説明

タッチパネル用積層押出樹脂板およびタッチパネル用表面塗工板

【課題】表面に傷が付き難く、しかも製造が比較的容易なタッチパネル用積層押出樹脂板およびタッチパネル用表面塗工板を提供することである。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂層の少なくともタッチされる側の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなるタッチパネル用積層押出樹脂板である。前記ポリカーボネート樹脂層の厚みが全体の厚みの50%以上であることが好ましい。前記積層押出樹脂板のタッチされる側の表面に硬化膜を被覆したタッチパネル用表面塗工板である。前記硬化膜が耐擦傷性を有する硬化皮膜であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに使用される積層押出樹脂板および表面塗工板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカーナビゲーションシステム、携帯情報端末、産業機械の操作パネル、パーソナルコンピューターの画面、携帯ゲーム機等には、透明電極が付いたタッチパネルが用いられている。タッチパネルに用いられる板としては、薄いガラスの他、樹脂製のものが挙げられる。タッチパネルには、例えば指で直接触れて操作するものやタッチペンによって操作するもの等があり、透明性、耐衝撃性、軽量性、表面の傷つき難さが重要視されている。このような要望に対し、薄いガラスは耐衝撃性、軽量性に劣るため、近時、樹脂製の板が多く使用されている。
【0003】
これらの要望に対応する樹脂製の板として、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂シートの少なくとも一面に、硬さ85〜95の熱可塑性ポリウレタン樹脂層を積層したポリカーボネート樹脂積層板が記載されている。また、特許文献2には、高分子樹脂基板上に、厚みが50〜300μmであり鉛筆硬度が3H以上である活性光線硬化層(A)と、厚みが1〜20μmであり鉛筆硬度が4H以上であるハードコート層(B)とがこの順に積層されてなる高分子樹脂積層体が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている樹脂製の板は、ポリカーボネート樹脂シートに積層したポリウレタン樹脂層によってポリカーボネート樹脂シートの傷つきやすさを補うことができるものの、ポリウレタン樹脂は剛性が低いため、基材のポリカーボネート樹脂シートの影響を受けてタッチペン等で文字等を描いた際に表面が変形することがある。
【0005】
また、特許文献2に記載されている樹脂製の板は、活性光線硬化層(A)上にハードコート層(B)を積層することで、ハードコート層(B)の硬度を上昇させることができるものの、基板上に活性光線硬化層(A)とハードコート層(B)とを別々に積層する必要があることから、生産性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−205385号公報
【特許文献2】特開2001−322197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、表面に傷が付き難く、しかも製造が比較的容易なタッチパネル用積層押出樹脂板およびタッチパネル用表面塗工板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
(1)ポリカーボネート樹脂層の少なくともタッチされる側の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなることを特徴とするタッチパネル用積層押出樹脂板。
(2)前記ポリカーボネート樹脂層の厚みが全体の厚みの50%以上である前記(1)記載のタッチパネル用積層押出樹脂板。
(3)前記ポリカーボネート樹脂層の両面にアクリル樹脂層が積層されてなる前記(1)または(2)に記載のタッチパネル用積層押出樹脂板。
(4)前記アクリル樹脂層がメタクリル樹脂およびゴム状重合体からなる層である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のタッチパネル用積層押出樹脂板。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層押出樹脂板のタッチされる側の表面に硬化膜を被覆したことを特徴とするタッチパネル用表面塗工板。
(6)前記硬化膜が耐擦傷性を有する硬化皮膜である前記(5)記載のタッチパネル用表面塗工板。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層押出樹脂板は、表面に傷が付き難くいので、タッチパネル用途に好適に利用できる。また、前記積層押出樹脂板のタッチされる側の表面に硬化膜を被覆して表面塗工板とすれば、タッチペン等の先が尖ったものをタッチさせる用途に好適に利用できる。しかも、前記積層押出樹脂板は、共押出成形により得られるものであり、従来のように基板上に活性光線硬化層とハードコート層とを別々に積層する必要がないので、比較的容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態にかかるタッチパネル用積層押出樹脂板の製造方法を示す概略説明図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる金属ロールおよび弾性ロールを示す概略断面説明図である。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる弾性ロールを示す概略断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層押出樹脂板(以下、押出樹脂板と言うことがある。)は、ポリカーボネート樹脂層の少なくともタッチされる側の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなり、タッチパネルに用いられるものである。
【0013】
前記ポリカーボネート層を構成するポリカーボネート樹脂としては、例えば、二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法等で反応させることにより得られるものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法等で重合させることにより得られるもの、環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0014】
前記二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0015】
中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選ばれる二価フェノールを単独でまたは2種以上用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールAの単独使用や、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用が好ましい。
【0016】
前記カルボニル化剤としては、例えばホスゲン等のカルボニルハライド、ジフェニルカーボネート等のカーボネートエステル、二価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0017】
一方、前記アクリル樹脂層を構成するアクリル樹脂としては、一般的にメタクリル樹脂が用いられる。メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単位を主成分とするもの、具体的にはメタクリル酸メチル単位を通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上含むメタクリル酸メチル樹脂であるのが好ましく、メタクリル酸メチル単位100重量%のメタクリル酸メチル単独重合体であってもよいし、メタクリル酸メチルと、該メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体との共重合体であってもよい。
【0018】
前記メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体としては、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類が挙げられる。また、スチレンや置換スチレン類、例えばクロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類や、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン類等も挙げられる。さらに、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等も挙げられる。これらメタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
アクリル樹脂は、ゴム状重合体をブレンドして用いてもよい。これにより、積層押出樹脂板を割れ難くすることができる。特に、メタクリル樹脂にゴム状重合体をブレンドし、アクリル樹脂層を、メタクリル樹脂およびゴム状重合体からなる層とするのが好ましい。前記ゴム状重合体としては、例えばアクリル系多層構造重合体や、5〜80重量部のゴム状重合体にアクリル系不飽和単量体等のエチレン性不飽和単量体20〜95重量部をグラフト重合させてなるグラフト共重合体等が挙げられる。
【0020】
前記アクリル系多層構造重合体は、ゴム弾性の層またはエラストマーの層を20〜60重量%程度内在させるものがよく、最外には硬質層を有するものがよく、さらに最内層として硬質層を含む構造のものでもよい。
【0021】
前記ゴム弾性の層およびエラストマーの層は、ガラス転移点(Tg)が25℃未満のアクリル系重合体の層であるのがよく、具体的には、低級アルキルアクリレート、低級アルキルメタクリレート、低級アルコキシアルキルアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、ヒドロキシ低級アルキルアクリレート、ヒドロキシ低級アルキルメタクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる単官能単量体の1種以上を、アリルメタクリレート等の多官能単量体で架橋させてなる重合体の層であるのがよい。低級アルキル基としては、炭素数1〜8個程度の直鎖または分岐したアルキル基が挙げられ、低級アルコキシアルキル基としては、炭素数1〜8個程度の直鎖または分岐したアルコキシアルキル基が挙げられる。
【0022】
前記硬質層は、Tgが25℃以上のアクリル系重合体の層であるのがよく、具体的には、炭素数1〜4個のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを単独でまたは主成分として重合させたものがよい。アルキルメタクリレートを主成分として共重合体とする場合、共重合成分としては、他のアルキルメタクリレートやアルキルアクリレート、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の単官能単量体を用いてもよいし、さらに多官能単量体を加えて架橋重合体としてもよい。
【0023】
アクリル系多層構造重合体は、例えば特公昭55−27576号公報、特開平6−80739号公報、特開昭49−23292号公報等に記載されている。
【0024】
前記5〜80重量部のゴム状重合体にエチレン性不飽和単量体20〜95重量部をグラフト重合させてなるグラフト共重合体において、前記ゴム状重合体としては、例えばポリブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体ゴム、スチレン/ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム、ポリブチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリル系ゴム、エチレン/プロピレン/非共役ジエン系ゴム等が用いられる。また、このゴム状重合体にグラフト共重合させるのに用いられるエチレン性単量体としては、例えばスチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのグラフト共重合体は、例えば特開昭55−147514号公報、特公昭47−9740号公報等に記載されている。
【0025】
アクリル樹脂にゴム状重合体を分散させる場合の分散割合は、アクリル樹脂100重量部に対して、ゴム状重合体を、通常3〜150重量部、好ましくは5〜50重量部の割合で分散させる。ゴム状重合体の量があまり多いと、表面硬度が低下して好ましくない。また、ゴム状重合体の量があまり少ないと、積層押出樹脂板を割れ難くする効果が得られ難くなる。
【0026】
なお、ポリカーボネート樹脂層およびアクリル樹脂層には、それぞれ必要に応じて、例えば光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を1種または2種以上、添加してもよい。
【0027】
本発明の積層押出樹脂板は、ポリカーボネート樹脂層とアクリル樹脂層とを共押出成形で積層一体化することにより、好適に製造される。この共押出成形は、2基または3基の一軸または二軸の押出機を用いて、前述したポリカーボネート樹脂層の材料とアクリル樹脂層の材料とをそれぞれ溶融混練した後、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイ等を介して積層することにより行うことができる。
【0028】
積層一体化されたシート状ないしフィルム状の溶融積層押出樹脂板を、例えばロールユニット等を用いて冷却固化し、本発明の積層押出樹脂板を得る。以下、本発明にかかる積層押出樹脂板の製造方法の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施形態にかかる積層押出樹脂板の製造方法を示す概略説明図である。図2は、本実施形態にかかる金属ロールおよび弾性ロールを示す概略断面説明図である。図1に示すように、まず、ポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂を、それぞれ別個の押出機1,2で加熱して溶融混練しながら、共押出成形用のダイ3から押出し、積層一体化する。
【0030】
ついで、ダイ3から共押出されたシート状ないしフィルム状の溶融積層押出樹脂板4を、略水平方向に対向配置された2本の冷却ロール5に挟み込んで冷却することでタッチパネル用積層押出樹脂板11を得る。
【0031】
冷却ロール5は、図2に示すように、高剛性の金属ロール6と、外周部に金属製薄膜9を備えた弾性ロール、すなわち金属弾性ロール7とで構成されている。金属ロール6および金属弾性ロール7は、少なくとも一方がモータ等の回転駆動手段に接続されており、両ロールが所定の周速度で回転するように構成されている。
【0032】
高剛性の金属ロール6は、金属ロール6および金属弾性ロール7間で挟持された後のシート状ないしフィルム状の積層押出樹脂板11が巻き掛けられる、巻き掛けロールである。金属ロール6は、特に限定されるものではなく、従来から押出成形で使用されている通常の金属ロールを採用することができる。具体例としては、ドリルドロールやスパイラルロール等が挙げられる。金属ロール6の表面状態は、例えば鏡面であってもよく、模様や凹凸等があってもよい。
【0033】
金属弾性ロール7は、略円柱状の回転自在に設けられた軸ロール8と、この軸ロール8の外周面を覆うように配置され、溶融積層押出樹脂板4に接触する円筒形の金属製薄膜9とを備えており、これら軸ロール8と金属製薄膜9との間には流体10が封入されており、これにより金属弾性ロール7は弾性を示すことができる。前記軸ロール8は、特に限定されるものではなく、例えばステンレス鋼等からなる。
【0034】
金属製薄膜9は、例えばステンレス鋼等からなり、その厚さとしては2〜5mm程度が好ましい。この金属製薄膜9は、屈曲性や可撓性等を有しているのが好ましく、溶接継ぎ部のないシームレス構造が好ましい。このような金属製薄膜9を備えた金属弾性ロール7は、耐久性に優れると共に、金属製薄膜9を鏡面化すれば通常の鏡面ロールと同様の取り扱いができ、金属製薄膜9に模様や凹凸を付与すればその形状を転写できるロールになるので、使い勝手がよい。
【0035】
この金属製薄膜9が軸ロール8の両端部で固定され、軸ロール8と金属製薄膜9との間に流体10が封入される。流体10としては、例えば水、油等が挙げられる。この流体10を温度制御することによって、金属弾性ロール7を温度制御可能にすることができる。前記温度制御には、例えばPID制御やON−OFF制御等の公知の制御方法を採用することができる。なお、流体10に代えて、空気等の気体を用いることもできる。
【0036】
このような金属ロール6および金属弾性ロール7間に溶融積層押出樹脂板4を挟持すると、金属弾性ロール7が溶融積層押出樹脂板4を介して金属ロール6の外周面に沿って凹状に弾性変形し、金属弾性ロール7と金属ロール6とが溶融積層押出樹脂板4を介して所定の接触長さLで接触する。
【0037】
前記接触長さLとしては、1〜20mm、好ましくは1〜10mm、より好ましくは1〜7mmであるのがよい。前記接触長さLを所定の値にするには、例えば金属製薄膜9の厚み、流体10の封入量等を調整することによって任意に行うことができる。なお、前記接触長さLとは、溶融積層押出樹脂板4を介して金属弾性ロール7と金属ロール6とが接触を開始する点と、接触を終了する点とを結ぶ直線の長さを意味する。
【0038】
接触長さLで金属弾性ロール7と金属ロール6とが溶融積層押出樹脂板4を介して接触すると、金属ロール6および金属弾性ロール7は、溶融積層押出樹脂板4に対して面接触で圧着するようになり、これらロール間に挟持される溶融積層押出樹脂板4は面状に均一加圧されながら製膜される。このようにして製膜すると、積層押出樹脂板11内に歪が残留するのを抑制することができ、得られる積層押出樹脂板11の加熱収縮特性とリタデーション値とが小さくなる傾向がある。したがって、該積層押出樹脂板11には、温度環境が厳しい場所での使用において、タッチパネルの変形を抑制する効果がある。
【0039】
具体的には、積層押出樹脂板11を160℃の熱雰囲気下で30分放置したときの積層押出樹脂板11の押出方向の収縮率S1(%)および幅方向の収縮率S2(%)が、いずれも0〜5%になる傾向がある。収縮率S1,S2がマイナス、すなわち0%未満であると、積層押出樹脂板を加熱すると膨張することになり、該積層押出樹脂板に硬化膜を被覆した場合には、該硬化膜に亀裂が入って割れが発生するおそれがある。また、収縮率S1,S2が5%を超えると、積層押出樹脂板を加熱した際に収縮が大きくなり、得られる製品の収率が低下する。前記収縮率S1,S2の算出方法については、後述する。
【0040】
また、積層押出樹脂板11は、リタデーション値が200nm以下になる傾向がある。液晶パネル上にタッチパネルが装着されている場合、該タッチパネルを構成する積層押出樹脂板11のリタデーション値が200nm以下であれば、偏光メガネを着用していてもタッチパネルが着色して見える現象が起こらなくなる。前記リタデーション値は、後述するように、微小面積複屈折率計で測定して得られる値である。
【0041】
積層押出樹脂板11の加熱収縮特性とリタデーション値とを小さくする上で、溶融積層押出樹脂板4を金属ロール6および金属弾性ロール7に挟持して成形する際に、溶融積層押出樹脂板4を冷却固化前ないし冷却固化させる過程で両ロールに挟持させるのがよい。具体的には、金属ロール6および金属弾性ロール7の表面温度(Tr)を、ポリカーボネート樹脂またはアクリル樹脂の熱変形温度(Th)に対して、(Th−20℃)≦Tr≦(Th+20℃)、好ましくは(Th−15℃)≦Tr≦(Th+10℃)、より好ましくは(Th−10℃)≦Tr≦(Th+5℃)の範囲とすることが望ましい。
【0042】
一方、表面温度(Tr)が(Th−20℃)よりも低い温度になると、収縮率S2が小さくなる傾向がある。また、表面温度(Tr)が(Th+20℃)よりも高い温度になると、収縮率S1が大きくなり、リタデーション値も大きくなる傾向がある。また、積層押出樹脂板11にロールからの剥離跡が残り外観を損ねる傾向がある。
【0043】
表面温度(Tr)は、ポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂のうち熱変形温度(Th)が高い方の樹脂を基準とする。熱変形温度(Th)としては、特に限定されるものではないが、通常、60〜200℃程度である。熱変形温度(Th)は、ASTM D−648に準拠して測定される温度である。
【0044】
金属ロール6および金属弾性ロール7間で挟持された後のシート状ないしフィルム状の積層押出樹脂板11は、金属ロール6に巻き掛けられた後、図示しない引取りロールにより搬送ロール上を冷却されながら引取られ、これにより積層押出樹脂板11を得る。
【0045】
次に、本発明にかかる積層押出樹脂板の製造方法の他の実施形態について説明する。図3は、本実施形態にかかる弾性ロールを示す概略断面説明図である。なお、図3においては、前述した図1,図2と同一の構成部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0046】
図3に示すように、本実施形態にかかる金属弾性ロール15は、略円柱状の回転自在に設けられた軸ロール16の外周面を、円筒形の金属製薄膜17で被覆したものである。
【0047】
軸ロール16は、例えばシリコンゴム等のゴムからなるゴムロールであり、これにより金属弾性ロール15は弾性を示すことができる。前記ゴムの硬度を調整することによっても、前記接触長さLを所定の値にすることができる。
【0048】
金属製薄膜17は、例えばステンレス鋼等からなり、その厚さとしては0.2〜1mm程度が好ましい。
【0049】
金属弾性ロール15を温度制御可能に構成するには、例えばバックアップ冷却ロールを金属弾性ロール15に取り付ければよい。その他の構成は、前記した一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0050】
本発明の積層押出樹脂板は、ポリカーボネート樹脂層のタッチされる側の表面のみにアクリル樹脂層が積層されてなる2層構造のものであってもよいし、ポリカーボネート樹脂層の両面にアクリル樹脂層が積層されてなる3層構造のものであってもよい。
【0051】
ここで、3層構造のものは、アクリル樹脂層の厚みやアクリル樹脂の種類によっては、面衝撃性が低下して割れやすくなることもある。それゆえ、積層押出樹脂板を3層構造とする場合には、アクリル樹脂層にゴム状重合体を分散させるのが好ましい。これにより、積層押出樹脂板の面衝撃性が低下して割れやすくなることを抑制することができる。
【0052】
一方、積層押出樹脂板を3層構造とすると剛性が上がる傾向があり、タッチパネル操作時に変形を防ぎやすくなり、好ましい場合もある。また、該積層押出樹脂板の両面に硬化膜を設ける場合には、同組成の硬化材料を塗工することも可能となる。なお、積層押出樹脂板を3層構造とする場合には、両アクリル樹脂層の組成は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
本発明の積層押出樹脂板は、通常、シート状ないしフィルム状であり、その厚みは、通常0.1〜2mm、好ましくは0.2〜1mm、さらに好ましくは0.3〜0.7mmである。
【0054】
また、本発明の積層押出樹脂板においては、ポリカーボネート樹脂層の厚みを、全体の厚みの50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上とするのがよい。これにより、積層押出樹脂板がより割れ難いものとなる。なお、ポリカーボネート樹脂層の厚みは、全体の厚みに対し、通常95%以下、より好ましくは90%以下とするのがよい。
【0055】
アクリル樹脂層の表面硬度を重視する場合には、その厚みを10μm以上、好ましくは20〜200μmとするのがよい。なお、3層構造の場合には、両アクリル樹脂層の厚みは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。積層押出樹脂板の厚みは、前記したダイ3から押し出される溶融積層押出樹脂板4の厚み、2本の冷却ロール5の間隔等により調整することができる。
【0056】
本発明の積層押出樹脂板は、そのアクリル樹脂層側を、そのまま指を用いたタッチ面として使うことも可能であるが、タッチペン等の先が尖ったものをタッチさせる場合には、表面に硬化膜を設けた方が耐久性の面で優れる。なお、ポリカーボネート層側については、基本的にタッチ面として使われないため、そのままであってもよいが、その表面に硬化膜を設けてもよい。
【0057】
本発明におけるタッチパネル用表面塗工板は、前記した本発明の積層押出樹脂板のタッチされる側の表面に硬化膜を被覆したものである。前記硬化膜としては、例えば熱硬化性樹脂、電離放射線硬化樹脂等が挙げられる。
【0058】
前記熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられ、必要に応じて、例えば架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調節剤、体質顔料等を添加してもよい。硬化剤としては、通常、イソシアネート、有機スルホン酸等がポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂に用いられ、アミンがエポキシ樹脂に、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチルエステル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル系樹脂によく使用される。
【0059】
前記電離放射線硬化樹脂としては、例えば分子中にアクリロイル基、メタアクリロイル基等の重合性不飽和結合、チオール基、またはエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、および/または単量体を適宜混合した樹脂組成物等が挙げられる。これらの樹脂系としては、例えば(メタ)アクリレート化合物、珪素系化合物、不飽和ポリエステル化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。
【0060】
これらの中でも、珪素系化合物あるいは(メタ)アクリレート系化合物から得られる硬化膜が好ましく用いられる。珪素系化合物の具体例としては、例えば二官能珪素系化合物、三官能珪素系化合物、四官能珪素系化合物等が挙げられる。二官能珪素系化合物としては、例えばγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。三官能珪素系化合物としては、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシン)エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。四官能珪素系化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
前記アクリレート系化合物の具体例としては、例えば単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、四官能(メタ)アクリレート、五官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルマレイミドブトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリル酸アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。二官能(メタ)アクリレートとしては、例えばポリあるいはモノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。三官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレート等が挙げられる。四官能(メタ)アクリレートとしては、例えばペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。五官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えばジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
また、ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたホスファゼン系(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のイソシアナト基を有する化合物と、分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のカルボン酸ハライド基を有する化合物と、分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物;上記各化合物の2量体や3量体のようなオリゴマー等も用いることができる。これらの多官能(メタ)アクリレートは、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。
【0063】
さらに、これらの珪素系化合物、(メタ)アクリレート系化合物から得られる硬化膜の硬度を上げるために無機微粒子を含有させてもよい。該無機微粒子としては、例えば無機化合物の酸化物、複酸化物、不定比酸化物、酸化物のアロイおよび合金等が挙げられ、具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化スズ、酸化ベリリウム、酸化アンチモンおよびCe23・TiO2、TaOx・SiO2、SiOx・SiO、MgO・Al23、BaO・TiO2等が挙げられ、これらは1種または2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0064】
電離放射線硬化樹脂からなる膜を硬化させるには、前記電離放射線硬化樹脂組成物に光重合開始剤として、例えばアセトフエノン類、ベンゾフエノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、および/または光増感剤として、例えばn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフイン等を単独または混合して用いることができる。なお、ここで電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線、電子線が用いられる。紫外線源としては、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハロイドランプ等の光源が挙げられる。
【0065】
光重合開始剤の添加量は、硬化膜を構成する樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部程度が好ましい。
【0066】
本発明における硬化膜となる樹脂組成物には、目的に応じて従来から使用されている種々の添加剤を添加してもよい。該添加剤としては、例えば界面活性剤、レベリング剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、難燃剤、可塑剤等が挙げられる。
【0067】
基材の積層押出樹脂板表面に硬化膜となる樹脂組成物を被覆する方法としては、例えばマイクログラビアコート法、ロールコート法、ディッピングコート法、スピンコート法、ダイコート法、キャスト転写法、フローコート法、スプレーコート法等が挙げられる。
【0068】
このようにして形成される硬化膜の厚さは、1〜10μmが好ましく、より好ましくは2〜6μmである。この厚さがあまり小さいと、耐擦傷性が不十分となることがあり、あまり大きいと、高温高湿下に曝したときに、クラックが発生し易くなる。硬化膜の厚さは、積層押出樹脂基板の表面に塗布する硬化性樹脂組成物の面積あたりの量や硬化性樹脂組成物に含まれる固形分の濃度を調整することにより、調節することができる。
【0069】
特に、例示したこれらの硬化膜うち、耐擦傷性を有する硬化皮膜が好ましい。
【0070】
こうして得られる本発明の積層押出樹脂板および表面塗工板は、例えばカーナビゲーションシステムや携帯情報端末、産業機械の操作パネル、パーソナルコンピューターの画面、携帯ゲーム機等のタッチパネル用部材として使われる。
【0071】
また、本発明の積層押出樹脂板および表面塗工板をタッチパネルとして用いるには、例えば必要に応じて熱成形等の二次成形、印刷、穴あけ等の加工を行い、所定の形状ないし大きさに切断処理すればよい。そして、2層構造の積層押出樹脂板であれば、通常、アクリル樹脂層が表側(外側:操作する人が触れる側)となるように、タッチパネルを設置すればよい。また、3層構造の積層押出樹脂板であって、両アクリル樹脂層の厚みが互いに異なる場合には、厚みの大きい方のアクリル樹脂層が外側となるように、タッチパネルを設置するのがよい。本発明の積層押出樹脂板および表面塗工板からなるタッチパネルは、傷が付き難くいのが特徴である。
【0072】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下の実施例中、含有量ないし使用量を表す部は、特記ないかぎり重量基準である。また、以下の実施例および比較例で使用した押出装置の構成は、次の通りである。
【0073】
押出機1:スクリュー径65mm、一軸、ベント付き(東芝機械(株)製)。
押出機2:スクリュー径45mm、一軸、ベント付き(日立造船(株)製)。
フィードブロック:2種3層および2種2層分配(日立造船(株)製)。
ダイ3:Tダイ、リップ幅1400mm、リップ間隔1mm(日立造船(株)製)。
ロール:横型、面長1400mm、径300mmφの冷却ロール2本。
【0074】
押出機1,2、ダイ3を図1に示すように配置し、フィードブロックを所定位置に配置した。ついで、前記2本の冷却ロールのうち、押出機1,2に最も近いロールを1番ロール、巻き掛けロールを2番ロールとし、各ロールを以下のように構成した。
【0075】
<ロール構成1>
図2に示した構成をロール構成1とした。具体的には、1番ロールおよび2番ロールを以下のように構成した。
(1番ロール)
軸ロール8の外周面を覆うように金属製薄膜9を配置し、軸ロール8と金属製薄膜9との間に流体10を封入した金属弾性ロール7を1番ロールとした。軸ロール8、金属製薄膜9および流体10は、次の通りである。
軸ロール8:ステンレス鋼製
金属製薄膜9:厚さ2mmのステンレス鋼製の鏡面金属スリーブ
流体10:油であり、この油を温度制御することによって、金属弾性ロール7を温度制御可能にした。より具体的には、温度調節機のON−OFF制御により前記油を加熱、冷却して温度制御可能にし、軸ロール8と金属製薄膜9との間に循環させた。
(2番ロール)
表面状態を鏡面にしたステンレス鋼製のスパイラルロールを高剛性の金属ロール6とし、これを2番ロールとした。
なお、金属弾性ロール7と金属ロール6とが溶融積層押出樹脂板4を介して接触する接触長さLは、4mmにした。
【0076】
<ロール構成2>
1番ロールおよび2番ロールを、いずれも高剛性の金属ロール(表面状態を鏡面にしたステンレス鋼製のスパイラルロール)とした。
【0077】
以下の実施例および比較例で使用した樹脂は、次の通りである。
樹脂1:芳香族ポリカーボネートのみの重合体(住友ダウ(株)製の「カリバー301−10」)。熱変形温度(Th)は140℃。
樹脂2: メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=98/2(重量比)の共重合体。熱変形温度(Th)は100℃。
樹脂3:メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=96/4(重量比)の共重合体91重量%に下記参考例で得たアクリル系多層構造重合体を9重量%含有させたアクリル樹脂系組成物。熱変形温度(Th)は100℃。
樹脂4:メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=96/4(重量比)の共重合体79重量%に下記参考例で得たアクリル系多層構造重合体を21重量%含有させたアクリル樹脂系組成物。熱変形温度(Th)は100℃。
【0078】
[参考例]
(ゴム状重合体の製造)
特公昭55−27576号の実施例に記載の方法に準拠して、3層構造からなるアクリル系多層構造重合体を製造した。具体的には、まず、内容積5Lのガラス製反応容器に、イオン交換水1700g、炭酸ナトリウム0.7g、過硫酸ナトリウム0.3gを仕込み、窒素気流下で撹拌後、ペレックスOT−P((株)花王製)4.46g、イオン交換水150g、メチルメタクリレート150g、アリルメタクリレート0.3gを仕込んだ後、75℃に昇温し150分間撹拌を続けた。
【0079】
続いてブチルアクリレート689g、スチレン162g、アリルメタクリレート17gの混合物と過硫酸ナトリウム0.85g、ペレックスOT−P7.4gとイオン交換水50gの混合物を別の入口から90分間にわたり添加し、さらに90分間重合を続けた。
【0080】
重合を完了後、さらにメチルアクリレート326g、エチルアクリレート14gの混合物と過硫酸ナトリウム0.34gを溶解させたイオン交換水30gを別々の口から30分間にわたって添加した。
【0081】
添加終了後、さらに60分間保持し重合を完了した。得られたラテックスを0.5%塩化アルミニウム水溶液に投入して重合体を凝集させた。これを温水にて5回洗浄後、乾燥してアクリル系多層構造重合体を得た。
【0082】
[実施例1〜11]
<積層押出樹脂板の作製>
樹脂層Aとして、表1に示す種類の樹脂を押出機1にて溶融混練し、フィードブロックに供給した。一方、樹脂層Bとして、表1に示す種類の樹脂を押出機2にて溶融混練し、フィードブロックに供給した。押出機1からフィードブロックに供給される樹脂層Aが主層となり、押出機2からフィードブロックに供給される樹脂層Bが表層(片面/上側)となるように、共押出成形を行った。
【0083】
そして、ダイ3から押出された溶融積層押出樹脂板4を、表1に示すロール構成の1番ロールおよび2番ロールで挟持しながら製膜し、表1に示す厚さの2層構造からなる積層押出樹脂板を得た。なお、1番ロールの表面温度は120℃であり、2番ロールの表面温度は、130℃であった。これらの温度は、各ロールの表面温度を実測した値である。また、表1中の押出機1,2における「厚み」は、樹脂層A,Bの各厚みを示している。表1中の「総厚み」は、得られた積層押出樹脂板の総厚みを示している。
【0084】
<表面塗工板の作製>
得られた各積層押出樹脂板のタッチされる側の表面、すなわち樹脂層Bの表面に硬化膜を被覆し、表面塗工板を得た。具体的には、まず、モノマーとして、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを50部、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを50部、開始剤としてチバスペシャリティケミカルズ(株)製のIRGACURE184を4.5部、IRGACURE907を1.5部、レべリング剤としてビックケミージャパン(株)製のBYK−307を0.1部の割合で、それぞれイソブチルアルコール125部および1−メトキシ−2−プロパノール125部の溶媒に混合し、混合液体を得た。
【0085】
ついで、この混合液体を16番のバーコーターにて樹脂層Bの表面に塗布し、120Wの高圧水銀ランプを用いて0.5J/cm2の紫外線を照射して硬化させ、樹脂層Bの表面に厚さ約3.5μmの硬化膜を形成し、表面塗工板を得た。
【0086】
[実施例12〜22および比較例1]
樹脂層Aとして、表1に示す種類の樹脂を押出機1にて溶融混練し、フィードブロックに供給した。一方、樹脂層Bとして、表1に示す種類の樹脂を押出機2にて溶融混練し、フィードブロックに供給した。押出機1からフィードブロックに供給される樹脂層Aが中間層となり、押出機2からフィードブロックに供給される樹脂層Bが両表層となるように、共押出成形を行った。
【0087】
そして、ダイ3から押出された溶融積層押出樹脂板4を、表1に示すロール構成の1番ロールおよび2番ロールで挟持しながら製膜し、表1に示す厚さの3層構造からなる積層押出樹脂板を得た。なお、1番ロールの表面温度は110℃であり、2番ロールの表面温度は、125℃であった。
【0088】
得られた各積層押出樹脂板の樹脂層B,Bのうち、任意に選定した一方の樹脂層Bの表面に、前記実施例1〜11と同様にして、厚さ約3.5μmの硬化膜を形成し、表面塗工板を得た。
【0089】
[比較例2〜4]
表1に示す種類の樹脂を押出機1にて溶融混練し、フィードブロックおよびダイ3の順に供給した。そして、ダイ3から押出された溶融押出樹脂板を、表1に示すロール構成の1番ロールおよび2番ロールで挟持しながら製膜し、表1に示す厚さの単層構造からなる押出樹脂板を得た。
【0090】
得られた各押出樹脂板の任意の片面に、前記実施例1〜11と同様にして、厚さ約3.5μmの硬化膜を形成し、表面塗工板を得た。
【0091】
<評価>
得られた各押出樹脂板(実施例1〜22および比較例1〜4)について、収縮率およびリタデーションの評価を行った。また、各押出樹脂板および各表面塗工板について、鉛筆硬度およびタッチペン評価を行った。各評価方法を以下に示すと共に、その結果を表1に併せて示す。
【0092】
(収縮率)
まず、得られた押出樹脂板から約10cm角サイズで試験片を切り出し、この試験片の押出方向の寸法(MD0)および幅方向の寸法(TD0)をそれぞれ測定した。ついで、金属製のバットにベビーパウダー(和光堂(株)製の「シッカロール・ハイ」)を敷いて、その上に前記試験片を置いて、160℃のオーブンに30分間投入した。
【0093】
その後、自然冷却した試験片の押出方向の寸法(MD)および幅方向の寸法(TD)をそれぞれ測定し、得られた各寸法を式:収縮率S1={1−(MD/MD0)}×100,式:収縮率S2={1−(TD/TD0)}×100に当てはめて、収縮率S1,S2を算出した。また、算出された収縮率S1,S2から、比(S1/S2)を算出した。表1中の収縮率S1,S2において、+の結果は収縮したことを、−の結果は膨張したことをそれぞれ示している。
【0094】
(リタデーション)
得られた押出樹脂板から50mm角サイズで試験片を切り出し、この試験片のリタデーションを、微小面積複屈折率計(王子計測機器(株)製の「KOBRA−CCO/X」)を用いて測定した。
【0095】
(鉛筆硬度)
JIS K5600に準拠して測定した。なお、実施例1〜11の押出樹脂板における測定面は、樹脂層Bである。また、表1中の鉛筆硬度において、「樹脂板」は押出樹脂板を、「塗工板」は表面塗工板をそれぞれ示している。
【0096】
(タッチペン評価)
押出樹脂板および表面塗工板の表面に、任天堂(株)社製の「DSタッチペン」を用いて、手で普通に文字を描き、こすれた部分の傷つき具合を目視で確認した。なお、実施例1〜11の押出樹脂板における表面は、樹脂層Bである。また、判定基準は以下のものを用いた。
○:傷が付かなかった
△:浅い傷がついた
×:深い傷が付いた
【0097】
【表1】

【0098】
表1から明らかなように、実施例1〜22の押出樹脂板は、比較例1〜4の押出樹脂板よりも、鉛筆硬度およびタッチペン評価において良好な結果を示しており、表面に傷が付き難くいのがわかる。また、押出樹脂板に硬化膜を被覆すると、表面の傷つき難さが向上するのがわかる。特に、ロール構成1を採用した実施例1〜4,6〜8,12〜21の押出樹脂板は、収縮率およびリタデーション値が小さいものであった。
【0099】
一方、実施例1〜11の2層構造からなる押出樹脂板について、該押出樹脂板を手で折り曲げて割れるか否かを評価した(折り曲げ性)。その結果、該押出樹脂板は、折り曲げても割れ難い結果を示した。また、3層構造からなる実施例12〜22の押出樹脂板のうち、アクリル樹脂層がメタクリル樹脂およびゴム状重合体からなる層である実施例16〜22の押出樹脂板について、上記と同様にして折り曲げ性を評価した。その結果、該押出樹脂板は、折り曲げても割れ難い結果を示した。
【符号の説明】
【0100】
1,2 押出機
3 ダイ
4 溶融積層押出樹脂板
5 冷却ロール
6 金属ロール
7,15 金属弾性ロール
8,16 軸ロール
9,17 金属製薄膜
10 流体
11 タッチパネル用積層押出樹脂板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂層の少なくともタッチされる側の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなることを特徴とするタッチパネル用積層押出樹脂板。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂層の厚みが全体の厚みの50%以上である請求項1記載のタッチパネル用積層押出樹脂板。
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂層の両面にアクリル樹脂層が積層されてなる請求項1または2に記載のタッチパネル用積層押出樹脂板。
【請求項4】
前記アクリル樹脂層がメタクリル樹脂およびゴム状重合体からなる層である請求項1〜3のいずれかに記載のタッチパネル用積層押出樹脂板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の積層押出樹脂板のタッチされる側の表面に硬化膜を被覆したことを特徴とするタッチパネル用表面塗工板。
【請求項6】
前記硬化膜が耐擦傷性を有する硬化皮膜である請求項5記載のタッチパネル用表面塗工板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−182263(P2010−182263A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27721(P2009−27721)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】