説明

タッチパネル入力装置

【課題】 可動板(3)又は支持基板(4)の振動をきめ細かく制御自在とするタッチパネル入力装置を提供する。
【解決手段】 対向する両面に一対の駆動電極(2a)(2b)が固着された圧電基板(2)を、直接若しくは駆動電極(2a)(2b)を介して、可動板(3)又は支持基板(4)に固着し、入力操作面(3a)への押圧を検出した際に、一対の駆動電極(2a)(2b)に駆動電圧を印加して、伸縮する圧電基板(2)により可動板(3)又は支持基板(4)を振動させる。震動源を別に設けず直接可動板(3)又は支持基板(4)が振動するので、振動の伝達によるエネルギーロスや伝達時間の遅れがなく、圧電基板(2)の伸縮を細かく制御することにより、きめ細かく振動を制御できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可動板を押圧した際に、押圧されている可動板又は可動板を支持する支持基板を振動し、操作者に入力操作感を発生させるタッチパネル入力装置に関し、更に詳しくは、圧電基板を用いて可動板又は支持基板を振動させるタッチパネル入力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】タッチパネル入力装置は、可動板と支持基板が、その対向面に形成された導電体層間が離間するように、僅かな絶縁間隔を隔てて積層配置されたもので、可動板が押圧された際に、その押圧位置で導電体層間が接触することを電気的に検出して、パーソナルコンピュータ等の処理装置へその押圧位置を表す押圧位置データを出力するものである。
【0004】特に、可動板、支持基板、導電体層などを透明材料で形成すると、液晶パネル、CRT等の表示画面上に配置することにより、表示内容を見ながらタッチパネル入力装置の入力操作面を押圧し、押圧位置を検出することによって、表示内容に対応する押圧位置データを、パーソナルコンピュータなどの処理装置へ出力することができる。
【0005】この種のタッチパネル入力装置においては、上述のように、可動板と支持基板が、僅かな絶縁間隔を隔てて積層配置されるものであるため、可動板を押圧した際のストロークは0.1乃至0.5と極めて小さく、操作者は、可動板の押圧により入力操作が行われたかどうかを知ることができない。
【0006】そこで、タッチパネル入力装置へ入力操作したことを、可動板や支持基板を振動させることにより、押圧した指から感触せしめるフォースフィードバック型タッチパネルが知られている。
【0007】図8は、この従来のタッチパネル入力装置100を示すもので、プラスチックの可撓性シートからなる可動板101と、可動板101との対向面にプラスチックシート102を貼り付けたガラス製の支持基板103が、多数の絶縁突起104で僅かな間隙を隔てて積層され、タッチパネル部100Aを構成している。
【0008】可動板101とプラスチックシート102との対向面には、均一な抵抗被膜で構成された導電体層(図示せず)が被着され、可動板101を押圧すると、押圧位置で導電体層間が接触、導通し、これを、導電体層の周縁に電気接続された引き出し電極(図示せず)の電位から読み取って、押圧位置を検出するようになっている。
【0009】支持基板103は、筺体105の底面上に設けられた円柱台状のクッション台座106上に支持されている。クッション台座106は、タッチパネル部100Aの全体を載置するためのゴム製の台座で、柔らかすぎると可動板103への押圧を吸収してしまうので、それより硬い硬度が50乃至60度のものが使用される。
【0010】クッション台座106で形成される支持基板103と筺体105の間には、表示パネル107が配置されている。可動板101の上方から、この表示パネル107の表示が視認できるように、上述の支持基板103上に形成される各部は、透明材料で形成されている。
【0011】支持基板103の一端縁部の背面側には、複数枚の圧電セラミック等の圧電基板を積層させた圧電アクチュエータ108が配設されている。この圧電アクチュエータ108は、圧電基板の電わい効果を利用して圧電アクチュエータ108自体を振動させるもので、駆動電圧を印加して圧電アクチュエータ108を振動源とする。
【0012】圧電アクチュエータ108の基端部は、支持台109で固定され、中間部分は、支持軸110で回転自在に支持され、先端部に固着された接触子111が支持基板103の背面に当接して、取り付けらている。
【0013】可動板101の所定位置を押圧して入力操作を行うと、押圧位置の導電体層間が接触することにより、図示しない押圧検出手段がその押圧と、押圧位置を検出し、押圧位置データをパーソナルコンピュータ等所定の処理装置へ出力する。
【0014】押圧を検出した際には、同時に、圧電アクチュエータ108の駆動電極に駆動電圧が印加され、圧電アクチュエータ108が振動する。この振動は、先端の接触子111を介して支持基板103に伝達され、可動板101を押圧している指先で、振動が感知される。
【0015】従って、タッチパネル入力装置を押圧操作する操作者は、可動板101を押圧した際に、指先に感じる振動で、入力操作が行われたことを知ることができる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】このように従来のタッチパネル入力装置は、振動の発生源として、圧電アクチュエータなどの振動素子、振動モータ等を用いて、可動板101若しくは支持基板103を振動させているが、振動発生源を、タッチパネルを構成する可動板101や支持基板103とは別のスペースに設けるため、筺体105ひいては入力装置全体の厚さや大きさが大きくなり、外形のデザインも制約される。
【0017】また、振動発生源としての圧電アクチュエータ108は、当接するタッチパネル部100A側に感知できる程度の振動を伝達させるため、ある程度大きな振幅の変位を発生させる必要があり、複数の圧電基板を積層して構成する。この為、圧電アクチュエータ108自体が厚くなる。更に、多数の圧電基板を積層する製造工程は、各層毎に一対の駆動電極を貼り付け、その後、駆動電極が付着した圧電基板を厚み方向に重ねて一体化するという複数の工程となるので、部品コストも高くなる。
【0018】一方、振動発生源として振動モータを用いる場合には、振動モータ自体の大きさが大きく、部品コストも高いものである。
【0019】また、タッチパネル部100Aの振動は、これらの振動発生源の振動が伝達された間接振動なので、振動発生源による細かい振動の感触は、タッチパネル部100A側に伝達しにくい。例えば、振動の周波数を変化させて、異なる情報を操作者へ伝達しようとしても、正確にタッチパネル部100A側が応動できないので、伝達できない。
【0020】更に、振動発生源で振動を発生させてから、タッチパネル部100Aが振動するまでに伝達による遅れが生じるため、直接細かい振動の変化を伝達することは困難なものであった。
【0021】これに関連して、圧電アクチュエータ108や振動モータ等の振動発生源は、一定時間連続して振動させる必要があるため、振動発生源を駆動させる駆動回路は、発振回路を用いた複雑な回路となる。つまり、振動モータなどの振動発生源は、瞬間的なパルス波形の駆動電圧を印加しても動作せず、起動動作制御を含めた一定時間連続して動作させる為の駆動回路が必要となる。圧電アクチュエータ108では、瞬間的なパルス波形の駆動電圧を印加すれば、応動して瞬間的に伸縮するが、前述のように、その伸縮(振動)は減衰してタッチパネル部100A側に伝達されるので、瞬間的な振動を操作者が感知できず、同様に入力操作感を発生させるには、問題があった。
【0022】これに加えて、振動発生源108を筺体105内に確実に取り付けるには、上述のように、支持台109や振動発生源108の中間を回動自在に支持する支持軸110を設けるなど複雑な構造となり、取り付けが確実でないと、振動発生源108のみが振動して、雑音が発生したり、その振動がタッチパネル部100Aに伝達されない。
【0023】更に、振動発生源108と、支持基板104等のタッチパネル部100A等の振動伝達機構の構造も、製造精度が要求され、例えば、接触子111と支持基板104との間に隙間が生じていると、振動の際に、雑音が発生し、振動も減衰して伝達される。
【0024】本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、可動板又は支持基板を振動させる構造としても、装置全体が大型化せず、外形のデザインが制約されないタッチパネル入力装置を提供することを目的とする。
【0025】また、可動板又は支持基板の振動をきめ細かく制御自在とするタッチパネル入力装置を提供することを目的とする。
【0026】また、単純な駆動回路で、操作者が検知できる振動を、可動板又は支持基板に発生させるタッチパネル入力装置を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
【0028】請求項1のタッチパネル入力装置は、表面に入力操作面を有する可動板と、可動板とわずかな絶縁間隔を隔てて配置され、可動板を背面から支持する支持基板と、入力操作面への押圧とその押圧位置を、可動板と支持基板上の対向面にそれぞれ形成された導電体層間の接触から検出し、押圧位置データを出力する押圧検出手段とを備え、押圧を検出した際に、可動板又は支持基板を振動し、入力操作感を発生させるタッチパネル入力装置であって、対向する両面に一対の駆動電極が固着された圧電基板を、直接若しくは駆動電極を介して、可動板又は支持基板に固着し、入力操作面への押圧を検出した際に、一対の駆動電極に駆動電圧を印加して、伸縮する圧電基板により可動板又は支持基板を振動させることを特徴とする。
【0029】一対の駆動電極間に駆動電圧を印加すると、圧電基板の電わい効果により伸縮する。圧電基板は、一方の駆動電極を介して、可動板又は支持基板に直接固着されているので、圧電基板の伸縮によって、固着した可動板又は支持基板自体に、大きな振幅で振動する応力が発生する。
【0030】可動板又は支持基板自体が振動するので、圧電基板を駆動させる駆動電圧の波形を変化させることにより、可動板又は支持基板に、細かい振動作用を与えることができる。
【0031】請求項2のタッチパネル入力装置は、可動板と支持基板が、周囲の枠部で対向する内面間に配置されるスペーサ部材により、わずかな間隙を隔てて積層配置され、圧電基板は、直接若しくは駆動電極を介して、枠部で対向する可動板又は支持基板のいずれかの内面に固着し、スペーサ部材が配置される空間内に取り付けられることを特徴とする。
【0032】圧電基板は、圧電材料からなる単層の基板で構成できるので、薄い厚さとして、可動板と支持基板間の僅かな隙間にも介在させることができる。
【0033】可動板と支持基板を僅かな間隔を隔てて積層配置するスペーサ部材の配置スペースを利用して、圧電基板とその両面の一対の駆動電極を配置するので、振動作用を加える構造としても、その為のスペースを新たに用意する必要がない。
【0034】請求項3のタッチパネル入力装置は、押圧検出手段が、可動板と支持基板の各導電体層の周縁に電気接続するいずれかの引き出し電極に検出電圧を印加し、若しくは、いずれかの引き出し電極の電位を検出して、入力操作面への押圧とその押圧位置を検出し、可動板又は支持基板の枠部の内面に固着されたいずれかの引き出し電極を、圧電基板の一方の駆動電極として、引き出し電極を介して圧電基板を固着することを特徴とする。
【0035】導電体層の周縁に電気接続する引き出し電極を、圧電基板の一方の駆動電極と兼用するので、一方の駆動電極は別に形成する必要がない。
【0036】引き出し電極は、導電体層を外部と電気接続する為の電極であるので、引き出し電極と外部との配線を利用して、一方の駆動電極に駆動電圧を印加させることができる。
【0037】請求項4のタッチパネル入力装置は、圧電基板を、直接若しくは駆動電極を介して、支持基板の背面に固着することを特徴とする。
【0038】タッチパネル入力装置の支持基板の背面側に一方の駆動電極を介して圧電基板を固着するだけなので、従来の構造を変えずに、振動機能を加えることができる。
【0039】請求項5のタッチパネル入力装置は、可動板と支持基板が、支持基板の背面側に配設される照光用発光素子の発光を透過させる透明材料で形成され、圧電基板は、直接若しくは駆動電極を介して、導電体層の周縁に電気接続する引き出し電極が形成された支持基板の部位の背面に固着することを特徴とする。
【0040】照光用発光素子の配線と引き出し電極との間には、支持基板の背面側に圧電基板が固着されるので、引き出し電極は、圧電基板の対向する両面に固着された駆動電極で遮蔽され、照光用発光素子の配線に生じる高周波ノイズが、静電容量結合によって引き出し電極に伝達されることが防止される。
【0041】請求項6のタッチパネル入力装置は、入力操作面への押圧を検出した際に、低電圧のトリガーパルスを入力によりコイルの両端にあらわれる出力電圧を駆動電圧として、圧電基板の一対の駆動電極に印可することを特徴とする。
【0042】可動板又は支持基板自体が大きな振幅で振動するので、トリガーパルスを入力してコイルの両端に表れる瞬間的なパルス波形の駆動電圧を圧電基板へ印加するだけで、操作者が検知できる程度の大きさの振動が可動板又は支持基板に発生する。
【0043】請求項7のタッチパネル入力装置は、入力操作面への押圧を検出した際に、一対の駆動電極に可聴帯域周波数の駆動電圧を印可して、圧電基板を伸縮し、可動板又は支持基板を可聴帯域周波数で振動させることにより、入力操作を表す音を発生させることを特徴とする。
【0044】可動板又は支持基板が、可聴帯域周波数で振動し、押圧の検出を表す操作音を発生させるので、別にスピーカなどを設置することなく、操作音によって入力操作感を発生させることができる。
【0045】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1実施の形態に係るタッチパネル入力装置1を、図1乃至図6で説明する。本実施の形態に係るタッチパネル入力装置1においては、対向面の導電体層を均一な抵抗膜で形成したいわゆる抵抗感圧タブレット方式を採用して、導電体層間の接触位置(押圧位置)を検出している。図1は、タッチパネル入力装置1の分解斜視図、図2は、その要部縦断面図、図3は、圧電基板2の取り付けを示す説明図、図4は、圧電基板2を駆動する第1駆動回路10の構成を示すブロック図、図5は、圧電基板2を駆動する駆動電圧波形を示す波形図、図6は、圧電基板2を駆動する第2駆動回路11の構成を示すブロック図である。
【0046】これらの図において、3は、透明な合成樹脂、ここではPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いて可撓性の矩形シート状に成形された可動板である。可動板3の材質としては、後述する支持基板4側に僅かに撓むものであれば、任意の材質を用いることができるが、本実施の形態のように、支持基板4の内方に配設した表示部(図示せず)を目視可能とする場合には、透明材料を用い、ある程度の剛性か必要であれば、ガラス基板、アクリル板、可撓性を有するものであれば、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PI(ポリイミド)等を用いることができる。
【0047】可動板3の表面には、透明なハードコート剤(図示せず)が塗布され、入力操作面3aとなる上面を保護している。
【0048】また、支持基板4は、透明な基板で、ソーダライムガラスを用いて、可動板3と同じ輪郭の矩形薄板状に成形されている。支持基板4は、押圧される可動板3をその背面側から支持する基板であり、このため、ある程度の剛性が必要であるが、その内方に表示部を配置しない場合には、必ずしも透明材料で形成する必要はない。支持基板4は、ある程度の剛性があれば、ガラス板に限らず、アクリル基板などのプラスチック板やアルミ、鉄などの金属板でもよい。
【0049】可動板3と支持基板4は、これらの各周囲の枠部3A、4A間に介在させる粘着剤層5によって、互いにわずかな間隙を隔て積層配置される。可動板3と支持基板4との対向面には、透明導電膜である可動導電体層6と固定導電体層7が、均一な膜圧で固着されている。可動導電体層6と固定導電体層7は、それぞれ、ITO(インジウム・スズ酸化物)で形成され、均一な膜圧で膜付けされることによって、導電体層の各位置で単位長さあたりの抵抗値を等くしている。
【0050】固定導電体層7上には、絶縁性の合成樹脂からなるドットスペーサ(図示せず)が、所定の間隔で固着されている。このドットスペーサは、入力操作面3aの一部が意図せずに手元などで触れた場合に、可動導電体層6と固定導電体層7が誤接触することを防止するものであり、粘着材層5によって隔てられる可動導電体層6と固定導電体層7の間隙に比べて低い高さとなっている。
【0051】可動板3の背面には、可動導電体層6の図1においてX方向の両側辺において可動導電体層6と電気接続するX印加側引き出し電極8aとX接地側引き出し電極8bが印刷されている。X印加側引き出し電極8aとX接地側引き出し電極8bは、銀からなる細長帯状の透明な導電薄板であり、可動板3背面のリード部12a、12bによって、可動板3の外部接続部3bまで引き出されている。
【0052】同様に、可動板3と対向する支持基板4の表面には、固定導電体層7の図1においてX方向と直交するY方向の一側辺に、固定導電体層7と電気接続するY接地側引き出し電極9bが印刷されている。Y接地側引き出し電極9bも、銀からなる細長帯状の透明な導電薄板であり、その表面で導電性接着剤により電気接続する可動板3背面のリード部12dによって、可動板3の外部接続部3bまで引き出されている。
【0053】Y接地側引き出し電極9bが印刷された固定導電体層7の一側辺に対して、Y方向で対向する他側の側辺にも、固定導電体層7に電気接続するY印加側引き出し電極9aが形成されるが、ここでは、Y印加側引き出し電極9aを、圧電基板2の一方の駆動電極2aと兼ねるため、圧電基板2を支持基板4へ固着する際に、駆動電極2aを導電性接着剤で固定導電体層7の他側の側辺に沿って固着することによって、固定導電体層7に電気接続するY印加側引き出し電極9aが形成される。
【0054】Y印加側引き出し電極9a(一方の駆動電極2a)は、図3に示すように、圧電基板2の長手方向一側で表面側に折り返され、対向する可動板3背面のリード部12cに導電性接着剤で電気接続し、外部接続部3bまで引き出されている。
【0055】尚、同様に、圧電基板2の他方の駆動電極2bも、対向する可動板3背面のリード部12eに導電性接着剤で電気接続し、外部接続部3bまで引き出されている。
【0056】リード部12a、b、c、d、eによって外部接続部3bまで引き出された各引き出し電極8a、8b、9a、9bと、駆動電極2bは、外部接続部3bに接続するコネクタを介して後述の押圧検出回路、駆動回路10、11を含む外部回路に電気接続する。
【0057】このように、本実施の形態では、可動板3側にリード部12eを加えるだけで、圧電基板2を駆動する駆動電圧を外部から供給できるので、配線が容易である。
【0058】尚、Y印加側引き出し電極9aと圧電基板2の一方の駆動電極2aとを兼ねることによって、外部回路との接続のためのリード部12cも共用できるものとなる。後述するように、Y印加側引き出し電極9aは、押圧位置の検出の際に、検出電圧を印加したり、固定導電体層7の電位を検出するものであり、駆動電極2aは、押圧を検出した際には、可動板2へ駆動電圧を印加するものであるが、押圧位置の検出と、押圧を検出した際の駆動電圧の印加は、異なるタイミングで実行され、同時に行われることがないので、両者を1枚の電極で兼用できるものである。
【0059】圧電基板2は、圧電単結晶、PZT(チタンジルコン酸鉛)磁器に代表される圧電セラミック、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電材料で形成した単層の基板で、ここでは、機械的な耐久性があり、最も広く利用されているPZT系の圧電磁器材料からなる圧電セラミックス板を用い、図示するように、固定導電体層7の側辺に沿うように、細長帯状の薄板に形成している。圧電基板2は、薄板なので、歪み量を大きく、また、低い電圧で動作するようになっている。
【0060】圧電基板2に駆動電圧を印加する一対の駆動電極2a、2bは、導電性金属材料を蒸着、スクリーン印刷等で圧電基板2の対向する表裏両面に付着させた後、焼成等で固着させている。圧電基板2の背面を覆う一方の駆動電極2aは、前述した様に、圧電基板2の長手方向一側で表面に折り返され、表面を覆う他方の駆動電極2bと接触しないように、間隙を隔てて表面側に露出している。
【0061】両面に駆動電極2a、2bが固着された圧電基板2は、図2に示すように、可動板3と支持基板4をわずかな間隙を隔てて積層するために、各枠部3A、4Aの対向面間に充填される粘着剤層5の充填空間の一部を利用して、可動板3と支持基板4の間に配置される。充填空間の高さ、すなわち、可動板3と支持基板4間の間隔は、数100μmから1mm程度が一般的であるが、圧電基板2は、単層の薄板構造としているため、両面に固着される駆動電極2a、2bを合わせてもその高さを、200μm程度とすることができ、充填空間内へ取り付けることが充分可能なものである。
【0062】図示するように、圧電基板2の取り付けは、背面側に固着されている一方の駆動電極2a(Y印加側引き出し電極9a)を、固定導電体層7の他側の側辺と支持基板4の表面に跨って載置し、導電性接着剤13で、固定導電体層7と支持基板4に固着することによって、支持基板4の表面に固着する。
【0063】本実施の形態においては、一方の駆動電極2aを引き出し電極圧電基板2と兼ねているため、圧電基板2の支持基板4への固着に、導電性の接着剤を用いているが、一方の駆動電極2aを直接支持基板4へ固着する場合には、必ずしも導電性である必要はなく、エポキシ系、アクリル系など種々の接着剤を用いることができる。
【0064】本発明では、圧電基板2の電わい効果を利用して支持基板4に振動を発生させるものであり、圧電基板2を直接支持基板4に固着するので、圧電基板2の伸縮により支持基板4に大きな振幅の振動を発生させる応力が発生する。例えば、誘電率が3400、圧電定数が590*1012C/N、弾性コンプライアンスが20*10−12/Nの値を有するPZT系圧電材料に、10*10V/mの電界をかけると、5.9*10の歪みが生じ、この歪みをクランプした状態では、3*10N/mという大きな応力が生じる。
【0065】この電わい効果を利用すると、図3(a)の矢印で示す厚み方向に、一対の駆動電極2a、2b間に±20V程度の駆動電圧を印加するだけで、可動板3を介しても、指で感触しうる充分大きな振幅の振動を支持基板4に発生させることができる。振動の振幅は、駆動電圧、圧電基板2の支持基板4へ固着する長さを調整することにより、調整できる。
【0066】圧電基板2の取り付け位置は、固定導電体層7の周縁であるので、入力操作面3aを狭めない。尚、圧電基板2は、固定導電体層7の対向する両側の周縁に一対取り付けてもよい。
【0067】図2に示すように、圧電基板2を一方の駆動電極2aを介して支持基板4上に固着した後、各枠部3A、4Aの対向面間に粘着剤層5を塗布し、可動板3と支持基板4を貼り合わせる。粘着材層5を挟んで、可動板3と支持基板4の各枠部3A、4Aを押圧すると、粘着材層5を介して枠部3A、4Aの対向面が密着し、可動導電体層6と固定導電体層7は、僅かな間隙で平行に配置される。また、圧電基板2の他方の駆動電極2bは、粘着材層5で覆われるので、圧電基板2は、拘束されることなく伸縮する。
【0068】外部接続部3bに接続するコネクタを介して押圧検出回路(図示せず)は、可動板3の入力操作面3aへの押圧と押圧位置を検出し、その押圧位置データを出力するもので、以下、その作用を説明する。
【0069】押圧を検出していない待機状態では、X印加側引き出し電極8a若しくはX接地側引き出し電極8bに所定の押圧検出用電圧を印加し、可動導電体層6をこの電位に保つとともに、他側の固定導電体層7を抵抗を介して接地し、その電位を監視する。可動板3が押圧されていない間、接地電位にある固定導電体層7の電位は、押圧により導電体層6、7間が接触すると、可動導電体層6から抵抗に電流が流れ、一定の電位まで上昇する。そこで、所定のしきい値を設定し、固定導電体層7の電位が所定のしきい値を越えることで、可動板3が押圧されたことを検出する。
【0070】押圧を検出すると、その押圧位置を検出するように押圧検出回路が動作する。尚、この押圧検出によって、圧電基板2に駆動電圧を印加する第1駆動回路10も起動するが、その動作は、後述する。
【0071】押圧位置の検出は、X方向と、Y方向のそれぞれを分けて検出する。X方向の押圧位置を検出する際には、X印加側引き出し電極8aに座標検出用電圧を印加するとともに、X接地側引き出し電極8bを接地し、可動導電体層6に等しい傾きの電位勾配を形成する。押圧位置での電位は、可動導電体層6と接触する固定導電体層7側をハイインピーダンスとしておけば、固定導電体層7の電位で読み取ることができ、Y印加側引き出し電極9a若しくはY接地側引き出し電極9bのいずれかにA/Dコンバータなどの電圧検出回路に接続して、接触位置の電位を読み取る。可動導電体層6には、等しい傾きの電位勾配が形成されているので、接触位置の電位は、X接地側引き出し電極8bからX印加側引き出し電極8aに向かうX方向の距離に比例した値となり、これによって、押圧位置のX座標を検出する。
【0072】Y方向の押圧位置検出は、上記と同様の方法で、固定導電体層7にY方向の等しい傾きの電位勾配を形成し、X印加側引き出し電極8a若しくはX接地側引き出し電極8bに接続する電圧検出回路から、接触位置の電位を読み取る。接触位置の電位は、Y接地側引き出し電極9bからY印加側引き出し電極9aに向かうY方向の距離に比例した値となるので、これによって、押圧位置のY座標を検出する。
【0073】このようにX、Y座標検出モードを繰り返し、入力操作面3aの押圧操作による押圧位置を、X、Y方向で検出し、X座標とY座標からなる押圧位置データを図示しないパーソナルコンピュータなどの処理装置へ出力する。
【0074】タッチパネル入力装置1は、可動板3への押圧を検出する限り、押圧検出回路にて、上記押圧と押圧位置の検出を繰り返すが、押圧されていない状態から始めて押圧を検出した際には、支持基板4を振動させる為に、圧電基板2に駆動電圧を印加する第1駆動回路10が起動する。
【0075】第1駆動回路10は、図4に示す簡単な回路で、コイルで構成された変圧回路14の出力側に圧電基板2の一対の駆動電極2a、2bが接続される。押圧を検出すると、5乃至10msec幅の振動トリガー信号が変圧回路14に入力され、この間、瞬間的に数ボルトの直流低圧電源が変圧回路14へ印加されるようになっている。従って、変圧回路14には、コイルによる誘導電圧が発生し、±40V程度の駆動電圧が圧電基板2に印加される。
【0076】圧電基板2は、この駆動電圧が印加されて伸縮し、固着する支持基板4を振動させる。圧電基板2を駆動させる駆動電圧の波形は、瞬間的に発生するパルス波形で駆動電圧を印加している間だけ、支持基板4が振動するものであるが、上述したように、僅かな時間であっても、大きな振幅の振動が得られるので、操作者は、押圧操作が検出されたことを、支持基板4に接触する可動板3を介して指先に伝達される振動で充分認識することができる。
【0077】従って、振動を発生させる為の第1駆動回路10には、振動を一定時間連続させるための振動用発信回路、昇圧用の発振回路などを用いることなく、極めて簡単な回路構成とすることができる。
【0078】尚、支持基板4の振動は、圧電基板2の伸縮に直接連動する振動なので、圧電基板2を駆動させる駆動電圧波形を図5の各図に示すように、種々の波形として、細かい振動の変化を操作者へ伝達させることもできる。
【0079】図5(a)は、操作者に皿バネで支持される押ボタンを押圧した際に生じるクリック感に類似した感触を与える駆動電圧波形で、押圧を検出した後、5乃至10msec幅のパルスを2回発生させるものである。これにより、支持基板4は、瞬間的に2度振動する。
【0080】図5(b)は、20乃至30aHzの正弦波交流の駆動電圧波形で、支持基板4には、同じ周波数の正弦波振動が表れる。これにより、操作者は、振動モータで支持基板4を振動させたような振動の感触を受ける。
【0081】図5(c)は、数100μsecの周期の交流の駆動電圧波形で、同じ周期で支持基板4が振動する。支持基板4の振動周波数は、数khzとなるので、その振動の感触は指から得られないが、可聴帯域周波数であるので、支持基板4がガラス基板等であると振動による操作音が発生する。従って、入力操作感は、音の発生によっても、操作者へ伝達することができ、この場合に、操作音を発生させる為のスピーカを設ける必要がない。
【0082】図5(d)は、同図(a)と(c)の駆動電圧波形を組み合わせたもので、操作者は、始めにクリック感を指先から得て、その後、耳から操作音を聞くことで、押圧操作を確認できる。
【0083】携帯電話機など携帯情報端末機器(PDA)では、着信を伝達するための振動モータ、着信音を出力するスピーカの他に、入力文字、着信内容を表示する表示板等が備えられているが、可能な限り小型軽量化が求められるこれらの機器内には、更に表示板を振動させる為に従来の圧電アクチュエータ、振動モータなどの振動部品を取り付けることはできず、表示板を振動させる製品は開発されていない。本発明によれば、表示板に圧電基板2を取り付け、その駆動電圧波形を上述のように変えるだけで、これらの機能を全て満たすことができる。
【0084】図5(b)乃至(d)に示す各駆動電圧波形は、一定時間連続した振動を支持基板4へ発生させるために、第1駆動回路10に代えて、図6に示す振動用発振回路15を備えた第2駆動回路11で圧電基板2を駆動させる必要がある。
【0085】第2駆動回路11において、昇圧用発振回路16は、数Vの直流定電圧電源で20乃至30kHzの発振動作を行う。昇圧用発振回路16に接続する昇圧回路17は、昇圧用発振回路16の周期でトランスに流れる電流をスイッチング制御し、数ボルトの直流定電圧電源を数10Vの直流電圧に昇圧し、増幅回路18へ出力する。
【0086】一方、振動用発振回路15は、支持基板4を振動させる周波数の駆動信号を発生し、増幅回路18へ出力するもので、増幅回路18は、この駆動信号を昇圧回路17から入力される直流電圧で増幅し、ゲート回路19へ出力する。
【0087】ゲート回路19の入力側には、更に、押圧を検出した際に押圧検出回路で生成される振動トリガーを入力した際に、支持基板4を振動させる時間幅のパルスを生成するパルス幅発生回路20が接続され、ゲート回路19は、このパルスを入力している間、増幅回路18より入力される駆動信号を、駆動電圧として圧電基板2の駆動電極2a、2bへ印加する。
【0088】この第2駆動回路11によれば、振動用発振回路15で生成される駆動信号の周波数と、パルス幅発生回路20で生成されるパルス幅を任意に設定することにより、図5各図に例示する駆動電圧波形等任意の駆動電圧波形を生成できる。
【0089】第1の実施の形態では、圧電基板2を、可動板3と支持基板4との間に配設するものであったが、圧電基板2は、可動板3又は支持基板4のいずれの部分に固着しても本発明を実施できるものである。
【0090】以下、圧電基板2を支持基板4の背面に固着した、本発明の第2実施の形態に係るタッチパネル入力装置30を、図7の要部断面図で説明する。
【0091】尚、この第2実施の形態においては、圧電基板2の取付位置を変えることによる構成上の相違を除き、他の構成は、第1の実施の形態に係るタッチパネル入力装置1と同一の構成であるので、図中同一の番号を付してその詳細な説明は省略する。
【0092】図に示すように、圧電基板2は、支持基板4の背面であって、Y印加側引き出し電極9aが形成された部位の背面に、一方の駆動電極2aを介して、接着剤層31で固着される。一対の駆動電極2a、2bと、駆動回路10、11を含む外部回路との電気接続は、第1実施の形態のように、可動板3背面のリード部12c、12eを利用することができないので、別に設けるリード線(図示せず)を介して電気接続する。
【0093】また、固定導電体層7に電気接続するY印加側引き出し電極9aも駆動電極2aと兼用できないので、図示するように、第1実施の形態において駆動電極2aが固着された部位に印刷形成される。
【0094】第1実施の形態と同様に、押圧を検出した際に、駆動回路10、11から一対の駆動電極2a、2bへ駆動電圧を印加すれば、圧電基板2の伸縮により支持基板4が振動し、操作者は支持基板4に接触する可動板3を介して指先でこの振動を感知し、押圧操作が実行されたことを認識できる。
【0095】このように、本実施の形態に係るタッチパネル入力装置30は、従来構造のタッチパネル入力装置をそのままその構造を変えずに用い、圧電基板2を固着するだけで、振動機能を加えることができる。
【0096】尚、可動板3と支持基板4の各枠部3A、4A間を貼り付ける粘着材層5は、これらの対向面間を固着する接着剤層としてもよい。
【0097】本実施の形態では、可動板3と支持基板4が、いずれも透明材料で形成されているので、タッチパネル入力装置30を液晶パネル、CRT等の表示装置上に配置し、表示内容を見ながら入力操作面3aを押圧し、押圧位置を検出することによって、表示内容に対応する指示入力データを、パーソナルコンピュータなどの処理装置へ出力するものである。
【0098】この様な使用形態では、表示装置が支持基板4の背面側に配置され、また、その表示内容を見易くするために、発光ダイオードなどの照光用発光素子も支持基板4の背面側に配置されるが、これらの表示装置、素子若しくはその配線から高周波ノイズが発生することがあり、絶縁基板である支持基板4が誘電体として作用し、支持基板4上に形成された引き出し電極9a、9bに重畳し、押圧位置の検出エラーの原因となっていた。
【0099】本実施の形態では、支持基板4の背面側の表示装置、素子若しくはその配線と、上記引き出し電極9a、9bとの間に、圧電基板2に貼り付けられた駆動電極2a、2bが介在し、これらの電極2a、2bが、引き出し電極9a、9bに対するシールドの役割をなすので、高周波ノイズを遮断し、押圧位置の誤検出を防止できる。
【0100】上述の第1、第2実施の形態では、始めて可動板3への押圧を検出した際に、圧電基板2へ駆動電圧を印加したが、検出した押圧位置データと連動させ、押圧の検出とともに、表示装置で表示される特定のアイコンを表示する表示エリアの押圧位置を検出した際に、圧電基板2へ駆動電圧を印加し、可動板3又は支持基板4を振動させることもできる。更に、アイコンの表示毎に、駆動電圧波形を変化させれば、操作者に感知される振動作用も異なり、目の不自由な操作者にも、アイコンの種別を指先で感知できる。
【0101】また、上述の実施の形態は、いわゆる抵抗感圧タブレット方式のアナログタイプのタッチパネル入力装置1、30で説明したが、可動導電体層6と固定導電体層7を、それぞれ多数の短冊状の可動接触片と固定接触片に分割し、可動板3と支持基板4の対向面に、互いに直交するように貼り付けて、マトリックス状の接触位置を設定した、いわゆるデジタルタイプのタッチパネル入力装置としてもよい。このデジタルタイプのタッチパネル入力装置では、いずれかの接触した可動接触片と固定接触片から接触位置から、可動板3に対する押圧位置を検出することができる。
【0102】また、圧電基板は、ある程度の剛性を有するものであれば、可動板3の表面若しくは背面へ固着してもよく、又、圧電基板を固着する可動板又は支持基板は、圧電基板の伸縮で振動が生じる程度の剛性があれば、その材料は、ガラス、プラスチック、金属等いずれの材料であってもよい。
【0103】上記実施の形態に示すように、圧電基板は、厚み方向で対向する表面と背面に一対の駆動電極を貼り付け、一方の駆動電極を介して可動板又は支持基板へ固着すると、圧電基板の厚み方向に電界が加わり、小さい駆動電圧で効果的に可動板又は支持基板を振動させることができるが、必ずしもこの固着方法に限らず、可動板又は支持基板と直交する圧電基板の側面に固着し、圧電基板を、直接、可動板又は支持基板へ固着するものであってもよい。
【0104】本発明のように、可動板3又は支持基板4へ圧電基板を取り付けると、これらへ直接振動を発生させるのみならず、種々の用途が派生して生じる。
【0105】例えば、圧電基板による圧電効果を利用(機械的歪みから発生する電圧信号を利用)する用途としては、可動板に圧電基板を固着しておき、押圧操作の際に、可動板の押圧によって撓む圧電基板から所定の電圧が出力されるので、この電圧を検出して、タッチパネル入力装置の押圧を検出できる。この出力電圧を積分回路に通せば、可動板への押圧力も判定できる。
【0106】また、圧電基板に加速度が加わっても、圧電効果による電圧が出力されるので、待機中は、圧電基板からの出力のみ監視する回路を動作させておき、タッチパネル入力装置が備えられた機器を操作者が取り出した際に、圧電基板に加わる加速度から出力される電圧を検出し、他の主回路に電源を供給する等の省電力回路にも利用できる。
【0107】更に、可動板の表面側に圧電基板を露出させておくと、操作者の会話による音圧を受けて、圧電基板に、音声に対応する所定の電気信号が表れる。従って、簡易マイクロフォンとしても利用することも可能である。
【0108】更に、入力操作面の対向する2辺に沿って圧電基板を固着すれば、押圧した際にそれぞれの圧電基板に伝達される撓み量が、押圧位置から圧電基板の固着位置までの距離に依存するので、一対の圧電基板の出力を比較することで、押圧位置を検出することも可能となる。
【0109】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明によれば、タッチパネル入力装置1、30を構成する可動板3や支持基板4自体を振動させるので、振動発生源を装置とは別のスペースに設ける必要がなく、入力装置全体の厚さや大きさが増加しない。
【0110】また、可動板3や支持基板4自体が振動するので、振動発生源の支持機構や振動源からの伝達機構も設ける必要がなく、更に、伝達による雑音の発生や、振動エネルギーの減衰もなく、僅かな駆動電圧で、効果的に振動させることができる。従って、一定時間振動を継続させず、瞬間的な振動を発生させるだけで、操作者に感知させることができ、振動を継続させるための発振回路がない簡単な回路で、圧電基板を駆動制御できる。
【0111】更に、圧電基板2の伸縮にそのまま追従して可動板3や支持基板4が振動するので、押圧を検出した後、遅れなく振動を伝えることができ、また、駆動電圧波形を変化させて、操作者に、細かい振動の感触の変化を伝えることができる。
【0112】また、圧電基板2は、単層構造としてその厚みを薄くできるので、安価に製造できるばかりか、低い駆動電圧で大きな撓み量が得られるので、可動板3や支持基板4に大きな振幅の振動を効率的に発生させることができる。
【0113】また、請求項2の発明によれば、一対の駆動電極が固着された圧電基板を、可動板と支持基板を僅かな間隔を隔てるスペーサ部材の配置スペースにするので、振動作用を加える構造としても、その為のスペースを新たに用意する必要がない。
【0114】また、請求項3の発明によれば、導電体層の周縁に電気接続する引き出し電極と、圧電基板の一方の駆動電極と兼用するので、一方の駆動電極は別に形成する必要がない。更に、引き出し電極と外部回路とを接続するリード部も兼用できるので、一方の駆動電極へ駆動電圧を供給するための配線も新たに設ける必要がない。
【0115】また、請求項4の発明によれば、支持基板の背面に一方の駆動電極を介して圧電基板を固着するだけなので、従来のタッチパネル入力装置をそのまま用いて、振動機能を加えることができる。
【0116】また、請求項5の発明によれば、支持基板の背面側から受ける高周波ノイズを駆動電極が遮蔽するので、高周波ノイズが引き出し電極に重畳することによって生じる押圧位置の検出エラーを防止できる。
【0117】また、請求項6の発明によれば、連続した振動を発生させるための発振回路などが不要となり、簡単な圧電基板の駆動回路で、操作者が検知できる振動を発生する。
【0118】また、請求項7の発明によれば、別にスピーカなどの音源を設けることなく、操作音によって、操作者へ入力操作感を伝達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るタッチパネル入力装置1の分解斜視図である。
【図2】タッチパネル入力装置1の要部縦断面図である。
【図3】(a)は、圧電基板2の取り付けを示す説明図、(b)は、一対の駆動電極2a、2bとリード部12c、12eとの接続を示す要部斜視図である。
【図4】圧電基板2を駆動する第1駆動回路10の構成を示すブロック図である。
【図5】圧電基板2を駆動する駆動電圧波形を示し、(a)は、クリック感を発生させる駆動電圧波形の、(b)は、緩やかな振動感を発生させる駆動電圧波形の、(c)は、可聴音を発生させる駆動電圧波形の、(d)は、クリック感の後、可聴音を発生させる駆動電圧波形の、波形図である。
【図6】圧電基板2を駆動する第2駆動回路11の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2実施の形態に係るタッチパネル入力装置30の要部断面図である。
【図8】従来のタッチパネル入力装置100を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 タッチパネル入力装置
2 圧電基板
2a 一方の駆動電極
2b 他方の駆動電極
3 可動板
3A 可動板の枠部
3a 入力操作面
4 支持基板
4A 支持基板の枠部
5 粘着材層(スペーサ部材)
6 可動導電体層
7 固定導電体層
9a Y印加側引き出し電極
9b Y接地側引き出し電極9b

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に入力操作面(3a)を有する可動板(3)と、可動板(3)とわずかな絶縁間隔を隔てて配置され、可動板(3)を背面から支持する支持基板(4)と、入力操作面(3a)への押圧とその押圧位置を、可動板(3)と支持基板(4)上の対向面にそれぞれ形成された導電体層(6)(7)間の接触から検出し、押圧位置データを出力する押圧検出手段とを備え、押圧を検出した際に、可動板(3)又は支持基板(4)を振動し、入力操作感を発生させるタッチパネル入力装置であって、対向する両面に一対の駆動電極(2a)(2b)が固着された圧電基板(2)を、直接若しくは駆動電極(2a)(2b)を介して、可動板(3)又は支持基板(4)に固着し、入力操作面(3a)への押圧を検出した際に、一対の駆動電極(2a)(2b)に駆動電圧を印加して、伸縮する圧電基板(2)により可動板(3)又は支持基板(4)を振動させることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項2】 可動板(3)と支持基板(4)は、周囲の枠部(3A)(4A)で対向する内面間に配置されるスペーサ部材(5)により、わずかな間隙を隔てて積層配置され、圧電基板(2)は、直接若しくは駆動電極(2a)(2b)を介して、枠部(3A)(4A)で対向する可動板(3)又は支持基板(4)のいずれかの内面に固着し、スペーサ部材(5)が配置される空間内に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル入力装置。
【請求項3】 押圧検出手段は、可動板(3)と支持基板(4)の各導電体層(6)(7)の周縁に電気接続するいずれかの引き出し電極(9a)に検出電圧を印加し、若しくは、いずれかの引き出し電極の電位を検出して、入力操作面(3a)への押圧とその押圧位置を検出し、可動板(3)又は支持基板(4)の枠部(3A)(4A)の内面に固着されたいずれかの引き出し電極(9a)を、圧電基板(2)の一方の駆動電極(2a)として、引き出し電極を介して圧電基板(2)を固着することを特徴とする請求項2記載のタッチパネル入力装置。
【請求項4】 圧電基板(2)は、直接若しくは駆動電極(2a)(2b)を介して、支持基板(4)の背面に固着することを特徴とする請求項1記載のタッチパネル入力装置。
【請求項5】 可動板(3)と支持基板(4)は、支持基板(4)の背面側に配設される照光用発光素子の発光を透過させる透明材料で形成され、圧電基板(2)は、直接若しくは駆動電極(2a)(2b)を介して、導電体層(7)の周縁に電気接続する引き出し電極(9a)(9b)が形成された支持基板(4)の部位の背面に固着することを特徴とする請求項4記載のタッチパネル入力装置。
【請求項6】 入力操作面(3a)への押圧を検出した際に、低電圧のトリガーパルスを入力によりコイルの両端にあらわれる出力電圧を駆動電圧として、圧電基板(2)の一対の駆動電極(2a)(2b)に印可することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のタッチパネル入力装置。
【請求項7】 入力操作面(3a)への押圧を検出した際に、一対の駆動電極(2a)(2b)に可聴帯域周波数の駆動電圧を印可して、圧電基板(2)を伸縮し、可動板(3)又は支持基板(4)を可聴帯域周波数で振動させることにより、入力操作を表す音を発生させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のタッチパネル入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2003−122507(P2003−122507A)
【公開日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−312399(P2001−312399)
【出願日】平成13年10月10日(2001.10.10)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】