説明

タッチパネル及びタッチパネルの製造方法

【課題】複数点入力可能な5線式のタッチパネルを提供する。
【解決手段】第1の基板上に形成された上部導電膜を有する上部電極基板と、第2の基板上に形成された下部導電膜を有する下部電極基板と、下部導電膜おいて電位分布を生じさせるために下部導電膜の四辺の端部に各々設けられた4つの電極を有し、上部導電膜と下部導電膜とは対向して設けられたタッチパネルにおいて、上部導電膜は、上部導電膜にレーザ光を照射し除去することにより、縦方向に3分割以上、かつ、横方向に3分割以上に分割された複数の導電領域を有し、上部電極基板の四辺のうちいずれの辺とも接していない導電領域は、四辺のうち一辺に延びる上部導電膜からなる引出部を有しており、下部導電膜と上部導電膜との複数の接触位置における各々の座標位置を検出することを特徴とするタッチパネルを提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル及びタッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、ディスプレイに直接入力をすることが可能な入力デバイスであり、ディスプレイの前面に設置して使用される。このタッチパネルは、ディスプレイにより視覚的にとらえた情報に基づき、直接入力することができることから、様々な用途において普及している。
【0003】
このようなタッチパネルとしては、抵抗膜方式が広く知られている。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電膜が形成された上部電極基板及び下部電極基板において、各々の透明導電膜同士が対向するように設置し、上部電極基板の一点に力を加えることにより各々の透明導電膜同士が接触し、力の加えられた位置の位置検出を行うことができるものである。
【0004】
抵抗膜方式のタッチパネルは、4線式と5線式とに大別することができる。4線式は、上部電極基板又は下部電極基板のどちらか一方にX軸の電極が設けられており、他方にY軸の電極が設けられている。一方、5線式は、下部電極基板にX軸の電極及びY軸の電極がともに設けられており、上部電極基板は、電圧を検出するためのプローブとして機能するものである(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
具体的に、図1及び図2に基づき5線式のタッチパネルについて説明する。図1は、5線式のタッチパネルの斜視図であり、図2は、5線式のタッチパネルの断面の概要図である。
【0006】
5線式のタッチパネル200は、上部電極基板となる一方の面に透明導電膜230の形成されたフィルム210と、下部電極基板となる一方の面に透明導電膜240の形成されたガラス220からなり、透明導電膜230及び透明導電膜240が対向するようにスペーサ250を介し設置されている。5線式のタッチパネル200と不図示のホストコンピュータとはケーブル260により電気的に接続されている。
【0007】
このような構成の5線式のタッチパネル200では、図3(a)に示すように、透明導電膜240の端部の4辺に設けられた電極241、242、243、244により、X軸方向、Y軸方向に交互に電圧を印加し、透明導電膜230と透明導電膜240とが、接触位置A点において接触することにより、図3(b)に示すように、透明導電膜230を介し電位Vaを検出し、X軸方向及びY軸方向の各々の座標位置を検出する方式である。
【0008】
ところで、上述した5線式のタッチパネルでは、一点における接触位置は検出することは可能であるが、複数点が同時に接触した場合には位置検出をすることができない。
【0009】
即ち、図4(a)に示すように、透明導電膜240の4辺に設けられた電極241、242、243、244により、X軸方向、Y軸方向に交互に電圧を印加した場合において、透明導電膜230と透明導電膜240とが接触位置A点及びB点の2点において接触すると、A点とB点の間の中間点における押下されていない一点の座標位置が検出されてしまう。これは、図4(b)に示すように、電位検出による位置検出方法であることから、接触位置A点及びB点の二点で接触した場合であっても、透明導電膜230を介し検出される電位はVcの1つだけであるため、接触位置が一点であるものと判断してしまうためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−272722号公報
【特許文献2】特開2008−293129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、複数の接触位置において同時に接触した場合においても、各々の接触位置を検出することができるとともに、接触位置が移動した場合においても、位置検出が可能なタッチパネル及びタッチパネルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の基板上に形成された上部導電膜を有する上部電極基板と、第2の基板上に形成された下部導電膜を有する下部電極基板と、前記下部導電膜おいて電位分布を生じさせるために前記下部導電膜の四辺の端部に各々設けられた4つの電極と、を有し、前記上部導電膜と前記下部導電膜とは対向して設けられたタッチパネルにおいて、前記上部導電膜は、前記上部導電膜にレーザ光を照射し除去することにより、縦方向に3分割以上、かつ、横方向に3分割以上に分割された複数の導電領域を有し、前記上部電極基板の四辺のうちいずれの辺とも接していない導電領域は、前記四辺のうち一辺に延びる上部導電膜からなる引出部を有しており、前記下部導電膜と前記上部導電膜との複数の接触位置における各々の座標位置を検出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記レーザ光により前記上部導電膜の除去される領域の幅は、100μm以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記四辺のうち一辺と接する導電領域には、前記一辺の側の近傍において、前記上部導電膜にレーザ光を照射し除去することにより形成された導電膜除去領域を有する抵抗部を形成し、前記引出部における抵抗値と前記抵抗部における抵抗値とは略等しいものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記導電膜除去領域の幅は、100μm以下であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記上部導電膜における表面の反射率と、前記第2の基板における表面の反射率との差は、1%以下であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記導電領域は、長方形状又は正方形状であって、長辺又は一辺の長さが25mm以下であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上部導電膜は透明導電膜であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、下部導電膜は透明導電膜であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、第1の基板上に形成された上部導電膜を有する上部電極基板と、第2の基板上に形成された下部導電膜を有する下部電極基板と、前記下部導電膜おいて電位分布を生じさせるために前記下部導電膜の四辺の端部に各々設けられた4つの電極と、を有し、前記上部導電膜と前記下部導電膜とは対向して設けられたタッチパネルの製造方法において、前記上部導電膜は、前記上部導電膜にレーザ光を照射し除去することにより、縦方向に3分割以上、かつ、横方向に3分割以上に分割された複数の導電領域及び、前記上部電極基板の四辺のうちいずれの一辺とも接していない導電領域において、前記四辺のうち一辺に延びる引出部を形成するレーザ光照射工程と、前記上部電極基板における上部導電膜と前記下部電極基板における下部導電膜とを対向させて、所定の間隔を隔てて貼り合わせる張合工程と、を有し、前記下部導電膜と前記上部導電膜との複数の接触位置における各々の座標位置を検出することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記四辺のうち一辺と接する導電領域には、前記一辺の側の近傍において、前記上部導電膜にレーザ光を照射し除去することにより形成された導電膜除去領域を有する抵抗部を形成し、前記引出部における抵抗値と前記抵抗部における抵抗値とは略等しいものであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記レーザ光照射工程において照射されるレーザ光の波長は、前記上部導電膜を構成する材料が前記レーザ光を吸収する波長であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、前記波長は355nmであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記レーザ光照射工程において除去される上部導電膜の幅は100μm以下であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、前記レーザ光照射工程において、前記レーザ光はパルス照射されるものであって、前記パルス照射の周波数は、20kHz以上、100kHz以下であって、照射される前記レーザ光のエネルギーは、40μJ以上、300μJ以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、複数の接触位置において同時に接触した場合においても、各々の接触位置を検出することができるとともに、接触位置が移動した場合においても、位置検出が可能なタッチパネル及びタッチパネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の5線式のタッチパネルの斜視図
【図2】従来の5線式のタッチパネルの断面概要図
【図3】従来の5線式のタッチパネルにおける座標検出方法の説明図(1)
【図4】従来の5線式のタッチパネルにおける座標検出方法の説明図(2)
【図5】第1の実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板における構造図
【図6】第1の実施の形態におけるタッチパネルの下部電極基板における構造図
【図7】第1の実施の形態におけるタッチパネルの断面図
【図8】第1の実施の形態におけるタッチパネルの説明図
【図9】第1の実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板の導電領域の説明図
【図10】第1の実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板の要部斜視図
【図11】第1の実施の形態におけるタッチパネルの製造方法のフローチャート
【図12】第1の実施の形態におけるタッチパネルを製造するためのレーザ光照射装置の構成図
【図13】照射されるレーザ光の周波数及びエネルギーと形成される上部電極基板の良否の関係図
【図14】第2の実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板の導電領域の説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。
【0029】
〔第1の実施の形態〕
(タッチパネル)
第1の実施の形態におけるタッチパネルについて説明する。図5は本実施の形態におけるタッチパネルの上部電極基板における構造図であり、図6は本実施の形態におけるタッチパネルの下部電極基板における構造図であり、図7は本実施の形態におけるタッチパネルの断面図であり、図8は本実施の形態におけるタッチパネルの説明図である。
【0030】
本実施の形態におけるタッチパネルは、フィルム11の一方の面に透明導電膜12が形成された略長方形状の上部電極基板10と、上部電極基板10と略同じ形状のガラス基板21の一方の面に透明導電膜22が形成された下部電極基板20により構成される。
【0031】
上部電極基板10と下部電極基板20とは、上部電極基板10における透明導電膜12と下部電極基板20における透明導電膜22とが対向するように、スペーサ31等を介し、接着剤または両面テープにより接合されている。
【0032】
上部電極基板10における透明導電膜12は、短手方向である縦方向に4分割、長手方向である横方向に8分割されており全体が32分割されている。透明導電膜12を各々の導電領域の分割は、導電領域となる領域間の透明導電膜12を除去することにより行われる。これにより、分割された導電領域間では電気的に絶縁することができる。各々の分割された透明導電膜12は、上部電極基板10の短手方向の両端に設けられた引出電極部13における各々の引出電極と接続されており、上部電極基板10の周囲に配線され、上部電極基板10の長手方向の一方の端部においてフレキシブル基板14と接続されている。
【0033】
また、下部電極基板20は、図8に示すように下部電極基板20を構成する4辺の端部において、透明導電膜22上に4つの電極23、24、25、26が設けられており、これら4つの電極23、24、25、26は引出線により、下部電極基板20の周囲より引出され、図6に示すように、下部電極基板20の長手方向の一方の端部においてフレキシブル基板27と接続されている。
【0034】
フレキシブル基板14とフレキシブル基板27はともに不図示の制御回路に接続されており、更に不図示のホストコンピュータに接続されている。尚、透明導電膜12及び透明導電膜22を構成する材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO(酸化亜鉛)にAlまたはGa等が添加された材料、SnO(酸化スズ)にSb等が添加された材料等が挙げられる。
【0035】
また、フィルム11は、PET(ポリエチレンテレフタレート:polyethylene
terephthalate)、PC(ポリカーボネート:Polycarbonate)及び、可視領域において透明の樹脂材料が挙げられる。更に、ガラス基板21に代えて、樹脂基板を用いてもよい。
【0036】
本実施の形態におけるタッチパネルは、上部電極基板10を指等により押すことにより、上部電極基板10における透明導電膜12と、下部電極基板20における透明導電膜22とが接触し、接触した位置における電圧を検知することにより、上部電極基板10と下部電極基板20との接触位置、即ち、上部電極基板10が指等により押された位置が特定される。具体的には、上部電極基板10において、分割された透明導電膜12の各々について時分割による走査がされており、接触したタイミングにより接触位置が含まれる導電領域を特定することができる。尚、下部電極基板20における透明導電膜22上の4辺に設けられた電極23、24、25、26により、X軸方向、Y軸方向に交互に電圧が印加されている。
【0037】
このように、上部電極基板10において透明導電膜12を分割し導電領域を形成することにより、上部電極基板10と下部電極基板20とが接触した接触位置が複数であっても、分割された透明導電膜12の導電領域ごとに接触位置を特定することができるため、各々の接触位置を独立して検出することが可能である。
【0038】
即ち、図8に示すように、上部電極基板10における透明導電膜12と下部電極基板20における透明導電膜22との接触位置が、矢印A、B、C、D、Eに示すように5つの場合であっても、各々の接触位置は、分割された透明導電膜12の領域が異なるため、各々独立して接触位置が検出することが可能なのである。具体的には、上部電極基板10と下部電極基板20との接触位置が矢印Aに示す位置である場合、透明導電膜12の導電領域12aにおいて接触しており、接触位置が矢印Bに示す位置である場合、透明導電膜12の導電領域12bにおいて接触しており、接触位置が矢印Cに示す位置である場合、透明導電膜12の導電領域12cにおいて接触しており、接触位置が矢印Dに示す位置である場合、透明導電膜12の導電領域12dにおいて接触しており、接触位置が矢印Eに示す位置である場合、透明導電膜12の導電領域12eにおいて接触しているが、透明導電膜12の導電領域12a、12b、12c、12d、12eは相互に絶縁された異なる領域であることから、各々を独立して検出することができる。よって、上部電極基板10と下部電極基板20との接触位置が5つの場合であっても、各々の接触位置を特定することが可能である。
【0039】
以上より、透明導電膜12と透明導電膜22との接触位置が複数であっても、接触した導電領域を特定することができるとともに、透明導電膜22における電位分布を検出することにより、より正確に座標位置も検出することが可能である。また、透明導電膜12と透明導電膜22との接触位置を移動させた場合においても、接触位置が移動したことを認識することができるとともに、透明導電膜22における電位分布を検出することにより、移動した接触位置の位置座標を検出することも可能である。
【0040】
次に、上部電極基板10における透明導電膜12の導電領域の分割について説明する。本実施の形態では、図9(a)に示すように、透明導電膜12は、短手方向である縦方向に4分割、長手方向である横方向に8分割されており、合計で32分割されている。これら分割された領域は、上側の2段と下側の2段に分けられている。図5に示すように、上側の2段は上端となる短手方向(縦方向)の一方の端部において、引出電極部13における各々の引出電極と接続されており、下側の2段は下端となる短手方向(縦方向)の他方の端部において、引出電極部13における各々の引出電極と接続されている。尚、本実施の形態におけるタッチパネルは、各々の導電領域が長方形状又は正方形状に形成されており、主に指により操作するものであるため、複数の導電領域うち、最も大きな導電領域における長辺又は一辺の長さは、25mm以下であることが好ましく、より好ましくは20mm以下である。これは、指の太さに基づくものであり、指先と指先とにより複数の接触位置において接触する場合においても、一辺の長さが指先と指先との間隔よりも短ければ、各々の接触位置を独立して検出することが可能であるからである。このため、人間の指先と指先との間隔及び快適となる操作性等を基準として、導電領域の一辺の長さの範囲を定めることができる。また、あまり小さいと後述する引出部の領域が増加し、機能上支障をきたすため、上記観点を踏まえた場合、複数の導電領域うち、最も小さな導電領域における短辺又は一辺の長さは、5mm以上が好ましく、より好ましくは7mm以上である。
【0041】
本実施の形態におけるタッチパネルでは、上部電極基板10における透明導電膜12において、導電領域121と導電領域122からなる導電領域のパターンを反転させたパターンが上側にも形成されており、縦方向に並ぶ4つの導電領域のパターンと同様のパターンが横方向に8列形成されている。
【0042】
図9(a)において、破線で囲まれた領域の拡大図を図9(b)に示す。図9(b)に示されるように、透明導電膜12の下側において2つに分割されたうちの一方を導電領域121、他方を導電領域122とした場合、他方の導電領域122は、上部電極基板10の長手方向に沿った四辺の1つの辺と接しており、一方の導電領域121は、上部電極基板10の四辺のうち長手方向に沿った辺とは接していない。このため、一方の導電領域121の領域部121aから、上部電極基板10の長手方向に沿った辺の端まで延びる引出部121bを形成し、更に、この辺の端に接する接続部121cを形成する。尚、この引出部121bは、上部電極基板10の長手方向に沿った辺と接する2つの導電領域の間に形成されるものである。即ち、導電領域122と、導電領域122に隣接する辺と接する導電領域の間に形成されるものである。よって、本来は導電領域122となる領域に形成されるものである。このため、接触位置の誤認識を防ぐためにも、引出部121bはできるだけ細く形成することが好ましい。
【0043】
これにより、一方の導電領域121は、接続部121cにおいて引出電極131と接続することができ、他方の導電領域122は、導電領域122における上部電極基板10の辺の端部の近傍において引出電極132と接続することができる。
【0044】
導電領域121の接続部121cと引出電極131とは、接続部121c上に銀ペーストを形成し接続する。同様に、導電領域122と引出電極132とは、上部電極基板10の辺の端部の導電領域122上に銀ペーストを形成し接続する。尚、引出電極131及び132が複数集まることにより、図5に示す引出電極部13が形成される。
【0045】
(タッチパネルの製造方法)
次に、図10に基づき、本実施の形態におけるタッチパネルの製造方法について説明する。本実施の形態における上部電極基板10は、フィルム11上に透明導電膜12が形成されているものを用いる。
【0046】
最初に、ステップ102(S102)に示すように、上部電極基板10における透明導電膜12にレーザ光を照射する(レーザ光照射工程)。具体的には、透明導電膜12に集光したレーザ光を照射し、熱またはアブレーションによりレーザ光の照射された領域の透明導電膜12を除去し複数の導電領域を形成する。これにより、相互に絶縁性の保たれた導電領域を形成することが可能である。
【0047】
具体的に、図11に基づき説明する。図11(a)は、図9(b)における11A−11Bにおいて切断した断面斜視図である。透明導電膜12にレーザ光を照射することにより、透明導電膜12を除去し透明導電膜除去領域15aを形成する。この透明導電膜除去領域15aにより透明導電膜12が分離されて導電領域121及び122が形成される。また、図11(b)は、図9(b)における11C−11Dにおいて切断した断面斜視図である。透明導電膜12にレーザ光を照射することにより透明導電膜除去領域15bを形成し、この透明導電膜除去領域15bにより導電領域121における引出領域121bが形成される。
【0048】
透明導電膜除去領域15a及び15bにおいては、透明導電膜が完全に除去されているため導電領域間における絶縁は確保されている。
【0049】
尚、本実施の形態では、レーザ光により透明導電膜12を除去する方法を用いているが、ウエットエッチング等による方法では、透明導電膜除去領域の幅を細く形成すること及び、直線的に形成することが困難であり、視認性に悪影響を与え、表示パネルとしての品質を著しく低下させてしまう。また、ドライエッチング等による方法では、極めて高コストになってしまう。従って、本実施の形態におけるタッチパネルを製造する場合においては、低コストで、細く直線性の高い透明導電膜除去領域を形成することが可能な、レーザ光を照射する方法が最も適している。
【0050】
本実施の形態では、照射するレーザ光は、波長が355nmのレーザ光であり、パルス発振させたレーザ光を連続的に照射することにより、透明導電膜12を除去する。透明導電膜12に照射されるレーザ光のスポット径は、10〜100μmであり、このスポット径の幅で透明導電膜12を除去することが可能である。なお、この波長のレーザ光では、透明導電膜12を除去することは可能であるが、フィルム11には、あまり影響を与えることはない。このため、細長く形成される引出部121bも均一に形成することができる。
【0051】
また、このレーザ光の波長は、透明導電膜12は光を吸収し、フィルム11は光を透過する材料であることが好ましい。効率よく透明導電膜12を除去するためには、透明導電膜12においてのみレーザ光が吸収されることにより、透明導電膜12を直線的に除去し、表示品質を低下させることなくタッチパネルを作製することができる。また、透明導電膜12の除去された領域が目立つことなく、形成されるタッチパネルの視認性に影響を与えないためには、可視光領域における透明導電膜12の表面の反射率とフィルム11の表面の反射率との差が、1%以下であることが好ましい。これらの表面の反射率の差が小さければ、透明導電膜12が除去された領域は視覚的には殆ど目立たないため、視認性に影響を与えることがないからである。尚、本実施の形態では、透明導電膜12としてITOを用いており、可視領域における表面の反射率は約3.5%である。一方、フィルム11としては、PET(ポリエチレンテレフタレート:polyethylene
terephthalate)を用いており、可視領域における表面の反射率は約3%である。よって、フィルム11の表面における反射率と透明導電膜12の表面における反射率との差は1%以内となる。尚、PET以外の材料でフィルム11に用いることができる材料としては、PC(ポリカーボネート:Polycarbonate)及び、可視領域において透明の樹脂材料等が挙げられる。
【0052】
このようにして図9(b)に示すように、導電領域122及び導電領域121の領域部121a、引出部121b、接続部121cが形成される。
【0053】
次に、ステップ104(S104)に示すように、上部電極基板10において、引出電極を接続する(引出電極接続工程)。具体的には、レーザ光照射工程において形成された接続部121c及び導電領域122の上部電極基板10の端部の透明導電膜12上に銀ペースを塗布し引出電極131、132を接続する。尚、他の導電領域においても、同様に引出電極が接続される。
【0054】
次に、ステップ106(S106)に示すように、上部電極基板10と下部電極基板20とをスペーサ31等を介し、相互の透明導電膜12及び22が対向するように張合わせる(張合工程)。尚、上部電極基板10及び下部電極基板20には、各々の端部にフレキシブル基板14及び27が接続されている。
【0055】
これにより、本実施の形態におけるタッチパネルが作製される。
【0056】
尚、導電領域を形成するために除去される透明導電膜12の幅は、1mm以下であることが好ましい。タッチパネルにおいては、形成される導電領域の幅が広くなると、検出不能領域が多くなってしまい、タッチパネルとしての機能を十分に発揮することができない。よって、タッチパネルに接触が想定されるものが指またはペン等であり、ペン等の先端は半径0.8mm程度であることから、透明導電膜12が除去される領域の幅が1mm以下であれば、タッチパネルとしての機能に支障をきたさないものと考えられるからである。本実施の形態では、よりタッチパネルの視認性を高めるとともに、機能を高めるため、透明導電膜12が除去される領域の幅は100μm以下で形成されている。
【0057】
(レーザ光照射装置)
次に、上部電極基板10における透明導電膜12を除去するためのレーザ光照射装置について説明する。図12に透明電極膜12を除去するためのレーザ光照射装置の構成を示す。上部電極基板10は、XYZθ微動テーブル151上に透明導電膜12が上側を向くように設置する。
【0058】
一方、透明導電膜12の上方には、波長が355nmの光を発するレーザ光源152が設けられており、レーザ光はレンズ153を介し透明導電膜12の表面に集光される。尚、レーザ光源152における発光はレーザ光源制御回路156により制御されている。
【0059】
また、XYZθ微動テーブル151及びレーザ光源152は、制御回路159によりXYZθ微動テーブル制御回路155及びレーザ光源制御回路156により制御され、XYZθ微動テーブル151により上部電極基板10の位置調整が行われ、透明導電膜12における所望の位置にレーザ光が照射され、レーザ光の照射された領域の透明導電膜12が除去される。
【0060】
図13には、レーザ光源152より照射されるレーザ光のエネルギー及び周波数を変化させた場合において、レーザ光を照射した後の透明導電膜12の除去状態を示す。○は良好に除去され、△はやや良好に除去され、×は不良の状態を示す。照射されるレーザの周波数が20〜100kHzにおいて、照射されるレーザのエネルギーが40〜300μJの範囲内における条件で良好に除去されている。尚、低い周波数で低い照射エネルギーの場合には、透明導電膜12を完全に除去することができないため、導電領域間の絶縁性を十分に確保することができず不良となり、また、高い周波数で高い照射エネルギーの場合には、フィルム11まで除去されてしまい不良となってしまう。よって、照射されるレーザの周波数が80〜100kHzにおいて、照射されるレーザのエネルギーが40〜50μJの範囲内、または、照射されるレーザの周波数が20〜40kHzにおいて、照射されるレーザのエネルギーが240〜300μJの範囲内がより好ましい。
【0061】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。図14(a)において、破線で囲まれた領域を拡大したものを図14(b)に示す。本実施の形態におけるタッチパネルでは、上部電極基板10における透明導電膜12において、導電領域221と導電領域222からなる導電領域のパターンを反転させたパターンが上側にも形成されており、縦方向に並ぶ4つの導電領域のパターンと同様のパターンが横方向に8列形成されている。
【0062】
図14(b)に示されるように、2つに分割された透明導電膜12の一方を導電領域221、他方を導電領域222とした場合、他方の導電領域222は、上部電極基板10の長手方向に沿った四辺の1つの辺と接しており、一方の導電領域221は、上部電極基板10の四辺のうち長手方向に沿った辺とは接していない。このため、一方の導電領域221の領域部221aから、上部電極基板10の長手方向に沿った辺の端まで延びる引出部221bを形成する。更に、引出部221bの上部電極基板10の四辺の端に接する接続部221cを形成する。尚、引出部221bは、導電領域222と、導電領域222と隣接する上部電極基板10の長手方向に沿った辺と接する2つの導電領域の間に形成されるものである。よって、本来は導電領域222となる領域に形成されるものである。このため、接触位置の誤認識を防ぐためにも、引出部221bは、できるだけ細く形成することが好ましい。
【0063】
本実施の形態では、図14(b)に示すように、導電領域222において透明導電膜12を除去した透明導電膜除去領域241及び242を設けることにより、導電領域222において接触位置が検出される領域部222aと、引出電極232と接続するための接続部222cとの間に、透明導電膜除去領域241及び242により形成された抵抗部222bを形成する。
【0064】
透明電極膜除去領域241は、透明導電膜12の左側近傍を残して除去し、透明電極膜除去領域242は、透明導電膜12の右側近傍を残して除去する。これにより透明導電膜12において電気経路の長い抵抗部222bが形成される。この抵抗部222bにおける抵抗値は、引出部221bの抵抗値の値と同じとなるように調整されている。具体的には、透明導電膜除去領域241と透明導電膜除去領域242との間隔及び長さを調整することにより、引出部221bの抵抗値の値と同じとすることができる。尚、透明電極膜除去領域241及び242における透明導電膜12の除去方法はレーザ光の照射により除去する方法が好ましい。
【0065】
また、透明電極膜除去領域241及び242は、他の透明導電膜除去領域の形成される方向と一致していることが好ましく、他の透明導電膜除去領域の延びる方向の座標軸と垂直な座標における位置が一致していることが好ましい。
【0066】
このようにして、引出電極231から導電領域221の領域部221aまでの抵抗値と、引出電極232から導電領域222の領域部222aまでの抵抗値とを略同じ値とすることが可能である。
【0067】
尚、導電領域221は、接続部221cにおいて引出電極231と接続することができ、また、導電領域222は、接続部222cにおいて引出電極232と接続することができる。
【0068】
導電領域221の接続部221cと引出電極231との接続は、接続部221c上に銀ペーストを形成し接続する。同様に、導電領域222の接続部222cと引出電極232との接続は、接続部222c上に銀ペーストを形成し接続する。
【0069】
本実施の形態では、いずれの導電領域においても引出電極までの抵抗値を同じものとすることができるため、駆動回路等において抵抗等を設ける必要がなく、複数の接触位置の検出が可能なタッチパネルを低コストに提供することができる。
【0070】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0071】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、5線式の抵抗膜式タッチパネルに適用することができ、各種情報処理機器のディスプレイが、5線式の抵抗膜式タッチパネルで構成される場合に有用である。この場合の情報処理機器の例としては、携帯電話、情報携帯端末(PDA)、携帯音楽プレイヤー、携帯画像プレイヤー、携帯ブラウザ、ワンセグチューナー、電子辞書、カーナビゲーションシステム、コンピュータ、POS端末、在庫管理端末、ATM、各種マルチメディア端末等がある。
【符号の説明】
【0073】
10 上部電極基板
11 フィルム
12 透明導電膜
13 引出電極部
14 フレキシブル基板
20 下部電極基板
21 ガラス
22 透明導電膜
23 電極
24 電極
25 電極
26 電極
27 フレキシブル基板
31 スペーサ
121 導電領域
121a 領域部
121b 引出部
121c 接続部
122 導電領域
131 引出電極
132 引出電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に形成された上部導電膜を有する上部電極基板と、
第2の基板上に形成された下部導電膜を有する下部電極基板と、
前記下部導電膜おいて電位分布を生じさせるために前記下部導電膜の四辺の端部に各々設けられた4つの電極と、
を有し、前記上部導電膜と前記下部導電膜とは対向して設けられたタッチパネルにおいて、
前記上部導電膜は、前記上部導電膜にレーザ光を照射し除去することにより、縦方向に3分割以上、かつ、横方向に3分割以上に分割された複数の導電領域を有し、
前記上部電極基板の四辺のうちいずれの辺とも接していない導電領域は、前記四辺のうち一辺に延びる上部導電膜からなる引出部を有しており、
前記下部導電膜と前記上部導電膜との複数の接触位置における各々の座標位置を検出することを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記レーザ光により前記上部導電膜の除去される領域の幅は、100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記四辺のうち一辺と接する導電領域には、前記一辺の側の近傍において、前記上部導電膜にレーザ光を照射し除去することにより形成された導電膜除去領域を有する抵抗部を形成し、
前記引出部における抵抗値と前記抵抗部における抵抗値とは略等しいものであることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記導電膜除去領域の幅は、100μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記上部導電膜における表面の反射率と、前記第2の基板における表面の反射率との差は、1%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記導電領域は、長方形状又は正方形状であって、長辺又は一辺の長さが25mm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項7】
上部導電膜は透明導電膜であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項8】
下部導電膜は透明導電膜であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項9】
第1の基板上に形成された上部導電膜を有する上部電極基板と、
第2の基板上に形成された下部導電膜を有する下部電極基板と、
前記下部導電膜おいて電位分布を生じさせるために前記下部導電膜の四辺の端部に各々設けられた4つの電極と、
を有し、前記上部導電膜と前記下部導電膜とは対向して設けられたタッチパネルの製造方法において、
前記上部導電膜は、前記上部導電膜にレーザ光を照射し除去することにより、縦方向に3分割以上、かつ、横方向に3分割以上に分割された複数の導電領域及び、前記上部電極基板の四辺のうちいずれの一辺とも接していない導電領域において、前記四辺のうち一辺に延びる引出部を形成するレーザ光照射工程と、
前記上部電極基板における上部導電膜と前記下部電極基板における下部導電膜とを対向させて、所定の間隔を隔てて貼り合わせる張合工程と、
を有し、前記下部導電膜と前記上部導電膜との複数の接触位置における各々の座標位置を検出することを特徴とするタッチパネルの製造方法。
【請求項10】
前記四辺のうち一辺と接する導電領域には、前記一辺の側の近傍において、前記上部導電膜にレーザ光を照射し除去することにより形成された導電膜除去領域を有する抵抗部を形成し、
前記引出部における抵抗値と前記抵抗部における抵抗値とは略等しいものであることを特徴とする請求項9に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項11】
前記レーザ光照射工程において照射されるレーザ光の波長は、前記上部導電膜を構成する材料が前記レーザ光を吸収する波長であることを特徴とする請求項9または10に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項12】
前記波長は355nmであることを特徴とする請求項11に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項13】
前記レーザ光照射工程において除去される上部導電膜の幅は100μm以下であることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項14】
前記レーザ光照射工程において、前記レーザ光はパルス照射されるものであって、前記パルス照射の周波数は、20kHz以上、100kHz以下であって、照射される前記レーザ光のエネルギーは、40μJ以上、300μJ以下であることを特徴とする請求項10から13のいずれかに記載のタッチパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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