説明

タッチパネル式の入力デバイス

【課題】各ユーザが、自分に適した条件で快適に入力を行なうことができるタッチパネル式の入力デバイスを提供する。
【解決手段】入力デバイスは、調整値に基づき挙動を変化させることが可能な、タッチパネルを備えた入力デバイスであって、ユーザ毎に当該ユーザのための調整値を取得し、ユーザごとにサーバに保存するステップ220と、ユーザのログイン情報に基づいてユーザ認証を行なうステップ202と、ユーザが認証されたことに応答して、当該認証されたユーザに対応する調整値をステップ220による保存先から読出し、読出された調整値にしたがって、入力デバイスの各部の挙動、特にタッチパネルの応答を設定するステップ208とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タッチパネル式の入力デバイスを備えた装置に関し、特に、ユーザの入力の癖にあわせて、タッチパネルの応答等の挙動を調整できる入力デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置等、オフィス及び公共の場で使用される装置には、通常のコンピュータのようにキーボード及びマウス等の入力デバイスではなく、タッチパネル式の入力デバイスを用いたものが多い。モニタとキーボード及びマウスとの組合せに比べ、タッチパネルを用いた入力デバイスの場合には、操作が直感的にわかりやすいという利点があるためであると思われる。
【0003】
しかし、マウスを用いる場合と異なり、タッチパネルの場合には固有の問題がある。タッチパネル式の入力デバイスを備えた装置では、導入後初めて利用する場合、及び、経時変化又は環境等によりパネル上の基準点がずれてきた場合等、その基準位置を調整する必要がある。
【0004】
基準位置を調整する方法として、特許文献1に記載された方法がある。特許文献1に記載された画像形成装置では、タッチパネルの調整モードが準備されている。この画像形成装置は、調整モードでは、タッチパネルの画面上に基準位置となる複数箇所を“+”又は“×”記号で表示する。指又はタッチペン等でこれら基準マーク位置が順にタッチされると、それらタッチされた位置の座標が検出される。検出された座標位置を示す情報と、記号の表示位置との関係を示す情報が、タッチパネルの調整値として装置内のメモリに保存される。
【0005】
この特許文献1によれば、タッチパネルを物理的に押した位置と認識する位置との間の補正量を、ユーザ自身が簡単に設定できる。
【0006】
なお、こうした補正量は、単に機械の調整という目的だけではなく、使用する個人によるタッチ時の癖を補正するためのものでもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−263275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
携帯端末及び電子書籍等の、主として個人が専用する端末であれば、タッチパネルの調整値はその個人に固有のものでよい。しかし、前述の画像形成装置等、不特定多数の利用者が使用する端末においては、各利用者の操作の特性によりタッチパネルの応答が変わってくる。極端な場合、指の大きさが違っても、応答が変化する。そのため、特に不特定多数の利用者が使用する装置では、結果としてどのユーザにも適した条件でタッチパネルを動作させることは難しい。そのため、多くのユーザにとって非常に使い勝手が悪いという問題がある。
【0009】
例えばフリック操作及びダブルタップ等において、個人の癖により、タッチパネルの検出する出力にかなりばらつきが生じることが知られている。ここでフリック操作とは、タッチパネルの表面に指等を触れさせてから軽く払う操作をいう。ダブルタップ操作とは、タッチパネルの同じ位置を短い間隔で2度タップすることをいう。フリック操作の場合、指を払うときの指の移動速度、移動量、及び移動方向に個人差が生じることが知られている。ダブルタップ操作の場合には、2回のタップの間の位置の移動量、タップ間の時間間隔、指と表示面とのタッチが継続している時間等に個人差が生じることが知られている。これらの個人差を的確に処理できるようにタッチパネルを調整することは難しく、その結果、こうした操作においてユーザによる入力をシステムが誤って解釈することがあるという問題がある。
【0010】
さらに、事業所等では、タッチパネル式の入力デバイスを持つ電子機器が複数個使用されている場合がある。各電子機器はいずれも多数のユーザにより使用されるので、特定の個人に適した設定で入力デバイスを使用することは困難である。別の装置を使用するたびに入力デバイスの応答が変化するため、ユーザにとってそうしたシステムは使用する際の感覚が好ましくないという問題がある。
【0011】
このような問題は、タッチパネルの応答に限らない。各ユーザが電子機器の挙動に関する設定を行なうようにすると、他人が行なった設定を自分の好みに設定し直す必要があり、結局どのユーザにとっても使いやすいものではなくなってしまう。
【0012】
したがって本発明は、タッチパネル式の入力デバイスを備えた電子機器において、各ユーザが、自分に適した条件で快適に入力を行なうことができる入力デバイスを提供することを目的とする。
【0013】
本発明の別の目的は、タッチパネル式の入力デバイスを備えた電子機器において、各ユーザが自分に適した条件で快適に操作でき、かつ管理も容易な入力デバイスを提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、複数の電子機器を有するシステムにおいて、異なる電子機器でも同じ条件で快適に入力できるタッチパネル式の入力デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の局面に係る入力デバイスは、タッチパネル調整値に基づき挙動を変化させることが可能な、タッチパネルを備えた入力デバイスであって、ユーザ毎に当該ユーザのための調整値を取得し、入力デバイスとは独立した記憶装置にユーザ毎に保存する第1の保存手段と、ユーザのログイン情報に基づいて、入力デバイスを持つ装置の利用に関するユーザ認証を行なうユーザ認証手段と、ユーザ認証手段によりユーザが認証されたことに応答して、当該認証されたユーザに対応する調整値を記憶装置から読出し、読出された調整値にしたがって入力デバイスの挙動を設定する調整値設定手段とを含む。
【0016】
第1の保存手段は、ユーザ毎に調整値を取得し、ユーザ毎に保存する。ユーザのログイン時にユーザ認証手段による認証が成功すると、調整値設定手段が、そのユーザに対応して記憶装置により保存されていた調整値を読出し、調整値にしたがって入力デバイスの挙動を設定する。
【0017】
入力デバイスの挙動がユーザ毎に異なる調整値により調整されるので、各ユーザは自分に適した条件で入力デバイスを使用できる。複数のユーザが使用する入力デバイスであっても、各人に適した条件で挙動が調整されるので、ユーザは入力デバイスを快適に使用できる。
【0018】
好ましくは、調整値は、タッチパネルの応答を調整するためのタッチパネル調整値を含む。調整値設定手段は、ユーザ認証手段によりユーザが認証されたことに応答して、認証されたユーザに対応するタッチパネル調整値を記憶装置から読み出し、読出されたタッチパネル調整値に従ってタッチパネルの応答を調整する。
【0019】
入力装置の各部の中で、ユーザの相違による挙動の変化が最も大きなものはタッチパネルである。タッチパネルの調整値をユーザ毎に取得し、入力デバイスとは独立した記憶装置に記憶しておくため、例えば異なる入力デバイスでも同じ記憶装置からタッチパネル調整値を読出し、タッチパネルを設定できる。その結果、複数のユーザが使用する入力デバイスであっても、各人に適した条件でタッチパネルを快適に使用できる。
【0020】
好ましくは、入力デバイスは、入力デバイスのみに依存し、ユーザに対しては独立した操作パラメータを取得し、保存する第2の保存手段をさらに含む。調整値設定手段は、ユーザ認証手段によりユーザが認証されたことに応答して、当該認証されたユーザに対応する調整値を記憶装置から読出し、読出された調整値にしたがって入力デバイスの挙動を設定する第1の設定手段と、入力デバイスの動作時に、第2の保存手段による操作パラメータの保存先から操作パラメータを読出し、当該操作パラメータにしたがって入力デバイスを設定する第2の設定手段とを含む。
【0021】
入力デバイスのみに依存し、ユーザには依存しない操作パラメータは、第2の保存手段により保存され、入力デバイスの機能のうち、入力デバイスのみに依存する機能は第2の保存手段から読出された値にしたがって設定される。一方、ユーザに依存する操作パラメータはユーザ毎に記憶装置に保存され、入力デバイスの機能のうち、ユーザに依存する機能は記憶装置から読出された値にしたがって設定される。そのため、システム全体で統一すべき操作パラメータを保存するための記憶容量をユーザ毎に記憶する場合よりも削減しながら、システムで統一すべき部分を統一でき、システムの管理が容易になる。さらにユーザに依存する操作パラメータはユーザ毎に保存され、入力デバイスはそうしたユーザ毎の値により設定されるため、各ユーザは入力デバイスを快適に操作できる。
【0022】
より好ましくは、入力デバイスは、ユーザが携帯可能な電子機器との間のデータの読出及び書込を行なう読出及び書込手段をさらに含む。ユーザ認証手段は、読出及び書込手段により、ユーザの持つ電子機器から認証情報を読出してユーザの認証を行なう認証手段を含む。第1の保存手段は、認証手段による認証が成功したユーザ毎に、当該ユーザのための調整値を取得し、読出及び書込手段により当該ユーザの電子機器に当該調整値を書込む調整値書込手段を含む。
【0023】
ユーザが携帯可能な電子機器、例えばIC(Integrated Circuit)カード、USB(Universal Serial Bus)メモリ等に、各ユーザに固有の操作パラメータを記憶できる。電子機器の記憶容量を有効に利用しながら、ユーザが入力デバイスを快適に使用するようにできる。異なる装置でも、同種の入力デバイスを用いている場合、同じ電子機器でユーザの認証が行なわれれば、同じ操作パラメータで入力デバイスが設定される。したがってユーザは、複数の装置を、同じ操作感覚で快適に操作できる。
【0024】
入力デバイスは、ユーザの認証を行なう認証サーバと通信するための通信装置をさらに含んでもよい。ユーザ認証手段は、ユーザによるログイン情報の入力を受けて、通信装置を介して認証サーバによるユーザ認証を要求する認証装置を含んでもよい。記憶装置は、認証サーバに付属した記憶装置でもよい。第1の保存手段は、ユーザ毎に当該ユーザのための調整値を取得し、ユーザ毎に認証サーバに送信して記憶装置に保存させる調整値送信手段を含んでもよい。認証サーバは、ユーザ毎に、調整値を記憶し、認証装置により要求されたユーザ認証が成功すると、当該ユーザに対応する調整値を入力デバイスに返信する機能を持つ。調整値設定手段は、認証サーバによってユーザの認証が成功したことに応答して、認証サーバから当該ユーザの調整値を受信し、読出された調整値にしたがって入力デバイスの挙動を設定する手段を含む。
【0025】
認証サーバには、ユーザ毎の認証情報が記憶されている。そうした認証情報とともにユーザの操作パラメータを記憶しておくことにより、ユーザ毎の操作パラメータの管理が容易になる。ユーザの認証時には必ず認証サーバへのアクセスが行なわれるため、認証が成功したときの操作パラメータの読出を同時に行なうことができ、入力デバイス側の処理が簡略になる。複数の装置が同種の入力デバイスを持ち、かつ同じ認証サーバを用いて認証を行なう場合、異なる装置でも単一の認証サーバから操作パラメータが読出されるので、ユーザは異なる装置でも同じ操作間隔で快適に使用できる。
【0026】
好ましくは、調整値は、タッチパネルに対するフリック操作又はダブルタップ操作に関するパラメータを含む。
【0027】
タッチパネルにおけるフリック操作及びダブルタップ操作では、例えば操作の時間間隔、タッチパネルに対する指のコンタクト位置の移動量等、ユーザによって入力の癖がかなり異なる。これらについてユーザ毎に操作パラメータを記憶することにより、ユーザ毎に最適な条件でフリック操作又はダブルタップ操作の判定を行なうことができる。フリック操作又はダブルタップ操作を行なう際に生じる入力ミス、又はシステムによるジェスチャの判定ミスを少なくすることができ、ユーザは入力デバイスを快適に操作できる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように本発明によれば、タッチパネルを含む入力デバイスの挙動がユーザ毎に異なる調整値により調整される。各ユーザは自分に適した条件で入力デバイスを使用できる。複数のユーザが使用する入力デバイスであっても、各人に適した条件で挙動が調整されるので、ユーザは入力デバイスを快適に使用できる。同一ユーザが異なる装置にログインするときにも同じ条件で入力デバイスを使用できる。その結果、タッチパネル式の入力デバイスを備えた電子機器において、各ユーザが、自分に適した条件で快適に入力を行なうことができる入力デバイスを提供できる。
【0029】
ユーザに依存しない操作パラメータについては、ユーザ毎の操作パラメータとは別に管理される。ユーザごとにそうしたパラメータを固定的に記憶しておく必要はない。その結果、タッチパネル式の入力デバイスを備えた電子機器において、各ユーザが自分に適した条件で快適に操作でき、かつ管理も容易な入力デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の1実施の形態に係る入力デバイスを持つ画像形成装置を含むシステムの構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の1つのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に係る入力デバイスを持つ画像形成装置において、制御部で実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態に係る入力デバイスを持つ画像形成装置において、個人による入力の癖を補正するためのデータを収集する際に用いられる画面の例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る入力デバイスを持つ画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図6】第2の実施の形態に係る入力デバイスを持つ画像形成装置において、制御部で実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の説明及び図面では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0032】
[第1の実施の形態]
〈構成〉
図1を参照して、本発明の第1の形態に係る入力デバイスを持つ画像形成装置を含むシステム50は、ネットワーク52と、いずれもこのネットワーク52に接続された複数個のホストコンピュータ60,62,64、及び66と、複数個の画像形成装置100,102及び104と、プリントサーバ70と、画像形成装置100,102,104を使用するユーザの認証を行なうとともに、画像形成装置100等のユーザ毎の入力デバイスの操作パラメータを管理するためのユーザ認証サーバ68とを含む。画像形成装置100、102及び104は同様の構成を持ち、いずれもタッチパネル式の入力デバイスを持つ。以下の実施の形態では画像形成装置100を例として画像形成装置の構成及び動作を説明する。
【0033】
なお、ユーザ認証サーバ68は、ユーザが画像形成装置100等にログインするときの認証に加え、前述したとおり、画像形成装置100等のユーザ毎の入力デバイスの操作パラメータを記憶しており、画像形成装置100等にユーザがログインするときに、そのユーザの認証と同時に、認証が成功したユーザについてはその操作パラメータを画像形成装置100等に送信する機能を持つ。
【0034】
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る画像形成装置100は、原稿を画像データに変換する画像読取部110、画像データに基づき、画像を所定の媒体(典型的には記録紙)上に形成する画像形成部120、ユーザによる操作指示の入力を受ける入力デバイスである操作部130、画像形成部120に記録紙を給紙する給紙部140、及び画像形成部120により排出される用紙を保持する排紙部150を含む。
【0035】
さらに、画像形成装置100は、図1には図示していない電話回線網と、ネットワーク52とに接続されており、ネットワーク52を介してインターネットにも接続されている。画像形成装置100は、上記した画像読取部110、画像形成部120、及び操作部130に加えて、これら各部を制御する、実質的にコンピュータからなる制御部160と、制御部160に接続されたハードディスクドライブ(以下、「HDD」と呼ぶ。)162と、制御部160に接続され、画像形成装置100の入力デバイスの操作パラメータのうち、全ユーザについて共通の操作パラメータ、ユーザのデフォルトの操作パラメータ、及び画像形成装置100の制御情報等を記憶する管理部164と、画像形成部120内に記憶された画像データに対し、制御部160により指示される処理を実行する画像処理部166と、制御部160の指示にしたがい、ネットワーク52を介して他のホストコンピュータ及びユーザ認証サーバ68等と通信する通信部168と、電話回線網に接続され、制御部160の指示にしたがい、電話回線網を介して他のファクシミリ装置との間でファクシミリデータの送受信を行なうFAXモデム170と、ユーザ毎の操作パラメータを記憶する操作パラメータメモリ172とを含む。制御部160は、操作パラメータメモリ172に記憶されたユーザ毎の操作パラメータと、管理部164に記憶された共通の操作パラメータ及び制御情報に基づいて画像形成装置100の各部、特に操作部130を制御する。
【0036】
図2に示す例では、各部が制御部160に接続されているので、各部間のデータ伝送は制御部160を介して行なわれる。しかし、この構成に限定されず、データバスを備え、制御部160を含めて各部をデータバスに接続することもできる。その場合、データバスを介して、各部が制御部160による制御を受け、各部間でのデータ伝送が行なわれるようにしてもよいし、各部での間のデータの送受信については制御部160による制御とは独立に行なうようにしてもよい。
【0037】
画像読取部110は、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)112と、原稿台、自動原稿送り装置(ADF)等にセットされた原稿を検知する原稿検知センサ114とを含む。
【0038】
操作部130は、各種の入力キー(ハードウェアキー)を備えた操作キー部134と、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)等の表示パネル及びその上に配置されたタッチパネルからなるタッチパネルディスプレイ132とを含む入力デバイスである。タッチパネルは、表示パネル上のユーザにより指定された位置の座標を出力し制御部160に与える機能を持つ。
【0039】
ユーザは、操作部130を介して認証情報を入力する。認証成功後にはユーザは、操作部130を介して画像形成装置100を制御するための種々の情報を入力する。
【0040】
ユーザの認証情報の入力方法としては、ユーザ識別情報及びパスワードの直接入力、IDカードの情報読取入力、ユーザの生体情報(指紋等の)読取入力等、種々のものを用いることができる。本実施の形態では、これらのうち、ユーザ識別情報及びパスワードの入力を操作部130を用いて行なうものとするが、他の方法を用いてもよいことはもちろんである。
【0041】
本実施の形態においては、タッチパネルディスプレイとして、表示パネルの上にタッチパネルを配置した装置を用いる。タッチパネルは、抵抗膜方式、静電容量方式、電磁誘導方式、赤外線方式、表面弾性波方式等の何れの方式のものでもよい。タッチパネルディスプレイは、表示パネルの上にタッチパネルを配置した装置に限定されず、位置の入力装置が表示パネルと一体に形成された装置であってもよい。例えば、表示パネルである液晶パネルの各画素に光センサを内蔵し、光センサにより液晶パネル表面の物体を認知する装置を用いてもよい。
【0042】
以下において、「タッチ」とは、入力位置の検出装置がユーザの指示した位置を検出可能な状態になることを意味する。すなわち、「タッチ」という語は、入力デバイスにより異なる意味を持つ。ユーザが指で検出装置に接触して押圧する場合、押圧せずに検出装置に接触する場合、及び、検出装置に接触することなく近接のみする場合でも、指示位置の検出が可能であれば「タッチ」と呼ぶ。非接触型の検出装置の場合には「タッチ」とは、入力位置を検出(認知)可能な距離まで人間の体の一部(指等)が検出装置に近接した状態を意味する。
【0043】
制御部160は、操作部130に設けられたタッチパネルディスプレイ132及び入力キー等に対するユーザの操作を監視すると共に、画像形成装置100の状態に関する情報等の、ユーザに通知すべき情報をタッチパネルディスプレイ132に表示する。
【0044】
画像形成部120は、CCD112により出力される画像データを記憶するメモリ122と、メモリ122に記憶された画像データに基づき、記録紙上に画像を形成するLSU(Laser Scanning Unit:レーザ走査ユニット)等からなる印字部124とを含む。典型的には、画像形成部120は、画像読取部110が出力する画像データをメモリ122に一旦記憶する。画像形成部120はさらに、制御部160の指示にしたがってメモリ122に記憶された画像データに画像処理部166による画像処理をした後、画像データをHDD162に記憶する。画像形成部120は、画像の形成時には、HDD162に記憶された画像データをメモリ122に読出し、印字部124に伝送し、記録紙に印刷して出力する。この印字前に、メモリ122に記憶された画像データに対し、画像処理部166による画像処理を施すようにしてもよい。
【0045】
HDD162は、入力された画像データを記憶する。HDD162は大容量の記憶媒体であり、大量の画像データを随時蓄積し、随時出力ができる。HDD162を採用したことにより、画像形成装置100は、複数のユーザからの指示を効率良く処理できる。
【0046】
画像処理部166は、制御部160による制御の下で、メモリ122から画像データを読出して、指示された画像処理を実行し、その結果をメモリ122に記憶する。制御部160による指示は多くの場合操作部130を介して受けたユーザの指示に基づくものである。処理結果の画像データは、制御部160を介して、タッチパネルディスプレイ132に表示される。ユーザは処理結果の画像データをタッチパネルディスプレイ132上で確認できる。メモリ122上の画像データは、ユーザの指示を受けて、印字部124に伝送されて記録紙に印刷されたり、FAXモデム170を介して他のファクシミリ装置に送信されたり、通信部168を介してネットワーク52上の他のホスト装置に出力されたりする。
【0047】
ユーザ毎の操作パラメータとは、本実施の形態では1例として以下のようなものをいう。
【0048】
【表1】

【0049】
この表において、例えばフリックと判定するための最長コンタクト時間とは、指がタッチパネル表面に触れた後、離れるまでの指の移動軌跡をフリックと判定するための、コンタクトの最長時間のことをいう。コンタクト時間がこの最長コンタクト時間以下であればフリックと判定してもよいが、最長コンタクト時間より長ければフリックと判定されない。フリックと判定するための、コンタクト位置の最短の移動量とは、移動軌跡をフリックと判定するための、移動の開始点から終了点までの移動量の最小値のことをいう。移動量がこの値よりも小さいとそのジェスチャはフリックとは判定されない。
【0050】
移動軌跡をフリックと判定するための、コンタクト位置の弧の角度の最大値とは、移動軌跡をフリックと判定するときに、移動軌跡をはさむように移動軌跡に接する2つの半直線により形成される角度がとり得る最大値のことをいう。角度がこの値より大きければジェスチャはフリックとは判定されない。フリック方向を判定する際の、基準方向からの許容最大角度とは、x軸及びy軸の正負の方向を基準として、フリックの方向をこの基準方向のいずれであるかを判定する際の、基準方向とフリック方向との間の誤差として許される最大角度である。例えばx軸、y軸の正方向及び負方向のいずれに対しても、移動軌跡がなす角度がこの値より大きければ、x軸、y軸の正方向又は負方向のフリックとは認められない。
【0051】
ダブルタップと判定するためのタップ位置間の最長距離とは、連続する2回のタップをダブルタップと判定するか、個別の2回のタップと判定するかの空間的なしきい値である。2回のタップのタップ位置の間の距離がこの値より大きければこれらタップはダブルタップではないと判定される。ダブルタップと判定するための最長時間間隔とは、連続する2回のタップをダブルタップと判定するか、個別の2回のタップと判定するかの時間的なしきい値である。2回のタップの時間間隔がこの値より大きければこれらタップはダブルタップではないと判定される。
【0052】
移動又はパンと判定するためのコンタクト位置の最小移動数とは、移動軌跡にしたがって、選択されたオブジェクトを移動させたり、ビューを移動させたりすべきか否かに関するしきい値である。コンタクト位置がこの値より小さい場合には、選択されたオブジェクトの移動又はビュー位置の移動を生じさせない。
【0053】
一方、調整項目としては、ユーザによる明示の調整指示はないが、システムがユーザの操作の特徴を判定するために記録する統計的情報がある。例えば接触位置の指の面積等は、システムが測定できる一方、ユーザが自分で入力することはできない値である。表示されたキーをユーザが押圧するときに、指の中心位置がキーの中心位置からどの程度離れているか、についての情報もある。これらはいずれも、ユーザ入力の補正に役立つものと考えられ、統計的に記憶しておくと有用である。
【0054】
さらに、ユーザごとに管理者が設定する値もある。例えば各装置の日付/時刻の設定を変更する権限等である。これらは、ユーザ認証サーバ68に管理者が設定しておき、ユーザ認証が行なわれるたびに認証サーバから画像形成装置に送信される。
【0055】
なお、このようにユーザ毎の操作パラメータとは別に、タッチパネルディスプレイ132のみに依存するパラメータであって、ユーザには依存しないパラメータも存在する。それらは、例えば管理部164に記憶されており、画像形成装置100の電源が投入されるとともに操作パラメータメモリ172に転記される。制御部160は操作パラメータメモリ172に記憶されたパラメータにしたがってタッチパネルディスプレイ132を設定する。このように、ユーザに依存しないパラメータを管理部164に記憶しておき、操作パラメータメモリ172に転記するようにすることで、ユーザ毎にこのパラメータを記憶する容量を設ける必要がなくなる。したがって記憶容量を節約することができる。このようにユーザに依存しないパラメータとしては、タッチパネルディスプレイが判別可能なコマンドセットの指定等がある。
【0056】
〈プログラム構造〉
本実施の形態では、画像形成装置100の操作パラメータの一部がユーザ毎に設定可能である。それら操作パラメータは、ユーザ認証サーバ68にユーザ毎に保存されている。ユーザによる認証が成功すると、ユーザ認証サーバ68から画像形成装置100に対してそのユーザについて保存されている操作パラメータが送信される。画像形成装置100は、その操作パラメータを図2の操作パラメータメモリ172に記憶し、以後、その操作パラメータに基づいて画像形成装置100の各部の挙動、特に操作部130のタッチパネルディスプレイ132の応答を制御する。
【0057】
このような機能を実現するために制御部160が実行するプログラムの制御構造を図3に示す。図3を参照して、このプログラムは、画像形成装置100の電源オン時に起動し、ログイン画面をタッチパネルディスプレイ132上に表示してユーザによるログイン入力を受付けるステップ200と、ステップ200において入力されたユーザのログイン情報(ユーザID及びパスワード)をユーザ認証サーバ68に対してユーザ認証要求とともに送信し、その返答を待つステップ202と、ユーザ認証サーバ68から返信される認証結果に応答し、ユーザ認証サーバ68によるそのユーザが認証されたか否かを判定するステップ204と、ステップ204で、ユーザが認証されなかったと判定されたことに応答し、ログインエラーをタッチパネルディスプレイ132に表示し、制御をステップ200に戻すステップ206とを含む。
【0058】
ステップ202でユーザのログインが認証されると、ユーザ認証サーバ68から画像形成装置100にはそのユーザに対して保存されている操作パラメータが送信されてくる。ステップ204でログインが認証されたと判定されると、続くステップ208でこのユーザの固有の操作パラメータを操作パラメータメモリ172に記憶し、その値に基づいて画像形成装置100の各部の挙動、特に操作部130のタッチパネルディスプレイ132の応答が設定される。続くステップ210で、タッチパネルディスプレイ132には所定の初期画面が表示される。テーブル1から分かるように、このときに表示される初期画面も、ユーザの操作パラメータにより指定されるものである。
【0059】
このプログラムはさらに、ステップ210の後、ユーザによるタッチパネルディスプレイ132又は操作キー部134を用いた入力を監視し、入力があるとその入力にしたがって処理を分岐させるステップ212を含む。ステップ212で分岐対象となる処理は、タッチパネルの調整処理が選択されたときに実行されるステップ214と、このユーザの操作パラメータを設定する処理が選択されたときに実行されるステップ216と、タッチパネルの調整処理でもユーザ設定処理でもない処理が指示されたときに、指示に従った処理を実行するステップ218と、ログアウトが指示されたか、ユーザによる操作なしで所定時間が経過したときに実行されるステップ220とを含む。
【0060】
ステップ214,216及び218の場合、各処理が終了すると制御はステップ212に戻り、次のユーザ入力を待つ。ステップ220に処理が進んだ場合、ステップ220では、このセッションでユーザにより設定された操作パラメータ、又はユーザにより起動されたタッチパネルの調整処理で収集された操作パラメータがユーザ認証サーバ68に送信される。続いてこのユーザの画像形成装置100からのログアウト処理が実行され(ステップ222)、各部の設定を、管理部164(図2参照)に記憶されていたデフォルトの操作パラメータを用いて設定し直すステップ224とを含む。ステップ224の後、制御はステップ200に戻る。
【0061】
ステップ220で送信された操作パラメータを受信したユーザ認証サーバ68は、ユーザIDに関連付けて操作パラメータを保存する。すなわち、ユーザ毎に、操作パラメータがユーザ認証サーバ68に保存される。
【0062】
ステップ216での処理は、通常の入力フォームに従った処理である。例えばテーブル1の「ユーザにより設定可能な項目」に示されたものがこの処理で設定可能なものに相当する。
【0063】
ステップ214での処理は、ユーザにより任意に設定可能なものではなく、ハードウェアとユーザの入力の癖とを調整するためのものである。例えば図4(A)に示すキー入力調整画面250及び図4(B)に示すタッチ位置の調整画面270を用いる。
【0064】
図4(A)に示すキー入力調整画面250は、入力対象となるテキストが表示されるテキスト表示フィールド262と、フルキー表示260とを含む。テキスト表示フィールド262に表示されたテキストをフルキー表示260を用いてユーザが入力すると、1文字入力するたびにテキスト表示フィールド262内のテキストの該当文字が反転表示される。このようにして、まんべんなくユーザに文字を入力させることにより、キー毎によるユーザの押し癖等に関する統計的情報を得て、それをキー入力調整データとして記憶する。
【0065】
図4(B)に示すタッチ位置の調整画面270は、画面上をポイントする際のユーザの癖を示す統計的データを取得する際に用いられる。画面上の任意の位置にターゲット272を表示し、ターゲット272の位置をタッチするようにユーザに求める。ユーザがターゲット272をタッチすると、そのときタッチパネルディスプレイ132により検出された指定位置と、ターゲット272の表示位置とのずれから、ユーザの入力の癖とハードウェア的な経時変化等とをあわせた調整データが統計的に取得できる。
【0066】
図4(A)及び図4(B)に示すような画面を用いた入力時の癖の把握は、例えばPDA(Personal Digital Assitant)等においては従来の技術でも既に行なわれているものである。
【0067】
〈動作〉
以上説明した第1の実施の形態に係る画像形成装置100は以下のように動作する。画像形成装置100の電源が投入されると、図2に示す制御部160は画像読取部110、画像形成部120、操作部130、HDD162及び画像処理部166等、画像形成装置100を構成する各モジュールを初期化し、タッチパネルディスプレイ132上に所定のログイン画面を表示する(図3のステップ200)。ユーザがユーザID及びパスワードを入力すると、制御部160は通信部168を介してユーザIDとパスワードとをユーザ認証サーバ68に送信し、ユーザ認証サーバ68からの認証結果を待つ。
【0068】
ユーザ認証サーバ68は、ユーザID及びパスワードを受信すると、ユーザログイン情報により当該ユーザのログインを認証するか否かを決定し、結果を制御部160に送信してくる。このとき、ログイン情報が正当なものでなければユーザ認証サーバ68はログイン失敗を示す情報を制御部160に送信してくる。図3のステップ204での判定がNOとなるため、制御部160はステップ206でログインエラーを表示し、再びログイン待ち状態となる(ステップ200)。一方、ログイン情報が正当なものであればユーザ認証サーバ68は、該当するユーザの操作パラメータをHDD等の記憶装置から読出し、ログイン成功のメッセージとともに画像形成装置100に対して送信してくる。ステップ204の判定はこの結果YESとなる。
【0069】
ステップ208では、ユーザ認証サーバ68から受信した操作パラメータを、図3の操作パラメータメモリ172に記憶し、その操作パラメータにしたがって画像形成装置100の各部の挙動、特に操作部130のタッチパネルディスプレイ132の応答が設定される。典型的には、タッチパネルディスプレイ132における入力の癖にあわせ、タッチパネルディスプレイ132が検出したタッチ位置をどのように補正するかについての補正値が制御部160中に設定される。
【0070】
ステップ210では、ユーザ毎の初期画面が表示される。この初期画面は、ステップ208で設定された値により決められる。
【0071】
続いて制御部160は、タッチパネルディスプレイ132を介して与えられるユーザの入力を監視する処理を開始する。ユーザの入力があると、その入力位置に対して操作パラメータにしたがった補正を行ない、その値と、タッチパネルディスプレイ132に表示された各項目の表示位置とを比較することでユーザの指示を解釈する。
【0072】
例えばユーザがタッチパネルの調整処理を選択すればステップ214の処理が行なわれる。ステップ214での調整により得られた値は、図2の操作パラメータメモリ172内の該当項目に記憶される。制御部160は、この値にしたがってタッチパネルディスプレイ132の出力を解釈するように直ちに調整値を処理に反映させる。その結果、タッチパネルディスプレイ132の挙動がこの値にしたがって変化する。ユーザがユーザ毎のパラメータ設定を選択した場合には、ステップ216の処理が実行される。項目毎にユーザの選択した値が入力されると、その値は図3の操作パラメータメモリ172に項目毎に記憶される。
【0073】
一方、タッチパネルの調整処理及びユーザ毎のパラメータの設定処理のいずれでもない処理が選択された場合、ステップ218が実行される。処理が終了すると再びユーザの入力待ちとなる。
【0074】
ユーザがログアウト処理を選択したとき、又はユーザによる入力がなく所定時間(例えば5分)が経過すると、ステップ220の処理が実行される。ステップ220では、操作パラメータメモリ172に記憶されていた操作パラメータがユーザ認証サーバ68に送信される。ユーザ認証サーバ68はこの操作パラメータを受信すると、ユーザIDと関係付けて記憶する。制御部160はステップ222でユーザのログアウト処理を行ない、ステップ224で操作パラメータメモリ172に管理部164に記憶されていたデフォルトの値を転記する。この後、制御部160は画像形成装置100の各部を操作パラメータメモリ172に記憶された値で再設定する。この結果、画像形成装置100の各部はデフォルトの値によって再設定される。
【0075】
以上のように本実施の形態によれば、ユーザによるタッチパネルディスプレイ132の調整パラメータが、ユーザ認証サーバ68に保存される。ユーザが画像形成装置100にログインすると、ユーザ認証サーバ68からそのユーザの操作パラメータが画像形成装置100に送信され、画像形成装置100のタッチパネルディスプレイ132及び制御部160がその調整値にしたがって設定される。タッチパネルディスプレイ132の調整パラメータがユーザ毎に別々に管理されるため、各ユーザはタッチパネルディスプレイ132を自分にとって最適な条件で操作できる。さらに、ユーザが画像形成装置100ではなく別の画像形成装置、例えば画像形成装置102にログインしたときにも同じ調整パラメータでタッチパネルディスプレイ132及び制御部160が設定される。別々の画像形成装置においても、ログインしたユーザが同じであれば、同じ調整パラメータを用いてタッチパネルディスプレイ132及び制御部160が調整される。その結果、異なる画像形成装置でもユーザは同じ操作感覚でタッチパネルディスプレイ132を操作できる。
【0076】
[第2の実施の形態]
上記した実施の形態では、ユーザ毎の操作パラメータがユーザ認証サーバ68によりユーザ毎に管理されている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、各ユーザが画像形成装置100等を利用するときにICカードを用いてログイン処理を行なうことが想定されるシステムでは、ICカード内にそのICカードを保持するユーザに対応する操作パラメータを記憶させることができる。以下、そのような実施の形態を説明する。
【0077】
図5に、この第2の実施の形態に係る電子機器の一例である画像形成装置300のハードウェア構成をブロック図形式で示す。図5を参照して、この画像形成装置300が図2に示す画像形成装置100と異なるのは、画像形成装置100のハードウェア構成に加え、ユーザのログイン時にICカード312からユーザのログイン情報及びユーザの操作パラメータを読取る処理を行ない、ユーザによるタッチパネルの調整又はユーザ毎のパラメータの設定が行なわれたときには、更新後の操作パラメータをICカード312に記憶させるために、ICカード312との間のデータの読出及び書込を行なうためのカードリーダ/ライタ310を含む点である。
【0078】
さらに、本実施の形態では、制御部160により実行されるプログラムの構造も、第1の実施の形態のものと異なる。第2の実施の形態のプログラムの制御構造を図6に示す。
【0079】
図6を参照して、このプログラムは、画像形成装置100の電源オン時に起動し、カード情報の入力受付画面をタッチパネルディスプレイ132上に表示してユーザによるログインの試行(ICカード312にユーザがICカード312をかざすこと)を受付けるステップ330と、ステップ330でカードリーダ/ライタ310がICカードユーザによるログインの試行を検出したときに、ユーザのログイン情報及びユーザ固有の操作パラメータをICカード312から読出すステップ332と、ステップ332においてカードから読出されたログイン情報をユーザ認証サーバ68に送信し、その返答を待つステップ334と、ユーザ認証サーバ68からの返信に応答し、ユーザ認証サーバ68によりユーザが認証されたか否かを判定するステップ336と、ステップ336でユーザが認証されなかったと判定されたことに応答し、ログインエラーをタッチパネルディスプレイ132に表示し、制御をステップ330に戻すステップ338とを含む。
【0080】
ステップ332では、ユーザのログイン情報だけではなく固有の操作パラメータもICカード312から読出す。これは、ユーザがICカード312をカードリーダ/ライタ310に1度かざしただけでユーザのログイン及び固有の操作パラメータによるタッチパネルディスプレイ132の調整まで可能にするためである。ユーザ固有の操作パラメータを読出すため、ログイン情報の読出しとは別にICカード312をカードリーダ/ライタ310にもう1度かざすことを求めるのは、あまり好ましくない。
【0081】
ステップ336でユーザのログインが認証されると、制御部160は、続くステップ340でこのユーザの固有の操作パラメータを操作パラメータメモリ172に記憶し、その値に基づいて画像形成装置100の各部の挙動、特に操作部130のタッチパネルディスプレイ132の応答が設定される。続くステップ210で、タッチパネルディスプレイ132には所定の初期画面が表示される。テーブル1から分かるように、このときに表示される初期画面も、ユーザの操作パラメータにより指定されるものである。
【0082】
このプログラムはさらに、ステップ210の後、ユーザによるタッチパネルディスプレイ132又は操作キー部134を用いた入力を監視し、入力があるとその入力にしたがって処理を分岐させるステップ212を含む。ステップ212で分岐対象となる処理は、第1の実施の形態と同様、タッチパネルの調整処理が選択されたときに実行されるステップ214と、このユーザの操作パラメータを設定する処理が選択されたときに実行されるステップ216と、タッチパネルの調整処理でもユーザ設定処理でもない処理が指示されたときに、指示に従った処理を実行するステップ218とを含む。ただし本実施の形態では、ユーザによりログアウトが指示されたか、ユーザによる操作なしで所定時間が経過したときには、図3のステップ220は実行されず、直ちにステップ222のログアウト処理が実行される。ステップ222の後、各部の設定を管理部164(図2参照)に記憶されていたデフォルトの操作パラメータにより設定し直した後、制御をステップ330に戻すステップ224が実行される点は第1の実施の形態と同様である。
【0083】
このプログラムではさらに、図3に示すものと異なり、ステップ214及びステップ216の後、制御をステップ212に戻す前に、これらステップで更新された操作パラメータでICカード312の中の操作パラメータの値を更新するステップ350を含む。前述したとおり、ICカード312はユーザが常に携帯している。通常は、ユーザは、ログイン時にICカード312をカードリーダ/ライタ310にかざすだけで、それ以後はカードリーダ/ライタ310によるデータの読出し及び更新ができない。そのため、操作パラメータの更新が行なわれたときには、改めてユーザに対してICカード312をカードリーダ/ライタ310にかざすことを求め、ユーザが指示にしたがった操作をしたときに更新後の操作パラメータをICカード312に書き戻すようにする。
【0084】
このような処理をする代わりに、ログアウト時(例えばステップ222の直前)に、ユーザに対してICカード312をカードリーダ/ライタ310にかざすことを求めるようにしてもよい。ただし、通常、ログアウトを指示した後、ユーザは、それ以後の画面の指示を見ることなく画像形成装置300を離れてしまうことが多い。したがってログアウト時にICカード312の書換をしようとしても失敗する可能性が高い。本実施の形態では、ユーザが操作パラメータの更新に相当する処理を行なったときには、その都度、ICカード312の書換を行なうようにしている。
【0085】
もちろん、例えばICカード312に代えてUSBメモリ等を用いるようにすれば、書込時に操作パラメータの更新に失敗する確率は低くなるかもしれない。しかしその場合には逆に、USBメモリのとり忘れ等が発生する恐れが生じる。したがって、本実施の形態のようにカードリーダ/ライタ310にかざすだけでデータの読出し及び更新が可能なICカード312を用い、上記したタイミングでデータの更新を行なうようにすると、そのような問題が生じる可能性を小さくできる。
【0086】
〈動作〉
本実施の形態に係る画像形成装置300の電源が投入されると、図5に示す制御部160は画像読取部110、画像形成部120、操作部130、HDD162及び画像処理部166等、画像形成装置300を構成する各モジュールを初期化し、タッチパネルディスプレイ132上に所定のカード情報の入力画面を表示する(図6のステップ330)。ユーザがICカード312をカードリーダ/ライタ310にかざすと、カードリーダ/ライタ310はICカード312からユーザのログイン情報と操作パラメータとを読出し(ステップ332)、制御部160に与える。制御部160は通信部168を介してログイン情報をユーザ認証サーバ68に送信し(ステップ334)、ユーザ認証サーバ68からの認証結果を待つ。
【0087】
ユーザ認証サーバ68は、ログイン情報を受信すると、当該ユーザのログインを認証するか否かを決定し、結果を制御部160に送信する。このとき、ログイン情報が正当なものでなければユーザ認証サーバ68はログイン失敗を示す情報を制御部160に送信してくる。図6のステップ336での判定がNOとなるため、制御部160はステップ338でログインエラーを表示し、再びログイン待ち状態となる(ステップ330)。一方、ログイン情報が正当なものであればユーザ認証サーバ68は、ログイン成功のメッセージを画像形成装置300に対して送信してくる。ステップ336の判定はこの結果YESとなる。
【0088】
ステップ340では、ステップ332でICカード312から読出した操作パラメータを、図5の操作パラメータメモリ172に記憶し、その操作パラメータにしたがって画像形成装置300の各部の挙動、特に操作部130のタッチパネルディスプレイ132の応答が設定される。典型的には、タッチパネルディスプレイ132が検出したタッチ位置をどのように補正するかについての補正値が制御部160中に設定される。
【0089】
ステップ210では、ユーザ毎の初期画面が表示される。この初期画面は、ステップ340で設定された値により決められる。
【0090】
続いて制御部160は、タッチパネルディスプレイ132を介して与えられるユーザの入力を監視する処理を開始する。ユーザの入力があると、その座標位置に対して操作パラメータにしたがった補正を行ない、補正後の座標位置と、タッチパネルディスプレイ132に表示された各項目の表示位置とを比較することでユーザの指示を解釈する。
【0091】
例えばユーザがタッチパネルの調整処理を選択すればステップ214の処理が行なわれる。ステップ214での調整により得られた値は、図2の操作パラメータメモリ172内の該当項目に記憶される。制御部160は、この値にしたがってタッチパネルディスプレイ132の出力を解釈するように直ちに調整値を処理に反映させる。タッチパネルの調整処理が終了すると、制御部160はユーザに対してICカード312をカードリーダ/ライタ310にかざすように要求する。ユーザがICカード312をカードリーダ/ライタ310にかざすと、ステップ214で更新されたタッチパネルの調整値がICカード312に書込まれる。制御はステップ212に戻る。
【0092】
ユーザがユーザ毎のパラメータ設定を選択した場合には、ステップ216の処理が実行される。項目毎にユーザの選択した値が入力されると、その値は図3の操作パラメータメモリ172に項目毎に記憶される。制御部160は、画像形成装置300の各部の設定にこの値を反映させる。パラメータ設定処理が終了すると、制御部160はユーザに対してICカード312をカードリーダ/ライタ310にかざすように要求する。ユーザがICカード312をカードリーダ/ライタ310にかざすと、ステップ216で更新された操作パラメータの値がICカード312に書込まれる。制御はステップ212に戻る。
【0093】
一方、タッチパネルの調整処理及びユーザ毎のパラメータの設定処理のいずれでもない処理が選択された場合、ステップ218が実行される。処理が終了すると再びユーザの入力待ちとなる。
【0094】
ユーザがログアウト処理を選択したとき、又はユーザによる入力がなく所定時間(例えば5分)が経過すると、制御部160はステップ222でユーザのログアウト処理を行ない、ステップ224で管理部164に記憶されていたデフォルトの値を操作パラメータメモリ172に転記する。この後、制御部160は画像形成装置100の各部の挙動を操作パラメータメモリ172に記憶された値で再設定する。この結果、画像形成装置100の各部の挙動はデフォルトの値によって再設定される。
【0095】
以上のように本実施の形態によれば、ユーザによるタッチパネルディスプレイ132の調整パラメータが、ICカード312に保存される。ユーザが画像形成装置100等にログインするためにICカード312をカードリーダ/ライタ310にかざすと、ICカード312からそのユーザの操作パラメータが画像形成装置300に読取られ、画像形成装置300のタッチパネルディスプレイ132及び制御部160がその調整値にしたがって設定される。タッチパネルディスプレイ132の調整パラメータがユーザ毎に別々に管理されるため、各ユーザはタッチパネルディスプレイ132を自分にとってもっとも適した条件で操作できる。さらに、ユーザが画像形成装置300ではなく別の画像形成装置にログインしたときにも同じICカード312を使用している限りは同じ調整パラメータでタッチパネルディスプレイ132が設定される。その結果、異なる画像形成装置でもユーザは同じ操作感覚でタッチパネルディスプレイ132を操作できる。
【0096】
なお、上記第2の実施の形態では、ICカード312及びカードリーダ/ライタ310を用いた例を説明した。しかし本発明がそのような例に限定されないことは明らかである。例えば、前述したとおりUSBメモリをICカード312に代えて使用してもよいし、ICカードを装着するとログオフ処理をするまでICカードを解放しないようなICカード・リーダ/ライタを用いるようにしてもよい。ただしこの場合、USBメモリ又はICカードをユーザが取忘れないようにすることが重要となる。
【0097】
以上のとおり本願発明によれば、タッチパネルの調整値をユーザ毎に設定可能とすることで、各ユーザに最適なタッチパネル応答を実現させることができる。また、この調整値を認証サーバ又は認証のために使用されるICカードに記憶させておくことにより、同一のユーザに対して複数マシンで同一の操作感を実現させることができる。
【0098】
なお、上記実施の形態では、例えばフリックに関するパラメータをユーザが自由に設定可能とした。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、フリック操作又はダブルタップ操作についても図4に示すような画面を準備し、ユーザにフリック操作、単なる移動操作、ダブルタップ操作、単なる2回のタップ操作等をさせることもできる。そうした処理により収集した情報を統計的に処理して、例えばフリック操作の際の移動軌跡の最長コンタクト時間を決めたり、ダブルタップの際の最長タップ間隔を決めたりすることもできる。どのようなテストによりそうした値を取得するかは、目的に応じてシステムの設計者が定めることができる。
【0099】
なお、システムによる測定値の設定と、ユーザによる設定値の変更とを併用することが可能であることはいうまでもない。
【0100】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0101】
50 システム
52 ネットワーク
60,62,64,66 ホストコンピュータ
68 ユーザ認証サーバ
70 プリントサーバ
100,102,104 画像形成装置
110 画像読取部
120 画像形成部
130 操作部
132 タッチパネルディスプレイ
160 制御部
164 管理部
172 操作パラメータメモリ
310 カードリーダ/ライタ
312 ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整値に基づき挙動を変化させることが可能な、タッチパネルを備えた入力デバイスであって、
ユーザ毎に当該ユーザのための調整値を取得し、前記入力デバイスとは独立した記憶装置にユーザ毎に保存する第1の保存手段と、
ユーザのログイン情報に基づいて、前記入力デバイスを持つ装置の利用に関するユーザ認証を行なうユーザ認証手段と、
前記ユーザ認証手段によりユーザが認証されたことに応答して、当該認証されたユーザに対応する調整値を前記記憶装置から読出し、前記読出された調整値にしたがって前記入力デバイスの挙動を設定する調整値設定手段とを含む、入力デバイス。
【請求項2】
前記調整値は、前記タッチパネルの応答を調整するためのタッチパネル調整値を含み、
前記調整値設定手段は、前記ユーザ認証手段によりユーザが認証されたことに応答して、当該認証されたユーザに対応するタッチパネル調整値を前記記憶装置から読出し、前記読出されたタッチパネル調整値にしたがって前記タッチパネルの応答を設定する、請求項1に記載の入力デバイス。
【請求項3】
前記入力デバイスのみに依存し、ユーザに対しては独立した操作パラメータを取得し、保存する第2の保存手段をさらに含み、
前記調整値設定手段は、
前記ユーザ認証手段によりユーザが認証されたことに応答して、当該認証されたユーザに対応する調整値を前記記憶装置から読出し、前記読出された調整値にしたがって前記入力デバイスの挙動を設定する第1の設定手段と、
前記入力デバイスの動作時に、前記第2の保存手段による前記操作パラメータの保存先から前記操作パラメータを読出し、当該操作パラメータにしたがって前記入力デバイスを設定する第2の設定手段とを含む、請求項1に記載の入力デバイス。
【請求項4】
ユーザが携帯可能な電子機器との間のデータの読出及び書込を行なう読出及び書込手段をさらに含み、
前記ユーザ認証手段は、前記読出及び書込手段により、ユーザの持つ電子機器から認証情報を読出してユーザの認証を行なう認証手段を含み、
前記第1の保存手段は、前記認証手段による認証が成功したユーザ毎に、当該ユーザのための調整値を取得し、前記読出及び書込手段により当該ユーザの電子機器に当該調整値を書込む調整値書込手段を含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の入力デバイス。
【請求項5】
ユーザの認証を行なう認証サーバと通信するための通信装置をさらに含み、
前記ユーザ認証手段は、ユーザによるログイン情報の入力を受けて、前記通信装置を介して前記認証サーバによるユーザ認証を要求する認証装置を含み、
前記記憶装置は、前記認証サーバに付属した記憶装置であり、
前記第1の保存手段は、ユーザ毎に当該ユーザのための調整値を取得し、ユーザ毎に前記認証サーバに送信して前記認証サーバ内の前記記憶装置に保存させる調整値送信手段を含み、
前記認証サーバは、ユーザ毎に調整値を前記記憶装置に記憶し、前記認証装置により要求されたユーザ認証が成功すると、当該ユーザに対応する調整値を前記記憶装置から読出して前記入力デバイスに返信する機能を持ち、
前記調整値設定手段は、前記認証サーバによってユーザの認証が成功したことに応答して、前記認証サーバから当該ユーザの調整値を受信し、前記読出された調整値にしたがって前記入力デバイスを設定する手段を含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の入力デバイス。
【請求項6】
前記調整値は、前記タッチパネルに対するフリック操作又はダブルタップ操作に関するパラメータを含む、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の入力デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−47873(P2013−47873A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185611(P2011−185611)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】