タグ通信用アンテナ、タグ通信装置、タグ通信システム、タグ通信装置のスキャン調整方法、およびスキャン調整プログラム
【課題】 指向性の強い少数のアンテナで、通信不能部分の無い広い通信領域をカバーできるタグ通信用アンテナを提供する。
【解決手段】 RFIDリーダ/ライタ2は、電波を介してRFIDタグ3と無線通信を行う。RFIDリーダ/ライタ2に用いられるタグ通信用アンテナは、送信する電波のビームをスキャンできるビームスキャンアンテナ40である。ビームは、スキャン方向Scに指向性の強いビームである。ビームのスキャンは、スキャン方向Scを含む面が、最も強い反射波の生じる反射面である床面7と交わるように行われる。
【解決手段】 RFIDリーダ/ライタ2は、電波を介してRFIDタグ3と無線通信を行う。RFIDリーダ/ライタ2に用いられるタグ通信用アンテナは、送信する電波のビームをスキャンできるビームスキャンアンテナ40である。ビームは、スキャン方向Scに指向性の強いビームである。ビームのスキャンは、スキャン方向Scを含む面が、最も強い反射波の生じる反射面である床面7と交わるように行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置、該装置に用いられるタグ通信用アンテナ、タグ通信システム、タグ通信装置のスキャン調整方法、およびスキャン調整プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、RFID(Radio Frequency Identification)タグ(無線タグ)に対し、リーダおよび/またはライタであるタグ通信装置が無線で通信を行うRFID技術が利用されつつある。また、RFIDタグは、バーコードに替わるものとして特に物流の分野において期待を集めており、近い将来において爆発的に普及することが予想されている。
【0003】
RFIDタグおよびタグ通信装置の間の通信方式としては、電磁誘導方式とマイクロ波方式とがある。電磁誘導方式は、125k〜135kHz帯や13.56MHz帯の周波数帯域で利用されている。一方、マイクロ波方式は、2.45GHz帯などの周波数帯域で利用されており、800MHz〜960MHz前後のいわゆるUHF帯での利用が考えられている。
【0004】
現在のところ、電磁誘導方式が普及しつつある。しかしながら、一般に、電磁誘導方式よりもマイクロ波方式の方が通信距離を伸長し易いことと、周波数帯域が高くなるにつれて、RFIDタグのアンテナの寸法を小さくすることができることとから、近い将来、マイクロ波方式の普及が予想されている。このため、マイクロ波方式のRFIDタグおよびタグ通信装置の開発も進められている。
【特許文献1】特開2002−151944号公報(2002年5月24日公開)
【特許文献2】特開平9−5431号公報(1997年1月10日公開)
【特許文献3】特開2002−198722号公報(2002年7月12日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、マイクロ波方式の場合には、電磁誘導方式の場合に比べて、タグ通信装置とRFIDタグとの通信距離を数cm程度から数m程度に伸長し易いため、タグ通信装置がRFIDタグと通信可能な領域である通信領域の拡大が容易である。しかしながら、通信領域を拡大した場合、以下のような問題点が生じる。
【0006】
タグ通信装置のアンテナであるタグ通信用アンテナとしては、無指向性のアンテナまたは指向性の弱いアンテナを利用する場合と、指向性の強いアンテナを利用する場合とが考えられる。例えば、上記特許文献1には指向性の強い八木アンテナを使うRFIDシステムが記載されている。しかしながら、指向性の強いアンテナは、指向性の弱いアンテナに比べて通信領域が狭いので、少数のアンテナで多数のRFIDタグを同時に読み書きできるシステムを構築することは困難である。
【0007】
一方、多数のRFIDタグを同時に読み書きするシステムのアンテナ構成として、一般的に図13および図14に示されるようなアンテナ構成が考えられている。図13は、指向性の弱いアンテナを利用する場合の通信領域を示しており、図14は、指向性の強いアンテナを利用する場合の通信領域を示している。
【0008】
指向性の弱いアンテナを利用する場合、図13に示されるように、少数のアンテナ100で広い通信領域101をカバーすることが可能である。しかしながら、少数のアンテナ100で広い通信領域101をカバーすると、通信領域101内に多数のRFIDタグ102が同時に存在することになる。このため、少数のアンテナ100と多数のRFIDタグ102との間で通信のコリジョン(衝突)が多数発生して、通信の品質が劣化することになる。
【0009】
また、指向性の弱いアンテナを利用する場合、タグ通信装置からの直接波と床面や壁面にて反射した反射波とが干渉するいわゆるマルチパス干渉により、タグ通信装置がRFIDタグと通信できない通信不能部分が通信領域内に発生することになる。この場合、通信領域内で通信できないRFIDタグが発生する可能性があり、望ましくない。さらに、上記マルチパス干渉により、タグ通信装置がRFIDタグと通信できる通信可能部分が通信領域外に発生する可能性が高くなる。このことは、通信領域を所定の領域に限定したい場合に望ましくない。
【0010】
これに対し、通信不能部分が発生しないようにアンテナの位置、方向、出力などの調整を行うことが考えられる。しかしながら、この調整は、通信領域内の各部分で通信が可能であることを確認しながら行う必要があるため、多大な時間および労力が必要となる。
【0011】
一方、図14に示されるように指向性の強いアンテナ110を利用する場合、図13に示されるように指向性の弱いアンテナ100を利用する場合に比べて、1つのアンテナがカバーする通信領域111が狭いので、上記通信のコリジョンの発生を抑えることができ、通信の品質の劣化を抑えることができる。また、指向性の強いアンテナ110を利用する場合、床面や壁面に伝搬する電波の強度を抑えることにより、上記マルチパス干渉により生じる問題を回避することができる。
【0012】
しかしながら、指向性の強いアンテナ110で広い通信領域をカバーするには、図14に示されるように、多数のアンテナが必要となる。さらに、指向性の強いアンテナ110は、指向性の弱いアンテナ100に比べてアンテナの規模が大きくなる。したがって、タグ通信装置のアンテナ部分の規模が著しく増大することになる。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、指向性の強い少数のアンテナで、通信不能部分の無い広い通信領域をカバーできるタグ通信用アンテナなどを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本願発明者は、RFIDシステムのタグ通信用アンテナにビームスキャンアンテナを利用することを考えた。ビームスキャンアンテナは、電波のビームを絞った指向性の強いアンテナであって、ビームをスキャンできるものである。ビームスキャンアンテナは、上記特許文献2・3に記載のように、レーダに利用されることが一般的であるが、RFIDシステムのタグ通信用アンテナとしては未だ利用されていない。そこで、本願発明者は、ビームスキャンアンテナを利用して、ビームの形状、進行方向、スキャン方向などを種々に変更して検討を重ねることにより、以下のような解決手段を案出した。
【0015】
すなわち、本発明に係るタグ通信用アンテナは、電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置に用いられるタグ通信用アンテナであって、送信する電波のビームをスキャンするとともに、上記ビームは、少なくとも一方向に絞られており、上記ビームが絞られている方向のうち少なくとも一方向が、最も強い反射波の生じる反射面と交わることを特徴としている。
【0016】
ここで、ビームがスキャンされると、ビームが絞られている方向が変化するが、変化した方向でも上記反射面と交わるものである。
【0017】
上記の構成によると、送信する電波のビームをスキャンすることが可能なビームスキャンアンテナを利用することにより、指向性の強い通常のアンテナに比べて通信領域を拡大することができる。したがって、少数のアンテナで広い通信領域をカバーすることができる。
【0018】
ところで、マルチパス干渉による通信不能部分は、直接波の電波強度と反射波の電波強度とが同程度である場合に発生する。そこで、本発明に係るタグ通信用アンテナが送信する上記ビームは、少なくとも一方向に絞られており、上記ビームが絞られている方向のうち少なくとも一方向が、上記反射面と交わるようにしている。
【0019】
この場合、上記反射面と交わる方向にビームが絞られるから、上記反射面に垂直な方向にもビームが絞られることになる。この場合、ビームのスキャンを行って、直接波の進行方向と、反射波が反射する前の波の進行方向との何れか一方が、ビームの進行方向と一致するとき、直接波の電波強度と上記反射面からの反射波の電波強度とがそれぞれ変化することになる。このとき、上記通信不能部分にて、直接波の電波強度と上記反射面からの反射波の電波強度とが異なるようになると、マルチパス干渉が抑えられて、タグ通信装置とRFIDタグとの通信が可能となる。したがって、本発明に係るタグ通信用アンテナは、通信不能部分の無い広い通信領域をカバーすることができる。
【0020】
なお、上記ビームが絞られている方向のうち上記反射面と交わる方向を、上記ビームのスキャン方向とすることが望ましい。この場合、ビームが絞られている方向にスキャンが行われるので、所定領域を効果的にスキャンすることができる。
【0021】
また、上記スキャン方向を含む面は上記反射面に略垂直であることが望ましい。この場合、直接波の電波強度と上記反射面からの反射波の電波強度とがそれぞれ効果的に変化するので、マルチパス干渉による通信不能部分が確実に抑えられて、タグ通信装置とRFIDタグとが確実に通信することが可能となる。
【0022】
さらに、上記ビームの進行方向が上記反射面に略平行な方向を含むことが望ましい。ビームの進行方向が反射面に略平行な方向となると、反射面に伝搬する電波の強度が小さくなり、反射波の電波強度も小さくなるので、マルチパス干渉による通信不能部分がさらに確実に抑えられることができる。
【0023】
また、上記ビームは、上記スキャン方向にのみ絞られていることが望ましい。この場合、スキャン方向に狭く、その他の方向に広い形状のビームとなり、このビームがスキャンされるから、1回のスキャンで、図13に示されるような、全方向に指向性の弱いビーム並の通信領域を確保することができる。
【0024】
また、本発明に係るタグ通信用アンテナは、上記の構成において、上記反射面から離間して配置されることを特徴としている。
【0025】
上記構成によると、タグ通信用アンテナと反射面との間に、通信不能部分の抑えられた空間を確保することができ、該空間を通過する多数のRFIDタグと確実に通信することができる。
【0026】
なお、上記離間の距離は、上記ビームの進行方向が上記反射面に向いたときに、上記ビームの進行方向と上記反射面とのなす角と、RFIDタグの読取りに必要な空間と、その必要な空間において通信不能部分が無いこととに基づいて決定されることが望ましい。
【0027】
なお、上記タグ通信用アンテナは、移相器が複数のアンテナ素子に送信する信号の位相を変更することにより、上記ビームをスキャンするものであることが望ましい。この場合、ビームをスキャンするための機械的構成が不要となるので、信頼性を向上させることができる。
【0028】
また、上記送信する電波は、マイクロ波であることが望ましい。マイクロ波とは、周波数が300MHz程度〜300GHz程度の電波をいう。マイクロ波を利用することにより、タグ通信装置とRFIDタグとの通信距離を数m以上に伸長することが容易となる。
【0029】
また、本発明に係るタグ通信装置は、RFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置であって、上記構成のタグ通信用アンテナと、該タグ通信用アンテナから送信する電波のビームのスキャンを制御するスキャン制御手段とを備えることを特徴としている。
【0030】
上記構成のタグ通信装置は、上記構成のタグ通信用アンテナを備えており、スキャン制御手段の制御によりタグ通信用アンテナから送信する電波のビームがスキャンされるので、前述と同様の効果を得ることができる。
【0031】
なお、上記タグ通信用アンテナを複数個備えることが望ましい。この場合、各タグ通信用アンテナのスキャン範囲を狭くできるので、スキャン時間を短くできる。
【0032】
さらに、少なくとも2つの上記タグ通信用アンテナを、最も強い反射波が生じる反射面に略垂直な方向に離間して配置することが望ましい。この場合、ビームの進行方向と上記反射面とのなす角度を小さくできるので、反射波の影響が少なくなり、マルチパス干渉を確実に抑えることができる。
【0033】
ところで、ビームのスキャンは、アンテナの位置を固定してビームの進行方向を変化させるものであるから、スキャンによってRFIDタグと通信可能となる通信領域は、タグ通信用アンテナに近い方が狭く、遠い方が広くなる。このため、タグ通信用アンテナに近い領域には、ビームが到達しないことによる通信不能領域が発生するおそれがある。
【0034】
このため、少なくとも2つの上記タグ通信用アンテナを、対向して配置することが望ましい。この場合、一方のタグ通信用アンテナに近い領域は、対向するタグ通信用アンテナの通信領域となるので、上記通信不能領域が発生することを防止できる。さらに、互いに対向するタグ通信用アンテナを、上記反射面に略垂直な方向にずらして配置すれば、互いの通信領域が重なる領域が少なくなり、複数のタグ通信用アンテナからの電波が混信することを防止できる。
【0035】
また、本発明に係るタグ通信装置は、上記の構成において、上記タグ通信用アンテナを介して上記RFIDタグと無線通信を行う通信手段と、該通信手段が無線通信を完了した上記RFIDタグの数をカウントするカウント手段と、上記タグ通信用アンテナが或るスキャン時間に或るスキャン範囲を或る刻み角でスキャンを行うようにスキャン制御手段に指示し、上記スキャンの間に上記カウント手段がカウントしたRFIDタグの通信完了数を取得し、これを種々のスキャン時間、スキャン範囲、および刻み角について繰り返すことにより、RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を決定することにより、上記ビームのスキャンを調整するスキャン調整手段とをさらに備えることを特徴としている。
【0036】
上記の構成によると、スキャン調整手段が、RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を自動的に調整するので、アンテナ設置時やメインテナンス時に、所望の領域が通信領域となるようにアンテナのチューニングを行うことが容易となる。
【0037】
本発明に係るタグ通信システムは、上記構成のタグ通信装置と、該タグ通信装置のタグ通信用アンテナが送信する電波の反射面に設けられた、反射波の電波強度を低減する反射強度低減体とを備えることを特徴としている。
【0038】
ここで、反射強度低減体としては、例えば、電波をよく吸収する物体である電波吸収体や、電波を拡散反射させる物体である拡散反射体などが挙げられる。
【0039】
上記の構成によると、タグ通信装置のタグ通信用アンテナが送信する電波が反射する反射面のうち、反射強度低減体が設けられた面は、反射波の電波強度が低減するので、反射強度低減体が設けられていない面を、最も強い反射波が生じる反射面として特定することができる。したがって、電波のビーム方向を、最も強い反射波が生じる反射面に垂直な方へ変更することにより、前述と同様の効果を得ることができる。
【0040】
本発明に係るタグ通信装置のビームの調整方法は、上記構成のタグ通信用アンテナが送信する電波のビームのスキャンを調整するスキャン調整方法であって、或るスキャン時間に或るスキャン範囲を或る刻み角で上記スキャンを行うスキャンステップと、上記スキャンの間に無線通信が完了したRFIDタグの通信完了数をカウントするカウントステップと、上記スキャンステップおよびカウントステップを、種々のスキャン時間、スキャン範囲、および刻み角について繰り返す繰返しステップと、該繰返しステップにより、上記RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を決定する決定ステップとを含むことを特徴としている。
【0041】
上記の方法によると、RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を自動的に調整するので、アンテナ設置時やメインテナンス時に、所望の領域が通信領域となるようにアンテナのチューニングを行うことが容易となる。
【0042】
なお、上記タグ通信装置におけるスキャン調整手段を、スキャン調整プログラムによりコンピュータ上で実行させることができる。さらに、上記スキャン調整プログラムをコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で上記スキャン調整プログラムを実行させることができる。
【発明の効果】
【0043】
以上のように、本発明に係るタグ通信用アンテナは、送信する電波のビームをスキャンすることが可能なビームスキャンアンテナを利用することにより、指向性の強い通常のアンテナに比べて通信領域を拡大することができ、少数のアンテナで広い通信領域をカバーできるという効果を奏する。また、ビームのスキャン方向により特定される面が、最も強い反射波の生じる反射面と交わるように、ビームをスキャンすることにより、ビームの進行方向がスキャンによって上記反射面の方へ変化することになるので、上記通信不能部分では、直接波の電波強度と上記反射面からの反射波の電波強度とが異なって、マルチパス干渉が抑えられ、タグ通信装置とRFIDタグとの通信が可能となり、通信不能部分の無い広い通信領域をカバーできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の一実施形態について図1ないし図11に基づいて説明する。図1は、本実施形態であるRFIDシステム(タグ通信システム)の概要を示している。RFIDシステム1は、空港における航空手荷物、物流における荷物、製造工程におけるワーク(中間品)などの物品を非接触で自動的に識別するものである。具体的には、RFIDシステム1は、自動運搬車、ベルトコンベアなどの運搬手段5で運搬される多数の物品4にそれぞれ取り付けられたRFIDタグ3に対し、RFIDリーダ/ライタ(以下、単に「リーダ/ライタ」と称する。)2が無線通信を行ってデータの読み書きを行うものである。
【0045】
本実施形態では、リーダ/ライタ(タグ通信装置)2が送信する電波の周波数帯域は、800MHz〜960MHz前後のいわゆるUHF帯である。これにより、リーダ/ライタ2がRFIDタグ3と通信可能な領域は、リーダ/ライタ2のアンテナから数m程度となる。一般に、UHF帯や2.45GHz帯の電波(radio wave)を利用するマイクロ波方式は、125k〜135kHz帯や13.56MHz帯の電磁誘導を利用する電磁誘導方式に比べて、通信距離を拡大し易いという利点がある。また、UHF帯の電波は、2.4GHz帯の電波に比べて、物陰に回り込み易いという利点がある。
【0046】
RFIDタグ3は、無線通信IC(Integrated Circuit)およびアンテナを備える構成である。一般的なRFIDタグ3は、電池などの電源を有しておらず、リーダ/ライタ2から電波で送電された電力によって回路が動作し、リーダ/ライタ2と無線通信を行う。
【0047】
この場合、リーダ/ライタ2は、数m離れたRFIDタグ3が動作可能な電力を電波で送電する必要があるため、電波の送信出力が数W(ワット)程度と大きい。このため、電波を送信するRFIDシステム1では、リーダ/ライタ2から送信された電波が所定領域からリークすることを低減するEMI(Electro-Magnetic Interference)対策を行う必要がある。また、電波の送信出力が大きいため、リーダ/ライタ2から送信された電波が床7、側壁8、天井9などで反射した反射波の強度も大きく、直接波と反射波とのマルチパス干渉による通信不能部分の発生が問題となる。
【0048】
これらの問題点を回避するため、本実施形態のRFIDシステム1では、リーダ/ライタ2から送信された電波が到達する側壁8および天井9には、上記電波を吸収する電波吸収体や、上記電波を拡散反射させる拡散反射体など、反射波の強度を低減する反射強度低減体6が設けられている。これにより、電波が所定領域からリークすることを低減できるとともに、反射波の強度を低減することができる。
【0049】
電波吸収体の材料としては、EMI対策で利用される公知のものを利用することができ、例えば、抵抗皮膜、ゴムおよびカーボンの複合材、カーボンを付着させた繊維、発泡スチロール、カーボン含有発泡ウレタン、フェライト、カーボン・フェライトの複合材などが挙げられる。また、拡散反射体としては、電波の波長と同程度またはそれ以上の凹凸を有する形状のものや、種々の誘電率を有するものなどが挙げられる。
【0050】
このように、電波吸収体や電波散乱体は、柔らかいものや凸凹したものであるため、人間が移動したり荷物が運搬されたりする床面7に設けることは望ましくない。このため、床面7からの反射波の影響を無視できず、直接波と床面7からの反射波とによるマルチパス干渉が問題となる。
【0051】
これに対し、本実施形態のリーダ/ライタ2は、送信する電波のビームをスキャンすることが可能なビームスキャンアンテナを利用している。これにより、上記ビームの進行方向Pを変更できるので、指向性の強い通常のアンテナに比べて通信領域を拡大することができる。したがって、少数のアンテナで広い通信領域をカバーすることができる。
【0052】
ところで、ビームのスキャン方向Scは、ビームの進行方向Pに対応して変化するので、ビームのスキャンは、スキャン方向Scを含む面によって特定されることになる。例えば、図1の場合では、ビームのスキャン方向Scを含む面は、図面と平行な面となる。本実施形態のリーダ/ライタ2では、ビームのスキャン方向を含む面が、最も強い反射波の生じる反射面である床面7と交わるように、ビームをスキャンしている。
【0053】
この場合、ビームの進行方向Pがスキャンによって床面7の方へ変化することになる。すると、通信領域内の任意の位置で、直接波の電波強度と床面7からの反射波の電波強度とがそれぞれ変化することになる。
【0054】
図2は、リーダ/ライタ2のアンテナから或るRFIDタグ3に、直接送信される直接波DWと、床面7にて反射して送信される反射波RWとを示している。同図(a)(b)は、本実施形態のビームスキャンアンテナ40を利用した場合を示しており、それぞれ、スキャンによってビームの進行方向Pが異なる場合を示している。同図(c)は、従来技術の指向性の弱いアンテナ100を利用した場合を示している。
【0055】
なお、図中では、RFIDタグ3で受信する直接波DWの電波強度と反射波RWの電波強度とが同程度である場合には、直接波DWおよび反射波RWを実線で示す一方、異なる場合には、電波強度の強い方を実線で示し、弱い方を破線で示している。また、ビームの形状を一点鎖線で示している。
【0056】
図2を参照すると、従来の場合は、同図(c)に示されるように、RFIDタグ3が受信する直接波DWの電波強度と反射波RWの電波強度とが同程度である。このため、図示の位置のRFIDタグ3が、マルチパス干渉により直接波DWと反射波RWとが互いに弱め合う場合には、RFIDタグ3は、受信する電波強度が著しく低くなって、リーダ/ライタ2との通信が不能となる。
【0057】
一方、図2(a)に示されるように、ビームのスキャンによりビームの進行方向PにRFIDタグ3が存在する場合には、直接波DWの電波強度が反射波RWの電波強度よりも大きくなる。このため、図示の位置のRFIDタグ3が、マルチパス干渉により直接波DWと反射波RWとが互いに弱め合う場合でも、RFIDタグ3は、受信する直接波DWの電波強度がさほど低くならず、リーダ/ライタ2との通信が可能となる。
【0058】
また、図2(b)に示されるように、ビームのスキャンによりビームの進行方向Pが同図(a)に比べて下方となり、ビームの進行方向Pに、RFIDタグ3の床面7に対する対称位置が存在する場合には、反射波RWの電波強度が直接波DWの電波強度よりも大きくなる。このため、図示の位置のRFIDタグ3が、マルチパス干渉により直接波DWと反射波RWとが互いに弱め合う場合でも、RFIDタグ3は、受信する反射波RWの電波強度がさほど低くならず、リーダ/ライタ2との通信が可能となる。
【0059】
以上より、マルチパス干渉による通信不能部分にて、直接波の電波強度と床面7からの反射波の電波強度とが異なるようになると、マルチパス干渉が抑えられて、リーダ/ライタ2とRFIDタグ3との通信が可能となる。したがって、通信不能部分の無い広い通信領域をカバーすることができる。また、本実施形態では、リーダ/ライタ2のアンテナおよびその制御を変更するのみでよく、RFIDタグ3に特別な変更を施す必要がない。
【0060】
以下、リーダ/ライタ2およびRFIDタグ3の具体的な構成について、図3〜図11に基づいて説明する。
【0061】
図3は、リーダ/ライタ2の概略構成を示している。図示のように、リーダ/ライタ2は、制御部20、記憶部21、無線処理部(通信手段)22、アンテナ部(タグ通信用アンテナ)23、タイマ部24、および外部I/F(インタフェース)部25を備える構成である。
【0062】
制御部20は、リーダ/ライタ2内における上述した各種構成の動作を統括的に制御するものである。制御部20は、例えばPC(Personal Computer)ベースのコンピュータによって構成される。そして、各種構成の動作制御は、制御プログラムをコンピュータに実行させることによって行われる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどのリムーバブルメディアに記録されているものを読み込んで使用する形態であってもよいし、ハードディスクなどにインストールされたものを読み込んで使用する形態であってもよい。また、外部I/F部25を介して上記プログラムをダウンロードしてハードディスクなどにインストールして実行する形態なども考えられる。
【0063】
記憶部21は、上記したハードディスクなどの不揮発性の記憶装置によって構成される。この記憶部21に記憶される内容としては、上記した制御プログラム、OS(operating system)プログラム、およびその他各種プログラム、ならびに各種データが挙げられる。本実施形態では、記憶部21には、アンテナ部22におけるアンテナのスキャン範囲、刻み角、および保持時間のデータが記憶されている。
【0064】
無線処理部22は、制御部20から受信したデータを無線送信に適した形式に変換し、変換した無線信号をアンテナ部23を介して外部に送信するとともに、外部からアンテナ部23を介して受信した無線信号を元の形式に変換し、変換したデータを制御部20に送信するものである。無線処理部22には、A/D(Analog to Digital)変換回路、D/A(Digital to Analog)変換回路、変復調回路、RF回路などが使用される。
【0065】
アンテナ部23は、無線処理部22からの無線信号を電波に変換して外部に送信するとともに、外部から受信した電波を無線信号に変換して無線処理部22に送信するものである。アンテナ部23には、アンテナ、共振回路などが使用される。本実施形態では、アンテナ部23は、外部に送信する電波のビーム方向をスキャンできるビームスキャンアンテナである。なお、ビームスキャンアンテナの詳細については後述する。
【0066】
タイマ部24は、制御部20からの指示に基づいて、各種の時間を計測し、計測した時間データを制御部20に送信するものである。本実施形態では、タイマ部24は、アンテナ部23から送信される電波のビーム方向を調整するために利用される。
【0067】
外部I/F部25は、PCなどの外部のデバイスと通信を行うものである。外部I/F部25のインタフェース規格としては、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、Ethernet(登録商標)、などが挙げられる。
【0068】
図4は、RFIDタグ3の概略構成を示している。図示のように、RFIDタグ3は、アンテナ部30および無線通信IC31を備える構成である。
【0069】
アンテナ部30は、リーダ/ライタ2からの電波を、無線通信IC31を動作させる電力源として受け取るものである。また、アンテナ部30は、リーダ/ライタ2から受信した電波を無線信号に変換して無線通信IC31に送信するとともに、無線通信IC31からの無線信号を電波に変換してリーダ/ライタ2に送信するものである。アンテナ部30には、アンテナ、共振回路などが使用される。
【0070】
無線通信IC31は、リーダ/ライタ2からアンテナ部30を介して受信した信号に基づいて、リーダ/ライタ2からのデータを記憶したり、記憶されたデータをアンテナ部30を介してリーダ/ライタ2に送信したりするものである。図4に示されるように、無線通信IC31は、電源部32、無線処理部33、制御部34、およびメモリ部35を備える構成である。
【0071】
電源部32は、アンテナ部30が電波を受信することにより発生する誘起電圧を整流回路にて整流し、電源回路にて所定の電圧に調整した後、無線通信IC31の各部に供給するものである。電源部32には、ブリッジダイオード、電圧調整用コンデンサなどが使用される。
【0072】
無線処理部33は、外部からアンテナ部30を介して受信した無線信号を元の形式に変換し、変換したデータを制御部34に送信するとともに、制御部34から受信したデータを無線送信に適した形式に変換し、変換した無線信号をアンテナ部30を介して外部に送信するものである。無線処理部33には、A/D(Analog to Digital)変換回路、D/A(Digital to Analog)変換回路、変復調回路、RF回路などが使用される。
【0073】
制御部34は、無線通信IC31内における上述した各種構成の動作を統括的に制御するものである。制御部34は、論理演算回路、レジスタなどを備え、コンピュータとして機能する。そして、各種構成の動作制御は、制御プログラムをコンピュータに実行させることによって行われる。このプログラムは、例えばメモリ部35のROM(Read Only Memory)などにインストールされたものを読み込んで使用する形態であってもよいし、リーダ/ライタ2からアンテナ部30および無線処理部33を介して上記プログラムをダウンロードしてメモリ部35にインストールして実行する形態であってもよい。
【0074】
特に、制御部34は、リーダ/ライタ2からアンテナ部30および無線処理部33を介して受信したデータに基づいて、リーダ/ライタ2からのデータをメモリ部35に記憶したり、メモリ部35に記憶されたデータを読み出して、無線処理部33およびアンテナ部30を介してリーダ/ライタ2に送信したりする。
【0075】
メモリ部35は、上記したROMや、SRAM(Static RAM)、FeRAM(強誘電体メモリ)などの半導体メモリによって構成される。このメモリ部35に記憶される内容としては、上記した制御プログラム、およびその他各種のプログラム、ならびに各種データが挙げられる。なお、無線通信IC31は、リーダ/ライタ2から送信される電波を電力源としているため、ROMなどの不揮発性メモリや、SRAM、FeRAMなどの消費電力の少ないメモリを利用することが望ましい。
【0076】
次に、リーダ/ライタ2のアンテナ部23に利用されるビームスキャンアンテナについて、図5〜図7に基づいて説明する。外部に送信する電波のビーム方向をスキャンできるビームスキャンアンテナとしては、例えば上記特許文献3に記載のように、アンテナ自身を揺動させる方式や、ビーム方向の異なる複数のアンテナを切り換えて利用する方式や、移相器を利用する方式が挙げられる。
【0077】
このうち、アンテナ自身を揺動させる方式では、機械的な駆動手段が必要となるので、装置規模が大型化するとともに、定期的なメインテナンスが必要となる。また、複数のアンテナを切り換えて利用する方式では、機械的な駆動手段が不要であるが、全てのアンテナが同時に利用されることが無いので、アンテナの利用効率が低い。これらの方式に対し、移相器を利用する方式は、機械的な駆動手段が不要である点と、かつ全てのアンテナが同時に利用されるのでアンテナの利用効率が高い点とで優れている。
【0078】
そこで、本実施形態では、移相器を利用したパッチアンテナをビームスキャンアンテナとして使用している。なお、パッチアンテナは、平面アンテナの一種であり、アンテナ素子として機能する複数のパッチ状導体と、誘電体とによって構成されるものである。
【0079】
図5は、移相器を利用したビームスキャンアンテナの概要を示している。ビームスキャンアンテナ40は、複数のアンテナ素子41を配列し、各アンテナ素子41に可変移相器(移相器)42を接続した構成である。
【0080】
全てのアンテナ素子41が同じ位相で電波を送信する場合には、電波は、アンテナ素子41の配列方向に垂直な方向の平面波として伝搬する。一方、電波の伝搬方向を、アンテナ素子41の配列方向に垂直な方向から角度θ(rad)だけ傾斜させるには、下記のように各アンテナ素子41が送信する電波の位相をずらせばよい。
【0081】
すなわち、図5に示されるように、送信または受信する電波の波長をλ(m)とし、基準となるアンテナ素子41aとk番目のアンテナ素子41との距離をdk(m)とし、図5に破線で示される等位相面のうち、基準となるアンテナ素子41aを通る等位相面と、k番目のアンテナ素子41との距離をlk(m)とすると、基準となるアンテナ素子41aの位相に対するk番目のアンテナ素子41の位相のずれφkは次式となる。
φk=(lk/λ)×2π=(dk×sinθ/λ)×2π…(1)。
【0082】
このように、移相器を利用したビームスキャンアンテナは、各可変移相器42が、上式を満たすように信号の位相をずらすことにより、目的の方向に電波のビームを向けることができる。一方、電波を受信する場合には、各アンテナ素子41の位相のずれを検出することにより、受信した電波の方向を判別することができる。
【0083】
図6は、本実施形態のビームスキャンアンテナ40が送信する電波のビーム形状45を示している。同図(a)は平面図であり、同図(b)は正面図であり、同図(c)はビームスキャンアンテナ40と対向する側から見た側面図である。また、同図(b)・(c)は、ビーム形状45がスキャンによって変化する様子も示している。
【0084】
図6(a)〜(c)に示されるように、本実施形態のビームスキャンアンテナ40から送信するビーム形状45は、スキャン方向Scに狭く、その他の方向に広い形状となっている。すなわち、上記ビームは、スキャン方向Scに指向性が強く、その他の方向に指向性が弱いビームである。ビーム形状45がスキャン方向Sc以外の方向に広いことにより、1回のスキャンで、図13に示すような指向性の弱いビームと同程度の広い通信領域を確保することができる。
【0085】
図7は、横2.5m、高さ2.5mの領域において、リーダ/ライタ2がRFIDタグ3と通信可能な領域である通信領域と、通信不能な領域である通信不能領域との分布を示している。図中、電波は、左端(x=−1.25m)の高さ(H)1.25mの地点から右方向に送信している。また、白色領域が通信領域であり、黒色領域が通信不能領域であり、灰色領域が通信の不安定な領域である。
【0086】
また、図7(a)〜(c)は、図6(b)に対応しており、本実施形態のビームスキャンアンテナ40を利用した場合の通信領域の分布を示しており、同図(d)は、従来の指向性の弱いアンテナ100を利用した場合の通信領域の分布を比較例として示している。さらに、同図(a)〜(c)は、それぞれ電波を斜め上方、水平方向、および斜め下方に送信する場合の通信領域の分布を示している。
【0087】
図7(d)に示されるように、指向性の弱いアンテナから電波を送信する場合には、広い通信領域が得られるが、特に低い位置に多くの通信不能部分が発生する。これに対し、同図(a)〜(c)に示されるように、指向性の強いアンテナから電波を送信する場合には、通信領域は狭いが、電波のビームの進行方向に通信領域を確保することができる。したがって、本実施形態のように、電波のビームをスキャンすることにより、同図(a)〜(c)に示される通信領域を重ね合わせることができ、通信不能領域を消滅させることができる。
【0088】
なお、図7(b)と同図(a)・(c)とを比較すると、電波のビームを水平方向に送信する場合、電波のビームの進行方向に対応する良好な通信領域となることが理解できる。これは、反射波低減体6が設けられていない床面7、すなわち、反射波による影響が最も生じやすい面に対し平行な方向に電波を送信することにより、マルチパス干渉による影響を抑えることができるためと考えられる。したがって、電波のビームの進行方向は、反射波による影響が最も生じやすい面に対し平行な方向となる場合を含むことが望ましい。
【0089】
また、図6(b)および図7(a)〜(c)に記載のように、アンテナは、床面から離間して配置することが望ましい。また、アンテナと床面との距離は、図7(c)に示されるように、送信する電波のビームの進行方向が床面に向いたときに、上記ビームの進行方向と上記床面とのなす角と、RFIDタグ3の読取りに必要な空間と、その必要な空間において通信不能部分が無いこととに基づいて決定されることが望ましい。この場合、アンテナと床面面との間に、通信不能部分の抑えられた空間を確保することができ、該空間を通過する多数のRFIDタグ3と確実に通信することができる。
【0090】
次に、リーダ/ライタ2からの電波のスキャン調整について図8〜図10に基づいて説明する。本実施形態のリーダ/ライタ2は、所定の時間にほぼ全てのRFIDタグ3と通信できるように、電波の送信方向(進行方向)の範囲を示すスキャン範囲と、送信方向の刻みと、或る送信方向への電波の送信を保持する保持時間とを調整して最適化する機能を有する。
【0091】
図8は、リーダ/ライタ2の制御部20において、電波の送信方向の調整を行う機能ブロックを示している。図示のように、制御部20は、通信完了数カウント部(カウント手段)50、スキャン範囲調整部(スキャン調整手段)51、刻み角調整部(スキャン調整手段)52、保持時間調整部(スキャン調整手段)53、およびスキャン方向指示部(スキャン制御手段)54とを備える構成である。また、図9(a)〜(c)は、スキャン範囲調整部51、刻み角調整部52、および保持時間調整部53における電波の送信方向の調整をそれぞれ示している。
【0092】
通信完了数カウント部50は、無線通信を行って正常に完了したRFIDタグ3の情報を無線処理部22から受信することにより、上記通信完了したRFIDタグ3の数をカウントするものである。通信完了数カウント部50は、上記通信完了したRFIDタグ3のカウント情報をスキャン範囲調整部51、刻み角調整部52、および保持時間調整部53に送信する。
【0093】
スキャン方向指示部54は、スキャン範囲調整部51、刻み角調整部52、および保持時間調整部53から受信した電波の送信方向θの指示に基づき、アンテナ部23を制御するものである。具体的には、スキャン方向指示部54は、上記電波の送信方向θの指示に基づき、図5に示される各アンテナ素子41から送信する電波の位相φkを上記式(1)に基づいて計算し、計算した位相φkをアンテナ部23の各可変移相器42に送信するものである。
【0094】
スキャン範囲調整部51は、図9(a)に示されるように、電波の送信方向に関して、スキャンの開始角a(rad)とスキャンの終了角b(rad)とを調整するものである。また、スキャン範囲調整部51は、調整されたスキャンの開始角aおよび終了角bを記憶部21に記憶して、実際の動作で利用される。なお、角度の基準となる方向は水平方向や鉛直方向など、任意の方向を選択することができる。
【0095】
具体的には、スキャン範囲調整部51は、まず、或るスキャンの開始角aおよび終了角b、所定の刻み角Δθ(rad)、ならびに所定のスキャン時間T(s)で1回のスキャンを行うようにスキャン方向指示部54に指示する。その後、所定のスキャン時間Tに通信が完了したRFIDタグ3の数を通信完了数カウント部50から取得する。そして、これらの動作を、スキャンの開始角aおよび終了角bを種々に変更して繰り返すことにより、1回のスキャンで通信が完了したRFIDタグ3の数が最も多いスキャンの開始角aおよび終了角bを決定する。
【0096】
刻み角調整部52は、図9(b)に示されるように、電波の送信方向を変更するときの変更量を示す刻み角Δθを調整するものである。また、刻み角調整部52は、調整された刻み角Δθを記憶部21に記憶して、実際の動作で利用される。
【0097】
具体的には、刻み角調整部52は、まず、スキャン範囲調整部51が決定したスキャンの開始角aおよび終了角b、或る刻み角Δθ、ならびに所定のスキャン時間Tで1回のスキャンを行うようにスキャン方向指示部54に指示する。その後、所定のスキャン時間Tに通信が完了したRFIDタグ3の数を通信完了数カウント部50から取得する。そして、これらの動作を、刻み角Δθを種々に変更して繰り返すことにより、1回のスキャンで通信が完了したRFIDタグ3の数が最も多い刻み角Δθを決定する。
【0098】
保持時間調整部53は、図9(c)に示されるように、或る方向への電波の送信を保持する保持時間t(s)を調整するものである。また、保持時間調整部53は、調整された保持時間tを記憶部21に記憶して、実際の動作で利用される。
【0099】
具体的には、保持時間調整部53は、まず、スキャン範囲調整部51が決定したスキャンの開始角aおよび終了角b、刻み角調整部52が決定した刻み角Δθ(rad)、ならびに或る保持時間tでスキャンを行うようにスキャン方向指示部54に指示する。その後、1回のスキャンで通信が完了したRFIDタグ3の数を通信完了数カウント部50から取得する。そして、これらの動作を、保持時間tを種々に変更して繰り返すことにより、1回のスキャンで通信が完了したRFIDタグ3の数が最も多い保持時間tを決定する。
【0100】
図10は、上記構成のRFIDシステム1において、リーダ/ライタ2からの電波の送信方向を調整する処理の流れを示している。この調整は、実際の運用に沿った動作状態で行われる。
【0101】
まず、基準ワークの設定が行われる(ステップS10。以下、単に「S10」と記載することがある。他のステップについても同様である。)。具体的には、例えば航空手荷物を非接触で自動的に認識するようなケースを考えると、まず、運搬手段5であるベルトコンベアに実際に流れるスーツケース、ダンボールなどのワーク4にRFIDタグ3を取り付ける。一方、リーダ/ライタ2は、適当な場所にアンテナを設置し、アンテナの周辺環境を運用時と同じとする。次に、RFIDタグ3を有するワーク4をコンベア5上で実際の運搬速度で流し、所定時間T内に所定数のワーク4が、リーダ/ライタ2との通信領域内を通過するようにする。
【0102】
次に、スキャン範囲調整部51が、上述の調整動作を行って、スキャン範囲a〜bの最適化を行い(S11)、刻み角調整部52が、上述の調整動作を行って、刻み角Δθの最適化を行い(S12)、保持時間調整部53が、上述の調整動作を行って、保持時間tの最適化を行う(S13)。
【0103】
以上より、最適なスキャン動作の条件が決定され、この条件を初期条件として記憶部21に記憶し、実際の運用に利用される。
【0104】
したがって、本実施形態では、最適なスキャン動作の条件が自動的に決定されるので、アンテナを設置した初期設定時やメインテナンス時に、所望の領域が通信領域となるようにアンテナのチューニングを行うことが容易となる。また、初期設定時やメインテナンス時だけでなく、実際の運用中でも適宜行うことができる。
【0105】
なお、スキャン範囲a〜b、刻み角Δθ、および保持時間tの調整動作の順番は、種々に変更可能である。また、保持時間tを調整する代わりに、所定時間Tを調整しても良い。
【0106】
次に、リーダ/ライタ2に用いられるビームスキャンアンテナ40の本数および設置位置について図11に基づいて説明する。図11は、リーダ/ライタ2のビームスキャンアンテナ40が送信する電波のスキャン範囲を示している。同図(a)は、1個のビームスキャンアンテナ40のみを設けた場合を示しており、同図(b)は、2個のビームスキャンアンテナ40を上下方向に設けた場合を示しており、同図(c)は、2個のビームスキャンアンテナ40を対向し、かつ上下方向にずらして設けた場合を示している。
【0107】
図11(a)を図11(b)・(c)と比較すると、ビームスキャンアンテナ40を1個設けた場合には、スキャン範囲60が広いため、1回のスキャンに必要な時間が長くなる。また、下方への傾きが大きいので、電波の送信方向と床面7とのなす角が大きくなり、床面7で反射した反射波が後方(図面の右側)に広がって、マルチパス干渉が増大する虞がある。
【0108】
これに対し、図11(b)・(c)に示されるように、ビームスキャンアンテナ40を上下方向に2個設けた場合には、スキャン範囲60が狭いので、1回のスキャンに必要な時間が短くなる。また、下方への傾きが小さいので、上側のビームスキャンアンテナ40は、電波の送信方向が床面と交わらず、マルチパス干渉を防止することができる。さらに、下側のビームスキャンアンテナ40は、電波の送信方向と床面とのなす角が小さく、床面で反射した反射波が後方にさほど広がらないので、マルチパスの干渉を抑えることができる。
【0109】
したがって、リーダ/ライタ2は、複数個のビームスキャンアンテナ40を利用することが望ましい。また、床面からの反射波によるマルチパス干渉を抑えるため、リーダ/ライタ2は、複数個のビームスキャンアンテナ40を上下方向、すなわち床面に垂直な方向に配備することが望ましい。
【0110】
ところで、図11(a)〜(c)から理解できるように、リーダ/ライタ2がビームスキャンアンテナ40を介してRFIDタグ3と通信可能となる通信領域は、ビームスキャンアンテナ40に近い方が狭く、遠い方が広くなる。このため、図11(a)・(b)に示されるように、ビームスキャンアンテナ40に近い領域には、スキャンしてもビームが到達しない領域が存在し、この領域では通信不能領域となるおそれがある。また、図11(b)に示されるように、ビームスキャンアンテナ40から遠い領域には、各ビームスキャンアンテナ40の通信領域が互いに重なる領域が存在し、この領域では混信の可能性がある。
【0111】
そこで、図11(c)に示されるように、複数個のビームスキャンアンテナ40を対向して配置することが望ましい。この場合、一方のビームスキャンアンテナ40に近い領域は、対向するビームスキャンアンテナ40の通信領域となるので、上記通信不能領域が発生することを防止できる。さらに、互いに対向するビームスキャンアンテナ40を、床面7に略垂直な方向にずらして配置すれば、図11(c)に示されるように、互いの通信領域が重なる領域が少なくなり、複数のビームスキャンアンテナ40からの電波が混信することを防止できる。
【0112】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0113】
例えば、上記実施形態では、リーダ/ライタ2は、RFIDタグ3に対し情報の読み書きを行っているが、RFIDタグ3から情報を読み取るリーダ機能のみを有しても良いし、RFIDタグ3に対し情報を書き込むライタ機能のみを有しても良い。また、リーダ/ライタ2は、RFIDタグ3が送信する電波をビームスキャンアンテナで受信しても良いし、別途設けたアンテナで受信しても良い。
【0114】
また、上記実施形態では、送信する電波のビームの進行方向を、床面に垂直な方へ変更しているが、最も強い反射波が生じる反射面が側面8である場合には、電波のビームの進行方向を側面8に垂直な方へ変更することが望ましい。このように、送信する電波のビームの進行方向が含まれる面は、上記反射面に略垂直であることが望ましい。
【0115】
また、上記実施形態では、スキャン方向Scを含む面は、図6に示されるように床面7と垂直な面であるが、床面7と平行な面以外の面、すなわち床面7と交わる面であれば、任意の面を選択することができる。例えば、図12は、図6(c)に対応するものであり、スキャン方向Scを含む面を、床面7から45度傾斜した場合を示している。この場合でも、直接波の電波強度と床面7からの反射波の電波強度が変化して、マルチパス干渉による通信不能領域の発生を抑えることができる。
【0116】
さらに、図2(a)(b)に示されるように、床面7に垂直な方向にビームが絞られていればマルチパス干渉による通信不能領域の発生を抑えることができる。したがって、ビームは、スキャン方向Scに関係なく、少なくとも一方向に絞られており、上記ビームが絞られている方向のうち少なくとも一方向が、最も強い反射波の生じる反射面と交わればよい。
【0117】
また、リーダ/ライタ2の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0118】
すなわち、リーダ/ライタ2は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM、上記プログラムを展開するRAM、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるリーダ/ライタ2の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記リーダ/ライタ2に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0119】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0120】
また、リーダ/ライタ2を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された搬送波あるいはデータ信号列の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明に係るRFIDシステムは、リーダ/ライタのアンテナから送信する電波のビームのスキャン方向を含む面が、最も強い反射波の生じる反射面と交わるように、ビームをスキャンすることにより、マルチパス干渉による通信不能領域の発生を抑えることができるので、電波を送信する形態のRFIDシステムであれば、任意の周波数の電波に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の一実施形態であるRFIDシステムの概要を示す正面図である。
【図2】RFIDリーダ/ライタのアンテナから或るRFIDタグに送信される直接波および反射波を示す正面図であり、同図(a)・(b)は、指向性の強いビームの進行方向が、上記直接波の進行方向、および上記反射波の反射前の波の進行方向と、それぞれ同じである上記RFIDシステムの場合を示しており、同図(c)は、指向性の弱いビームを送信する従来の場合を示している。
【図3】上記RFIDシステムにおけるRFIDリーダ/ライタの概略構成を示すブロック図である。
【図4】上記RFIDシステムにおけるRFIDタグの概略構成を示すブロック図である。
【図5】上記RFIDリーダ/ライタに設けられる、移相器を利用したビームスキャンアンテナの概要を示す模式図である。
【図6】上記ビームスキャンアンテナが送信する電波のビーム形状を示しており、同図(a)は平面図であり、同図(b)は正面図であり、同図(c)はビームスキャンアンテナと対向する側から見た側面図である。
【図7】上記RFIDリーダ/ライタと上記RFIDタグとの通信領域の分布を示すグラフであり、同図(a)〜(c)は指向性の強い電波を、斜め上方、水平方向、および斜め下方に送信した場合をそれぞれ示しており、同図(d)は指向性の弱い電波を送信した場合を比較例として示している。
【図8】上記RFIDリーダ/ライタの制御部において、送信する電波のビームのスキャン調整を行う機能構成を示すブロック図である。
【図9】同図(a)〜(c)は、上記スキャン調整に関するスキャン範囲、刻み角、および保持時間の調整の内容を示す図である。
【図10】上記スキャン調整の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】上記RFIDリーダ/ライタのビームスキャンアンテナが送信する電波のスキャン範囲を示す正面図であり、同図(a)は、1個ビームスキャンアンテナのみを設けた場合を示しており、同図(b)は、2個のビームスキャンアンテナを上下方向に設けた場合を示しており、同図(c)は、2個のビームスキャンアンテナを対向し、かつ上下方向にずらして設けた場合を示している。
【図12】上記ビームスキャンアンテナが送信する電波の別のビーム形状を、ビームスキャンアンテナと対向する側から見た側面図であり、スキャン方向を含む面を、床面から45度傾斜した場合を示している。
【図13】RFIDリーダ/ライタが、指向性の弱いアンテナを利用する場合に、RFIDタグと通信可能な領域を示す側面図である。
【図14】RFIDリーダ/ライタが、指向性の強いアンテナを利用する場合に、RFIDタグと通信可能な領域を示す側面図である。
【符号の説明】
【0123】
1 RFIDシステム(タグ通信システム)
2 RFIDリーダ/ライタ(タグ通信装置)
3 RFIDタグ
6 反射強度低減体
22 無線処理部(通信手段)
23 アンテナ部(タグ通信用アンテナ)
40 ビームスキャンアンテナ(タグ通信用アンテナ)
41 アンテナ素子
42 可変移相器(移相器)
50 通信完了数カウント部(カウント手段)
51 スキャン範囲調整部(スキャン調整手段)
52 刻み角調整部(スキャン調整手段)
53 保持時間調整部(スキャン調整手段)
54 スキャン方向指示部(スキャン制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置、該装置に用いられるタグ通信用アンテナ、タグ通信システム、タグ通信装置のスキャン調整方法、およびスキャン調整プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、RFID(Radio Frequency Identification)タグ(無線タグ)に対し、リーダおよび/またはライタであるタグ通信装置が無線で通信を行うRFID技術が利用されつつある。また、RFIDタグは、バーコードに替わるものとして特に物流の分野において期待を集めており、近い将来において爆発的に普及することが予想されている。
【0003】
RFIDタグおよびタグ通信装置の間の通信方式としては、電磁誘導方式とマイクロ波方式とがある。電磁誘導方式は、125k〜135kHz帯や13.56MHz帯の周波数帯域で利用されている。一方、マイクロ波方式は、2.45GHz帯などの周波数帯域で利用されており、800MHz〜960MHz前後のいわゆるUHF帯での利用が考えられている。
【0004】
現在のところ、電磁誘導方式が普及しつつある。しかしながら、一般に、電磁誘導方式よりもマイクロ波方式の方が通信距離を伸長し易いことと、周波数帯域が高くなるにつれて、RFIDタグのアンテナの寸法を小さくすることができることとから、近い将来、マイクロ波方式の普及が予想されている。このため、マイクロ波方式のRFIDタグおよびタグ通信装置の開発も進められている。
【特許文献1】特開2002−151944号公報(2002年5月24日公開)
【特許文献2】特開平9−5431号公報(1997年1月10日公開)
【特許文献3】特開2002−198722号公報(2002年7月12日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、マイクロ波方式の場合には、電磁誘導方式の場合に比べて、タグ通信装置とRFIDタグとの通信距離を数cm程度から数m程度に伸長し易いため、タグ通信装置がRFIDタグと通信可能な領域である通信領域の拡大が容易である。しかしながら、通信領域を拡大した場合、以下のような問題点が生じる。
【0006】
タグ通信装置のアンテナであるタグ通信用アンテナとしては、無指向性のアンテナまたは指向性の弱いアンテナを利用する場合と、指向性の強いアンテナを利用する場合とが考えられる。例えば、上記特許文献1には指向性の強い八木アンテナを使うRFIDシステムが記載されている。しかしながら、指向性の強いアンテナは、指向性の弱いアンテナに比べて通信領域が狭いので、少数のアンテナで多数のRFIDタグを同時に読み書きできるシステムを構築することは困難である。
【0007】
一方、多数のRFIDタグを同時に読み書きするシステムのアンテナ構成として、一般的に図13および図14に示されるようなアンテナ構成が考えられている。図13は、指向性の弱いアンテナを利用する場合の通信領域を示しており、図14は、指向性の強いアンテナを利用する場合の通信領域を示している。
【0008】
指向性の弱いアンテナを利用する場合、図13に示されるように、少数のアンテナ100で広い通信領域101をカバーすることが可能である。しかしながら、少数のアンテナ100で広い通信領域101をカバーすると、通信領域101内に多数のRFIDタグ102が同時に存在することになる。このため、少数のアンテナ100と多数のRFIDタグ102との間で通信のコリジョン(衝突)が多数発生して、通信の品質が劣化することになる。
【0009】
また、指向性の弱いアンテナを利用する場合、タグ通信装置からの直接波と床面や壁面にて反射した反射波とが干渉するいわゆるマルチパス干渉により、タグ通信装置がRFIDタグと通信できない通信不能部分が通信領域内に発生することになる。この場合、通信領域内で通信できないRFIDタグが発生する可能性があり、望ましくない。さらに、上記マルチパス干渉により、タグ通信装置がRFIDタグと通信できる通信可能部分が通信領域外に発生する可能性が高くなる。このことは、通信領域を所定の領域に限定したい場合に望ましくない。
【0010】
これに対し、通信不能部分が発生しないようにアンテナの位置、方向、出力などの調整を行うことが考えられる。しかしながら、この調整は、通信領域内の各部分で通信が可能であることを確認しながら行う必要があるため、多大な時間および労力が必要となる。
【0011】
一方、図14に示されるように指向性の強いアンテナ110を利用する場合、図13に示されるように指向性の弱いアンテナ100を利用する場合に比べて、1つのアンテナがカバーする通信領域111が狭いので、上記通信のコリジョンの発生を抑えることができ、通信の品質の劣化を抑えることができる。また、指向性の強いアンテナ110を利用する場合、床面や壁面に伝搬する電波の強度を抑えることにより、上記マルチパス干渉により生じる問題を回避することができる。
【0012】
しかしながら、指向性の強いアンテナ110で広い通信領域をカバーするには、図14に示されるように、多数のアンテナが必要となる。さらに、指向性の強いアンテナ110は、指向性の弱いアンテナ100に比べてアンテナの規模が大きくなる。したがって、タグ通信装置のアンテナ部分の規模が著しく増大することになる。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、指向性の強い少数のアンテナで、通信不能部分の無い広い通信領域をカバーできるタグ通信用アンテナなどを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本願発明者は、RFIDシステムのタグ通信用アンテナにビームスキャンアンテナを利用することを考えた。ビームスキャンアンテナは、電波のビームを絞った指向性の強いアンテナであって、ビームをスキャンできるものである。ビームスキャンアンテナは、上記特許文献2・3に記載のように、レーダに利用されることが一般的であるが、RFIDシステムのタグ通信用アンテナとしては未だ利用されていない。そこで、本願発明者は、ビームスキャンアンテナを利用して、ビームの形状、進行方向、スキャン方向などを種々に変更して検討を重ねることにより、以下のような解決手段を案出した。
【0015】
すなわち、本発明に係るタグ通信用アンテナは、電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置に用いられるタグ通信用アンテナであって、送信する電波のビームをスキャンするとともに、上記ビームは、少なくとも一方向に絞られており、上記ビームが絞られている方向のうち少なくとも一方向が、最も強い反射波の生じる反射面と交わることを特徴としている。
【0016】
ここで、ビームがスキャンされると、ビームが絞られている方向が変化するが、変化した方向でも上記反射面と交わるものである。
【0017】
上記の構成によると、送信する電波のビームをスキャンすることが可能なビームスキャンアンテナを利用することにより、指向性の強い通常のアンテナに比べて通信領域を拡大することができる。したがって、少数のアンテナで広い通信領域をカバーすることができる。
【0018】
ところで、マルチパス干渉による通信不能部分は、直接波の電波強度と反射波の電波強度とが同程度である場合に発生する。そこで、本発明に係るタグ通信用アンテナが送信する上記ビームは、少なくとも一方向に絞られており、上記ビームが絞られている方向のうち少なくとも一方向が、上記反射面と交わるようにしている。
【0019】
この場合、上記反射面と交わる方向にビームが絞られるから、上記反射面に垂直な方向にもビームが絞られることになる。この場合、ビームのスキャンを行って、直接波の進行方向と、反射波が反射する前の波の進行方向との何れか一方が、ビームの進行方向と一致するとき、直接波の電波強度と上記反射面からの反射波の電波強度とがそれぞれ変化することになる。このとき、上記通信不能部分にて、直接波の電波強度と上記反射面からの反射波の電波強度とが異なるようになると、マルチパス干渉が抑えられて、タグ通信装置とRFIDタグとの通信が可能となる。したがって、本発明に係るタグ通信用アンテナは、通信不能部分の無い広い通信領域をカバーすることができる。
【0020】
なお、上記ビームが絞られている方向のうち上記反射面と交わる方向を、上記ビームのスキャン方向とすることが望ましい。この場合、ビームが絞られている方向にスキャンが行われるので、所定領域を効果的にスキャンすることができる。
【0021】
また、上記スキャン方向を含む面は上記反射面に略垂直であることが望ましい。この場合、直接波の電波強度と上記反射面からの反射波の電波強度とがそれぞれ効果的に変化するので、マルチパス干渉による通信不能部分が確実に抑えられて、タグ通信装置とRFIDタグとが確実に通信することが可能となる。
【0022】
さらに、上記ビームの進行方向が上記反射面に略平行な方向を含むことが望ましい。ビームの進行方向が反射面に略平行な方向となると、反射面に伝搬する電波の強度が小さくなり、反射波の電波強度も小さくなるので、マルチパス干渉による通信不能部分がさらに確実に抑えられることができる。
【0023】
また、上記ビームは、上記スキャン方向にのみ絞られていることが望ましい。この場合、スキャン方向に狭く、その他の方向に広い形状のビームとなり、このビームがスキャンされるから、1回のスキャンで、図13に示されるような、全方向に指向性の弱いビーム並の通信領域を確保することができる。
【0024】
また、本発明に係るタグ通信用アンテナは、上記の構成において、上記反射面から離間して配置されることを特徴としている。
【0025】
上記構成によると、タグ通信用アンテナと反射面との間に、通信不能部分の抑えられた空間を確保することができ、該空間を通過する多数のRFIDタグと確実に通信することができる。
【0026】
なお、上記離間の距離は、上記ビームの進行方向が上記反射面に向いたときに、上記ビームの進行方向と上記反射面とのなす角と、RFIDタグの読取りに必要な空間と、その必要な空間において通信不能部分が無いこととに基づいて決定されることが望ましい。
【0027】
なお、上記タグ通信用アンテナは、移相器が複数のアンテナ素子に送信する信号の位相を変更することにより、上記ビームをスキャンするものであることが望ましい。この場合、ビームをスキャンするための機械的構成が不要となるので、信頼性を向上させることができる。
【0028】
また、上記送信する電波は、マイクロ波であることが望ましい。マイクロ波とは、周波数が300MHz程度〜300GHz程度の電波をいう。マイクロ波を利用することにより、タグ通信装置とRFIDタグとの通信距離を数m以上に伸長することが容易となる。
【0029】
また、本発明に係るタグ通信装置は、RFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置であって、上記構成のタグ通信用アンテナと、該タグ通信用アンテナから送信する電波のビームのスキャンを制御するスキャン制御手段とを備えることを特徴としている。
【0030】
上記構成のタグ通信装置は、上記構成のタグ通信用アンテナを備えており、スキャン制御手段の制御によりタグ通信用アンテナから送信する電波のビームがスキャンされるので、前述と同様の効果を得ることができる。
【0031】
なお、上記タグ通信用アンテナを複数個備えることが望ましい。この場合、各タグ通信用アンテナのスキャン範囲を狭くできるので、スキャン時間を短くできる。
【0032】
さらに、少なくとも2つの上記タグ通信用アンテナを、最も強い反射波が生じる反射面に略垂直な方向に離間して配置することが望ましい。この場合、ビームの進行方向と上記反射面とのなす角度を小さくできるので、反射波の影響が少なくなり、マルチパス干渉を確実に抑えることができる。
【0033】
ところで、ビームのスキャンは、アンテナの位置を固定してビームの進行方向を変化させるものであるから、スキャンによってRFIDタグと通信可能となる通信領域は、タグ通信用アンテナに近い方が狭く、遠い方が広くなる。このため、タグ通信用アンテナに近い領域には、ビームが到達しないことによる通信不能領域が発生するおそれがある。
【0034】
このため、少なくとも2つの上記タグ通信用アンテナを、対向して配置することが望ましい。この場合、一方のタグ通信用アンテナに近い領域は、対向するタグ通信用アンテナの通信領域となるので、上記通信不能領域が発生することを防止できる。さらに、互いに対向するタグ通信用アンテナを、上記反射面に略垂直な方向にずらして配置すれば、互いの通信領域が重なる領域が少なくなり、複数のタグ通信用アンテナからの電波が混信することを防止できる。
【0035】
また、本発明に係るタグ通信装置は、上記の構成において、上記タグ通信用アンテナを介して上記RFIDタグと無線通信を行う通信手段と、該通信手段が無線通信を完了した上記RFIDタグの数をカウントするカウント手段と、上記タグ通信用アンテナが或るスキャン時間に或るスキャン範囲を或る刻み角でスキャンを行うようにスキャン制御手段に指示し、上記スキャンの間に上記カウント手段がカウントしたRFIDタグの通信完了数を取得し、これを種々のスキャン時間、スキャン範囲、および刻み角について繰り返すことにより、RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を決定することにより、上記ビームのスキャンを調整するスキャン調整手段とをさらに備えることを特徴としている。
【0036】
上記の構成によると、スキャン調整手段が、RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を自動的に調整するので、アンテナ設置時やメインテナンス時に、所望の領域が通信領域となるようにアンテナのチューニングを行うことが容易となる。
【0037】
本発明に係るタグ通信システムは、上記構成のタグ通信装置と、該タグ通信装置のタグ通信用アンテナが送信する電波の反射面に設けられた、反射波の電波強度を低減する反射強度低減体とを備えることを特徴としている。
【0038】
ここで、反射強度低減体としては、例えば、電波をよく吸収する物体である電波吸収体や、電波を拡散反射させる物体である拡散反射体などが挙げられる。
【0039】
上記の構成によると、タグ通信装置のタグ通信用アンテナが送信する電波が反射する反射面のうち、反射強度低減体が設けられた面は、反射波の電波強度が低減するので、反射強度低減体が設けられていない面を、最も強い反射波が生じる反射面として特定することができる。したがって、電波のビーム方向を、最も強い反射波が生じる反射面に垂直な方へ変更することにより、前述と同様の効果を得ることができる。
【0040】
本発明に係るタグ通信装置のビームの調整方法は、上記構成のタグ通信用アンテナが送信する電波のビームのスキャンを調整するスキャン調整方法であって、或るスキャン時間に或るスキャン範囲を或る刻み角で上記スキャンを行うスキャンステップと、上記スキャンの間に無線通信が完了したRFIDタグの通信完了数をカウントするカウントステップと、上記スキャンステップおよびカウントステップを、種々のスキャン時間、スキャン範囲、および刻み角について繰り返す繰返しステップと、該繰返しステップにより、上記RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を決定する決定ステップとを含むことを特徴としている。
【0041】
上記の方法によると、RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を自動的に調整するので、アンテナ設置時やメインテナンス時に、所望の領域が通信領域となるようにアンテナのチューニングを行うことが容易となる。
【0042】
なお、上記タグ通信装置におけるスキャン調整手段を、スキャン調整プログラムによりコンピュータ上で実行させることができる。さらに、上記スキャン調整プログラムをコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で上記スキャン調整プログラムを実行させることができる。
【発明の効果】
【0043】
以上のように、本発明に係るタグ通信用アンテナは、送信する電波のビームをスキャンすることが可能なビームスキャンアンテナを利用することにより、指向性の強い通常のアンテナに比べて通信領域を拡大することができ、少数のアンテナで広い通信領域をカバーできるという効果を奏する。また、ビームのスキャン方向により特定される面が、最も強い反射波の生じる反射面と交わるように、ビームをスキャンすることにより、ビームの進行方向がスキャンによって上記反射面の方へ変化することになるので、上記通信不能部分では、直接波の電波強度と上記反射面からの反射波の電波強度とが異なって、マルチパス干渉が抑えられ、タグ通信装置とRFIDタグとの通信が可能となり、通信不能部分の無い広い通信領域をカバーできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の一実施形態について図1ないし図11に基づいて説明する。図1は、本実施形態であるRFIDシステム(タグ通信システム)の概要を示している。RFIDシステム1は、空港における航空手荷物、物流における荷物、製造工程におけるワーク(中間品)などの物品を非接触で自動的に識別するものである。具体的には、RFIDシステム1は、自動運搬車、ベルトコンベアなどの運搬手段5で運搬される多数の物品4にそれぞれ取り付けられたRFIDタグ3に対し、RFIDリーダ/ライタ(以下、単に「リーダ/ライタ」と称する。)2が無線通信を行ってデータの読み書きを行うものである。
【0045】
本実施形態では、リーダ/ライタ(タグ通信装置)2が送信する電波の周波数帯域は、800MHz〜960MHz前後のいわゆるUHF帯である。これにより、リーダ/ライタ2がRFIDタグ3と通信可能な領域は、リーダ/ライタ2のアンテナから数m程度となる。一般に、UHF帯や2.45GHz帯の電波(radio wave)を利用するマイクロ波方式は、125k〜135kHz帯や13.56MHz帯の電磁誘導を利用する電磁誘導方式に比べて、通信距離を拡大し易いという利点がある。また、UHF帯の電波は、2.4GHz帯の電波に比べて、物陰に回り込み易いという利点がある。
【0046】
RFIDタグ3は、無線通信IC(Integrated Circuit)およびアンテナを備える構成である。一般的なRFIDタグ3は、電池などの電源を有しておらず、リーダ/ライタ2から電波で送電された電力によって回路が動作し、リーダ/ライタ2と無線通信を行う。
【0047】
この場合、リーダ/ライタ2は、数m離れたRFIDタグ3が動作可能な電力を電波で送電する必要があるため、電波の送信出力が数W(ワット)程度と大きい。このため、電波を送信するRFIDシステム1では、リーダ/ライタ2から送信された電波が所定領域からリークすることを低減するEMI(Electro-Magnetic Interference)対策を行う必要がある。また、電波の送信出力が大きいため、リーダ/ライタ2から送信された電波が床7、側壁8、天井9などで反射した反射波の強度も大きく、直接波と反射波とのマルチパス干渉による通信不能部分の発生が問題となる。
【0048】
これらの問題点を回避するため、本実施形態のRFIDシステム1では、リーダ/ライタ2から送信された電波が到達する側壁8および天井9には、上記電波を吸収する電波吸収体や、上記電波を拡散反射させる拡散反射体など、反射波の強度を低減する反射強度低減体6が設けられている。これにより、電波が所定領域からリークすることを低減できるとともに、反射波の強度を低減することができる。
【0049】
電波吸収体の材料としては、EMI対策で利用される公知のものを利用することができ、例えば、抵抗皮膜、ゴムおよびカーボンの複合材、カーボンを付着させた繊維、発泡スチロール、カーボン含有発泡ウレタン、フェライト、カーボン・フェライトの複合材などが挙げられる。また、拡散反射体としては、電波の波長と同程度またはそれ以上の凹凸を有する形状のものや、種々の誘電率を有するものなどが挙げられる。
【0050】
このように、電波吸収体や電波散乱体は、柔らかいものや凸凹したものであるため、人間が移動したり荷物が運搬されたりする床面7に設けることは望ましくない。このため、床面7からの反射波の影響を無視できず、直接波と床面7からの反射波とによるマルチパス干渉が問題となる。
【0051】
これに対し、本実施形態のリーダ/ライタ2は、送信する電波のビームをスキャンすることが可能なビームスキャンアンテナを利用している。これにより、上記ビームの進行方向Pを変更できるので、指向性の強い通常のアンテナに比べて通信領域を拡大することができる。したがって、少数のアンテナで広い通信領域をカバーすることができる。
【0052】
ところで、ビームのスキャン方向Scは、ビームの進行方向Pに対応して変化するので、ビームのスキャンは、スキャン方向Scを含む面によって特定されることになる。例えば、図1の場合では、ビームのスキャン方向Scを含む面は、図面と平行な面となる。本実施形態のリーダ/ライタ2では、ビームのスキャン方向を含む面が、最も強い反射波の生じる反射面である床面7と交わるように、ビームをスキャンしている。
【0053】
この場合、ビームの進行方向Pがスキャンによって床面7の方へ変化することになる。すると、通信領域内の任意の位置で、直接波の電波強度と床面7からの反射波の電波強度とがそれぞれ変化することになる。
【0054】
図2は、リーダ/ライタ2のアンテナから或るRFIDタグ3に、直接送信される直接波DWと、床面7にて反射して送信される反射波RWとを示している。同図(a)(b)は、本実施形態のビームスキャンアンテナ40を利用した場合を示しており、それぞれ、スキャンによってビームの進行方向Pが異なる場合を示している。同図(c)は、従来技術の指向性の弱いアンテナ100を利用した場合を示している。
【0055】
なお、図中では、RFIDタグ3で受信する直接波DWの電波強度と反射波RWの電波強度とが同程度である場合には、直接波DWおよび反射波RWを実線で示す一方、異なる場合には、電波強度の強い方を実線で示し、弱い方を破線で示している。また、ビームの形状を一点鎖線で示している。
【0056】
図2を参照すると、従来の場合は、同図(c)に示されるように、RFIDタグ3が受信する直接波DWの電波強度と反射波RWの電波強度とが同程度である。このため、図示の位置のRFIDタグ3が、マルチパス干渉により直接波DWと反射波RWとが互いに弱め合う場合には、RFIDタグ3は、受信する電波強度が著しく低くなって、リーダ/ライタ2との通信が不能となる。
【0057】
一方、図2(a)に示されるように、ビームのスキャンによりビームの進行方向PにRFIDタグ3が存在する場合には、直接波DWの電波強度が反射波RWの電波強度よりも大きくなる。このため、図示の位置のRFIDタグ3が、マルチパス干渉により直接波DWと反射波RWとが互いに弱め合う場合でも、RFIDタグ3は、受信する直接波DWの電波強度がさほど低くならず、リーダ/ライタ2との通信が可能となる。
【0058】
また、図2(b)に示されるように、ビームのスキャンによりビームの進行方向Pが同図(a)に比べて下方となり、ビームの進行方向Pに、RFIDタグ3の床面7に対する対称位置が存在する場合には、反射波RWの電波強度が直接波DWの電波強度よりも大きくなる。このため、図示の位置のRFIDタグ3が、マルチパス干渉により直接波DWと反射波RWとが互いに弱め合う場合でも、RFIDタグ3は、受信する反射波RWの電波強度がさほど低くならず、リーダ/ライタ2との通信が可能となる。
【0059】
以上より、マルチパス干渉による通信不能部分にて、直接波の電波強度と床面7からの反射波の電波強度とが異なるようになると、マルチパス干渉が抑えられて、リーダ/ライタ2とRFIDタグ3との通信が可能となる。したがって、通信不能部分の無い広い通信領域をカバーすることができる。また、本実施形態では、リーダ/ライタ2のアンテナおよびその制御を変更するのみでよく、RFIDタグ3に特別な変更を施す必要がない。
【0060】
以下、リーダ/ライタ2およびRFIDタグ3の具体的な構成について、図3〜図11に基づいて説明する。
【0061】
図3は、リーダ/ライタ2の概略構成を示している。図示のように、リーダ/ライタ2は、制御部20、記憶部21、無線処理部(通信手段)22、アンテナ部(タグ通信用アンテナ)23、タイマ部24、および外部I/F(インタフェース)部25を備える構成である。
【0062】
制御部20は、リーダ/ライタ2内における上述した各種構成の動作を統括的に制御するものである。制御部20は、例えばPC(Personal Computer)ベースのコンピュータによって構成される。そして、各種構成の動作制御は、制御プログラムをコンピュータに実行させることによって行われる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどのリムーバブルメディアに記録されているものを読み込んで使用する形態であってもよいし、ハードディスクなどにインストールされたものを読み込んで使用する形態であってもよい。また、外部I/F部25を介して上記プログラムをダウンロードしてハードディスクなどにインストールして実行する形態なども考えられる。
【0063】
記憶部21は、上記したハードディスクなどの不揮発性の記憶装置によって構成される。この記憶部21に記憶される内容としては、上記した制御プログラム、OS(operating system)プログラム、およびその他各種プログラム、ならびに各種データが挙げられる。本実施形態では、記憶部21には、アンテナ部22におけるアンテナのスキャン範囲、刻み角、および保持時間のデータが記憶されている。
【0064】
無線処理部22は、制御部20から受信したデータを無線送信に適した形式に変換し、変換した無線信号をアンテナ部23を介して外部に送信するとともに、外部からアンテナ部23を介して受信した無線信号を元の形式に変換し、変換したデータを制御部20に送信するものである。無線処理部22には、A/D(Analog to Digital)変換回路、D/A(Digital to Analog)変換回路、変復調回路、RF回路などが使用される。
【0065】
アンテナ部23は、無線処理部22からの無線信号を電波に変換して外部に送信するとともに、外部から受信した電波を無線信号に変換して無線処理部22に送信するものである。アンテナ部23には、アンテナ、共振回路などが使用される。本実施形態では、アンテナ部23は、外部に送信する電波のビーム方向をスキャンできるビームスキャンアンテナである。なお、ビームスキャンアンテナの詳細については後述する。
【0066】
タイマ部24は、制御部20からの指示に基づいて、各種の時間を計測し、計測した時間データを制御部20に送信するものである。本実施形態では、タイマ部24は、アンテナ部23から送信される電波のビーム方向を調整するために利用される。
【0067】
外部I/F部25は、PCなどの外部のデバイスと通信を行うものである。外部I/F部25のインタフェース規格としては、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、Ethernet(登録商標)、などが挙げられる。
【0068】
図4は、RFIDタグ3の概略構成を示している。図示のように、RFIDタグ3は、アンテナ部30および無線通信IC31を備える構成である。
【0069】
アンテナ部30は、リーダ/ライタ2からの電波を、無線通信IC31を動作させる電力源として受け取るものである。また、アンテナ部30は、リーダ/ライタ2から受信した電波を無線信号に変換して無線通信IC31に送信するとともに、無線通信IC31からの無線信号を電波に変換してリーダ/ライタ2に送信するものである。アンテナ部30には、アンテナ、共振回路などが使用される。
【0070】
無線通信IC31は、リーダ/ライタ2からアンテナ部30を介して受信した信号に基づいて、リーダ/ライタ2からのデータを記憶したり、記憶されたデータをアンテナ部30を介してリーダ/ライタ2に送信したりするものである。図4に示されるように、無線通信IC31は、電源部32、無線処理部33、制御部34、およびメモリ部35を備える構成である。
【0071】
電源部32は、アンテナ部30が電波を受信することにより発生する誘起電圧を整流回路にて整流し、電源回路にて所定の電圧に調整した後、無線通信IC31の各部に供給するものである。電源部32には、ブリッジダイオード、電圧調整用コンデンサなどが使用される。
【0072】
無線処理部33は、外部からアンテナ部30を介して受信した無線信号を元の形式に変換し、変換したデータを制御部34に送信するとともに、制御部34から受信したデータを無線送信に適した形式に変換し、変換した無線信号をアンテナ部30を介して外部に送信するものである。無線処理部33には、A/D(Analog to Digital)変換回路、D/A(Digital to Analog)変換回路、変復調回路、RF回路などが使用される。
【0073】
制御部34は、無線通信IC31内における上述した各種構成の動作を統括的に制御するものである。制御部34は、論理演算回路、レジスタなどを備え、コンピュータとして機能する。そして、各種構成の動作制御は、制御プログラムをコンピュータに実行させることによって行われる。このプログラムは、例えばメモリ部35のROM(Read Only Memory)などにインストールされたものを読み込んで使用する形態であってもよいし、リーダ/ライタ2からアンテナ部30および無線処理部33を介して上記プログラムをダウンロードしてメモリ部35にインストールして実行する形態であってもよい。
【0074】
特に、制御部34は、リーダ/ライタ2からアンテナ部30および無線処理部33を介して受信したデータに基づいて、リーダ/ライタ2からのデータをメモリ部35に記憶したり、メモリ部35に記憶されたデータを読み出して、無線処理部33およびアンテナ部30を介してリーダ/ライタ2に送信したりする。
【0075】
メモリ部35は、上記したROMや、SRAM(Static RAM)、FeRAM(強誘電体メモリ)などの半導体メモリによって構成される。このメモリ部35に記憶される内容としては、上記した制御プログラム、およびその他各種のプログラム、ならびに各種データが挙げられる。なお、無線通信IC31は、リーダ/ライタ2から送信される電波を電力源としているため、ROMなどの不揮発性メモリや、SRAM、FeRAMなどの消費電力の少ないメモリを利用することが望ましい。
【0076】
次に、リーダ/ライタ2のアンテナ部23に利用されるビームスキャンアンテナについて、図5〜図7に基づいて説明する。外部に送信する電波のビーム方向をスキャンできるビームスキャンアンテナとしては、例えば上記特許文献3に記載のように、アンテナ自身を揺動させる方式や、ビーム方向の異なる複数のアンテナを切り換えて利用する方式や、移相器を利用する方式が挙げられる。
【0077】
このうち、アンテナ自身を揺動させる方式では、機械的な駆動手段が必要となるので、装置規模が大型化するとともに、定期的なメインテナンスが必要となる。また、複数のアンテナを切り換えて利用する方式では、機械的な駆動手段が不要であるが、全てのアンテナが同時に利用されることが無いので、アンテナの利用効率が低い。これらの方式に対し、移相器を利用する方式は、機械的な駆動手段が不要である点と、かつ全てのアンテナが同時に利用されるのでアンテナの利用効率が高い点とで優れている。
【0078】
そこで、本実施形態では、移相器を利用したパッチアンテナをビームスキャンアンテナとして使用している。なお、パッチアンテナは、平面アンテナの一種であり、アンテナ素子として機能する複数のパッチ状導体と、誘電体とによって構成されるものである。
【0079】
図5は、移相器を利用したビームスキャンアンテナの概要を示している。ビームスキャンアンテナ40は、複数のアンテナ素子41を配列し、各アンテナ素子41に可変移相器(移相器)42を接続した構成である。
【0080】
全てのアンテナ素子41が同じ位相で電波を送信する場合には、電波は、アンテナ素子41の配列方向に垂直な方向の平面波として伝搬する。一方、電波の伝搬方向を、アンテナ素子41の配列方向に垂直な方向から角度θ(rad)だけ傾斜させるには、下記のように各アンテナ素子41が送信する電波の位相をずらせばよい。
【0081】
すなわち、図5に示されるように、送信または受信する電波の波長をλ(m)とし、基準となるアンテナ素子41aとk番目のアンテナ素子41との距離をdk(m)とし、図5に破線で示される等位相面のうち、基準となるアンテナ素子41aを通る等位相面と、k番目のアンテナ素子41との距離をlk(m)とすると、基準となるアンテナ素子41aの位相に対するk番目のアンテナ素子41の位相のずれφkは次式となる。
φk=(lk/λ)×2π=(dk×sinθ/λ)×2π…(1)。
【0082】
このように、移相器を利用したビームスキャンアンテナは、各可変移相器42が、上式を満たすように信号の位相をずらすことにより、目的の方向に電波のビームを向けることができる。一方、電波を受信する場合には、各アンテナ素子41の位相のずれを検出することにより、受信した電波の方向を判別することができる。
【0083】
図6は、本実施形態のビームスキャンアンテナ40が送信する電波のビーム形状45を示している。同図(a)は平面図であり、同図(b)は正面図であり、同図(c)はビームスキャンアンテナ40と対向する側から見た側面図である。また、同図(b)・(c)は、ビーム形状45がスキャンによって変化する様子も示している。
【0084】
図6(a)〜(c)に示されるように、本実施形態のビームスキャンアンテナ40から送信するビーム形状45は、スキャン方向Scに狭く、その他の方向に広い形状となっている。すなわち、上記ビームは、スキャン方向Scに指向性が強く、その他の方向に指向性が弱いビームである。ビーム形状45がスキャン方向Sc以外の方向に広いことにより、1回のスキャンで、図13に示すような指向性の弱いビームと同程度の広い通信領域を確保することができる。
【0085】
図7は、横2.5m、高さ2.5mの領域において、リーダ/ライタ2がRFIDタグ3と通信可能な領域である通信領域と、通信不能な領域である通信不能領域との分布を示している。図中、電波は、左端(x=−1.25m)の高さ(H)1.25mの地点から右方向に送信している。また、白色領域が通信領域であり、黒色領域が通信不能領域であり、灰色領域が通信の不安定な領域である。
【0086】
また、図7(a)〜(c)は、図6(b)に対応しており、本実施形態のビームスキャンアンテナ40を利用した場合の通信領域の分布を示しており、同図(d)は、従来の指向性の弱いアンテナ100を利用した場合の通信領域の分布を比較例として示している。さらに、同図(a)〜(c)は、それぞれ電波を斜め上方、水平方向、および斜め下方に送信する場合の通信領域の分布を示している。
【0087】
図7(d)に示されるように、指向性の弱いアンテナから電波を送信する場合には、広い通信領域が得られるが、特に低い位置に多くの通信不能部分が発生する。これに対し、同図(a)〜(c)に示されるように、指向性の強いアンテナから電波を送信する場合には、通信領域は狭いが、電波のビームの進行方向に通信領域を確保することができる。したがって、本実施形態のように、電波のビームをスキャンすることにより、同図(a)〜(c)に示される通信領域を重ね合わせることができ、通信不能領域を消滅させることができる。
【0088】
なお、図7(b)と同図(a)・(c)とを比較すると、電波のビームを水平方向に送信する場合、電波のビームの進行方向に対応する良好な通信領域となることが理解できる。これは、反射波低減体6が設けられていない床面7、すなわち、反射波による影響が最も生じやすい面に対し平行な方向に電波を送信することにより、マルチパス干渉による影響を抑えることができるためと考えられる。したがって、電波のビームの進行方向は、反射波による影響が最も生じやすい面に対し平行な方向となる場合を含むことが望ましい。
【0089】
また、図6(b)および図7(a)〜(c)に記載のように、アンテナは、床面から離間して配置することが望ましい。また、アンテナと床面との距離は、図7(c)に示されるように、送信する電波のビームの進行方向が床面に向いたときに、上記ビームの進行方向と上記床面とのなす角と、RFIDタグ3の読取りに必要な空間と、その必要な空間において通信不能部分が無いこととに基づいて決定されることが望ましい。この場合、アンテナと床面面との間に、通信不能部分の抑えられた空間を確保することができ、該空間を通過する多数のRFIDタグ3と確実に通信することができる。
【0090】
次に、リーダ/ライタ2からの電波のスキャン調整について図8〜図10に基づいて説明する。本実施形態のリーダ/ライタ2は、所定の時間にほぼ全てのRFIDタグ3と通信できるように、電波の送信方向(進行方向)の範囲を示すスキャン範囲と、送信方向の刻みと、或る送信方向への電波の送信を保持する保持時間とを調整して最適化する機能を有する。
【0091】
図8は、リーダ/ライタ2の制御部20において、電波の送信方向の調整を行う機能ブロックを示している。図示のように、制御部20は、通信完了数カウント部(カウント手段)50、スキャン範囲調整部(スキャン調整手段)51、刻み角調整部(スキャン調整手段)52、保持時間調整部(スキャン調整手段)53、およびスキャン方向指示部(スキャン制御手段)54とを備える構成である。また、図9(a)〜(c)は、スキャン範囲調整部51、刻み角調整部52、および保持時間調整部53における電波の送信方向の調整をそれぞれ示している。
【0092】
通信完了数カウント部50は、無線通信を行って正常に完了したRFIDタグ3の情報を無線処理部22から受信することにより、上記通信完了したRFIDタグ3の数をカウントするものである。通信完了数カウント部50は、上記通信完了したRFIDタグ3のカウント情報をスキャン範囲調整部51、刻み角調整部52、および保持時間調整部53に送信する。
【0093】
スキャン方向指示部54は、スキャン範囲調整部51、刻み角調整部52、および保持時間調整部53から受信した電波の送信方向θの指示に基づき、アンテナ部23を制御するものである。具体的には、スキャン方向指示部54は、上記電波の送信方向θの指示に基づき、図5に示される各アンテナ素子41から送信する電波の位相φkを上記式(1)に基づいて計算し、計算した位相φkをアンテナ部23の各可変移相器42に送信するものである。
【0094】
スキャン範囲調整部51は、図9(a)に示されるように、電波の送信方向に関して、スキャンの開始角a(rad)とスキャンの終了角b(rad)とを調整するものである。また、スキャン範囲調整部51は、調整されたスキャンの開始角aおよび終了角bを記憶部21に記憶して、実際の動作で利用される。なお、角度の基準となる方向は水平方向や鉛直方向など、任意の方向を選択することができる。
【0095】
具体的には、スキャン範囲調整部51は、まず、或るスキャンの開始角aおよび終了角b、所定の刻み角Δθ(rad)、ならびに所定のスキャン時間T(s)で1回のスキャンを行うようにスキャン方向指示部54に指示する。その後、所定のスキャン時間Tに通信が完了したRFIDタグ3の数を通信完了数カウント部50から取得する。そして、これらの動作を、スキャンの開始角aおよび終了角bを種々に変更して繰り返すことにより、1回のスキャンで通信が完了したRFIDタグ3の数が最も多いスキャンの開始角aおよび終了角bを決定する。
【0096】
刻み角調整部52は、図9(b)に示されるように、電波の送信方向を変更するときの変更量を示す刻み角Δθを調整するものである。また、刻み角調整部52は、調整された刻み角Δθを記憶部21に記憶して、実際の動作で利用される。
【0097】
具体的には、刻み角調整部52は、まず、スキャン範囲調整部51が決定したスキャンの開始角aおよび終了角b、或る刻み角Δθ、ならびに所定のスキャン時間Tで1回のスキャンを行うようにスキャン方向指示部54に指示する。その後、所定のスキャン時間Tに通信が完了したRFIDタグ3の数を通信完了数カウント部50から取得する。そして、これらの動作を、刻み角Δθを種々に変更して繰り返すことにより、1回のスキャンで通信が完了したRFIDタグ3の数が最も多い刻み角Δθを決定する。
【0098】
保持時間調整部53は、図9(c)に示されるように、或る方向への電波の送信を保持する保持時間t(s)を調整するものである。また、保持時間調整部53は、調整された保持時間tを記憶部21に記憶して、実際の動作で利用される。
【0099】
具体的には、保持時間調整部53は、まず、スキャン範囲調整部51が決定したスキャンの開始角aおよび終了角b、刻み角調整部52が決定した刻み角Δθ(rad)、ならびに或る保持時間tでスキャンを行うようにスキャン方向指示部54に指示する。その後、1回のスキャンで通信が完了したRFIDタグ3の数を通信完了数カウント部50から取得する。そして、これらの動作を、保持時間tを種々に変更して繰り返すことにより、1回のスキャンで通信が完了したRFIDタグ3の数が最も多い保持時間tを決定する。
【0100】
図10は、上記構成のRFIDシステム1において、リーダ/ライタ2からの電波の送信方向を調整する処理の流れを示している。この調整は、実際の運用に沿った動作状態で行われる。
【0101】
まず、基準ワークの設定が行われる(ステップS10。以下、単に「S10」と記載することがある。他のステップについても同様である。)。具体的には、例えば航空手荷物を非接触で自動的に認識するようなケースを考えると、まず、運搬手段5であるベルトコンベアに実際に流れるスーツケース、ダンボールなどのワーク4にRFIDタグ3を取り付ける。一方、リーダ/ライタ2は、適当な場所にアンテナを設置し、アンテナの周辺環境を運用時と同じとする。次に、RFIDタグ3を有するワーク4をコンベア5上で実際の運搬速度で流し、所定時間T内に所定数のワーク4が、リーダ/ライタ2との通信領域内を通過するようにする。
【0102】
次に、スキャン範囲調整部51が、上述の調整動作を行って、スキャン範囲a〜bの最適化を行い(S11)、刻み角調整部52が、上述の調整動作を行って、刻み角Δθの最適化を行い(S12)、保持時間調整部53が、上述の調整動作を行って、保持時間tの最適化を行う(S13)。
【0103】
以上より、最適なスキャン動作の条件が決定され、この条件を初期条件として記憶部21に記憶し、実際の運用に利用される。
【0104】
したがって、本実施形態では、最適なスキャン動作の条件が自動的に決定されるので、アンテナを設置した初期設定時やメインテナンス時に、所望の領域が通信領域となるようにアンテナのチューニングを行うことが容易となる。また、初期設定時やメインテナンス時だけでなく、実際の運用中でも適宜行うことができる。
【0105】
なお、スキャン範囲a〜b、刻み角Δθ、および保持時間tの調整動作の順番は、種々に変更可能である。また、保持時間tを調整する代わりに、所定時間Tを調整しても良い。
【0106】
次に、リーダ/ライタ2に用いられるビームスキャンアンテナ40の本数および設置位置について図11に基づいて説明する。図11は、リーダ/ライタ2のビームスキャンアンテナ40が送信する電波のスキャン範囲を示している。同図(a)は、1個のビームスキャンアンテナ40のみを設けた場合を示しており、同図(b)は、2個のビームスキャンアンテナ40を上下方向に設けた場合を示しており、同図(c)は、2個のビームスキャンアンテナ40を対向し、かつ上下方向にずらして設けた場合を示している。
【0107】
図11(a)を図11(b)・(c)と比較すると、ビームスキャンアンテナ40を1個設けた場合には、スキャン範囲60が広いため、1回のスキャンに必要な時間が長くなる。また、下方への傾きが大きいので、電波の送信方向と床面7とのなす角が大きくなり、床面7で反射した反射波が後方(図面の右側)に広がって、マルチパス干渉が増大する虞がある。
【0108】
これに対し、図11(b)・(c)に示されるように、ビームスキャンアンテナ40を上下方向に2個設けた場合には、スキャン範囲60が狭いので、1回のスキャンに必要な時間が短くなる。また、下方への傾きが小さいので、上側のビームスキャンアンテナ40は、電波の送信方向が床面と交わらず、マルチパス干渉を防止することができる。さらに、下側のビームスキャンアンテナ40は、電波の送信方向と床面とのなす角が小さく、床面で反射した反射波が後方にさほど広がらないので、マルチパスの干渉を抑えることができる。
【0109】
したがって、リーダ/ライタ2は、複数個のビームスキャンアンテナ40を利用することが望ましい。また、床面からの反射波によるマルチパス干渉を抑えるため、リーダ/ライタ2は、複数個のビームスキャンアンテナ40を上下方向、すなわち床面に垂直な方向に配備することが望ましい。
【0110】
ところで、図11(a)〜(c)から理解できるように、リーダ/ライタ2がビームスキャンアンテナ40を介してRFIDタグ3と通信可能となる通信領域は、ビームスキャンアンテナ40に近い方が狭く、遠い方が広くなる。このため、図11(a)・(b)に示されるように、ビームスキャンアンテナ40に近い領域には、スキャンしてもビームが到達しない領域が存在し、この領域では通信不能領域となるおそれがある。また、図11(b)に示されるように、ビームスキャンアンテナ40から遠い領域には、各ビームスキャンアンテナ40の通信領域が互いに重なる領域が存在し、この領域では混信の可能性がある。
【0111】
そこで、図11(c)に示されるように、複数個のビームスキャンアンテナ40を対向して配置することが望ましい。この場合、一方のビームスキャンアンテナ40に近い領域は、対向するビームスキャンアンテナ40の通信領域となるので、上記通信不能領域が発生することを防止できる。さらに、互いに対向するビームスキャンアンテナ40を、床面7に略垂直な方向にずらして配置すれば、図11(c)に示されるように、互いの通信領域が重なる領域が少なくなり、複数のビームスキャンアンテナ40からの電波が混信することを防止できる。
【0112】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0113】
例えば、上記実施形態では、リーダ/ライタ2は、RFIDタグ3に対し情報の読み書きを行っているが、RFIDタグ3から情報を読み取るリーダ機能のみを有しても良いし、RFIDタグ3に対し情報を書き込むライタ機能のみを有しても良い。また、リーダ/ライタ2は、RFIDタグ3が送信する電波をビームスキャンアンテナで受信しても良いし、別途設けたアンテナで受信しても良い。
【0114】
また、上記実施形態では、送信する電波のビームの進行方向を、床面に垂直な方へ変更しているが、最も強い反射波が生じる反射面が側面8である場合には、電波のビームの進行方向を側面8に垂直な方へ変更することが望ましい。このように、送信する電波のビームの進行方向が含まれる面は、上記反射面に略垂直であることが望ましい。
【0115】
また、上記実施形態では、スキャン方向Scを含む面は、図6に示されるように床面7と垂直な面であるが、床面7と平行な面以外の面、すなわち床面7と交わる面であれば、任意の面を選択することができる。例えば、図12は、図6(c)に対応するものであり、スキャン方向Scを含む面を、床面7から45度傾斜した場合を示している。この場合でも、直接波の電波強度と床面7からの反射波の電波強度が変化して、マルチパス干渉による通信不能領域の発生を抑えることができる。
【0116】
さらに、図2(a)(b)に示されるように、床面7に垂直な方向にビームが絞られていればマルチパス干渉による通信不能領域の発生を抑えることができる。したがって、ビームは、スキャン方向Scに関係なく、少なくとも一方向に絞られており、上記ビームが絞られている方向のうち少なくとも一方向が、最も強い反射波の生じる反射面と交わればよい。
【0117】
また、リーダ/ライタ2の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0118】
すなわち、リーダ/ライタ2は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM、上記プログラムを展開するRAM、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるリーダ/ライタ2の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記リーダ/ライタ2に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0119】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0120】
また、リーダ/ライタ2を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された搬送波あるいはデータ信号列の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明に係るRFIDシステムは、リーダ/ライタのアンテナから送信する電波のビームのスキャン方向を含む面が、最も強い反射波の生じる反射面と交わるように、ビームをスキャンすることにより、マルチパス干渉による通信不能領域の発生を抑えることができるので、電波を送信する形態のRFIDシステムであれば、任意の周波数の電波に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の一実施形態であるRFIDシステムの概要を示す正面図である。
【図2】RFIDリーダ/ライタのアンテナから或るRFIDタグに送信される直接波および反射波を示す正面図であり、同図(a)・(b)は、指向性の強いビームの進行方向が、上記直接波の進行方向、および上記反射波の反射前の波の進行方向と、それぞれ同じである上記RFIDシステムの場合を示しており、同図(c)は、指向性の弱いビームを送信する従来の場合を示している。
【図3】上記RFIDシステムにおけるRFIDリーダ/ライタの概略構成を示すブロック図である。
【図4】上記RFIDシステムにおけるRFIDタグの概略構成を示すブロック図である。
【図5】上記RFIDリーダ/ライタに設けられる、移相器を利用したビームスキャンアンテナの概要を示す模式図である。
【図6】上記ビームスキャンアンテナが送信する電波のビーム形状を示しており、同図(a)は平面図であり、同図(b)は正面図であり、同図(c)はビームスキャンアンテナと対向する側から見た側面図である。
【図7】上記RFIDリーダ/ライタと上記RFIDタグとの通信領域の分布を示すグラフであり、同図(a)〜(c)は指向性の強い電波を、斜め上方、水平方向、および斜め下方に送信した場合をそれぞれ示しており、同図(d)は指向性の弱い電波を送信した場合を比較例として示している。
【図8】上記RFIDリーダ/ライタの制御部において、送信する電波のビームのスキャン調整を行う機能構成を示すブロック図である。
【図9】同図(a)〜(c)は、上記スキャン調整に関するスキャン範囲、刻み角、および保持時間の調整の内容を示す図である。
【図10】上記スキャン調整の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】上記RFIDリーダ/ライタのビームスキャンアンテナが送信する電波のスキャン範囲を示す正面図であり、同図(a)は、1個ビームスキャンアンテナのみを設けた場合を示しており、同図(b)は、2個のビームスキャンアンテナを上下方向に設けた場合を示しており、同図(c)は、2個のビームスキャンアンテナを対向し、かつ上下方向にずらして設けた場合を示している。
【図12】上記ビームスキャンアンテナが送信する電波の別のビーム形状を、ビームスキャンアンテナと対向する側から見た側面図であり、スキャン方向を含む面を、床面から45度傾斜した場合を示している。
【図13】RFIDリーダ/ライタが、指向性の弱いアンテナを利用する場合に、RFIDタグと通信可能な領域を示す側面図である。
【図14】RFIDリーダ/ライタが、指向性の強いアンテナを利用する場合に、RFIDタグと通信可能な領域を示す側面図である。
【符号の説明】
【0123】
1 RFIDシステム(タグ通信システム)
2 RFIDリーダ/ライタ(タグ通信装置)
3 RFIDタグ
6 反射強度低減体
22 無線処理部(通信手段)
23 アンテナ部(タグ通信用アンテナ)
40 ビームスキャンアンテナ(タグ通信用アンテナ)
41 アンテナ素子
42 可変移相器(移相器)
50 通信完了数カウント部(カウント手段)
51 スキャン範囲調整部(スキャン調整手段)
52 刻み角調整部(スキャン調整手段)
53 保持時間調整部(スキャン調整手段)
54 スキャン方向指示部(スキャン制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置に用いられるタグ通信用アンテナであって、
送信する電波のビームをスキャンするとともに、
上記ビームは、少なくとも一方向に絞られており、上記ビームが絞られている方向のうち少なくとも一方向が、最も強い反射波の生じる反射面と交わることを特徴とするタグ通信用アンテナ。
【請求項2】
上記ビームが絞られている方向のうち上記反射面と交わる方向を、上記ビームのスキャン方向とすることを特徴とする請求項1に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項3】
上記スキャン方向を含む面は、上記反射面に略垂直であることを特徴とする請求項2に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項4】
上記ビームの進行方向は、少なくとも、上記反射面に略平行な方向を含むことを特徴とする請求項3に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項5】
上記ビームは、上記スキャン方向にのみ絞られていることを特徴とする請求項2に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項6】
上記反射面から離間して配置されることを特徴とする請求項1に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項7】
移相器が複数のアンテナ素子に送信する信号の位相をずらすことにより、上記ビームをスキャンすることを特徴とする請求項1に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項8】
上記送信する電波は、マイクロ波であることを特徴とする請求項1に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項9】
RFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置であって、
請求項1ないし8の何れか1項に記載のタグ通信用アンテナと、
該タグ通信用アンテナから送信する電波のビームのスキャンを制御するスキャン制御手段とを備えることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項10】
複数個の上記タグ通信用アンテナを備えることを特徴とする請求項9に記載のタグ通信装置。
【請求項11】
少なくとも2つの上記タグ通信用アンテナを、最も強い反射波が生じる反射面に略垂直な方向に離間して配置することを特徴とする請求項10に記載のタグ通信装置。
【請求項12】
少なくとも2つの上記タグ通信用アンテナを、対向して配置することを特徴とする請求項10または11に記載のタグ通信装置。
【請求項13】
上記タグ通信用アンテナを介して上記RFIDタグと無線通信を行う通信手段と、
該通信手段が無線通信を完了した上記RFIDタグの数をカウントするカウント手段と、
上記タグ通信用アンテナが或るスキャン時間に或るスキャン範囲を或る刻み角でスキャンを行うようにスキャン制御手段に指示し、上記スキャンの間に上記カウント手段がカウントしたRFIDタグの通信完了数を取得し、これを種々のスキャン時間、スキャン範囲、および刻み角について繰り返すことにより、RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を決定することにより、上記ビームのスキャンを調整するスキャン調整手段とをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のタグ通信装置。
【請求項14】
請求項9ないし13の何れか1項に記載のタグ通信装置と、
該タグ通信装置のタグ通信用アンテナが送信する電波の反射面に設けられた、反射波の電波強度を低減する反射強度低減体とを備えることを特徴とするタグ通信システム。
【請求項15】
請求項1ないし8の何れか1項に記載のタグ通信用アンテナが送信する電波のビームのスキャンを調整するスキャン調整方法であって、
或るスキャン時間に或るスキャン範囲を或る刻み角で上記スキャンを行うスキャンステップと、
上記スキャンの間に無線通信が完了したRFIDタグの通信完了数をカウントするカウントステップと、
上記スキャンステップおよびカウントステップを、種々のスキャン時間、スキャン範囲、および刻み角について繰り返す繰返しステップと、
該繰返しステップにより、上記RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を決定する決定ステップとを含むことを特徴とするタグ通信用アンテナのスキャン調整方法。
【請求項16】
請求項13に記載のタグ通信装置を動作させるためのスキャン調整プログラムであって、コンピュータを上記スキャン調整手段として機能させるためのスキャン調整プログラム。
【請求項1】
電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置に用いられるタグ通信用アンテナであって、
送信する電波のビームをスキャンするとともに、
上記ビームは、少なくとも一方向に絞られており、上記ビームが絞られている方向のうち少なくとも一方向が、最も強い反射波の生じる反射面と交わることを特徴とするタグ通信用アンテナ。
【請求項2】
上記ビームが絞られている方向のうち上記反射面と交わる方向を、上記ビームのスキャン方向とすることを特徴とする請求項1に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項3】
上記スキャン方向を含む面は、上記反射面に略垂直であることを特徴とする請求項2に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項4】
上記ビームの進行方向は、少なくとも、上記反射面に略平行な方向を含むことを特徴とする請求項3に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項5】
上記ビームは、上記スキャン方向にのみ絞られていることを特徴とする請求項2に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項6】
上記反射面から離間して配置されることを特徴とする請求項1に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項7】
移相器が複数のアンテナ素子に送信する信号の位相をずらすことにより、上記ビームをスキャンすることを特徴とする請求項1に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項8】
上記送信する電波は、マイクロ波であることを特徴とする請求項1に記載のタグ通信用アンテナ。
【請求項9】
RFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置であって、
請求項1ないし8の何れか1項に記載のタグ通信用アンテナと、
該タグ通信用アンテナから送信する電波のビームのスキャンを制御するスキャン制御手段とを備えることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項10】
複数個の上記タグ通信用アンテナを備えることを特徴とする請求項9に記載のタグ通信装置。
【請求項11】
少なくとも2つの上記タグ通信用アンテナを、最も強い反射波が生じる反射面に略垂直な方向に離間して配置することを特徴とする請求項10に記載のタグ通信装置。
【請求項12】
少なくとも2つの上記タグ通信用アンテナを、対向して配置することを特徴とする請求項10または11に記載のタグ通信装置。
【請求項13】
上記タグ通信用アンテナを介して上記RFIDタグと無線通信を行う通信手段と、
該通信手段が無線通信を完了した上記RFIDタグの数をカウントするカウント手段と、
上記タグ通信用アンテナが或るスキャン時間に或るスキャン範囲を或る刻み角でスキャンを行うようにスキャン制御手段に指示し、上記スキャンの間に上記カウント手段がカウントしたRFIDタグの通信完了数を取得し、これを種々のスキャン時間、スキャン範囲、および刻み角について繰り返すことにより、RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を決定することにより、上記ビームのスキャンを調整するスキャン調整手段とをさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のタグ通信装置。
【請求項14】
請求項9ないし13の何れか1項に記載のタグ通信装置と、
該タグ通信装置のタグ通信用アンテナが送信する電波の反射面に設けられた、反射波の電波強度を低減する反射強度低減体とを備えることを特徴とするタグ通信システム。
【請求項15】
請求項1ないし8の何れか1項に記載のタグ通信用アンテナが送信する電波のビームのスキャンを調整するスキャン調整方法であって、
或るスキャン時間に或るスキャン範囲を或る刻み角で上記スキャンを行うスキャンステップと、
上記スキャンの間に無線通信が完了したRFIDタグの通信完了数をカウントするカウントステップと、
上記スキャンステップおよびカウントステップを、種々のスキャン時間、スキャン範囲、および刻み角について繰り返す繰返しステップと、
該繰返しステップにより、上記RFIDタグの通信完了数が最大となるように、スキャン時間、スキャン範囲、および刻み角を決定する決定ステップとを含むことを特徴とするタグ通信用アンテナのスキャン調整方法。
【請求項16】
請求項13に記載のタグ通信装置を動作させるためのスキャン調整プログラムであって、コンピュータを上記スキャン調整手段として機能させるためのスキャン調整プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−20083(P2006−20083A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195979(P2004−195979)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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