノール及びクロロホルムに非常に溶解性である。
【0005】
タクロリムスの調製は、EP-A-0 184 162号に記載され、タクロリムスのアナローグは、例えばEP-A-0 444 659号及び米国特許第6,387,918号に開示されている。これらは、本明細書に参考文献として援用される。
【0006】
タクロリムスは、有用な免疫抑制活性、抗菌活性及び他の薬理活性を有するマクロライド化合物であり、器官又は組織の移植、移植片対宿主疾患、自己免疫疾患及び感染症による拒否反応の治療又は予防に価値がある。タクロリムスは、肝臓、腎臓、心臓、骨髄及び小腸及び膵臓、肺及び気管、皮膚、角膜及び手足の動物移植モデルにおける、宿主及び移植片の生存を延長する。
【0007】
動物では、タクロリムスは、いくらかのホルモン性免疫を抑制し、細胞介在反応、例えば同種移植拒絶反応、遅延型過敏症、コラーゲン-誘導関節炎、実験的アレルギー脳脊髄炎及び移植片-対-宿主疾患を大いに抑制する。
【0008】
正確な作用メカニズムは知られていないが、タクロリムスは、T-リンパ球活性化を阻害する。実験的証拠は、タクロリムスが細胞内タンパク質、FKBP-12に結合することを示唆している。次いで、タクロリムス-FKBP-12、カルシウム、カルモジュリン及びカルシニューリンの複合体が形成され、カルシニューリンのホスファターゼ活性が阻害される。この効果は、活性化T-細胞の核因子、リンフォカインの形成のための遺伝子転写を開始すると考えられる核成分の脱ホスホリル化及び転座を抑制する。この網は、T-リンパ球活性化の抑制、すなわち免疫抑制を引き起こす。
【0009】
タクロリムスは、内臓壁及び肝臓中のCYP3A4アイソザイムによって大規模に代謝される。従って、アイソザイムに影響を及ぼす薬物は、吸収及び全身的に吸収されるタクロリムスの次の排泄に影響する。CYP3A4阻害剤は、タクロリムスレベルを増加し、同時にCYP3A4インデューサーは、タクロリムス代謝を増加させ、タクロリムスレベルを低減する。従って、タクロリムスは、全体的な生物学的利用能を改善するために、1以上のCYP3A4阻害剤と共に投与することができる。
【0010】
通常、タクロリムスは、経口投与され、そのため胃腸管から吸収される。吸収は、食物の同時摂取によって悪影響を受けることが観察されている。従って、タクロリムス吸収の速度及び程度は、絶食条件では最も大きかった。
【0011】
一般的に、経口投与される場合に、治療活性物質の吸収及び生物学的利用能が様々な因子によって影響を受け得ることが知られている。このような因子は、胃腸管での食物の存在を含み、一般的に薬物物質の胃滞留時間は、絶食状態よりも食物存在下の方が著しく長い。薬物物質の生物学的利用能が、胃腸管での食物の状態に因り、ある点を越えて影響を受ける場合に、薬物物質は、食物効果を示すと言われる。食物効果は、吸収及び血漿レベルが食物取り込みによって高度に変化するため、重要である。薬物が投与された条件を修正するために、患者が不十分な吸収の危険を負うという点まで、血流への吸収は悪影響を与える。一方、場合により絶食条件で見られる非常に高いピーク濃度は、腎性-又は神経毒性起源、並びにGI副作用及びその他の重大な副作用を高度に誘導する。
【0012】
経口投与後に胃腸管からのタクロリムスの吸収は、速く、健常対象又は腎臓もしくは肝臓移植患者に対する投与後約1〜2時間の平均時間対ピーク濃度(tmax)を有する。但し、これは完全ではなく変動する。生物学的利用能は一般的に低く、経口投与後、せいぜい約20%である。
【0013】
頻繁に観察される副作用は、嘔吐及び吐き気であるが、震え、頭痛、高血圧、腎不全、高カリウム血症、低マグネシウム血症、高血糖症、不眠症、下痢、便秘、腹痛、腎毒性及び神経毒性も観察される。
【0014】
経口投与に関しては、タクロリムスは、通常、0.5、1又は5 mgと等価量の無水タクロリムスを含む軟ゼラチンカプセル剤として調合され、市販され、商標名Prograf(登録商標)及びProtropic(登録商標)として市販されている。推奨初期経口用量は、患者では約0.1〜0.22 mg/kg/日である。用量は、約5〜20 ng/mlのあるトラフ血漿レベルを目的とする。Prograf(登録商標)は、異質遺伝子型の肝臓又は腎臓移植を受ける患者における器官拒否の予防に処方される。
【0015】
高い生物学的利用能を示すタクロリムスを含む新規医薬組成物及び/又は剤形の要求が依然として存在する。増加した生物学的利用能は、患者によって服用される投薬単位の減少を可能にする、例えば1日に単一用量に減少させることができ、及び剤形と同時に摂取する食物の必要性も減らし又は否定し、それによって、薬物の服用時に患者をより気楽にする。更に、血漿濃度対時間プロファイルの変動を大幅に減じられる、と考えられる。更に、高生物学的利用能はまた、より再現性のある(すなわち、Prograf(登録商標)の生物学的利用能と比べて変動が少ない)放出プロファイルをもたらす。
【発明の開示】
【0016】
発明の簡単な概要
発明者らは、タクロリムスの生物学的利用能は、有用な薬物剤形の調製に使用するために効果的な量で、親水性又は水-混和性ビヒクル中にタクロリムスを分散又は溶解することによって、顕著に亢進される、ことを発見した。タクロリムスは、水に非常に低溶解性であることが知られているが、本発明は、in vitroで非常に速い放出プロファイルを示す医薬組成物及び製剤、すなわち、それを必要とする患者においてin vivoで著しく高い生物学的利用能を有すると予期される迅速放出組成物を提供する。
【0017】
従って、第一の局面では、本発明は、親水性又は水-混和性ビヒクルに分散又は溶解されたタクロリムス及びそのアナローグから選ばれる活性成分を含む固体分散体であって、当該ビヒクルの融点が少なくとも20℃であり、当該活性成分が約0.01 w/w%から約15 w/w%までの濃度でそこに存在して、周囲温度で固体分散体又は固体溶液を形成する、前固体分散体に関する。水溶性溶解媒体を用いるUSPに従う任意の溶解試験で試験した場合に、この分散体は、約30分以内にタクロリムスの量の少なくとも50 w/w%を放出すことができる、と考えられる。
【0018】
更なる局面では、本発明は、タクロリムス及び1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、固体分散体及び/固体溶液を含む医薬組成物に関する。その賦形剤は、充填剤、崩壊剤、結合剤又は滑剤でもよい。更に別の局面では、本発明は、剤形、例えば、タクロリムスの固体分散体及び/溶液、薬学的に許容される賦形剤及び場合により薬学的に許容される添加剤、例えば香料、着色剤、味覚マスキング剤、pH-調整剤、緩衝剤、保存料、安定剤、抗酸化剤、加湿剤、湿度調整剤、表面活性剤、懸濁剤、吸収促進剤及び放出調整剤、を含む固体経口単位剤形に関する。特に、本発明は、タクロリムス及び放出-調整剤を含む剤形、特に徐放性を有する剤形、例えば腸内コーティングを含む固体経口単位剤形に関する。十二指腸の末端部分へのタクロリムスの徐放は、胃腸管の中央部分での薬物関連胃腸副作用及び比較的高程度の代謝を減少させる(CYP3A4介在代謝)。本発明に従う新規固体分散体及び/又は溶液によって、全身的生物学的利用能を喪失することなく行われる。
【0019】
発明の詳細な説明
定義
本発明で用いる用語「活性成分」又は「活性な医薬成分」は、疾患の診断、治癒、緩和、治療又は予防における薬理活性又は他の直接的効果を提供し、又はヒト又はその他の動物の体の構造又は任意の機能に影響を与えることを意図する任意の成分を意味する。当該用語は、薬物製品の製造における化学的変化を受け、特定の活性又は効果を与えることを意図された修飾形態での薬物製品に存在する成分を含む。
【0020】
本文脈では、用語「親水性」は、「水のような」もの、すなわち、親水性分子又はその分子の一部分は、典型的には電気的に分極し、水分子と水素結合を形成することができ、油又は他の「非-極性」溶媒よりも水により容易に溶解することができる分子を言う。
【0021】
本文脈では、用語「両親媒性」は、水-混和性炭化水素鎖に結合された極性水-溶解性基礎を有する(界面活性剤としての)分子を言う。従って、分子の一末端は、親水性(極性)であり、他方は疎水性(非極性)である。
【0022】
本明細書で用いる用語「ビヒクル」は、薬理学的役割を有する薬学的生成物中の任意の溶媒又は担体を意味する。例えば、水はキシロカインのビヒクルであり、プロピレングリコールは多くの抗生物質のビヒクルである。
【0023】
本文脈では、用語「固体分散体」は、不活性ビヒクル、担体、希釈剤又はマトリックス中に粒子レベル的に、固体状態で、分散された薬物もしくは活性成分又は物質、すなわち通常、細粒子分散体を言う。
【0024】
本文脈では、用語「固体溶液」は、固体状態で、不活性ビヒクル、担体、希釈又はマトリックス中の分子レベルで溶解された薬物もしくは活性成分又は物質を言う。
【0025】
本明細書で用いる用語「アナローグ」は、構造的に他と類似する化学化合物を意味する。
【0026】
用語「薬物」は、ヒト又は他の動物における疾患の診断、治癒、緩和、治療又は予防での使用を意図された化合物を意味する。
【0027】
本文脈では、用語「剤形」は、薬物が患者に送達されるその剤形を意味する。これは、非経口、局所、錠剤、経口(液剤又は溶解粉剤)、座剤、吸入、経皮的等でよい。
【0028】
本明細書で用いる用語「生物学的利用能」は、薬物又は他の物質が投与後に標的組織に利用できる程度を言う。本明細書で用いる用語「生物学的等価」は、一般名及び商標名の薬物が他の薬物と比較される科学的根拠を言う。例えば、薬物は、類似の条件下で類似の用量で与えられる時に同じ速度で循環に入る場合には、薬物は生物学的に等価である。生物学的等価試験でよく用いられるパラメータは、tmax、cmax、AUCO-無限大、AUCo-tである。他の関連パラメータはW50、W75及び/又はMRTでよい。従って、これらのパラメータの少なくとも1つは、生物学的等価性が存在する否かを決定する時に利用することができる。更に、本文脈では、使用されるパラメータの値が、試験で使用される、Prograf(登録商標)又は類似の商業的に入手できるタクロリムス含有製品の80〜125%内にある場合には、2種の組成物は、生物学的に等価とみなされる。
【0029】
本文脈では、「tmax」は、投与後の最高血漿濃度(Cmax)に到達する時間を言い;AUCo-無限大は、0時間から無限大までの血漿濃度対時間の曲線下での面積を言い;AUCo-tは、時間0から時間tまでの血漿濃度対時間の曲線下での面積を言い;W50は、血漿濃度がCmaxの50%以上である時間を言い;W75は、血漿濃度がCmaxの75%以上である時間を言い;及び、MRTは、タクロリムス(及び/又はそのアナローグ)の平均滞留時間を言う。
【0030】
本文脈では、用語「医薬」は、疾患、傷害又は疼痛を治療するために使用される化合物を意味する。医薬はまさに「予防的」、すなわち健康を維持する分野、及び「治療的」、すなわち、健康を取り戻す分野に及んでいる。
【0031】
本明細書で用いる用語「徐放」は、迅速放出プロファイルに関連して、一定のCmaxを有するが、単に薬物が放出するまでの投与時間からの遅延時間である、医薬組成物又は製剤からの薬物の放出プロファイルを意味する。従って、tmaxは遅延し、t%は通常一定である。
【0032】
本分脈では、用語「腐食」又は「腐食する」は、物質又は構造の表面、例えば錠剤又は錠剤のコーティングの漸進的崩壊を意味する。
【0033】
タクロリムスの固体分散体及び/又は固体溶液
本発明の固体分散体は、タクロリムス及びそのアナローグから選ばれる活性成分であり、その活性成分は、少なくとも20℃の融点(凝固点又は鋳込み温度)を有する親水性又は水-混和性ビヒクルに約0.01 w/w%〜約15 w/w%の濃度で分散又は溶解され、及び分散は、周囲温度(室温)で固体分散体又は固体溶液を形成している。
【0034】
活性成分は、好ましくは、タクロリムスもしくは任意のアナローグ又はタクロリムスの誘導体であり、薬理活性又は治療的活性のいずれかを示し、少なくともタクロリムス(FK-506又はFR-900506)の当該活性と等価である。しかしながら、任意の物理的形態(結晶、アモルファス粉末、任意の可能な多型、水和物、無水物、それらの複合体等の任意の可能な溶媒和物)のタクロリムスが本発明の範囲内にある。タクロリムスの任意のアナローグ、誘導体又は活性代謝物、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、複合体及びプロドラッグも含む。
【0035】
親水性又は水-混和性ビヒクル中の活性成分の濃度は、せいぜい15 w/w%、好ましくはせいぜい10 w/w%、好ましくはせいぜい8 w/w%、より好ましくはせいぜい6 w/w%、更により好ましくはせいぜい5 w/w%、せいぜい4 w/w%、特にせいぜい3 w/w%、特にはせいぜい2% w/w;及び/又は少なくとも約0.05 w/w%、好ましくは少なくとも約0.1 w/w%、より好ましくは少なくとも約0.5 w/w%、特に少なくとも約0.7 w/w%、特には少なくとも約1 w/w%である。
【0036】
物理的に、活性成分及びビヒクルの組み合わせは、固体分散体を形成してもよく、すなわち活性成分が粒子形態でビヒクル中に分散されている、又は固体溶液を形成してもよい、すなわち活性成分が分子レベルでビヒクル中に溶解されている。活性成分及びビヒクルは、分子レベルで溶解されている活性成分の一部をそこに有する固体分散体を形成してもよい。分散体及び/又は溶液の物理的状態は、様々な方法、例えば、高熱期顕微鏡法(HSM)、示差走査熱量測定(DSC)、走査電子顕微鏡法(SEM)、場合により、エネルギー分散型X線分光法(EDX)及び粉末X線回析法と併用して測定することができる。好ましい実施態様では、活性成分は、ビヒクルに十分に溶解されて周囲温度で固体溶液を形成する。
【0037】
生物学的利用能の増加により、曲線下面積(AUC)は、薬物物質の吸収に関連する内部変動性及び相互変動性を一般的に減少することになる。これは特に、低及び減少した生物学的利用能が低水溶解度の結果であるときは何時でも当てはまる。本発明に従う組成物は、Prograf(登録商標)及び類似の生成物と比べてそれ程低くないAUGデータ上でのCV(変動係数)を提供する、ことを意図する。
【0038】
前記のように、本発明の基本的特徴の1つは、本発明の組成物の経口投与による生物学的利用能の改善が得られる、ことである。通常、経口投与後の薬物物質の低生物学的利用能は、長期間、有効な薬物レベルを得ることがほとんどできないという事実に因り、薬物物質の徐放組成物又は調整放出組成物の設計の障害である。しかしながら、本技術によれば、顕著な改良生物学的利用能を得ることができ、その結果、例えば徐放組成物を設計することができる。
【0039】
本発明の固体分散体は、分散体又は溶液を含む組成物が、水性溶解媒体を用いるUSPに従う溶解試験で試験される場合に、タクロリムスの極度の迅速放出を示し、活性医薬成分の少なくとも50 w/w%が、約30分以内、好ましくは20分以内、より好ましくは15分以内に放出され;例えば、活性医薬成分の少なくとも75 w/w%が約40分以内、又は更に好ましくは、活性医薬成分の少なくとも90 w/w%が約60分以内、好ましくは45分以内に放出される。例えば、試験は、USPに引用される任意の方法及び任意の仕様に従って実行することができる。従って、溶解試験は、中性又は中性に近いpH、例えばpH 6.8又は胃腸管でのpH条件を真似た任意の酸性pHで、水性溶解媒体中で実行することができる。しかしながら、使用される具体的方法に関する変更及び溶解媒体中に含まれる成分等は、本発明の範囲内である。当業者は、好適な溶解試験、例えばUSP、Ph. Eur.等からの指針を実行する方法を知るだろう。in vitro溶解試験の好適な条件は、USP溶解試験(パドル法)、及び溶解媒体としての2.5% SDS及び1 g/mLのパンクレアチンを含むpH 7.5の緩衝液の採用である。
【0040】
他の実施態様では、以下の条件をin vitro溶解試験で満たす:
i) pH 7.5の緩衝液を含む溶解媒体を使用してin vitro溶解試験で試験した場合に、タクロリムス又はそのアナローグの総量の少なくとも約50% w/wが約10時間以内、例えば、約8時間以内、約6時間以内、約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、約1時間以内、約45分以内、約30分又は約15分以内に放出される;
ii) pH 7.5の緩衝液を含む溶解媒体を使用してin vitro溶解試験で試験した場合に、タクロリムス又はそのアナローグの総量の少なくとも約50% w/wが約1.5時間以内、例えば約1時間、約0.75時間、約0.5時間以内又は約20分以内に放出される;
iii) pH 7.5の緩衝液を含む溶解媒体を使用してin vitro溶解試験で試験した場合に、タクロリムス又はそのアナローグの総量の少なくとも約55% w/w、例えば約60% w/w以上、約65% w/w以上、約70% w/w以上、約75% w/w以上又は約80% w/w以上が、約15時間以内、例えば、約12時間以内、約10時間以内、約8時間以内又は約6時間以内に放出される;
iv) pH 7.5の緩衝液を含む溶解媒体を使用してin vitro溶解試験で試験した場合に、タクロリムス又はそのアナローグの総量の少なくとも約55% w/w、例えば約60% w/w以上、約65% w/w以上、約70% w/w以上、約75% w/w以上又は約80% w/w以上が、約5時間以内、例えば、約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、約1時間以内又は約20分以内に放出される;及び/又は
v) pH 7.5の緩衝液を含む溶解媒体を使用してin vitro溶解試験で試験した場合に、タクロリムス又はそのアナローグの総量の少なくとも約20% w/w、例えば少なくとも約25% w/w、少なくとも約30% w/w、少なくとも約35% w/w又は少なくとも約40% w/wが、最初の3時間以内、例えば最初の2時間以内又は最初の1時間以内に放出される。
【0041】
本発明の他の実施態様では、以下の条件をin vitro溶解試験で満たす:
i) タクロリムス又はそのアナローグのせいぜい約30% w/w、例えばせいぜい約25% w/w、せいぜい約20% w/w、せいぜい約15% w/w、せいぜい約10% w/wが、せいぜい約5、例えばせいぜい約4.5、せいぜい約4、せいぜい約3.5、せいぜい約3、せいぜい約2又はせいぜい約1.5のpHを有する溶解媒体を使用するin vitro溶解試験において、2時間以内に放出される;
ii) タクロリムス又はそのアナローグのせいぜい約10% w/w、例えばせいぜい約7.5% w/w、せいぜい約5% w/w又はせいぜい約2.5% w/wが、せいぜい約5、例えばせいぜい約4.5、せいぜい約4、せいぜい約3.5、せいぜい約3、せいぜい約2又はせいぜい約1.5のpHを有する溶解媒体を使用するin vitro溶解試験において、2時間以内に放出される;
iii) タクロリムス又はそのアナローグのせいぜい約60% w/w、例えばせいぜい約50% w/w、せいぜい約40% w/w又はせいぜい約30% w/wが、せいぜい約5、例えばせいぜい約4.5、せいぜい約4、せいぜい約3.5、せいぜい約3、せいぜい約2又はせいぜい約1.5のpHを有する溶解媒体を使用するin vitro溶解試験において試験した場合に、15時間以内、例えば12時間以内に放出される;
iv) タクロリムス又はそのアナローグのせいぜい約40% w/w、例えばせいぜい約30% w/w、せいぜい約25% w/w又はせいぜい約20% w/wが、せいぜい約5、例えばせいぜい約4.5、せいぜい約4.0、せいぜい約3.5、せいぜい約3、せいぜい約2又はせいぜい約1.5のpHを有する溶解媒体を使用するin vitro溶解試験において試験した場合に、6時間以内に放出される;及び/又は
v) タクロリムス又はそのアナローグのせいぜい約30% w/w、例えばせいぜい約25% w/w、せいぜい約20% w/w又はせいぜい約15% w/wが、せいぜい約4.5、例えばせいぜい約4.0、せいぜい約3.5、せいぜい約3、せいぜい約2又はせいぜい約1.5のpHを有する溶解媒体を使用するin vitro溶解試験において試験した場合に、4時間以内に放出される。
【0042】
本発明で用いられる親水性又は水-混和性ビヒクルは、好ましくは、少なくとも20℃、より好ましくは少なくとも30℃、より好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも50℃、更により好ましくは少なくとも52℃、更により好ましくは少なくとも55℃、更により好ましくは少なくとも59℃、特に少なくとも61℃、特に少なくとも65℃の融点(凝固点又は鋳込み温度)を有するものである。
【0043】
本発明に用いられる有用な親水性又は水-混和性ビヒクルの例は、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリグリコール化グリセリド例えばGelucire(登録商標):及びその混合物からなる群より選ばれる。
【0044】
水-混和性であることに加えて両親媒性である、本明細書に開示のビヒクルを含む、ある両親媒性ビヒクルが本発明に有用であることも考慮される。
【0045】
本発明の好ましい実施態様では、ビヒクルは、ポリエチレングリコール(PEG)、特に少なくとも1500、好ましくは少なくとも3000、より好ましくは少なくとも4000、特に少なくとも6000の平均分子量を有するPEGである。ポリエチレングリコールは、1以上の他の親水性又は水-混和性ビヒクルと、例えばポロキサマー、好ましくは(重量/重量基準で)1:3〜10:1、好ましくは1:1〜5:1、より好ましくは3:2〜4:1、特に2:1〜3:1、特に約7:3の割合で、有利に混合することができる。有用な混合物の具体例は、PEG 6000及びポロキサマー188の7: 3の割合の混合物である。
【0046】
ポリエチレングリコール(PEG)に関して、融点(凝固点及び鋳込み温度)は、平均分子量が増加するにつれて増加する。例えば、PEG 400は4〜8℃の範囲にあり、PEG 600は20〜25℃の範囲にあり、PEG 1500は44〜48℃の範囲にあり、PEG 2000は約52℃であり、PEG 4000は約59℃であり、PEG 6000は約65℃であり、及びPEG 8000は約61℃である。
【0047】
有用なポロキサマー(ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーとも称される)は、例えばポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338もしくはポロキサマー407、又はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの他のブロックコポリマー、例えばPluronic(登録商標)及び/又はTetronic(登録商標)シリーズである。Pluronic(登録商標)シリーズの好適なブロックコポリマーは、約3,000以上、例えば約4,000〜約20,000の分子量、及び/又は約200〜約4,000 cps、例えば約250〜約3,000 cpsの粘度(Brookfield)を有するポリマーを含む。好適な例は、Pluronic(登録商標)F38、P65、P68LF、P75、F77、P84、P85、F87、F88、F98、P103、P104、P105、F108、P123、F123、F127、10R8、17R8、25R5、25R8等を含む。Tetronic(登録商標)シリーズの好適なブロックコポリマーは、約8,000以上、例えば約9,000〜約35,000の分子量、及び/又は約500〜約45,000 cps、例えば約600〜約40,000 cpsの粘度(Brookfield)を有するポリマーを含む。上記の粘度は、室温でペーストの物質については60℃で測定し、室温で固体の物質については77℃で測定した。
【0048】
本発明の好ましい実施態様では、ポロキサマーは、ポロキサマー188であり、約8400の平均分子量及び約50〜54℃の融点を有する。
【0049】
他の有用な親水性又は水-混和性ビヒクルは、ポリビニルピロリドン、ポリビニル-ポリ酢酸ビニルコポリマー(PVP-PVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸ポリマー(Eudragit RS; Eudragit RL、Eudragit NE、Eudragit E)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースを含むセルロース誘導体、ペクチン、シクロデキストリン、ガラクトマンナン、アルギン酸塩、カラゲナン、キサンタンガム及びその混合物でよい。
【0050】
「ポリグリコール化グリセリド」は、モノ-及びジ-及びトリ-グリセリド、及びポリエチレングリコール(PEG)モノ-及びジ-エステルの混合物を称し、好ましくは200〜600の分子量であり、好適な遊離グリセロール及び遊離PEGは、HLB値がPEG鎖の長さによって調整され、融点が脂肪酸鎖、PEG鎖の長さによって、及び脂肪酸鎖及び出発油の飽和度によって調整される;このような混合物の例はGelucire(登録商標)である。Gelucire(登録商標)組成物は、性質が両親媒性であり、様々な物理的性質がある、不活性半固体ワックス材料である。それらは、本来活性であり、水性媒体中で分散又は溶解してミセル、顕微鏡的小球又は小胞を形成する。それらは、その融点/HLB値により特定される。融点は摂氏温度で表わされ、HLB(親水性・親油性バランス)は、0〜約20の数値範囲である。より低HLB値は、より親油性及び疎水性物質を示し、より高値は、親水性及び疎油性物質を示す。水又は油状物質に対する化合物の親和性が測定され、そのHLB値が実験的に与えられる。異種の等級のGelucire(登録商標)の1つ又は混合物が、融点及び/HLB値の所望の性質を得るために選択することができる。それらは、長鎖(C12〜C18)脂肪酸のグリセリドのモノエステル、ジエステル及び/又は取りエステル、及び長鎖(C12〜C18)脂肪酸のPEG(モノ-及び/又はジ-)エステルの混合物であり、遊離のPEGを含むことができる。Gelucire(登録商標)組成物は、一般的にグリセロールの脂肪酸エステル及びポリグリコール化グリセリドとして記載される。Gelucire(登録商標)組成物は、約33℃〜約64℃、最も一般的には約35℃〜約55℃の融点の幅広い変化、及び約1〜約14、最も一般的には約7〜約14の広いHLB値によって特徴付けられる。例えば、Gelucire(登録商標)50/13は、Gelucire(登録商標)のこの等級について約50℃の融点及び約13のHLB値を示す。
【0051】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、本発明の固体分散体又は固体溶液、及び1以上の薬学的に許容される賦形剤、例えば充填剤、崩壊剤、結合剤及び/又は滑剤として有用な1以上の賦形剤を含む。
【0052】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、粒子形態、例えば粉末形態である。好ましくは、得られる粒子材料は遊離の流動粉末であり、そのため例えば固体剤形例えば錠剤、カプセル剤又はサシェ剤に容易に加工できる。通常、粒子材料は、大量の更なる添加剤の添加なしに直接圧縮することにより錠剤を製造するために好適な性質を有する。粒子材料の流動性を試験するための好適な試験は、Ph. Eur.に記載されている方法であり、10.0 mmのノズル(又は開口部)径を有する漏斗から出る材料の流速を測定する。
【0053】
粒子は、約10 μm〜約2000 μm、好ましくは約20 μm〜約2000 μm、より好ましくは約30 μm〜約2000 μm、より好ましくは約50 μm〜約2000 μm、より好ましくは約60 μm〜約2000 μm、より好ましくは約75 μm〜約2000 μm、より好ましくは約100 μm〜約1500 μm、より好ましくは約100 μm〜約1000 μm、より好ましくは約100 μm〜約700 μm、より好ましくは約50 μm〜約400 μm、より好ましくは約50 μm〜約350 μm、更により好ましくは約50 μm〜約300 μm、特に約50 μm〜約250 μm、又は特に約100 μm〜約300 μmの幾何学的重量平均径dgwを有する。本発明の好ましい実施態様では、粒子は、約50 μm〜約300 μmの幾何学的重量平均径dgwを有する。
【0054】
本発明に従う組成物又は固体剤形に使用するための好適な賦形剤の例は、充填剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑剤等又はその混合物を含む。本発明に従う組成物又は剤形は種々の目的に使用することができるため、賦形剤の選択は、通常、このような種々の用途が考慮される。好適な用途のための他の薬学的に許容される賦形剤は、例えば酸性剤、アルカリ剤、保存料、抗酸化剤、緩衝剤、キレート剤、着色剤、複合化剤、乳化剤及び/又は溶解剤、香料及び芳香剤、湿潤剤、甘味剤、加湿剤等である。
【0055】
好適な充填剤、希釈剤及び/又は結合剤は、ラクトース(例えばスプレイ乾燥ラクトース、α-ラクトース、β-ラクトース、Tabletose(登録商標)、種々の等級のPharmatose(登録商標)、Microtose(登録商標)又はFast-Floc(登録商標)、微晶質セルロース(種々の等級のAvicel(登録商標)、Elcema(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tai(登録商標)又はSolka-Floc(登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース、L-ヒドロキシプロピルセルロース(低置換)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC) (例えばShin-Etsu, LtdのMethocel E, F及びK、Metolose、例えば4,000 cps等級のMethocel E及びMetolose 60 SH、4,000 cps等級のMethocel F及びMetolose 65 SH、4,000、15,000及び100,000 cps等級のMethocel K;及び、4,000、15,000、39,000及び100,000等級のMetolose 90 SH)、メチルセルロースポリマー(例えば、Methocel A、Methocel A4C、Methocel A15C、Methocel A4M)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチレン、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース及び他の誘導体、スクロース、アガロース、ソルビトール、マンニトール、デキストラン、マルトデキストリン、デンプン又は修飾デンプン(ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン及びコメデンプンを含む)、リン酸カルシウム(例えば、塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二カルシウム水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、コラーゲン等を含む。
【0056】
希釈剤の具体例は、例えば、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微晶質セルロース、粉末セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、フルクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、未ゲラチン化デンプン、スクロース、糖類等である。
【0057】
崩壊剤の具体例は、例えば、アルギン酸又はアルギン酸塩、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及び他のセルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリンカリウム、グリコール化デンプンナトリウム、デンプン、未ゼラチン化デンプン、カルボキシメチルデンプン(例えば、Primogel(登録商標)及びExplotab(登録商標))等である。
【0058】
結合剤の具体例は、例えば、アカシア、アルギン酸、アガー、カラギーナンカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微晶質セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液状グルコース、グアールガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、PEG、ポビドン、未ゼラチン化デンプン等である。
【0059】
直打用滑沢剤及び滑剤も組成物に含んでもよい。例は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又は他のステアリン酸金属塩、タルク、ワックス及びグリセリド、軽鉱油、PEG、グリセリルベヘネート、コロイド状シリカ、水素化植物油、コーンスターチ、ステアリン酸フマル酸ナトリウム、プロピレングリコール、硫酸アルキル、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等である。
【0060】
本発明の組成物又は固体剤形中に含むことができる他の賦形剤は、例えば香料、着色剤、味覚マスキング剤、pH-調整剤、緩衝剤、保存料、安定剤、抗酸化剤、加湿剤、湿度調整剤、表面-活性剤、懸濁剤、吸収促進剤、放出調整剤等である。
【0061】
本発明に従う組成物又は固体剤形中の他の添加剤は、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、没食子酸プロピル、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化イオウ、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ヘミコハク酸トコフェロール、TPGS又は他のトコフェロール誘導体等でよい。担体組成物は、例えば安定剤も含んでもよい。担体組成物中の抗酸化剤及び/又は安定剤の濃度は、通常、約0.1 % w/w〜約5% w/wである。
【0062】
本発明に従う医薬組成物又は固体剤形は、表面-活性特性を有する1以上の界面活性剤又は物質も含んでもよい。このような物質は、低溶解性活性物質の湿潤に関連し、よって活性物質の溶解性改善の一助となる、と考えられる。本発明に従う組成物又は剤形に使用するための好適な賦形剤は、界面活性剤、例えばLipocine, Incの名称で国際公開第 00/50007号パンフレットに開示の両親媒性界面活性剤である。
【0063】
界面活性剤及び更にはビヒクルとして有用な好適物質の例は、
i) ポリエトキシ化脂肪酸、例えば、ポリエチレングリコールの脂肪酸モノ-又はジエステル、又はその混合物、例えばポリエチレングリコールと、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リシノール酸とのモノ-又はジエステル、そして、ポリエチレングリコールは、PEG 4、PEG 5、PEG 6、PEG 7、PEG 8、PEG 9、PEG 10、PEG 12、PEG 15、PEG 20、PEG 25、PEG 30、PEG 32、PEG 40、PEG 45、PEG 50、PEG 55、PEG 100、PEG 200、PEG 400、PEG 600、PEG 800、PEG 1000、PEG 2000、PEG 3000、PEG 4000、PEG 5000、PEG 6000、PEG 7000、PEG 8000、PEG 9000、PEG 1000、PEG 10,000、PEG 15,000、PEG 20,000、PEG 35,000から選ばれ;
ii) ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、すなわち上記エステル、但し、各々の脂肪酸のグリセリルエステルの形態ではない;
iii) グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、PEG又はソルビトールエステル、例えば植物油例えば水素化ヒマシ油、アーモンド油、パーム核油、ヒマシ油、杏仁油、オリーブ油、ピーナッツ油、水素化パーム核油等;
iv) ポリグリセリン化脂肪酸等、例えばステアリン酸ポリグリセロール、オレイン酸ポリグリセロール、リシノール酸ポリグリセロール、リノール酸ポリグリセロール;
v) プロピレングリコール脂肪酸エステル、例えばモノラウリン酸プロピレングリコール、リシノール酸プロピレングリコール等;
vi) モノ-及びジ-グリセリド等、例えばモノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、モノ-及び/又はジ-オレイン酸グリセリル、カプリル酸グリセリル、カプリン酸グリセリル等;
vii) ステロール及びステロール誘導体;
viii) ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(PEG-ソルビタン脂肪酸エステル)、例えば上記の種々の分子量を有するPEGエステル、及び種々のTween(登録商標)シリーズ;
ix) ポリエチレングリコールアルキルエーテル、例えばPEGオレイル及びPEGラウリルエーテル;
x) 糖類エステル等、例えばモノパルミチン酸スクロース及びモノラウリン酸スクロース;
xi) ポリエチレングリコールアルキルフェノール等、例えばTriton(登録商標)X又はNシリーズ;
xii) ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、例えばPluronic(登録商標)シリーズ、Synperonic(登録商標)シリーズ、Emkalyx(登録商標)、Lutrol(登録商標)、Supronic(登録商標)等。これらのポリマーの一般名は、「ポロキサマー」であり、本文脈中の関連例は、ポロキサマー105、108、122、123、124、181、182、183、184、185、188、212、215、217、231、234、235、237、238、282、284、288、331、333、334、335、338、401、402、403及び407であり;
xiii) ソルビタン脂肪酸エステル等、例えばSpan(登録商標)シリーズ又はAriacel(登録商標)シリーズ、例えばモノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン等;
xiv) 低級アルコール脂肪酸エステル等、例えばオレイン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等;
xv) イオン性界面活性剤、例えばカチオン性、アニオン性及び両性イオン界面活性剤、例えば脂肪酸塩、胆汁酸塩、リン脂質、リン酸エステル、カルボン酸塩、硫酸塩及びスルフォン酸塩等。
【0064】
界面活性剤又は界面活性剤の混合物が、本発明の組成物又は固体剤形中に存在する場合には、界面活性剤(複数)の濃度は、通常、約0.1〜80% w/w、例えば約0.1〜約20% w/w、約0.1〜約15% w/w、約0.5〜約10% w/w、又は約0.10〜約80% w/w、例えば約10〜約70% w/w、約20〜約60% w/w、又は約30〜約50% w/wの範囲である。
【0065】
本発明の具体的局面では、1以上の薬学的に許容される賦形剤の少なくとも1つは、ケイ酸もしくは誘導体又はその塩、例えばケイ酸塩、二酸化ケイ素及びそのポリマー;アルミノケイ酸マグネシウム及び/又はアルミノメタケイ酸マグネシウム、ベントナイト、カオリン、三ケイ酸マグネシウム、モンモリロナイト及び/又はサポナイトからなる群より選ばれる。
【0066】
このような材料は、医薬、化粧料及び/又は食品の吸収材料又は油もしくは油状材料として特に有用である。具体的実施態様では、材料は、医薬の吸収材料又は油もしくは油状材料として使用される。吸収材料又は油もしくは油状材料として機能することができる材料は、「油吸収材料」も示す。更に、本文脈では、用語「吸収(sorption)」は、吸収(absorption)及び吸収(adsorption)を示すために使用される。用語の1つが使用されるときはいつでも、吸収(absorption)及び吸収(adsorption)の現象をカバーする意図であると理解されたい。
【0067】
明白なことであるが、薬学的に許容される賦形剤は、薬学的に許容される賦形剤としてのケイ酸又はその誘導体もしくは塩、例えば二酸化ケイ素又はそのポリマーを含んでもよい。使用した品質によるが、二酸化ケイ素は、滑剤でもよく、油状吸収材料でもよい。後者の機能を満たす品質は、最も重要であると考えられる。
【0068】
具体的実施態様では、本発明に従う組成物又は固体剤形は、Aeroperl(登録商標)300(Degussa, Frankfurt, Germanyから入手可能)に対応する性質を有する二酸化ケイ素生成物である薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0069】
本明細書に記載の実施例から判るように、非常に好適な材料は、Aeroperl(登録商標)である(Aeroperl(登録商標)と類似性質又はこの性質に対応する性質を有する材料を含む)。
【0070】
本発明に従う組成物又は剤形中の油状吸収材料の使用は、医薬、化粧料、栄養食品及び/又は食品組成物の調製には非常に有利であり、この組成物は、油又は油状材料を含む。利点の1つは、比較的大量の油又は油状材料を取り込み、更に固体である材料を有することができる点である。従って、本発明に従う油状吸収材料の使用により油又は油状材料の比較的高充填の固体組成物を調製することができる。医薬分野においては、固体組成物中に比較的大量の油又は油状材料を取りこむことができることが利点である。特に、活性物質が、水溶解度(例えば、低水溶解度)、水性媒体中での安定性(すなわち、水性媒体中で崩壊が生じる)、経口生物学的利用能(例えば、低生物学的利用能)等の好適な性質を有さない状況、又は活性物質の制御、遅延、徐放及び/又は律動的送達を得るために、組成物から活性物質の放出を調整することが望ましい状況では、これは利点である。従って、具体的実施態様では、医薬組成物の調製に使用される。
【0071】
固体組成物への加工において使用するための油状吸収材料は、一般的に、油又は油状材料の約5% w/w以上、例えば約10% w/w以上、約15% w/w以上、約20% w/w以上、約25% w/w以上、約30% w/w以上、約35%w/w以上、約40% w/w以上、約45% w/w以上、約50 w/w以上、約55% w/w以上、約60% w/w以上、約65% w/w以上、70%w/w以上、約75% w/w以上、約80% w/w以上、約85% w/w以上、約90% w/w以上又は約95% w/w以上を吸収し、依然として固体材料である。
【0072】
1つの局面では、本発明は、タクロリムス及び/又はそのアナローグと、1以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む粒子形態での医薬組成物に関し、当該医薬組成物は、それを必要としている哺乳動物に経口投与され、少なくとも約1.3のAUC/AUCprograf(登録商標)値を示し、そのAUC値は、類似の条件で決定される。
【0073】
本明細書に記載の実施例から明らかなように、本発明に従う組成物の投与後に得られる生物学的利用能が顕著に改善される。従って、具体的実施態様では、AUC/AUCprograf(登録商標)値は、少なくとも約1.5、例えば約1.75以上、約1.8以上、約1.9以上、約2.0以上、約2.5以上、約2.75以上、約3.0以上、約3.25以上、約3.5以上、約3.75以上、約4.0以上、約4.25以上、約4.5以上、約4.75以上又は約5.0以上であり、そのAUC値は、類似の条件で決定される。
【0074】
本発明に従う医薬組成物の経口投与後に、血漿濃度対時間プロファイルが延長期間を示すと考えられる。この期間は、血漿濃度が重大な望ましくない副作用を招くことなく、治療濃度域(すなわち、血漿濃度が治療効果をもたらす)内に維持される時間である。従って、ピーク濃度の減少が観察される。従って、本発明は、タクロリムス及び1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む粒子形態での医薬組成物に関し、当該医薬組成物は、それを必要としている哺乳動物に経口投与され、Prograf(登録商標)錠剤のCmaxのせいぜい約80%であるCmax、例えばせいぜい約75%、せいぜい約70%、せいぜい約65%、せいぜい約60%、せいぜい約55%、せいぜい約50%、せいぜい約45%又はせいぜい約40%を示す。
【0075】
しかしながら、ピーク濃度の減少は、タクロリムスの血漿濃度が治療濃度域内に維持される限り、治療効果を減少しない。従って、本発明は、W50が少なくとも約2時間、例えば少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、約10時間以上、約11時間以上、約12時間以上、約13時間以上又は約14時間以上である、医薬組成物にも関する。
【0076】
更にその上、本発明に従う組成物は、同一条件下でPrograf(登録商標)よりも低いCdiff= [Cmax- Ct(t=12時間)]を有する。Prograf(登録商標)のCdiff100に設定されるならば、本発明に従う組成物のCdiffは、好ましくは90以下、例えば約85以下、約80以下、約75以下、約70以下、約65以下、約60以下、約55以下、約50以下、約45以下又は約40以下である。
【0077】
本発明の医薬組成物又は剤形を投与する場合には、タクロリムスの十分な取り込みを確実にするための同時食物摂取の必要性は、著しく減少し、又は完全になくなる、と考えられる。
【0078】
従って、本発明の医薬組成物は、より高いタクロリムス生物学的利用能を提供し、1日に投与される投薬単位数を減少させ、食物摂取と関連して投与の必要性を減少又はなくし、医薬組成物のレシピエントにより高度の自由を提供し、その結果、患者受容及び/又はコンプリアンスを著しく改善する。更に、組成物は、副作用、特に高ピーク濃度に関連する副作用(例えば、腎及び神経毒性、下痢、便秘、腹痛、嘔吐等)を著しく減少させ、及びより良い治療をもたらすタクロリムスの延長放出を提供する。
【0079】
タクロリムス組成物の製剤に関する主な挑戦の1つは、逆の食物効果を避けることである。一般的に、タクロリムスは、食物なしで経口投与される場合に、非常に良く吸収される。よって、食物あり又はなしの投与によって生物学的利用能の幅広い変動が見られる。この依存性は、どのくらいの用量が投与されるべきかについての正確な指針を提供することを困難にし、投薬計画についての患者への情報を必要とする。本発明は、逆食物効果が減少される組成物を提供することを目的とする。従って、本発明は、少なくとも約0.85の(AUC摂取/AUC断食)値によって証明されるように、かかる治療を必要としている哺乳動物への組成物の投与後に重大な逆食物効果を示さない組成物を提供するものであり、少なくとも0.74の低い90%信頼限界を示す。
【0080】
より具体的には、本発明に従う医薬組成物は、約0.9以上、例えば、約0.95以上、約0.97以上、又は約1、例えば約1.1以下もしくは約1.2以下の(AUC摂取/AUC断食)値を有する。
【0081】
タクロリムスとは別に、本発明の組成物はまた、治療上、予防上及び/又は診断上活性な物質を更に含む。明らかであるが、タクロリムスと以下の活性物質の少なくとも1つとの組み合わせは本発明の対象内である:器官移植と関連する使用に示される物質、例えばステロイド、カルシニューリン阻害剤及び/又は抗増殖剤。具体例は、プレドニソン、プレドニソロン、メチルプレドニソン、シクロスポリン、マイコフェノレート、アザチオプリン、シロリムウス、エベロリムス、マイコフェノレートナトリウム、及びFTY720(製薬会社Novartisにより開発)。
【0082】
剤形
本発明の有用な剤形は、固体分散体及び/又は固体溶液及び1以上の薬学的に許容される賦形剤、好ましくは単位剤形を含む固体経口剤形である。
【0083】
本発明に従う医薬組成物は、粒子形態であり、そういうもとのとして使用することができる。しかしながら、多くの場合には、顆粒、ペレット・マイクロスフェア、ナノ粒子等の形態で、又は錠剤、カプセル剤及びサシェ剤等を含む固体剤形の形態で組成物を提供することはより慣用的である。
【0084】
本発明に従う固体剤形は、単一単位剤形でよく、又は個々の単位、例えばペレット、ビーズ及び/又は顆粒という多様性を含むポリデポー剤形の形態でよい。
【0085】
剤形は更に、薬学的に許容される添加剤、例えば香料、着色剤、味覚-マスキング剤、pH-調整剤、緩衝剤、保存料、安定剤、抗酸化剤、加湿剤、湿潤剤、表面-活性剤、懸濁剤、吸収促進剤及び放出調整剤を含んでもよい。
【0086】
好ましい実施態様では、剤形は、ケイ酸塩、二酸化ケイ素及びそのポリマーを含むケイ酸又はその誘導体もしくはその塩;及び/又はアルミノケイ酸マグネシウム及び/又はアルミノメタケイ酸マグネシウム、ベントナイト、カオリン、三酸化マグネシウム、モンモリロナイト及び/又はサポナイトを含む。剤形に含まれる特に有用な賦形剤は、Aeroperle(登録商標)300(Degussa, Frankfurt, Germanyより入手可能)に対応する性質を有する任意の二酸化ケイ素である。
【0087】
本発明に従う固体剤形は、上記の粒子形態の医薬組成物を含む。本発明のこの主な局面で開示した詳細及び事項は、本発明の他の局面に必要な変更を加える。従って、粒子形態での医薬組成物に関して本明細書に記載又は請求される、生物学利用能、生物学的利用パラメータでの変化、逆の食物作用の減少、及びタクロリムス及び/又はそのアナローグの放出に関する性質は、本発明に従う固体剤形に類似する。
【0088】
一般的に、粒子形態での医薬組成物の濃度は、剤形の約5〜100% w/w、例えば約10%〜約90% w/w、約15%〜約85% w/w、約20%〜約80%w/w、約25%〜約80% w/w、約30%〜約80% w/w、約35%〜約80%w/w、約40%〜約75% w/w、約45%〜約75% w/w又は約50%〜約70% w/wの範囲である。本発明の1実施態様では、粒子形態の医薬組成物の濃度は、剤形の50% w/w 以上である。
【0089】
本発明に従う固体剤形は、当業者に周知の技術手段によって本発明に従う粒子材料を加工することによって得られる。通常、それは、本明細書に記載の1以上の薬学的に許容される賦形剤の添加を更に含む。
【0090】
本発明に従う組成物又は剤形は、生物学的利用能が増加するような任意の好適な方法で、タクロリムス及び/又はそのアナローグを放出するように設計することができる。従って、活性物質は、作用の開始を亢進させるために比較的迅速に放出する、ゼロ又は1次反応速度論に従うように放出する、又は規定の放出様式を得るために変更された様式で放出することができる。これらの方法の全ては、制御様式であると考えられる。単純な製剤も本発明の範囲内である。
【0091】
Prograf(登録商標)に関する推奨投薬量は、12時間度に、2つに分けた用量で0.1〜0.2 mg/kg/日である。血液レベルをモニターすることはより重要である。1〜3ケ月の典型的レベルは、7〜20 ng/mLであり、4〜12ケ月のレベルは、5〜15 ng/mLである。これは指針値にすぎず、移植及び民族の種類により変動する。以下のデータは、腎移植患者のものである。
【0092】
【表1】

【0093】
本発明の生成物の推奨投薬量は、日に1回、0.02 mg/kg/日〜0.15 mg/kg/日と考えられる。
【0094】
腸内コーティング-徐放
経口タクロリムスの有効性は、タクロリムス放出プロイファイルの好適な設計により大幅に改善することできる。一方、移植拒否を避けるためには比較的高用量のタクロリムスが必要とされるが、治療関連レベルにおいてさえ、副作用が非常に頻繁に述べられる。従って、副作用、例えば吐き気、嘔吐、腎毒性及び神経毒性は、高ピーク血漿濃度と直接関連する。この関連は、イヌで証明された。高ピークレベルを避けるためにより低用量が使用される場合に、用量依存的副作用は、ほとんどある閾値レベルでは起こらず、もし起こったとしてもそれはほとんど述べる程ではない。しかしながら、(生物学的利用能を増加させることなく)用量の減少に因り、治療上有効レベルは短期間維持されるだけである。本発明は、タクロリムスを含む医薬組成物又は在役を提供することによってこの問題を解決し、タクロリムスの放出は高ピーク濃度を避けるように設計され、同時に、組成物は、商業的に入手できるタクロリムス含有剤形に比べて全体的な生物学的利用能が維持され又は増加するように設計される。更に、タクロリムスの放出を遅延することによって、同時にタクロリムスが少なくとも部分的に溶解形態である組成物を提供することによって、胃腸管末端で顕著に吸収することができる。
【0095】
従って、本発明の剤形は、水-混和性ポリマー、水-不溶性ポリマー、油及び油状材料からなる群より選ばれる1以上の放出調整剤を更に含む。
【0096】
水-不溶性ポリマーは、エチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース及びその混合物でよい。水-混和性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマー PVP-PVA、ポリメタクリル酸ポリマー及びポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)及びその混合物からなる群より選ばれるセルロース誘導体でもよい。特に有用なポリメタクリル酸ポリマーの例は、Eudragite(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、Eudragits(登録商標)NE及びEudragit(登録商標)Eである。
【0097】
油又は油状材料は、親水性及び疎水性の油又は油状材料でもよい。
【0098】
親水性の油又は油状材料は、ポリエーテルグリコール、例えば、ポリプロピレングリコール;ポリオキシエチレン:ポリオキシプロピレン;ポロキサマー;ポリグリコール化グリセリド例えばGelucire(登録商標)50/13、Gelucire(登録商標)44/14、Gelucire(登録商標)50/10、Gelucire(登録商標)62/05、及びその混合物でよい。
【0099】
疎水性の油又は油状材料は、少なくとも約20℃の融点を有する。有用な例は、直鎖飽和炭化水素、ソルビタンエステル、パラフィン;脂質及び油、例えばカカオバター、牛脂、ラード、ポリエーテルグリコールステル;高級脂肪酸、例えばステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、高級アルコール、例えばカテコール、ステアリルアルコール、低融点ワックス、例えばモノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、置換及び/又は非置換モノグリセリド、置換及び/又は非置換ジグリセリド、置換及び/又は非置換トリグリセリド、黄色蜂蜜蝋、白蜂蜜蝋、カルナバロウ、日本蝋、酢酸モノグリセリド;NVPポリマー、PVPポリマー、アクリル酸ポリマー、及びその混合物である。
【0100】
油又は油状材料は、ソルビタンエステル、例えばジ-イソステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキ-イソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリ-イソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン又はその混合物でもよい。
【0101】
油又は油状材料は、当然ながら、異なった油又は油状材料の混合物、例えば親水性及び/疎水性材料の混合物を含んでもよい。
【0102】
他の好適な油又は油状材料は、溶媒又は半固体賦形剤、例えばプロピレングリコール、ポリグリコール化グリセリド例えばGelucire(登録商標)44/14、カカオ油、カルバナロウ、植物油例えばアーモンド油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、ゴマ油、大豆油、オリーブ油、ヒマシ油、パーム核油、ピーナッツ油、菜種油、葡萄種油等、水素化植物油例えば水素化ピーナッツ油、水素化核油、水素化綿実油、水素化大豆油、水素化ヒマシ油、水素化ココナッツ油;動物起源の天然脂肪材料、例えば蜜蝋、ラノリン、脂肪アルコール例えばセチル、ステアリル、ミリスチン、パルミチン、ステアリル脂肪アルコール;エステル、例えばステアリン酸グリセロール、ステアリン酸グリコール、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル;液状インターエステル化半合成グリセリド、例えばMiglycol 810/812; アミド又は脂肪酸アルコールアミド、例えばステアアミドエタノール、ジ脂肪ココナッツ酸のエタノールアミド、モノ-及びジ-グリセリドの酢酸エステル、モノ-及びジ-グリセリドのクエン酸エステル、モノ-及びジ-グリセリドの乳酸エステル、モノ-及びジ-グリセリド、脂肪酸のポリ-グリセロールエステル、ポリ-リシノール酸のポリ-グリセロール、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ステアリル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、モノ-及びジ-グリセリドのジアセチル酒石酸エステルでよい。
【0103】
活性成分を胃腸管に送達することにより活性成分の生物学的利用能を増加させる、すなわち胃を通過後に放出が主に起こるようにするために、活性成分の徐放が望まれる。例えば、本発明の剤形は、活性成分の総量のせいぜい約10 w/w%、好ましくはせいぜい約7.5 w/w%、より好ましくはせいぜい約5 w/w%、特に好ましくはせいぜい約2 w/w%を、投与後最初の3時間内、好ましくは2時間内、より好ましくは1時間内、特に約30分内に、それを必要としている哺乳動物への経口投与後に放出するように設計することができる。
【0104】
更に、本発明の固体剤形は、それを必要としている哺乳動物への経口投与において、活性成分の少なくとも約50 w/w%を、24時間以内、好ましくは約20時間以内、より好ましくは約18時間以内、特には約15時間以内、特には約12時間以内に放出する。
【0105】
徐放はある種の腸内コーティングによって主にもたらされる。半透性コーティングはある種の徐放を示すが、それ程十分な「徐」放とはならない。加えて、内容物を放出するにはある時間が必要とされる。本発明が求めるコーティングは、pH依存的コーティングである。この種のコーティングは、あるpHに到達するまで、薬物の放出に非常に抵抗性である。pH値が若干増加する範囲内、すなわち約0.2〜0.4のpHの増加内では、フィルムは変化し、透明になる。
【0106】
従って、本発明の固体剤形は、pH-依存的水溶性を有する水-混和性ポリマーを用いる腸内コーティングの手段によって、活性成分の徐放を示す。胃のpHで比較的不溶性でかつ不浸透性であるが小腸及び結腸のpHではより溶解性でかつ浸透性であるpH-感受性ポリマーの例は、特に限定されないが、ポリアクリルアミド;フタレート誘導体、例えばアミロース酢酸フタレート、酢酸セルロースフタレート、酢酸セルローステレフタレート、酢酸セルロースイソフタレート、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、酢酸ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HMPCP)、メチルセルロースフタレート、メチルセルロース酢酸フタレート、ポリ酢酸ビニルフタレート、ポリ酢酸ビニル水素化フタレート、酢酸セルロースフタレートナトリウム、デンプン酸フタレート(starch acid phthalate)を含む炭水化物の酸フタレート;ポリ酢酸ビニルフタレート(PVAP)を含む他の化合物のフタレート;(酢酸/コハク酸)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、カルボキシメチルセルロース、(酢酸/トリメリット酸)セルロースを含む他のセルロース誘導体;アルギン酸塩;カルボマー;ポリアクリル酸誘導体、例えばアクリル酸及びアクリル酸エステルコポリマー、ポリメタクリル酸及びそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー(例えば、Eudragit(登録商標)L及びEudragite(登録商標)S);スチレン-マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン-マレイン酸ポリ酢酸ビニルフタレートコポリマー、スチレン及びマレイン酸コポリマー;セラック、デンプングリコレート;ポラクリリン;酢酸ビニル及びクロトン酸コポリマー、及びその混合物である。具体的対象となるpH-感受性ポリマーは、セラック;フタレート誘導体、特に酢酸セルロースフタレート、酢酸ポリビニルフタレート及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ポリアクリル酸誘導体、特にアクリル酸及びアクリル酸エステルコポリマーと混合したポリメチルメタクリレート;及び酢酸ビニル及びクロトン酸コポリマーを含む。
【0107】
本発明に従う第1の徐放実施態様は、「pH-依存的被覆剤形」例えば錠剤又はカプセル剤である。錠剤の場合には、例えば固体分散体/溶液中に多粒子生成物としてタクロリムス、例えばHPMCの除放マトリックス、崩壊剤、滑剤及び1以上の薬学的に許容される担体を含む錠剤コア、例えば材料好ましくはポリマーで被覆されているコアを含み、これは、胃のでは実質的に不溶性かつ不透性であり、小腸のpHではより溶解性でかつ透過性である。好ましくは、コーティングポリマーは、pH<5.0では実質的に不溶性かつ不透性であり、pH>5.0では水溶性である。錠剤コアは、約15分以上、好ましくは約30分以上、剤形が胃から出て小腸に滞留するまでに剤形から多の放出が実質的に確実に起こらないようにするために、十分なポリマー量で被覆することができ、その結果、最低限のタクロリムスが十二指腸で放出される。pH-感受性ポリマーと水-不溶性ポリマーとの混合物も使用できる。錠剤は、タンパク質含有錠剤コアの重量の約10%〜約80%を含むポリマー量で被覆される。好ましい錠剤は、タンパク質含有錠剤コアの重量の約15%〜約50%を含むポリマー量で被覆される。
【0108】
胃のpHで非常に不溶性でかつ不浸透性であるが小腸及び結腸のpHではより溶解性でかつ浸透性であるpH-感受性ポリマーは、ポリアクリルアミド;フタレート誘導体、例えば炭水化物の酸フタレート、アミロース酢酸フタレート、酢酸セルロースフタレート、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースフタレート、ポリ酢酸ビニルフタレート、ポリ酢酸ビニル水素化フタレート、酢酸セルロースフタレートナトリウム、デンプン酸フタレート(starch acid phthalate)、スチレン-マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン-マレイン酸ポリ酢酸ビニルフタレートコポリマー、スチレン及びマレイン酸コポリマー、ポリアクリル酸誘導体、例えばアクリル酸及びアクリル酸エステルコポリマー、ポリメタクリル酸及びそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマー、セラック、及び酢酸ビニル及びクロトン酸コポリマーを含む。
【0109】
好ましいpH-感受性ポリマーは、セラック;フタレート誘導体、特に酢酸セルロースフタレート、ポリ酢酸ビニルフタレート及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ポリアクリル酸誘導体、特にアクリル酸及びアクリル酸エステルコポリマーと混合したポリメチルメタクリレート;及び酢酸ビニル及びクロトン酸コポリマーを含む。
【0110】
「pH-依存的被覆錠剤」剤形が胃から出た後、タクロリムスの放出前の遅延時間は、コーティングにおけるEudragit-L(登録商標)及びEudragit-S(登録商標)の相対的量の選択、及びコーティング厚の選択により制御することができる。Eudragit-L(登録商標)フィルムは、pH 6.0を越えると溶解し、Eudragit-S(登録商標)フィルムは、7.0を越えると溶解し、混合物は中間のpHで溶ける。十二指腸のpHが約6.0、結腸のpHが約7.0であるため、Eudragit-L(登録商標)及びEudragit-S(登録商標)の混合物からなるコーティングは、十二指腸をタクロリムスから保護する。タクロリムス含有「pH-依存的被覆錠剤」が結腸に到達するまでにタクロリムスを除放することが望ましい場合には、Eudragit-S(登録商標)は、Dew他(Br. J. Clin. Pharmac. 14 (1982) 405-408)により記載されているように、コーティング材料として使用することができる。剤形が胃から出た後、約15分以上、好ましくは30分以上、タクロリムスを除放するためには、好ましいコーティングは、約9:1〜約1:9のEudragit-L(登録商標)/Eudragit-S(登録商標)、より好ましくは約9:1〜約1:4のEudragit-L(登録商標)/Eudragit-S(登録商標)を含む。コーティングは、非被覆錠剤コアの重量の約3%〜約70%を含んでもよい。好ましくは、コーティングは、錠剤コアの重量の約5%〜約50%を含む。
【0111】
例えばZein又はモノ-/ジ-グリセリド混合物をコーティング材料として使用する場合には、徐放コーティングを有する組成物からの活性物質の放出は、酵素反応でもある。
【0112】
本発明の組成物及び剤形の製造
本発明はまた、本発明の固体分散体及び/又は固体溶液の調製法であって、親水性又は水-混和性ビヒクル中でタクロリムス又はそのアナローグを分散及び/又は溶解して、周囲温度で固体分散体及び/又は固体溶液を得るステップを含む方法を提供する。
【0113】
本発明の医薬組成物は、任意の簡便な方法、例えば顆粒化、混合、スプレイ噴霧等によって調製することができる。有用な方法の例は、国際公開第 03/004001号パンフレットに開示されている凝集制御方法、すなわち粒子サイズの成長を制御することができる方法である。この方法は、活性成分及び溶けたビヒクルを含む第1組成物を第2固体担体上噴霧することを含む。一般的に、溶解ビヒクルは、少なくとも5℃の融点を有するが、この融点は、好ましくはタンパク質の融点未満である。ビヒクルの融点は、10℃〜150℃の範囲でよい。
【0114】
国際公開第 03/004001号パンフレットに開示されている凝集制御方法を用いる利点は、粒子サイズが望ましくない成長をすることなく、比較的大量の溶解物を粒子材料に適用することができることである。
【0115】
固体分散体は、例えば、有機溶媒を使用することによって、又は別の好適な媒体(例えば、室温又は高温で液体である油又は油状材料)中に活性成分を分散もしくは溶解することによっても得られる。
【0116】
固体分散体(溶媒法)は、活性物質及びビヒクル又は担体の一般的有機溶媒中での物理的混合物を溶解し、次いで溶媒を濃縮することによって調製することができる。ビヒクル担体は親水性ポリマーでよい。好適な有機溶媒は、活性物質がその中に溶解する、薬学的に許容される溶媒、例えばメタノール、エタノール、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトン又はその混合物を含む。
【0117】
好適な水溶性担体は、ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマー PVP-PVA(Kollidon VA64)、ポリ-メタクリル酸ポリマー(Eudragit RS, Eudragit RL, Eudragit NE, Eudragit E)及びポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、及びポリ(エチレンオキシド)(PEO)を含む。
【0118】
酸性官能基を含むポリマーは、固体分散体に好適であり、腸内で許容される吸収を提供する好ましいpH範囲で活性物質を放出する。かかるポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HMPCP)、ポリ酢酸ビニルフタレート(PVAP)、(酢酸/コハク酸)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、アルギン酸塩、カルボマー、カルボキシメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー(Eudragit L, Eudragit S)、セラック、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、デンプングリコレート、ポラクリン、酢酸フタル酸メチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルローステレフタレート、酢酸セルロースイソフタレート及びトリメリット酸酢酸セルロースを含む群より選ばれる1以上でよい。
【0119】
固体分散体中の活性物質及びポリマーの量の関係では、ポリマーに対する活性物質の重量比は、約3:1〜約1:20の範囲でよい。しかしながら、約3:1〜約1:5、例えば約1:1〜約1:3のより狭い範囲も使用できる。
【0120】
固体分散体は、好ましくは、スプレイ乾燥方法、凝集制御、凍結乾燥又は担体粒子へのコーティング、又は任意の他の溶媒除去方法によって形成される。乾燥生成物は、分子分散を含む固体分散体及び固体溶液の形態中に存在する活性物質を含む。
【0121】
有機溶媒の使用に代わるものとして、薬物及びポリマーを共粉砕又は高温で押出す(融解押出し)ことができる。
【0122】
固体分散体又は溶液の形態で少なくとも部分的にタクロリムスを含む医薬組成物は、基本的には、当該分野で公知の医薬組成物を調製するための任意の好適な方法を用いて調製することができる。
【0123】
有機溶媒型法を使用せずに、凝集制御法で使用される担体組成物中にタクロリムスを分散及び/又は溶解することによって、タクロリムス及び/又はそのアナローグの固体分散体又は溶液を得てもよい。固体分散体/溶液の安定性を確実にするために、安定化剤等を添加することができる。
【0124】
使用
本発明の固体分散体及び/又は固体溶液、又は本発明の医薬組成物は、固体経口剤形例えば錠剤、カプセル剤又はサシェ剤の調製;顆粒剤、ペレット・マイクロスフェア又はナノ粒子の調製に使用できる。
【0125】
好ましくは、固体分散体又は固体溶液は、迅速放出固体剤形又は徐放固体剤形の調製に使用される。
【0126】
本発明の固体分散体又は固体溶液の他の使用は、局所剤形の調製である。
【0127】
本発明の組成物の更なる利点は、典型的な経口治療に比べて投薬量を増加させて効果的な治療反応を得ることができることである。従って、本発明の固体剤形は、Prograf(登録商標)又は類似の商業的に入手できるタクロリムス含有生成物の形態で投与されるタクロリムスの用量のせいぜい約85 %w/w、例えばせいぜい約80% w/w、せいぜい約75%、せいぜい約70% w/w、せいぜい約65% w/w、せいぜい約60% w/w、せいぜい約55 %w/w又はせいぜい約50% w/wの用量でそれを必要としている哺乳動物に経口投与される場合に、Prograf(登録商標)又は類似の商業的に入手できるタクロリムス含有生成物と基本的に生物的に等価である、と考えられる。
【0128】
本発明の任意のタクロリムス含有剤形、組成物、分散体又は溶液は、タクロリムス治療に対して反応する治療条件を改善する。
【0129】
タクロリムスは、疾患、例えば、器官又は組織例えば心臓、腎臓、肝臓、骨髄、角膜、肺臓、膵臓、小腸、手足、筋肉、神経、椎間板、気管、筋芽細胞、軟骨等の移植による拒絶反応;骨髄移植後の移植片対宿主反応;自己免疫疾患、例えばリウマチ様関節炎、全身性紅斑性狼瘡、ハシモト甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病等;病原性微生物によって起こる感染(例えば、アスペルギルス・フミガーツス、フザリウム・オキシスポラム、トリコフィトン・アステロデス等);炎症性もしくは過増殖性皮膚疾患又は免疫介在疾患の皮膚兆候(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管性水腫、血管炎、紅斑、皮膚好酸球増加症、紅斑性狼瘡、座瘡、及び円形脱毛症);眼の自己免疫疾患(例えば、角結膜炎、春季カタル、ベーチェット病に関連するブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜炎、角膜上皮ジストロフィー、角膜白斑、眼性天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレイブ眼障害、フォークト-コバヤシ-ハラダシンドローム、乾燥性角結膜炎(ドライアイ)、フリクテン症、虹彩毛様体炎、内分泌性眼障害等);可逆閉塞性気道疾患[喘息(例えば、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息及び塵埃喘息)、特に慢性又は常習性喘息(例えば、遅発性喘息及び気道過反応性)気管支炎等;粘膜又は血管炎症(例えば、胃潰瘍、虚血又は血栓性血管外傷、虚血腸管疾患、腸炎、壊死性腸炎、熱傷に関連する腸外傷、ロイコトリエンB4-介在疾患);腸管炎症/アレルギー(例えば、腹腔疾患、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病及び潰瘍性大腸炎);胃腸管から離れた症候を有する食物関連アレルギー疾患(例えば、偏頭痛、鼻炎及び湿疹);腎不全(例えば、腸管性腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群、及び糖尿病性ネフロパシー);神経症(例えば、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎、単発性神経炎、脳梗塞、アルツハイマー症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び神経根障害);頭部損傷、脳内の出血(例えば、クモ膜下出血、脳内出血)、脳血栓症、脳塞栓、心肺停止、卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、高血圧性脳症、脳梗塞];外因性疾患(例えば、甲状腺機能亢進症及びバセドー氏病);血液疾患(例えば、赤芽球癆、再生不良性貧血(aplastic anemia)、再生不良性貧血(hypoplastic anemia)、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、顆粒球減少症、悪性貧血、巨赤芽球性貧血及び赤血球形成不全);骨疾患(例えば、骨粗鬆症s);呼吸器疾患(例えば、サルコイドーシス、肺線維症及び特発性間質性肺炎);皮膚疾患(例えば、皮膚筋炎、白斑、尋常性魚鱗癬、光感受性及び皮膚反応性T-細胞リンパ);循環性疾患(例えば、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎及び心筋症);膠原病(例えば、強皮症、ヴェグナー肉芽腫症及びシェーグレン症候群);脂肪症;好酸球性筋膜炎;歯周病(例えば、皮肉、歯周組織、歯槽骨又は歯のセメント質の損傷);ネフローゼ症候群(例えば、糸球体腎炎);男性型脱毛症、老年脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症及びセザリー症候群;染色体異常関連疾患(例えば、ダウン症候群);アジソン病;活性酸素介在疾患[例えば、器官外傷(例えば、保存、移植に関連する器官(例えば、心臓、肝臓、腎臓、消化管等)の虚血性循環疾患、又は虚血疾患(例えば、血栓症、噴門梗塞等));腸疾患(例えば、内毒素性ショック、偽膜性大腸炎及び薬物又は放射線による大腸炎);腎疾患(例えば、虚血性急性腎不全、慢性腎不全);呼吸器系統疾患(例えば、肺性酸素又は薬物によって起こる中毒(例えば、パラコート、ブレオマイシン等)、肺癌及び肺気腫);眼疾患(例えば、白内障、鉄貯蔵症(鉄沈着眼球)、網膜炎、色素変性症、老人斑、ガラス性傷、角膜のアルカリによる火傷);皮膚炎(例えば、多形性紅斑、線状イムノグロブリンA水疱症、セメント皮膚炎);及び多の疾患(例えば、歯肉炎、)歯周炎、敗血症、膵炎及び環境汚染によって起こる疾患(例えば、大気汚染)、加齢、発癌物質、癌の転移及び高山病]];ヒスタミン放出又はロイコトリエンC4放出によって起こる疾患;血管形成術後の冠動脈再狭窄及び外科手術後の癒着の予防;自己免疫疾患及び炎症症状(例えば、原発性粘膜浮腫、自己免疫萎縮性胃炎、早発閉経、雄性不ねん、若年型糖尿病、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感神経性眼炎、レンズ誘導ブドウ膜炎、特発性白血球減少症、活動性慢性肝炎、特発性肝硬変、板状紅斑性狼瘡、自己免疫精巣炎、関節炎(例えば、変形関節炎)、又は多発性軟骨炎);ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、AIDS;アレルギー性結膜炎;外傷、火傷又は外科手術に因る肥厚性瘢痕及びケロイド、の治療に処方される(又は示唆されてきた)。
【0130】
加えて、三環状マクロライド、例えばタクロリムスは、肝臓再生活性及び/又は肝細胞の肥大及び肥厚化の刺激活性を有する。そのため、本発明の医薬組成物は、肝疾患[例えば、免疫原生疾患(例えば、慢性自己免疫肝疾患、例えば自己免疫肝疾患、原発性胆汁性肝硬変又は硬化性胆管炎)、部分的肝切除、急性肝臓壊死(例えば、毒素、ウイルス性肝炎、ショック又は酸素欠乏症によって起こる壊死)、B型肝炎、非A型非B型肝炎、肝硬変及び肝不全(例えば、劇症肝炎、遅発型肝炎及び「急性から慢性への」肝不全(慢性肝臓疾患における急性肝不全))]の治療及び/又は予防効果を向上させるために有用である。
【0131】
更に、本発明の組成物は、三環状マクロライドの有用な薬理活性、例えば化学療法効果の増大活性、サイトメガウイルス感染活性、抗炎症活性、ペプチジル-プロリルイソメラーゼ又はロタマーゼに対する阻害活性、抗マラリア活性、抗腫瘍活性等のため、様々な疾患の予防及び/又は治療の効果を増加するために有用である。
【0132】
材料及び方法
材料
タクロリムス(Eurotradeにより供給された);バッチ番号 RD 03-111
ラクトース一水和物 200メッシュ(DMVから)
顆粒状酸化ケイ素, Aeroper(登録商標)300(Degussa)
ポリエチレングリコール6000, Pluracole E6000(BASFから)
ポロキサマー188, Pluronic(登録商標)F-68 (BASFから)
モノステアリン酸グリセリル, Rylo(登録商標)MD50, (Danisco Cultorから), 等級Ph. Eur.;バッチ番号 4010056276
アビセル PH200 (微晶質セルロース) (FMCから)
ラクトース DCL 11 (DMVより)
ステアリン酸マグネシウム
クロスカルメロースナトリウム, Ac-Di-Sol(登録商標)(FMCから)
Eudragit(登録商標)L30D. 55(Degussaから);バッチ番号 1220314079
クエン酸トリエチル(Merckから);バッチ番号 RD03-122
消泡剤(Unikemから)
微タルク
【0133】
錠剤、カプセル剤又は顆粒剤のいずれかは、異なった種類のポリマー、例えば、(酢酸コハク酸)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Aqoat)、酢酸フタル酸セルロース CAP、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース HPMCP又はメタクリル酸コポリマー、例えばEudragit L30D、Eudragit 100/S、 Eudragit 100/Lで腸内被覆することができる。
【0134】
In vivo試験のための従来技術であるタクロリムス製剤比較:
Fujisawa Ireland Ltdにより製造されたPrograf(登録商標)硬ゼラチンカプセル剤。
【0135】
【表2】

【0136】
方法
重量変動の決定
本明細書の実施例で調製された錠剤をPh. Eurに従って実施される重量変動試験に供した。
【0137】
平均錠剤硬度の決定
本明細書の実施例で調製された錠剤をSchleuniger Model 6D機器を使用する錠剤硬度試験に供し、機器の一般的教示に従って実行した。
【0138】
崩壊時間の決定
錠剤の崩壊時間は、すなわち粒子又は凝集体に分解する時間は、Ph. Eurに従って決定した。
【0139】
幾何学的重量平均径dgwの決定
幾何学的重量平均径は、空気中で得られた粒子材料(又は出発材料)を分散するレーザー回折の方法を採用することにより決定した。測定は、等価な球面径の分布を記録するSympatec Helos機器で1バールの分散圧で実行した。この分布は、log標準体積-サイズ分布に一致する。
【0140】
本明細書で用いる場合「幾何学的重量平均径」は、log標準体積-サイズ分布の平均径を意味する。
【0141】
In vitro溶解試験
以下の試験方法は、本発明の組成物及び剤形に当てはまる。
【0142】
試験1:USP方法Aに従うin vitro溶解試験、徐放条項(USPパドル法; 回転速度: 50 rpm;37℃; 酸性媒体中で2時間後、媒体をリン酸緩衝液pH 6.8に変えた)。
【0143】
試験2:pH 4.5に調整した水性溶解媒体中でのin vitro溶解試験(pH 4.5に調整した0.005% HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)を含む900 mlの水;37℃;USPパドル法; 回転速度: 50 rpm)。
【0144】
ビーグル犬でのin vivo試験
商業的に入手可能なタクロリムス生成物、すなわちPrograf(登録商標)の生物学的利用能に比べた、本発明の組成物の生物学的利用能を決定する目的でのin vivo試験を、ビーグル犬を使って実行した。
【0145】
各々体重12〜18kg(出発体重)の雌性ビーグル犬を用いて、デンマークで実験を行った。試験は、公開の、非-無作為化交差試験として行った。イヌには、プリンペラン注射5 mg/ml (制吐)で前投薬し、そして0.5〜4 mgのタクロリムスの経口用量を投与した。イヌは投薬前に10時間断食し(水は適宜与えた)、投薬後5時間に餌を与えた(水は適宜与えた)。イヌの体重を考慮することなく、タクロリムスの特定用量を各イヌに投薬した。血液試料を以下の時点で外頸静脈から集めた:投薬前、投薬後1、1.5、2、3,4、6、8、12及び24時間。4 mlの血液を集め、EDTAと混合し、試料を凍結した(-80℃)。血液試料をオンライン抽出LC/MSを用いて分析し、結果をng/mLで示す。
【0146】
決定したタクロリムス全血濃度プロファイルを、薬物動態学ソフトウェアWinNonlin(登録商標)(Pharsight, California; USA)を用いて処理し、薬物動態学パラメータを計算した。全てのデータは用量に調整した。
【0147】
以下の実施例は、本発明の例証の目的で役立つが、本発明の範囲を限定する意図ではない。
【0148】
本発明の医薬組成物及び剤形は、in vitro溶解試験の結果を含む実施例1〜4に示される。ビーグル犬でのin vivo比較実験の結果(血漿濃度)は、実施例5〜6に見られる。
【実施例】
【0149】
実施例 1
生物学的利用能が改善された迅速放出錠剤
錠剤組成:
【0150】
【表3】

【0151】
タクロリムスをポリエチレングリコール6000及びポロキサマー188に(70:30 w/w比で)70℃で溶解した。溶液を流動床Strea-1内で250 gラクトース上に噴霧した。顆粒生成物をシーブズ番号0.7 mmで篩にかけ、Turbulaミササー中で0.5分間、ステアリン酸マグネシウムと混合した。混合物を1 mgの活性成分の8 mm錠剤(カップ状の化合物である200 mg錠剤)に圧縮した。
平均崩壊時間:20分。硬度:45 N。
【0152】
実施例 2
PEG6000/ポロキサマー188に基づく迅速放出錠剤
錠剤組成:
【0153】
【表4】

【0154】
80℃を越える温度でタクロリムスをPEG 6000に溶解した。ポロキサマー188を加え、80℃を越える温度まで溶液を加熱した。流動床Phast FB100中で供給装置Phast FS1.7を用いて、溶液を200gのラクトース一水和物に噴霧した。得られた顆粒をComillシーブ番号1397を通過させ、Turbulaミキサー内で3分間、クロスカルメロースナトリウムと混合した。
【0155】
ステアリン酸マグネシウム及びタルクをシーブ番号300で篩にかけ、Turbulaミキサー内で3分間混合した。Turbulaミキサー内で、顆粒をステアリン酸マグネシウム:タルク(1:9)と0.5分間混合した
【0156】
得られた混合物を2 mgの活性成分の6 mm錠剤(カップ状の化合物である100 mg錠剤)に圧縮した。
平均崩壊時間:7分。硬度:65 N。
【0157】
錠剤を溶解媒体中でin vitro溶解試験に供した:900 mlのpH=4.5に調整した0.005% HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)を含む水性媒体(USPパドル法;回転速度:50 rpm);及び以下の溶解プロファイルを見出した。
【0158】
【表5】

【0159】
実施例 3
実施例2の迅速放出錠剤の腸内コーティング
腸内コーティングは、アクリル酸ポリマーEudragit L30D-55に基づく。Eudragit L30Dは、水をコーティング中に濃縮する場合に、水不溶性フィルムを作る水性ラテックス懸濁液として供給される。ポリマーは、5.0未満のpH値では不溶性であり、6.0を越えるpH値では容易に溶解する。実施例2で述べたようにして調製した錠剤を以下のフィルムコーティング組成物によって被覆した。
【0160】
【表6】

【0161】
使用したフィルムポリマー(Eudragit)の量は、mg フィルムポリマー/cm2 錠剤表面の計算に基づく。腸内コーティングの厚さは80μmであった。使用したフィルム厚の検査は、デジタルマイクロメーターによる錠剤高の増加の測定に基づく。フィルムコーティング処理は、インレット空気温度50℃、インレット空気流100 cbm/時間、生成物温度38℃及び供給速度15 g/分で、Wurster様インサートを備えたPhast FB100流動床中で実行した。
【0162】
被覆錠剤を30℃で48時間、オーブンで養生した。あるいは、被覆錠剤は40℃、24時間でより効率的に養生することができる。
【0163】
腸内被覆錠剤を2種の異なる溶解媒体/試験を用いてin vitro溶解試験に供した。
【0164】
溶解媒体/試験は以下の条件を使用した:900 mlのpH=4.5に調整した0.005% HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)を含む水性媒体(USPパドル法;回転速度:50 rpm)及び以下の溶解プロファイルを見出した。
【0165】
【表7】

【0166】
溶解媒体/試験は以下の条件を使用した:USP法A、徐放条項(USPパドル法;回転速度:50rpm)、以下の溶解プロファイルを見出した。
【0167】
【表8】

【0168】
実施例 4
以下のタクロリムス製剤を実施例2で述べたようにして調製した。
【0169】
【表9】

【0170】
混合物を2.1 mgの活性成分の6 mm錠剤に圧縮した(カップ状の化合物である100 mg錠剤)。平均錠剤硬度:41 N。
【0171】
実施例 5
イヌにおける迅速放出製剤のin vivo試験
以下のタクロリムス製剤を実施例2で述べたようにして調製した。
【0172】
【表10】

【0173】
66 mgの顆粒を硬ゼラチンカプセル剤に秤量した。
【0174】
ビーグル犬での当該製剤0.5 mgのin vivo試験を、Prograf(登録商標)、4 x 1 mg (Batch番号:1C56050)と比較して、「方法」下で上記のようにして実行し、Prograf(登録商標)、4 x 1 mg (Batch番号:1C56050)と比較して、以下の結果を得た:
製剤投与後のイヌ番号 F1182での血液濃度(ng/mL)は以下である。
【0175】
【表11】

【0176】
AUC(本発明/Prograf)に基づく相対的生物学的利用能:293%。
【0177】
実施例 6
イヌにおける迅速放出製剤のin vivo試験
本発明の以下のタクロリムス製剤を実施例2で述べたようにして調製した。
【0178】
【表12】

【0179】
これを0.5mg活性成分の4mm錠剤に圧縮した(カップ形状の化合物である27mg錠剤)。
【0180】
ビーグル犬での当該製剤0.5 mgのin vivo試験を、Prograf(登録商標)、0.5 mgカプセル剤(Batch番号:OC5120D)と比較して、「方法」下で上記のようにして実行し、以下の結果を得た:
製剤投与後のイヌ番号 1での血液濃度(ng/mL)は以下である。
【0181】
【表13】

【0182】
AUC(本発明/Prograf)に基づく相対的生物学的利用能:742%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性又は水-混和性ビヒクルに分散又は溶解されたタクロリムス及びそのアナローグから選ばれる活性成分を含む固体分散体であって、当該ビヒクルの融点が少なくとも20℃であり、かつ当該活性成分が約0.01 w/w%〜約15 w/w%の濃度でその中に存在して、周囲温度で固体分散体又は固体溶液を形成する、前記固体分散体。
【請求項2】
前記アナローグが、タクロリムス活性と少なくとも同等の薬理活性及び/又は治療的活性を示す、請求項1記載の固形分散体。
【請求項3】
前記活性成分が、前記ビヒクルに部分的に溶解して、周囲温度で固体分散体及び固体溶液の混合物を形成する、請求項1記載の固体分散体。
【請求項4】
前記活性成分が、前記ビヒクルに完全に溶解して、周囲温度で固体溶液を形成する、請求項1記載の固体分散体。
【請求項5】
前記親水性又は水-混和性ビヒクルが、少なくとも30℃の融点を有する、請求項1記載の固体分散体。
【請求項6】
親水性又は水-混和性ビヒクル中の前記活性成分の濃度が、せいぜい10 w/w%である、請求項1記載の固体分散体。
【請求項7】
前記親水性又は水-混和性ビヒクル中の前記活性成分の濃度が、少なくとも約0.05 w/w%である、請求項1記載の固体分散体。
【請求項8】
水溶性溶解媒体を用いるUSPに従う任意の溶解試験で試験した時、前記活性医薬成分の少なくとも50 w/w%が約30分以内に放出される、請求項1記載の固体分散体。
【請求項9】
水溶性溶解媒体を用いるUSPに従う任意の溶解試験で試験した時、前記活性医薬成分の少なくとも75 w/w%が約40分以内に放出される、請求項1記載の固体分散体。
【請求項10】
水溶性溶解媒体を用いるUSPに従う任意の溶解試験で試験した時、前記活性医薬成分の少なくとも95 w/w%が約60分以内に放出される、請求項1記載の固体分散体。
【請求項11】
前記親水性又は水-混和性ビヒクルが、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオキシド、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリ-イプシロンカプロラクトン、ポリグリコール化グリセリド、例えばGelucire(登録商標)、及びその混合物から選ばれる、請求項1記載の固体分散体。
【請求項12】
前記親水性又は水-混和性ビヒクルが、ポリビニルピロリドン、ポリビニル-ポリ酢酸ビニルコポリマー(PVP-PVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸ポリマー(Eudragit RS; Eudragit RL、Eudragit NE、Eudragit E)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースを含むセルロース誘導体、ペクチン、シクロデキストリン、ガラクトマンナン、アルギニン酸、カラギーナン、キサンタンガム及びその混合物からなる群より選ばれる、請求項1記載の固体分散体。
【請求項13】
前記ビヒクルが、ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1記載の固体分散体。
【請求項14】
前記ポリエチレングリコールが、少なくとも1500の平均分子量を有する、請求項13記載の固体分散体。
【請求項15】
2以上の親水性又は水-混和性ビヒクルの混合物を含む、請求項1記載の固体分散体。
【請求項16】
前記混合物が、ポリエチレングリコール及びポロキサマーを、1:3〜10:1、好ましくは1: 1〜5:1、より好ましくは3:2〜4:1、特に2: 1〜3:1、特に約7:3の割合で含む、請求項15記載の固体分散体。
【請求項17】
前記ポリキサマーがポロキサマー188である、請求項16記載の固体分散体。
【請求項18】
前記ポリエチレングリコールが、約6000の平均分子量(PEG 6000)を有する、請求項16記載の固体分散体。
【請求項19】
請求項1記載の固体分散体及び1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項20】
前記薬学的に許容される賦形剤が、充填剤、崩壊剤、結合剤及び滑剤からなる群より選ばれる、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
粒子形態、例えば粉末形態である、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記粒子が、約10 μm〜約2000 μm、好ましくは約20 μm〜約2000 μm、特に約50 μm〜約300 μmの幾何重量平均径dgwを有する、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記粒子が、約50 μm〜約300 μmの幾何重量平均径dgwを有する、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項24】
固形経口剤形である、請求項19記載の医薬組成物を含む剤形。
【請求項25】
単位剤形である、請求項24記載の剤形。
【請求項26】
香料、着色剤、味覚マスキング剤、pH-調整剤、緩衝剤、保存料、安定剤、抗酸化剤、加湿剤、湿度調整剤、表面活性剤、懸濁剤、吸収促進剤及び放出調整剤からなる群より選ばれる薬学的に許容される添加剤を更に含む、請求項24記載の剤形。
【請求項27】
少なくと1つの薬学的に許容される賦形剤が、ケイ酸塩、二酸化ケイ素及びそのポリマー;ケイ酸アルミニウム・マグネシウム及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ベントナイト、カオリン、三ケイ酸マグネシウム、モンモリロナイト及び/又はサポナイトを含む、ケイ酸もしくはその誘導体又はその塩からなる群より選ばれる、請求項24記載の剤形。
【請求項28】
少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤が、ケイ酸もしくはその誘導体又はその塩である、請求項24記載の剤形。
【請求項29】
少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤が、二酸化ケイ素又はそのポリマーである、請求項24記載の剤形。
【請求項30】
前記二酸化ケイ素生成物が、(Degussa, Frankfurt, Germanyから入手できる) Aeroperle(登録商標)300に対応する性質を有する、請求項29記載の剤形。
【請求項31】
水-混和性ポリマー、水不溶性ポリマー、油及び油材料からなる群より選ばれる1以上の放出調整剤を含む、請求項26記載の剤形。
【請求項32】
前記水不溶性ポリマーが、エチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース及びその混合物からなる群より選ばれる、請求項31記載の剤形。
【請求項33】
前記油又は油材料が、親水性及び疎水性油又は油材料からなる群より選ばれる、請求項31記載の剤形。
【請求項34】
前記油又は油材料が親水性であり、かつ、ポリエーテルグリコール、例えばポリプロピレングリコール;ポリオキシエチレン;ポリオキシプロピレン;ポリキサマー;ポリグリコール化グリセリド例えばGelucires(登録商標)及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項31記載の剤形。
【請求項35】
Gelucire(登録商標)が、Gelucire(登録商標)50/13、Gelucire(登録商標)44/14等、Gelucire(登録商標)50/10、Gelucire(登録商標)62/05及びそれらの組み合わせから選ばれる、請求項34記載の剤形。
【請求項36】
前記油又は油状材料が疎水性であり、かつ、直鎖飽和炭化水素、ソルビタンエステル、パラフィン;脂質及油、例えばカカオバター、牛脂、ラード、ポリエーテルグリコールエステル;高級脂肪酸、例えばステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、高級アルコール、例えばセタノール、ステアリルアルコール、低沸点ワックス、例えばモノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、水素化獣脂、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、置換及び/又は非置換モノグリセリド、置換及び/又は非置換ジグリセリド、置換及び/又は非置換トリグリセリド、黄蜜蝋、白蜜蝋、カルナバロウ、カストルワックス、日本蝋、酢酸モノグリセリド;NVPポリマー、PVPポリマー、アクリル酸ポリマー、及びその混合物からなる群より選ばれる、請求項31記載の剤形。
【請求項37】
前記油又は油状疎水性材料が少なくとも20℃の融点を有する、請求項36記載の剤形。
【請求項38】
前記水-混和性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマーPVP-PVA、ポリメタクリル酸ポリマー及びポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、及びその混合物からなる群より選ばれるセルロース誘導体である、請求項31記載の剤形。
【請求項39】
前記ポリメタクリル酸ポリマーが、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)NE及びEudragit(登録商標)Eから選ばれる、請求項38記載の剤形。
【請求項40】
pH依存的水溶解度を有する水-混和性ポリマーを用いて腸内被覆する、請求項31記載の剤形。
【請求項41】
前記水-混和性ポリマーが、ポリアクリルアミド;フタレート誘導体、例えばアミロース酢酸フタレート、酢酸セルローステレフタレート、酢酸セルロースイソフタレート、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HMPCP)、メチルセルロースフタレート、メチルセルロース酢酸フタレート、ポリ酢酸ビニルフタレート、ポリ酢酸ビニル水素化フタレート、セルロース酢酸フタレートナトリウム、デンプン酸フタレートを含む炭水化物の酸フタレート;ポリ酢酸ビニルフタレート(PVAP)を含む他の化合物のフタレート;(酢酸/コハク酸)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、カルボキシメチルセルロース、(酢酸/トリメリット酸)セルロースを含む他のセルロース誘導体;アルギン酸塩;カルボマー;ポリアクリル酸誘導体、例えばアクリル酸及びアクリル酸エステルコポリマー、ポリメタクリル酸及びそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー(例えば、Eudragit(登録商標)L及びEudragite(登録商標)S);スチレン-マレイン酸ジブチルフタレートコポリマー、スチレン-マレイン酸ポリ酢酸ビニルフタレートコポリマー、スチレン及びマレイン酸コポリマー;セラック、デンプングリコレート;ポラクリリン;酢酸ビニル及びクロトン酸コポリマー、及びその混合物からなる群より選ばれる、請求項40記載の剤形。
【請求項42】
それを必要とする哺乳動物への経口投与において、活性成分の総量のせいぜい約10 w/w%、好ましくはせいぜい約7.5 w/w%、より好ましくはせいぜい約5 w/w%、特に好ましくはせいぜい約2 w/w%を、投与後の最初の3時間以内、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、特に好ましくは約30分以内で放出する、請求項40記載の剤形。
【請求項43】
Prograf(登録商標)又は類似の商業的に入手できるタクロリムス含有生成物の形態で投与されるタクロリムスの用量のせいぜい約85% w/wである用量で投与されるときに、それを必要とする哺乳動物への経口投与における前記固体剤形が、Prograf(登録商標)又は類似の商業的に入手できるタクロリムス含有生成物と基本的に生物学的に同等である、請求項24記載の剤形。
【請求項44】
前記固体剤形が、それを必要とする哺乳動物への投与において、24時間以内に、好ましくは約20時間以内に、より好ましくは約18時間以内に、特に好ましくは約15時間以内に、特には12時間以内に、活性成分の少なくとも約50% w/wを放出する、請求項24記載の剤形。
【請求項45】
タクロリムスの経口生物学的利用能を高めるための、請求項1記載の固形分散体の使用。
【請求項46】
固形経口剤形、例えば錠剤、カプセル剤又はサシェ剤の調製のための、請求項1記載の固体分散体の使用。
【請求項47】
顆粒剤、ペレット・マイクロスフェア又はナノ粒子の調製のための、請求項1記載の固体分散体の使用。
【請求項48】
迅速放出固体剤形の調製のための、請求項1記載の固体分散体の使用。
【請求項49】
徐放固体剤形の調製のための、請求項1記載の固体分散体の使用。
【請求項50】
局所剤形の調製のための、請求項1記載の固体分散体の使用。
【請求項51】
親水性又は水-混和性ビヒクル中にタクロリムス又はそのアナローグを分散及び/又は溶解して、周囲温度で固体分散体及び/又は固体溶液を得るステップを含む、請求項1記載の固体分散体の製造方法。

【公表番号】特表2007−504103(P2007−504103A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524227(P2006−524227)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000574
【国際公開番号】WO2005/020994
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506068276)ライフサイクル ファーマ アクティーゼルスカブ (5)
【Fターム(参考)】