説明

タッチパネル式入力装置および自動取引機

【課題】この発明は、健常者利用時のタッチ入力操作だけでなく、視覚障害者利用時のタッチ入力操作を可能にした入力許容性能に富むタッチパネル式入力装置および自動取引機の提供を目的とする。
【解決手段】この発明は、視覚障害者の入力利用であることを指示する指示手段と、この指示手段が視覚障害者であることを指示したとき、タッチ入力操作面を点字入力操作面に切換える入力切換え手段と、点字入力操作面に入力された入力操作位置を検出する検出手段とを備えたタッチパネル式入力装置であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動券売機、自動精算機、自動預金支払機等の接客パネルに設置されるようなタッチパネル式入力装置に関し、さらに詳しくは視覚障害者のタッチ入力操作を可能にしたタッチパネル式入力装置および自動取引機に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動券売機等の自動取引機は、接客パネルにCRTやプラズマディスプレイ等の表示器を設置して取引内容や操作手順を表示案内する他、この表示画面に指先を直接触れて入力操作を許容するタッチ入力機能を備えた表示器を用いることにより、豊富な情報を効率よく表示案内して容易に入力操作させることができ、また入力装置の簡素化を図っている。
【0003】しかし、このタッチ入力兼用に利用されるタッチ式の表示器は健常者を対象として構成されているため視覚障害者は利用できず、視覚障害者の社会参加を拒んでしまう。このため、視覚障害者等の全ての人に利用可能なタッチ入力式の表示器の開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこでこの発明は、健常者用のタッチ入力操作面だけでなく、視覚障害者用のタッチ入力操作面に切換え利用可能に設けることにより、視覚障害者のタッチ入力操作を可能にしたタッチパネル式入力装置および自動取引機の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、視覚障害者の入力利用であることを指示する指示手段と、この指示手段が視覚障害者であることを指示したとき、タッチ入力操作面を点字入力操作面に切換える入力切換え手段と、点字入力操作面に入力された入力操作位置を検出する検出手段とを備えたタッチパネル式入力装置であることを特徴とする。
【0006】請求項2記載の発明は、点字ドットを変化させる可動形の点字ユニットを複数個配設して点字入力操作面を構成したことを特徴とする。
【0007】請求項3記載の発明は、点字入力操作面をフィルム状の点字シートで構成したことを特徴とする。
【0008】請求項4記載の発明は、点字入力操作面に指先が一定時間接触することに基づいて入力指定された座標位置を特定する検出手段を備えたことを特徴とする。
【0009】請求項5記載の発明は、確定ボタンを押下することに基づいて入力指定された座標位置を特定する検出手段を備えたことを特徴とする。
【0010】請求項6記載の発明は、タッチパネル式入力装置を備えた視覚障害者利用機能付きの自動取引機であることを特徴とする。
【0011】
【作用】この発明によれば、視覚障害者の入力利用を指示手段により指示すると、この指示に基づいて入力切換え手段がタッチ入力操作面を点字式のタッチ入力操作面に切換え、この切換えられたタッチ入力操作面に入力指定した入力操作位置を検出手段が検出する。
【0012】また、視覚障害者が入力操作するとき、点字ドットを変化させる可動形の点字ユニットを複数個配設して点字式のタッチ入力操作面を構成し、この点字式のタッチ入力操作面を用いて入力操作する。
【0013】同じく、視覚障害者が入力操作するとき、フィルム状の点字シートで構成した点字式のタッチ入力操作面により入力操作する。
【0014】また、視覚障害者が入力操作した入力指定位置を検出するとき、点字式のタッチ入力操作面に指先が一定時間接触することに基づいて検出手段が入力指定された座標位置を特定する。
【0015】同じく、視覚障害者が入力操作した入力指定位置を検出するとき、確定ボタンを押下することに基づいて検出手段が入力指定された座標位置を特定する。
【0016】さらに、タッチパネル式入力装置を備えた自動取引機を用いて健常者および視覚障害者の全ての利用者の取引利用を許容する。
【0017】
【発明の効果】この結果、健常者はタッチ入力操作面を利用して入力操作を行うことができ、視覚障害者は点字式のタッチ入力操作面を利用して入力操作を行うことができるため、これらタッチ入力操作面を使い分けて両者の入力操作を許容する入力操作性能の高い入力兼用装置として自動券売機、自動精算機、自動預金支払機等の各種の自動取引機に広く適用することができる。ことに、点字式のタッチ入力操作面は表示画像と同等の豊富な情報を点字出力して伝達できるため、視覚障害者はタッチ操作して豊富な情報が簡単に得られ、この情報から特定の内容を容易に選択指定して入力操作することができる。また、入力操作面を健常者用と視覚障害者用とに切換えて、同位置で入力操作ができるため、両者の入力操作位置を共用でき、一箇所で効率よく入力操作スペースを構成できる。
【0018】
【実施例】この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。図1および図2は視覚障害者利用機能付き自動券売機11を示し、この視覚障害者利用機能付き自動券売機11は前面上方から下方にかけて稼動モード表示器12と、タッチ入力表示器13と、カード挿入口14と、点字表示器15と、硬貨投入口16と、紙幣挿入口17と、券放出口18と、釣銭放出口19とを配設している。
【0019】上述の稼動モード表示器12には健常者用の「通常モード」か、あるいは視覚障害者用の「視覚障害者モード」かのいずれかを表示案内して、後続客に自動券売機の利用状況を知らせる表示機能を持たせている。このため、「通常モード」であれば、健常者利用のため後続客は直ぐに券の購入操作ができることが判り、「視覚障害者モード」であれば、取引時間が長引くことが明らかなため、他の自動券売機を利用するなどの適切な処置がとれる。
【0020】図3はタッチ入力表示器13を示し、このタッチ入力表示器13はCRT(ブラウン管)31と、光学式タッチパネル32と、点字スライダ33とから構成され、CRT31には券売利用内容や操作手順等の券売情報を表示案内し、この表示案内を見て健常者は券購入利用内容を順次タッチして入力指定する。このタッチ入力した際に、CRT31の周縁部に設置した光学式タッチパネル32でタッチ操作した指先34の操作位置を光学的に読取って、表示画像に応じたタッチ入力位置を特定している。
【0021】また、視覚障害者用の点字スライダ33を、CRT31の前面位置35と退避位置36とにスライド許容して配設している。37は点字スライダ駆動ローラである。
【0022】この点字スライダ33は、CRT31の表示画面の略全面を覆う大きさを有し、このスライダの前面には、図4に示すように、視覚障害者操作用の6点式の可動点字ユニット38を縦横に多数配設して、文字、数字、記号等の様々な点字ドットパターンを表現可能な6個1組の点字ドット39…を配設している。
【0023】また、6点式の可動点字ユニット38は、図5に示すように、各点字ドット39…を固定するのではなく、出没駆動用のマイクロソレノイド40と初期位置復帰用のスプリング41とを備えてパネル表面より出没自在に構成している。通常はスプリング41の外方付勢力を受けて点字ドット39がユニット外表面の指接触パネル42より突出したドット突出位置に有り、この突出状態からマイクロソレノイド40をON操作すると、点字ドット39はスプリング41の付勢力に抗して指接触パネル42の表面より没入し、これら6個の点字ドット39…を出没させて様々な点字ドットパターンに形成することにより多数の点字ドット文字を形成する。
【0024】このように、可動点字ユニット38は自動切換え形に設けられ、一つの可動点字ユニット38で多数の点字ドットパターンを表現する機能を有しているため、健常者が視認利用するCRT31で表示する画像情報と同等の情報を点字スライダ33で表現することができ、視覚障害者に豊富な情報を伝達することができる。また、自動券売機11の前面に配置される点字表示器15は、これを指先で押すことによりON信号が入力され、視覚障害者の券購入利用と判定する。
【0025】図6は視覚障害者利用機能付き自動券売機11の制御回路ブロック図を示し、CPU61はROM62に格納されたプログラムに沿って各回路装置を制御し、その制御データをRAM63で読出し可能に記憶する。
【0026】CPU61は稼動モード表示器12に、通常モードと視覚障害者モードとの利用客に対応した稼動モードを切換え可能に表示案内し、またCRT31には健常者の取引利用案内や券売時の取引手順を表示する。
【0027】また、視覚障害者が券購入開始に伴って点字表示器15に触れたとき、この点字表示器15の内部に備えたマイクロスイッチ等のON信号に基づいてCPU61は視覚障害者の利用開始を検知する。この視覚障害者の利用開始を検知すると、CPU61は点字スライダ33をCRT31の前面位置35にスライドさせて導き、タッチ入力表示器13を視覚障害者用のタッチ入力操作に切換える。通常は、点字スライダ33を退避位置36に退避させて、健常者のタッチ入力操作用に設定している。
【0028】ところで、点字スライダ33の各可動点字ユニット38…に対しては、点字出力した点字ドットパターンの一つに視覚障害者が一定時間指先34を置いたとき、その指先34の置かれた可動点字ユニット38の位置を入力指定と判定してCPU61は光学式タッチパネル32の検知光線によりその座標位置を特定する。これにより、視覚障害者のタッチ入力操作を許容している。このタッチ入力操作が行われる毎に、次の情報入力用の点字ドットパターンを形成して順次入力操作が行なわれるようにしている。
【0029】この他、点字ドットパターンの入力操作毎の切換えに際しては、一定時間指先を置いて切換える以外に、視覚障害者専用の入力確定キーを設け、この確定キーのキー操作により次の入力操作面に手動で切換えるように設定することもできる。また、CPU61は健常者への表示案内および健常者や視覚障害者が入力操作するための接客操作部64を制御して、顧客の券購入操作を許容している。
【0030】このデータ処理系に対し、媒体を直接操作する媒体処理系に装備される券処理部65は購入指定された券に券情報を記録して券を発行処理し、視覚障害者が購入操作したときは割引情報等の障害者情報を書込んで発券処理する。また、紙幣処理部66は券購入時に投入された紙幣を受付けて入金処理し、釣紙幣が必要な場合は釣紙幣を放出する。また、硬貨処理部67は券購入時に投入された硬貨を受付けて入金処理し、釣硬貨が必要な場合は釣硬貨を放出する。同じく、カード処理部68は券購入時に投入されたプリペイドカードの価値データを読取り、この価値データから購入指定された券の金額分を減額処理してプリペイドカードを返却する。このとき、視覚障害者がカード利用した場合は、プリペイドカードに障害者情報を書込み、次回からは障害者情報を読取って自動的に視覚障害者モードに切換える。
【0031】このように構成された視覚障害者利用機能付き自動券売機11の券売処理動作を図7のフローチャートを参照して説明する。今、自動券売機11で券の購入利用がなされたとき、健常者利用の場合は点字表示器15が利用されないため、CPU61は通常モードと判定して同モードの操作手順による券売処理を実行する(ステップn1 〜n2 )。
【0032】これに対し、点字表示器15が利用された場合は、視覚障害者の券購入利用と判定してCPU61は稼動モード表示器12に視覚障害者モードを表示案内し、後続客に取引時間がかかることを視認させ(ステップn3 )、この視覚障害者の利用に伴ってCPU61は点字スライダ33をCRT31の前面に位置させて視覚障害者用のタッチ入力操作面に切換え、CRT31と同一内容の情報を点字出力させる(ステップn4 〜n5 )。
【0033】この点字出力された点字スライダ33上のいずれかの入力指定位置に一定時間指先34が置かれたことを光学式タッチパネル32が検知すると(ステップn6〜n7 )、CPU61は視覚障害者によるタッチ入力操作がなされたと判定し、続いて次の点字画面に切換える。これを繰返して視覚障害者による入力操作が完了すると(ステップn8 〜n10)、CPU61は購入料金の投入を待って待機し、この購入料金の投入を確認するとCPU61は視覚障害者が購入指定した券に障害者情報を記録して発券処理し、お釣があれば釣銭を放出して視覚障害者による一発券処理が終了する。また、このとき視覚障害者の券購入操作に誤操作がある場合は、その誤操作内容を点字スライダ33に明瞭に表示出力して再入力操作を案内する(ステップn11)。
【0034】ところで、既述した点字スライダ33の可動点字ユニット38は、各点字ドット39…を指接触パネル42の表面より出没させて点字ドットパターンを切換える構成にしたが、これに限らず、図8に示すように、各可動点字ユニット81…の点字ドット82…の点字形成により各種の情報を表す点字ドットパターンを設定してなる比較的大きなフィルム状の点字シート83を複数枚設け、これを切換え許容してタッチ入力表示器の位置に設けることにより、入力手順に従って切換えられた点字シート83から定められた点字ドットパターンを読取るように構成することもできる。
【0035】上述のように、健常者の券購入時はCRTを利用して券購入操作を行うことができ、視覚障害者の券購入時は点字スライダを利用して券購入操作を行うことができるため、両者の入力操作を許容する入力操作性能の高い入力装置として自動券売機、自動精算機、自動預金支払機等の各種の自動取引機に広く適用することができる。ことに、点字スライダのタッチ入力操作面は表示画像と同等の豊富な情報を出力して視覚障害者に伝達できるため、視覚障害者は豊富な情報から特定の内容を選択指定して入力操作することができる。また、入力操作面を同位置で健常者用と視覚障害者用とに切換えて入力利用できるため、両者の入力操作位置を共用でき、入力操作スペースを一箇所で効率よく構成できる。
【0036】この発明と、上述の一実施例の構成との対応において、この発明のタッチパネル式入力装置は、実施例のタッチ入力表示器13に対応し、以下同様に、指示手段は、点字表示器15に対応し、点字入力操作面は、点字スライダ33に対応し、入力切換え手段は、CPU61に対応し、検出手段は、光学式タッチパネル32に対応し、可動形の点字ユニットは、可動点字ユニット38に対応し、自動取引機は、視覚障害者利用機能付き自動券売機11に対応するも、この発明は上述の一実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の視覚障害者利用機能付き自動券売機の正面図。
【図2】この発明の視覚障害者利用機能付き自動券売機の側面図。
【図3】この発明のタッチ入力表示器の操作状態を示す要部側面図。
【図4】この発明の点字スライダの点字配置状態を示す説明図。
【図5】この発明の可動点字ユニットの要部拡大縦断面図。
【図6】この発明の視覚障害者利用機能付き自動券売機の制御回路ブロック図。
【図7】この発明の視覚障害者利用機能付き自動券売機の券売処理動作を示すフローチャート。
【図8】この発明のフィルム状の点字シートを示す要部拡大斜視図。
【符号の説明】
11…視覚障害者利用機能付き自動券売機
13…タッチ入力表示器
15…点字表示器
31…CRT
32…光学式タッチパネル
33…点字スライダ
38,81…可動点字ユニット
39,82…点字ドット
61…CPU
83…フィルム状の点字シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】視覚障害者の入力利用であることを指示する指示手段と、上記指示手段が視覚障害者であることを指示したとき、タッチ入力操作面を点字入力操作面に切換える入力切換え手段と、上記点字入力操作面に入力された入力操作位置を検出する検出手段とを備えたタッチパネル式入力装置。
【請求項2】点字入力操作面は、点字ドットを変化させる可動形の点字ユニットを複数個配設して構成した請求項1記載のタッチパネル式入力装置。
【請求項3】点字入力操作面をフィルム状の点字シートで構成した請求項1記載のタッチパネル式入力装置。
【請求項4】検出手段は、点字入力操作面に指先が一定時間接触することに基づいて入力指定された座標位置を特定する請求項1、2または3記載のタッチパネル式入力装置。
【請求項5】検出手段は、確定ボタンを押下することに基づいて入力指定された座標位置を特定する請求項1、2または3記載のタッチパネル式入力装置。
【請求項6】請求項1、2、3、4または5記載のタッチパネル式入力装置を備えた視覚障害者利用機能付きの自動取引機。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【公開番号】特開平9−120254
【公開日】平成9年(1997)5月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−300581
【出願日】平成7年(1995)10月24日
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)