説明

タックラベル付きポリエステル製ボトル

【課題】ラベル貼着後、常温の水によっては剥離しにくく、且つ熱水により容易に剥離、除去できるタックラベルおよびボトルを得る。
【解決手段】タックラベル1がポリエステル製ブローボトルの胴部表面に貼着されているタックラベル付きポリエステル製ボトルであって、該タックラベルは少なくとも一方の面に印刷層3が設けられたラベル基材2の裏面側に熱水可溶性接着剤からなる接着剤層5が設けられており、前記ラベル基材が比重1未満の材料で形成されているとともに、前記接着剤層が、本タックラベルをポリエステル製ブローボトルに該接着剤層を介して貼着したタックラベル付きポリエステル製ボトルを40℃の水に浸漬した場合には30分以上剥離せず且つ75℃以上の熱水に浸漬した場合には30分以内に剥離可能な接着剤で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル製ボトルなどの表面に接着剤層を介して貼着されるタックラベルと該タックラベルが貼着されたタックラベル付きポリエステルボトル、さらに詳しくは、ポリエステル製ボトルをリサイクルする際のラベル剥離作業を容易に行うことのできるタックラベル及びタックラベル付きポリエステル製ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水、清涼飲料水、ジュース、茶、紅茶、日本酒、焼酎などの容器としてポリエステル製ボトル(いわゆるPETボトルなど)が広く利用されている。このポリエステル製ボトルに対し、近年、環境保護の観点からリサイクルの要請が著しく高まっている。ポリエステル製ボトルには、商品名や内容物などを表示するためのラベルが貼付されている場合があり、ポリエステル製ボトルをリサイクルする場合にはこのラベルを再生処理設備における再生処理工程(熱水処理等)において剥離、除去させる必要がある。また、再生処理を効率よく行うため、ボトルを廃棄する前に各家庭でラベルを剥離することが望まれている。このため、前記ラベルはボトルへの貼着性及び貼着操作性に優れるという特性とともに、ボトル内容物が消費されるまではボトルに密着性よく貼着されて容易には剥離せず、内容物消費後には簡易に剥離できるという相反する特性が要求される。また、空のボトルにラベルを貼付した後、内容物を充填する場合には、内容物充填前にボトル内を水や弱アルカリ性洗浄液などで洗浄することが多い。この洗浄工程では、ラベルは剥がれず、貼着された状態を保持している必要がある。
【0003】
実公平6−3423号公報には、容器をリサイクル使用する際のラベル剥離作業を簡易化できる容器用タックラベルとして、ラベル基材の裏面側に接着剤層が設けられたタックラベルであって、ラベル基材の容器表面への貼着時に、該ラベル基材と容器表面との間にラベル剥離用液体の浸入路が形成されるように、前記接着剤層が部分的に設けられた容器用タックラベルが開示されている。また、特開平8−30201号公報には、低温、短時間のシャワーリングによっても容易に剥離できる容器用ラベルとして、ラベル基材の裏面側に接着剤層からなる接着部が部分的に設けられ、且つラベル基材に前記接着部に通ずる複数個のラベル剥離用液体の浸入孔が設けられた容器用ラベルが開示されている。さらに、実公平7−31261号公報には、基材の裏面全面に形成された粘着剤層を不粘着性のマスキング剤で網目状にマスキングして、粘着剤層の露出状態を無数の微細で均一な網点状とするとともに、ラベルの一端縁側における粘着剤層の一部分を前記マスキング剤により完全に被覆した粘着ラベルが開示されている。
【0004】
しかし、これらのラベルを前記ポリエステル製ボトルに適用した場合、上記内容物充填前の洗浄工程において、洗浄液が前記ラベル剥離用液体の浸入路や網目状のマスキング部に浸入して貼付したラベルの接着力が低下し、剥離するおそれがある。また、流通過程において、前記ラベル剥離用液体の浸入路や網目状のマスキング部に塵芥などの異物が混入しやすいという問題も生じる。
【0005】
【特許文献1】実公平6−3423号公報
【特許文献2】特開平8−30201号公報
【特許文献3】実公平7−31261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、ボトルへの貼着性及び貼着操作性に優れるとともに、ラベル貼着後、ボトル内容物が消費されるまではボトルから剥離しにくく、且つボトル内容物消費後には簡単に剥離、除去できるタックラベル、及び該タックラベル付きポリエステル製ボトルを提供することにある。
本発明の他の目的は、ラベル貼着後、常温の水によっては剥離しにくく、且つ熱水により容易に剥離、除去できるタックラベル、及び該タックラベル付きポリエステルボトルを提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、再生処理設備における再生処理工程において剥離、除去することができ、且つ手でも容易に剥離できるタックラベル及びタックラベル付きポリエステル製ボトルを提供することにある。
本発明の別の目的は、ラベルとボトルとの間に異物が混入しにくいタックラベル及びタックラベル付きポリエステル製ボトルを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、ラベル剥離操作後のラベルとボトルとを容易に分離できるタックラベル及びタックラベル付きポリエステル製ボトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、ラベル基材上に設けられた特定の接着剤からなる接着剤層表面の特定部位を非粘着性マスキング剤で被覆すると、ポリエステル製ボトルへのラベル貼着後、ボトルの内容物が消費されるまではラベルが剥離しにくく、しかもボトルのリサイクル(回収、再生処理、再利用)のためラベルを熱水処理等の再生処理設備における再生工程で剥離、除去でき、且つ手で容易に剥離、除去できること、及びラベル基材上に特定の接着剤で形成された接着剤層を設けると、ラベル貼着後、常温の水に浸漬しても容易には剥離しないが、熱水に浸漬すると簡単に剥離、除去できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、タックラベルがポリエステル製ブローボトルの胴部表面に貼着されているタックラベル付きポリエステル製ボトルであって、該タックラベルは、少なくとも一方の面に印刷層が設けられたラベル基材の裏面側に熱水可溶性接着剤からなる接着剤層が設けられており、前記ラベル基材が比重1未満の材料で形成されているとともに、前記接着剤層が、該タックラベルをポリエステル製ブローボトルに該接着剤層を介して貼着したタックラベル付きポリエステル製ボトルを40℃の水に浸漬した場合には30分以上剥離せず且つ75℃以上の熱水に浸漬した場合には30分以内に剥離可能な接着剤で形成されていることを特徴とするタックラベル付きポリエステル製ボトルを提供する。
【0010】
タックラベルの接着剤層の表面のうち少なくとも一端縁部に非粘着性マスキング層が設けられていてもよい。また、タックラベルのラベル基材が、比重1未満の合成紙又は延伸ポリプロピレンフィルムにより形成されていてもよく、熱水可溶性接着剤がアクリル系の水溶性粘着剤であってもよい。
【0011】
なお、本明細書では、ラベル基材の表面側に印刷層が設けられ且つ裏面側に熱水可溶性接着剤からなる接着剤層と前記接着剤層を部分的に被覆する非粘着性マスキング層とが設けられているタックラベルであって、前記ラベル基材が比重1未満の材料で形成されているとともに、前記マスキング層が前記接着剤層の表面のうち中央部と該中央部から離隔した一端縁部とに、前記接着剤層が環状に露出するように設けられているタックラベルを「タックラベルA」と略称する場合がある。
【0012】
また、少なくとも一方の面に印刷層が設けられたラベル基材の裏面側に熱水可溶性接着剤からなる接着剤層が設けられているタックラベルであって、前記ラベル基材が比重1未満の材料で形成されているとともに、前記接着剤層が、本タックラベルを被着物に該接着剤層を介して貼着した接着物を40℃の水に浸漬した場合には30分以上剥離せず且つ75℃以上の熱水に浸漬した場合には30分以内に剥離可能な接着剤で形成されているタックラベルを「タックラベルB」と略称する場合がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタックラベルA及び該タックラベル付きポリエステル製ボトルによれば、非粘着性マスキング層が、熱水可溶性接着剤からなる接着剤層の表面のうち特定の部位に、前記接着剤層が環状に露出するように設けられているとともに、ラベル基材の比重が1未満であるため、ボトルへのラベル貼着性及び貼着操作性に優れるとともに、ラベル貼着後、ボトル内容物が消費されるまではボトルからラベルが剥離しにくく、且つボトル内容物消費後には簡単にラベルを剥離、除去することができる。また、ラベルを再生処理設備における再生工程で剥離、除去できるだけでなく、手によっても容易に剥がすことができ、ラベルとボトルとの間に異物も混入しにくい。
【0014】
また、本発明のタックラベルB及び該タックラベル付きポリエステル製ボトルによれば、粘着剤層が特定の接着剤で形成されており、しかもラベル基材の比重が1未満であるため、ラベル貼着後、常温の水によっては剥離しにくく、ボトル内部等の水洗が可能であるとともに、所定の役割を果たした後には、再生処理設備における熱水処理工程などにより容易に剥離、除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明のタックラベルの一例を示す正面図、図2はその背面図、図3はそのIII−III線断面図である。図4は本発明のタックラベル付きポリエステル製ボトルの一例を示す斜視図である。
【0016】
このタックラベル1では、ほぼ矩形状のラベル基材2の表面側に、商品名や内容物等を表示するための印刷層3と該印刷層3を被覆する被覆層4とがこの順に設けられ、ラベル基材2の裏面側に、被貼着物表面に貼着するための接着剤層5と該接着剤層5を部分的に被覆する非粘着性マスキング層6とが順次設けられている。前記ラベル基材2は比重が1未満の材料で形成されている。また、接着剤層5は、熱水可溶性接着剤からなり、ラベル基材2の裏面側の全面に亘って形成されている。さらに、非粘着性マスキング層6は接着剤層5の表面のうち周縁部を除いた中央部6aと該中央部6aから離隔した一端縁部6b(例えば角部)とに形成されており、接着剤層5はタックラベル1の全周に亘り環状(額縁状)に露出している。
【0017】
このタックラベル1を、図4に示されるようにポリエステル製ブロー(成形)ボトル7の表面に貼着する場合、接着剤層5がラベルの全周に亘り環状に露出しているため、自動ラベル貼着機によりラベルの貼着を円滑且つ容易に行うことができるとともに、不用意な剥離を生じさせることなく美麗に且つ確実に貼着できる。また、ボトル7にタックラベル1を貼付した後、内容物を充填する前に、ボトル7内を常温(例えば15℃)の水や弱アルカリ性洗浄液などで洗浄しても、ラベル剥離用液体の浸入路や網目状のマスキング部等が形成された従来のラベルのように水などの洗浄液がラベル全体に容易に浸入することがなく、上記工程でのラベルの接着力の低下を防止できる。さらに、ラベル貼着後の流通過程において、塵芥などの異物がボトル7とタックラベル1との間に入り込むのも抑制できる。
【0018】
一方、上記タックラベル1では、粘着剤層5の表面のうち一端縁部6b(すなわち、タックラベル1の端縁部)が非粘着性マスキング層6で被覆されているため、タックラベル1をボトル7に貼付した際、タックラベル1とボトル7表面との間に引き剥がし用の非接着部(つまみ部)が確保される。また、接着剤層5の表面のうち中央部6aも非粘着性マスキング層で被覆されていることから、ボトル7との接着面積が非常に小さい。例えば、接着剤層5の露出面積を、マスキング層を設けない場合の接着剤層5の全表面積に対して、例えば10〜60%(好ましくは15〜40%程度)に低減できる。そのため、ボトル7の内容物が消費された後にタックラベル1を剥離する際には、前記非接着部に爪などを差し入れてタックラベル1の端縁部をつまんで引き起こすことにより、簡単に剥がすことができる。例えば、接着剤層が全面露出したタックラベルと比較し、例えば約5分の1程度の力で剥離することが可能である。なお、接着剤層5の露出面積が小さくても、前記のように、接着剤層5がラベルの全周に亘り切れ目なく環状に露出しているため、不用意な剥離が生じることがない。
【0019】
また、接着剤層5が熱水可溶性接着剤で構成されているため、タックラベル1を貼着したタックラベル付きボトルを熱水に浸漬すると、接着力が大きく低下し、剥離する。この際、前記のようにボトル7との接着面積が極めて小さいため、タックラベル1を容易に剥離できる。しかも、前記接着剤は熱水に溶解するため、剥離したタックラベル1はボトル7に再付着しにくい。さらに、ボトル7はポリエステルからなるブロー成形品であるため、熱水に浸漬すると熱収縮変形する。このときの熱収縮力はタックラベル1とボトル表面との位置ずれ作用を起こし、タックラベル1の剥離促進に寄与する。このため、ポリエステル製ボトルの再生処理工程において、例えば、前記タックラベル1を貼付したポリエステル製2軸延伸ブロー(成形)ボトルを熱水処理することにより、熱水が接着剤を溶解させ、接着力を低下させるとともに、ボトルが縦横2軸に収縮変形し、タックラベル1はボトル表面との位置ずれを起こし容易に剥離する。また、前記接着剤は熱水に溶解されているため、タックラベル1がボトル表面に再付着することはない。
【0020】
また、ポリエステルの比重は1以上(1.3〜1.4程度)であるためボトル7(又はその粉砕物)は水中に沈むのに対し、ラベル基材2は比重1未満の材料で形成されているので水に浮くという性質を有する。このため、ポリエステル製ボトルの再生工程において、例えば、使用済みボトルを洗浄、粉砕し、攪拌洗浄した後、剥離したタックラベル1(粉砕物)とボトル7(粉砕物)とを、水中での浮き沈み(比重差)を利用して極めて容易に分離できる。
【0021】
このように、ボトル7に貼着したタックラベル1を再生処理設備における熱水処理等の再生工程で効率よく剥離、除去でき、且つ手でも容易に剥がすことができることから、ポリエステル製ボトルのリサイクルが極めて容易となる。
【0022】
また、上記の例では、印刷層3の表面に被覆層4が形成されているので、印刷層3が保護されるとともに、被覆層4を構成する樹脂等を適宜選択することによりラベル表面に光沢を付与することができる。
【0023】
前記ラベル基材2を構成する材料の比重は1未満であればよく、通常0.3〜0.99、好ましくは0.75〜0.97程度である。ラベル基材2としては、耐水性を有する合成紙、プラスチックフィルムやこれらの積層体等の何れであってもよく、印刷適性、接着剤との親和性、ラベル剥離後のボトルとの分離性等を考慮して適宜選択できる。前記合成紙には、内部紙化法合成紙[商品名:ユポ(王子油化合成紙(株)製)など]、表面塗工法合成紙[商品名:ピーチコート(日清紡績(株)製)など]、スパンボンド法合成紙[商品名:TYVEK(デュポン社製)など]などが含まれる。また、前記プラスチックフィルムとして、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムや発泡ポリスチレンフィルム、発泡ポリエステルフィルム、発泡ポリオレフィンフィルムなどの発泡プラスチックフィルムなどが例示できる。プラスチックフィルムは延伸フィルム及び無延伸フィルムの何れであってもよい。これらの中でも、ラベル基材として、印刷性、剛性、コスト、ラベリング適性などに優れていることから、商品名「ユポ」などのポリオレフィン系樹脂の内部紙化合成紙や延伸ポリプロピレンフィルムが好ましい。
【0024】
ラベル基材2の厚みは、タックラベル1とした際の取扱性、作業性等を損なわない範囲で選択できるが、一般には20〜200μm程度である。
【0025】
ラベル基材2のうち印刷層3側の表面は、印刷性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などの慣用の表面処理が施されていてもよい。
【0026】
印刷層3は、商品名や取扱い注意事項などの文字、画像などを表示する層であり、スクリーン印刷、凸版輪転印刷、グラビア印刷等の慣用の印刷法により形成できる。
【0027】
被覆層4を構成する材料としては、印刷層3を保護可能な材料であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、スチレンをコモノマーとして含むスチレン共重合体などのポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリエステルなどの樹脂などが使用でき、被覆層4はこれらの樹脂のコーティング又はフィルムラミネートにより形成できる。上記樹脂の中でもポリオレフィン系樹脂を用いる場合が多く、例えば、延伸ポリプロピレンフィルムを印刷層3の表面にラミネートすることにより被覆層4を形成できる。被覆層4を構成する材料の比重は、前記ラベル基材2の場合と同様の理由から、1未満(例えば0.85〜0.99程度、特に0.87〜0.97程度)であるのが好ましい。
【0028】
被覆層4の厚みは、タックラベル1とした際の取扱性等を損なわない範囲で適当に選択でき、例えば10〜50μm程度である。
被覆層4は、例えば、粘着ラミネーション、ドライラミネーション、押出ラミネーションなどの慣用のラミネート加工やコーティング加工などにより形成できる。なお、本発明では、必ずしも前記被覆層4を設ける必要はない。
【0029】
前記接着剤層5を構成する熱水可溶性接着剤としては、熱水(例えば60〜100℃程度の熱水)に溶解する接着剤であれば特に限定されないが、常温(例えば15℃)の水には溶解しにくいのが好ましい。特に好ましい接着剤層は、タックラベルを被着物(例えば、ポリエステル製ボトル)に該接着剤層を介して貼着した接着物を40℃の水に浸漬した場合には30分以上(好ましくは2時間以上、さらに好ましくは6時間以上)剥離せず、且つ75℃以上(例えば75〜95℃程度)の熱水に浸漬した場合には30分以内に剥離可能な接着剤で形成されている。このような接着剤層を有するタックラベルを用いると、ラベルをポリエステル製ボトルなどの被着物に貼着した後、この接着物を水に浸漬しても容易には剥がれないので、ラベル貼着後でも内容物の充填等のため水道水などの通常の水によりボトル内部などを洗浄できるとともに、所定の目的を達した後には、熱水により容易に剥離、除去することができる。
【0030】
前記熱水可溶性接着剤として、例えば、アクリル系粘着剤などの感圧接着剤等を使用できる。好ましい熱水可溶性接着剤として、熱水に対する溶解性が高く且つ再接着しにくい接着剤、例えば、ベースポリマーに、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸C2-10アルキルエステル)や、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸C4-12アルキルエステル)を主モノマー成分として、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のコモノマー成分と、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマーや2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー等の成分を主とした共重合体を使用し、親水性を向上させるため、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のノニオン系界面活性剤を加えたものなどのアクリル系水溶性粘着剤などが挙げられる。
接着剤層5の厚みは、例えば3〜100μm、好ましくは10〜40μm程度である。
【0031】
接着剤層5は、熱水可溶性接着剤を含む接着剤組成物(エマルジョン、溶液など)をロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーなどの慣用のコーティング手段を用いてラベル基材2上に塗工することにより形成できる。
【0032】
非粘着性マスキング層6を構成するマスキング剤としては、接着剤層5上に非粘着性の被覆層を形成可能なものであればよく、例えば、ニス、塗料、印刷インク、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、酢酸ビニル、塩化ビニル、ポリスチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール等の合成樹脂などを使用できる。特に、紫外線硬化型の印刷インキを印刷法により施して非粘着性マスキング層6を形成するのが好ましい。
【0033】
非粘着性マスキング層6の厚みは、タックラベル1をボトル7に貼着する際の操作性やタックラベル1の貼着安定性等を損なわない範囲で適宜選択できるが、通常、2〜30μm、好ましくは3〜15μm程度である。
【0034】
非粘着性マスキング層6は、接着剤層5表面のうち中央部に周縁部を環状に余して形成され、かつ接着剤層5表面のうち一端縁部に、ボトルからの剥離作業時にボトル表面との間に引き剥がし用間隙が確保できるように形成されていればよく、その平面形状は、四角形状、三角形状、円状、楕円状等の何れであってもよい。
【0035】
また、非粘着性マスキング層6の全表面積は、接着剤層5(又はラベル基材2)の全表面積に対して、例えば40〜90%、好ましくは60〜85%程度である。非粘着性マスキング層6の表面積が小さすぎると、ボトルからの剥離作業時のラベル剥離性が低下しやすく、逆に前記表面積が大きすぎると、タックラベル貼付後のボトルの流通過程においてタックラベルが不用意に剥がれるおそれが生じる。
非粘着性マスキング層6は、慣用の方法(例えば、特許第1504306号の明細書に記載の糊面印刷法など)により形成できる。
【0036】
なお、本発明のタックラベルBにおいては、必ずしも非粘着性マスキング層を設けなくてもよいが、手で剥がす際につまみやすくするため、接着剤層の表面のうち少なくとも一端縁部に非粘着性マスキング層を設けるのが好ましく、特に、前記のように、非粘着性マスキング層を、接着剤層の表面のうち中央部と該中央部から離隔した一端縁部とに、前記接着剤層が環状に露出するように設けるのが望ましい。
【0037】
タックラベル1の接着剤層5側の表面には、通常、離型シート(セパレータ)(図示せず)が貼付されており、タックラベル1をボトル7に貼着する際には、前記離型シートを剥がして使用に供される。
なお、本発明において、ラベル基材2の形状やサイズは特に限定されず、被貼着物であるポリエステル製ブローボトルの形状、サイズ等に応じて適宜選択できる。
【0038】
本発明のタックラベル付きポリエステル製ボトルにおいて、ブロー成形ボトル7本体を構成する材料としては、慣用のポリエステル樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが使用される。ボトル7は慣用のブロー成形法(例えば2軸延伸ブロー成形)により製造できる。また、ポリエステル製ボトル7へのタックラベル1の貼着は、慣用のラベル貼着機により行うことができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0040】
実施例
ラベル基材2としてのオレフィン系樹脂からなる比重0.84の内部紙化法合成紙[商品名:ユポ(王子油化合成紙(株)製)、170mm×140mm、厚み80μm]の片面に、熱水可溶性接着剤として、アクリル酸ブチルとアクリル酸2−エチルヘキシルを主成分としたアクリル酸アルキルエステル系の共重合体からなるアクリル系のエマルジョン型粘着剤を25μmの厚さに塗布して接着剤層5を形成し、この接着剤層5の上にセパレータを積層してラベル原紙を作製した。このラベル原紙のラベル基材2の表面に印刷層3を形成し、さらに印刷層3の上面に図示しない接着剤層を介して延伸ポリプロピレンフィルム(比重0.92、厚み20μm)を被覆層4として積層し、接着剤層5から前記セパレータを剥離した後、該接着剤層の表面(ラベルとしての裏面側)のうち、中央部6aと該中央部から離隔した一端縁部6bとに、紫外線硬化型印刷インキからなる非粘着性マスキング剤を厚さ5μmで、接着剤層5がラベル周囲に約10mm幅の環状に露出するように塗布し、塗布面に紫外線を照射して該インキを硬化した後、再度セパレータを積層してタックラベル1とした。なお、接着剤層5の露出率は22%であった。
【0041】
このタックラベル1をセパレータから剥離して、容量4lの丸形ポリエステル2軸延伸ブロー成形ボトルに既存のラベラーで貼付したところ、皺、浮きなどなく、美麗に且つ確実に貼着できた。このボトルを8日間室温で保管した後、試験を行った。その結果を以下に示す。
(1)上記タックラベル付きポリエステルボトルを92℃の熱水に30分間浸漬したところタックラベルは完全に剥離した。また、剥離したタックラベルは水に浮き、ボトルと容易に分離できた。
(2)上記タックラベル付きポリエステルボトルのタックラベルは、端縁部6bを指でつまんで引き剥がすと、周囲のみ接着されているため、容易に剥離できた。また、接着部分の剥離強度(JIS Z 0237に規定の「180度引きはがし法」に準ずる)を測定したところ、9.5N/15mmであった。
(3)上記タックラベル付きポリエステルボトルを40℃の水に浸漬し、30分放置したが外観上変化がなく、タックラベルも剥離しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のタックラベルの一例を示す正面図である。
【図2】図1のタックラベルの背面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】本発明のタックラベル付きポリエステル製ボトルの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 タックラベル
2 ラベル基材
3 印刷層
4 被覆層
5 接着剤層
6 非粘着性マスキング層
7 ポリエステル製ブローボトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タックラベルがポリエステル製ブローボトルの胴部表面に貼着されているタックラベル付きポリエステル製ボトルであって、該タックラベルは、少なくとも一方の面に印刷層が設けられたラベル基材の裏面側に熱水可溶性接着剤からなる接着剤層が設けられており、前記ラベル基材が比重1未満の材料で形成されているとともに、前記接着剤層が、該タックラベルをポリエステル製ブローボトルに該接着剤層を介して貼着したタックラベル付きポリエステル製ボトルを40℃の水に浸漬した場合には30分以上剥離せず且つ75℃以上の熱水に浸漬した場合には30分以内に剥離可能な接着剤で形成されていることを特徴とするタックラベル付きポリエステル製ボトル。
【請求項2】
ボトルが熱水浸漬時に熱収縮変形可能である請求項1記載のタックラベル付きポリエステル製ボトル。
【請求項3】
タックラベルの接着剤層の表面のうち少なくとも一端縁部に非粘着性マスキング層が設けられている請求項1又は2記載のタックラベル付きポリエステル製ボトル。
【請求項4】
タックラベルのラベル基材が、比重1未満の合成紙又は延伸ポリプロピレンフィルムにより形成されている請求項1〜3の何れかの項に記載のタックラベル付きポリエステル製ボトル。
【請求項5】
熱水可溶性接着剤がアクリル系の水溶性粘着剤である請求項1〜4の何れかの項に記載のタックラベル付きポリエステル製ボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−293386(P2006−293386A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154496(P2006−154496)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【分割の表示】特願平10−283061の分割
【原出願日】平成10年10月5日(1998.10.5)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】