説明

タッチセンサー方式電気柵装置

【課題】一般的な電気柵は作動中は常に通電し続けている為、電源に電池を使用している場合寿命が限られてしまう。
また、電源に商用電源を用いた場合でも保護区域と非保護区域の間を行き来しようとする動物が居ない時の通電は無駄である。
そこで家畜や害獣が裸電線に触れた時にのみ衝撃電流を発生させることができる電気柵本器を提供することにある。
【解決手段】電気柵の裸電線部分をタッチセンサーとし、家畜や害獣が裸電線に触れた時にのみ衝撃電流の回路へ通電を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気柵の裸電線に衝撃電流を供給する電気柵本器の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気柵は、保護区域と非保護区域との境界に沿って杭を立設し、この杭に境界に沿って配線した導電部材である裸電線を保持させ、この裸電線に電気柵装置により高電圧を印加する。
家畜や野生動物は電気柵の裸電線に接触すると、電気柵装置の印加する高電圧の電流が体内を通り地面に流れて電気的ショックを受ける。
これにより電気柵は保護区域と非保護区域との間に動物が行き来することを阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−72300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な電気柵は作動中には対象の動物の有無にかかわらず常に柵に高電圧を通電し続けている為、電源に電池を使用している場合は寿命が限られてしまう。
また、電源に商用電源を用いた場合でも保護区域と非保護区域の間を行き来しようとする動物が居ない時の通電は無駄である。
【0005】
電気柵に触れた家畜や害獣の皮膚が乾燥していた場合、電気抵抗が極めて高く検出が難しい。
【0006】
電気ショックを与える為の電圧は最大1万ボルト程度の高電圧の為、電子回路上の問題として現在一般的である静電容量式のタッチセンサーでは電子回路の保護が難しい。
【0007】
裸電線や杭の種類などにより静電容量等が変わってくるので、専用の柵を広範囲に設置した場合、金銭的な負担が大きい。
そこで専用の柵を使用せずに使用者が現在使用している既存品の柵をそのまま使える様にする事により使用者の金銭的な負担を軽減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、柵の設置面積の違いや静電容量変化の影響を受けにくい高電圧低電流の電気を電気柵の裸電線に通電しておき、家畜や害獣が裸電線に触れた時に電圧が降下する事を検出し、電気ショックを与える為の衝撃電流を発生させる高電圧パルス発生回路7への通電を行うことにより使用する電源の電力消費を抑え上記課題を解決するものである。
【0009】
仮に電気柵に触れた家畜や害獣の皮膚が乾燥していて電気抵抗が高い場合でも検出できるよう500V前後の高電圧でかつ、電圧の変化が大きくなる低電流の電気を柵に通電させる事により実現可能にした。
【0010】
電気ショックを与える為の本通電による高電圧からセンサー回路を保護する為に、バリスタとダイオードの組み合わせを用いた事によりセンサー回路への流れ込みを防ぎつつ電圧降下検出の為の電圧に影響を与えない回路を可能とした。
【0011】
電気柵本器の電源投入時に、予備通電を数秒間行い通電中の消費電力や電圧の降下状態から柵の状態を判断して自動で初期設定をすることにより柵の設置状況の違いによる誤作動を減らす事を可能にした。
この事により専用の柵を用意する事なく既存品の柵をそのまま使えるので、使用者の金銭的な負担を軽減することが出来る。
また、予備通電の際に規定の電圧まで上昇しない時は設置した柵に漏電箇所がある場合であるので、この事を利用して柵の設置状況を確認することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
家畜や害獣が裸電線に触れていない時は電気ショックを与える為の衝撃電流を裸電線に流す本通電を行わないので省電力である。
【0013】
また、電源に電池を使用している場合に関しては、現在一般的な電池を電源に使用する電気柵に比べ電池の寿命を延ばす事が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電気柵本器の内部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のタッチセンサー回路の回路図と周辺回路である。
【図3】電気柵の設置例である。
【図4】マイクロコンピューターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、現在一般的な電気柵装置と同様の機能にタッチセンサー回路2を追加し、これにより電気ショックを与える為の衝撃電流を発生させる高電圧パルス発生回路7のスイッチ6を制御する。
また、高電圧パルス発生回路7のスイッチ6の制御はメカニカルリレー等でも可能であるが、1パルスの幅が1mSec前後と短いので半導体による制御が望ましい。
【0016】
高電圧パルス発生回路7では一般的な電気柵装置と同様に電気ショックを与える為の衝撃電流を伴う高電圧の電気を一定間隔でパルス状に発生させ出力端子8を介し裸電線とアースへと通電している。
電圧降下検出回路4はマイクロコンピューター2mに内蔵されているA/Dコンバーターにより一定時間毎に測定している、測定間隔を狭めると検出精度は向上するが消費電力が増加してしまう。
そこで100mSec前後の間欠動作で測定する事により検出精度を維持しつつ消費電力を抑える事も可能である。
【0017】
タッチセンサー回路2では、予備通電回路3にて発生させた直流約500V程度の電気を裸電線に流し、家畜や害獣が裸電線に触れた際に降下する電圧を電圧降下検出回路4にて検出する。
電圧降下検出回路4はマイクロコンピューターに内蔵されているA/Dコンバーターにて行っている。
また、この際に流す電流を最小限にすることにより電圧降下の幅が大きくなるのでセンサー感度の向上と予備通電回路3の小電力化が可能である。
さらに、予備通電の電気は柵の静電容量による電圧降下の少ない直流とする。
予備通電の電圧生成方法としては、昇圧トランスを使いPWMにて制御する方法が考えられるが、他にも高電圧パルス発生回路7が内部動作の為に数百ボルトの昇圧を行っている場合はこの電圧を共用する方法も可能である。
【0018】
電気ショックを与える為の衝撃電流による高電圧からセンサー回路を保護する為に、図2の様に高耐電圧のダイオード2dにより予備通電回路3とA/Dコンバーター内蔵マイクロコンピューター2mへの逆流を防止する。
さらに、高電圧パルス発生回路7への流れ込みによる電圧降下を防止する為バリスタ2bを高電圧パルス発生回路7の出力部へ追加しておく事により、高電圧パルス発生回路7の有無にかかわらずに電圧降下の検出が可能である。
【0019】
図4に示すマイクロコンピューターのプログラムによる動作を示すフローチャートついて説明する。
まず起動時には予備通電回路3を使用して状態確認用通電を開始した後、柵の状態を確認しながら電圧の測定を一定時間行い、柵に何も触れていない状態での消費電力と電圧のデータを収集しておく。
次に収集したデータの平均値を算出し一定電圧で出力する為の電力と電圧降下検出の為の何も柵に触れていない状態での平均電圧を計算して条件を決定した後タッチセンサーを起動させる。
算出した必要量の電力で予備通電を行いつつマイクロコンピューター内蔵のA/Dコンバーターで電圧の降下が起こっていないかの検出を行い、未検出の場合はこの動作を繰り返し行う、この間に柵に流した予備通電の電圧が下がり対象とする家畜や害獣を検出した場合は、高電圧パルス発生回路7のスイッチ6をマイクロコンピューター2mにて同通させ電気ショックを与える為の衝撃電流を裸電線に導電させる。
パルスの発生パターンは一般的な電気柵同様に1mSe前後の通電を行った後、0.7から1.2秒程度の未通電時間を繰り返し、約1分間この繰り返しを継続した後再起動を行う。
【実施例】
【0020】
電気ショックを与える為の本通電の回路の他に、タッチセンサー回路を追加し電気ショックを与える為の衝撃電流を発生させる回路の制御を行う。
【符号の説明】
【0021】
1 電気柵本器
2 タッチセンサー回路
2m A/Dコンバーター内蔵マイクロコンピューター
2d ダイオード
2b バリスタ
3 予備通電回路
4 電圧降下検出回路
5 電源
6 スイッチ
7 高電圧パルス発生回路
8 出力端子
9 高電圧端子
10 アース端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気柵の裸電線に電気ショックを与える為の衝撃電流を供給する電気柵において、電気柵の裸電線に数百ボルトの予備通電を行い家畜や害獣が裸電線に触れた際の電圧の降下を検出し、電気ショックを与える為の衝撃電流を伴う本通電を行う事で電源に使う電気の消費を抑えた電気柵装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate