説明

タッチパネルの制御回路、制御方法およびそれらを用いたタッチパネル入力装置、電子機器

【課題】抵抗膜方式タッチパネルにおいて、フリック入力を検出する。
【解決手段】座標検出部110は、第1端子P1から第4端子P4の状態にもとづき、ユーザが接触した座標を検出する。第1容量検出回路30xは、第1端子P1および第2端子P2のひとつである第1検出端子と接続され、第1検出端子からみたパネルの容量を検出する。フリック入力判定部120は、第1検出端子の容量の時間波形にもとづき、第2方向に対するフリック入力の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜方式タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のコンピュータや携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器は、指で接触することによって電子機器を操作するための入力装置を備えるものが主流となっている。こうした入力装置として、抵抗膜式(抵抗式ともいう)のタッチパネル(タッチセンサ)などが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−48233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タッチパネルに対する入力操作として、「フリック入力」と呼ばれる操作がある。フリック入力とは、ユーザの指がパネルのある一点からある方向に向けて素早くスライドする動作である。フリック入力は、ウェブブラウザにおけるページのスライド、電子書籍におけるページめくり、あるいは文字入力に利用される。
【0005】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、フリック入力を検出可能な制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、タッチパネルの制御回路に関する。タッチパネルは、第1、第2、第3、第4端子と、第1方向に延びる一辺が第1端子と接続され、それと対向する辺が第2端子と接続される第1抵抗膜と、第1抵抗膜とギャップを隔てて配置され、第1方向と垂直な第2方向に延びる一辺が第3端子と接続され、それと対向する辺が第4端子と接続される第2抵抗膜と、を有する。制御回路は、第1端子から第4端子の状態にもとづき、ユーザが接触した座標を検出する座標検出部と、第1端子および第2端子のひとつである第1検出端子と接続され、第1検出端子の容量を検出する第1容量検出回路と、第1検出端子の容量の時間波形にもとづき、第2方向に対するフリック入力の有無を判定するフリック入力判定部と、を備える。
【0007】
抵抗式タッチパネルに対してフリック入力を行うと、ある検出端子から見たパネルの容量があるパターンに従って変化する。この態様によれば、容量の時間波形にもとづいて、フリック入力を検出できる。
【0008】
フリック入力判定部は、第1検出端子の容量の時間波形が、判定期間にわたり増大するときに、第1検出端子に近づく方向のフリック入力と判定し、第1検出端子の容量の時間波形が、判定期間にわたり減少するときに、第1検出端子から遠ざかる方向のフリック入力と判定してもよい。
【0009】
ある態様の制御回路は、第3端子および第4端子のひとつである第2検出端子と接続され、第2検出端子の容量を検出する第2容量検出回路をさらに備えてもよい。フリック入力判定部は、第2検出端子の容量の時間波形にもとづき、第1方向に対するフリック入力の有無を判定してもよい。
【0010】
第1容量検出回路と、第2容量検出回路は、単一の容量検出回路を時分割で共有してもよい。
【0011】
フリック入力判定部は、第2検出端子の容量の時間波形が、判定期間にわたり増大するときに、第2検出端子に近づく方向のフリック入力と判定し、第2検出端子の容量の時間波形が、判定期間にわたり減少するときに、第2検出端子から遠ざかる方向のフリック入力と判定してもよい。
【0012】
フリック入力判定部は、判定期間における容量の時間波形の傾きが所定の範囲に含まれるとき、フリック入力と判定してもよい。
【0013】
ある態様の制御回路は、測定された容量をフィルタリングするフィルタをさらに備えてもよい。
【0014】
座標検出部は、第1状態において第1、第2端子それぞれに所定の第1、第2バイアス電圧を印加し、第3、第4端子をハイインピーダンス状態とし、第2状態において第3、第4端子それぞれに所定の第1、第2バイアス電圧を印加し、第1、第2端子をハイインピーダンス状態とする電圧生成部と、第1状態において、第3、第4端子の少なくとも一方に生ずる第1パネル電圧を検出し、第2状態において、第1、第2端子の少なくとも一方に生ずる第2パネル電圧を検出する電圧検出部と、第1パネル電圧にもとづき、ユーザが接触した第2方向の座標を、第2パネル電圧にもとづき、ユーザが接触した第1方向の座標を演算する座標演算部と、を含んでもよい。
【0015】
本発明の別の態様はタッチパネル入力装置に関する。タッチパネル入力装置は、第1、第2、第3、第4端子と、第1方向に延びる一辺が第1端子と接続され、それと対向する辺が第2端子と接続される第1抵抗膜と、第1抵抗膜とギャップを隔てて配置され、第1方向と垂直な第2方向に延びる一辺が第3端子と接続され、それと対向する辺が第4端子と接続される第2抵抗膜と、を有するタッチパネルと、タッチパネルを制御する上述のいずれかの制御回路と、を備えてもよい。
【0016】
本発明の別の態様は、電子機器に関する。電子機器は、上述のタッチパネル入力装置を備えてもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のある態様によれば、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、フリック入力を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係るタッチパネル入力装置を備える電子機器の構成を示すブロック図である。
【図2】シングルタッチ時のタッチパネルの等価回路図である。
【図3】図3(a)、(b)は、ユーザがX軸方向にフリック入力したときの第1端子の容量の波形図である。
【図4】図4(a)はフリック入力時のパネルの等価回路図であり、図4(b)は、容量のセンシングの波形図である。
【図5】図5(a)、(b)は、制御回路の動作を示すタイムチャートである。
【図6】タッチパネルを近接センサとして利用可能な制御回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0022】
図1は、実施の形態に係るタッチパネル入力装置(単に入力装置という)2を備える電子機器1の構成を示すブロック図である。入力装置2は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)8の表層に配置され、タッチパネルとして機能する。入力装置2は、ユーザが指やペンなど(以下、指6)でタッチしたポイント(接触点という)のX座標およびY座標を判定する。
【0023】
入力装置2は、タッチパネル4および制御回路100を備える。タッチパネル4は4線式(4端子)の抵抗膜方式タッチパネルである。タッチパネル4の構成は一般的なものであるためここでは簡単に説明する。
【0024】
タッチパネル4は、第1端子P1〜第4端子P4、第1抵抗膜RF1、第2抵抗膜RF2を備える。第1抵抗膜RF1および第2抵抗膜RF2は、X軸およびY軸に対して垂直なZ軸方向にギャップを隔ててオーバーラップして配置される。第1抵抗膜RF1のY軸(第1方向)に延びる一辺E1は、第1端子P1と接続される。辺E1と対向する辺E2は、第2端子P2と接続される。第3端子P3は、第2抵抗膜RF2のX軸(第2方向)に延びる一辺E3と接続され、第4端子P4は、第2抵抗膜RF2の辺E3と対向する一辺E4と接続される。以上がタッチパネル4の構成である。
【0025】
制御回路100は、X方向の座標を検出する第1状態φ1と、Y方向の座標を検出する第2状態φ2と、X方向に対するフリック入力を検出する第3状態φ3と、Y方向に対するフリック入力を検出する第4状態φ4と、を時分割的にスイッチしながら、ユーザの入力を判定する。
【0026】
制御回路100は、第1端子Pc1〜第4端子Pc4、座標検出部110、フリック入力検出部120を備える。第1端子Pc1〜第4端子Pc4はそれぞれ、タッチパネル4側の対応する第1端子P1〜第4端子P4と接続される。
【0027】
はじめに、座標検出部110の構成を説明する。座標検出部110は、電圧生成部10、電圧検出部20、座標演算部26を備える。
【0028】
座標検出部110は、第1端子P1から第4端子P4の状態にもとづき、ユーザが接触した座標を検出する。座標検出部110の構成および動作は特に限定されず、公知の、あるいは将来利用可能な、抵抗式パネルの検出回路を用いることができる。
【0029】
図1の座標検出部110は、電圧生成部10、電圧検出部20、座標演算部26を備える。はじめにX方向の座標(X座標)を検出するための構成を説明する。
電圧生成部10は、第1状態φ1において、第1端子P1、第2端子P2それぞれに所定の第1バイアス電圧Vb1、第2バイアス電圧Vb2を印加する。ここではVb1>Vb2とする。好ましくは第2バイアス電圧Vb2は接地電圧(0V)である。また第1状態において、電圧生成部10は第3端子P3、第4端子P4をハイインピーダンス状態とする。
【0030】
電圧検出部20は、第1状態φ1において、第3端子P3および第4端子P4の少なくとも一方に生ずる電圧(以下、第1パネル電圧という)Vxを検出する。電圧検出部20は、セレクタ22と、A/Dコンバータ24を含む。たとえばセレクタ22は、第1状態φ1において、第3端子P3の電圧を選択する。A/Dコンバータ24は、第3端子P3に生ずる第1パネル電圧Vxをデジタル値Dxに変換する。
【0031】
座標演算部26は、デジタル値Dxに基づいて、ユーザが接触したX座標を判定する。
図2は、シングルタッチ時のタッチパネル4の等価回路図である。ユーザが接触点PUで接触すると、第1抵抗膜RF1は、第1端子P1と接触点PU間の抵抗R11と、接触点PUと第2端子P2間の抵抗R12に分割される。第1抵抗膜RF1と第2抵抗膜RF2は、接触点PUにおいて接触し、その接触抵抗はRcである。第2抵抗膜RF2の接触点PUから第3端子P3に至る経路の抵抗はR2である。
【0032】
接触点PUの電位は、バイアス電圧Vb1とVb2を抵抗R11、R12で分圧したものであるから、接触点PUのX座標を示す。そして第3端子P3はハイインピーダンスであるため、第3端子P3の電圧は、接触点PUの電位とほぼ等しくなる。つまり、第3端子P3に生ずるパネル電圧Vxは、接触点PUのX座標を示す。
【0033】
パネル電圧VxからX座標を導出するアルゴリズムは、公知の技術を利用すればよく、本発明において特に限定されるものではない。
【0034】
続いてY方向の座標(Y座標)を検出するための構成を説明する。
電圧生成部10は、第2状態φ2において、第3端子P3、第4端子P4それぞれに所定の第1バイアス電圧Vb1、第2バイアス電圧Vb2を印加する。また第2状態φ2において、電圧生成部10は第1端子P1、第2端子P2をハイインピーダンス状態とする。第1状態および第2状態それぞれにおける第1バイアス電圧Vb1は同じ値であってもよいし、異なっていてもよい。以下では、同じ値の場合を説明する。第2バイアス電圧Vb2も同様である。
【0035】
電圧検出部20は、第2状態φ2において第1端子P1および第2端子P2の少なくとも一方に生ずる電圧(以下、第2パネル電圧という)Vyを検出する。たとえばセレクタ22は、第2状態φ2において、第1端子P1の電圧を選択する。A/Dコンバータ24は、第1端子P1に生ずる第2パネル電圧Vyをデジタル値Dyに変換する。座標演算部26は、デジタル値Dyに基づいて、ユーザが接触したY座標を演算する。
【0036】
なお、電圧検出部20は、第1状態φ1において、第3端子P3に代えて、あるいはそれに加えて、第4端子P4に生ずる電圧をパネル電圧Vxとして測定してもよい。同様に電圧検出部20は、第2状態φ2において、第1端子P1に代えて、あるいはそれに加えて、第2端子P2に生ずる電圧をパネル電圧Vyとして測定してもよい。
【0037】
以上が座標検出部110の構成である。続いて、フリック入力検出部120の構成を説明する。
【0038】
フリック入力検出部120は、第1容量検出回路30x、第1A/Dコンバータ32x、第1フィルタ34x、第2容量検出回路30y、第2A/Dコンバータ32y、第2フィルタ34y、フリック入力判定部36を備える。
【0039】
第1容量検出回路30x、第1A/Dコンバータ32x、第1フィルタ34x、およびフリック入力判定部42は、第3状態φ3において、第2方向(X軸方向)に対するフリック入力の有無を検出する。
【0040】
第1容量検出回路30xは、第1検出端子である第1端子P1と接続され、第1端子P1からタッチパネル4を見た容量を検出し、容量を示す検出信号C1を生成する。第1容量検出回路30xは、第1端子P1に代えて第2端子P2の容量を検出してもよい。第1容量検出回路30xの構成は特に限定されず、公知の回路を用いればよい。たとえば第1容量検出回路30xは、容量/電圧変換回路であってもよい。
【0041】
第1フィルタ34xは、ノイズ除去を目的として設けられる。たとえば第1フィルタ34xは、アナログの移動平均フィルタである。なお、第1フィルタ34xを第1A/Dコンバータ32xの後段に配置し、デジタルフィルタで構成してもよい。
第1A/Dコンバータ32xは、第1容量検出回路30xから出力される検出信号C1をデジタル値に変換する。
【0042】
フリック入力判定部36は、第1端子P1の容量の時間波形にもとづき、X軸方向に対するフリック入力の有無を判定する。
【0043】
本発明者らは、抵抗式タッチパネルに対するフリック入力について検討を行った結果、フリック入力時には、端子の容量があるパターンに従って変化することを見いだした。図3(a)、(b)は、ユーザがX軸方向にフリック入力したときの第1端子P1の容量C1の波形図である。なお、図3(a)、(b)に示す容量の時間波形に関する知見を、当業者の一般的な技術常識ととらえてはならず、本発明者らが初めて見いだしたものである。
【0044】
図3(a)は、ユーザの指が、第1端子P1に近づく方向、すなわちX軸負方向にフリック入力したときの波形を示す。このフリック入力は、初期状態においてユーザの指がパネルから離れており、ユーザの指がある点に接触し、ユーザの指がスライドし、パネルから再び離れる一連の動作である。
【0045】
このとき、第1端子P1の容量C1の時間波形は、指が接触する時刻t1より前においてある初期値をとり、指が接触する時刻t1に急増し、指がスライドする期間(スライド期間ともいう)τにおいて増大し、時刻t2にユーザの指が離れると初期値まで急減する。一般的なフリック入力では、スライド期間τは、数十ms〜数百ms、より具体的には200〜300msである。
【0046】
図3(b)は、ユーザの指が、第1端子P1から離れる方向、すなわちX軸正方向にフリック入力したときの波形を示す。
【0047】
このとき、第1端子P1の容量C1の時間波形は、指が接触する時刻t1より前において初期値をとり、指が接触する時刻t1に急増し、スライド期間τにおいて減少し、時刻t2にユーザの指が離れると初期値まで急減する。
【0048】
フリック入力判定部36は、スライド期間τにおいて、容量C1がほぼ一定の傾きで変化することを利用して、フリック入力の有無を判定する。具体的には、フリック入力判定部36は、所定のフリック判定期間(単に判定期間ともいう)Tにわたり容量C1の時間波形が所定の傾きで増大するときに、X軸負方向のフリック入力と判定する。反対に、判定期間Tにわたり測定される容量C1の時間波形が所定の傾きで減少するときに、X軸正方向のフリック入力と判定する。判定期間Tはスライド期間τよりも短く設定され、たとえば数十ms〜100ms程度としてもよい。
【0049】
指がスライドする際の、容量C1の傾きは、タッチパネル4の仕様や、指をスライドさせるスピードに応じて定まる。そこでフリック入力判定部36は、判定期間Tにおける容量C1の傾きが所定の範囲に含まれるときに、フリック入力と判定してもよい。言い換えれば、容量C1の傾きが、判定期間Tにわたって連続して所定の範囲に含まれるときに、フリック入力と判定してもよい。所定の範囲は、タッチパネル4の仕様などにもとづいて予め定めればよい。
【0050】
なお、図3(a)、(b)の波形は、指がパネルから離れた初期状態からのフリック入力を示す。指がパネルに接触した初期状態からのフリック入力の場合、一点鎖線で示すように、時刻t1以前に容量値C1は別の初期値をとることが理解される。
【0051】
図4(a)は、フリック入力時のパネルの等価回路図である。容量検出回路30は、CR時定数を有するパネルの容量を測定するように構成され、容量の測定には非ゼロのセンシング時間Tを有する。センシング時間Tは数ms程度、たとえば1msである。容量検出の手段としては、セルフキャパシタンス方式と相互キャパシタ方式などが知られているが、いずれの方式においても1回のセンシングで測定される検出信号Csは、CR時定数に応じた波形を有し、センシング期間Tの終了のタイミング(センシングタイミングという)Teにおける検出信号Csが、容量値として取り込まれる。
【0052】
図4(b)は、容量検出回路30により測定される検出信号Csの波形図である。図4(a)に示すようにフリック入力によって、接触点PUの位置がスライドすると、検出端子P1と接触点PUまでの距離、すなわち抵抗成分が変化する。CR時定数が大きければ、検出信号Csの変化速度が遅くなるため、センシングタイミングTeにおける検出信号Csの値は小さくなり、反対にCR時定数が小さければ、検出信号Csの値は大きくなる。したがって、図4(a)に示すように、抵抗Rsが大きい状態から小さい状態に指をスライドさせると、センシングタイミングTeにおける検出信号Csの値は、時間とともに増大する。容量検出回路によって測定されるセンシングタイミングTeにおける検出信号Csは、フリック入力判定部36が測定する容量C1の時間波形をサンプリングしたデータとなる。
【0053】
第2容量検出回路30y、第2A/Dコンバータ32y、第2フィルタ34yおよびフリック入力判定部36は、第4状態φ4において、第1方向(Y軸方向)に対するフリック入力の有無を検出するために設けられる。
【0054】
第2容量検出回路30yは、第2検出端子である第3端子P3と接続され、第3端子P3の容量を検出し、容量を示す検出信号C3を生成する。第2容量検出回路30yは、第3端子P3に代えて第4端子P4の容量を検出してもよい。第2A/Dコンバータ32y、第2フィルタ34y、フリック入力判定部42の構成、動作は、すでに説明した第1A/Dコンバータ32x、第1フィルタ34x、フリック入力判定部36と同様である。
【0055】
フリック入力判定部36は、第2検出端子である第3端子P3の容量C3の時間波形が、スライド期間τにおいて増大するときに、第3端子P3に近づく方向のフリック入力と判定する。反対に、第3端子P3の容量C3の時間波形が、スライド期間において減少するときに、第3端子P3から遠ざかる方向のフリック入力と判定する。
【0056】
以上が制御回路100の構成である。続いてその動作を説明する。図5(a)、(b)は、制御回路100の動作を示すタイムチャートである。
図5(a)、(b)に示すように、第1状態φ1〜第4状態φ4は、所定の順序で時分割で切りかえられる。図5(a)のシーケンスでは、第1状態φ1において、X座標が判定され、第2状態φ2においてY座標が判定される。続いて、第3状態φ3におけるX方向のフリック検出と、第4状態φ4におけるY方向のフリック検出が同時に行われる。具体的にはセンシング期間Tごとに、第1容量検出回路30xおよび第1A/Dコンバータ32xによって、第1端子P1からパネルを見た容量C1の時間波形がサンプリングされる。順次サンプリングされる容量C1の時間波形が、フリック入力のパターンと一致するか否かを判定する。
【0057】
図5(b)のシーケンスでは、第3状態φ3におけるX方向のフリック検出と、第4状態φ4におけるY方向のフリック検出が、別々のタイムスロットで時分割で実行される。
【0058】
ユーザの指の動きを検出する場合、座標の検出には、100Hz程度の周波数が必要とされる。この場合、つまり1周期は10msとなる。一般的な抵抗式タッチパネルの制御回路において、X座標およびY座標の検出に要する時間は、10msよりも十分に短い。また、容量検出回路による容量検出に要するセンシング時間Tも、数ms、たとえば1ms程度である。したがって、10msの繰り返し周期の内に、座標検出に加えて、パネルの容量を検出することは、可能である。
【0059】
図5(a)、(b)のシーケンスでは、10msごとに容量C1の波形がサンプリングされるため、10サンプリング分の連続するデータが、判定期間Tの波形に対応する。フリック入力判定部36は、順次入力される容量C1のデータをストアし、フリック判定期間Tにわたって、つまり連続する10個のデータが所定の傾きで増加、もしくは減少するときにフリック入力と判定する。データのストアにはFIFOなどが利用できる。容量C3についても同様である。
【0060】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0061】
この変形例では、タッチパネル4を近接センサとして利用する。図6は、タッチパネル4を近接センサとして利用可能な制御回路100aの構成を示す回路図である。図6には、図1の座標検出部110およびフリック入力検出部120は省略している。容量検出回路30は、図1の第1容量検出回路30x、第2容量検出回路30yを流用してもよいし、別に設けてもよい。容量検出回路30の前段には、スイッチSW1〜SW4が設けられる。たとえばすべてのスイッチSW1〜SW4をオンすると、タッチパネル4が巨大な静電容量センサとなる。そして容量検出回路30は、タッチパネル4の静電容量を測定する。近接判定部40は、測定された静電容量にもとづいて、パネルに物体が近接しているか否かを判定する。
【0062】
携帯電話端末では、ユーザが通話時に端末を耳に近づけると、消費電力の低減のためディスプレイをオフするなどの処理が行われ、タッチパネル4に対する物体の近接を検出できれば便宜である。制御回路100aによれば、別途近接センサを設けなくても、パネルに対する物体の近接を検出することができる。
【0063】
第1容量検出回路30xと第2容量検出回路30yは、単一のA/Dコンバータを時分割で共有してもよい。第1A/Dコンバータ32xと第2A/Dコンバータ32y、第1フィルタ34xと第2フィルタ34yも同様である。
【0064】
実施の形態では、第1状態φ1と第2状態φ2において、図1の制御回路100の一部を共有する構成としたが、完全に別個に設けてもよい。また、X方向、Y方向のみのいずれか一方のみに本発明を適用してもよい。
【0065】
実施の形態では、4端子のタッチパネル4を制御する場合を説明したが、本発明はそれに限定されず、その他のタッチパネル4にも適用することが可能である。
【0066】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0067】
1…電子機器、2…入力装置、4…タッチパネル、6…指、8…LCD、100…制御回路、110…座標検出部、120…フリック入力検出部、P1…第1端子、P2…第2端子、P3…第3端子、P4…第4端子、RF1…第1抵抗膜、RF2…第2抵抗膜、10…電圧生成部、20…電圧検出部、22…セレクタ、24…A/Dコンバータ、26…座標演算部、30x…第1容量検出回路、32x…第1A/Dコンバータ、34x…第1フィルタ、30y…第2容量検出回路、32y…第2A/Dコンバータ、34y…第2フィルタ、36…フリック入力判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2、第3、第4端子と、第1方向に延びる一辺が前記第1端子と接続され、それと対向する辺が前記第2端子と接続される第1抵抗膜と、前記第1抵抗膜とギャップを隔てて配置され、前記第1方向と垂直な第2方向に延びる一辺が前記第3端子と接続され、それと対向する辺が前記第4端子と接続される第2抵抗膜と、を有するタッチパネルの制御回路であって、
前記第1端子から前記第4端子の状態にもとづき、ユーザが接触した座標を検出する座標検出部と、
前記第1端子および前記第2端子のひとつである第1検出端子と接続され、前記第1検出端子の容量を検出する第1容量検出回路と、
前記第1検出端子の容量の時間波形にもとづき、前記第2方向に対するフリック入力の有無を判定するフリック入力判定部と、
を備えることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記フリック入力判定部は、
前記第1検出端子の容量の時間波形が、判定期間にわたり増大するときに、前記第1検出端子に近づく方向のフリック入力と判定し、
前記第1検出端子の容量の時間波形が、判定期間にわたり減少するときに、前記第1検出端子から遠ざかる方向のフリック入力と判定することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記第3端子および前記第4端子のひとつである第2検出端子と接続され、前記第2検出端子の容量を検出する第2容量検出回路をさらに備え、
前記フリック入力判定部は、前記第2検出端子の容量の時間波形にもとづき、前記第1方向に対するフリック入力の有無を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記フリック入力判定部は、
前記第2検出端子の容量の時間波形が、判定期間にわたり増大するときに、前記第2検出端子に近づく方向のフリック入力と判定し、
前記第2検出端子の容量の時間波形が、判定期間にわたり減少するときに、前記第2検出端子から遠ざかる方向のフリック入力と判定することを特徴とする請求項3に記載の制御回路。
【請求項5】
前記フリック入力判定部は、
測定された前記容量の時間波形の傾きが所定の範囲に含まれるとき、フリック入力と判定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御回路。
【請求項6】
測定された前記容量をフィルタリングするフィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の制御回路。
【請求項7】
前記座標検出部は、
第1状態において前記第1、第2端子それぞれに所定の第1、第2バイアス電圧を印加し、前記第3、第4端子をハイインピーダンス状態とし、第2状態において前記第3、第4端子それぞれに所定の第1、第2バイアス電圧を印加し、前記第1、第2端子をハイインピーダンス状態とする電圧生成部と、
前記第1状態において、前記第3、第4端子の少なくとも一方に生ずる第1パネル電圧を検出し、前記第2状態において、前記第1、第2端子の少なくとも一方に生ずる第2パネル電圧を検出する電圧検出部と、
前記第1パネル電圧にもとづき、ユーザが接触した前記第2方向の座標を、前記第2パネル電圧にもとづき、ユーザが接触した前記第1方向の座標を演算する座標演算部と、
を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の制御回路。
【請求項8】
第1、第2、第3、第4端子と、第1方向に延びる一辺が前記第1端子と接続され、それと対向する辺が前記第2端子と接続される第1抵抗膜と、前記第1抵抗膜とギャップを隔てて配置され、前記第1方向と垂直な第2方向に延びる一辺が前記第3端子と接続され、それと対向する辺が前記第4端子と接続される第2抵抗膜と、を有するタッチパネルと、
前記タッチパネルを制御する請求項1から7のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項9】
請求項8に記載のタッチパネル入力装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
第1、第2、第3、第4端子と、第1方向に延びる一辺が前記第1端子と接続され、それと対向する辺が前記第2端子と接続される第1抵抗膜と、前記第1抵抗膜とギャップを隔てて配置され、前記第1方向と垂直な第2方向に延びる一辺が前記第3端子と接続され、それと対向する辺が前記第4端子と接続される第2抵抗膜と、を有するタッチパネルの制御方法であって、
前記第1端子から前記第4端子の状態にもとづき、ユーザが接触した座標を検出するステップと、
前記第1端子および前記第2端子のひとつである第1検出端子の容量を検出するステップと、
前記第1検出端子の容量の時間波形にもとづき、前記第2方向に対するフリック入力の有無を判定するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記判定するステップは、
前記第1検出端子の容量の時間波形が、判定期間にわたり増大するときに、前記第1検出端子に近づく方向のフリック入力と判定し、
前記第1検出端子の容量の時間波形が、判定期間にわたり減少するときに、前記第1検出端子から遠ざかる方向のフリック入力と判定することを特徴とする請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105413(P2013−105413A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250512(P2011−250512)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】