説明

タッチパッド

【課題】電極の形状を安定させて検出結果や精度の向上を図ることのできる安価なタッチパッドを提供する。
【解決手段】基材層1と、この基材層1の表面XY方向に複数の電極11が配列形成されるパターン電極層10とを備え、任意の電極11に指がタッチする場合にこれらの間にキャパシタを形成し、静電容量の変化を検出するタッチパッドで、基材層1を、絶縁性のポリエチレンテレフタレートフィルム2と、このポリエチレンテレフタレートフィルム2の表面に貼着される銅箔3と、ポリエチレンテレフタレートフィルム2の裏面に貼着されてシールド用のグラウンド層を形成する金属膜4とから多層構造に形成し、パターン電極層10の複数の電極11を、少なくとも基材層1の銅箔3をエッチングすることにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示機器、通信機器、端末機器等に使用される静電容量式のタッチパッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のタッチパッドは、図示しないが、耐熱性に優れる薄いポリイミドフィルムと、このポリイミドフィルムの表面XY方向に複数の電極が配列形成されるパターン電極層とを備え、複数の電極における任意の電極に指がタッチする場合にこれらの間にキャパシタを形成し、静電容量の変化を検出して制御基板に出力するよう機能する(特許文献1、2参照)。
【0003】
ポリイミドフィルムは、電気絶縁性や強度、耐熱性等に優れ、文字やキャラクターが形成される場合には、これらを照光する照光性が要求される。また、パターン電極層は、例えばポリイミドフィルムの表面に銀ペーストでスクリーン印刷され、乾燥硬化することにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009‐116861号公報
【特許文献2】特開2003‐280807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来におけるタッチパッドは、以上のように構成され、ポリイミドフィルムが使用されるので、優れた耐熱性等が得られるものの、照光性が要求される場合には、光透過性に劣るので、開口を設けなくてはならないという問題がある。また、ポリイミドフィルムは高価なので、コストの削減を図ることができないという問題もある。
【0006】
さらに、ポリイミドフィルムの表面にパターン電極層が温度等に影響される銀ペーストでスクリーン印刷されるので、銀ペーストのダレ等に伴い、電極の形状が安定した断面矩形ではなく、不安定な断面略半楕円形になることが少なくない。この結果、電極と電極との間の距離や導電率が変化して安定せず、検出結果や精度の向上に支障を来たすおそれがある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、電極の形状を安定させて検出結果や精度の向上を図ることのできる安価なタッチパッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、基材層と、この基材層の表面に複数の電極が配列形成されるパターン電極層とを含み、電極に導体が接近する場合にこれらの間にキャパシタを形成し、静電容量の変化を検出するものであって、
基材層を、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、このポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に貼り付けられる銅箔と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面に貼り付けられてシールド用のグラウンド層を形成する金属膜とから形成し、パターン電極層を、少なくとも基材層の銅箔をエッチングすることにより形成したことを特徴としている。
【0009】
なお、基材層のポリエチレンテレフタレートフィルムに、パターン電極層と金属膜とを電気的に接続するスルーホールを設けることができる。
また、パターン電極層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に所定の間隔で配列形成される複数のX電極と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に所定の間隔で配列形成され、X電極に交差する複数のY電極とを含み、これらX電極とY電極との交差部を、レジストインクと導電性インクとを積層塗布して硬化させることによりジャンパー構造に構成することができる。
【0010】
ここで、特許請求の範囲における銅箔や金属膜は、ベタの膜でも良いし、メッシュ形等でも良い。電極、X電極、Y電極は、平面矩形、多角形、菱形、円形、楕円形等に適宜形成することができる。さらに、本発明に係るタッチパッドは、少なくとも各種の表示機器、電子黒板、ゲーム機器、家電製品、コンピュータ機器、自動車の車載機器、通信機器、端末機器等に使用することができる。
【0011】
本発明によれば、先ず、基材層のポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り付けられた銅箔を少なくともエッチングしてパターン電極層を形成し、このパターン電極層の複数の電極の交差部を必要に応じ、ジャンパー構造等に構成すれば、静電容量の変化を検出する静電容量式のタッチパッドを製造することができる。
パターン電極層、特にその複数の電極を形状の安定した銅箔の加工により形成することができるので、電極が断面略矩形になり、電極の形状や面積が安定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電極の形状を安定させて検出結果や精度の向上を図ることができるという効果がある。また、従来よりも安価なタッチパッドを提供することができる。
【0013】
また、基材層のポリエチレンテレフタレートフィルムに、パターン電極層と金属膜とを電気的に接続するスルーホールを設ければ、配線の引き回し部の数を低減したり、配線の引き回しや他の回路への接続を簡素化することができる。
さらに、X電極とY電極との交差部を、レジストインクと導電性インクとを積層塗布して硬化させることによりジャンパー構造に構成すれば、パターン電極層の回路を容易に修正したり、ジャンパー構造を安価に得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るタッチパッドの実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係るタッチパッドの実施形態におけるX電極とY電極との交差部を模式的に示す部分平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態におけるタッチパッドは、図1ないし図3に示すように、薄い基材層1と、この基材層1の表面XY方向にタッチ操作用の複数の電極11が配列形成されるパターン電極層10とを備えて所定の電子機器に搭載され、任意の電極11に導体である指がタッチする場合にこれらの間にキャパシタを形成し、微弱な静電容量の変化を検出するデバイスであり、基材層1を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム2、銅箔3、及び金属膜4から多層構造に形成し、パターン電極層10の複数の電極11を、少なくとも基材層1の銅箔3をエッチングすることにより形成するようにしている。
【0016】
基材層1は、絶縁性の薄いポリエチレンテレフタレートフィルム2と、このポリエチレンテレフタレートフィルム2の平坦な表面に貼着される銅箔3と、ポリエチレンテレフタレートフィルム2の平坦な裏面全面に貼着される金属膜4とを備え、銅箔3の加工により形成されたパターン電極層10がアクリル系等の透明の保護層5に積層被覆されており、この保護層5上に指がタッチする。
【0017】
ポリエチレンテレフタレートフィルム2は、機械的強度、電気的特性、耐薬品性、光透過性、コスト的に優れ、例えば四隅部等の隅部にパターン電極層10と金属膜4とを相互に電気的に接続するスルーホール6が形成される。このスルーホール6は、ポリエチレンテレフタレートフィルム2に穿孔した孔に導電性ペーストの充填により形成されたり、あるいは銅メッキ等のメッキが施されることで形成され、回路を簡略化するよう機能する。また、銅箔3は、例えばエッチングされた箔膜やベタの箔膜等からなり、エッチング、及び導電性インクやレジストインクの塗布乾燥により、パターン電極層10を形成する。
【0018】
金属膜4は、例えばアルミ箔や銅箔等を使用した圧延法や電解法、導電ペーストを用いた印刷法等により均一な膜に形成され、所定の電子機器から放出されるホワイトノイズ等を低減したり、座標入力精度を向上させる観点から、所定の電子機器の電源グラウンドに接続されてシールド用のグラウンド層を形成するよう機能する。
【0019】
パターン電極層10は、ポリエチレンテレフタレートフィルム2の表面Y方向に所定の間隔で配列形成される複数のX電極12と、ポリエチレンテレフタレートフィルム2の表面X方向に所定の間隔で配列形成され、X電極12に直交する複数のY電極14とを備え、これらX電極12とY電極14との直交する交差部が変更の容易なジャンパー構造16に構成されており、図示しない制御基板に電気的に接続される。
【0020】
電極11である各X電極12は、断面形が安定した平面略菱形に形成されてメッキされ、隙間をおいて隣接する他のX電極12に細長い導電Xライン13で接続される。この導電Xライン13は、金属粒子やカーボン等を含有する導電性インクがスクリーン印刷で塗布されて乾燥硬化することにより線条に形成される。
【0021】
電極11である各Y電極14は、断面形が安定した平面略菱形に形成されてメッキされ、隙間をおいて隣接する他のY電極14に細長い導電Yライン15で接続される。この導電Yライン15についても、金属粒子やカーボン等を含有する導電性インクがスクリーン印刷で塗布されて乾燥硬化することにより線条に形成される。
【0022】
ジャンパー構造16は、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム2の表面に、各導電Yライン15を跨ぐ絶縁性のレジスト層17が形成され、X電極12とレジスト層17上に導電Xライン13が積層形成される。レジスト層17は、絶縁性のレジストインクがスクリーン印刷で塗布されて乾燥硬化することで形成される。
【0023】
上記において、タッチパッドを製造する場合には、先ず、ポリエチレンテレフタレートフィルム2に貼着した銅箔3にレジスト材をフォトレジスト法により形成し、この形成したレジスト材にエッチング液を部分的に供給することにより、エッチングしてパターン電極層10を形成し、その後、パターン電極層10の表面から不要になったレジスト材を剥離する。
【0024】
こうしてパターン電極層10からレジスト材を剥離したら、露出したパターン電極層10の複数のX電極12とY電極14の表面にニッケルメッキや金メッキ等のメッキをそれぞれ施して良好な導電性を確保し、隣接する複数のY電極14間に導電性インクをスクリーン印刷して乾燥硬化させることで導電Yライン15を形成する。
【0025】
この際、ポリエチレンテレフタレートフィルム2は、ポリイミドフィルムに比べ、耐熱性や寸法安定性で劣るので、寸法を安定させる観点から、安定した低温でパターン電極層10を形成することが好ましい。また、特に限定されるものではないが、この段階でポリエチレンテレフタレートフィルム2に、パターン電極層10と金属膜4とを電気的に接続するスルーホール6を形成することができる。
【0026】
次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルム2の表面に、各導電Yライン15を跨ぐレジスト層17をレジストインクを塗布して乾燥硬化させることにより形成し、X電極12とレジスト層17上に導電性インクをスクリーン印刷して乾燥硬化させることで導電Xライン13を形成し、X電極12とY電極14との交差部をジャンパー構造16に構成する。こうしてX電極12とY電極14との交差部をジャンパー構造16に構成したら、完成したパターン電極層10上に光透過性の保護層5を積層接着することにより、静電容量式のタッチパッドを製造することができる。
【0027】
なお、パターン電極層10の導電Xライン13と導電Yライン15とは、X電極12やY電極14と異なり、表面積の小さい接続用の線条に形成され、指の検出に資するものではないので、例え導電性インクにより形成しても、検出結果や精度を何ら損ねることがない。
【0028】
上記構成によれば、高価なポリイミドフィルムやこれを用いたフレキシブル回路ではなく、光透過性に優れる安価なポリエチレンテレフタレートフィルム2を使用するので、例えタッチパッドに照光性が要求される場合にも、開口を設ける必要が全くなく、コストを大幅に削減して量産することができる。
【0029】
また、指が接近するパターン電極層10の複数の電極11を、ダレを伴う銀ペーストでスクリーン印刷するのではなく、既に形状や厚みの安定した銅箔3を使用してエッチング形成するので、電極11が設計通りの断面略矩形になり、電極11の最終的な形状や面積が大いに安定する。したがって、電極11間の距離や導電率の変化を抑制し、検出結果や精度を著しく向上させることができる。
【0030】
また、ポリエチレンテレフタレートフィルム2の裏面全面に金属膜4をベタで貼着すれば、座標入力精度を向上させることができる他、コスト削減がより期待できる。さらに、ジャンパー構造16を、レジストインクと導電性インクとをスクリーン印刷して硬化させることで構成するので、他の方法に比べ、製造コストを低減し、作業の迅速化を図ることが可能になる。
【0031】
なお、上記実施形態ではポリエチレンテレフタレートフィルム2の隅部にスルーホール6を形成したが、何らこれに限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレートフィルム2の周縁部等にスルーホール6を形成しても良い。また、ジャンパー構造16は、ポリエチレンテレフタレートフィルム2の表面に、導電Xライン13を跨ぐ絶縁性のレジスト層17を形成し、このレジスト層17上に導電Yライン15を積層することで形成しても良い。また、複数のY電極14をエッチングで形成する際、導電Yライン15もエッチング形成しても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 基材層
2 ポリエチレンテレフタレートフィルム
3 銅箔
4 金属膜
6 スルーホール
10 パターン電極層
11 電極
12 X電極(電極)
13 導電Xライン
14 Y電極(電極)
15 導電Yライン
16 ジャンパー構造
17 レジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、この基材層の表面に複数の電極が配列形成されるパターン電極層とを含み、電極に導体が接近する場合にこれらの間にキャパシタを形成し、静電容量の変化を検出するタッチパッドであって、
基材層を、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、このポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に貼り付けられる銅箔と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面に貼り付けられてシールド用のグラウンド層を形成する金属膜とから形成し、パターン電極層を、少なくとも基材層の銅箔をエッチングすることにより形成したことを特徴とするタッチパッド。
【請求項2】
基材層のポリエチレンテレフタレートフィルムに、パターン電極層と金属膜とを電気的に接続するスルーホールを設けた請求項1記載のタッチパッド。
【請求項3】
パターン電極層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に所定の間隔で配列形成される複数のX電極と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に所定の間隔で配列形成され、X電極に交差する複数のY電極とを含み、これらX電極とY電極との交差部を、レジストインクと導電性インクとを積層塗布して硬化させることによりジャンパー構造に構成した請求項1又は2記載のタッチパッド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−216061(P2011−216061A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86178(P2010−86178)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】