説明

タッチパネル及びこれを用いた入力装置

【課題】各種電子機器に用いられるタッチパネル及びこれを用いた入力装置に関し、視認性が良好で、操作の確実なものを提供することを目的とする。
【解決手段】85℃以上で加熱処理され、寸法収縮率が0.4%以下である偏光板7を上基板1上面に装着してタッチパネルを構成することによって、高温下で用いられた場合でも、偏光板7の収縮が生じづらく、タッチパネルの反り等を防ぎ、液晶表示素子等の視認性が良好で、操作の確実なものを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作に用いられるタッチパネル及びこれを用いた入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯端末等の各種電子機器の高機能化や多様化が進むに伴い、液晶等の表示素子の前面に光透過性のタッチパネルを装着して、このタッチパネルを通して背面の表示素子の表示を視認しながら、指やペン等でタッチパネルを押圧操作することによって、機器の各機能の切換えを行うものが増えており、安価で視認性に優れたものが求められている。
【0003】
このような従来のタッチパネルについて、図2を用いて説明する。
【0004】
なお、構成を判り易くするために、図面は厚さ方向の寸法を拡大して表している。
【0005】
図2は従来のタッチパネルの断面図であり、同図において、1はフィルム状で光透過性の上基板、2は同じく光透過性の下基板で、上基板1の下面には酸化インジウム錫等の光透過性の上導電層3が、下基板2の上面には同じく下導電層4が各々形成されている。
【0006】
また、下導電層4上面には絶縁樹脂によって、複数のドットスペーサ(図示せず)が所定間隔で形成されると共に、上導電層3の両端には一対の上電極(図示せず)が、下導電層4の両端には、上電極とは直交方向の一対の下電極(図示せず)が各々形成されている。
【0007】
さらに、5は額縁状のスペーサで、このスペーサ5の上下面に塗布形成された接着層(図示せず)によって、上基板1と下基板2の外周が貼り合わされ、上導電層3と下導電層4が所定の間隙を空けて対向するようにして、タッチパネルが構成されている。
【0008】
そして、このように構成されたタッチパネルは、液晶表示素子等の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、一対の上電極と下電極が機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0009】
以上の構成において、タッチパネル背面の液晶表示素子の表示を視認しながら、上基板1上面を指或いはペン等で押圧操作すると、上基板1が撓み、押圧された箇所の上導電層3が下導電層4に接触する。
【0010】
そして、電子回路から上電極と下電極へ順次電圧が印加され、これらの電極間の電圧比によって、押圧された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われるように構成されているものであった。
【0011】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2002−297319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来のタッチパネルにおいては、上基板1とこの下面の上導電層3、及び間隙を介した下導電層4と下基板2というように、多くの部品からタッチパネルが構成されているため、屋外や蛍光灯の下など特に明るい状態では、太陽光や灯火等の外部光がこれらの上下面で反射し、タッチパネル背面の液晶表示素子等の表示が見づらくなってしまうという課題があった。
【0013】
また、このような外部光の反射による視認性を改善するため、偏光板等をタッチパネルの上面に重ね合わせたものも提案されているが、このようなタッチパネルを高温下で使用した場合には、偏光板が収縮し、上基板1やスペーサ5等との収縮差によって、タッチパネルに反りが生じ、上導電層3と下導電層4の接触が不安定になるという課題があった。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、液晶表示素子等の視認性が良好で、操作の確実なタッチパネル及びこれを用いた入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、85℃以上で加熱処理され、寸法収縮率が0.4%以下である偏光板を上基板上面に装着してタッチパネルを構成したものであり、高温下で用いられた場合でも、偏光板の収縮が生じづらく、タッチパネルの反り等を防ぎ、液晶表示素子等の視認性が良好で、操作の確実なタッチパネルを得ることができるという作用を有する。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、上基板と偏光板の間、及び下基板下面に位相差板を設けたものであり、偏光板と上下の位相差板によって外部光の反射を防ぎ、背面の液晶表示素子等のさらに良好な視認性を得ることができるという作用を有する。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載のタッチパネルの上導電層両端、及びこれと直交方向の下導電層両端に制御回路を接続すると共に、上導電層への押圧操作時に、制御回路が上導電層及び下導電層両端に電圧を印加して、押圧箇所を検出するようにして入力装置を構成したものであり、視認性が良好で、操作の確実な入力装置を容易に実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、視認性が良好で、操作の確実なタッチパネル及びこれを用いた入力装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態において、図1を用いて説明する。
【0021】
なお、構成を判り易くするために、図面は厚さ方向の寸法を拡大して表している。
【0022】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0023】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図であり、同図において、1はポリエーテルサルホンやポリカーボネート等の光学等方性のフィルム状で光透過性の上基板、2は同じくフィルム状またはガラスやアクリル樹脂等の光透過性の下基板で、上基板1の下面には酸化インジウム錫や酸化錫等の光透過性の上導電層3が、下基板2の上面には同じく下導電層4がスパッタ法等によって各々形成されている。
【0024】
また、下導電層4上面にはエポキシやシリコン等の絶縁樹脂によって、複数のドットスペーサ(図示せず)が所定間隔で形成されると共に、上導電層3の両端には一対の上電極(図示せず)が、下導電層4の両端には、上電極とは直交方向の一対の下電極(図示せず)が各々形成されている。
【0025】
そして、5は不織布やポリエステルフィルム等の額縁状のスペーサで、このスペーサ5の上下面に塗布形成された接着層(図示せず)によって、上基板1と下基板2の外周が貼り合わされ、上導電層3と下導電層4が所定の間隙を空けて対向している。
【0026】
さらに、7は可撓性で寸法収縮率が0.4%以下の直線偏光の偏光板で、アゾ系やキノン系、インジゴ系等の二色性染料を吸着させ一軸延伸・配向させたポリビニルアルコール等の上下面に、トリアセチルセルロース等が積層されている。
【0027】
また、8及び9はポリカーボネートやシクロオレフィンポリマー等のフィルムを延伸し複屈折性を持たせた、1/4波長で可撓性の位相差板で、位相差板8は上基板1上面に、位相差板9は下基板2下面に貼付されている。
【0028】
そして、上基板1上面の位相差板8上にアクリル等の接着剤(図示せず)によって、偏光板7が装着貼付されてタッチパネルが構成されている。
【0029】
なお、以上のような構成のタッチパネルは、先ず、ポリビニルアルコール等の両面にトリアセチルセルロース等が積層された偏光板7を、85℃の温度中に30分間アニ−ルし加熱処理した後、これに位相差板8を貼付して、円偏光板を作成する。
【0030】
次に、スペーサ5によって上基板1と下基板2を貼り合わせ、上基板1上面に偏光板7と位相差板8を貼付すると共に、下基板2下面に位相差板9を貼付して、タッチパネルが製作される。
【0031】
そして、このように製作されたタッチパネルは、液晶表示素子等の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、一対の上電極と下電極を介して上導電層3と下導電層4の両端が、マイコン等の電子部品によって形成された制御回路(図示せず)に接続されて、入力装置が形成される。
【0032】
以上の構成において、タッチパネル背面の液晶表示素子の表示を視認しながら、偏光板7上面を指或いはペン等で押圧操作すると、偏光板7と位相差板8、上基板1が撓み、押圧された箇所の上導電層3が下導電層4に接触する。
【0033】
そして、制御回路から上電極と下電極へ順次電圧が印加され、これらの電極間の電圧比によって、押圧された箇所を制御回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われるように構成されている。
【0034】
また、この時、上方からの太陽光や灯火等の外部光は、先ず、偏光板7を通過することによって、X方向及びこれと直交するY方向の光波のうち、例えば、偏光板7がY方向の光波を遮断するものであった場合、X方向の直線偏光となって偏光板7から位相差板8に入射する。
【0035】
次に、この光は1/4波長の位相差板8を通過することによって、光の波長λに対して、λ/4ずれた波長となって下導電層4で上方へ反射する。
【0036】
そして、この反射光は、再び位相差板8を通過することによって、さらに波長がλ/4ずれると共に、Y方向の直線偏光となって偏光板7に入射するが、偏光板7はX方向の光波だけを通過させるため、Y方向の反射光は偏光板7で遮断される。
【0037】
つまり、上方からタッチパネルに入射した外部光は、下導電層4で上方へ反射するが、この反射光は偏光板7で遮断され、操作面である偏光板7上面からは出射しないため、反射がなく、背面の液晶表示素子等の良好な視認性が得られるように構成されている。
【0038】
これに対し、タッチパネル背面の液晶表示素子等の点灯光は、これをY方向の直線偏光としておけば、先ず位相差板9を通過することによって、波長がλ/4ずれた後、位相差板8を通過することによって、さらに波長がλ/4ずれると共に、X方向の直線偏光となって偏光板7に入射し、操作面である偏光板7上面から出射する。
【0039】
つまり、液晶表示素子等からの点灯光は、位相差板9と位相差板8を通過することによって、X方向の直線偏光となり、波長がλ/2ずれただけで偏光板7上面から出射されるため、タッチパネル背面の液晶表示素子等の表示は明確に視認することができる。
【0040】
さらに、偏光板7は85℃以上で加熱処理され、寸法収縮率が0.4%以下のものとなっているため、タッチパネルが高温下で用いられた場合でも、偏光板7の収縮が生じづらく、タッチパネルの反り等を防ぐように構成されている。
【0041】
このように本実施の形態によれば、85℃以上で加熱処理され、寸法収縮率が0.4%以下である偏光板7を上基板1上面に装着することによって、高温下で用いられた場合でも、偏光板の収縮が生じづらく、タッチパネルの反り等を防ぎ、液晶表示素子等の視認性が良好で、操作の確実なタッチパネル、及びこれを用いた入力装置を得ることができるものである。
【0042】
そして、ポリビニルアルコール等の両面にトリアセチルセルロース等を積層して偏光板7を形成することによって、ポリビニルアルコールの両面に、耐熱性には優れるが高価なアートンフィルム等を貼り合わせたものに比べ、安価にタッチパネルを製作することができる。
【0043】
なお、偏光板7には、ヨウ素を吸着させたポリビニルアルコールを用いても形成が可能であるが、85℃以上で加熱処理した場合、原子であるヨウ素が低減して偏光性が劣化し易いため、本実施の形態のように、分子であり加熱による低減が少ない二色性染料を吸着させたポリビニルアルコールを用いることで、こうした偏光性の劣化を防止することができる。
【0044】
また、上基板1と偏光板7の間、及び下基板2下面に位相差板8と9を設けることによって、外部光の反射を防ぎ、背面の液晶表示素子等のさらに良好な視認性を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によるタッチパネル及びこれを用いた入力装置は、視認性が良好で、操作の確実なものを提供することができるという有利な効果を有し、各種電子機器の操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図
【図2】従来のタッチパネルの断面図
【符号の説明】
【0047】
1 上基板
2 下基板
3 上導電層
4 下導電層
5 スペーサ
7 偏光板
8 位相差板
9 位相差板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に上導電層が形成された上基板と、この上基板上面に装着された偏光板と、上面に上記上導電層と所定の間隙を空けて対向する下導電層が形成された下基板からなり、上記偏光板が85℃以上で加熱処理され寸法収縮率が0.4%以下であるタッチパネル。
【請求項2】
上基板と偏光板の間、及び下基板下面に各々位相差板を設けた請求項1記載のタッチパネル。
【請求項3】
請求項1記載のタッチパネルの上導電層両端、及びこれと直交方向の下導電層両端に制御回路を接続すると共に、上記上導電層への押圧操作時に、上記制御回路が上記上導電層及び下導電層両端に電圧を印加して、押圧箇所を検出する入力装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−11597(P2006−11597A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184723(P2004−184723)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】