説明

タッチパネル装置

【課題】 操作者に十分なクリック感を与えることができる防塵構造のタッチパネル装置を提供する。
【解決手段】 主面が長方形状のタッチパネル2と、タッチパネル2にタッチするための操作窓3a1を有するケース3と、タッチパネル2の画像表示装置5側の主面に接着される帯状の圧電素子1とを具備し、ケース3の操作窓3a1にはタッチパネル2の操作領域2aが露出しているタッチパネル装置であって、タッチパネル2の周囲がケース3に固定されているとともに、圧電素子1がタッチパネル2の主面における短辺2a1にそれぞれ平行に、かつタッチパネル2の主面における短辺2a1に沿ったケース3への固定部から操作領域2a側に所定距離L1、L2をおいてそれぞれ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルの操作面をタッチすることで入力信号が得られた際、タッチパネルに取り付けられた圧電素子に電圧を印加して圧電素子を駆動させ、タッチパネルを振動させ、タッチパネルの操作者に触感をフィードバックする機能を有するタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駅の券売機やカーナビゲーションシステム、さらには携帯電話の入力デバイスとして、タッチパネル装置が普及しつつある。タッチパネルの代表的な方式として、抵抗膜式、静電容量式、光センサー式などがあるが、いずれの方式においても、タッチパネルは、画像表示装置の上方に配置されており、透明なタッチパネルを介して画像表示装置の情報を操作者に視覚的に供給する。操作者は、画像表示装置の上方に配置されたタッチパネルの操作面をタッチすることで、あたかも実際のボタンを押して情報をコンピュータに入力したのと同様の効果を得ることができる。
【0003】
しかしながら、このようなタッチパネル装置では、操作者がタッチパネルをタッチした際に、ボタンを押すような強い反発感(クリック感)はフィードバックされないため、ボタンを押したことを触覚にて認識できないという問題があった。
【0004】
この問題に対して、近年、ボタンを押した感覚を操作者へ触覚でフィードバックするフォースフィードバックと呼ばれる技術を搭載したタッチパネル装置の検討が進んでいる。フォースフィードバック技術の一例として、タッチパネル表面に圧電素子を貼り付け、操作者がタッチパネルの操作面をタッチした際に、圧電素子に電圧印加することで圧電素子を伸縮変形させて、その変形によりタッチパネルを振動させる方式が提案されている。
【0005】
例えば、このようなタッチパネル装置として、特許文献1に示されるように、タッチパネルと、このタッチパネルに貼り付けられた圧電素子とを備え、タッチパネルへの入力操作を検出した際に、圧電素子に駆動電圧を加えて圧電素子を伸縮させることでタッチパネルを振動させて、入力操作感を与える構造において、長方形状のタッチパネルの長さ方向の一辺の長さより短い細長帯状の圧電素子を一対固着し、一対の圧電素子は、それぞれ長方形の対角位置近傍から長さ方向の一辺に沿って固着させたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−222326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなタッチパネル装置では、操作者がタッチパネルの操作面をタッチした際に、タッチパネル全領域において押した感覚(クリック感)を得るため、タッチパネルをほぼ全面で大きく振動させる必要がある。そのためには、タッチパネルに取り付けられる圧電素子の配置位置や、圧電素子の駆動電圧が重要となる。
【0008】
上記特許文献1では、タッチパネルの4隅のみが画像表示装置に固定され、振動し易いタッチパネルの支持構造とした上で、タッチパネルの長さより短い長さの一対の圧電素子をタッチパネルの長さ方向にそれぞれ対角となるように配置している。このような場合、タッチパネルの固有振動数近傍の信号を印加すると、タッチパネルが共振振動することか
ら容易に大きな振動を得ることができ、操作者に十分なクリック感を与えることができる。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のタッチパネル装置では、タッチパネルの4隅のみを画像表示装置に固定していたため、タッチパネルと画面表示装置との間の固定されていない部分から埃が入ってしまうという問題があった。これに対して、タッチパネルの周囲を固定すれば防塵構造となるが、これでは、圧電素子による振動が妨げられ、操作者に十分なクリック感を与えることができないという問題があった。
【0010】
本発明は、操作者に十分なクリック感を与えることができる防塵構造のタッチパネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のタッチパネル装置は、画像表示装置に対して所定間隔をおいて配置された主面が長方形状のタッチパネルと、該タッチパネルが内部に収容され保持固定されるとともに前記タッチパネルにタッチするための操作窓を有するケースと、前記タッチパネルの前記画像表示装置側の主面に接着されるとともに前記タッチパネルを振動させる帯状の複数の圧電素子とを具備し、前記ケースの前記操作窓には前記タッチパネルの操作領域が露出しているタッチパネル装置であって、前記タッチパネルの周囲が前記ケースに固定されているとともに、前記圧電素子が、前記タッチパネルの前記画像表示装置側の主面における短辺にそれぞれ平行で、かつ前記画像表示装置側の主面における短辺に沿った前記ケースとの固定部から前記操作領域側に所定距離をおいてそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0012】
このようなタッチパネル装置では、タッチパネルの画像表示装置側の主面における短辺側の固定部から広い間隔をおいて圧電素子を設けることが可能となり、タッチパネルの振動を大きくすることができ、操作者に十分なクリック感を与えることができる。
【0013】
また、本発明のタッチパネル装置は、一対の前記圧電素子の一方が、前記タッチパネルの前記画像表示装置側の主面における一方の短辺近傍に設けられ、他方が前記タッチパネルの長さ方向中央部に設けられており、前記タッチパネルの操作領域が、一方の前記圧電素子と他方の前記圧電素子との間に設けられていることを特徴とする。
【0014】
このようなタッチパネル装置では、振動発生源である圧電素子をタッチパネルの固定部から最も遠ざけることができ、タッチパネルの操作領域を大きく振動させることができ、操作者に十分なクリック感を与えることができる。
【0015】
さらに、本発明のタッチパネル装置は、前記圧電素子は、前記タッチパネルの前記画像表示装置側の主面における一対の短辺近傍にそれぞれ設けられているとともに、前記タッチパネルの長さ方向中央部にも設けられており、前記タッチパネルの操作領域が、前記タッチパネルの長さ方向中央部に設けられた圧電素子の両側に設けられていることを特徴とする。
【0016】
このようなタッチパネル装置では、タッチパネルの操作領域が2画面となり、より多くの情報を表示することが可能なうえ、両画面とも大きく振動させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタッチパネル装置によると、タッチパネルの画像表示装置側の主面における短辺側の固定部から広い間隔をおいて圧電素子を設けることが可能となり、タッチパネルの振動を大きくすることができ、操作者に十分なクリック感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本形態のタッチパネル装置の分解斜視図である。
【図2】タッチパネルにおける圧電素子、操作領域およびガスケット材の位置関係を説明するための説明図である。
【図3】本形態のタッチパネル装置の長さ方向における断面図である。
【図4】圧電素子の断面図であり、(a)は電圧印加前の長さ方向における断面図、(b)は電圧印加後の長さ方向における断面図である。
【図5】タッチパネルの長さ方向における中央部と、タッチパネルの一方の短辺との間に操作領域を形成した他の形態において、タッチパネルにおける圧電素子、操作領域およびガスケット材の位置関係を説明するための説明図である。
【図6】タッチパネルの長さ方向における中央部と、タッチパネルの一対の短辺との間にそれぞれ操作領域を形成したさらに他の形態において、タッチパネルにおける圧電素子、操作領域およびガスケット材の位置関係を説明するための説明図である。
【図7】圧電素子とガスケット材との間隔と、タッチパネル中央部の変位量との関係を示すグラフである。
【図8】タッチパネル装置の変位量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図3は、タッチパネル装置の構成を示している。タッチパネル装置は、帯状の圧電素子1と、圧電素子1が裏面に接着された主面が長方形状のタッチパネル2と、タッチパネル2が収容されたケース3と、タッチパネル2の上面とケース3の上蓋3aの内面との間に配置された環状のガスケット材4とで構成されている。ケース3内には、タッチパネル2の裏面側に、タッチパネル2と所定間隔をおいて配置された画像表示装置5と、タッチパネル2、画像表示装置5が接続される、図示しないコンピュータ等の処理装置とが収容され、例えば、携帯電話、携帯型音楽プレイヤー、パーソナルコンピュータ(PC)が構成される。
【0020】
2個の圧電素子1はタッチパネル2の画像表示装置5側の面に、接着層7を介して接着されている。接着層7は、接着剤、両面テープにより形成されている。接着剤としては、エポキシ系接着剤や、シアノ系接着剤など、硬化後の硬度が十分に高いものが用いられる。
【0021】
すなわち、上蓋3aと容器3bとから構成されるケース3内には、タッチパネル2と画像表示装置5と図示しない処理装置とが収容され、タッチパネル2はガスケット材4を介して上蓋3aの内面に接着され、画像表示装置5は、容器3bの内壁面に形成された段部に支持固定され、これにより、タッチパネル2と画像表示装置5とは所定間隔をおいて、ケース3内に収容されている。
【0022】
タッチパネル2は主面が長方形状であり、タッチパネル2の上方より画像表示装置5を目視可能とするため、透明な材料を用いて形成されている。そのため、タッチパネル2の材質はアクリルやポリカーボネートなどのプラスチック基板や、ガラス基板が使用されている。また、ガスケット材4は、外部からの埃が内部に入らない防塵性を確保するため、全周囲がケース3の上蓋3aに固定されている。そのため、ガスケット材4には、タッチパネル2が変形し易い低密度高反発性の材料が望ましく、例えばウレタンフォームなどが用いられている。
【0023】
また、矩形状のタッチパネル2とケース3の上蓋3aとの間に矩形環状のガスケット材4が配置されており、ガスケット材4にてタッチパネル装置が密閉され、タッチパネル2と画像表示装置5との間、さらに他の機器も含めて収納されたケース3が、埃の入らない
防塵構造となっている。ガスケット材4は、タッチパネル2とケース3の上蓋3aの内面との間に、接着剤、両面テープ等で接着されている。
【0024】
また、上蓋3aには、タッチパネル2を指でタッチするための長方形状の操作窓3a1が形成されており、タッチパネル2はその外周部を除いて外部に露出しており、この操作窓3a1から外部に露出したタッチパネル2の長方形状の表面の一部が操作領域2aとされている。
【0025】
操作窓3a1から外部に露出したタッチパネル2の操作領域2a以外の部分2b(非表示部2bということもある)は色を付けたり、不透明なフイルムを貼り付けたりしてデザインが施されており、上方からタッチパネル3の裏面側が見えないようになっている。
【0026】
操作領域2aは、環状のガスケット材4の内側に形成されている。操作者は、操作領域2aに映った画像表示装置5のボタン等に対応した位置のタッチパネル2を指で押す(タッチする)ことで、必要とする機能を実現できる。
【0027】
すなわち、タッチパネル装置は、タッチパネル2を指で押すことにより、抵抗膜式、静電容量式、光センサー式などの動作原理で得られた位置情報が、コンピュータ等の処理装置に入力されるように構成されている。そして、透明なタッチパネル2を介して画像表示装置5の情報が操作者に視覚的にフィードバックされる。操作者は、画像表示装置5の上方に配置されたタッチパネル2の操作領域2aをタッチすることで、あたかも実際のボタンを押して情報をコンピュータに入力したのと同様の効果を得ることができる。
【0028】
圧電素子1は、タッチパネル2の操作領域2aの外側に接着されており、外部から見えないように構成されている。言い換えれば、圧電素子1は非表示部2bの領域に取り付けられており、前述のように非表示部2bの裏面側は上方から見えなくなっているため、圧電素子1は操作者からは見えず、外観を損なうこともない。
【0029】
タッチパネル2は、短辺2a1と長辺2a2の長方形の主面を有している。2個の圧電素子1がタッチパネル2の主面における短辺2a1にそれぞれ平行に、かつタッチパネル2の主面における短辺2aに沿ったケース3への固定部から操作領域2a側に間隔L1、L2をおいてそれぞれ設けられている。タッチパネル2のケース3への固定部とは、ガスケット材4が接着されたタッチパネル2の外周部分である。なお、圧電素子1とガスケット材4による固定部との間隔L1、L2は等しい距離である必要はなく、非対称でもよい。
【0030】
従来から、主面が長方形状のタッチパネル2の長辺2a2に沿って帯状の圧電素子1を設けると、圧電素子1を長くできるため発生力を大きくできることが知られている。しかしながら、タッチパネル2の全周囲をケース3に固定して防塵構造とすると、圧電素子1は、大きな変位を得るためには、タッチパネル2のケース3への固定部から離す必要がある。従って、幅方向に寸法上の制約があるタッチパネル2の主面における長辺では、大きな変位を得ようとすると、固定部からなるべく離すため操作領域2aが小さくなり、逆に操作領域2aを大きくしようとすると、タッチパネル装置の幅が大きくなる傾向があった。
【0031】
一方で、幅方向に寸法上の制約があるタッチパネル装置では、長さ方向では寸法上の制約が緩やかであり、タッチパネル2の主面における短辺2a1側の固定部から長い距離を置いて、かつ短辺2a1に平行に圧電素子1を設けることができ、圧電素子1の長さを短くせざるを得ないため圧電素子による発生力は小さくなる傾向はあるものの、タッチパネル2の主面における短辺2a1側の固定部から長い間隔L1、L2をおいて圧電素子1を
設けることが可能となり、タッチパネル2の振動を大きくすることができ、操作者に十分なクリック感を与えることができる。
【0032】
図4に帯状の圧電素子1の長さ方向における断面図を示す。図4において、帯状の圧電素子1は積層構造となっている。積層構造とすることで、圧電素子1に印加する駆動電圧を低下できるため、機器の低電圧化が実現される。また、図4において、符号10aは圧電体層であり、符号11、12は外部電極、符号13a、13bは内部電極、符号14a、14bは端面電極である。
【0033】
圧電体層10aは、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスから形成され、外部電極11、12、端面電極14a、14bは厚膜印刷や蒸着などで形成されている。
【0034】
外部電極11と内部電極13aとは、端面電極14aを介して接続されている。一方、外部電極12と内部電極13bとは、端面電極14bを介して接続されている。また、圧電素子1の圧電体層10aは、全て分極がされ伸縮する活性層とされている。そして、図4(a)に示す電圧未印加の状態から、圧電体層10aに分極方向と同じ方向に電場を印加することで、帯状の圧電素子1は、図4(b)に示すように長さ方向に収縮する。
【0035】
このような圧電素子1をタッチパネル2に接着し、帯状の圧電素子1を収縮させると、タッチパネル2が圧電素子1を拘束することから、タッチパネル2が上側(操作者側に凸)に変形し、振動する。
【0036】
図5は、他の形態のタッチパネル装置の説明図であり、図2における圧電素子1とガスケット材4による固定部との間隔L1、L2が等距離ではなく、L1が大きくなっている。具体的には、2つの圧電素子1のうちの1つが、タッチパネル2の長さ方向中央部近傍に接着されている。この場合には、2つの圧電素子1の間のタッチパネル2に操作領域2aが形成されており、それ以外のタッチパネル2の操作窓3aから露出した部分は、非表示部2bとされている。
【0037】
このような構成とすることにより、タッチパネル2の中で最も振動自由度の高い長さ方向中央部に、圧電素子1が接着され振動することになり、その結果として、タッチパネル2、中でも操作領域2aをより大きく振動させることができる。
【0038】
なお、図5では、2つの圧電素子1間を操作領域2aとし、操作領域2a以外の部分を非表示部2bとしたが、圧電素子1とガスケット材4による固定部との間隔L1に位置する部分を、タッチして操作することはないが、画像表示装置5の画像を見ることができる表示部として使用することもできる。
【0039】
図6は、さらに他の形態のタッチパネル装置の説明図であり、圧電素子1は、タッチパネル2の主面における一対の短辺2a1近傍にそれぞれ設けられており、タッチパネル2の長さ方向中央部にも設けられている。タッチパネル2の操作領域2aが、タッチパネルの長さ方向中央部に設けられた圧電素子1の両側に形成されている。
【0040】
すなわち、タッチパネル2には、長さ方向に伸びた矩形状の操作領域2aが2つ設けられており、それらはタッチパネル2の長さ方向に配置されている。その結果、図6からわかるように、タッチパネル3には3箇所の非表示部2b1、2b2、2b3が存在する。それぞれの非表示部2b1、2b2、2b3には、3つの帯状の圧電素子1が、タッチパネル2の裏面側に取り付けられており、これらの取り付け位置はガスケット材6から、それぞれL1、L2、L3だけ間隔をおいて配置されている。
【0041】
特に、圧電素子1は、タッチパネル2の長さ方向中央部近傍に配置されている。このような構成とすることにより、操作領域2aを2画面として、より多くの情報を表示することができると同時に、タッチパネル2の中で最も振動自由度の高い長さ方向中央部に、圧電素子1が接着され、振動することになるため、タッチパネル2を大きく振動させることができる。
【0042】
また、3つの圧電素子1は同時に駆動してもよい。この場合には、タッチパネル2の全面で大きな振動が得られる。また、操作者が一つの操作領域2aに対して入力操作を行うときには、操作領域2aを挟む位置の圧電素子1だけを駆動してもよい。この場合には、圧電素子1で挟まれた操作領域2aを選択的に大きく振動させることができる。
【実施例】
【0043】
広く用いられている有限要素法解析ソフトのANSYSにより、圧電性を考慮したシミュレーションを行った。解析モデルは、タッチパネル2および圧電素子1、ガスケット材4からなり、タッチパネル2と圧電素子1、ガスケット材4を固着させる接着剤は省略した。ガスケット材4をタッチパネル2の全周囲に配置し、ガスケット材4の変位を拘束することで、タッチパネル2の全周囲がケース3に固定されている状況をモデル化した。圧電素子1は帯状の外形をしており、図4に示すように圧電セラミックス層10aと内部電極層13a、13bとが積層構造をなしているものとした。
【0044】
タッチパネル2の材質はアクリルとし、ガスケット材4はヤング率の低い弾性体とした。圧電材料には、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の材料物性値を適用した。
【0045】
以下の実施例においては、タッチパネル2および圧電素子1、ガスケット材4の寸法や材質は統一しており、圧電素子1の数と配置を変更した場合の検討結果を記載する。
【0046】
はじめに、圧電素子1とガスケット材4との間隔について検討を行った。図2に示すように、タッチパネル2の操作領域2aが長さ方向の中央部にあり、その両側に圧電素子1を配置した場合をモデル化した。圧電素子1とガスケット材4との間隔L1、L2を変更させてシミュレーションを行い、タッチパネル2中央部の変位の大きさを求めた。なお、この検討においては、間隔L1、L2は等しいものとした。
【0047】
結果を図7に示す。圧電素子1とガスケット材4との間隔L1、L2が広くなるほど、タッチパネル2の中央部の変位が大きくなり、圧電素子1がタッチパネル2の長さ方向の中央部に配置されたとき、変位が最大になっている。したがって、タッチパネル2の全周囲を固定した場合、長さ方向の中央部近傍に圧電素子1を配置することが、タッチパネル2を大きく振動させるために望ましいことがわかる。
【0048】
次に、図5に示すように、1つの圧電素子1がタッチパネル2の長さ方向の中央部に配置され、その片側に操作領域2aが設けられた場合をモデル化し、変位量の計算を行った。図5における断面B−B’におけるタッチパネルの変位量を図8に示す。図8の横軸は、図5の断面B−B’における長さ方向の位置を示しており、操作領域2aは長さ方向の中央部よりも右側に配置されている。その結果が、図8の実線22である。比較例として、圧電素子1が長さ方向の中央部に1個だけ配置された場合の結果を、破線23で示している。また、タッチパネル2の長さ方向の一辺の長さより短い細長帯状の圧電素子1を一対固着し、一対の圧電素子1は、それぞれ長方形の対角位置近傍から長さ方向の一辺に沿って固着させた場合(特許文献1)の結果を、一点鎖線24で示している。
【0049】
実線22と一点鎖線24とを比較すると、長さ方向の辺に沿って対角位置近傍に圧電素
子を配置する従来技術に比べて、タッチパネル2の長さ方向の中央部近傍に、タッチパネル2の短辺に平行に圧電素子1を配置する方が、タッチパネル2中央部において2.7倍大きい変位が得られることがわかる。実線22で示すように、操作領域2aの両側に圧電素子1を配置した場合においては、破線23で示す圧電素子1が中央部に1つだけの場合に比べて、操作領域2aの領域において、特に大きな変位が得られていることがわかる。
【0050】
最後に、図6のように、タッチパネル2の長さ方向の中央部に圧電素子1が1つ配置され、その両側に操作領域2aおよび圧電素子1が配置された場合をモデル化し、シミュレーションを行った。そのときの断面C−C’におけるタッチパネルの変位量を、図8の実線21として示した。実線22で示した、操作領域2aが片側の場合と比較して、長さ方向中央部の両側で大きな変位が得られていることがわかる。
【0051】
以上の結果から、矩形状のタッチパネル2には長さ方向に伸びた矩形状の操作領域2aが設けられており、タッチパネル2の全周囲がケース3に固定されており、圧電素子1は操作領域2aの外側に、ケース3への固定部から所定間隔をおいて、タッチパネル2の一対の短辺に平行な方向に接着することによって、タッチパネル2とケース3との間の封止性を確保しながら、タッチパネル2の操作領域2aを大きく振動させることができ、その結果、操作者に強いクリック感を与えることが可能となることがわかる。
【符号の説明】
【0052】
1:圧電素子
2:タッチパネル
2a:操作領域
2a1:短辺
2a2:長辺
3:ケース
3a:上蓋
3a1:操作窓
3b:容器
4:ガスケット材
5:画像表示装置
10a:圧電体層
11、12:外部電極
13a、13b:内部電極
14a、14b:端面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置に対して所定間隔をおいて配置された主面が長方形状のタッチパネルと、該タッチパネルが内部に収容され保持固定されるとともに前記タッチパネルにタッチするための操作窓を有するケースと、前記タッチパネルの前記画像表示装置側の主面に接着されるとともに前記タッチパネルを振動させる帯状の複数の圧電素子とを具備し、前記ケースの前記操作窓には前記タッチパネルの操作領域が露出しているタッチパネル装置であって、前記タッチパネルの周囲が前記ケースに固定されているとともに、前記圧電素子が、前記タッチパネルの前記画像表示装置側の主面における短辺にそれぞれ平行で、かつ前記画像表示装置側の主面における短辺に沿った前記ケースとの固定部から前記操作領域側に所定距離をおいてそれぞれ設けられていることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
一対の前記圧電素子の一方が、前記タッチパネルの前記画像表示装置側の主面における一方の短辺近傍に設けられ、他方が前記タッチパネルの長さ方向中央部に設けられており、前記タッチパネルの操作領域が、一方の前記圧電素子と他方の前記圧電素子との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記圧電素子は、前記タッチパネルの前記画像表示装置側の主面における一対の短辺近傍にそれぞれ設けられているとともに、前記タッチパネルの長さ方向中央部にも設けられており、前記タッチパネルの操作領域が、前記タッチパネルの長さ方向中央部に設けられた圧電素子の両側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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