説明

タッチセンサ及び蛍光表示管

【課題】静電容量方式のタッチセンサにおいて、電極相互間の境界が視認しにくいために見栄えがよく、タッチの検出精度に優れたタッチセンサを提供する。
【解決手段】基板の表面に、互いに交差する第1及び第2の線状配線2,3からなる格子パターンが形成され、このパターンの線状配線に分離部4を設けることにより、電気的に独立したセンサ部5及びダミーセンサ部6を互いに隣接して形成する。隣り合うセンサ部とダミーセンサ部のギャップは、平行な2本の線状の導体で囲まれた帯形状とはならず、境界が目立たず見栄えがよい。隣り合うセンサ部とダミーセンサ部の間の容量は従来よりも十分に小さくなるので、感度調整によってタッチの検出精度を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極に対応する所定の部位に操作者がタッチしたことを静電容量の変化に基づいて検出するタッチセンサ(又はタッチスイッチとも称する。)に係り、特に当該タッチセンサにおいて隣接している電極と電極の境界が視認しにくいために見栄えがよく、また隣接する電極間の容量が従来よりも少ないために、電極へのタッチを検出する精度に優れたタッチセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外囲器の前面板に静電容量型タッチスイッチを設けた蛍光表示管が開示されている。図4及び図5に示すように、この蛍光表示管10は、ガラスからなる基板11と側面板12と前面板13によって構成された箱型の外囲器14を備えている。図5に示すように、外囲器14の内部では、蛍光体層15を有する陽極16が基板11上に設けられ、その上方には制御電極17が設けられ、さらにその上方には電子源としてのフィラメント状の陰極18が設けられている。この陰極18から放出された電子が制御電極17で制御されて陽極16に射突し、蛍光体層15を発光させる。蛍光体層15の発光は前面板13を通して視認される。
【0003】
図4及び図5に示すように、前面板13の内面には、その外周縁から所定の範囲が、端子部を除いて遮光性の絶縁性クロスオーバー層19で枠状に覆われており、その内側が表示窓部20とされている。この表示窓部20の一部において、前面板13の内面にはスイッチ電極21、22が設けられている。
【0004】
図4に示すように、前面板13の内面の表示窓部20に設けられたスイッチ電極は、スイッチ電極21と、22a〜22dの4個一組で例えば128の位置分解能で出力が可能なリニアスイッチ電極22を有している。なお、図中30は遮蔽電極であり、一部のスイッチ電極21及びリニアスイッチ電極22と、陰極18との間に設けられており、電子がこれらスイッチ電極21及びリニアスイッチ電極22にチャージしないようになっている。
【0005】
これらのスイッチ電極21と蛍光体層15のパターンとの位置関係を図6に示す。図6で、基板11の外形内に蛍光体層15のパターン例として”HDD”の文字を示す15a、”USB”の文字を示す15b、メールのシンボルを示す15c、バーグラフを示す15dが配置されている。これらに重なる矩形の破線がスイッチ電極21とリニアスイッチ電極22a〜dの位置を示す。
【0006】
各蛍光体層15に対応するスイッチ電極21が設けられた前面板13の外壁面に操作者が指で触れると、当該スイッチ電極21の静電容量が変化する。その変化をスイッチ制御回路部でスイッチのON又はOFFとして判断・出力し、当該出力を受けた表示制御部が、当該スイッチに対応する蛍光体層15を当該スイッチのON又はOFFに対応して点燈又は非点燈するように制御する。
【0007】
またリニアスイッチ電極22に相当する前面板13の外壁面に操作者が指で触れると、その位置に応じてリニアスイッチ電極22からの出力値が連続的に変化し、前記と同様にそれに応じてバーグラフの点燈範囲を変化させることができる。
【0008】
このようなタッチスイッチの動作原理を図7を用いて説明する。制御部23はパルス発生器24と、比較回路25と、この比較回路25の一方の入力側とパルス発生器24との間に接続されるコンデンサCを有し、上記パルス発生器24と比較回路25の他方の入力側との間にスイッチ電極21が接続されている。
【0009】
前記スイッチ電極21に相当する前面板13の外壁面(タッチ部S)に操作者が指で触れることで、指とスイッチ電極21の間に静電容量が発生し、一種のコンデンサとなる。しかして、指が触れていない状態におけるタッチ電極21の静電容量と同等の静電容量を有するコンデンサCを、上記比較回路25の一方の入力側とパルス発生器24との間に接続する構成としている。
【0010】
タッチ部Sに操作者の指が触れると、触れた外壁面が誘電体として作用し、スイッチ電極21の静電容量が変化する。このスイッチ電極21と前記コンデンサCとの容量バランスが崩れて、比較回路25の両入力端に加えられるパルス電圧に差が生じて比較回路25から出力が得られる。
【0011】
図8は、以上の構成を前提とし、さらに、スイッチ電極21及び当該電極と端子部26を接続する引き出し配線27、リニアスイッチ電極22a〜22d及び当該電極と端子部26を接続する引き出し配線27を除き、表示窓部20をダミーパターン28で覆った例を示すものである。
【0012】
ダミーパターン28はスイッチ電極21と同様の線幅のストライプ状又はメッシュ状の金属薄膜の細線を所定間隔で配置して形成している。このダミーパターン28は、表示エリア内の透過率の均一化とタッチスイッチとしての誤反応の防止のために設けられたものである。このダミーパターン28は、スイッチ電極21と同様の線幅及び間隔で設けられたストライプ状等の細線から形成されている。
【0013】
図9は、以上説明したような従来の静電容量型タッチスイッチを設けた蛍光表示管10において、前述したタッチスイッチとダミーパターンの実際の構造例を示す拡大写真である。タッチスイッチとしてのスイッチ電極21は、その外形を区画する枠部の内側に所定間隔の斜めストライプ状の細線を設けた構造の電極であり、またこれを囲むダミーパターン28も同様の構造の電極とされている。またスイッチ電極21を外部に接続する引き出し配線27は、その枠部から導出されて直線状に配設されており、その周囲にあるダミーパターン28の枠部と所定間隔をおいて対峙している。従って、スイッチ電極21とダミーパターン28のギャップは各枠部で区画された所定幅の帯形状となり、スイッチ電極21の引き出し配線27とダミーパターン28の枠部とのギャップも同様に所定幅の帯形状となっている。
【0014】
また、図3は、静電容量型タッチスイッチのタッチ時と非タッチ時の静電容量を示す図であり、本発明の実施形態(左図(a))と、従来例である比較例(右図(b))を並べて示した図である。静電容量型タッチスイッチの制御部23では、スイッチ電極21の静電容量(カウント値)を常時計測しており、タッチ時と非タッチ時のカウント値の変化によってタッチの有無を判断している。そして静電容量型タッチスイッチにおいては、一般的には非タッチ時のカウント値(ベース容量)が低く、タッチ時の変化値(変化容量)が大きいものが理想的であるとされている。
【0015】
そこで前記制御部23では、当該制御部23に組み込まれたソフトウエアによってカウント可能な前記カウント値の上限よりも低い範囲内で感度調整を行なうことにより、前記ベース容量と前記変化容量を変化させている。すなわち、ベース容量が低ければ、それだけ感度調整範囲内でカウントのスケールを拡大することにより変化容量を拡大することが可能となり、感度を高くすることができる。
【0016】
なお、図9に示した構造例では、引き出し配線27の線幅は0.05mm、スイッチ電極21とダミーパターン28のギャップは0.06mm、スイッチ電極21及びダミーパターン28における細線の線幅は0.03mm、スイッチ電極21及びダミーパターン28における細線の間隔は0.18mmであり、スイッチ電極21及びダミーパターン28の透過率は83%となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2010−114015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
図9の拡大写真で示したような従来の構造の静電容量型タッチスイッチによれば、所定間隔(図9の例では0.06mm)をおいて隣接しているスイッチ電極21とダミーパターン28の境界や、所定間隔(図9の例では0.06mm)をおいて隣接しているスイッチ電極21の引き出し配線27とダミーパターン28の境界が目立ち、見栄えがよくないという問題があった。
【0019】
また、図9の拡大写真で示したような従来の構造の静電容量型タッチスイッチによれば、スイッチ電極21とダミーパターン28のギャップや、スイッチ電極21の引き出し配線27とダミーパターン28の枠部とのギャップが、所定幅の帯形状となっているため、両導体間での線間容量が当該構造に相応して大きくなり、図3の右図に示すように、前述した非タッチ時のベース容量が、制御部23のソフトウエアによって処理可能な前記カウント値の上限にかなり接近していた。このため、非タッチ時とタッチ時の容量差が同じであれば、ベース容量が小さい場合に比べ、ベース容量に対する容量差は相対的に小さくなってしまい、前述したような感度調整によりカウント範囲内で容量差を拡大して感度を向上させ、容量の変化からタッチの有無を判断する精度を向上させることが困難になってしまう。
【0020】
本発明は、以上説明した従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、電極に対応する所定の部位にタッチしたことを静電容量の変化に基づいて検出するタッチセンサにおいて、当該タッチセンサを構成している電極相互間の境界が視認しにくいために見栄えがよく、また隣接する電極相互間の容量が従来よりも少ないために、電極へのタッチを検出する精度に優れたタッチセンサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に記載されたタッチセンサは、
所定間隔をおいて互いに平行に配置された複数本の第1の線状配線と、前記第1の線状配線と交差するように所定間隔をおいて互いに平行に配置された複数本の第2の線状配線とによって基板の表面に格子パターンが形成され、前記格子パターンの前記線状配線に分離部を設けることにより、電気的に独立したセンサ部及びダミーセンサ部を互いに隣接して形成したことを特徴としている。
【0022】
請求項2に記載されたタッチセンサは、請求項1記載のタッチセンサにおいて、
前記センサ部を構成する一方の前記線状配線の一部が、前記ダミーセンサ部を構成する他方の前記線状配線の分離部を通って、前記ダミーセンサ部の外に導出されていることを特徴としている。
【0023】
請求項3に記載された蛍光表示管は、
外囲器と、前記外囲器の内部に設けられて電子を放出する陰極と、前記外囲器の内部に設けられて前記陰極から放出された電子が射突して発光する蛍光体を備えた陽極とを有する蛍光表示管において、
所定間隔をおいて互いに平行に配置された複数本の第1の線状配線と、前記第1の線状配線と交差するように所定間隔をおいて互いに平行に配置された複数本の第2の線状配線とによって前記外囲器の表面に格子パターンを形成し、前記格子パターンの前記線状配線に分離部を設けることにより、電気的に独立したセンサ部及びダミーセンサ部が互いに隣接して形成されたタッチセンサを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載されたタッチセンサによれば、交差する2方向の線状配線からなる格子パターンにおいて、当該線状配線の一部に分離部を設けることにより、電気的に独立したセンサ部とダミーセンサ部を隣接して形成した。このため、隣り合うセンサ部とダミーセンサ部のギャップは、少なくとも一方の線状配線の端部が、分離部を間に挟んで他方の線状配線と隣接する構造となり、当該ギャップが従来のように平行な2本の線状の導体で囲まれた帯形状となることはない。従って、センサ部とダミーセンサ部の境界が目立たず見栄えがよい。また隣り合うセンサ部とダミーセンサ部の間の容量は従来よりも十分に小さくなるので、タッチ時と非タッチ時の容量の変化からタッチの有無を判断する精度を感度調整によって大きく向上させることが可能となる。
【0025】
請求項2に記載されたタッチセンサによれば、請求項1記載のタッチセンサにおいて、さらにセンサ部の線状配線の一部を、ダミーセンサ部の線状配線の分離部を通ってダミーセンサ部の外に導出して引き出し配線とした。このため、センサ部の引き出し配線とダミーセンサ部とのギャップも、ダミーセンサ部の線状配線の端部が、分離部を間に挟んで引き出し配線と隣接する構造となり、当該ギャップが従来のように平行な2本の線状の導体で囲まれた帯形状となることはない。従って、センサ部の引き出し配線とダミーセンサ部の境界が目立たず視認しにくいため、この点においても見栄えがよい。またセンサ部の引き出し配線とダミーセンサ部の間の容量は従来よりも十分に小さくなるので、この点においても容量の変化からタッチの有無を判断する精度を感度調整によって大きく向上させることが可能となる。
【0026】
請求項3に記載された蛍光表示管によれば、センサ部とダミーセンサ部の境界が目立たず視認しにくいために蛍光表示管の表示に邪魔にならず、またタッチの有無を判断する精度が高いタッチセンサを有する蛍光表示管を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るタッチセンサの一構造例における拡大写真を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るタッチセンサの拡大図である。
【図3】静電容量型タッチスイッチのタッチ時と非タッチ時の静電容量を示す図であり、左図(a)は本発明の実施形態の場合を示し、右図(b)は比較例である従来のタッチスイッチの場合を示す。
【図4】従来のタッチスイッチを有する蛍光表示管の正面図である。
【図5】図4のX−X切断線における蛍光表示管の断面図である。
【図6】従来のタッチスイッチを有する蛍光表示管のスイッチ電極と蛍光体パターンの位置関係を示す図である。
【図7】従来のタッチスイッチの動作原理図である。
【図8】従来のタッチスイッチを有する蛍光表示管の正面図である。
【図9】図8に示した従来のタッチスイッチの一構造例の拡大写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係るタッチセンサは、[背景技術]の項で説明したような蛍光表示管10の外囲器14の前面板13に設けられている。本実施形態におけるタッチセンサの電極部分の構造以外の部分、すなわち蛍光表示管10の構造や、タッチセンサの制御部23及び検出原理、そしてタッチセンサにダミーセンサ部(ダミーパターン28)を設ける理由等は、[背景技術]の項で説明した通りであり、従来と同様である。従って、本実施形態の説明においては、前記前面板13の内面に設けられるタッチセンサの電極構造を中心に説明し、その他の部分については[背景技術]の項の記載を援用することにより適宜説明を省略し、説明の繰返しによる煩雑を避けるものとする。
【0029】
図1は本発明の実施形態に係るタッチセンサの一構造例における拡大写真を示す図であり、図2は図1を図面化したものである。これらの図に示すタッチセンサ1は、蛍光表示管10の外囲器14の前面板13の内面に形成されており、所定間隔をおいて互いに平行に配置された複数本の第1の線状配線2(図中横方向に平行な配線)と、第1の線状配線2と直交するように、第1の線状配線2と同一の間隔をおいて互いに平行に配置された複数本の第2の線状配線3(図中縦方向に平行な配線)から構成される正方形の格子パターンを基本パターンとして備えている。この格子パターンは前面板13の内面上にアルミニウム等の導体で一体に形成されており、その線状配線の一部に断線した分離部4を設けることにより、電気的に独立したセンサ部5及びダミーセンサ部6が互いに隣接して形成されている。なお、複数本の第1の線状配線2は図中横方向に互いに平行であり、複数本の第2の線状配線3は図中縦方向に互いに平行であるとしたが、かかる表現は幾何学的に完全な平行な配置のみを意味して他を排除する意図ではなく、実施形態における線状配線の平行なパターン配置の中には、配線パターン作成上の誤差等や、その他の理由による平行からのある程度の逸脱が含まれてもよい。
【0030】
すなわち、隣接している複数本の第1の線状配線2の横方向の同一位置に分離部4を設け、また隣接している複数本の第2の線状配線3の縦方向の同一位置に分離部4を設けることにより、これら第1及び第2の線状配線2,3の分離部4を境として、格子パターンは、電気的に分離したセンサ部5の領域とダミーセンサ部6の領域に分離されている。
【0031】
また、センサ部5を構成する第1の線状配線2の一部が、引き出し配線7として、ダミーセンサ部6を構成する他方の第2の線状配線3に設けられた分離部4を通って、ダミーセンサ部6の外の領域に導出されており、図1及び図2には図示しないが図8に示す端子部26に接続されている。なおこの引き出し配線7は、その幅(太さ)が線状配線2,3の幅よりも大きく設定されている。
【0032】
なお、前記センサ部5は、図7に示した従来例と同様に制御部23に接続されている。また、前記ダミーセンサ部6は表示エリア内での透過率の均一化と、前面板13への帯電によるセンサ部5の誤反応の防止のために必要であり、接地されている。ダミーセンサ部6を接地しないと、当該ダミーセンサ部6に電荷が蓄積されて隣接するセンサ部5との間の静電容量が増大するため、非タッチにも関わらず当該センサ部5が反応したり、タッチ時に当該センサ部5のカウント値が増大して誤動作の原因になる場合がある。従って、ダミーセンサ部6は接地しておくことが好ましい。
【0033】
このように構成されたセンサ部5とダミーセンサ部6の境界では、センサ部5の複数の第2の線状配線3の各端部と、ダミーセンサ部6の第1の線状配線2とが、所定間隔をおいて対向するとともに、センサ部5の複数の第1の線状配線2の各端部と、ダミーセンサ部6の第2の線状配線3とが、所定間隔をおいて対向している。
【0034】
また、このように構成された引き出し配線7とダミーセンサ部6の境界では、線状の引き出し配線7と、引き出し配線7の両側にあるダミーセンサ部6の複数の第2の線状配線3の各端部とが、所定間隔をおいて対向している。
【0035】
なお、図1及び図2に示した構造例では、引き出し配線7の線幅は0.05mm、センサ部5とダミーセンサ部6のギャップは0.06mmであり、この値は背景技術において図9を参照して説明した構造例と同じである。また、センサ部5及びダミーセンサ部6における線状細線2,3の線幅は0.03mmであり、これも図9に示した従来の構造例と同一である。しかし、センサ部5及びダミーセンサ部6における線状細線2,3の間隔は0.36mmであり、これは図9に示した従来の構造例の2倍になっている。以上の数値設定の結果、センサ部5及びダミーセンサ部6の透過率は84%であり、図9に示した従来の構造例における透過率83%と略同一になっている。
【0036】
なお、タッチセンサ1の導体の寸法を上述したように決定したのは、以下の理由による。まず透過率については、これよりもアルミニウムの面積占有率を減らすとタッチセンサ1の反応に支障を来すおそれがあるからである。また、配線幅の0.03mmは、目視しにくく、かつ安定して製造できる寸法である。仮に0.015mmにすれば見栄えはさらに良くなるが、安定して製造できず、断線してしまう可能性が高くなってしまう。また、引き出し配線7は、0.03mmの細線と同じでも実際には差し支えないが、これよりも太い0.05mmとしたことにより、製造工程での断線確率を減少させるためである。
【0037】
以上のようなタッチセンサ1の電極構造は、蛍光表示管10の外囲器14の前面板13の内面上に、アルミニウムを全面蒸着し、これをフォトリソグラフィー法によりパターニングすることで形成できる。又は、前面板13の内面上に、アルミニウムで正方形の格子パターン(細線よりも太い引き出し配線7を含む)を形成し、その後に細線の不要部分を削除して分離部4を設けることによって形成することもできる。
【0038】
以上のような構造のタッチセンサ1によれば、正方形の格子パターンの線状配線に分離部4を設けることにより、所定間隔をおいて隣接することにより電気的に独立したセンサ部5とダミーセンサ部6を形成したので、隣り合うセンサ部5とダミーセンサ部6のギャップは、一方の線状配線の端部が、分離部4を間に挟んで他方の線状配線と隣接する構造となる。このため、従来のように両電極5,6のギャップが平行な2本の線状の導体で囲まれた帯形状となることはない。
【0039】
また、センサ部5の引き出し配線7とダミーセンサ部6の関係についても同様であり、引き出し配線7とダミーセンサ部6とのギャップは、ダミーセンサ部6の線状配線の端部が、分離部4を間に挟んで線状の引き出し配線7と隣接する構造となり、従来のように平行な2本の線状の導体で囲まれた帯形状となることはない。
【0040】
従って、センサ部5とダミーセンサ部6の境界、及びセンサ部5の引き出し配線7とダミーセンサ部6の境界は視認しにくくなるので見栄えがよく、特に蛍光表示管の表示部が背景で発光している場合にも電極構造が見えにくく表示上好都合である。
【0041】
また隣り合うセンサ部5とダミーセンサ部6の間の容量、及びセンサ部5の引き出し配線7とダミーセンサ部6の間の容量は従来よりも十分に小さくなるので、タッチ時と非タッチ時の容量の変化からタッチの有無を判断する精度を感度調整によって大きく向上させることが可能となる。
【0042】
図3に示すように、本実施形態を示す分図(a)では、非タッチ時とタッチ時の静電容量の差はAであり、また比較例である従来例を示す分図(b)でも、非タッチ時とタッチ時の静電容量の差はAであって、タッチ時の容量の変化値(変化容量)は同じである。これは、前述したように、本実施形態と従来例では、開口率(透過率)がほぼ同じであるため、基本的な検出感度がほぼ同じになっているためである。
【0043】
しかし、図3から分かるように、本実施形態の方が、比較例よりも非タッチ時のカウント値(ベース容量)が小さくなっている。これは、前述したように、比較例においてはスイッチ電極21とダミーパターン28の間の容量が大きいが、本実施形態では、電極の構造上、センサ部5とダミーセンサ部6の間の容量が小さいからである。
【0044】
そこで本実施形態では、図3に示すように、制御部23に組み込まれたソフトウエアによってカウント可能な前記カウント値の上限よりも低い範囲内で有効な感度調整を行なうことができる。すなわち、本実施形態は従来よりもベース容量が低いので、感度調整範囲内でカウント値を測定するスケールを拡大することにより、ベース容量のカウント値とタッチ時の容量のカウント値をそれぞれ同倍率で拡大して、両値の差であるタッチ時の変化値(変化容量)を拡大することができる。その結果、タッチと非タッチを識別する検出感度を高くすることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のタッチセンサ1によれば、センサ部5とダミーセンサ部6を、共通の格子パターンの一部に分離部4を設けることで形成しているので、両者の境界が目立たなくなるという効果が得られ、また両者が対峙してコンデンサーを構成する寸法が短くなるので、ベース容量が小さくなって検出感度を向上させることができるという効果が得られる。
【0046】
以上説明した実施形態では、タッチセンサ1を蛍光表示管10の前面板13の内面に設けたが、蛍光表示管10の前面板13の外面側に取り付けても良い。また、蛍光表示管10に取り付ける場合には、別部材の基板に設けて、後付けで蛍光表示管10の前面板13の外面に取り付けるようにしてもよい。また、蛍光表示管だけでなく、液晶表示素子、有機EL素子、フィールドエミッションディスプレイ等、その他の表示素子に設けることもできる。
【0047】
さらに、本発明のタッチセンサは、蛍光表示管等の表示素子とは関係なく、タッチセンサ単体としても構成可能である。例えば、何らかの絶縁基板の一面にタッチセンサの電極構造を形成し、他面に対するタッチを検出するようにすることもできる。
【0048】
なおタッチセンサを構成する電極はアルミニウムに限らず、導体であればよく、非透光性導電膜のほか、透明導電膜でもよい。また、格子パターンは正方形に限らず、第1及び第2の線状配線が直角以外の角度で交差する例えば菱形等の格子パターンでもよい。
【0049】
なお、以上説明した実施形態においては、引き出し配線7の幅は線状配線2、3の幅と同じでも良い。また、引き出し配線7は、線状配線2の方向に沿って引き出したが、線状配線3の方向に沿って引き出しても良い。さらに、引き出し配線7は、ジグザグ状に引き出しても良い。すなわち、はじめに線状配線2の方向に沿って引き出し、次に線状配線3の方向に沿って引き出し、最後にまた線状配線2の方向に沿って引き出してもよい。いずれにしても、引き出し配線7は、線状配線2及び/又は線状配線3に平行に引き出せば目立たない。
【0050】
また、以上説明した実施形態においては、分離部4の幅は、線状配線2、2相互の配置間隔及び線状配線3、3相互の配置間隔よりも狭くなっており、また線状配線2、3の各幅よりも広くなっている。これにより、センサ部5とダミーセンサ部6の境界(または引き出し配線7とダミーセンサ部6の境界)では、必ず線状配線2、3の端部どうしが分離部4を挟んで隣接するか、または一方の線状配線の端部と他方の線状配線が分離部4を挟んで隣接する構造となるので好ましい。
【符号の説明】
【0051】
1…タッチセンサ
2…第1の線状配線
3…第2の線状配線
4…分離部
5…センサ部
6…ダミーセンサ部
7…引き出し配線
10…蛍光表示管
14…外囲器
15…蛍光体
16…陽極
18…陰極
23…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔をおいて互いに平行に配置された複数本の第1の線状配線と、前記第1の線状配線と交差するように所定間隔をおいて互いに平行に配置された複数本の第2の線状配線とによって基板の表面に格子パターンが形成され、前記格子パターンの前記線状配線に分離部を設けることにより、電気的に独立したセンサ部及びダミーセンサ部を互いに隣接して形成したことを特徴とするタッチセンサ。
【請求項2】
前記センサ部を構成する一方の前記線状配線の一部が、前記ダミーセンサ部を構成する他方の前記線状配線の分離部を通って、前記ダミーセンサ部の外に導出されたことを特徴とする請求項1記載のタッチセンサ。
【請求項3】
外囲器と、前記外囲器の内部に設けられて電子を放出する陰極と、前記外囲器の内部に設けられて前記陰極から放出された電子が射突して発光する蛍光体を備えた陽極とを有する蛍光表示管において、
所定間隔をおいて互いに平行に配置された複数本の第1の線状配線と、前記第1の線状配線と交差するように所定間隔をおいて互いに平行に配置された複数本の第2の線状配線とによって前記外囲器の表面に格子パターンを形成し、前記格子パターンの前記線状配線に分離部を設けることにより、電気的に独立したセンサ部及びダミーセンサ部が互いに隣接して形成されたタッチセンサを設けたことを特徴とする蛍光表示管。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図1】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−53669(P2012−53669A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195811(P2010−195811)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000201814)双葉電子工業株式会社 (201)
【Fターム(参考)】