タグ付け試薬およびLC−MSワークフローを用いた、アミノ酸およびアミン含有化合物の分析

複数の質量差タグ付け試薬を使用して、アミン含有化合物中のアミン官能基を標識する。標識された分析物は、逆相カラム上の明確な保持時間、及び明確な質量を有する。高エネルギー衝突下では、レポーター基を生成することができ、各レポーター基に対して検出された強度又はピーク面積を定量化に使用することができる。試薬の例示的な1セットは、それぞれ(113、117及び121)原子質量単位のレポーター基を有する、それぞれ(140)原子質量単位、(144)原子質量単位及び(148)原子質量単位のタグ付け重量を有する、3種類の質量差試薬からなる1セットを含む。質量差試薬の各々を含むパッケージも提供され、パッケージは、個別の容器、例えば、異なる試薬の各々に対する容器を含むことができる。パッケージは、それぞれ既知濃度のそれぞれ既知のアミン含有化合物を各々含む、1種類以上の標準物質を含むこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年12月15日に出願された米国仮特許出願第61/286,491号の優先権の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
分野
本教示は、質量分析法及び質量分析法に有用であるタグ付け試薬の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
アミン含有化合物を分析する方法は公知であるが、アミン含有化合物の相対及び絶対的定量化方法を提供することが望ましい。以前の方法は、感度が低く、H、15C又は15N同位体含有アミノ酸標準物質を必要とし、及び/又は別の同位体標識標準物質を必要とする。これらの欠点を克服する、アミン含有化合物を定量化する方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
種々の実施形態によれば、本教示の方法は、アミン含有化合物のアミン官能基を標識する質量差、質量分析法(MS:mass spectrometry)タグ付け試薬を利用する。標識された分析物は、逆相カラム上の明確な保持時間、及び明確な質量を有することができる。高エネルギー衝突下では、レポーター基が生成され得る。各レポーター基に対して検出された強度又はピーク面積を定量化に使用することができる。
【0005】
本教示の種々の実施形態によって提供及び/又は使用することができる複数の例示的な質量差試薬を図1A〜1Iに示す。本教示の種々の実施形態によるMSタグ付け試薬の例示的1セットは、例えば、タグ付け重量が140原子質量単位の第1の試薬、タグ付け重量が144原子質量単位の第2の試薬、及びタグ付け重量が148原子質量単位の第3の試薬を含む、3種類の質量差試薬からなる1セットを含む。これらのタグのMS/MSにおけるレポーターイオンは、それぞれ113、117及び121原子質量単位である。一部の実施形態においては、かかるセットは、ひとまとめにされた図1A、1E及び1Iに示す試薬を含む。
【0006】
一部の実施形態においては、異なる試薬の各々を含むパッケージが提供され、パッケージは、個別の容器、例えば、異なる試薬の各々に対する容器を含むことができる。例えば既知濃度の既知アミン含有化合物を各々含む、1種類以上の標準物質を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1A〜1Iは、化学的に同一であるが、互いに質量が異なり、1セットのタグ付け試薬を形成するのに使用することができる、9種類の試薬を示す。
【図2】図2は、本教示の種々の実施形態による一般的タグ付け反応を示す反応スキームである。
【図3】図3は、本教示の種々の実施形態による2構成単位(two−plex)アッセイにおける相対及び絶対的定量化に関係した種々のステップを示す模式的フローチャートである。
【図4】図4は、本教示の種々の実施形態による3構成単位(three−plex)アッセイにおける相対及び絶対的定量化に関係した種々のステップを示す模式的フローチャートである。
【図5】図5は、本教示の種々の実施形態による血漿対照分析の精度及び確度を示す棒グラフである。
【図6】図6は、本教示の種々の実施形態による、乾燥スポット分析プロトコルによる血漿対照と比較した溶液中の血漿対照の比較を示す棒グラフである。
【図7】図7は、本教示の種々の実施形態による、115、117及び121試薬で標識され、次いで内部標準と一緒に混合された3個の同一対照血漿試料の各々の濃度を示す棒グラフである。
【図8】図8は、本教示の種々の実施形態による尿対照分析の精度及び確度を示す棒グラフである。
【図9】図9は、生体アミンのカダベリン、プトレシン、フェニルエチルアミン及びチラミンの量、及びそれらが温度上昇とともに増加して腐敗を示す仕方を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
種々の実施形態によれば、本教示は、アミン含有化合物の定量化方法を提供する。この方法は、多種多様なアミン含有化合物の定量化に使用することができるが、本教示は、アミノ酸の定量化に関連して特に例示される。一部の実施形態においては、試薬及び方法は、2構成単位、3構成単位及び他の複数構成単位(multi−plex)アッセイにおける相対及び絶対的定量化に使用することができる。
【0009】
種々の実施形態によれば、複数の質量分析法(MS)タグ付け試薬が、1種類以上のアミン含有化合物にタグをつけるために提供される。その複数は、セットとしてひとまとめにされても、別々にパッケージされても、又は種々の組合せでパッケージされてもよい。試薬は、ある化学構造と第1の質量を有する、第1のタグ付け試薬を含むことができる。この化学構造は、アミン含有化合物のアミン官能基の窒素原子に結合する反応性を有する部分を含むことができる。例示的な反応性部分は、カルボニル部分とのエステル結合(linkage)を含むことができる。アミノ含有化合物のアミン官能基の窒素原子は、タグの活性エステルと反応して、このタグとのアミド結合(linkage)を形成することができる。水素原子は、第一級又は第二級アミンの水素原子であり得る。この結合の形成(binding of the linkage)は、ヒドロキシル化部分、例えばヒドロキシル化スクシンイミドを含む遊離部分又は脱離基の遊離をもたらし得る。
【0010】
複数のMSタグ付け試薬は、第1のタグ付け試薬と同じ化学構造を有するが第1のタグ付け試薬とは異なる原子質量を有する、第2のタグ付け試薬も含む。第2のタグ付け試薬の質量は、第1のタグ付け試薬の質量とは1原子質量単位以上異なり得る。例示的一実施形態においては、第1のタグ付け試薬は、例えば、炭素原子、窒素原子、水素原子及び/又は酸素原子を含むことができるが、第2のタグ付け試薬においては、同じ炭素原子、窒素原子、水素原子又は酸素原子をH、13C、15N又は18O同位体で置換することができる。上記化学構造が2個の炭素原子、水素原子及び/又は窒素原子、及び/又は少なくとも1個の酸素原子を含む場合、第2のタグ付け試薬は2個のH、13C若しくは15N同位体又は1個の18O同位体を含むことができ、したがって第1のタグ付け試薬の質量よりも2原子単位多い質量を有する。一部の実施形態においては、第1のタグ付け試薬は同位体を含むことができ、第2のタグ付け試薬は該同位体を含まないことができ、第1のタグ付け試薬は、複数のタグ付け試薬のうち最小質量を有する必要はない。一部の実施形態においては、複数の中の各タグ付け試薬は、少なくとも1個の同位体を含む。
【0011】
複数のMSタグ付け試薬は、さらに、1個以上の追加のタグ付け試薬を含むことができ、各々は、第1及び第2のタグ付け試薬と同じ化学構造を有するが、第1のタグ付け試薬の質量及び第2のタグ付け試薬の質量とは1原子質量単位以上異なる質量を有する。例示的な複数のMSタグ付け試薬を図1A〜1Iに示す。図1A〜1Iは、9種類の異なるMSタグ付け試薬を示し、各々は、他と同じ化学構造を有するが、他とは異なる原子質量を有する。図1Aに示す試薬のタグ付け質量は140原子質量単位(amu)であり、図1B〜1Iに示す試薬のタグ付け質量は、各々1amuずつ大きくなり、図1Iに示す試薬のタグ付け質量は148amuである。図1Aに示す試薬でタグをつけられた化合物のMS/MS断片化で生成されるレポーターイオンの質量は113原子質量単位(amu)であり、図1B〜1Iに示す試薬でタグをつけられた化合物のMS/MS断片化で生成されるレポーターイオンの質量は各々1amuずつ大きくなり、図1Iに示す試薬から生成されるレポーターイオンのタグ付け質量は121amuである。図から分かるように、異なる重量は、異なる同位体の使用に起因すると考えられる。
【0012】
種々の実施形態によれば、1種類以上のアミン含有化合物の定量化のためのキットが提供される。キットは、例えば個別の容器に各々貯蔵された、本明細書に記載の1種類以上の、質量が異なるタグ付け試薬を含むことができる。一部の実施形態においては、キットは、箱、覆い(envelope)、バッグ又は他の外装容器を含むことができ、その中に、異なるタグ付け試薬用の貯蔵された個別容器を置くことができる。一部の実施形態においては、キットは、上記方法の実施に有用である緩衝剤及び種々の試薬を含むことができる。一部の実施形態においては、キットは、複数のMSタグ付け試薬を含むことができ、タグ付け試薬の各々は、他のタグ付け試薬の原子質量とは2原子質量単位以上異なる原子質量を有する。例として、タグ付け部分の質量がそれぞれ140、144及び148原子質量単位である、図1Aに示す試薬、図1Eに示す試薬及び図1Iに示す試薬を含むキットを提供することができる。一部の実施形態においては、複数のタグ付け試薬は、各々が複数の中の他の試薬とは3原子質量単位以上、例えば4原子質量単位以上異なる質量を有する、2種類以上のタグ付け試薬を含むことができる。
【0013】
図1A〜1Iに示すように、複数のMSタグ付け試薬は、すべて同じ化学構造を有する、N−アルキルピペリゼン(piperizene)酢酸の異なる重量のスクシンイミドエステルを含むことができる。示した特定の実施形態においては、タグ付け試薬の各々は、N−メチルピペリゼン酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含む。タグ付け部分の一例として、上記化学構造のN−メチルピペリゼンカルボニル部分は、アミン含有化合物と反応してアミン含有化合物にタグをつけるものである。この例示的タグ付け反応の一般的反応スキームは、種々の実施形態に従って、図2に示される。化学構造の残りは、アミン含有化合物のアミン部分から得られる水素と一緒に、N−ヒドロキシスクシンイミド部分として遊離又は脱離する。タグ付け反応中に遊離する部分は、本明細書では遊離部分と称するものの一例である。アミノ含有化合物のアミン官能基の窒素原子は、タグの活性エステルと反応して、タグとのアミド結合を形成することができる。
【0014】
本発明の種々の実施形態に従って使用することができる別の例示的なタグ付け試薬、タグ付け部分及び遊離部分としては、例えば、参照によりその全体を本明細書に援用する米国特許第7,195,751号B2に記載のものが挙げられる。
【0015】
使用時、複数の中の第1のタグ付け試薬を、キット中のタグ付け試薬と一緒に含まれても含まれなくてもよい標準物質に接触させることができる。標準物質は、既知のアミン含有化合物、例えば、既知濃度の前もってタグをつけられたアミン含有化合物を含むことができる。接触は、第1のタグ付け試薬と標準物質の反応に有利な条件下で行うことができる。例えば、反応は、標準物質を上記エステルのカルボニルN−アルキルピペリゼン部分に結合させる化学反応を含むことができる。反応は、上記エステルのN−ヒドロキシスクシンイミド部分の遊離をもたらし得る。
【0016】
さらに、使用時、複数の中の第2のタグ付け試薬を、未知濃度の同じアミン含有化合物を含む試料と接触させることができる。図3に関して以下に示すように、基準物質と試料とのタグを付けられたアミン含有化合物を混合し、分析して、試料中のアミン含有化合物の濃度を測定することができる。分析は、混合物を分離して、別々の分析物を形成する工程、及び別々の分析物を分析する工程を含むことができる。使用可能な分離方法としては、ガスクロマトグラフ法、液体クロマトグラフ法、HPLC法、他のクロマトグラフ法、電気泳動法、質量差分離法(mass differential separation method)などが挙げられる。例示的一実施形態においては、液体クロマトグラフィーを使用して、混合物中の種々の分析物を分離し、これによって別々の分析物を形成する。一部の実施形態においては、クロマトグラフ分離は、逆相カラム上で前もって形成することができ、カラムから溶出するピークは後続の分析に供され得る。一部の実施形態においては、後続の分析は、質量分析法、またはより具体的にはParent Daughter Ion Transition Monitoring(PDITM)を含むことができる。PDITMの結果を比較することによって、図3及び4に関連して以下により詳細に記述されるように、試料中のアミン含有化合物の濃度を測定することができる。PDITMのより詳細及びその使用は、参照によりその全体を本明細書に援用する米国特許出願公開第2006/0183238号A1に見出すことができる。
【0017】
定量化の例示的一方法を図3に関連して示す。図3は、2構成単位アッセイの相対及び絶対的定量化を示す。図3に記載のように、方法は、既知濃度の既知アミノ酸を含む標準物質の標識化で始めることができる。標準物質は、図1Aに示す構造を有する第1のタグ付け試薬で標識することができる。N−メチルピペリゼン部分は、140原子質量単位のタグ付け重量を与える。次に、試験試料は、標準物質を標識するのに使用された第1のタグ付け試薬と化学的に同一である第2のタグ付け試薬で標識されるが、第2のタグ付け試薬は異なる質量を有する。図3に示す例では、第2のタグ付け試薬は、図1Iに示す試薬を含み、アステリスクで示した位置に同位体13C及び15Nを含む。(同位体のない)図1Aに示す140amu質量の試薬と(8個の同位体を有する)図1Iに示す148amuタグ付け質量の試薬を比較して分かるように、図1Iの試薬のタグ付け質量が図1Aの試薬のタグ付け質量よりも8原子質量単位大きい質量を有する理由を理解することができる。上述したように、図1A〜1Iに示すタグ付け試薬のタグ付け質量はそれぞれ140から148amuである。
【0018】
図3に示した方法の次のステップは、標識された標準物質と標識された試験試料を組み合わせて混合物を形成することを含む。続いて、混合物を、例えば逆相カラム上での、液体クロマトグラフィー(LC)分離などの分離に供する。種々の実施形態においては、特に固有の質量を有する少数の対象分析物が存在する場合、混合物を質量分析計に直接注入することができる。標識された分析物、ここではタグをつけられた又は標識されたアミノ酸は、カラム上の異なる明確な保持時間のために、カラムから別々の時間で溶出する。逆相カラムから溶出したピークは、標識された分析物及び標識された標準物質を含むピークを含む。次に、カラムから溶出した各ピークをParent Daughter Ion Transition Monitoring(PDITM)に供する。標識された試験試料から生成したレポーターシグナルのピーク面積の信号強度の、標識された標準物質から生成したそれに対する比は、試験試料中の分析物の相対濃度を与える。標識された標準物質の濃度が既知の時には、試料中の分析物の特定の濃度を求めることができる。
【0019】
種々の実施形態によれば、既知濃度の複数の既知アミノ酸を有する標準物質が使用される、1種類以上のアミノ酸の絶対的定量化に使用することができる方法が提供される。一部の実施形態においては、複数の標準物質、すなわち試料中の試験しようとする複数の異なるアミノ酸の各々に対する標準物質を有するキット又はパッケージが提供される。
【0020】
相対及び絶対的定量化の別の例示的一方法を図4に関連して示す。図4は、3構成単位アッセイの相対及び絶対的定量化を示す。図4に記載のように、方法は、既知濃度の既知アミノ酸を含む基準又は標準物質の標識化で始めることができる。標準物質は、図1Aに示す構造を有する第1のタグ付け試薬で標識することができる。N−メチルピペリゼン部分は、140原子質量単位のタグ付け重量を与える。次に、試験しようとする2個のアミン含有試料を、標準物質の標識に使用した第1のタグ付け試薬と化学的に同一であるが、質量が異なる第2及び第3のタグ付け試薬でそれぞれ標識する。図4に示す例では、アミン試料1の標識に使用した第2のタグ付け試薬は、図1Iに示す試薬を含み、アステリスクで示した位置に同位体13C及び15Nを含む。(同位体のない)図1Aに示す140amuタグ付け質量の試薬と(8個の同位体を有する)図1Iに示す148amuタグ付け質量の試薬を比較して分かるように、図1Iの試薬の質量が図1Aの試薬よりも8原子質量単位大きい理由を理解することができる。アミン試料2の標識に使用した第3のタグ付け試薬は、図1Eに示す試薬を含み、アステリスクで示した位置に同位体13C及び15Nを含む。(同位体のない)図1Aに示す140amuタグ付け質量の試薬と(4個の同位体を有する)図1Eに示す144amuタグ付け質量の試薬を比較して分かるように、図1Eの試薬の質量が図1Aの試薬よりも4原子質量単位大きい理由を理解することができる。図4に示した方法の次のステップは、標識された標準物質と標識された試験試料を組み合わせて混合物を形成することを含む。続いて、混合物を、例えば逆相カラム上での、液体クロマトグラフィー(LC)分離などの分離に供する。種々の実施形態においては、特に固有の質量を有する少数の対象分析物が存在する場合、混合物を質量分析計に直接注入することができる。標識された分析物、ここではタグをつけられた又は標識されたアミノ酸は、カラム上の異なる明確な保持時間のために、カラムから別々の時間で溶出する。逆相カラムから溶出したピークは、標識された分析物及び標識された標準物質を含むピークを含む。次に、カラムから溶出した各ピークをParent Daughter Ion Transition Monitoring(PDITM)に供する。標識された試験試料から生成したレポーターシグナルのピーク面積の信号強度の、標識された標準物質から生成したそれに対する比は、試験試料中の分析物の相対濃度を与える。標識された標準物質の濃度が既知の時には、試料の各々における各分析物の特定の濃度を求めることができる。
【0021】
本教示のタグ付けケミストリ及び方法は、公知の方法よりも感度を増加させ、H含有、13C含有、15N含有又は18O含有アミノ酸標準物質を必要としない。各分析物は、それ自体の内部標準を有することができる。レポーターシグナルは、標準試料及び試験試料に特異的とすることができる。標識された較正標準を試料に直接添加することによって、内因性分析物を含まないマトリックスを得る必要がなくなる。一部の実施形態においては、PDITMの使用は特異性を増加させ、誤りのリスクを低下させる。試薬の設計は、それをFlashQuant(商標)システム用の良好なツールにする。
【0022】
一部の実施形態においては、タグ付けケミストリ及び方法は、任意の三連四重極機器又はMALDI源を備える任意の機器、例えば、MALDI源を備えるAB Sciex TripleTOF(商標)5600システム、5800MALDI TOF/TOF(商標)システム、4800MALDI TOF/TOF(商標)システム、4700MALDI TOF/TOF(商標)システム又はFlashQuant(商標)システムを含めて、ただしそれだけに限定されない機器で実施することができる。試薬キット、データ解析ソフトウェア及びMSプラットホームは、アミノ酸分析の分析計システムとして一緒に使用することができる。方法は、同様に、他のアミン含有化合物にも使用することができる。
【0023】
本教示の種々の実施形態に従って使用することができる種々の液体クロマトグラフィー及び質量分析法、システム並びにソフトウェアとしては、2009年5月31日に出願された米国仮特許出願第61/182,748号、及び2006年8月17日に公開された米国特許出願公開第2006/0183238号A1に記載のものが挙げられる。これらの参考文献の両方を参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0024】
本教示は、以下の実施例に関連してより十分に理解されるであろう。以下の実施例は、本教示を説明するものであって、限定するものではない。
【実施例】
【0025】
試料調製(試薬標識化プロトコル)
生理学的試料(血漿、血清、尿、脳脊髄液)の標識化
タンパク質の沈殿
生理学的試料40μLを管に移した。4000pmolノルロイシンを含むスルホサリチル酸10μLを添加した。管をボルテックス撹拌して混合し、次いで10,000×gで2分間回転させた。上清10μLを清浄な管に移した。
【0026】
標識化緩衝剤による希釈
800pmolノルバリンを含む標識化緩衝剤40μLを10μL一定分量の上清に上から添加した。管をボルテックス撹拌して混合し、次いで回転させた。上清10μLを清浄な管に移した。この試料を第1のタグ付け試薬で標識した(下記の試料の標識化の項を参照されたい。)。残りの上清を冷蔵した。
【0027】
標識化試薬溶液を調製する
タグ付け試薬Δ8を含む各バイアルを室温で回転させて、溶液をバイアルの底部に移した。各管にすばやく蓋をした。イソプロパノール70μLを各々に添加した。各バイアルに日付をつけた。各バイアルをボルテックス撹拌して溶液を混合し、次いで回転させた。
【0028】
試料の標識化
上記「標識化緩衝剤による希釈」の項の試料希釈上清に、タグ付け試薬Δ8溶液5μLを添加した。未使用のタグ付け試薬Δ8溶液を−15℃以下で貯蔵した。管をボルテックス撹拌して混合し、次いで回転させた。管を室温で少なくとも30分間インキュベートした。次いで、ヒドロキシルアミン5μLを添加し、管を再度ボルテックス撹拌し、回転させた。非標識アロイソロイシン分析の場合、上記「標識化緩衝剤による希釈」の希釈上清5μLを添加した。アロイソロイシン分析に使用されるスルホサリチル酸試薬からの非標識内部標準ノルロイシンを試料とそれまでに混合した。試料を遠心減圧濃縮機中で1時間以下で完全に乾燥させた。乾燥させた標識試料を−15℃以下で貯蔵した。
【0029】
試料調製(試薬標識化プロトコル)
乾燥血斑試料の標識化
典型的な収集プロトコルに従って全血75マイクロリットルをWhatman#903試料収集紙上に点在させることによって血液試料を調製した。乾燥血液ろ紙からの1/8インチ打ち抜き(全血当量3μL)。
【0030】
タンパク質の沈殿
80%アセトニトリル187.5μLを管に添加し、それを30分間振とうした。上清100μLを清浄な管に移し、乾燥させた。
【0031】
標識化緩衝剤による溶解
160pmolノルバリンを含む標識化緩衝剤8μLを乾燥上清に上から添加した。管をボルテックス撹拌して混合し、次いで回転させた。
【0032】
標識化試薬溶液を調製する
タグ付け試薬Δ8を含む各バイアルを室温で回転させて、溶液をバイアルの底部に移した。各管にすばやく蓋をした。イソプロパノール70μLを各々に添加した。各バイアルに日付をつけた。各バイアルをボルテックス撹拌して溶液を混合し、次いで回転させた。
【0033】
試料の標識化
上記「標識化緩衝剤による希釈」の項の試料希釈上清に、タグ付け試薬Δ8溶液5μLを添加した。未使用のタグ付け試薬Δ8溶液を−15℃以下で貯蔵した。管をボルテックス撹拌して混合し、次いで回転させた。管を室温で少なくとも30分間インキュベートした。次いで、ヒドロキシルアミン5μLを添加し、管を再度ボルテックス撹拌し、回転させた。非標識アロイソロイシン分析の場合、上記「標識化緩衝剤による希釈」の希釈上清5μLを添加した。アロイソロイシン分析に使用されるスルホサリチル酸試薬からの非標識内部標準ノルロイシンを試料とそれまでに混合した。試料を遠心減圧濃縮機中で1時間以下で完全に乾燥させた。乾燥させた標識試料を−15℃以下で貯蔵した。
【0034】
LC/MS/MSによる標識アミノ酸の分析
内部標準溶液の調製
AA内部標準のバイアルを回転させて、凍結乾燥材料をバイアルの底部に移した。AA内部標準バイアルラベル上に指定された標準希釈剤量を見つけ(約1.8mL)、標準希釈剤1mLをAA内部標準バイアルに分注し、すべての材料が溶解するまでバイアルを30から60秒増分でボルテックス撹拌し、残りの標準希釈剤(約0.8mL)を添加し、ボルテックス撹拌して混合することによって、AA内部標準の1個のバイアルを再構成して、内部標準溶液を調製した。
【0035】
内部標準溶液の添加
上記「試料の標識化」の項の乾燥試料に、AA内部標準溶液32μLを添加した。管をボルテックス撹拌して混合し、次いで回転させた。標識試料/内部標準混合物を、少量挿入口を備えた自動試料採取装置バイアルに移した。バイアル底部に閉じ込められた潜在的な空気を除去するために、バイアルを軽くたたき、又は回転させた。
【0036】
LC/MS/MS分析
試料をMSシステム特有の取得方法によって流した。注入液各2μLは、試料中のタグ付け試薬Δ8で標識されたアミノ酸、及びAA内部標準の(5ピコモルシスチンを除く)各Δ0標識アミノ酸約10ピコモルを含んだ。試料は、10ピコモルのノルロイシン及びノルバリンも含んだ。ノルロイシンを沈殿ステップ中に試料に導入し、モニターして、沈殿からのアミノ酸の回収を追跡した。ノルバリンを標識化ステップ中に試料に導入し、モニターして、標識化反応の効率を調べた。
【0037】
移動相調製
移動相A
移動相A各1リットルの場合、移動相調節剤A1mLを移動相調節剤B100μL及びMilli−Q水998.9mL又は当量のHPLC等級の水と混合した。
【0038】
移動相B
移動相B各500mLの場合、移動相調節剤A0.5mLを移動相調節剤B50μL及びHPLC等級メタノール499.5mLと混合した。
【0039】
HPLC装置及び条件
以下の装置、パラメータ及び条件を使用した。
【0040】
Agilent1100システム
バイナリポンプG1312A
ウェル−プレート自動試料採取装置G1367A
カラムオーブンG1316A
マイクロ減圧脱気装置G1379B
Agilent1200システム
バイナリポンプG1312A
ウェル−プレート自動試料採取装置G1367B
カラムオーブンG1316A
マイクロ減圧脱気装置G1379B
Shimadzu Prominenceシステム
システム制御装置CBM−20A
(自動パージキット及びセミミクロ勾配ミキサーSUS−20Aを含む)2台のアイソクラティックポンプLC−20AD
オンライン脱気装置DGU−20A3
自動試料採取装置SIL−20AC
カラムオーブンCTO−20AC
分離カラム
AAA C18逆相カラム、5μM、150×4.6mm
ガードカラム
なし
移動相A
水+0.1%ギ酸+0.01%ヘプタフルオロ酪酸
移動相B
メタノール+0.1%ギ酸+0.01%ヘプタフルオロ酪酸。
【0041】
勾配プロファイル−Shimadzu Prominence
【0042】
【表1】

勾配−Agilent1100及び1200シリーズ
【0043】
【表2】

流量:0.8mL/分
カラムオーブン温度:50℃
注入体積:2μL
MS/MS検出
システムAPI3200(商標)、API4000(商標)、3200QTRAP(登録商標)及び4000QTRAP(登録商標)LC/MS/MSについてMS/MS検出を最適化した。以下の条件を使用した。
【0044】
TurboIonSpray(登録商標)イオン源
正極性
スキャンタイプ:MRM
分解能Q1:単位
分解能Q3:単位
イオン源/ガス及び化合物パラメータ
【0045】
【表3】

MRMトランジション、保持時間及びCE値
【0046】
【表4−1】

【0047】
【表4−2】

【0048】
【表4−3】

(3200QTRAP(登録商標)システム上の)aTRAQ(商標)キットを使用したダイナミックレンジ
【0049】
【表5】

各アミノ酸測定の確度(accuracy)を0.01μMから10,000μMまで計算した。ダイナミックレンジを設定した。確度はすべて80%から120%の間であった。ダイナミックレンジは1μM以上〜10,000μM未満であった。
【0050】
血漿対照分析の精度(precision)と確度
対照血漿試料の特徴を従来のニンヒドリンアミノ酸分析法によって調べて、基準範囲を決定した。aTRAQ法は、平均確度103.2%、平均%CV2.9%をもたらした。最も不正確なアミノ酸(Asn、Met及びTrp)は、従来のアミノ酸分析において時折問題を引き起こし得るものである。得られたデータを図5に示す。データは、10回の測定からのものである(各試料の2回の標識化と複数回の測定)。
【0051】
乾燥スポット分析プロトコルによる血漿対照と比較した溶液中の血漿対照
対照血漿を使用して、Whatman#903試料収集紙上で乾燥された試料に使用される代わりの試料調製法を確認した(すなわち、小児血斑)。各点状試料(3μl)の打ち抜き1/8”円盤を、アミノ酸ごとの内部標準を有するaTRAQTMキットを使用して分析した。標準溶液法と代わりのスポット法を並行して実施した。得られたデータを図6に示す。このデータは、各々LC/MS/MSによって3つ組で分析された3個の反復標識化調製物(replicate labeling preparation)(3個の打ち抜き)を表す。図6は、各方法に対する各アミノ酸の濃度を示す。このデータは、分析の溶液法とスポット法の良好な相関を示す。
【0052】
対照血漿の多重分析
3個の同一対照血漿試料を115、117及び121試薬で標識し、次いで113試薬で標識された内部標準と一緒に混合した。単一混合試料を分析し、各試料の濃度を測定した。結果を図7に示す。結果は、異なる試薬で標識された試料間の良好な一致を示す。
【0053】
尿対照分析の精度と確度
尿対照試料は、アミノ酸が既知レベルまで加えられた(spiked)尿マトリックスである。aTRAQ法は、平均確度103.3%、平均%CV2.7%を与えた。得られたデータを図8に示す。データは、10回の測定からのものである(各試料の2回の標識化と複数回の測定)。
【0054】
培地試料中の生体アミン量
【0055】
【表6】

上記表から分かるように、エタノールアミン、プトレシン及びスペルミンのCHO試料における理論値は、それぞれ13.6、0.543及び15.6mg/Lである。
【0056】
サケ腐敗−異なる貯蔵条件における生体アミン濃度
サケの試料を異なる温度で3日間貯蔵し、次いでaTRAQTM試薬で標識し、生体アミン量を測定した。結果を図9に示す。図から分かるように、生体アミンの一部(カダベリン、プトレシン、フェニルエチルアミン及びチラミン)の量は、温度上昇とともに増加し、腐敗を示す。
【0057】
本明細書の考察、及び本明細書に開示する本教示の実施から、本教示の別の実施形態が当業者に明白になるであろう。本明細書及び実施例は、単なる例示とみなすべきものである。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図1H】

【図1I】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上のアミン含有化合物にタグを付けるための複数の質量分析法(MS)タグ付け試薬であって、前記複数のMSタグ付け試薬が、
ある化学構造と第1の質量を有し、前記化学構造がアミン含有化合物のアミン官能基の窒素原子に結合する反応性を有する部分を含む、第1のタグ付け試薬と、
前記第1のタグ付け試薬と同じ化学構造を有し、前記第1の質量とは1原子質量単位以上異なる第2の質量を有する、第2のタグ付け試薬と
を含む、複数の質量分析法(MS)タグ付け試薬。
【請求項2】
前記第1のタグ付け試薬と同じ化学構造を有し、前記第1の質量及び前記第2の質量とは1原子質量単位以上異なる第3の質量を有する、少なくとも第3のタグ付け試薬をさらに含む、請求項1に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項3】
前記第1のタグ付け試薬が第1の容器内に配置され、前記第2のタグ付け試薬が前記第1の容器とは分離した第2の容器内に配置され、前記第1の容器と前記第2の容器の両方が第3の容器内に配置される、請求項1に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項4】
前記第2の質量が前記第1の質量とは2原子質量単位以上異なる、請求項1に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項5】
前記第2の質量が前記第1の質量とは3原子質量単位以上異なり、前記第3の質量が前記第2の質量とは3原子質量単位以上異なる、請求項1に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項6】
前記第1のタグ付け試薬が、既知濃度のアミン含有化合物を含む標準物質と接触しており、前記第2のタグ付け試薬が、未知濃度の前記アミン含有化合物を含む試料と接触している、請求項1に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項7】
前記第1のタグ付け試薬が、N−アルキルピペリゼン酢酸のスクシンイミドエステルを含む、請求項1に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項8】
N−アルキルピペリゼン酢酸の前記スクシンイミドエステルが、N−メチルピペリゼン酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含む、請求項7に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項9】
前記第2のタグ付け試薬が、13C同位体である少なくとも1個の炭素原子を含む、請求項7に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項10】
前記第2のタグ付け試薬が、15N同位体である少なくとも1個の窒素原子を含む、請求項7に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項11】
前記第2のタグ付け試薬が、18O同位体である少なくとも1個の酸素原子を含む、請求項7に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項12】
前記第2のタグ付け試薬が、H同位体である少なくとも1個の水素原子を含む、請求項7に記載の複数のMSタグ付け試薬。
【請求項13】
既知の構造を有するアミン含有化合物を含む標準物質を第1の質量分析法(MS)タグ付け試薬と接触させる工程であって、前記第1のMSタグ付け試薬はある化学構造と第1の質量を有し、前記化学構造はアミン含有化合物のアミン官能基の窒素原子に結合する反応性を有する部分を含む、工程、
前記アミン含有化合物を含む試料を第2のMSタグ付け試薬と接触させる工程であって、前記第2のMSタグ付け試薬は前記第1のMSタグ付け試薬と同じ化学構造を有し、前記第1の質量とは1原子質量単位以上異なる第2の質量を有する、工程
を含む、方法。
【請求項14】
前記標準物質が既知濃度の前記アミン含有化合物を含み、前記試料が未知濃度の前記アミン含有化合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のMSタグ付け試薬と接触した前記標準物質、又はその反応生成物と、前記第2のMSタグ付け試薬と接触した前記試料、又はその反応生成物とを混合して、混合物を形成する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物を液体クロマトグラフィー(LC)分離に供して、分離された分析物を形成する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分離された分析物を溶出させて溶出ピークを形成する工程、及び前記溶出ピークを質量分析に供する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記分離された分析物を溶出させて溶出ピークを形成する工程、及び前記溶出ピークを親娘イオン遷移モニタリング(PDITM)に供する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記PDITMからの結果を比較する工程、及び前記比較に基づいて前記試料中の前記アミン含有化合物の濃度を決定する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記混合物を2構成単位アッセイに供する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記混合物を複数構成単位アッセイに供する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
請求項13に記載の方法であって、前記化学構造がタグ付け部分と遊離部分とを含み、前記化学構造が前記タグ付け部分と前記遊離部分との間の結合を含み、
前記方法が、前記結合において、前記タグ付け部分を前記アミン含有化合物の窒素原子に結合させる工程、及び前記遊離部分を遊離させる工程をさらに含む、方法。
【請求項23】
前記混合物を質量分析計に直接注入する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−514537(P2013−514537A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544758(P2012−544758)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060539
【国際公開番号】WO2011/075530
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】