説明

タッチパネル用粘着剤組成物、タッチパネル用粘着型光学フィルム、タッチパネル用光学部材及びタッチパネル

【課題】 従来両立が困難であった色表示性と高い全光線透過率を達成した上で、さらにアクリル系粘着剤組成物あるいはアクリル系粘着剤組成物を含む粘着層に色素を含有させても当該色素の経時劣化が生じにくいタッチパネル用粘着剤組成物とタッチパネル用粘着型光学フィルム、タッチパネル用光学部材及びタッチパネルを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、アクリル系粘着剤とポルフィリン化合物とを含有したタッチパネル用粘着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色表示性と全光線透過率に優れるタッチパネル用粘着剤組成物、タッチパネル用粘着型光学フィルム、タッチパネル用光学部材及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、携帯用端末、携帯ゲーム機、各種固定端末等のディスプレイ前面に使用されている。近年、環境に配慮した製品開発が積極的に行われているが、タッチパネルあるいはタッチパネルを構成する部材においても、省エネルギー化を目指すことに関心が高まっている。タッチパネルに使用される光学部材において省エネルギーに寄与するものとして、全光線透過率を高めることが挙げられる。全光線透過率を高める方法としては、たとえば、光学部材の裏面(ディスプレイ側)に反射防止層を形成する方法が挙げられる。反射防止層は光学干渉の原理を利用したものであり、高屈折率膜と薄膜の低屈折率膜を交互に1層以上形成させ、薄膜の低屈折率膜を観察面側に配置するものである。反射防止層を形成することにより、光学部材の種類にもよるが、全光線透過率が数%程度向上することが知られている。
【0003】
タッチパネルの方式は様々であるが、例えば、上下の電極が接触することで入力位置を特定する抵抗膜方式や、静電容量の変化から入力位置を特定する静電容量方式等があり、これらの方式には透明導電膜が使用される。この透明導電膜には、透明性と導電性が求められることから、酸化インジウム錫(ITO)が使用されることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−151358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、透明導電膜として使用される酸化インジウム錫は黄色を呈することから、タッチパネルの色表示性が損なわれる問題を有していた。
この問題を解決するためには上記透明導電膜上に、青色を呈する層を積層することによって、色表示性の問題を解決できる。しかしながら、汎用の色素を用いると、色表示性は向上するものの全光線透過率が低下する問題が新たに生じてしまう。すなわち、色表示性と高い全光線透過率を両立することはトレードオフの関係にあるものである。
加えて、青色を呈する層としてアクリル系粘着剤組成物を含む粘着層を使用すると、青色を呈する色素が経時劣化する問題を有していた。
【0006】
そこで、本発明は、従来両立が困難であった色表示性と高い全光線透過率を達成した上で、さらにアクリル系粘着剤組成物あるいはアクリル系粘着剤組成物を含む粘着層に色素を含有させても当該色素の経時劣化が生じにくいタッチパネル用粘着剤組成物とタッチパネル用粘着型光学フィルム、タッチパネル用光学部材及びタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の技術的構成により上記課題を解決できたものである。
【0008】
(1) アクリル系粘着剤とポルフィリン化合物とを含有したタッチパネル用粘着剤組成物である。
(2)前記ポルフィリン化合物が下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とする前記(1)に記載のタッチパネル用粘着剤組成物である。
【化1】

(式中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表し、AとA、AとA、AとA、AとAはそれぞれ独立に、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
(3) 前記アクリル系粘着剤100質量部に対して、前記ポルフィリン化合物を0.0001質量部以上配合したことを特徴とする前記(1)記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
(4) 透光性基体上に、直接または他の層を介して、前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のタッチパネル用粘着剤組成物を積層したことを特徴とするタッチパネル用粘着型光学フィルムである。
(5)透明導電膜上に、直接または他の層を介して、前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のタッチパネル用粘着剤組成物を積層したことを特徴とするタッチパネル用光学部材である。
(6)前記(4)に記載のタッチパネル用粘着型光学フィルムまたは前記(5)に記載のタッチパネル用光学部材を備えたことを特徴とするタッチパネルである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るタッチパネル用粘着剤組成物と、透明導電膜である酸化インジウム錫を積層することで、全体として無彩色とすることができるため、色表示性に優れるタッチパネル用光学部材及びタッチパネルを提供することができる。
また、本発明のタッチパネル用粘着剤組成物が、波長570nm〜605nmの範囲に吸収極大を有するポルフィリン化合物を含有するため、高い光透過率を示すタッチパネル用粘着剤組成物、タッチパネル用粘着型光学フィルム、タッチパネル用光学部材及びタッチパネルを提供することができる。
加えて、本発明はアクリル系粘着剤に含有させる色素としてポルフィリン化合物を使用するため、当該色素の経時劣化が生じにくいタッチパネル用粘着剤組成物とタッチパネル用粘着型光学フィルム、タッチパネル用光学部材及びタッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例2における粘着型光学フィルムのスペクトルを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<タッチパネル用粘着剤組成物>
本発明のタッチパネル用粘着剤組成物は、アクリル系粘着剤とポルフィリン化合物を含有する。また、本発明のタッチパネル用粘着剤組成物は、青色の色彩を有するものであり、そのL*値は90.0〜100.0以下の範囲にあることが好ましく、a*値は−1.0〜1.0の範囲にあることが好ましく、b*値は−6.0〜−0.1の範囲にあることが好ましい。
L*値が高くなるほど全光線透過率も高くなる傾向にあるため、L*値は高いほど好ましい。より好ましくは95.0以上、さらに好ましくは99.0以上である。
黄色を呈する透明導電膜は材料、膜厚、製造方法等にもよるがa*値がゼロ付近にあるため、タッチパネル用粘着剤組成物のa*値はゼロ付近にあることが好ましい。より好ましい下限値は−0.8であり、さらに好ましい下限値は−0.5である。一方、より好ましい上限値は0.8であり、さらに好ましい上限値は0.5である。
より好ましいb*値の下限値は−3.0であり、さらに好ましい下限値は−1.5である。
L*、a*、b*が当該範囲であれば、黄色を呈する透明導電膜と積層した場合に、無彩色としやすくなるため好ましい。
上記のL*a*b*表色系は、JIS Z8729−1994に規定される方法によって測定して得られた値である。JIS Z8729−1994の測定方法としては、反射による測定方法、透過による測定方法があるが、本実施の形態では透過で測定した値を用いる。
【0012】
L*a*b*表色系においては、L*値が明度、a*値とb*値とが、色彩と彩度を表している。具体的には、L*値は0〜100の数値で示され、0に近づくほど暗くなり、100に近づくほど明るくなる。a*値が正の符号であれば赤色の色彩、負の符号であれば緑色の色彩であることを示す。b*値が正の符号であれば黄色の色彩、負の符号であれば青色の色彩である。また、a*値とb*値とも、絶対値が大きいほどその色の彩度が大きく鮮やかな色であることを示し、絶対値が小さいほど彩度が小さいことを示す。
厳密に無彩色とするためには、a*値とb*値をともに0にする必要があるが、本発明における「無彩色」とは、a*値が−2.0〜1.0の範囲にあり、且つ、b*値が−1.0〜3.0の範囲にあるものをいう。
【0013】
(ポルフィリン化合物)
本発明におけるポルフィリン化合物は、波長570nm〜605nmの範囲に吸収極大を有するため、タッチパネル用粘着剤組成物と、黄色を呈する透明導電膜と積層した場合に、無彩色とすることができるとともに、高い全光線透過率を得ることができる。
本発明における全光線透過率は、JIS K7361により測定した値をいう。
【0014】
本発明におけるポルフィリン化合物は、アクリル系粘着剤と併用した場合に色素の劣化が生じにくい。特にポルフィリン化合物としては、下記一般式(1)で表されるものを使用することが好ましい。
【0015】
【化2】

(式中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表し、AとA、AとA、AとA、AとAはそれぞれ独立に、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
【0016】
ポルフィリン化合物を使用することにより、タッチパネル用粘着剤組成物は90%以上の高い全光線透過率を得ることができる。また、本発明のタッチパネル用粘着剤組成物は95%以上、さらには96%以上の全光線透過率を得ることも可能である。これは、ポルフィリン化合物は比較的狭い波長域に極大吸収域が存在するからである。一方、ポルフィリン化合物以外の色素(汎用色素)であっても、600nm付近に吸収極大を有する色素は存在するが、ポルフィリン化合物に比べ吸収域が広範に及ぶことと吸収作用が弱いため、無彩色を維持した上で全光線透過率を90%以上とすることは難しい。
【0017】
(アクリル系粘着剤)
本発明のタッチパネル用粘着剤組成物においては、アクリル系粘着剤を使用するものである。アクリル系粘着剤は、高い全光線透過率が得られやすく、好ましい接着性を得ることができる。アクリル系粘着剤は下記のアクリル系ポリマーを含有することが好ましい。
【0018】
アクリル系ポリマー
アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも含有することが好適であり、官能基含有ポリマー(カルボキシル基含有モノマーと水酸基含有モノマーとアミノ基含有モノマーとアミド基含有モノマーとエポキシ基含有モノマーから選択される少なくとも一種)と、前記アルキル(メタ)アクリレートモノマーとを重合させて得られるものであることがより好適である。これらのポリマーの中でも、透明導電膜に直接接する場合を考慮しアルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレート{(メタ)アクリル酸アルキルエステル}モノマーと水酸基含有モノマーとを含有して重合されてなるアクリル系ポリマーを使用することが好適である。アクリル系ポリマーは、粘着剤組成物固形分成分100質量部に対し50質量部以上含まれていることが好適であり、60〜99.9質量部の範囲がより好適である。
【0019】
アルキル(メタ)アクリレート(アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート)としては、特に制限されないが、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。尚、モノマー成分としてのアルキル(メタ)アクリレートは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらのアクリレートの中でも、n−ブチル(メタ)アクリレートの単体が特に好適である。アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、アクリル系ポリマー100質量部中、1〜100質量%であればよいが、50〜99質量%が好適であり、70〜98質量%が更に好適である。
【0020】
カルボキシル基含有モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。また、これらのカルボキシル基含有モノマーの無水物も、カルボキシル基含有モノマーとして用いることができる。
【0021】
水酸基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等が挙げられる。
【0022】
アミノ基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0023】
アミド基含有モノマーとしては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
【0024】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテル、メタクリル酸−2−グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0025】
カルボキシル基含有モノマーと水酸基含有モノマーとアミノ基含有モノマーとアミド基含有モノマーとエポキシ基含有モノマーは架橋剤との架橋点として作用する。これら官能基を含有するモノマーは0.1〜15質量%の割合で使用される。架橋点として透明導電膜を腐食しない水酸基含有モノマーが好適に使用される。
【0026】
アクリル系ポリマーは、公知の重合方法により製造することができるが、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合方法や紫外線照射による重合方法等が挙げられる。また、重合に際して用いられる重合開始剤、連鎖移動剤などは、公知のものを適宜用いることが可能である。
【0027】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、10万〜200万が好適であり、30万〜150万がより好適であり、40万〜120万が更に好適である。
【0028】
上記アクリル系ポリマーは、ガラス転移温度が0℃未満であることが好ましく、−20℃未満であれば粘着性は更に良好なものとなるので好ましい。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)により測定されるショルダー値である。
【0029】
アクリル系ポリマーの酸価は0以上300mgKOH/g以下が好適である。
本発明に係るタッチパネル用粘着剤組成物と透明導電膜を直接積層する場合は、粘着剤組成物を構成するアクリル系ポリマーの酸価が0に近づくほど、透明導電膜を腐食しにくくなるため好ましい。具体的には、1mg KOH/g以下であることが好ましい。1mg KOH/g超であると透明導電膜の導電性または透明性を悪化させることから好ましくない。酸価が0の場合は透明導電膜に接する構成において透明導電膜を腐食しない利点があり、酸価が300mgKOH/g超であると色素の劣化が生じやすくなる。
【0030】
任意成分
タッチパネル用粘着剤組成物は、その他、種々の公知の添加剤を添加することができるが、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を使用することもできる。また微粒子を含有して光拡散性を示す近赤外線吸収粘着層などとしてもよい。本発明に係る粘着剤組成物には、他の近赤外線吸収色素が添加されてもよい。また、色調を調整するため可視光吸収色素が添加されていてもよい。その他、防錆剤が添加されていることが好適である。
【0031】
架橋剤
また、タッチパネル用粘着剤組成物は、架橋剤を含有していることが好適である。架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、イミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系架橋剤や、イソシアネート系架橋剤が好適である。
【0032】
エポキシ系架橋剤は、エポキシ化合物を含有し、エポキシ化合物としては、例えば、グリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.001〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部、さらに好ましくは0.02〜0.5質量部である。エポキシ系化合物の使用量が0.001質量部未満では、光学フィルムとの密着性や耐久性の点で好ましくない。
【0033】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート化合物を含有し、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどの多価アルコールと付加したアダクト系イソシアネート化合物、イソシアヌレート化合物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどが挙げられる。これらイソシアネート系化合物のなかでも、透光性基体との密着性向上の面からは、キシリレンジイソシアネート等のアダクト系イソシアネート化合物が好ましい。
【0034】
イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜3質量部、さらに好ましくは0.02〜2.5質量部である。イソシアネート系化合物の使用量が0.001質量部未満では、光学フィルムとの密着性や耐久性の点で好ましくない。
【0035】
本発明のタッチパネル用粘着剤組成物において、ポルフィリン化合物の含有量は、アクリル系粘着剤の固形分成分100質量部に対して、0.0001質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.0005〜1質量部であり、さらに好ましくは0.001〜0.5質量部である。下限値未満では好ましいb*値が得られにくくなり、上限値超では全光線透過率が90%未満となりやすくなる。
【0036】
<タッチパネル用粘着型光学フィルム>
上記のタッチパネル用粘着剤組成物を透光性基体上に積層することにより、タッチパネル用粘着型光学フィルムとすることができる。透光性基体と粘着剤組成物は隣接して積層されていてもよいし、透光性基体と粘着剤組成物の間に他の層を有していてもよいし、粘着剤組成物上に他の層を有していてもよい。また、粘着剤組成物の両面に透光性基体を積層してもよい。
ここで他の層としては、例えば、ハードコート層、偏光層、光拡散層、低反射層、防汚層、帯電防止層、紫外線・近赤外線(NIR)吸収層、電磁波シールド層、接着層(粘着層)などを挙げることができる。
透光性基体に粘着剤組成物を隣接して積層する場合は、アクリル系粘着剤とポルフィリン化合物及びその他任意成分を混合して塗料(粘着層形成塗料)として、透光性基体上にコーティングした後、上記塗料乾燥後、必要に応じて硬化処理(熱あるいは電離放射線)を施すことによってタッチパネル用粘着型光学フィルムを形成させることができる。
【0037】
透光性基体上に粘着層形成塗料を塗布する手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。
【0038】
(透光性基体)
本最良形態に係る透光性基体としては、透光性である限り特に限定されず、石英ガラスやソーダガラス等のガラスも使用可能であるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂フィルムを好適に使用することができる。
これらの各種樹脂フィルムの表面(片面又は両面)に剥離層を設けることもできる。
【0039】
これら透光性基体の透明性は高いものほど良好であるが、全光線透過率(JIS K7105)としては80%以上、より好ましくは90%以上が良い。また、透光性基体の厚さとしては、軽量化の観点からは薄い方が好ましいが、その生産性やハンドリング性を考慮すると、1〜700μmの範囲のもの、好ましくは25〜250μmを使用することが好適である。
【0040】
透光性基体表面に、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理などのトリートメント処理、界面活性剤、シランカップリング剤などのプライマーコーティング、Si蒸着などの薄膜ドライコーティングなどを施すことも可能である。
【0041】
<タッチパネル用光学部材>
本発明に係るタッチパネル用粘着剤組成物を、黄色を呈する透明導電膜と積層することで、タッチパネル用光学部材とすることができる。タッチパネル用粘着剤組成物と透明導電膜は隣接して積層されていてもよいし、タッチパネル用粘着剤組成物と透明導電膜の間に他の層を有していてもよい。
ここで他の層としては、タッチパネル用粘着型光学フィルムで例示したものと同じものを使用することができる。
本発明のタッチパネル用粘着剤組成物により無彩色とすることができる透明導電膜は、a*値が−2.0〜1.0であり、b*値が0.1〜6.0の範囲にあるものである。
本発明に係るタッチパネル用粘着剤組成物と黄色を呈する透明導電膜を積層した場合のL*値は80.0以上であり、a*値は−1.0〜1.0の範囲にあり、b*値は−1.0〜3.0の範囲にあることが好ましい。より好ましいL*値は85.0以上であり、更に好ましくは90.0以上である。より好ましいa*値は−0.5以上0.5以下である。
より好ましいb*値は0.1〜3.0である。
【0042】
(透明導電膜)
上記のようなa*値及びb*値を有する透明導電膜の材料としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム錫、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、銀および銀合金、銅および銅合金、金等が単層もしくは2層以上の積層構造したものが挙げられる。これらのうち、酸化インジウム錫は単独・単層で上記の色彩を呈する。
【0043】
透明導電膜の膜厚は4〜200nmの範囲が好ましく、特に好ましくは5〜100nmである。透明導電膜の膜厚が4nmよりも薄い場合、連続した薄膜になりにくく良好な導電性を示しにくい傾向がある。一方、200nmよりも厚い場合、ディスプレイに組み込んだ際の色表示性と透明性を両立することが困難となる。
【0044】
透明導電膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができる。
【0045】
例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素、等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。
【0046】
<タッチパネル>
本発明に係るタッチパネル用粘着剤組成物は、透明導電膜を使用したタッチパネルに使用することで、タッチパネルを無彩色に近づけることができる。このようなタッチパネルとしては、例えば、抵抗膜方式や静電容量方式等が挙げられる。
また、観察面側に出射する光が無彩色であればよいのであって、タッチパネル用粘着剤組成物の積層位置は限定されるものではなく、例えば、観察面側に設けてもよいし、光源側に設けてもよい。
【0047】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0048】
(アクリル系粘着剤の調製)
モノマーとしてブチルアクリレート(427.3g)、エチルアクリレート(171.2g)、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(1.5g)を秤量し、十分に混合して重合性モノマー混合物(a1)を得た。次いで、この重合性モノマー混合物(a1)300gと酢酸エチル160gとをフラスコに入れた。また、滴下ロートに300gの重合性モノマー混合物(a1)、16gの酢酸エチル及び0.15gの2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチル)バレロニトリルを入れ、よく混合して滴下用混合物(a2)を調製した。
【0049】
次に、窒素ガスを20ml/分で流通させながら、上記フラスコの内温を95℃まで上昇させ、重合開始剤である2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチル)バレロニトリル(0.15g)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。そして、このフラスコに滴下ロートから滴下用混合物(a2)を90分掛けて滴下した。滴下用混合物(a2)の滴下終了後、粘度の上昇に応じて酢酸エチルで希釈を行いながら、6時間の熟成を行った。反応終了後、重量平均分子量60万、酸価0mgKOH/gのアクリル系粘着剤a3を得た。
【0050】
(実施例1)
色素PD-320(山本化成社製、波長570nm〜605nmの範囲に吸収極大を有する下記化3のポルフィリン化合物)をメチルエチルケトン(以下、MEKという)に溶解し、固形分1%の色素溶液A4を調整した。
さらに、架橋剤としてイソシアネート系硬化剤コロネートL(日本ポリウレタン工業製)をMEKに溶解し、固形分10%の架橋剤溶液B5を調製した。
そして、上記のアクリル系粘着剤a3 100質量部中に固形分比で色素溶液A4を0.015質量部、架橋剤溶液B5を0.9質量部となる様に添加・混合し、粘着剤a1を得た。
【0051】
【化3】

(式中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表し、AとA、AとA、AとA、AとAはそれぞれ独立に、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
【0052】
上記のようにして調製された粘着剤a1をアプリケーターにて剥離PET(リンテック製、商品名:PET38C)に塗工した。塗工時の厚みは乾燥後の粘着剤厚みが25μmになる様に調整した。次いで、80℃のオーブン中にて2分間乾燥させた。この粘着剤aからなる層に剥離フィルム(リンテック製、商品名:PET3801)を貼り合せ、常温で7日間養生させ、実施例1の粘着型光学フィルムを作製した。
実施例1の粘着型光学フィルムは、本発明のタッチパネル用粘着剤組成物を透光性基体上に積層したものである。
【0053】
[実施例2]
粘着剤a1のかわりに、アクリル系粘着剤a3 100質量部中に固形分比で色素溶液A4を0.010質量部、架橋剤溶液B5を0.9質量部となる様に添加・混合した粘着剤a2を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2の粘着型光学フィルムを得た。
実施例2の粘着型光学フィルムは、本発明のタッチパネル用粘着剤組成物を透光性基体上に積層したものである。
【0054】
[実施例3]
粘着剤a1のかわりに、アクリル系粘着剤a3 100質量部中に固形分比で色素溶液A4を0.005質量部、架橋剤溶液B5を0.9質量部となる様に添加・混合した粘着剤a3を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例3の粘着型光学フィルムを得た。
実施例3の粘着型光学フィルムは、本発明のタッチパネル用粘着剤組成物を透光性基体上に積層したものである。
【0055】
[実施例4]
粘着剤a1のかわりに、アクリル系粘着剤a3 100質量部中に固形分比で色素溶液A4を0.002質量部、架橋剤溶液B5を0.9質量部となる様に添加・混合した粘着剤a4を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例4の粘着型光学フィルムを得た。
実施例4の粘着型光学フィルムは、本発明のタッチパネル用粘着剤組成物を透光性基体上に積層したものである。
【0056】
上記の粘着型光学フィルムに使用した各粘着剤に含まれる色素溶液の種類・量と、架橋剤溶液の量を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
<評価1−1>
上記の各粘着型光学フィルムから軽剥離側剥離PETを剥がし、易接着処理光学PET(東洋紡社製、商品名:コスモシャインA4300)に貼り合せた。さらに、各粘着型光学フィルムから重剥離側剥離PETを剥がし、評価試験用の粘着型光学フィルムを得た。
得られた評価試験用の各粘着型光学フィルムに対して、分光光度計(島津製作所製、商品名:UV3150)により透過スペクトル及び色調を測定した。色調はJIS Z8729−1994に準じて測定した。
実施例2の粘着型光学フィルムの透過スペクトルを図1に、各実施例の色調を表2に示した。図1から明らかなように、実施例2の粘着型光学フィルムは、波長570nm〜605nmの範囲に吸収極大を有している。
【0059】
<評価1−2>
また、上記評価試験用の粘着型光学フィルムをJIS K7361に準じてヘイズメーター(日本電色製、商品名:NDH2000)により全光線透過率を測定した。それぞれの測定結果を表2に示した。
なお測定は易接着処理光学PET単体でベースライン測定をおこなった後、評価試験用粘着フィルムを測定した。
【0060】
【表2】

【0061】
<評価2>
実施例1〜4の各粘着型光学フィルムから軽剥離PETを剥がし、露出した粘着層面をITOフィルム(東洋紡社製、商品名TT115)の透明導電膜面に貼り合せ、さらに重剥離側剥離PETを剥がし、実施例5〜8のタッチパネル用光学部材とした。
得られた各光学部材に対して、分光光度計(島津製作所製、商品名:UV3150)により透過スペクトル及び色調を測定し、JIS K7361に準じてヘイズメーター(日本電色製、商品名:NDH2000)により全光線透過率を測定し、それぞれの測定結果を表3に示した。色調はJIS Z8729−1994に準じて測定した。
【0062】
【表3】

【0063】
本発明のタッチパネル用粘着剤組成物を使用した実施例1〜実施例4の粘着型光学フィルムは、青色の色彩を有するものであり、且つ、吸収極大が570nm〜605nmの領域に存在するため、高い全光線透過率を達成することができる。また、本発明のタッチパネル用粘着剤組成物を使用した実施例5〜8の光学部材は、a*値が−2.0〜1.0の範囲にあり、且つ、b*値が−2.0〜3.0の範囲にあるため、より無彩色に近づけることができ色表示性に優れるタッチパネルを提供することができる。
加えて、本発明はアクリル系粘着剤に含有させる色素としてポルフィリン化合物を使用するため、当該色素の経時劣化が生じにくいタッチパネル用粘着剤組成物とタッチパネル用粘着型光学フィルム、タッチパネル用光学部材及びタッチパネルを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系粘着剤とポルフィリン化合物とを含有したタッチパネル用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ポルフィリン化合物が下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
【化1】

(式中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、又はアリールチオ基を表し、AとA、AとA、AとA、AとAはそれぞれ独立に、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
【請求項3】
前記アクリル系粘着剤100質量部に対して、前記ポルフィリン化合物を0.0001質量部以上配合したことを特徴とする請求項1記載のタッチパネル用粘着剤組成物。
【請求項4】
透光性基体上に、直接または他の層を介して、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタッチパネル用粘着剤組成物を積層したことを特徴とするタッチパネル用粘着型光学フィルム。
【請求項5】
透明導電膜上に、直接または他の層を介して、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタッチパネル用粘着剤組成物を積層したことを特徴とするタッチパネル用光学部材。
【請求項6】
請求項4に記載のタッチパネル用粘着型光学フィルムまたは請求項5に記載のタッチパネル用光学部材を備えたことを特徴とするタッチパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2013−76017(P2013−76017A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217636(P2011−217636)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】