説明

タッチパネル用透明導電シート並びにその製造方法、及びタッチパネル

【課題】 1000Ω以下の表面抵抗率、80%以上の全光線透過率、5%以下のヘイズを有し、耐水性、透明基材と透明導電層との密着性、高温高湿の条件下での表面抵抗率維持性のいずれもが優れたタッチパネル用透明導電シートを提供する。
【解決手段】 本発明のタッチパネル用透明導電シート10は、透明基材11と、透明基材11上に形成された透明導電層12を有するタッチパネル用透明導電シート10において、透明導電層12が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエステル化合物とを含み、前記エステル化合物が、二つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸類化合物と二つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール類化合物とを脱水反応させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに用いられる透明導電シート及びその製造方法に関する。また、データ入力装置であるタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行のATM(現金自動預金支払機)、OA機器のモニター、各種情報検索用の端末等においては、画面の一部に触れるだけで情報を入力できるタッチパネルが広く用いられている。
タッチパネルは、透明基材上に透明導電層が形成された一対の透明導電シートと、一対のタッチパネル用透明導電シートの間の一部に設けられた絶縁性スペーサとを備え、各透明導電シートの透明導電層同士が対向しているものである。このようなタッチパネルでは、指やタッチペンなどが表面側に設けた透明導電シートに触れた際に、透明導電シートの透明導電層同士が接触して導通する。このことを利用することにより、タッチパネルをデータ入力装置として機能させることができる。
【0003】
従来、タッチパネル用の透明導電シートとしては、ITOからなる導電層(以下、ITO導電層という。)がPETフィルム上に形成されたものが使用されてきた。しかしながら、ITO導電層は、屈折率が大きく、光の表面反射が大きいため、光線透過率が低下する上に、黄色味を帯びているため、画像の色調が変化した。また、ITO導電層が電気化学反応により変質して黒化することがあった。これらのことから、画像の視認性が低くなるばかりでなく、ITO導電層は可撓性が低いため、屈曲した際にITO導電層に亀裂が生じて電気抵抗値が高くなる問題があった。さらには、PETフィルム上にITO導電層を形成することは簡便ではなかった。
【0004】
そこで、特許文献1には、ITO導電層の代わりに、透明導電層として、ポリチオフェン誘導体と水溶性有機化合物とドーパントと水溶性エポキシモノマーを含む溶液が塗布されて形成された層を使用することが提案されている。
【特許文献1】特開2005−146259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タッチパネルにおいては、導電性、透明性、耐水性、透明基材と透明導電層との密着性、耐久性のいずれもが高いことが求められる。特に、導電性については表面抵抗率が1000Ω以下、透明性については全光線透過率が80%以上、ヘイズが5%以下、耐久性については高温高湿の条件下で表面抵抗率を維持できることが求められる。
しかしながら、特許文献1に記載の透明導電シートでは、表面抵抗率が高く、上記要求特性を満たすことができなかった。そのため、特許文献1に記載の透明導電シートを用いたタッチパネルは、耐久性を確保しつつ、動作信頼性を高くすることが困難であった。
本発明は、1000Ω以下の表面抵抗率、80%以上の全光線透過率、5%以下のヘイズを有し、耐水性、透明基材と透明導電層との密着性、高温高湿の条件下での表面抵抗率維持性のいずれもが優れたタッチパネル用透明導電シート及びその製造方法を提供することを目的とする。また、動作信頼性が高く、耐久性に優れたタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタッチパネル用透明導電シートは、透明基材と、該透明基材上に形成された透明導電層を有するタッチパネル用透明導電シートにおいて、
透明導電層が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエステル化合物とを含み、前記エステル化合物が、二つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸類化合物と二つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール類化合物とを脱水反応させたものであることを特徴とする。
本発明のタッチパネル用透明導電シートにおいては、透明導電層が、2個以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有芳香族性化合物、窒素含有芳香族複素環式化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物からなる導電性向上剤をさらに含むことが好ましい。
本発明のタッチパネル用透明導電シートの製造方法は、透明基材に、導電性高分子塗料を塗布するタッチパネル用透明導電シートの製造方法において、
前記π共役系導電性高分子塗料が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエステル化合物とを含み、前記エステル化合物が、二つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸類化合物と二つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール類化合物とを脱水反応させたものであることを特徴とする。
本発明のタッチパネル用透明導電シートの製造方法においては、導電性高分子塗料が、2個以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有芳香族性化合物、窒素含有芳香族複素環式化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物からなる導電性向上剤をさらに含むことが好ましい。
本発明のタッチパネルは、一対のタッチパネル用透明導電シートと、一対のタッチパネル用透明導電シートの間の一部に設けられた絶縁性スペーサとを備え、タッチパネル用透明導電シートの透明導電層同士が対向しているタッチパネルであって、
一対のタッチパネル用透明導電シートのいずれか1つが、上述したタッチパネル用透明導電シートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタッチパネル用透明導電シートは、1000Ω以下の表面抵抗率、80%以上の全光線透過率、5%以下のヘイズを有し、耐水性、透明基材と透明導電層との密着性、高温高湿の条件下での表面抵抗率維持性のいずれもが優れたものである。
本発明のタッチパネル用透明導電シートの製造方法は、1000Ω以下の表面抵抗率、80%以上の全光線透過率、5%以下のヘイズを有し、耐水性、透明基材と透明導電層との密着性、高温高湿の条件下での表面抵抗率維持性のいずれもが優れたタッチパネル用透明導電シートを簡便に製造できる。
本発明のタッチパネルは、動作信頼性が高く、耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<タッチパネル用透明導電シート>
本発明のタッチパネル用透明導電シート(以下、透明導電シートと略す。)の一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例の透明導電シート10を示す。この透明導電シート10は、透明基材11と、透明導電層12とを有して構成されている。
【0009】
(透明基材)
透明基材11としては特に制限されないが、可撓性に優れる点で樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられ、目的に応じて適宜選択できるが、透明性に優れる点からポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0010】
(透明導電層)
透明導電層12は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、エステル化合物とを含む層である。また、透明導電層12には、必要に応じて、導電性向上剤、ドーパント、他の樹脂成分、添加剤が含まれていてもよく、特に、導電性がより高くなることから、導電性向上剤が含まれていることが好ましい。
以下、透明導電層12の各構成要素について説明する。
【0011】
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
【0012】
π共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0013】
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性、バインダ樹脂への相溶性を得ることができるが、導電性及び相溶性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0014】
[ポリアニオン]
ポリアニオンとしては、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルであって、アニオン基を有する構成単位のみからなるポリマー、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるポリマーが挙げられる。
【0015】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。 ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和二重結合(ビニル基)が1個含まれる構成単位からなる高分子である。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドを例示できる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等を例示できる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を例示できる。
【0016】
上記ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基等が挙げられる。有機溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エステル基が好ましい。
【0017】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。
ヒドロキシル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシル基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。ヒドロキシル基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。アミノ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。フェノール基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
【0018】
置換基を有するポリアルキレンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等を例示できる。
ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる一種以上の構成単位を含む重合体を例示できる。
【0019】
ポリアニオンのアニオン基としては、−O−SO、−SO、−COO(各式においてXは水素イオン、アルカリ金属イオンを表す。)が挙げられる。すなわち、ポリアニオンは、スルホ基及び/又はカルボキシル基を含有する高分子酸である。これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング効果の点から、−SO、−COOが好ましい。
また、このアニオン基は、隣接して又は一定間隔をあけてポリアニオンの主鎖に配置されていることが好ましい。
【0020】
上記ポリアニオンの中でも、溶媒溶解性及び導電性の点から、ポリイソプレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレートを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体等が好ましい。
【0021】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0022】
ポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性及び溶解性が低くなり、均一な分散液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0023】
[エステル化合物]
本発明におけるエステル化合物は、二つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸類化合物と二つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール類化合物とを脱水反応させたものである。
【0024】
カルボン酸類化合物としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシル基を二つ以上含むものが挙げられる。例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マロン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸類化合物、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の、芳香族性環に少なくとも一つ以上のカルボキシル基が結合している芳香族カルボン酸類化合物等が挙げられる。
カルボン酸類化合物の中でも、耐熱性及び耐溶媒性の点から芳香族カルボン酸類化合物が好ましい。
【0025】
多価アルコール類化合物としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にヒドロキシル基を二つ以上含むものが挙げられる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グルコース、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類、
ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリビニルアルコール、セルロス、多糖、糖アルコール等の高分子アルコール、
1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸メチル、トリヒドロキシ安息香酸エチル、トリヒドロキシ安息香酸プロピル、トリヒドロキシ安息香酸イソブチル、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
【0026】
エステル化合物の分子量は特に限定されないが、分子量が小さいことが好ましく、具体的には、10,000以下であることが好ましく、5,000以下であることがより好ましい。分子量が小さければ、エステル化合物がπ共役系導電性高分子やポリアニオンなどの間に入り込みやすくなり、均質な架橋体を容易に得ることができる。分子量が大きくなると上記効果が充分に発揮されず、導電性の低下を招く傾向にある。
【0027】
[導電性向上剤]
導電性向上剤としては、2個以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有芳香族性化合物、窒素含有芳香族複素環式化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物が挙げられる。これら導電性向上剤はそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0028】
ヒドロキシル基含有芳香族性化合物としては、分子を構成する芳香環に、ヒドロキシル基が2個以上結合しているものであれば特に制限はなく、例えば、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸メチル、トリヒドロキシ安息香酸エチル、トリヒドロキシ安息香酸プロピル、トリヒドロキシ安息香酸イソブチル、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
これらヒドロキシル基含有芳香族性化合物の中でも、導電性及び架橋効果の点からπ共役系導電性高分子へのドーピング効果を有するアニオン基を有する化合物及びエステル基を有する化合物が好ましい。
【0029】
窒素含有芳香族複素環式化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
【0030】
ピリジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−6−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、4−ブテニルピリジン、4−ペンテニルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、2,6−ピリジン−ジカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジン、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0031】
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、2−メチル−4−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0032】
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0033】
ピラジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0034】
トリアジン類及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4−トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0035】
アミド基を有する化合物としては、アクリルアミド系樹脂、ポリアミドが挙げられる。
アクリルアミド系樹脂は、アミド基含有モノマーを構成単位として含む(共)重合体である。アミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、Nメチル(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド等が挙げられる。
また、アクリルアミド系樹脂は構成単位として、例えば、アクリル酸エステル(アルコール残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等を例示できる);メタクリル酸エステル(アルコール残基は上記と同じ);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマーなどの共重合成分を含んでもよい。
【0036】
アクリルアミド系樹脂に不飽和二重結合を導入する方法としては、ヒドロキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマーより形成される活性水素と、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有不飽和モノマーを付加反応させる方法、カルボキシル基含有モノマーとグリシジル基含有モノマーを縮合反応させる方法などが挙げられる。
【0037】
ポリアミドは、ジカルボン酸とジアミンとを縮合反応させて得られる重合体である。
ここで、ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等が挙げられる。
ポリアミドに不飽和二重結合を導入するためには、末端の酸無水物単位とイソシアネート基含有不飽和モノマーとを縮合反応させればよい。イソシアネート基含有不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
イミド基を有する化合物(以下、イミド化合物という。)は、−CO−NH−CO−(COの部分は二重結合)で表される結合構造を分子中に有する単分子化合物のことである。
イミド化合物は両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等の分類もされるが、その骨格より、フタルイミド及びフタルイミド誘導体、スクシンイミド及びスクシンイミド誘導体、ベンズイミド及びベンズイミド誘導体、マレイミド及びマレイミド誘導体、ナフタルイミド及びナフタルイミド誘導体などが挙げられる。溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。
【0039】
イミド化合物の具体例としては、1,8−ナフチルイミド、フタルイミド、3−ニトロフタルイミド、4−ニトロフタルイミド、3−アミノフタルイミド、4−アミノフタルイミド、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、グルタルイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミド、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
【0040】
イミド化合物の分子量は60〜5,000であることが好ましく、70〜1,000であることがより好ましく、80〜500であることが特に好ましい。
【0041】
導電性向上剤の含有量は、π共役系導電性高分子のドープに寄与していないポリアニオンのアニオン基に対して0.1〜100モルであることが好ましく、0.5〜50モルであることがより好ましく、1.0〜20モルであることが特に好ましい。導電性向上剤の含有量が前記下限値未満であると、導電性向上剤の効果が低くなり、導電性が低くなる傾向にあり、前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下が起こる傾向にある。
【0042】
[ドーパント]
上記ポリアニオンはπ共役系導電性高分子のドーパントとして機能するが、ポリアニオン以外のドーパントを含有させてもよい。他のドーパントとしては、π共役系導電性高分子へのドープ・脱ドープにおいてπ共役系導電性高分子中の共役電子の酸化還元電位を変化させることができれば、ドナー性のものでもよいし、アクセプタ性のものでもよい。
【0043】
ドナー性ドーパントとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン塩化合物等が挙げられる。
【0044】
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物等を使用できる。
さらに、ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br2)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0045】
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。さらに、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0046】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシル基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
【0047】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むものを使用できる。スルホ基を一つ含むものとしては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフト−ル−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、へキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸 、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物等のスルホ基を含むスルホン酸化合物等が挙げられる。
【0048】
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ドデシルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、ブチルナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、アントラセンジスルホン酸、ブチルアントラセンジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオ−シアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、1−アセトキシピレン−3,6,8−トリスルホン酸、7−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸、3−アミノ−1,5,7−ナフタレントリスルホン酸等が挙げられる。
【0049】
[他の樹脂成分]
他の樹脂成分としては、π共役系導電性高分子及びポリアニオンと相溶又は混合分散可能であれば特に制限されず、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、メラミン樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0050】
[添加剤]
添加剤としてはπ共役系導電性高分子及びポリアニオンと混合しうるものであれば特に制限されず、例えば、界面活性剤、消泡剤、カップリング剤、中和剤、酸化防止剤などを使用できる。
界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;アミン塩、4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
中和剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ化合物;1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類等の含窒素化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
【0051】
以上説明した透明導電シートは、透明導電層中にπ共役系導電性高分子とポリアニオンと特定のエステル化合物とを含有しており、そのエステル化合物同士が、エステル化合物中の残留カルボキシル基と残留ヒドロキシル基とによりエステル結合を形成、あるいは、ヒドロキシル基同士でエーテル結合を形成する。また、ポリアニオンの残存アニオン基とエステル結合を形成している。その結果、ポリアニオン同士が架橋され、ポリアニオンがドーピングされたπ共役系導電性高分子同士が接近していると考えられる。また、エステル化合物中のヒドロキシル基は、ポリアニオンのアニオン基と相互作用しやすく、その相互作用によりポリアニオン同士が接近していると考えられる。これらのことから、この透明導電層は、緻密な構造を形成しており、耐水性、透明基材と透明導電層との密着性、高温高湿の条件下での表面抵抗率維持性が優れる。
また、π共役系導電性高分子同士が接近していることにより、π共役系導電性高分子同士の電気伝導に必要なホッピングエネルギーが小さくなるため、導電性が向上し、表面抵抗率を1000Ω以下にできる。さらに、導電性が高くなった結果、透明導電層を薄くできるため、透明性を高くすることができ、全光線透過率を80%以上、ヘイズを5%以下にできる。
【0052】
<透明導電シートの製造方法>
次に、本発明の導電性高分子塗料の製造方法について説明する。
本発明の透明導電シートの製造方法では、まず、エステル化合物合成工程にて、二つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸類化合物と二つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール類化合物とを脱水反応させてエステル化合物を合成する。
エステル化合物の合成方法としては特に限定されず、例えば、公知の酸又は塩基触媒の存在下で、カルボン酸類化合物と多価アルコール類化合物との混合物を加熱処理して脱水反応を生じさせる方法などが挙げられる。その際、架橋性官能基であるカルボキシル基及びヒドロキシル基の少なくとも一方を残すためには、カルボン酸類化合物のカルボキシル基と多価アルコール類化合物のヒドロキシル基とが等モル量でないことが好ましい。具体的には、カルボン酸類化合物のカルボキシル基1モルに対し、多価アルコール類化合物のヒドロキシル基を0.3〜10モルにすることが好ましい。
合成条件についても、カルボキシル基及びヒドロキシル基の少なくとも一方が残留する条件が好ましく、例えば、合成温度は20〜200℃にすることが好ましい。ただし、高温範囲においてはエーテル結合も同時に形成されるため、低温での合成が好ましく、具体的には、30〜150℃にすることがより好ましい。
【0053】
また、ポリアニオン合成工程にて、ポリアニオンを合成する。ポリアニオンの合成方法としては、例えば、ポリマーを酸などで処理してアニオン基を直接導入する方法、スルホン化剤によるスルホン酸化法、転移法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。これらの中でも、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が好ましい。
【0054】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法では、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、化学酸化重合又はラジカル重合する。その際、必要に応じて、アニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、反応させてポリアニオンを得る。得られたポリアニオンがアニオン酸塩である場合には、アニオン酸に変換することが好ましい。変換方法としては、イオン交換樹脂交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、中でも、作業が容易の点から限外ろ過法が好ましい。
【0055】
ここで、アニオン基含有重合性モノマーは、モノマーの一部が一置換硫酸エステル基、カルボキシル基、スルホ基等の一種類以上の官能基で置換されたものであり、例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のメタクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族スルホン酸化合物。例えば、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CHCH-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CHCHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C64-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C108-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C64-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C108-SO3H)及びその塩類等が挙げられる。
【0056】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α―メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0057】
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒としては、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、ぺルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素などの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。酸化剤及び酸化触媒は所定量の溶媒に溶解又は分散させて一定濃度に調整しておくことが好ましい。
【0058】
その重合の際に使用される溶媒としては、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0059】
次に、導電性高分子形成工程にて、ポリアニオン及び酸化剤又は酸化重合触媒の存在下で、π共役系導電性高分子の前駆体モノマーを化学酸化重合する。具体的には、ポリアニオン溶液を一定温度に保ち、その溶液にπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを添加し、均一に攪拌する。これにより得られた混合溶液中に、酸化剤及び/又は酸化重合触媒の溶液を添加し、均一に分散させ、反応させて、π共役系導電性高分子を形成する。
その後、必要に応じて、重合反応を停止させるための反応停止剤を添加してもよい。また、重合反応終了後、過剰な酸化剤及び/又は酸化重合触媒、反応副生成物の除去及びイオン交換の工程を行ってもよい。
【0060】
導電性高分子形成工程におけるπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーとしては、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等を使用することができる。
また、酸化剤や、化学酸化重合を行う際に用いる溶媒としては、アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用するものを用いることができる。
【0061】
上記化学酸化重合の際には、π共役系導電性高分子の成長と共に、ポリアニオンがπ共役系導電性高分子と塩を形成し、π共役系導電性高分子へのドーピングが起きる。特に、スルホ基含有ポリアニオンを用いた場合には、スルホ基がπ共役系導電性高分子と強く塩を形成するので、π共役系導電性高分子がポリアニオンの主鎖に強く引き寄せられる。その結果、π共役系導電性高分子主鎖がポリアニオンの主鎖に沿って成長して、規則正しく配列したπ共役系導電性高分子を容易に形成する。
【0062】
次いで、エステル化合物添加工程にて、π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含有する溶液又は分散液にエステル化合物を添加して導電性高分子塗料を得る。その際、均一に混合できることから、エステル化合物を溶媒に溶解させておくことが好ましい。
【0063】
導電性向上剤を添加する場合には、ポリアニオンとπ共役系導電性高分子とを含有する混合溶液又はポリアニオンとπ共役系導電性高分子とエステル化合物とを含有する混合溶液に導電性向上剤を添加し、均一に混合させればよい。その際、導電性向上剤は溶媒に溶解又は分散させることが好ましい。
【0064】
導電性高分子塗料には架橋性化合物が含まれていてもよい。
架橋性化合物としては、エステル化合物又は導電性向上剤の架橋性官能基と反応するものが好ましい。例えば、架橋性官能基が不飽和二重結合(ビニル基)含有アルケニル基であれば、架橋性化合物としてはアルケニル基を含むものが好ましく、架橋性官能基がカルボキシル基である場合には、架橋性化合物としてはヒドロキシル基又はアミノ基を有する化合物が好ましく、架橋性官能基がヒドロキシル基である場合には、架橋性化合物がカルボキシル基を有する化合物が好ましい。
【0065】
架橋性化合物の具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、メタクリ酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸エステル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニルエーテル、アクリロニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアルケニル基含有化合物、カルボン酸、フタル酸、アクリル酸、ポリアクリル酸等のカルボキシル基含有化合物、ブタノール、エチレングリコール、ビニルアルコール等のヒドロキシル基含有化合物等が挙げられる。
導電性高分子塗料が上記架橋性化合物を含有する場合には、より安定した透明導電層を形成できる。
【0066】
得られた導電性高分子塗料は、遊離イオンを限外ろ過により除去することが好ましい。
限外ろ過法では、多孔質材上に一定の口径で形成されている高分子膜(限外ろ過膜)を配置させ、溶液を循環させる。その際、限外ろ過膜を挟んで、循環溶液側と透過溶液側とに差圧が生じるため、循環溶液側の溶液の一部が透過溶液側に浸透して循環溶液側の圧力を緩和する。この現象によって循環溶液に含まれる限外ろ過膜口径より小さい粒子、溶解イオン等の一部を透過溶液側に移動させて除去する。この方法は希釈法であり、希釈回数を増やすことにより容易に不純物を取り除くことができる。
使用する限外ろ過膜は、除去する粒子径、イオン種によって適宜選択され、中でも、分画分子量1,000〜1,000,000のものが好ましい。
【0067】
次に、上記導電性高分子塗料を透明基材上に塗布し、必要に応じて、加熱処理又は紫外線照射処理し、透明導電層を形成して透明導電シートを得る。
導電性高分子塗料の塗布方法としては、例えば、浸漬、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、グラビア印刷などが挙げられる。
加熱処理としては、例えば、熱風加熱や赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。紫外線照射処理としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外線を照射する方法を採用できる。
加熱処理又は紫外線照射処理により生じる架橋反応は、架橋性官能基の種類により異なる。例えば、アルケニル基の架橋反応は、ラジカル発生触媒によるラジカル架橋反応又はカチオン架橋反応であり、カルボキシル基及びヒドロキシル基の架橋反応は触媒による熱架橋反応である。
【0068】
以上説明した透明導電シートの製造方法によれば、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエステル化合物とを含む導電性高分子塗料を透明基材上に塗布して透明導電層を形成する。そのため、エステル化合物を介してポリアニオンを架橋させることができ、ポリアニオンがドーピングされているπ共役系導電性高分子同士を接近させることができる。したがって、π共役系導電性高分子の緻密性を高くすることができ、耐水性、透明基材と透明導電層との密着性、高温高湿の条件下での表面抵抗率維持性、導電性を高くすることができる。特に、導電性については表面抵抗率1000Ω以下にできる。その上、導電性が高くなった結果、透明導電層を薄くすることができ、全光線透過率80%以上、ヘイズ5%以下にできる。
【0069】
<タッチパネル>
本発明のタッチパネルについて説明する。
図2に、本発明のタッチパネルの一実施形態例を示す。このタッチパネル1は、第1の透明導電シート10aと、第2の透明導電シート10bと、第1の透明導電シート10a及び第2の透明導電シート10bの間に設けられた絶縁性スペーサ20とを備え、各透明導電シート10a,10bの透明導電層12a,12b同士が対向しているものである。また、タッチパネル1の第2の透明導電シート10b側には画像が表示される。
上記タッチパネル1において、第1の透明導電シート10a、第2の透明導電シート10bとしては、上述した透明導電シート10が使用される。
絶縁性スペーサ20としては特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができるが、透明性の点で、アクリル樹脂製ものが好ましい。
【0070】
タッチパネル1においては、第1の透明導電シート10aの透明導電層12a及び第2の透明導電シート10bの透明導電層12bに電源を接続し、通電しておく。その状態で、第1の透明導電シート10aにおける透明基材11aの任意の箇所を押圧すると、第1の透明導電シート10aが変形して、第1の透明導電シート10aの透明導電層12aが第2透明導電シート10bの透明導電層12bに接触する。その結果、電気が導通し、信号が生ずる。この信号を利用することによりタッチパネルをデータ入力装置として機能させることができる。
本発明のタッチパネルは、透明導電シートの透明導電層の導電性が高いため、第1の透明導電シート10aを押圧した際に、確実に第1の透明導電シート10aの透明導電層12aと第2透明導電シート10bの透明導電層12bとが導通するため、動作信頼性が高い。また、第1の透明導電シート10aおよび第2の透明導電シート10bの透明性が高いため、画像の視認性に優れる。
さらに、第1の透明導電シート10aおよび第2の透明導電シート10bの耐水性、透明基材11と透明導電層12a,12bとの密着性、高温高湿の条件下での表面抵抗率維持性が優れているため、耐久性に優れる。
【0071】
なお、本発明のタッチパネルは上記の例に限定されない。例えば、上記の例では、第1の透明導電シート10a及び第2の透明導電シート10bの両方が本発明の透明導電シートであったが、片方が本発明の透明導電シートであればよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施例を具体的に示すが、本発明は実施例により限定されるものではない。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の合成
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を2時間攪拌した。
これにより得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000mlと10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約10000ml溶液を除去し、残液に10000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30K
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0073】
(製造例2)エステル化合物の合成
43.6gのピロメリット酸・二無水物と73.6gのグリセリンをナス型フラスコに入れ、混合させた。ピロメリット酸・二無水物とグリセリンの混合物の入っているナス型フラスコを100℃のオイルバスの油浴中に入れ、10分間掻き混ぜた後、0.1gのp−トルエンスルホン酸を添加し、1時間掻き混ぜた。これにより、ピロメリット酸・二無水物とグリセリンとを脱水反応させて、エステル化合物を含む反応溶液を得た。そして、得られた反応溶液に115gのイオン交換水を加え、掻き混ぜながら溶解させ、さらにイオン交換水を溶液の固形濃度が50質量%になるように加えて濃度調整をした。これにより得られた水溶液をエステル化合物水溶液とした。
【0074】
(実施例)
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.5質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)を得た。これをπ共役系導電性高分子溶液とした。
そして、得られたπ共役系導電性高分子溶液100mlに、3.0gの上記エステル化合物水溶液と、導電性向上剤である2.25gの1,2,3−トリヒドロキシベンゼンを添加し、均一に分散させて導電性高分子塗料を得た。
その導電性高分子塗料を、透明基材であるPETフィルム(三菱ポリエステルフィルム株式会社製T680E100)上にバーコータ(No.16)により塗布し、150℃のオーブン中で5分間加熱乾燥させた。これにより、透明導電層を形成して透明導電シートを得た。
得られた透明導電シートを下記の評価法で評価した。その結果を表1に示す。
【0075】
(評価法)
・表面抵抗率(導電性)
透明導電シートの表面抵抗率をローレスタ(三菱化学製)を用いて測定した。
・表面抵抗率湿度変化率(%)
温度25℃、湿度60%RHの環境下における透明導電シートの表面抵抗率R25Bを測定し、測定後の透明導電シートを温度60℃・湿度95%RHの環境下に120時間放置した後、該透明導電シートを温度25℃、湿度60%RHの環境下に戻し、表面抵抗率R25Aを測定し、それらの測定値を下記式に代入して表面抵抗率湿度変化率を算出した。なお、この表面抵抗率変化率は耐湿性の指標になる。
表面抵抗率湿度変化率(%)=100×(R25B−R25A)/R25B
・耐水性評価
水を染み込ませた布(アドクリーンワイパーF1タイプ)に200gの荷重をかけながら、透明導電基材の表面を10往復拭いた後、目視で評価を行った。
・全光線透過率の評価
JIS Z 8701に基づいて全光線透過率を測定した。
・ヘイズの評価
JIS K 6714に基づいてヘイズを測定した。
・密着性の評価
碁盤目テープ法(JIS K 5400)に準じて密着性試験を行った。
具体的には、透明導電シートの表面にカッターにより1mm間隔で縦横各11本の切込みを入れた(計100個の正方形マス目を形成させた)。これに粘着テープを貼った後、剥離して、PETフィルム上に残ったマス目の数を計測した。
【0076】
【表1】

【0077】
(比較例)
実施例1において得られた100mlのπ共役系導電性高分子溶液に1,2,3−トリヒドロキシベンゼンのみを添加したこと以外は実施例1と同様にして透明導電シートを得て評価した。その結果を表1に示す。
【0078】
(従来例)
PETフィルム上にITOからなる透明導電層が形成された透明導電シートを用いて、実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0079】
π共役系導電性高分子とポリアニオンとエステル化合物とを含有する導電性高分子塗料が塗布されて形成された透明導電層を有する実施例の透明導電シートは、ヘイズ値が低く、透明性に優れていた。また、透明導電層がITOからなる従来例と同等の表面抵抗率、耐水性、密着性を有していた。このような透明導電シートを用いてタッチパネルを組み立てた場合には、動作信頼性、耐久性に優れると推測される。
π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含有し、エステル化合物を含有しない導電性高分子塗料が塗布されて形成された透明導電層を有する比較例の透明導電シートは、耐水性が低かった。また、導電性も低かった。このような透明導電シートを用いてタッチパネルを組み立てた場合には、動作信頼性、耐久性が低くなると推測される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のタッチパネル用透明導電シートの一実施形態例を示す断面図である。
【図2】本発明のタッチパネルの一実施形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 タッチパネル
10 透明導電シート(タッチパネル用透明導電シート)
11 透明基材
12 透明導電層
20 絶縁性スペーサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材上に形成された透明導電層を有するタッチパネル用透明導電シートにおいて、
透明導電層が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエステル化合物とを含み、前記エステル化合物が、二つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸類化合物と二つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール類化合物とを脱水反応させたものであることを特徴とするタッチパネル用透明導電シート。
【請求項2】
透明導電層が、2個以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有芳香族性化合物、窒素含有芳香族複素環式化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種からなる導電性向上剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用透明導電シート。
【請求項3】
透明基材に、導電性高分子塗料を塗布するタッチパネル用透明導電シートの製造方法において、
前記導電性高分子塗料が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエステル化合物とを含み、前記エステル化合物が、二つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸類化合物と二つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコール類化合物とを脱水反応させたものであることを特徴とするタッチパネル用透明導電シートの製造方法。
【請求項4】
導電性高分子塗料が、2個以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有芳香族性化合物、窒素含有芳香族複素環式化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物からなる導電性向上剤をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル用透明導電シートの製造方法。
【請求項5】
一対のタッチパネル用透明導電シートと、一対のタッチパネル用透明導電シートの間の一部に設けられた絶縁性スペーサとを備え、タッチパネル用透明導電シートの透明導電層同士が対向しているタッチパネルであって、
一対のタッチパネル用透明導電シートのいずれか1つが、請求項1又は2に記載のタッチパネル用透明導電シートであることを特徴とするタッチパネル。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−95506(P2007−95506A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283862(P2005−283862)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】