タッチスイッチ
【課題】指による接触を検出できない検出感度低下領域を小さくすることが可能なタッチスイッチを提供する。
【解決手段】タッチスイッチは、絶縁層と、絶縁層3の一方面側に配置される複数のセンサ電極21と、絶縁層3の一方面側に配置され、前記各センサ電極にそれぞれ連結された複数の配線部22と、絶縁層3の他方面側において、前記各センサ電極21と対向する位置にそれぞれ配置された複数の補助電極4と、複数の補助電極4を覆う絶縁性の保護層5と、を備え、隣接するセンサ電極21間の領域に、隣接する前記補助電極4間の境界が配置されている。
【解決手段】タッチスイッチは、絶縁層と、絶縁層3の一方面側に配置される複数のセンサ電極21と、絶縁層3の一方面側に配置され、前記各センサ電極にそれぞれ連結された複数の配線部22と、絶縁層3の他方面側において、前記各センサ電極21と対向する位置にそれぞれ配置された複数の補助電極4と、複数の補助電極4を覆う絶縁性の保護層5と、を備え、隣接するセンサ電極21間の領域に、隣接する前記補助電極4間の境界が配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式のタッチスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチスイッチの主な方式として、光の変化を検出する方式と、電気的な特性の変化を検出する方式とが知られている。電気的な特性の変化を検出する方式としては、静電容量結合方式が知られており、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のタッチスイッチは、基板上に、複数のセンサ電極を配置することで形成されている。各センサ電極には配線部が連結されており、各配線部が静電容量の検出回路に接続されている。そして、いずれかの補助電極に指を接触させると、この検出回路で、人体の静電容量による変化を検出することで、接触位置が特定される。このとき、センサ電極に流れる電流値を検出することで、接触位置が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記タッチスイッチでは、センサ電極と配線部とが、ともに基板上に配置されている。そのため、センサ電極の数が多くなると、それに伴って配線部も多くなり、基板上に配線部を配置するスペースを確保する必要がある。しかしながら、配線部を配置するスペースは、指や導電性のペンなどを接触させても、これを検出する感度が低下する領域であり、タッチスイッチとしての機能上、これをできるだけ小さくする必要がある。これを解決するため、配線部を細線化することも考えられるが、配線部の数が多くなると、これにも限界がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、指等による接触を検出できない検出感度低下領域を小さくすることが可能なタッチスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタッチスイッチは、絶縁層と、前記絶縁層の一方面側に配置される複数のセンサ電極と、前記絶縁層の一方面側に配置され、前記各センサ電極にそれぞれ連結された複数の配線部と、前記絶縁層の他方面側において、前記各センサ電極と対向する位置にそれぞれ配置された複数の補助電極と、前記複数の補助電極を覆う絶縁性の保護層と、を備え、隣接する前記センサ電極間の領域に、隣接する前記補助電極間の境界が配置されている。
【0007】
この構成によれば、絶縁層を介して、センサ電極と対向する位置に補助電極を形成し、隣接するセンサ電極間の領域に、隣接する前記補助電極間の境界が配置されている。そのため、センサ電極の間に隙間が形成されたり、配線部が配置されるなどして検出感度低下領域が大きくなったとしても、補助電極間の境界をこの検出感度低下領域に配置することで、検出感度低下領域は補助電極によってカバーされる。その結果、検出感度低下領域が低減され、指や導電性のペンなどが、センサ電極間の領域に接触したとしても、検出感度が低下することを防止できる。例えば、センサ電極の数が多くなると、これに伴って配線部の数も多くなり、これによって検出感度低下領域が大きくなる。しかしながら、このような配線部も補助電極によって覆われることで、検出感度低下領域を小さくすることができる。なお、本発明においては、「隣接するセンサ電極間の領域に、隣接する補助電極間の境界が配置されている」としているが、補助電極間の境界の位置は必ずしも厳密にセンサ電極間の領域に配置されていなくてもよく、わずかにずれた位置に境界が配置されていたとしても、検出感度が大きく低下していない限り、「センサ電極間の領域」とは、その近傍も含まれる。
【0008】
上記タッチスイッチにおいては、上述した複数のセンサ電極が配置された基準領域の上方に、複数の補助電極を敷き詰めることが好ましい。これにより、隣接する補助電極間の隙間が小さくなり、検出感度低下領域を小さくすることができる。なお、基準領域とは、少なくともセンサ電極が配置される領域であり、指や導電性のペンなどが接触する可能性のある領域のことをいう。例えば、上記タッチスイッチを表示装置上に配置する場合、表示装置の表示画面全体もしくは操作に用いる表示画面の一部に対応する領域が基準領域となる。
【0009】
上記タッチスイッチにおいては、隣接する補助電極間の隙間を、10μm〜3mmとすることができ、望ましくは100μm〜2mm、さらに望ましくは0.5mm〜1.5mmとすることができる。上述したように、補助電極は、配線部の配線にかかわらず配置できるため、隣接する補助電極間の隙間は、上記のように小さくすることができる。上記範囲外でも可能ではあるが、10μm以下では隣接する補助電極との間の安定的な絶縁がとれない可能性があり、3mm以上では指に対して検出感度低下領域が広くなりすぎるため安定な検出ができないおそれがある。なお、隣接する補助電極間の隙間は、全て同じ長さにする必要はなく、必要に応じて、変更することができる。
【0010】
上記タッチスイッチにおいて、センサ電極は、金属線を網目状に配置することで形成することができる。また、上記配線部は、少なくとも1つ以上の金属線で形成することができる。このように、金属線で形成することで、光透過性を有し、また表面抵抗値が低いセンサ電極が得られる。
【0011】
上記タッチスイッチにおいては、各補助電極は種々の形状にすることができるが、例えば、補助電極の端縁の少なくとも一部が面方向に凹凸を形成するように形成し、隣接する各補助電極の境界が、所定間隔をおいて凹凸が噛み合うように形成されるようにすることができる。このようにすると、隣接する補助電極との境界部分における指の接触の検出感度を向上することができる。
【0012】
また、上記タッチスイッチにおいては、複数のセンサ電極の面積が同一とすることができる。このようにすると、センサ電極と補助電極との間の静電容量が一定になるため、指などが接触するいずれの検出点においても検出感度を揃えることができる。なお、複数のセンサ電極は、完全に同一の面積を要求されるわけではなく、検出感度がほぼ揃う限度において若干の相違は認められる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るタッチスイッチによれば、指による接触を検出できない検出感度低下領域を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るタッチスイッチの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1に示すタッチスイッチの製造方法を示す平面図及び断面図である。
【図4】図1に示すタッチスイッチの製造方法を示す平面図及び断面図である。
【図5】図1に示すタッチスイッチの製造方法を示す平面図及び断面図である。
【図6】従来のタッチスイッチのセンシングメカニズムを説明する図である。
【図7】図1に示すタッチスイッチのセンシングメカニズムを説明する図である。
【図8】図1に示すタッチスイッチの補助電極の他の例を示す平面図である。
【図9】図1に示すタッチスイッチの構造の他の例を示す断面図である。
【図10】図1に示すタッチスイッチのセンサ電極の他の例を示す平面図である。
【図11】図1に示すタッチスイッチのセンサ電極の他の例を示す平面図である。
【図12】本発明に係るタッチスイッチの実施例及び比較例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るタッチスイッチの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、このタッチスイッチの平面図であり、図2は図1のA−A線断面図、図3〜図5は図1に示すタッチスイッチの製造方法を示す平面図及び断面図である。なお、図1は、説明の便宜上、後述する保護層を省いて描いている。
【0016】
本実施形態のタッチスイッチは、液晶表示パネルなどの表示装置の上面に配置される静電容量式のタッチスイッチである。図1及び図2に示すように、このタッチスイッチは、透明の基板1を有しており、この基板1上に、センサ電極21、絶縁層3、補助電極4、及び保護層5がこの順で積層されている。センサ電極21は、矩形状に形成されて基板1上に複数設けられており、指や導電性のペンなどでタッチされる可能性のある基準領域R内に配置されている。そして、図3に示すように、各センサ電極21には、線状に延びる配線部22が一体的に連結されている。各配線部22は、基板1の端部まで延びるように配線されており、その他端部が静電容量検出回路(図示省略)に接続されている。配線部22は、その距離や幅を考慮して低抵抗が好ましく、例えば、表面抵抗率が、10Ω/□以下とすることが好ましい。本実施形態においては、基板1上に10個のセンサ電極21が配置されており、図1及び図3の上下方向に並ぶ5個のセンサ電極21が2列配置されている。ここでは説明の便宜上、図1及び図3の上から下に向かって第1〜第5センサ電極21a〜21eと称する。そして、各列のセンサ電極21a〜21eは同じであるので、図3の右側のセンサ電極について説明する。また、説明の便宜上、図1及び図3の上下方向を長手方向、左右方向を幅方向と称することとする。
【0017】
図3に示すように、第1センサ電極21aは、基板1の長手方向一端部(図3の上側)に配置されており、このセンサ電極21aの右側の端部から長手方向の他端部側(図3の下側)まで配線部22aが直線状に延びている。第2センサ電極21bは、第1センサ電極21aよりも長手方向の他端部側に配置されており、第1センサ電極21aよりも幅方向の長さが小さくなっている。すなわち、各センサ電極21a,21bは、幅方向の左側が揃うように配置されるが、第2センサ電極21bの右側は、第1センサ電極21aの配線部22aに接触しないように、それよりも左側に配置されている。第2センサ電極21bの配線部22bは、第2センサ電極21bの右側の端部から長手方向の他端部側まで、第1センサ電極21aの配線部22aと平行に直線状に延びている。同様にして、第3から第5センサ電極21c〜21eは、長手方向一端部側で隣接するセンサ電極の配線部と接触しないように、センサ電極の幅が徐々に小さくなっており、第5センサ電極21eの幅が最も小さくなっている。また、各配線部22a〜22eは、基板1の端部でL字型に折れ曲がるように形成されており、これによって、基板1の端部での配線部22a〜22e間の間隔を大きくしている。
【0018】
上記のように形成されたセンサ電極21a〜21eの上面には、これらを覆う絶縁層3が形成されている(図4参照)。絶縁層3は、膜厚が10〜500μmであり、すべてのセンサ電極21と配線部22を覆うように配置されている。そして、この絶縁層3上に複数の補助電極4が配置されている。各補助電極4は、センサ電極21と同じく10個配置されており、図1の上下方向に並ぶ5個の補助電極4が2列配置されている。ここでも、センサ電極の説明と同様に、図1の上から下に向かって第1〜第5補助電極4a〜4eと称し、各列の補助電極4a〜4eは同じであるので、図1の右側の補助電極について説明する。各補助電極4a〜4eは、例えば酸化インジウム錫(ITO)の場合、膜厚が10〜100nmであり、絶縁層3上で、各センサ電極21a〜21eと対応する位置に配置されている。全ての補助電極4a〜4eは、同じ大きさの正方形に形成されており、狭い間隔で配置されている。より詳細に説明すると、図2に示すように、隣接するセンサ電極21間の領域Lに、隣接する補助電極4間の境界bが配置されるようになっており、補助電極4によってセンサ電極21間の領域Lが埋められるようになっている。すなわち、センサ電極21間に配置される配線部22が、補助電極4によって覆われるようになっている。このような補助電極4の表面抵抗率は、センサ電極21より高くてもよく、例えば、1kΩ/□以下が好ましく、300Ω/□以下がさらに好ましい。なお、補助電極4は、電気的に独立しており、いずれの部材にも導通していない状態となっている。そして、上記のように配置された複数の補助電極4は、保護層5によって覆われている。保護層5の厚さは、上述した絶縁層3よりも大きいことが好ましく、例えば、0.5〜10mmとすることができる。
【0019】
また、図1に示すように、隣接する補助電極4間の隙間の長さsは、10μm〜3mmとすることができ、望ましくは100μm〜2mm、さらに望ましくは0.5mm〜1.5mmとすることができる。上記範囲外でも可能ではあるが、10μm以下では隣接する補助電極4との間の安定的な絶縁がとれない可能性がある。また、3mm以上では指に対して検出感度低下領域が広くなりすぎるため安定な検出ができないおそれがある。なお、隣接する補助電極4間の隙間の長さsは、全て同じ長さにする必要はなく、位置によって変更することができる。
【0020】
次に、上述した各部材の材料について説明する。まず、基板1から説明する。基板1は透明な無機材料、有機材料、または有機・無機ハイブリッド材料など種々の材料で形成することができ、材質は特には限定されない。例えば、軽量かつ耐衝撃性の点から有機材料が好ましく、フレキシブル性やロール・トゥ・ロールの生産性からプラスチックフィルムが好適である。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)など挙げることができる。但し、これらの材料を単体でなく、密着性向上のためにシランカップリング層などのアンカー層を形成したもの、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理したものや、防傷や耐薬品性向上のためにハードコート層を形成したものを用いることができる。
【0021】
センサ電極21、配線部22、及び補助電極4は、公知の種々の材料で形成することができ、特には限定されないが、必要な導電性及び透明性などの物性から適宜選択することができる。例えば、アルミニウム、銀や銅などの金属、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)などの金属酸化物材料を挙げることができる。また、これらの金属酸化物材料にアルミニウム、ガリウムやチタンなどの金属を添加することもできる。さらに、PEDOT・PSSのような透明導電性ポリマーなどの有機材料も挙げられ、これらを単体で用いてもよいし、複合して用いることもできる。センサ電極21及び配線部22は、上記のように、表面抵抗率を低くする必要があるため、例えば、二層のITOの間に銀の層を挟んだ三層構造にすることができる。
【0022】
絶縁層3は、透明で、且つ導電性がないものであれば特には限定されないが、その上面及び下面に配置される補助電極4及びセンサ電極21との密着性が高いものが望まれる。エポキシ系やアクリル系など、一般的な透明接着剤や粘着剤を用いることができ、ポリエステル系樹脂の透明性フィルム等を含むものであってもよい。厚みは、特に限定されないが、実用上では200μm以下であることが好ましい。
【0023】
保護層5は、一般的なタッチスイッチに用いられる透明な公知の材料で形成することができる。保護層5は、例えば、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、ベンゾシクロブテン(BCB)、ポリエステル又はアクリル酸などで形成することができる。また、ガラスや表面硬化処理がなされたPETなどの樹脂フィルムを積層することもできる。
【0024】
次に、上記のように構成されたタッチスイッチの製造方法について、図3〜図5を参照しつつ説明する。まず、図3に示すように、基板1上に、複数のセンサ電極21及び配線部22を形成する。その形成方法は、種々の方法があるが、例えば、センサ電極21及び配線部22の材料を基板1の全面に形成した後、パターンニングする方法を挙げることができる。この材料を形成する方法は、例えば、真空蒸着、スパッタリングやCVDなどのドライコーティング、グラビアコート、スプレーコートなどのウェットコーティングなどが挙げられる。パターニングする方法は限定されないが、例えば、フォトリソグラフィーやレーザーエッチングなどを挙げることができる。前者は化学薬品で膜除去を行い、後者は特定波長のレーザー光の吸収によって膜除去を行う。センサ電極21及び配線部22のパターニングにはインビジブル性(電極有無の差異が不可視)が付与されることが望ましく、この観点から、10μm以下の幅で膜を除去可能なYAGの第3高調波を用いたレーザーエッチングを用いることが好ましい。レーザーエッチングはフォトリソグラフィーと比して、化学薬品の使用がなく環境に良好かつ工数が少ないことや、フォトマスクが不要でCADデータからパターニングが可能であり配線設計の利便性が高いなどの利点を挙げることができる。その他、銀等のペーストをスクリーン印刷等で細線パターン状に形成することもできる。
【0025】
次に、図4に示すように、センサ電極21及び配線部22全体を覆うように、絶縁層3を形成する。絶縁層3の形成方法は、上述したセンサ電極21と同様の方法で形成することができる。
【0026】
続いて、図5に示すように、絶縁層3上に補助電極4を形成する。補助電極4の形成方法は、上述したセンサ電極21と同様の方法で形成することができる。センサ電極21、配線部22、及び補助電極4のパターニングは、形成順序や材質を考慮して適宜選択する必要がある。最後に、補助電極4上に保護層5を形成する。保護層5は、公知の方法で形成することができる。
【0027】
上記のように構成されたタッチスイッチは、以下のように使用される。タッチ位置の検出方法は、従来の静電容量式のタッチスイッチと同様であり、保護層5表面の任意の位置を指などで触れたときの、静電容量の変化を検出することにより、接触位置が特定される。ここで、上記のように補助電極4を用いた場合のセンシングのメカニズムを考察すると、以下の通りである。まず、図6に示すような補助電極のない従来のタッチスイッチについて説明する。一般的に、タッチスイッチでは、静電容量はセンサ電極21の上方で保護層5にタッチしている指の面積に比例する。図6(a)に示す例では、指のタッチしている部分のすべてがセンサ電極21の上方にあるので、静電容量Cx0は大きくなる。一方、図6(b)に示すように、センサ電極21間の配線部22の上方を指でタッチした場合には、各センサ電極21上にある指の面積が小さいため、各センサ電極21による合成静電容量(Cx01+CX02)は図6(a)の静電容量Cx0と比べて小さくなり、感度が低下する。
【0028】
これに対して、本実施形態のタッチスイッチのように補助電極4を設けると、以下のとおりである。まず、図7(a)に示すように、センサ電極21の上方を指でタッチすると、指とセンサ電極21間の合成静電容量Cnは、次の式で表される。ここで、C0はセンサ電極21と補助電極4間の静電容量であり、Cx1は補助電極4と指との間の静電容量である。
【0029】
Cn=Cx1/(1+Cx1/C0) (1)
このとき、センサ電極21と補助電極4間の距離が十分に小さい場合には、Cx1<<C0となり、上記(1)式のCx1/C0は0に近い数値となるため、Cn≒Cx1となる。
【0030】
一方、図7(b)に示すように、隣り合うセンサ電極21間をタッチした場合、センサ電極21間には、補助電極4が配置されているため、図6(b)とは異なる挙動を示す。すなわち、補助電極4間にも隙間は存在するが、これは
センサ電極21間の隙間に比べて非常に小さいため、センサ電極21間の領域をタッチしたときには、それぞれのセンサ電極21に対応する補助電極4によって、センサ電極21間の隙間を隣り合う補助電極4間で補完できる。したがって、このときの合計静電容量Cnは、以下の式(2)のようになり、図7(a)で示される静電容量Cx1とほぼ同じになる。なお、Cx11は一方の補助電極と指との間の静電容量、Cx12は他方の補助電極と指との間の静電容量である。
【0031】
Cn≒Cx11+Cx12≒Cx1 (2)
以上に示す本実施形態によれば、絶縁層3を介して、センサ電極21と対向する位置に補助電極4を形成し、図2に示すように、隣接するセンサ電極21間の領域Lに、隣接する補助電極4間の境界bが配置されている。そのため、センサ電極21の間に配線部22が配置されることにより検出感度低下領域が大きくなったとしても、補助電極4間の境界bをこの検出感度低下領域に配置することで、検出感度低下領域は補助電極4によってカバーされる。その結果、検出感度低下領域が低減され、指や導電性のペンなどが、センサ電極21間の領域Lに接触したとしても、検出感度を向上することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、センサ電極21及び補助電極4は矩形状に形成されているが、この形状は特には限定されず、多角形状、円形、異形など、種々の形状にすることができる。また、隣接する補助電極4の間には、直線状の隙間が形成されているが、補助電極4の端縁に面方向に延びる凹凸を形成し、この凹凸を噛み合わせることで、隣接する補助電極4の境界を形成することができる。例えば、図8に示すように、補助電極4の端縁に鋭利な突部を複数形成し、これらを噛み合わせることができる。このようにすると、補助電極4間の隙間が直線状である場合に比べ、検出の感度が高くなる。すなわち、補助電極4の端縁に凹凸を形成していると、境界部分に指を置いたときに、隣接するいずれか一方の補助電極4に接触する可能性が高くなり、その結果、検出の感度を向上することができる。なお、凹凸は、上記のような鋭利な形状のみならず、矩形状、波形など、種々の形状が可能である。
【0033】
また、上記実施形態では、センサ電極21、配線部22、及び補助電極4を直接積層していたが、これらをフィルム状に形成したものを積層することもできる。例えば、図9に示す例では、PETなどの絶縁性の透明フィルム6にセンサ電極21及び配線部22を形成したもの、及び同様の絶縁性の透明フィルム6に補助電極4を形成したものを準備し、これらを絶縁性の粘着材8を介して、基板1、保護層5とともに積層している。また、電極、配線部の形成方法は、上述した方法と同じである。図9に示す例では、センサ電極21と補助電極4との間に配置される透明フィルム6及び粘着材8が本発明の絶縁層を構成する。あるいは、絶縁性の透明フィルムを絶縁層とし、その一方の面にセンサ電極21及び配線部22を形成するとともに、他方の面に補助電極4を形成し、これを基板1と保護層5との間に配置することもできる。このように、センサ電極21及び配線部22をフィルムに形成する場合には、基板1は必ずしも必要ではない。
【0034】
また、タッチ電極21、配線部22、及び補助電極4は、少なくとも1本の金属線により形成することもできる。例えば、図10に示すように、金属線20を一定の面積を有する網目状に配置することで、タッチ電極21及び配線部22を形成することができる。また、配線部22は、網目状以外に、複数の金属線を平行に配置することもできる。金属線20の幅は、例えば、5〜50μmとすることができ、網目における金属線20のピッチは例えば100〜1000μmとすることができる。各電極、配線部をこのような金属線で電極を形成することで、光透過性を有し、また表面抵抗値を低くすることができる。
【0035】
また、上記実施形態では、保護層5を設けているが、これは任意である。保護層5、またはこれに準ずるフィルム、板材などを設ける場合には、製造方法を上記実施形態と反対の順序で行うこともできる。例えば、保護層5上に、補助電極4、絶縁層3、センサ電極21、配線部22、及び基板1をこの順で配置するように製造することもできる。各部材の形成方法は、上述したものと同じ方法を採用することができる。
【0036】
上記実施形態では、図3に示すように、センサ電極21の面積が相違しているが、例えば、図11に示すように、全てのセンサ電極21を同じ面積にすることができる。このようにすると、センサ電極21と補助電極4との間の静電容量が一定になるため、各検出点での検出感度を揃えることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0038】
ここでは、3つの実施例と1つの比較例を作製した。図12(a)に示す実施例1では、下側のアクリル板の上面に20mm幅の導電テープからなるセンサ電極を配置し、これらの間隔を10mmとした。また、上側のアクリル板の下面に、幅が30mmの導電テープからなる補助電極を配置し、これらの隙間を1mmとした。そして、両アクリル板を絶縁性の粘着材で固定した。このとき、両補助電極の境界がセンサ電極の間に配置されるようにした。図12(b)に示す実施例2では、10mm幅の補助電極を4つ用い、センサ電極間の領域に2つの補助電極を配置し、各センサ電極の左右の端部それぞれに補助電極を1つずつ配置した。すなわち、センサ電極の中心付近の上方に補助電極は配置されていない。また、図12(c)に示す実施例3では、補助電極としてITOフィルムを用いた。すなわち、125μmの厚さのPETフィルム上にITOをスパッタリングで形成したフィルムを用いた。このITOフィルムの表面抵抗値は250Ωであった。そして、図12(d)に示す比較例では、補助電極を配置していない。なお、各材料の詳細は以下の通りである。
導電テープ:寺岡製作所 ”導電性銅薄粘着テープ 8323”
粘着剤:住友3M社製 ”ST-415” 120μm厚
アクリル板:1mm厚
以上の実施例、比較例を用いてセンサ電極の中心の上方をタッチしたとき、及びセンサ電極間をタッチしたときの静電容量を、Cypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)社製マイコン(P rogrammable System−on−Chip(PSoC) CY8C24994−24LTXI)を用いてデジタル値に変換した値として算出した。結果は、以下の通りである。
【0039】
【表1】
センサ電極間をタッチしたときの数値は、2つのセンサ電極それぞれで検出された静電容量である。上記の結果から、実施例1〜3では、センサ電極間をタッチしたときには、両センサ電極において、ほぼ2分割された静電容量が検出されていることが分かる。実施例3のような比較的抵抗の高い補助電極を用いた場合でも両センサ電極にほぼ2分割された静電容量が検出されている。したがって、センサ電極間に隙間があっても、これを埋める補助電極が配置されていれば、検出感度が低下しないことが分かる。これに対して、補助電極を有していない比較例では、両センサ電極での静電容量の検出量が小さかった。
【符号の説明】
【0040】
21 センサ電極
22 配線部
3 絶縁層
4 補助電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式のタッチスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチスイッチの主な方式として、光の変化を検出する方式と、電気的な特性の変化を検出する方式とが知られている。電気的な特性の変化を検出する方式としては、静電容量結合方式が知られており、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に記載のタッチスイッチは、基板上に、複数のセンサ電極を配置することで形成されている。各センサ電極には配線部が連結されており、各配線部が静電容量の検出回路に接続されている。そして、いずれかの補助電極に指を接触させると、この検出回路で、人体の静電容量による変化を検出することで、接触位置が特定される。このとき、センサ電極に流れる電流値を検出することで、接触位置が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記タッチスイッチでは、センサ電極と配線部とが、ともに基板上に配置されている。そのため、センサ電極の数が多くなると、それに伴って配線部も多くなり、基板上に配線部を配置するスペースを確保する必要がある。しかしながら、配線部を配置するスペースは、指や導電性のペンなどを接触させても、これを検出する感度が低下する領域であり、タッチスイッチとしての機能上、これをできるだけ小さくする必要がある。これを解決するため、配線部を細線化することも考えられるが、配線部の数が多くなると、これにも限界がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、指等による接触を検出できない検出感度低下領域を小さくすることが可能なタッチスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタッチスイッチは、絶縁層と、前記絶縁層の一方面側に配置される複数のセンサ電極と、前記絶縁層の一方面側に配置され、前記各センサ電極にそれぞれ連結された複数の配線部と、前記絶縁層の他方面側において、前記各センサ電極と対向する位置にそれぞれ配置された複数の補助電極と、前記複数の補助電極を覆う絶縁性の保護層と、を備え、隣接する前記センサ電極間の領域に、隣接する前記補助電極間の境界が配置されている。
【0007】
この構成によれば、絶縁層を介して、センサ電極と対向する位置に補助電極を形成し、隣接するセンサ電極間の領域に、隣接する前記補助電極間の境界が配置されている。そのため、センサ電極の間に隙間が形成されたり、配線部が配置されるなどして検出感度低下領域が大きくなったとしても、補助電極間の境界をこの検出感度低下領域に配置することで、検出感度低下領域は補助電極によってカバーされる。その結果、検出感度低下領域が低減され、指や導電性のペンなどが、センサ電極間の領域に接触したとしても、検出感度が低下することを防止できる。例えば、センサ電極の数が多くなると、これに伴って配線部の数も多くなり、これによって検出感度低下領域が大きくなる。しかしながら、このような配線部も補助電極によって覆われることで、検出感度低下領域を小さくすることができる。なお、本発明においては、「隣接するセンサ電極間の領域に、隣接する補助電極間の境界が配置されている」としているが、補助電極間の境界の位置は必ずしも厳密にセンサ電極間の領域に配置されていなくてもよく、わずかにずれた位置に境界が配置されていたとしても、検出感度が大きく低下していない限り、「センサ電極間の領域」とは、その近傍も含まれる。
【0008】
上記タッチスイッチにおいては、上述した複数のセンサ電極が配置された基準領域の上方に、複数の補助電極を敷き詰めることが好ましい。これにより、隣接する補助電極間の隙間が小さくなり、検出感度低下領域を小さくすることができる。なお、基準領域とは、少なくともセンサ電極が配置される領域であり、指や導電性のペンなどが接触する可能性のある領域のことをいう。例えば、上記タッチスイッチを表示装置上に配置する場合、表示装置の表示画面全体もしくは操作に用いる表示画面の一部に対応する領域が基準領域となる。
【0009】
上記タッチスイッチにおいては、隣接する補助電極間の隙間を、10μm〜3mmとすることができ、望ましくは100μm〜2mm、さらに望ましくは0.5mm〜1.5mmとすることができる。上述したように、補助電極は、配線部の配線にかかわらず配置できるため、隣接する補助電極間の隙間は、上記のように小さくすることができる。上記範囲外でも可能ではあるが、10μm以下では隣接する補助電極との間の安定的な絶縁がとれない可能性があり、3mm以上では指に対して検出感度低下領域が広くなりすぎるため安定な検出ができないおそれがある。なお、隣接する補助電極間の隙間は、全て同じ長さにする必要はなく、必要に応じて、変更することができる。
【0010】
上記タッチスイッチにおいて、センサ電極は、金属線を網目状に配置することで形成することができる。また、上記配線部は、少なくとも1つ以上の金属線で形成することができる。このように、金属線で形成することで、光透過性を有し、また表面抵抗値が低いセンサ電極が得られる。
【0011】
上記タッチスイッチにおいては、各補助電極は種々の形状にすることができるが、例えば、補助電極の端縁の少なくとも一部が面方向に凹凸を形成するように形成し、隣接する各補助電極の境界が、所定間隔をおいて凹凸が噛み合うように形成されるようにすることができる。このようにすると、隣接する補助電極との境界部分における指の接触の検出感度を向上することができる。
【0012】
また、上記タッチスイッチにおいては、複数のセンサ電極の面積が同一とすることができる。このようにすると、センサ電極と補助電極との間の静電容量が一定になるため、指などが接触するいずれの検出点においても検出感度を揃えることができる。なお、複数のセンサ電極は、完全に同一の面積を要求されるわけではなく、検出感度がほぼ揃う限度において若干の相違は認められる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るタッチスイッチによれば、指による接触を検出できない検出感度低下領域を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るタッチスイッチの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1に示すタッチスイッチの製造方法を示す平面図及び断面図である。
【図4】図1に示すタッチスイッチの製造方法を示す平面図及び断面図である。
【図5】図1に示すタッチスイッチの製造方法を示す平面図及び断面図である。
【図6】従来のタッチスイッチのセンシングメカニズムを説明する図である。
【図7】図1に示すタッチスイッチのセンシングメカニズムを説明する図である。
【図8】図1に示すタッチスイッチの補助電極の他の例を示す平面図である。
【図9】図1に示すタッチスイッチの構造の他の例を示す断面図である。
【図10】図1に示すタッチスイッチのセンサ電極の他の例を示す平面図である。
【図11】図1に示すタッチスイッチのセンサ電極の他の例を示す平面図である。
【図12】本発明に係るタッチスイッチの実施例及び比較例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るタッチスイッチの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、このタッチスイッチの平面図であり、図2は図1のA−A線断面図、図3〜図5は図1に示すタッチスイッチの製造方法を示す平面図及び断面図である。なお、図1は、説明の便宜上、後述する保護層を省いて描いている。
【0016】
本実施形態のタッチスイッチは、液晶表示パネルなどの表示装置の上面に配置される静電容量式のタッチスイッチである。図1及び図2に示すように、このタッチスイッチは、透明の基板1を有しており、この基板1上に、センサ電極21、絶縁層3、補助電極4、及び保護層5がこの順で積層されている。センサ電極21は、矩形状に形成されて基板1上に複数設けられており、指や導電性のペンなどでタッチされる可能性のある基準領域R内に配置されている。そして、図3に示すように、各センサ電極21には、線状に延びる配線部22が一体的に連結されている。各配線部22は、基板1の端部まで延びるように配線されており、その他端部が静電容量検出回路(図示省略)に接続されている。配線部22は、その距離や幅を考慮して低抵抗が好ましく、例えば、表面抵抗率が、10Ω/□以下とすることが好ましい。本実施形態においては、基板1上に10個のセンサ電極21が配置されており、図1及び図3の上下方向に並ぶ5個のセンサ電極21が2列配置されている。ここでは説明の便宜上、図1及び図3の上から下に向かって第1〜第5センサ電極21a〜21eと称する。そして、各列のセンサ電極21a〜21eは同じであるので、図3の右側のセンサ電極について説明する。また、説明の便宜上、図1及び図3の上下方向を長手方向、左右方向を幅方向と称することとする。
【0017】
図3に示すように、第1センサ電極21aは、基板1の長手方向一端部(図3の上側)に配置されており、このセンサ電極21aの右側の端部から長手方向の他端部側(図3の下側)まで配線部22aが直線状に延びている。第2センサ電極21bは、第1センサ電極21aよりも長手方向の他端部側に配置されており、第1センサ電極21aよりも幅方向の長さが小さくなっている。すなわち、各センサ電極21a,21bは、幅方向の左側が揃うように配置されるが、第2センサ電極21bの右側は、第1センサ電極21aの配線部22aに接触しないように、それよりも左側に配置されている。第2センサ電極21bの配線部22bは、第2センサ電極21bの右側の端部から長手方向の他端部側まで、第1センサ電極21aの配線部22aと平行に直線状に延びている。同様にして、第3から第5センサ電極21c〜21eは、長手方向一端部側で隣接するセンサ電極の配線部と接触しないように、センサ電極の幅が徐々に小さくなっており、第5センサ電極21eの幅が最も小さくなっている。また、各配線部22a〜22eは、基板1の端部でL字型に折れ曲がるように形成されており、これによって、基板1の端部での配線部22a〜22e間の間隔を大きくしている。
【0018】
上記のように形成されたセンサ電極21a〜21eの上面には、これらを覆う絶縁層3が形成されている(図4参照)。絶縁層3は、膜厚が10〜500μmであり、すべてのセンサ電極21と配線部22を覆うように配置されている。そして、この絶縁層3上に複数の補助電極4が配置されている。各補助電極4は、センサ電極21と同じく10個配置されており、図1の上下方向に並ぶ5個の補助電極4が2列配置されている。ここでも、センサ電極の説明と同様に、図1の上から下に向かって第1〜第5補助電極4a〜4eと称し、各列の補助電極4a〜4eは同じであるので、図1の右側の補助電極について説明する。各補助電極4a〜4eは、例えば酸化インジウム錫(ITO)の場合、膜厚が10〜100nmであり、絶縁層3上で、各センサ電極21a〜21eと対応する位置に配置されている。全ての補助電極4a〜4eは、同じ大きさの正方形に形成されており、狭い間隔で配置されている。より詳細に説明すると、図2に示すように、隣接するセンサ電極21間の領域Lに、隣接する補助電極4間の境界bが配置されるようになっており、補助電極4によってセンサ電極21間の領域Lが埋められるようになっている。すなわち、センサ電極21間に配置される配線部22が、補助電極4によって覆われるようになっている。このような補助電極4の表面抵抗率は、センサ電極21より高くてもよく、例えば、1kΩ/□以下が好ましく、300Ω/□以下がさらに好ましい。なお、補助電極4は、電気的に独立しており、いずれの部材にも導通していない状態となっている。そして、上記のように配置された複数の補助電極4は、保護層5によって覆われている。保護層5の厚さは、上述した絶縁層3よりも大きいことが好ましく、例えば、0.5〜10mmとすることができる。
【0019】
また、図1に示すように、隣接する補助電極4間の隙間の長さsは、10μm〜3mmとすることができ、望ましくは100μm〜2mm、さらに望ましくは0.5mm〜1.5mmとすることができる。上記範囲外でも可能ではあるが、10μm以下では隣接する補助電極4との間の安定的な絶縁がとれない可能性がある。また、3mm以上では指に対して検出感度低下領域が広くなりすぎるため安定な検出ができないおそれがある。なお、隣接する補助電極4間の隙間の長さsは、全て同じ長さにする必要はなく、位置によって変更することができる。
【0020】
次に、上述した各部材の材料について説明する。まず、基板1から説明する。基板1は透明な無機材料、有機材料、または有機・無機ハイブリッド材料など種々の材料で形成することができ、材質は特には限定されない。例えば、軽量かつ耐衝撃性の点から有機材料が好ましく、フレキシブル性やロール・トゥ・ロールの生産性からプラスチックフィルムが好適である。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)など挙げることができる。但し、これらの材料を単体でなく、密着性向上のためにシランカップリング層などのアンカー層を形成したもの、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理したものや、防傷や耐薬品性向上のためにハードコート層を形成したものを用いることができる。
【0021】
センサ電極21、配線部22、及び補助電極4は、公知の種々の材料で形成することができ、特には限定されないが、必要な導電性及び透明性などの物性から適宜選択することができる。例えば、アルミニウム、銀や銅などの金属、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)などの金属酸化物材料を挙げることができる。また、これらの金属酸化物材料にアルミニウム、ガリウムやチタンなどの金属を添加することもできる。さらに、PEDOT・PSSのような透明導電性ポリマーなどの有機材料も挙げられ、これらを単体で用いてもよいし、複合して用いることもできる。センサ電極21及び配線部22は、上記のように、表面抵抗率を低くする必要があるため、例えば、二層のITOの間に銀の層を挟んだ三層構造にすることができる。
【0022】
絶縁層3は、透明で、且つ導電性がないものであれば特には限定されないが、その上面及び下面に配置される補助電極4及びセンサ電極21との密着性が高いものが望まれる。エポキシ系やアクリル系など、一般的な透明接着剤や粘着剤を用いることができ、ポリエステル系樹脂の透明性フィルム等を含むものであってもよい。厚みは、特に限定されないが、実用上では200μm以下であることが好ましい。
【0023】
保護層5は、一般的なタッチスイッチに用いられる透明な公知の材料で形成することができる。保護層5は、例えば、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、ベンゾシクロブテン(BCB)、ポリエステル又はアクリル酸などで形成することができる。また、ガラスや表面硬化処理がなされたPETなどの樹脂フィルムを積層することもできる。
【0024】
次に、上記のように構成されたタッチスイッチの製造方法について、図3〜図5を参照しつつ説明する。まず、図3に示すように、基板1上に、複数のセンサ電極21及び配線部22を形成する。その形成方法は、種々の方法があるが、例えば、センサ電極21及び配線部22の材料を基板1の全面に形成した後、パターンニングする方法を挙げることができる。この材料を形成する方法は、例えば、真空蒸着、スパッタリングやCVDなどのドライコーティング、グラビアコート、スプレーコートなどのウェットコーティングなどが挙げられる。パターニングする方法は限定されないが、例えば、フォトリソグラフィーやレーザーエッチングなどを挙げることができる。前者は化学薬品で膜除去を行い、後者は特定波長のレーザー光の吸収によって膜除去を行う。センサ電極21及び配線部22のパターニングにはインビジブル性(電極有無の差異が不可視)が付与されることが望ましく、この観点から、10μm以下の幅で膜を除去可能なYAGの第3高調波を用いたレーザーエッチングを用いることが好ましい。レーザーエッチングはフォトリソグラフィーと比して、化学薬品の使用がなく環境に良好かつ工数が少ないことや、フォトマスクが不要でCADデータからパターニングが可能であり配線設計の利便性が高いなどの利点を挙げることができる。その他、銀等のペーストをスクリーン印刷等で細線パターン状に形成することもできる。
【0025】
次に、図4に示すように、センサ電極21及び配線部22全体を覆うように、絶縁層3を形成する。絶縁層3の形成方法は、上述したセンサ電極21と同様の方法で形成することができる。
【0026】
続いて、図5に示すように、絶縁層3上に補助電極4を形成する。補助電極4の形成方法は、上述したセンサ電極21と同様の方法で形成することができる。センサ電極21、配線部22、及び補助電極4のパターニングは、形成順序や材質を考慮して適宜選択する必要がある。最後に、補助電極4上に保護層5を形成する。保護層5は、公知の方法で形成することができる。
【0027】
上記のように構成されたタッチスイッチは、以下のように使用される。タッチ位置の検出方法は、従来の静電容量式のタッチスイッチと同様であり、保護層5表面の任意の位置を指などで触れたときの、静電容量の変化を検出することにより、接触位置が特定される。ここで、上記のように補助電極4を用いた場合のセンシングのメカニズムを考察すると、以下の通りである。まず、図6に示すような補助電極のない従来のタッチスイッチについて説明する。一般的に、タッチスイッチでは、静電容量はセンサ電極21の上方で保護層5にタッチしている指の面積に比例する。図6(a)に示す例では、指のタッチしている部分のすべてがセンサ電極21の上方にあるので、静電容量Cx0は大きくなる。一方、図6(b)に示すように、センサ電極21間の配線部22の上方を指でタッチした場合には、各センサ電極21上にある指の面積が小さいため、各センサ電極21による合成静電容量(Cx01+CX02)は図6(a)の静電容量Cx0と比べて小さくなり、感度が低下する。
【0028】
これに対して、本実施形態のタッチスイッチのように補助電極4を設けると、以下のとおりである。まず、図7(a)に示すように、センサ電極21の上方を指でタッチすると、指とセンサ電極21間の合成静電容量Cnは、次の式で表される。ここで、C0はセンサ電極21と補助電極4間の静電容量であり、Cx1は補助電極4と指との間の静電容量である。
【0029】
Cn=Cx1/(1+Cx1/C0) (1)
このとき、センサ電極21と補助電極4間の距離が十分に小さい場合には、Cx1<<C0となり、上記(1)式のCx1/C0は0に近い数値となるため、Cn≒Cx1となる。
【0030】
一方、図7(b)に示すように、隣り合うセンサ電極21間をタッチした場合、センサ電極21間には、補助電極4が配置されているため、図6(b)とは異なる挙動を示す。すなわち、補助電極4間にも隙間は存在するが、これは
センサ電極21間の隙間に比べて非常に小さいため、センサ電極21間の領域をタッチしたときには、それぞれのセンサ電極21に対応する補助電極4によって、センサ電極21間の隙間を隣り合う補助電極4間で補完できる。したがって、このときの合計静電容量Cnは、以下の式(2)のようになり、図7(a)で示される静電容量Cx1とほぼ同じになる。なお、Cx11は一方の補助電極と指との間の静電容量、Cx12は他方の補助電極と指との間の静電容量である。
【0031】
Cn≒Cx11+Cx12≒Cx1 (2)
以上に示す本実施形態によれば、絶縁層3を介して、センサ電極21と対向する位置に補助電極4を形成し、図2に示すように、隣接するセンサ電極21間の領域Lに、隣接する補助電極4間の境界bが配置されている。そのため、センサ電極21の間に配線部22が配置されることにより検出感度低下領域が大きくなったとしても、補助電極4間の境界bをこの検出感度低下領域に配置することで、検出感度低下領域は補助電極4によってカバーされる。その結果、検出感度低下領域が低減され、指や導電性のペンなどが、センサ電極21間の領域Lに接触したとしても、検出感度を向上することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、センサ電極21及び補助電極4は矩形状に形成されているが、この形状は特には限定されず、多角形状、円形、異形など、種々の形状にすることができる。また、隣接する補助電極4の間には、直線状の隙間が形成されているが、補助電極4の端縁に面方向に延びる凹凸を形成し、この凹凸を噛み合わせることで、隣接する補助電極4の境界を形成することができる。例えば、図8に示すように、補助電極4の端縁に鋭利な突部を複数形成し、これらを噛み合わせることができる。このようにすると、補助電極4間の隙間が直線状である場合に比べ、検出の感度が高くなる。すなわち、補助電極4の端縁に凹凸を形成していると、境界部分に指を置いたときに、隣接するいずれか一方の補助電極4に接触する可能性が高くなり、その結果、検出の感度を向上することができる。なお、凹凸は、上記のような鋭利な形状のみならず、矩形状、波形など、種々の形状が可能である。
【0033】
また、上記実施形態では、センサ電極21、配線部22、及び補助電極4を直接積層していたが、これらをフィルム状に形成したものを積層することもできる。例えば、図9に示す例では、PETなどの絶縁性の透明フィルム6にセンサ電極21及び配線部22を形成したもの、及び同様の絶縁性の透明フィルム6に補助電極4を形成したものを準備し、これらを絶縁性の粘着材8を介して、基板1、保護層5とともに積層している。また、電極、配線部の形成方法は、上述した方法と同じである。図9に示す例では、センサ電極21と補助電極4との間に配置される透明フィルム6及び粘着材8が本発明の絶縁層を構成する。あるいは、絶縁性の透明フィルムを絶縁層とし、その一方の面にセンサ電極21及び配線部22を形成するとともに、他方の面に補助電極4を形成し、これを基板1と保護層5との間に配置することもできる。このように、センサ電極21及び配線部22をフィルムに形成する場合には、基板1は必ずしも必要ではない。
【0034】
また、タッチ電極21、配線部22、及び補助電極4は、少なくとも1本の金属線により形成することもできる。例えば、図10に示すように、金属線20を一定の面積を有する網目状に配置することで、タッチ電極21及び配線部22を形成することができる。また、配線部22は、網目状以外に、複数の金属線を平行に配置することもできる。金属線20の幅は、例えば、5〜50μmとすることができ、網目における金属線20のピッチは例えば100〜1000μmとすることができる。各電極、配線部をこのような金属線で電極を形成することで、光透過性を有し、また表面抵抗値を低くすることができる。
【0035】
また、上記実施形態では、保護層5を設けているが、これは任意である。保護層5、またはこれに準ずるフィルム、板材などを設ける場合には、製造方法を上記実施形態と反対の順序で行うこともできる。例えば、保護層5上に、補助電極4、絶縁層3、センサ電極21、配線部22、及び基板1をこの順で配置するように製造することもできる。各部材の形成方法は、上述したものと同じ方法を採用することができる。
【0036】
上記実施形態では、図3に示すように、センサ電極21の面積が相違しているが、例えば、図11に示すように、全てのセンサ電極21を同じ面積にすることができる。このようにすると、センサ電極21と補助電極4との間の静電容量が一定になるため、各検出点での検出感度を揃えることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0038】
ここでは、3つの実施例と1つの比較例を作製した。図12(a)に示す実施例1では、下側のアクリル板の上面に20mm幅の導電テープからなるセンサ電極を配置し、これらの間隔を10mmとした。また、上側のアクリル板の下面に、幅が30mmの導電テープからなる補助電極を配置し、これらの隙間を1mmとした。そして、両アクリル板を絶縁性の粘着材で固定した。このとき、両補助電極の境界がセンサ電極の間に配置されるようにした。図12(b)に示す実施例2では、10mm幅の補助電極を4つ用い、センサ電極間の領域に2つの補助電極を配置し、各センサ電極の左右の端部それぞれに補助電極を1つずつ配置した。すなわち、センサ電極の中心付近の上方に補助電極は配置されていない。また、図12(c)に示す実施例3では、補助電極としてITOフィルムを用いた。すなわち、125μmの厚さのPETフィルム上にITOをスパッタリングで形成したフィルムを用いた。このITOフィルムの表面抵抗値は250Ωであった。そして、図12(d)に示す比較例では、補助電極を配置していない。なお、各材料の詳細は以下の通りである。
導電テープ:寺岡製作所 ”導電性銅薄粘着テープ 8323”
粘着剤:住友3M社製 ”ST-415” 120μm厚
アクリル板:1mm厚
以上の実施例、比較例を用いてセンサ電極の中心の上方をタッチしたとき、及びセンサ電極間をタッチしたときの静電容量を、Cypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)社製マイコン(P rogrammable System−on−Chip(PSoC) CY8C24994−24LTXI)を用いてデジタル値に変換した値として算出した。結果は、以下の通りである。
【0039】
【表1】
センサ電極間をタッチしたときの数値は、2つのセンサ電極それぞれで検出された静電容量である。上記の結果から、実施例1〜3では、センサ電極間をタッチしたときには、両センサ電極において、ほぼ2分割された静電容量が検出されていることが分かる。実施例3のような比較的抵抗の高い補助電極を用いた場合でも両センサ電極にほぼ2分割された静電容量が検出されている。したがって、センサ電極間に隙間があっても、これを埋める補助電極が配置されていれば、検出感度が低下しないことが分かる。これに対して、補助電極を有していない比較例では、両センサ電極での静電容量の検出量が小さかった。
【符号の説明】
【0040】
21 センサ電極
22 配線部
3 絶縁層
4 補助電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
絶縁層の一方面側に配置される複数のセンサ電極と、
前記絶縁層の一方面側に配置され、前記各センサ電極にそれぞれ連結された複数の配線部と、
前記絶縁層の他方面側において、前記各センサ電極と対向する位置にそれぞれ配置された複数の補助電極と、
を備え、
隣接する前記センサ電極間の領域に、隣接する前記補助電極間の境界が配置されている、タッチスイッチ。
【請求項2】
前記複数のセンサ電極が配置された基準領域の上方に、前記複数の補助電極が敷き詰められている、請求項1に記載のタッチスイッチ。
【請求項3】
隣接する補助電極間の隙間が、10μm〜3mmである、請求項1に記載のタッチスイッチ。
【請求項4】
前記センサ電極は、金属線を網目状に配置することで形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のタッチスイッチ。
【請求項5】
前記配線部は、少なくとも1つ以上の金属線で形成されている、請求項1から4のいずれかに記載のタッチスイッチ。
【請求項6】
前記各補助電極は、面方向に凹凸を形成するように延びる端縁を少なくとも一部に有しており、
隣接する前記各補助電極の境界は、前記凹凸が所定間隔をおいて噛み合うように形成されている、請求項1から5のいずれかに記載のタッチスイッチ。
【請求項7】
前記複数のセンサ電極の面積が同一である、請求項1から6のいずれかに記載のタッチスイッチ。
【請求項1】
絶縁層と、
絶縁層の一方面側に配置される複数のセンサ電極と、
前記絶縁層の一方面側に配置され、前記各センサ電極にそれぞれ連結された複数の配線部と、
前記絶縁層の他方面側において、前記各センサ電極と対向する位置にそれぞれ配置された複数の補助電極と、
を備え、
隣接する前記センサ電極間の領域に、隣接する前記補助電極間の境界が配置されている、タッチスイッチ。
【請求項2】
前記複数のセンサ電極が配置された基準領域の上方に、前記複数の補助電極が敷き詰められている、請求項1に記載のタッチスイッチ。
【請求項3】
隣接する補助電極間の隙間が、10μm〜3mmである、請求項1に記載のタッチスイッチ。
【請求項4】
前記センサ電極は、金属線を網目状に配置することで形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のタッチスイッチ。
【請求項5】
前記配線部は、少なくとも1つ以上の金属線で形成されている、請求項1から4のいずれかに記載のタッチスイッチ。
【請求項6】
前記各補助電極は、面方向に凹凸を形成するように延びる端縁を少なくとも一部に有しており、
隣接する前記各補助電極の境界は、前記凹凸が所定間隔をおいて噛み合うように形成されている、請求項1から5のいずれかに記載のタッチスイッチ。
【請求項7】
前記複数のセンサ電極の面積が同一である、請求項1から6のいずれかに記載のタッチスイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−129171(P2012−129171A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282335(P2010−282335)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]