説明

タッチパネル装置

【課題】不特定多数の使用者が使用し、また常時稼動する状態であっても、入力パネルで入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を正しく特定することができるタッチパネル装置を提供する。
【解決手段】タッチパネル装置は、較正処理とは無関係な内容の情報を含む画像を表示面1に表示しながら、画像に含まれるマークを目標にして入力を受け付けた入力パネル2上の位置を示す位置データを、マークの位置別に記憶部33に記憶する。タッチパネル装置は、マークの位置別に、位置データが示す入力パネル2上の位置を平均し、平均した位置から特定される表示面1上の位置とマークの位置との偏差が小さくなるように、入力パネル2上で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置を較正する。較正処理に関する専用の画像を表示すること無く、表示面1上の位置の較正が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力パネルで入力を受け付けた位置とディスプレイの表示面上の位置との対応を較正するタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示面に重ねて入力パネルを配設してあり、表示面に画像を表示すると共に、入力パネルで使用者からの入力を受け付けるタッチパネル装置が使用されている。駅又は博物館等の公共施設に設置されて不特定多数が利用する情報ディスプレイにも、タッチパネル装置が使用されているものがある。使用者は表示面に表示された画像に合わせて入力パネルに入力を行い、タッチパネル装置は、入力パネルで入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を特定し、特定した位置での表示内容に応じた処理を実行する。しかしながら、入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を特定した結果は、タッチパネル装置によってばらつきがある。また同じタッチパネル装置であっても、経年変化等の原因によって、表示面上の位置を特定した結果が変動することがある。特定した表示面上の位置が不正確である場合は、タッチパネル装置が使用者の意図とは異なった動作を行う虞がある。そこで、タッチパネル装置では、入力パネルで入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を適宜較正する必要がある。特許文献1には、基準マークをディスプレイに表示し、基準マークを目標にした入力を受け付け、入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置が基準マークに対応するように、タッチパネル装置を調整する調整モードを実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−263275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、調整モードによりタッチパネル装置を調整する際に、使用者に高精度の作業を要求するので、使用者の負担が大きい。また調整モードという特別な機能を実行する必要があるので、タッチパネル装置を調整している間は、情報表示等のタッチパネル装置が本来行うべき機能を実行できない。従って、情報ディスプレイ等、不特定多数の使用者が使用し、また常時稼動しているタッチパネル装置では、調整モードにより、入力パネルで入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を較正することは困難である。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、通常の画像表示と並行して、入力パネルで入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を較正する処理を実行することにより、不特定多数の使用者が使用し、また常時稼動する状態であっても、入力パネルで入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を正しく特定することができるタッチパネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタッチパネル装置は、画像を表示する表示面と、該表示面に重ねて配置してあり、面内の何れかの位置を指定する入力を受け付ける入力パネルと、該入力パネル上で入力を受け付けた位置から、該位置に対応する前記表示面上の位置を特定する位置特定手段と、前記表示面に画像を表示させ、表示中の画像及び前記位置特定手段が特定した位置に応じた他の画像を前記表示面に表示させる表示処理手段とを備えるタッチパネル装置において、前記表示処理手段が前記表示面に表示させることが可能な画像の内、入力の目標となるマークを所定の位置に配置してある特定の画像を登録してある登録手段と、前記登録手段で登録してある前記特定の画像が前記表示面に表示された場合に、前記表示処理手段での処理と並行して、前記入力パネル上で入力を受け付けた位置を、前記マークの前記表示面上の位置別に記憶する記憶手段と、該記憶手段での記憶内容に基づいて、前記特定の画像を前記表示面が表示した状態で前記入力パネル上で入力を受け付けた位置に対応する前記表示面上の位置と前記特定の画像に含まれる前記マークの前記表示面上の位置との偏差を小さくすべく、前記位置特定手段で特定する位置を較正する較正手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、表示面に画像を表示するタッチパネル装置は、入力の目標となるマークを所定の位置に配置した画像を登録しておき、登録された画像が表示された場合に、入力パネル上で入力を受け付けた位置を記憶し、記憶した位置に基づいて、入力パネル上で入力を受け付けた位置から特定する表示面上の位置を較正する。これにより、タッチパネル装置は、入力パネル上で入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を較正するための専用の画像を表示することなく、画像の表示と並行して較正を行うことができる。
【0008】
本発明に係るタッチパネル装置は、前記登録手段は、前記マークを前記表示面上で同一直線上にない互いに異なる三個の位置のいずれかに配置してある一又は複数の特定の画像を少なくとも登録してあり、前記三個の位置の夫々に配置された前記マークのいずれもが前記一又は複数の特定の画像の何れかに含まれていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、タッチパネル装置は、入力の目標となるマークが同一直線上にない互いに異なる少なくとも三個の位置の夫々に配置された一又は複数の画像を用いて、入力パネルで入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を較正する処理を行う。これにより、表示面全体で位置を較正することができる。
【0010】
本発明に係るタッチパネル装置は、前記記憶手段は、前記マークの前記表示面上の位置別に、前記入力パネル上で入力を受け付けた複数の位置を記憶する手段を有し、前記較正手段は、前記マークの前記表示面上の位置別に、前記入力パネル上で入力を受け付けた複数の位置の平均を計算する手段と、前記マークの前記表示面上の位置別に計算した前記平均に基づいて、前記位置特定手段で特定する位置を較正する手段とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、タッチパネル装置は、マークを目標として入力パネル上で入力を受け付けた位置をマークの位置別に平均し、平均した位置に基づいて表示面上の位置を較正することにより、較正の精度を高める。
【0012】
本発明に係るタッチパネル装置は、時刻を計測する計時手段を更に備え、前記記憶手段は、所定の時間帯別に、前記入力パネル上で入力を受け付けた位置を記憶する手段を更に有し、前記較正手段は、定期的に、前記計時手段が計測する時刻を含む時間帯についての前記記憶手段での記憶内容に基づいて、前記位置特定手段で特定する位置を較正する手段を更に有することを特徴とする。
【0013】
本発明においては、タッチパネル装置は、定期的に較正を行うことにより、入力パネルで入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置の時間経過に応じた変動を防止する。
【0014】
本発明に係るタッチパネル装置は、周囲又は内部の温度を測定する温度測定手段を備え、前記記憶手段は、前記温度測定手段が測定する温度が含まれる所定の温度範囲別に、前記入力パネル上で入力を受け付けた位置を記憶する手段を更に有し、前記較正手段は、前記温度測定手段が測定する温度が含まれる温度範囲が、所定の一の温度範囲から他の温度範囲へ変化した場合に、前記他の温度範囲についての前記記憶手段での記憶内容に基づいて、前記位置特定手段で特定する位置を較正する手段を更に有することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、タッチパネル装置は、周囲又は内部の温度が一の温度範囲から他の温度範囲へ変化した場合に較正を行うことにより、入力パネルで入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置が温度変化に応じて変動することを防止する。
【0016】
本発明に係るタッチパネル装置は、起動時に、前記登録手段で登録してある画像の内、前記マークの前記表示面上の位置が同一直線上にない互いに異なる位置である三個以上の所定の画像を、前記表示面に順次的に表示させる手段を更に備えることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、タッチパネル装置は、起動時に、入力パネル上で入力を受け付けた位置から特定する表示面上の位置を較正する。
【発明の効果】
【0018】
本発明にあっては、タッチパネル装置は、入力パネル上で入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を較正するために使用者が心理的な負担を感じることが無く、また画像を表示する機能を中止することなく較正を行うことができる。従って、不特定多数の使用者が使用し、また常時稼動しているタッチパネル装置においても、表示面上の位置を正しく特定することができように、入力パネルで入力を受け付けた位置に対応する表示面上の位置を較正することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のタッチパネル装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】タッチパネル装置が実行する起動処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】起動画像の例を示す模式図である。
【図4】起動画像の例を示す模式図である。
【図5】起動画像の例を示す模式図である。
【図6】タッチパネル装置が位置データを蓄積する処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】登録画像の例を示す模式図である。
【図8】タッチパネル装置が位置計算パラメータを更新する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明のタッチパネル装置の内部構成を示すブロック図である。タッチパネル装置は、液晶パネル又はEL(エレクトロルミネセンス)パネル等の画像表示パネルでなる表示面1と、表示面に画像を表示させる制御を行う表示制御部11と、表示面1に重ねて配設された入力パネル2とを備えている。表示面1及び入力パネル2は矩形平面状に形成されている。入力パネル2は、使用者の操作により、面内の何れかの位置を指定する入力を受け付け、入力を受け付けた位置を抵抗膜方式又は静電容量方式等の方法により検出し、検出した位置を示す位置データを出力する。
【0021】
タッチパネル装置は、更に、演算を実行するCPU31と、演算に必要な各種のデータを記憶するRAM32と、ハードディスク又は不揮発性メモリ等からなる記憶部33とを備えている。記憶部33は、タッチパネル装置の動作に必要な各種のプログラム及びデータを記憶している。CPU31は、必要なプログラム及びデータを記憶部33からRAM32へロードし、タッチパネル装置の動作に必要な情報処理を実行する。CPU31には、表示制御部11へ画像データを出力する出力部34が接続されている。CPU31は、出力部34から表示制御部11へ画像データを出力し、表示制御部11は画像データに基づいて表示面1に画像を表示させる。なお、記憶部33は単一である必要はなく、記憶部33は複数の記憶手段でなる形態であってもよい。また記憶部33の一部は図示しない通信ネットワークを介してCPU31に接続されている形態であってもよい。
【0022】
またCPU31には、入力パネル2から出力された位置データを入力される入力部35が接続されている。更にCPU31には、時刻を計測する計時部(計時手段)36と、タッチパネル装置内の温度を測定する温度センサ(温度測定手段)37とが接続されている。なお、タッチパネル装置は、CPU31での処理で時刻を計測する形態であってもよい。
【0023】
タッチパネル装置は、駅又は博物館等の公共施設に設置され、施設の案内、展示物の説明、ニュース又は広告等の各種の情報を表す画像を表示する情報ディスプレイである。タッチパネル装置は、各種の情報と共に、表示内容を変更させるための入力の目標となるマークとを含む画像を表示面1に表示する。不特定多数の使用者は、表示面1に表示された画像を目視し、画像中のマークを目標として入力パネル2の一部に接触することにより、入力パネル2に対して面内の何れかの位置を指定する入力を行う。入力パネル2は、入力を受け付けた位置を検出し、入力を受け付けた入力パネル2上の位置を示す位置データを出力する。位置データは入力部35へ入力される。CPU31は、入力された位置データに基づいて、入力パネル2上で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置を計算し、表示面1に表示中の画像及び計算した位置に応じて、表示面1の表示内容を変更する処理を行う。例えば、表示面1は、駅の一部の案内図と共に、他の部分の案内図を表示させるためのマークと案内図の表示を終了させるためのマークとを含む画像を表示する。CPU31は、入力パネル2上で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置に応じて、表示面1に他の部分の案内図を表示させる処理、又は案内図の表示を終了する処理を実行する。
【0024】
記憶部33は、表示面1に表示させる画像を表す多数の画像データと、表示面1に画像を表示させる表示処理をCPU31に実行させる表示プログラムとを記憶している。CPU31は、表示プログラムに従って、時間の経過又は入力パネル2での入力に応じて、記憶部33に記憶している多数の画像データから必要な画像データを選択し、選択した画像データを出力部34から表示制御部11へ出力する処理を実行する。表示制御部11は、出力部34から出力された画像データに基づいた画像を表示面1に表示させる。
【0025】
また記憶部33は、入力パネル2上で入力を受け付けた位置から、該位置に対応する表示面1上の位置を計算する位置計算処理をCPU31に実行させる位置計算プログラムを記憶している。位置計算プログラムは、所定の関数により表示面1上の位置を計算するためのプログラムであり、関数にはパラメータが含まれる。記憶部33は、位置計算処理で用いるパラメータの値である位置計算パラメータを記憶している。例えば、入力パネル2上の座標を(x,y)、表示面1上の座標を(X,Y)とし、位置計算プログラムは、関数X=a・x+b及び関数Y=c・y+dにより表示面1上の位置を計算するためのプログラムである。a,b,c,dは変更可能なパラメータであり、位置計算パラメータはa,b,c,dの具体的な値である。CPU31は、入力パネル2上で入力を受け付けた位置を示す位置データが入力部35に入力された場合に、位置計算プログラムに従って、位置計算パラメータを代入した関数により、位置データが示す位置に対応する表示面1上の位置を計算する処理を行う。このように、タッチパネル装置は、位置計算処理により、入力パネル2上で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置を特定する。
【0026】
また記憶部33は、位置計算パラメータの値を変更することにより位置計算処理で計算する表示面1上の位置を較正する較正処理をCPU31に実行させる較正プログラムを記憶している。CPU31は、較正プログラムに従って、表示面1に特定の画像が表示された場合に、入力部35に入力された位置データを記憶部33に記憶させ、記憶部33に記憶させた位置データに基づいて位置計算パラメータの値を変更する処理を行う。
【0027】
記憶部33は、更に、記憶部33で記憶している多数の画像データの内、較正処理で利用する特定の画像を表す画像データを登録した登録データを記憶している。登録データは、特定の画像を表す画像データを示す情報を記録したデータであり、記憶部33には予め内容が定められた登録データが記憶されている。登録データに登録された画像データが表す登録画像は、施設の案内等、較正処理とは無関係な内容の情報と共に、表示内容を変更させるための入力の目標となるマークを含む画像である。このように、記憶部33は本発明における登録手段として機能する。登録画像に含まれるマークは、他の画像を表示させるためのマーク又は登録画像の表示を終了させるためのマーク等、どのような種類のマークであってもよい。また登録画像に含まれるマークは、表示面1上で予め定められている三個以上の基準位置の内のいずれかの位置に配置されている。基準位置の内の少なくとも三個は、表示面1上で同一直線上にのらないように定められている。また夫々の基準位置は、表示面1上の四隅の近傍であることが望ましい。記憶部33で記憶する登録データには、少なくとも、表示面1上でのマークの位置が互いに異なる三個以上の登録画像の夫々を表す画像データを登録している。
【0028】
次に、本発明のタッチパネル装置が実行する処理を説明する。タッチパネル装置は、起動時、表示処理を開始する前に位置計算パラメータを定める起動処理を行う。記憶部33は、画像データとして、起動処理において表示面1に表示する画像である起動画像を表す起動処理用の画像データを記憶している。起動画像は、入力の目標となるマークを、基準位置に配置した状態で含んでいる。記憶部33は三個以上の起動処理用の画像データを記憶しており、各起動画像が含むマークは、互いに位置が異なっている。
【0029】
図2は、タッチパネル装置が実行する起動処理の手順を示すフローチャートである。図示しない起動スイッチをオンされる等の方法により起動指示を受け付けた場合に、タッチパネル装置の各部に電力が供給され、タッチパネル装置は起動する(S11)。このとき、CPU31は、記憶部33から表示プログラムをRAM32へロードし、表示プログラムに従って以降の処理を実行する。CPU31は、起動処理用の画像データを記憶部33から読み出し、読み出した画像データを出力部34から表示制御部11へ出力し、表示制御部11は、画像データに基づいて、最初の起動画像を表示面1に表示させる(S12)。
【0030】
図3、図4及び図5は、起動画像の例を示す模式図である。起動画像は、入力の目標となるマークを含み、マークを目標とした入力を使用者に促すメッセージを含む。タッチパネル装置は、次に、起動画像を目視した使用者からの入力パネル2への入力を待ち受ける(S13)。入力パネル2で入力の受け付けがない場合は(S13:NO)、タッチパネル装置は、入力パネル2への入力の待ち受けを続行する。入力パネル2で入力を受け付けた場合は(S13:YES)、入力パネル2は、入力を受け付けた入力パネル2上の位置を示す位置データを出力し、位置データは入力部35に入力される。CPU31は、次に、三個以上の起動画像を全て表示したか否かを判定する(S14)。まだ表示していない起動画像がある場合は(S14:NO)、CPU31は、次の起動画像を表示面1に表示させる処理を行う(S15)。ステップS15では、次の起動処理用の画像データを記憶部33から読み出して出力部34から出力し、表示制御部11は、次の起動画像を表示面1に表示させる。このとき、表示面1には、入力の目標となるマークの位置が変更された起動画像が表示される。CPU31は、次に、処理をステップS13へ戻す。ステップS12〜S15の処理により、入力の目標となるマークの位置が互いに異なる三個以上の起動画像が順次的に表示面1に表示される。図3、図4及び図5に示す起動画面は、順次的に表示される三個の起動画像の例である。夫々の起動画面中で、入力の目標となるマークは、互いに異なる基準位置に配置されている。
【0031】
ステップS14で三個以上の起動画像を全て表示している場合は(S14:YES)、CPU31は、入力を受け付けた入力パネル2上の位置から、位置計算パラメータを計算する処理を行う(S16)。ステップS16では、起動画面に含まれるマークの位置と入力を受け付けた入力パネル2上の位置に対応する表示面1上の位置との偏差を小さくするように位置計算パラメータを計算する。例えば、表示面1上の基準位置の座標を(Xi,Yi)とし、その基準位置にマークが配置された画像が表示されている場合に入力部35に入力された位置データが示す入力パネル2上の位置の座標を(xi,yi)とする。前述のように位置計算プログラムが一次関数を用いるとすると、Xi=a・xi+bが成り立ち、起動画像の数をn個とすると、X1=a・x1+b,X2=a・x2+b,…,Xn=a・xn+bのn個の式が成り立つ。CPU31は、これらのn個の式を用いた最小二乗法を実行することにより、位置計算パラメータa及びbを計算する。CPU31は、同様に、Y1=c・y1+d,Y2=c・y2+d,…,Yn=c・yn+dのn個の式を用いた最小二乗法を実行することにより、位置計算パラメータc及びdを計算する。
【0032】
CPU31は、次に、計算した位置計算パラメータを記憶部33に記憶させ、起動処理を終了し、表示処理を開始する。以上のように、タッチパネル装置は、起動時に位置計算パラメータを計算する処理を行う。位置計算パラメータは、起動画面に含まれるマークの位置とマークを目標にした入力を受け付けた入力パネル2上の位置に対応する表示面1上の位置との偏差を小さくするように求められる。このため、起動後のタッチパネル装置は、入力を受け付けた入力パネル2上の位置に対応する表示面1上の位置を正確に特定することが可能となる。
【0033】
起動処理の終了後に開始した表示処理では、CPU31は、記憶部33に記憶した画像データを出力部34から表示制御部11へ出力することによって、較正処理とは無関係な内容の情報を含む各種の画像を表示面1に表示させる。また、入力パネル2で入力を受け付けた場合は、入力パネル2は入力を受け付けた位置を示す位置データを出力し、入力部35は位置データを入力される。CPU31は、位置計算プログラムに従って、記憶部33に記憶している位置計算パラメータを用いた位置計算処理を行うことにより、位置データから、入力を受け付けた入力パネル2上の位置に対応する表示面1上の位置を計算する。CPU31は、計算した表示面1上の位置に応じた処理を実行する。通常は、CPU31は、表示面1に表示した画像及び計算した表示面1上の位置に関連付けられている他の画像を表示面1に表示させる処理を行う。また表示処理では、CPU31は、時間経過に応じた画像を表示面1に表示させる処理を行ってもよい。
【0034】
タッチパネル装置は、表示処理と並行して、位置計算パラメータの値を変更することにより、位置計算処理で計算する表示面1上の位置を較正する較正処理を実行する。較正処理は、位置データを蓄積する処理と、所定のタイミングで位置計算パラメータを更新する処理とを含む。図6は、タッチパネル装置が位置データを蓄積する処理の手順を示すフローチャートである。CPU31は、較正プログラムに従って、以下の処理を実行する。CPU31は、表示処理に並行して、登録データに登録された画像データに基づいて登録画像が表示面1に表示されたか否かを判定する(S21)。
【0035】
図7は、登録画像の例を示す模式図である。図7には、博物館内に設置されたタッチパネル装置で展示物を説明するための登録画像を示す。登録画像は、このように、較正処理とは無関係な内容の情報を表示するための画像である。図7に示す登録画像には、入力のマークとして、次の説明を表示させるための右向き矢印のマークと、前の説明を表示させるための左向き矢印のマークとが含まれている。更に図7に示す登録画像には、入力のマークとして、画像に含まれる動画像の再生を指示するためのマークが含まれている。これらのマークは、表示面1上の基準位置の夫々に配置されている。なお、図7には、一つの登録画像中に三個のマークが含まれている例を示したが、本発明では、一つの登録画像中に一つ又は二つのマークが含まれていてもよい。三個以上の基準位置の夫々に配置されたマークは、登録画像の何れかに含まれている。
【0036】
ステップS21で登録画像が表示されていない場合は(S21:NO)、CPU31は、表示処理に並行して、登録画像が表示面1に表示されたか否かの判定を繰り返す。登録画像が表示面1に表示された場合は(S21:YES)、タッチパネル装置は、登録画像に含まれており、表示面1上の基準位置に配置されたマークを目標とした使用者からの入力パネル2への入力を待ち受ける(S22)。入力パネル2で入力の受け付けがない場合は(S22:NO)、CPU31は、表示面1で表示する画像が時間の経過等に応じて変更されたか否かを判定する(S23)。画像が変更されていない場合は(S23:NO)、CPU31は、処理をステップS22へ戻す。画像が変更された場合は(S23:YES)、CPU31は、処理をステップS21へ戻す。
【0037】
ステップS22で入力パネル2が入力を受け付けた場合は(S22:YES)、入力パネル2は、入力を受け付けた入力パネル2上の位置を示す位置データを出力し、CPU31は、入力部35で入力された位置データを記憶部33に記憶させる(S24)。ステップS24では、CPU31は、位置データを、登録画像に含まれるマークが配置された基準位置、計時部36が計時する時刻が含まれる時間帯、及び温度センサ37が測定する温度が含まれる温度範囲に関連付けて記憶部33に記憶させる。互いに異なる登録画像が表示面1に表示された場合に入力された位置データであっても、登録画像に含まれるマークを配置した位置が同一の基準位置である場合は、CPU31は、同一の基準位置に関連付けて位置データを記憶部33に記憶させる。CPU31は、ステップS24を、表示処理とは並行して行う。ステップS24が終了した後、CPU31は、位置データを蓄積する処理を終了し、表示処理に並行して、位置データを蓄積する処理をステップS21から再開する。
【0038】
ステップS21〜S24の処理により、位置データが記憶部33に蓄積される。位置データは、基準位置別、時間帯別及び温度範囲別に記憶部33に記憶される。時間帯は、例えば、午前6時〜午後6時の昼間時間帯と、午後6時〜午前6時の昼間時間帯とに分けられている。また温度範囲は、例えば、所定の温度未満の低温範囲と、所定の温度以上の高温範囲とに分けられている。
【0039】
図8は、タッチパネル装置が位置計算パラメータを更新する処理の手順を示すフローチャートである。CPU31は、較正プログラムに従って、以下の処理を実行する。CPU31は、表示処理及び位置データを蓄積する処理に並行して、計時部36が計測する時刻が所定の時刻になったか否かを判定する(S31)。時刻が所定の時刻になった場合は(S31:YES)、CPU31は、所定の時刻を含む時間帯に関連付けて記憶部33で記憶している位置データの内、前日に記憶した位置データを読み出す(S33)。時刻がまだ所定の時刻になっていない場合は(S31:NO)、CPU31は、温度センサ37が測定する温度の含まれる温度範囲が、所定の一の温度範囲から他の温度範囲へ変化したか否かを判定する(S32)。温度範囲の変化がない場合は(S32:NO)、CPU31は、処理をステップS31へ戻す。温度範囲が変化した場合は(S32:YES)、CPU31は、変化した後の温度範囲に関連付けて記憶部33で記憶している位置データの内、前日に記憶した位置データを読み出す(S33)。ステップS33で読み出された位置データは、三個以上の基準位置のいずれかに関連付けられている。
【0040】
ステップS33の後、CPU31は、読み出した位置データの数が、予め定められた数以上の十分な数であるか否かを判定する(S34)。読み出した位置データの数が十分ではない場合は(S34:NO)、CPU31は、所定の時刻を含む時間帯又は変化した後の温度範囲に関連付けて記憶部33で記憶している位置データの内、更に前日に記憶した位置データを読み出す(S35)。ステップS35が終了した後は、CPU31は、処理をステップS34へ戻す。ステップS34で読み出した位置データの数が十分である場合は(S34:YES)、CPU31は、基準位置別に、位置データが示す入力パネル2上の位置の平均を計算する(S36)。ステップS36では、CPU31は、一の基準位置に関連付けられた複数の位置データから、所定の許容ばらつき範囲から外れてばらついた位置データを除外し、除外していない複数の位置データが示す入力パネル2上の位置の平均を計算する。例えば、CPU31は、x座標の値の平均値とy座標の値の平均値とを計算する。CPU31は、各基準位置に関連付けられた位置データに対して同様の処理を行うことにより、基準位置別に入力パネル2上の位置の平均を計算する。
【0041】
CPU31は、次に、基準位置別に計算した入力パネル2上の位置の平均から、位置計算パラメータを計算する処理を行う(S37)。ステップS37では、基準位置と入力パネル2上の位置の平均との偏差がより小さくなるように位置計算パラメータを計算する。例えば、基準位置の座標(Xj,Yj)について計算した入力パネル2上の位置の平均の座標を(xj,yj)とし、基準位置の数をmとする。CPU31は、X1=a・x1+b,X2=a・x2+b,…,Xm=a・xm+bのm個の式を用いた最小二乗法を実行することにより、位置計算パラメータa及びbを計算する。CPU31は、同様に、Y1=c・y1+d,Y2=c・y2+d,…,Ym=c・ym+dのm個の式を用いた最小二乗法を実行することにより、位置計算パラメータc及びdを計算する。
【0042】
CPU31は、次に、記憶部33で記憶している位置計算パラメータを、ステップS37で計算した位置計算パラメータで置き換えることにより、位置計算パラメータを更新する(S38)。ステップS38が終了した後、CPU31は、位置計算パラメータを更新する処理を終了し、表示処理及び位置データを蓄積する処理に並行して、位置計算パラメータを更新する処理をステップS31から再開する。位置計算パラメータを更新した以後は、CPU31は、更新した位置計算パラメータを用いた位置計算処理を実行する。ステップS31〜S38の処理で位置計算パラメータを更新することにより、タッチパネル装置は、定期的に、及び内部温度の変動に応じて、位置計算処理で計算する表示面1上の位置を較正する。またステップS31〜S38の処理により、タッチパネル装置は、入力の目標となるマークの表示面1上での位置と、入力パネル2上で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置との偏差を可及的に小さくすることができる。
【0043】
以上詳述した如く、本発明においては、タッチパネル装置は、較正処理とは無関係な内容の情報を含む画像を表示面1に表示しながら、入力パネル2上で入力を受け付けた位置を示す位置データを記憶し、記憶した位置データに基づいて位置計算パラメータを更新する。較正処理に関する専用の画像を表示することがないので、使用者はタッチパネル装置が較正処理を行っていることを意識することが無く、タッチパネル装置が較正処理を行う際に使用者が心理的な負担を感じることが無い。またタッチパネル装置は、本来の機能である画像の表示と並行して較正処理を実行するので、本来の機能を中止することなく較正処理を実行することができる。従って、駅又は博物館等の公共施設に設置された情報ディスプレイ等、不特定多数の使用者が使用し、また常時稼動しているタッチパネル装置においても、入力パネル2上で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置を較正することが可能となる。
【0044】
また本発明においては、較正処理に用いる登録画像は、同一直線上にない三個以上の基準位置のいずれかに配置されたマークを含む画像であるので、同一直線上にない三個以上の基準位置を基準とした較正処理を行う。このため、タッチパネル装置は、表示面1の全体に亘って、入力パネル2上で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置を較正することが可能となる。また本発明においては、基準位置に配置されたマークを目標として入力パネル2上で入力を受け付けた位置を基準位置別に平均し、平均した位置に応じて較正処理を行う。入力パネル2に対して入力を行う使用者は不特定多数の使用者であるので、入力位置はばらつくものの、入力位置を平均した上で較正を行うことにより、較正の精度を高めることが可能となる。
【0045】
また本発明においては、タッチパネル装置は、定期的に較正処理を行うことにより、入力パネル2で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置の時間経過に応じた変動を防止することができる。また所定の時刻に較正処理を行うことにより、日中の温度変化等の周期的な環境変動に応じた、入力パネル2で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置の変動を防止することができる。また本発明においては、タッチパネル装置は、内部の温度が一の温度範囲から他の温度範囲へ変化した場合に較正処理を行うことにより、入力パネル2で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置が内部温度の変化に応じて変動することを防止することができる。
【0046】
なお、本実施の形態においては、入力パネル2で入力を受け付けた位置から位置関数を用いて表示面1上の位置を計算する例を示したが、タッチパネル装置は、その他の方法で表示面1上の位置を計算する形態であってもよい。例えば、タッチパネル装置は、二次関数等の一次関数以外の関数を用いて表示面1上の位置を計算する形態であってもよい。また例えば、タッチパネル装置は、予め定められた方法で表示面1上の位置を一旦計算し、計算結果を補正することによって表示面1上の位置を計算し、補正に利用するパラメータを更新することによって較正を行う形態であってもよい。
【0047】
また、本実施の形態においては、タッチパネル装置内の温度が変化した場合に較正処理を行う形態を示したが、タッチパネル装置は、周囲の温度を測定し、周囲の温度が一の温度範囲から他の温度範囲へ変化した場合に較正処理を行う形態であってもよい。この形態の場合は、タッチパネル装置は、入力パネル2で入力を受け付けた位置に対応する表示面1上の位置が周囲の温度の変化に応じて変動することを防止することができる。また、本実施の形態においては、ソフトウェアを用いてタッチパネル装置に必要な処理を実行する形態を示したが、タッチパネル装置は、必要な処理の一部又は全部を実行する専用回路等のハードウェアを備えた形態であってもよい。また本実施の形態においては、タッチパネル装置は内部に記憶した画像データに基づいて画像を表示する形態を示したが、タッチパネル装置は、外部から送信された画像データを受信し、受信した画像データに基づいた画像を表示面1に表示する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 表示面
2 入力パネル
31 CPU
33 記憶部
36 計時部(計時手段)
37 温度センサ(温度測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示面と、該表示面に重ねて配置してあり、面内の何れかの位置を指定する入力を受け付ける入力パネルと、該入力パネル上で入力を受け付けた位置から、該位置に対応する前記表示面上の位置を特定する位置特定手段と、前記表示面に画像を表示させ、表示中の画像及び前記位置特定手段が特定した位置に応じた他の画像を前記表示面に表示させる表示処理手段とを備えるタッチパネル装置において、
前記表示処理手段が前記表示面に表示させることが可能な画像の内、入力の目標となるマークを所定の位置に配置してある特定の画像を登録してある登録手段と、
前記登録手段で登録してある前記特定の画像が前記表示面に表示された場合に、前記表示処理手段での処理と並行して、前記入力パネル上で入力を受け付けた位置を、前記マークの前記表示面上の位置別に記憶する記憶手段と、
該記憶手段での記憶内容に基づいて、前記特定の画像を前記表示面が表示した状態で前記入力パネル上で入力を受け付けた位置に対応する前記表示面上の位置と前記特定の画像に含まれる前記マークの前記表示面上の位置との偏差を小さくすべく、前記位置特定手段で特定する位置を較正する較正手段と
を備えることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記登録手段は、前記マークを前記表示面上で同一直線上にない互いに異なる三個の位置のいずれかに配置してある一又は複数の特定の画像を少なくとも登録してあり、前記三個の位置の夫々に配置された前記マークのいずれもが前記一又は複数の特定の画像の何れかに含まれていること
を特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、
前記マークの前記表示面上の位置別に、前記入力パネル上で入力を受け付けた複数の位置を記憶する手段を有し、
前記較正手段は、
前記マークの前記表示面上の位置別に、前記入力パネル上で入力を受け付けた複数の位置の平均を計算する手段と、
前記マークの前記表示面上の位置別に計算した前記平均に基づいて、前記位置特定手段で特定する位置を較正する手段と
を有することを特徴とする請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
時刻を計測する計時手段を更に備え、
前記記憶手段は、所定の時間帯別に、前記入力パネル上で入力を受け付けた位置を記憶する手段を更に有し、
前記較正手段は、定期的に、前記計時手段が計測する時刻を含む時間帯についての前記記憶手段での記憶内容に基づいて、前記位置特定手段で特定する位置を較正する手段を更に有すること
を特徴とする請求項3に記載のタッチパネル装置。
【請求項5】
周囲又は内部の温度を測定する温度測定手段を備え、
前記記憶手段は、前記温度測定手段が測定する温度が含まれる所定の温度範囲別に、前記入力パネル上で入力を受け付けた位置を記憶する手段を更に有し、
前記較正手段は、前記温度測定手段が測定する温度が含まれる温度範囲が、所定の一の温度範囲から他の温度範囲へ変化した場合に、前記他の温度範囲についての前記記憶手段での記憶内容に基づいて、前記位置特定手段で特定する位置を較正する手段を更に有すること
を特徴とする請求項3又は4に記載のタッチパネル装置。
【請求項6】
起動時に、前記登録手段で登録してある画像の内、前記マークの前記表示面上の位置が同一直線上にない互いに異なる位置である三個以上の所定の画像を、前記表示面に順次的に表示させる手段を更に備えること
を特徴とする請求項2から5までのいずれか一つに記載のタッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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