説明

タッチパネル用ハードコート基材およびそれを用いたタッチパネル

【課題】干渉縞の発生が抑制され、且つ、透明性、視認性に優れたタッチパネル用ハードコート基材を提供する。
【解決手段】防干渉層(53)の平均膜厚が2.0μm以上5.0μm以下であり、粒子A(53A)の屈折率と防干渉層(53)の屈折率との差が0.05以下であり、粒子B(53B)の屈折率と樹脂(530)の屈折率との差が0.05以下であり、粒子A(53A)の平均粒子径を樹脂(530)の平均膜厚で除した値が0.5以上0.8以下であり、粒子B(53B)の平均粒子径を防干渉層(53)の平均膜厚で除した値が0.1以上0.3以下であり、透明導電層(54)表面の突起のうち、高さが0.3μm以上の突起間の平均距離が20μm以上100μm以下であり、突起の最大高さが0.5μm以上5μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜式タッチパネル等に用いられるタッチパネル用ハードコート基材に係るものであり、詳しくは、タッチパネルを押圧した際に干渉縞の発生が抑制され、且つ透過性、視認性に優れたタッチパネル用ハードコート基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、抵抗膜式タッチパネル等に用いられるタッチパネル用ハードコート基材に係るものであり、詳しくは、タッチパネルを押圧した際に干渉縞の発生が抑制され、且つ透過性、視認性に優れたタッチパネル用ハードコート基材に関するものである。
【0003】
近年、CRTやLCDなどの表示装置上に配置されて表示を見ながら指やペン等で押さえることによりデータや指示・命令を入力できるタッチパネルが普及している。タッチパネルはその位置検出原理から静電容量式等の様々な方法に分類されるが、特に量産の容易さ等から抵抗膜式と呼ばれる方法が主流となっている。
【0004】
従来の抵抗膜式のタッチパネルの構成を図1に示す。上部基材(1)は絶縁性の透明な上部基板(11)と一方の面にハードコート層(12)、もう一方の面に透明導電膜(13)で構成された透明導電性シートからなり、下部基材(2)は絶縁性の透明な下部基板(21)と透明導電膜(22)で構成された透明導電性シートより成り立っている。両基材は絶縁スペーサー(3)を介して対向配置され、透明なタッチスイッチを構成している。このように構成されたタッチパネルをタッチペン又は指で押圧することにより、電極面同士が接触、導通し、その電気抵抗値の変化から位置検出が行われる。
【0005】
前記上部基板および下部基板にはポリエチレンテレフタラートのような透明なプラスチックが用いられ、前記透明導電膜としてはインジウムと錫の複合酸化物(ITO)等の金属酸化物の薄膜などが用いられている。
【0006】
タッチパネルは表示装置上に配置されるため、高い透明性が求められる。また、その入力面はボールペン等の形状に似せたプラスチック性入力ペンや爪の伸びた指等で押圧されるため、耐擦傷性や高い表面硬度(JIS−K5600−5−4における測定で3H以上)が必要とされる。一般的にハードコートの材質をアクリレートなどの紫外線硬化型樹脂とすることで十分な透明性と硬度を得ることが可能である。
【0007】
このような抵抗膜式タッチパネルにおいて、タッチパネルを押圧すると構造上、上部基材と下部基材の間隔が押圧した点に向かって連続的に狭くなる。この際、上部基材の表面反射光と下部基材の表面反射光が干渉し合い、押圧した点を中心に干渉縞(ニュートンリング)が発生し、視認性が著しく低下するという問題があった。
【0008】
このような干渉縞を抑制する方法として、例えば特許文献1、特許文献2または特許文献3のように、シリカ粒子等のフィラーを用いて表面を凹凸にした防干渉層を透明導電膜の下に設けた基材を用いる方法が知られている。その断面図を図2に示す。図2のように、防干渉性基材(4)は、基板(41)と、基板上に粒子(421)と樹脂(422)を含み凹凸形状を有する防干渉層(42)と、防干渉層表面に設けた透明導電膜(43)とからなる。このような基材を上部、下部のいずれかもしくは両方に用いることにより、基材の凹凸部位で光を散乱させ干渉縞を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−151937号公報
【特許文献2】特開2005−262597号公報
【特許文献3】特開平11−296303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この凹凸形状が小さすぎると干渉縞が抑制されず、大きすぎると干渉縞の抑制はできるが膜面の曇値(ヘイズ値)が上昇しこれに伴い透過鮮明度が低下するという問題があった。さらに用いた粒子の凝集や分散により表面の凹凸形状が不均一な状態となり、ぎらつき(シンチレーション)と呼ばれる輝点が発生し、表示画面の視認性が低下するという問題があり、干渉縞抑制能と透明性、視認性を高いレベルで兼ね備えたタッチパネル用基材は得られていなかった。
【0011】
本発明は上記の問題点に鑑み、干渉縞の発生が抑制され、且つ、透明性、視認性に優れたタッチパネル用ハードコート基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明者は上記課題を鑑み鋭意検討を行った結果、防干渉層との屈折率の差が0.05以内であり、且つ粒径が異なる粒子を2種類用いてフィルム表面に凹凸加工を施すことで、粒子同士の凝集と局在化が抑えられ良好な凹凸形状となり、高い干渉縞抑制能と透明性、視認性が得られることを見いだし、本発明に至った。
【0013】
即ち、請求項1に係る発明としては、フィルムの表面を第1面、裏面を第2面とし、該フィルムの第1面にハードコート層、第2面に粒子Aと粒子Bを有する防干渉層と透明導電層とを積層したハードコートフィルムにおいて、前記防干渉層の平均膜厚が2.0μm以上5.0μm以下であり、前記粒子Aの屈折率と前記防干渉層の屈折率との差が0.05以下であり、前記粒子Bの屈折率と前記樹脂の屈折率との差が0.05以下であり、前記粒子Aの平均粒子径を前記樹脂の平均膜厚で除した値が0.5以上0.8以下であり、前記粒子Bの平均粒子径を前記防干渉層の平均膜厚で除した値が0.1以上0.3以下であり、前記透明導電層表面の突起のうち、高さが0.3μm以上の突起間の平均距離が20μm以上100μm以下であり、前記突起の最大高さが0.5μm以上5μm以下であることを特徴とするタッチパネル用ハードコート基材である。
【0014】
また、請求項2に係る発明としては、前記粒子Aおよび前記粒子Bにおいて、いずれか片方または両方に表面処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用ハードコート基材である。
【0015】
また、請求項3に係る発明としては、全光線透過率が90%以上であり、ヘイズが3%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル用ハードコート基材である。
【0016】
また、請求項4に係る発明としては、請求項1から3のいずれかに記載のタッチパネル用ハードコート基材を用いたタッチパネルである。
【発明の効果】
【0017】
上記構成のタッチパネル用ハードコートフィルムとすることにより、干渉縞の発生が抑制され、かつ透過性、視認性に優れたタッチパネル用ハードコート基材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的な抵抗膜式タッチパネルの断面図である。
【図2】従来法の防干渉性基材断面図である。
【図3】本発明のタッチパネル用ハードコート基材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のタッチパネル用ハードコート基材について図3を用いて説明する。
本発明のタッチパネル用ハードコート基材の断面模式図を図3に示した。本発明のタッチパネル用ハードコート基材(5)は透明樹脂基板(51)の一方の面にハードコート層(52)を有し、もう一方の面に防干渉層(53)と透明導電層(54)を有するものである。前記防干渉層(53)は、樹脂(530)と粒子A(53A)と粒子B(53B)を含むことを特徴としている。
【0020】
粒子Aは主に表面の凹凸形状を形成するために用いられ、粒子Bは粒子Aの分散良化と表面の細かい凹凸形状形成のために用いられる。粒子Bを加えることにより、粒子A同士が接触する確率を減らすことができ、その結果、粒子Aの凝集を抑制することが可能となる。また、粒径の小さい粒子Bが防干渉層に加わることにより、さらに微細な凹凸が形成され干渉縞抑制能が向上する。これらの効果により、透明性と視認性を低下させることなく高い干渉縞抑制能を実現することができる。
【0021】
本発明において、前記粒子Aの屈折率と前記樹脂の屈折率との差が0.05以下であり、且つ前記粒子Bの屈折率と前記樹脂の屈折率との差が0.05以下であることが好ましい。屈折率の差が0.05を超えると、防干渉層内での内部ヘイズが大きくなり、透明性、視認性が低下してしまう。
【0022】
また、前記粒子Aの平均粒子径を前記防干渉層の平均膜厚で除した値は0.5以上0.8以下であることが好ましい。前記粒子Aの平均粒径を前記防干渉層の平均膜厚で除した値が0.5より小さい場合、形成される凹凸がそれほど大きくなく十分な干渉縞抑制能が得られない。一方、前記粒子Aの平均粒径を前記防干渉層の平均膜厚で除した値が0.8より大きい場合、形成される防干渉層の光学特性が防干渉層の膜厚変動に対して鋭敏に変化してしまい、外観不良等の発生確率が著しく上昇してしまう。
【0023】
また、前記粒子Bの平均粒子径を前記防干渉層の平均膜厚で除した値は0.1以上0.3以下であることが好ましい。前記粒子Bの平均粒径を前記防干渉層の平均膜厚で除した値が0.1より小さい場合、粒子が小さすぎ粒子を加える効果が得られない。一方、0.3より大きい場合、粒子Aの凝集を防ぐことができない。
【0024】
また、本発明において高さが0.3μm以上の突起間の平均距離は20μm以上100μm以下であることが好ましく、且つ突起の最大高さが0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。ここで、突起とは、防干渉層に含まれる粒子Aおよび粒子Bにより形成される透明導電層表面の凸形状のことをいう。高さが0.3μm以上の突起間の平均距離が10μm未満の場合、フィルムの透過率が低下するため視認性が低くなり、一方、100μmを超えると干渉縞抑制能が得られない。また、突起の最大高さが5μmを越えると、きめが粗くなるため視認性が低くなり、一方、0.5μm未満であると干渉縞抑制能が得られない。
【0025】
突起の平均距離に関しては、触針粗さ計などで得られた粗面の粗さ曲線(JIS−B−0601)において、測定長L、所定の高さを超える突起の個数をNとしたとき、L/Nで表される。また、粗面の最大高さに関しては、JIS−B−0601に基づいて測定される。
【0026】
本発明において粒子Aおよび粒子Bのいずれか、もしくは両方は疎水処理などの表面処理を施されていることが好ましい。これによって粒子同士の凝集を防ぐことができる。
【0027】
続いて本発明の製造方法について説明する。
【0028】
本発明に使用する透明樹脂基材は、特に限定されるものではなく、公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。具体的には、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、セロハン、ナイロンフィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリル系フィルム、耐熱性・エンプラ系フィルム、フッ素樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0029】
前記透明樹脂基材の厚みは、特に限定はしないが、好ましくは50μm以上500μm以下であり、より好ましくは100μm以上400μm以下である。
【0030】
本発明のハードコート層および防干渉層を形成するときに用いられるハードコート剤の主成分としては透明度や表面硬度の観点からアクリレートであることが好ましい。特に限定はしないが、透明導電層積層時の温度に耐え、透明性を維持できる樹脂が好ましい。さらに硬化後の機械特性及び透明性、耐薬品性、耐熱性はもちろんのこと、塗布加工時の低粘度化等の諸物性を考慮した場合、具体的には3次元架橋の期待出来る3官能以上のアクリレートを主成分とするモノマーもしくはオリゴマーを架橋して成る紫外線硬化性樹脂を用いてもよい。3官能以上のアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても構わない。これらの樹脂は、いずれのコート方法用いても工業的な製造を考慮すると5分以内で硬化できるものが望ましい。
【0031】
ベースとなる硬化樹脂としては1分子中に少なくとも1個以上の架橋性二重結合を有する化合物が挙げられる。例えば、光硬化型樹脂としては、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリオールアクリレートなどのアクリル系樹脂が好ましい。具体的には、架橋性オリゴマー、単官能または多官能モノマー、光重合開始剤、光開始助剤などを含むものである。
【0032】
架橋性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のアクリルオリゴマーが好ましい。具体的にはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ポリウレタンのジアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等がある。
【0033】
単官能または多官能モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリルモノマーが好ましい。具体的には2官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等がある。3官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等がある。4官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはテトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等がある。6官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等がある。
【0034】
また、防干渉層の平均膜厚は、透明樹脂基材を介して反対面に有るハードコート層のカールの強さや用いる粒子の粒径等を考慮し2.0μm以上5.0μm以下の厚みとすることが好ましい。
【0035】
本発明において、活性エネルギー線が紫外線である場合には、光増感剤(光重合開始剤)を添加する必要があり、ラジカル発生型の光重合開始剤としてベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2、2、−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4、4−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがある。これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記光重合開始剤の添加量は主成分のアクリレートに対して0.1〜5重量部であり好ましくは0.5〜3重量部である。下限値未満ではハードコート層の硬化が不十分となり好ましくない。また、上限値を超える場合は、ハードコート層の黄変が生じたり、耐候性が低下したりするため好ましくない。
【0037】
光硬化型樹脂を硬化させるのに用いる光は紫外線、電子線、あるいはガンマ線などであり、電子線あるいはガンマ線の場合、必ずしも光重合開始剤や光開始助剤を含有する必要はない。これらの線源としては高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプや加速電子などが使用できる。
【0038】
溶剤については、前記の主成分のアクリレートを溶解するものであれば特に限定しない。具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、等が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0039】
本発明に用いられる粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂といった有機粒子やシリカ、タルク、各種アルミノケイ酸塩、カオリンクレー、MgAlハイドロタルサイトなどの無機粒子から、用いる防干渉層の樹脂の屈折率との差が0.05以内に収まるのもが適宜選択される。これらは2種類以上のモノマーが共重合した共重合体であってもよい。また、粒子Aと粒子Bにおいては、上述の通り表面に疎水性処理などの表面処理をしたものを用いることが望ましい。
【0040】
フィルム基材へのコーティング方法は、特に限定されるものではないが、実用的には、ダイコーター、カーテンフローコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、スピンコーター、マイクログラビアコーター等によるコーティングが一般的である。
【0041】
透明導電層を形成する一般的な方式としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法、あるいはCVD法、塗工法、印刷法等がある。なお透明導電層の形成材としては特に制限されるものではなく、例えば、インジュウム・スズ複合酸化物(ITO)、スズ酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、クロムなどがあげられ、異なる形成材が重ねて形成されてもよい。密着性を向上させるために、上記アンダーコート層と基材フィルムとの間に単一の金属元素又は2種以上の金属元素の合金からなる金属層を設ける場合もある。金属層にはシリコン、チタン、錫及び亜鉛からなる群から選ばれた金属を用いることが望ましい。
【実施例】
【0042】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
(1)ハードコート層の塗布
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人株式会社製、125μm厚)の一方の面に下記ハードコート層用塗布液をワイヤーバーにて塗布、乾燥し、高圧水銀灯での紫外線照射により厚み5μmのハードコート層を形成した。続いてもう一方の面を下記処方の防干渉層用塗布液をワイヤーバーにて塗布、乾燥し、高圧水銀灯での紫外線照射により厚み5μmの防干渉層を形成し、ハードコートフィルムを作製した。
【0044】
〈ハードコート層用塗布液〉
電離放射線硬化型樹脂(アクリル系樹脂)
(紫光 UV−7605B:日本合成化学社:屈折率1.49) 49重量部
光重合開始材
(イルガキュア184:チバスペシャリティケミカルズ社) 2重量部
酢酸メチル 49重量部
【0045】
〈防干渉層用塗布液〉
電離放射線硬化型樹脂(アクリル系樹脂)
(紫光 UV−7605B:日本合成化学社:屈折率1.49) 39重量部
光重合開始材
(イルガキュア184:チバスペシャリティケミカルズ社) 2重量部
アクリル樹脂
(MX−350:綜研化学社:粒径3.5μm:屈折率1.49) 10重量部
シリカ粒子
(SS50F:東ソーシリカ工業:粒径1.1μm:屈折率1.44) 10重量部
酢酸メチル 39重量部
【0046】
(2)ITO成膜
前記ハードコートフィルムの防干渉層の面に、厚み20nmのITOの導電膜をスパッタリング法で形成し、本発明のタッチパネル用ハードコート基材を作製した。
【0047】
[比較例1]
実施例1において、防干渉層に用いるシリカ粒子をスチレン樹脂(SX−350H:綜研化学社:粒径3.5μm:屈折率1.59)10重量部にした以外は実施例1と同様にして、比較例1のタッチパネル用ハードコート基材を作製した。
【0048】
[比較例2]
実施例1において、防干渉層に用いる粒子をアクリル樹脂(MX−350:綜研化学社:粒径3.5μm:屈折率1.49)20重量部のみにした以外は実施例1と同様にして、比較例2のタッチパネル用ハードコート基材を作製した。
【0049】
[比較例3]
実施例1において、防干渉層に用いる粒子をシリカ粒子(SS50F:東ソーシリカ工業:粒径1.1μm:屈折率1.44)20重量部のみにした以外は実施例1と同様にして、比較例3のタッチパネル用ハードコート基材を作製した。
【0050】
[比較例4]
実施例1において、防干渉層に粒子を含まないこと以外は実施例1と同様にして、比較例4のタッチパネル用ハードコート基材を作製した。
【0051】
実施例、比較例で得られたハードコートフィルム用いて、干渉縞防止能、透明性、視認性、表面粗さについて評価した。評価結果を表1に示す。
【0052】
(1)干渉縞抑制能
実施例および比較例のハードコートフィルム2枚を使用し、防干渉層面同士を密着させて1kg/25cmにて加圧し、干渉縞が生じなかったものを「○」、生じたものを「×」とした。
【0053】
(2)透明性
実施例および比較例のハードコートフィルムのヘイズを、JIS−K7136:1997に基づいて、ヘイズメーター(NDH2000:日本電飾社)を用いて測定し、測定値が3.0%未満であったものを「○」、3.0%以上であったものを「×」とした。なお、測定は導電層を有する面から光を入射させた。
【0054】
また、実施例および比較例のハードコートフィルムの全光線透過率を、JIS−K7361:2000に基づいて、ヘイズメーター(NDH2000:日本電飾社)を用いて測定し、測定値が90%以上であったものを「○」、90%未満であったものを「×」とした。なお、測定は導電層を有する面から光を入射させた。
【0055】
(3)視認性
実施例および比較例のハードコートフィルムについて、JIS−K7105に基づいて、写像性測定器(ICM−1DP:スガ試験機社)を用いて光学くし2.0mmの像鮮明度を測定し、測定値が90%以上であったものを「○」、90%未満であったものを「×」とした。なお、測定はハードコート層を有する面から光を入射させた。
【0056】
またCRTディスプレイの表示画面をグリーン100%に画像表示させ、実施例および比較例のハードコートフィルムのハードコート面を表示画面に密着させ、ぎらつきがなかったものを「○」、ぎらつきがあったものを「×」とした。
【0057】
(4)表面粗さ
粗面の突起間の距離はJIS−B−0601に基づいて、表面粗さ計(小坂研究所SE30K)を用いて粗さ曲線を求め算出した。また粗面の最大高さはJIS−B−0601に基づいて同表面粗さ計を用いて測定した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1から明らかな通り、実施例1のタッチパネル用ハードコート基材は防干渉層において十分な凹凸が形成され高い干渉縞抑制能と透明性、視認性をもつものであった。
【0060】
比較例1のハードコートフィルムは粒子Aと防干渉層の屈折率の差が0.10であるスチレン粒子を使用したため、像鮮明度が低いものであった。
【0061】
比較例2のハードコートフィルムは粒径の小さなシリカ粒子が入っていないため、アクリル粒子の分散が悪く、干渉縞防止能は高かったものの透明性や視認性に問題があるものであった。
【0062】
比較例3のハードコートフィルムは粒径の小さなシリカ粒子のみを使用したため、十分な凹凸が形成されず干渉縞防止能が発現しなかった。
【0063】
比較例4のハードコートフィルムは、凹凸が形成されず干渉縞抑制能は発現しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のハードコート基材は、タッチパネル用の上部基材もしくは下部基材として用いられる。
【符号の説明】
【0065】
1 上部基材
11 上部基板
12 ハードコート層
13 透明導電膜
2 下部電極
21 下部基板
22 透明導電膜
3 絶縁スペーサー
4 防干渉性基材
41 基板
42 防干渉層
421 粒子
422 樹脂
43 透明導電膜
5 タッチパネル用ハードコート基材
51 透明樹脂基板
52 ハードコート層
53 防干渉層
531 ハードコート樹脂
53A 粒子A
53B 粒子B
54 透明導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの表面を第1面、裏面を第2面とし、該フィルムの第1面にハードコート層、第2面に粒子Aと粒子Bと樹脂とを有する防干渉層と透明導電層を積層したハードコートフィルムにおいて、
前記防干渉層の平均膜厚が2.0μm以上5.0μm以下であり、
前記粒子Aの屈折率と前記樹脂の屈折率との差が0.05以下であり、
前記粒子Bの屈折率と前記樹脂の屈折率との差が0.05以下であり、
前記粒子Aの平均粒子径を前記防干渉層の平均膜厚で除した値が0.5以上0.8以下であり、
前記粒子Bの平均粒子径を前記防干渉層の平均膜厚で除した値が0.1以上0.3以下であり、
前記透明導電層表面の突起のうち、高さが0.3μm以上の突起間の平均距離が20μm以上100μm以下であり、
前記突起の最大高さが0.5μm以上5μm以下である
ことを特徴とするタッチパネル用ハードコート基材。
【請求項2】
前記粒子Aおよび前記粒子Bにおいて、いずれか片方または両方に表面処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用ハードコート基材。
【請求項3】
全光線透過率が90%以上であり、ヘイズが3%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル用ハードコート基材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のタッチパネル用ハードコート基材を用いたタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−186888(P2011−186888A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52864(P2010−52864)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】