説明

タッチパネル付き表示装置

【課題】静電容量式タッチパネルでタッチ手段を問わず入力操作を可能とする。
【解決手段】 表示装置と、位置指示手段の接触位置を検出するため表示装置の画面と平行な面内に配列され透光性を有する複数のセンサ電極を含むセンサフィルム、及び位置指示手段の接触に伴うセンサ電極の静電容量変化を測定することにより位置指示手段の接触位置を検出する制御部を含む投影型静電容量式タッチパネルとを備えるタッチパネル付き表示装置で、センサフィルムは、可撓性を有すると共にタッチパネルを押圧したときにセンサフィルムが撓んでセンサ電極が表示装置の画面に近づく方向に変位可能なように画面から一定距離を隔てて設置され(例えばスペーサを介在させる)、制御部はセンサ電極の変位による静電容量変化を測定して位置指示手段の接触位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル付き表示装置に係り、特に、静電容量式タッチパネルに対して指やペンなど接触手段を問わず入力操作を可能とするパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置と、位置入力装置であるタッチパネルを組み合わせたタッチパネル付き表示装置は、近年様々な電子機器、例えば自動券売機やATM、POS端末などの業務用機器、事務機器、家電製品、あるいはカーナビゲーションシステムのような車載機器、携帯電話機やデジタルオーディオプレイヤー、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機等の携帯機器などの表示入力装置として広く利用されている。
【0003】
かかる電子機器に備えられるタッチパネルには、タッチ位置の検出原理の違いから、一般に、抵抗膜式、静電容量式、光学式および超音波式等の各方式があり、静電容量方式としては、表面型静電容量(Surface Capacitive)方式と、投影型静電容量(プロジェクテッド・キャパシティブ/Projected Capacitive)方式とが知られている。
【0004】
静電容量式のタッチパネルは、表面型および投影型ともに、タッチ位置に生じる静電容量の変化を捉えて入力位置の検出を行うため、機械的な接触変形(透明導電膜を凹ませる)を伴う抵抗膜式と比べて入力に力を必要とせず、画面に触れるだけの軽いタッチで入力を行うことが出来る特長を有する。
【0005】
また、タッチパネルを備えた表示装置を開示するものとして下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003‐99193号公報
【特許文献2】特開2007‐115800号公報
【特許文献3】特開2007‐140796号公報
【特許文献4】特開2008‐134293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、静電容量式タッチパネルは、上記のようにタッチが軽く操作性に優れる反面、表面型・投影型いずれの方式にあっても、画面に触れる手段は、指あるいは指と同程度の導電性ないし容量結合性を有するものである必要がある。
【0008】
このため、例えば導電性が無いペンや、パネル内のセンサ電極と容量結合の出来ない一般的な(感圧式タッチパネルで使用されるような)スタイラスでは入力を行うことが出来ず、この点で利便性に欠ける面がある。また、手袋を着用しているときやユーザーが乾燥肌の場合など指先の状態によっては、指でも入力が難しい場合がある。
【0009】
さらに、このような静電容量式タッチパネルにおける不便さは、前記特許文献記載の発明によっても解消することは出来ない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、静電容量式タッチパネルにおいてタッチ手段を問わず入力操作を可能としてその利便性をさらに向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係るタッチパネル付き表示装置は、情報を画面に表示可能な表示装置と、当該表示装置の画面に設置され、かつ、二次元的な位置を指定する位置指示手段の接触位置を検出するため前記画面と平行な面内に二次元的に配列されかつ透光性を有する複数のセンサ電極を含むセンサフィルムと、位置指示手段の接触に伴う静電容量の変化を測定することにより当該位置指示手段の接触位置を検出する制御部とを含む投影型静電容量式タッチパネルとを備える。
【0012】
また、上記センサフィルムは、可撓性を有すると共に、位置指示手段によってタッチパネルを押圧したときに当該センサフィルムが撓んでセンサ電極が表示装置の画面に近づく方向に変位可能なように前記画面の表面から一定の距離を隔てて設置され、上記制御部は、前記複数のセンサ電極のうちの1以上のセンサ電極の前記変位による静電容量の変化を測定することにより位置指示手段の接触位置を検出する。
【0013】
本発明は、位置指示手段(例えば指、ペン、スタイラス、手袋を着用した指など/以下、「接触体」と言うことがある)を問わず静電容量式タッチパネルへの入力を可能とするための検討のひとつとして、タッチパネルを表示装置の画面から浮かせて設置した(表示装置の画面とタッチパネルとの間に隙間を設けた)ところ、センサ電極と容量結合を行うことが出来ない接触体によってもタッチパネルが動作することを発見し、この発見に基づいてなされたものである。
【0014】
なお、このとき使用したのは、パネル自体に可撓性がある投影型静電容量(Projected Capacitive)式のタッチパネルであり、既存の投影型静電容量式タッチパネルでは入力を行うことが出来ないペンにより操作を行った。またこのとき、パネル表面に触れるだけではパネルを動作させることは出来なかったが、パネルを凹ませる(撓ませる)ように押圧すると入力が可能となった。なお、指で操作を行った場合には、従来のタッチパネルと同様に接触するだけでも押圧しても同様に動作させることが出来た。
【0015】
従来、静電容量方式のタッチパネルでは、誘電体である接触体(例えば指など)がセンサ電極に近づくことによって生じる容量変化(例えば、指とセンサ電極間の静電容量の増加、あるいは、縦横のどのセンサ電極間の静電容量が増加したか等)を測定することによりタッチ位置を検出しているが、本発明の基礎となる上記現象は、タッチパネルを凹ませるとタッチ位置(またはその近傍)に配置されたセンサ電極が表示装置の画面に近づき、これにより当該センサ電極と表示装置(画面)との間の静電容量が増加し、これを指が接近したときと同様にタッチパネルが検知したために生じたと考えられる。
【0016】
したがって本発明では、上記のようにセンサフィルムに可撓性を持たせると共に、表示装置の画面から一定の距離を隔ててセンサフィルムを設置し、位置指示手段によってタッチパネルを押圧したときにセンサフィルムが撓んでセンサ電極(当該タッチパネルに複数備えられたセンサ電極のうちの一部のセンサ電極)が表示装置の画面に近づくように、すなわち、画面に垂直な(直交する)方向に、変位できるようにする。タッチパネルの制御部は、このセンサ電極の変位による静電容量の変化を捉え、指で触れたときと同様に位置指示手段の接触位置を検出する。
【0017】
なお、本発明においてこのようにタッチパネルを押圧したときには、位置指示手段による押圧点に最も近い位置に配置されたセンサ電極だけでなく、その周囲に配置された1つ以上のセンサ電極も変位する場合があるが、このような場合であっても押圧点に最も近いセンサ電極の変位(容量変化)が最も大きくなるから、例えばタッチパネルに備えられた各センサ電極のうちで最も大きな容量変化が生じたセンサ電極を検出することにより、あるいは、例えば順に配列された複数のセンサ電極の各々に生じた容量変化の大きさの分布から、押圧点の位置を公知の方法によって算出することが可能である。
【0018】
また、投影型静電容量式タッチパネルでは、センサ電極の配置構造に関し、例えば次のような構造を採ることが出来るが、本発明ではいずれの構造を採用することも可能である。
【0019】
第一に、複数のセンサ電極をアレイ状に配列させて各センサ電極を単体のスイッチとして機能させる構造である。具体的には、接触体によって押圧され容量変化が生じた(あるいは最も大きな容量変化が生じた)センサ電極を検出し、このセンサ電極の配置位置を接触体によるタッチ位置と判定する構造、別の表現をすれば、接触体の接触位置に配置されたセンサ電極の静電容量の変化を検知することにより当該センサ電極の配置位置を接触体の接触位置として制御部が判定する構造(以下、この構造を「単板スイッチ型」と称する)である。この場合、センサ電極を含む電極層としては、上記複数のセンサ電極を含む電極層をタッチパネル内に少なくとも1層設ければ良い。
【0020】
また第二に、センサグリッドを備えた構造、すなわち、互いに交差(例えば直交)する複数本のセンサ電極をパネルの略全面に網目状に配置した構造である。より具体的に述べれば、センサ電極が、一定の間隔を隔てて互いに平行にかつ第一の方向に延びる複数の第一電極と、一定の間隔を隔てて互いに平行にかつ前記第一の方向に略直交する第二の方向に延びる複数の第二電極とを含み、前記制御部が、接触体の接触位置を、前記第一の方向に平行な座標軸と前記第二の方向に平行な座標軸とによって形成される二次元座標平面内の座標位置として算出するものである(以下、この構造を「グリッド型」と称する)。この場合、センサ電極を含む電極層としては、上記複数の第一電極を含む電極層と、複数の第二電極を含む電極層との少なくとも2層の電極層をタッチパネル内に設ければ良い。
【0021】
なお、このグリッド型パネルにおける各センサ電極は、ライン(ワイヤまたは導体線路)であっても良いし、帯状(長方形または短冊状)の電極や、後に述べる第二実施形態のように複数の菱形の電極片を電気的に接続して連ねたもの、あるいは、菱形以外にも方形(正方形または長方形)や三角形、六角形、多角形その他の形状の複数の電極片を同様に連ねた電極など、様々な形状を有するものであって良い。
【0022】
さらに、本発明は、上述のようにセンサ電極を変位可能とすることにより指で触れたのと同様にセンサ電極に容量変化を生じさせることが出来るものであるから、パネルの駆動方式(制御部によるタッチ位置の検出方法)は特に限定されない。一例を述べれば、前記グリッド型パネルにおいて制御部は、二次元座標軸の一方の座標軸方向に配列されたセンサ電極と他方の座標軸方向に配列されたセンサ電極とを順にスキャンすることにより容量変化を測定し座標位置としてタッチ位置を検出する。また、センサ電極に例えば数百KHz程度の交流電圧を常時印加しておくと共に、センサ電極の交流電圧を検波し、得られる直流電圧の変化(低下)を監視することにより容量変化を検出したり、あるいは、交流信号としてパルス電圧をセンサ電極に与え、容量増加による信号立ち上がりの時間(遅れ)を観測することにより容量変化を検出するなど、容量変化を検出する方法は特定のものに限定されず、公知の様々な方法を使用することが出来る。
【0023】
なお、タッチ位置の検出について従来と異なる点は、指とセンサ電極間の容量結合によるセンサ電極の容量変化を検出する代わりに、本発明では、センサフィルムを凹ませることにより一部のセンサ電極が表示装置に接近し、これによって生じるセンサ電極の容量変化を検出している点である。なお、本発明の装置においてパネルにタッチする接触体として誘電体(指などのセンサ電極と容量結合可能なもの)を使用してパネルを押圧した場合には、当該接触体の近接による容量変化と、センサ電極が表示装置の画面に近づくことによって生じる容量変化との双方(合計)を制御部が捉えてタッチ位置が検出されることとなる。
【0024】
センサフィルムを画面表面から離して設置するための具体的な方法としては、例えば、センサフィルムと画面との間にスペーサを介在させ、これによりセンサフィルムと画面との間に隙間を形成すれば良い。従来の静電容量式タッチパネルでは、センサ電極を含むセンサフィルムは表示装置の画面表面に接着層を介して密着されていたが、上記のようなスペーサを介在させることにより、センサフィルムを撓ませてセンサ電極を画面に近づくように変位可能とすることが出来る。また、センサフィルムと画面との間に、透光性を有する弾性膜(弾性を有する膜材料)を介在させても、同様にセンサ電極を変位可能とすることが出来る。
【0025】
センサ電極を形成する材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide/酸化インジウム錫)やIZO(Indium Zinc Oxide/酸化インジウム亜鉛)、酸化スズ、酸化亜鉛などの透光性を有する導電材料を使用することが出来る。
【0026】
ただし、本発明ではセンサ電極が可撓性を有することが望ましい。例えば前記単板スイッチ型パネルの場合などでは、フィルム(センサ電極を支持する膜)上に配した複数のセンサ電極のそれぞれ(センサ電極の各電極片自体)は可撓性を持たず、これを支持するフィルムが可撓性を有するような構造であっても当該支持フィルムを撓ませることによりセンサ電極を変位させることは出来るが、センサ電極自体に可撓性があれば、より柔軟にセンサフィルムを押圧して入力操作を行うことが可能となるからである。また、センサ電極自体に可撓性があれば、繰り返しの押圧操作によってセンサ電極が破損したり剥離するような事態が生じることを防ぐことも出来る。
【0027】
このような可撓性を有するセンサ電極は、例えば、透光性を有する導電粉末と、透光性を有しかつ当該導電粉末をセンサ電極中に分散させた状態で保持可能なバインダ基材とを主体とする(これら導電粉末とバインダ基材とを混合した)材料により形成することが出来る。
【0028】
この場合、上記導電粉末には、例えば、酸化インジウムやこれに錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム、マグネシウム等の元素をドープしたもの、酸化錫やこれにアンチモン、亜鉛、フッ素等の元素をドープしたもの、または、酸化亜鉛やこれにアルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、マンガン等の元素をドープしたものを使用すれば良い。
【0029】
また、上記バインダ基材には、例えば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂などを用いることが出来る。より具体的には、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの樹脂材料をバインダ基材として使用すれば良い。特に、アクリル樹脂は、耐薬品性に優れることに加え、透光性が高いからタッチパネルの透明度を高くすることができ、また機械強度に優れるから、パネルの繰り返しの押圧タッチ操作によってもダメージを受けにくい点で有利であり、上記バインダ基材として好ましく用いることが出来る。
【0030】
本発明における表示装置には、例えば、画素を構成するように複数の有機EL素子をマトリックス状に配列させた表示部を備えた有機EL表示装置を使用することが出来る。また、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等を使用することも可能である。
【0031】
さらに、本発明のタッチパネル付き表示装置は、様々な電子機器に用いることができ、本発明の電子機器は、情報を表示しかつ入力する手段として前記本発明に係るいずれかのタッチパネル付き表示装置を備えたものである。
【0032】
本発明を適用可能な電子機器としては、例えば、携帯電話機、携帯型のデジタルオーディオプレイヤー、携帯ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、電子手帳、電子辞書等の携帯電子機器が挙げられる。ただし、本発明に言う電子機器は携帯電子機器に限られるものではなく、例えばカーナビゲーションシステムのような車載電子機器、オーディオ機器、各種家電製品、自動券売機、自動販売機、ATM、POS端末などの各種の業務用機器、複写機や複合機のような事務機器、案内板など、タッチパネル付ディスプレイを備えた様々な電子機器に本発明は広く適用することが可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、静電容量式タッチパネルにおいてタッチ手段を問わず入力操作を可能とすることによりその利便性をさらに向上させることが出来る。
【0034】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の第一の実施形態に係るタッチパネル付き表示装置を模式的に示す平面図である。
【図2】図2は、前記第一実施形態に係るタッチパネル付き表示装置を模式的に示す断面図(図1のA‐A断面)である。
【図3】図3は、前記第一実施形態に係るタッチパネル付き表示装置を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】図4は、前記第一実施形態の変形例に係るタッチパネル付き表示装置を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の第二の実施形態に係るタッチパネル付き表示装置を模式的に示す平面図である。
【図6】図6は、前記第二実施形態に係るタッチパネル付き表示装置を模式的に示す断面図(図5のB‐B断面)である。
【図7】図7は、前記第二実施形態に係るタッチパネル付き表示装置を模式的に示す拡大断面図である。
【図8A】図8Aは、前記第二実施形態のタッチパネル付き表示装置に備える縦方向位置(Y座標位置)検出用センサフィルムを模式的に示す底面図である。
【図8B】図8Bは、前記第二実施形態のタッチパネル付き表示装置に備える横方向位置(X座標位置)検出用センサフィルムを模式的に示す平面図である。
【図8C】図8Cは、前記第二実施形態のタッチパネル付き表示装置に備えるスペーサを模式的に示す平面図である。
【図9】図9は、本発明に係るタッチパネル付き表示装置の別の構成例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔第1実施形態/単板スイッチ型〕
本発明の第一の実施形態について説明する。図1から図3に示すように、本発明の第一の実施形態に係る表示装置は、複数のセンサ電極をそれぞれ単体のスイッチとして機能させる単板スイッチ型のタッチパネル11を備えるもので、タッチパネル11は、マトリックス状に配列させた複数(この例では12個)のセンサ電極22を含むセンサフィルム12と、このセンサフィルム12を表示装置の画面10から一定の距離を隔てて表示装置の画面10に固定するスペーサ14と、センサフィルム12の表面を覆う保護フィルム13とを備え、さらに、タッチパネル11を駆動するIC(Integrated Circuit/集積回路)(制御部)15と、タッチパネル11(IC15)を表示装置に電気的に接続するFPC(Flexible Printed Circuit board/フレキシブルプリント基板)16を有する。
【0037】
センサフィルム12は、図3に拡大して示すように、透光性および可撓性を有する支持フィルム21と、支持フィルム21の上面に固定した透光性を有するセンサ電極22とを有する。支持フィルム21は、PET(ポリエチレンテレフタレート)により形成し、その上面に例えばアクリル系やエポキシ系等の紫外線硬化型樹脂からなる接着剤23によってセンサ電極22を固定する。センサ電極22は、例えばスクリーン印刷により支持フィルム21の表面に直接印刷することにより形成しても良い。なお、図2ではセンサフィルム12と保護フィルム13をそれぞれ1層として描いている。また、図1では保護フィルムおよび表示装置は図示していない。
【0038】
各センサ電極22は、略正方形の平面形状を有し、バインダ基材であるアクリル樹脂中に透光性を有する導電材料であるITO(Indium Tin Oxide/酸化インジウム錫)の粉末を分散させた導電材料により形成してあり可撓性を有する。また、各センサ電極22は、導電性ペースト(例えば銀ペースト)をスクリーン印刷して支持フィルム21上に形成した導体線路24により駆動用IC15と電気的に接続してある。
【0039】
また、保護フィルム13は、支持フィルム12と同様にPETにより形成してあり、透光性および可撓性を有する。この保護フィルム13は、光学特性の劣化が少ないいわゆる光学糊25によりセンサフィルム12の上面に接着する。
【0040】
一方、センサフィルム12(支持フィルム21)の下面に配するスペーサ14は、センサ電極22の配置パターンに対応してセンサ電極22の配置領域全体の周囲を取り囲むと共にマトリックス状に配列させた各センサ電極22の間を通過するように格子状の平面形状を有する。またこのスペーサ14は、透光性を有する材料、例えばPETにより形成し、例えば光学糊またはアクリル系やエポキシ系等の透光性を有する接着剤26を使用してセンサフィルム12の下面に接着すると共に、同様の接着剤26を介して表示装置の画面10の表面に接着する。これにより表示装置にタッチパネル11を固定したときに、タッチパネル11と表示装置の画面10との間に隙間Sが形成される。
【0041】
表示装置は、有機ELディスプレイとするが、液晶ディスプレイ等の他のディスプレイを使用しても良いことは既に述べたとおりである(後述の第二実施形態においても同様)。
【0042】
制御部(IC)15は、指1aやペン1bなどの接触体1によりパネル11(保護フィルム13)の表面が押圧され、センサ電極22が表示装置の画面10に近づくことによって生じるセンサ電極22の静電容量の変化を測定することにより当該センサ電極22の配置位置を接触体1による押圧位置として検出する。したがって、指1aのような誘電体だけでなく、例えば感圧式(抵抗膜方式等)タッチパネルで使用されるスタイラスや絶縁性のペン1b、あるいは絶縁性の手袋をしたままの指など、導電性・容量結合性の有無を問わず様々な接触体1で入力を行うことが可能となる。
【0043】
また、上記スペーサ14に代え、図4に示すように透光性を有する弾性膜27をセンサフィルム12と表示装置(画面10)との間に介在させても良い。このような構造によっても、スペーサ14を使用したのと同様にセンサフィルム12を撓ませ、センサ電極22を変位させて入力を行えるようにすることが出来る。
【0044】
〔第2実施形態/グリッド型〕
本発明の第二の実施形態について説明する。図5から図7に示すように、本発明の第二の実施形態に係る表示装置は、センサグリッドを備えて接触体のタッチ位置を表示装置の画面に平行な二次元座標(X‐Y座標)平面内における座標位置(横方向位置と縦方向位置)として算出するタッチパネルを備えたもので、このため本実施形態で使用するタッチパネル31は、センサフィルムを1層のみ備えた前記第一実施形態とは異なり、2枚(2層)のセンサフィルム41,42を備える。
【0045】
より具体的には、本実施形態におけるタッチパネル31は、光学糊37を介して貼り合わせた縦方向位置検出用のセンサフィルム41(以下、「Y用センサフィルム」と言う)と横方向位置検出用のセンサフィルム42(以下、「X用センサフィルム」と言う)とを備え、さらに、下側(表示装置の画面10に近い側)に位置するX用センサフィルム42の下面に配して表示装置の画面10とセンサフィルム42との間に介在させるスペーサ34を有する。
【0046】
縦方向位置を検出するためのY用センサフィルム41は、支持フィルム35の下面に、図8Aに示すように複数の菱形(正方形を45°回転させた形状)の電極片45を連結導体46によって数珠繋ぎに接続して連ね、図5および図8Aの横方向(X方向)に延びるように配置したセンサ電極32aを、縦方向(Y軸方向)のタッチ位置を検出できるように、縦方向(Y軸方向)に複数本互いに平行に並べて配置したものである。なお、左右両端の電極片は、三角形の平面形状を有し、各センサ電極32aの左右いずれかに銀ペーストからなる導体線路24を接続することにより各センサ電極32aと駆動用IC(制御部)15とを電気的に接続する。
【0047】
センサ電極32aを構成する各電極片45および連結導体46は、前記第一実施形態と同様の透光性および可撓性を有する導電材料からなり、支持フィルム35の表面(下面)に例えばスクリーン印刷によってパターン形成することにより配置する(後述のX用センサフィルム42についても同様)。支持フィルム35は、透光性を有する樹脂材料(例えばPET)により形成する。なお、この支持フィルム35は、タッチパネル31の表面を覆う保護フィルムとしての役割を兼ねており、したがって本実施形態では、前記第一実施形態のようにセンサフィルム41の表面を覆う保護フィルムは特に設ける必要はない。
【0048】
一方、横方向位置を検出するためのX用センサフィルム42は、図8Bに示すようにY用センサフィルム41と同様にPETからなる支持フィルム36の表面に前記Y用センサフィルム41と同様の形状を有するセンサ電極32bを複数本備えたものであるが、横方向(X軸方向)のタッチ位置を検出できるように各センサ電極32bを、縦方向(Y軸方向)に延びるように配置し、かつ、横方向(X軸方向)に複数本互いに平行に並べてある。したがって、X用センサフィルム42の各センサ電極32bと前記Y用センサフィルム41の各センサ電極32aとは互いに直交する。
【0049】
そして、これらX用センサフィルム42とY用センサフィルム41は、支持フィルム35,36表面のセンサ電極32a,32bが互いに対向するように光学糊37を介して貼り合わせ、平面から見たときに市松模様を45°回転させたように両センサフィルム41,42のセンサ電極32a,32b同士が組み合わされて表示装置の画面10の略全面をX用・Y用いずれかのセンサフィルム41,42のセンサ電極32a,32bの電極片45が覆うように配置される。
【0050】
なお、各センサフィルム41,42のセンサ電極32a,32bおよびこれらを構成する電極片45の数について、図面は実際の装置に適する数を示したものではなく、実際には図示したより多くのセンサ電極32a,32bおよび電極片45を備えてタッチ位置の検出精度を高めることが可能である。また、センサ電極32a,32b(電極片45)の形状は、前述したように様々なものであって良く、例えば図9に示すようにワイヤ(導体線路)をグリッド状に(縦方向と横方向とにそれぞれ)配置したセンサ電極52a,52bを備えても同様にタッチ位置の検出が可能で、これら図示した例のほかにも各種の形状や配置パターン、構造のセンサ電極を採用することが可能である。
【0051】
スペーサ34は、上記センサ電極32a,32bの形状に対応させ、上記のように配列させたセンサ電極32a,32b全体を取り囲むように、また、平面から見たときにX用センサフィルム42の電極片45とY用センサフィルム41の電極片45との間に形成される隙間に配置されるように網目状の平面形状を有する。このスペーサ34は、前記第一実施形態のスペーサ14と同様に、透光性を有する材料、例えばPETにより形成し、光学糊またはアクリル系やエポキシ系等の透光性を有する接着剤26を使用してX用センサフィルム42の下面に接着すると共に、表示装置の画面10の表面に接着する。これにより、センサフィルム41,42と表示装置の画面10との間に隙間Sを形成することが出来る。なお、本実施形態においても、スペーサ34に代え、前記第一実施形態(図4)で述べたような透光性を有する弾性膜を備えても良い。
【0052】
制御部(IC)15は、タッチパネル31が押圧されセンサフィルム41,42が撓んでセンサ電極32a,32bが表示装置の画面10に接近することによって生じるX用センサフィルム42およびY用センサフィルム41の各センサ電極32a,32bの容量変化をそれぞれ測定し、これらの容量変化に基づいて接触体のタッチ位置を座標位置(X軸方向の位置とY軸方向の位置の交点)として算出する。なお、このように縦横に配列させたセンサ電極の駆動方法やそれによる座標位置の算出方法は、既に述べたもののほか公知の各種の方式を採用することが可能であり、本発明にとって本質的な事項ではないから詳細な説明は省略する。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0054】
例えば、本発明で備えるスペーサは、表示装置の画面とセンサフィルムとの間に隙間を形成可能なものであれば良いから、その平面形状やパターンは図示の例のほか様々なものであって構わない。また、スペーサを弾性材料により形成することによりスペーサ自体に弾性を持たせても良い。さらに、保護フィルムおよびセンサフィルムと同様にスペーサも可撓性を有するものとしても良く、このような構造によればタッチパネル全体が可撓性を有することとなるから、画面表面が湾曲した表示装置に対しても当該タッチパネルを容易に設置することが可能となる。
【0055】
また、タッチパネル本体(センサフィルムや保護フィルム、制御部等)の構成は、実施形態のほか様々なものであって良く、静電容量の変化を捉えてタッチ位置を検出可能な各種の静電容量式タッチパネルに本発明は適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
S 隙間
1 接触体(位置指示手段)
1a 指
1b ペン
10 表示装置の画面
11,31 タッチパネル
12 センサフィルム
13 保護フィルム
14,34 スペーサ
15 IC(制御部)
16 FPC
21,35,36 支持フィルム
22,32a,32b,52a,52b センサ電極
23,25,26,37 光学糊または接着剤
24 導体線路
27 弾性膜
41 縦方向位置検出用センサフィルム(Y用センサフィルム)
42 横方向位置検出用センサフィルム(X用センサフィルム)
45 電極片
46 連結導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を画面に表示可能な表示装置と、
当該表示装置の画面に設置され、かつ、二次元的な位置を指定する位置指示手段の接触位置を検出するため前記画面と平行な面内に二次元的に配列されかつ透光性を有する複数のセンサ電極を含むセンサフィルムと、前記位置指示手段の接触に伴う前記センサ電極の静電容量の変化を測定することにより当該位置指示手段の接触位置を検出する制御部とを含む投影型静電容量式タッチパネルと
を備えるタッチパネル付き表示装置であって、
前記センサフィルムは、可撓性を有すると共に、前記位置指示手段によって前記タッチパネルを押圧したときに当該センサフィルムが撓んで前記センサ電極が前記表示装置の画面に近づく方向に変位可能なように前記画面の表面から一定の距離を隔てて設置され、
前記制御部は、前記複数のセンサ電極のうちの1以上のセンサ電極の前記変位による静電容量の変化を測定することにより前記位置指示手段の接触位置を検出する
ことを特徴とするタッチパネル付き表示装置。
【請求項2】
前記センサフィルムと前記画面との間に介在されて当該センサフィルムと画面との間に隙間を形成するスペーサを備え、これにより前記センサ電極が前記表示装置の画面に近づく方向に変位できるようにした
請求項1に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項3】
前記センサフィルムと前記画面との間に介在されかつ透光性および弾性を有する膜を備え、これにより前記センサ電極が前記表示装置の画面に近づく方向に変位できるようにした
請求項1に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項4】
前記センサ電極は、
透光性を有する導電粉末と、透光性を有しかつ前記導電粉末を当該センサ電極中に分散させた状態で保持可能なバインダ基材とを主体とする材料からなり、
可撓性を有する
請求項1から3いずれか一項に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記位置指示手段の接触位置に配置されたセンサ電極の静電容量の変化を検知することにより当該センサ電極の配置位置を前記位置指示手段の接触位置として検出する
請求項1から4いずれか一項に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項6】
前記センサ電極は、
一定の間隔を隔てて互いに平行にかつ第一の方向に延びる複数の第一電極と、
一定の間隔を隔てて互いに平行にかつ前記第一の方向に略直交する第二の方向に延びる複数の第二電極と
を含み、
前記制御部は、前記位置指示手段の接触位置を、前記第一の方向に平行な座標軸と前記第二の方向に平行な座標軸とにより形成される二次元平面内の座標位置として算出する
請求項1から4いずれか一項に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項7】
前記表示装置は、画素を構成するように複数の有機EL素子をマトリックス状に配列させた表示部を備えた有機EL表示装置である
請求項1から6いずれか一項に記載のタッチパネル付き表示装置。
【請求項8】
情報を表示しかつ入力する手段として前記請求項1から7いずれか一項に記載のタッチパネル付き表示装置を備えた電子機器。
【請求項9】
位置指示手段の接触位置を検出可能に配列され透光性を有する複数のセンサ電極を含むセンサフィルムと、
前記位置指示手段の接触に伴う前記センサ電極の静電容量の変化を測定することにより当該位置指示手段の接触位置を検出する制御部と
を備え、
表示装置の画面の表面に設置される静電容量式タッチパネルであって、
前記センサフィルムは、可撓性を有し、
前記センサフィルムの裏面側に、当該センサフィルムと前記画面との間に介在して当該センサフィルムと前記画面との間に隙間を形成可能なスペーサを備えた
ことを特徴とする静電容量式タッチパネル。
【請求項10】
前記センサ電極は、
透光性を有する導電粉末と、透光性を有しかつ前記導電粉末を当該センサ電極中に分散させた状態で保持可能なバインダ基材とを主体とする材料からなり、
可撓性を有する
請求項9に記載の静電容量式タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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