説明

タッチパネル駆動装置、タッチパネルの駆動方法、表示装置、プログラムおよび記録媒体

【課題】タッチ位置の誤検出を防止できるとともに、操作性の良好なタッチパネル駆動装置を実現する。
【解決手段】本発明に係るタッチパネルコントローラ40は、タッチパネル駆動部41と、入力操作検出部42と、液晶パネル11から発生するノイズの影響を低減するノイズ低減部44と、表示画像からノイズの量を推定するノイズ量推定部43と、前記ノイズの量に応じてノイズ低減処理のレベルを制御する低減レベル制御部45とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを駆動するタッチパネル駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力デバイスとしてタッチパネルを備える表示装置では、表示装置の表示動作によるノイズによって、タッチパネルが誤動作するという問題がある。例えば、タッチパネルを備える液晶表示装置では、通常、フリッカあるいは焼付き現象等の防止対策として、液晶に作用する駆動信号の極性をフレーム周期毎やライン走査周期毎に反転させている。この場合、一定の電圧値に設定される共通電圧を前記周期毎に極性反転させることが多い。この共通電圧の極性を反転させるタイミングでノイズが発生する。このノイズがタッチパネルの駆動電圧に重畳されることにより、タッチパネルの感度の劣化やタッチ位置の誤検出が発生する。
【0003】
そのため従来の表示装置では、表示動作によるノイズを低減するためのノイズフィルタを設ける措置が講じられている。しかしながら、表示動作によるノイズの量は、表示される画像や表示装置の駆動方式によって変化する。そのため、ノイズフィルタによるノイズ低減量は、想定される最大のノイズ量に対応させる必要がある。
【0004】
一般に、ノイズフィルタによるノイズ低減量が多くなるほど、タッチパネルの応答速度が長くなる。よって、ノイズフィルタによるノイズ低減量を、想定される最大のノイズ量に対応させた場合、常にタッチパネルの応答速度が長くなり、操作性が低下してしまう。
【0005】
これに対し、特許文献1には、共通電圧の極性反転タイミングに対応させてマスク信号電圧を生成し、このマスク信号電圧に同期させてタッチパネルの駆動を一時的に停止する技術が開示されている。これにより、共通電圧の極性反転によるノイズの影響を受けることなく、正確にタッチ位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−100186号公報(2011年5月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、共通電圧の極性反転タイミングに合わせてタッチパネルの駆動を行うため、座標更新レートが液晶駆動に律束されてしまう。通常の液晶表示装置の駆動周波数は60Hzであるため、座標更新レートは60Hzを上回ることができない。そのため、特許文献1に記載の技術は、ペン入力等の速い座標更新レートを必要とする用途には適用できないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、タッチ位置の誤検出を防止できるとともに、操作性の良好なタッチパネル駆動装置およびタッチパネルの駆動方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るタッチパネル駆動装置は、表示装置に用いられるタッチパネルを駆動する駆動手段と、前記タッチパネルの出力信号に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出手段と、前記表示装置の表示画面から発生するノイズが前記検出手段に与える影響を低減するノイズ低減手段とを備えるタッチパネル駆動装置であって、前記表示画面に表示される画像から前記ノイズの量を推定するノイズ量推定手段と、前記ノイズ量推定手段が推定した前記ノイズの量に応じて、前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御する低減レベル制御手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るタッチパネルの駆動方法は、表示装置に用いられるタッチパネルの駆動方法であって、前記タッチパネルの出力信号に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出ステップと、前記表示装置から発生するノイズが前記検出に与える影響を低減するノイズ低減ステップと、前記表示装置に表示される画像から前記ノイズの量を推定するノイズ量推定ステップと、前記ノイズ量推定ステップにおいて推定された前記ノイズの量に応じて、前記ノイズ低減ステップにおけるノイズ低減処理のレベルを制御する低減レベル制御ステップとを有することを特徴としている。
【0011】
一般に、表示装置の表示画面から発生するノイズの低減処理では、ノイズ低減量が多くなるほど、入力操作の検出感度が低下したり、消費電力が増大するなど、タッチパネルの操作性が低下する。これに対し、上記の構成によれば、表示装置に表示される画像から推定されたノイズの量に応じて、ノイズ低減処理のレベルが制御される。すなわち、推定されたノイズの量が多いほど、ノイズ低減量が多くなり、推定されたノイズの量が少ないほど、ノイズ低減量が少なくなる。そのため、ノイズ低減量を誤動作防止のために必要十分な量とすることで、想定される最大のノイズ量に対応させてノイズ低減処理のレベルを一定にする構成に比べ、操作性を向上することができる。したがって、タッチ位置の誤検出を防止できるとともに、操作性の良好なタッチパネル駆動装置およびタッチパネルの駆動方法を実現することができる。
【0012】
本発明に係るタッチパネル駆動装置では、前記ノイズ低減手段は、前記タッチパネルの出力信号に含まれるノイズをフィルタリングするノイズフィルタで構成され、前記低減レベル制御手段は、前記ノイズフィルタのフィルタ係数を変化させることにより、前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御することが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、推定されたノイズの量に応じて、ノイズフィルタのフィルタ定数を誤動作防止のために必要十分な値とすることにより、フィルタ定数を一定にする構成に比べ、入力操作の検出感度を向上させることができる。
【0014】
本発明に係るタッチパネル駆動装置では、前記ノイズ低減手段は、前記駆動手段が前記タッチパネルを駆動するための駆動電圧を高めることにより前記影響を低減するものであり、前記低減レベル制御手段は、前記駆動電圧を変化させることにより、前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御することが好ましい。
【0015】
タッチパネルを駆動するための駆動電圧を高くするほど、SN比が高くなるのでノイズの影響を低下させることができる。そこで、推定されたノイズの量に応じて、タッチパネルを駆動するための駆動電圧を誤動作防止のために必要十分な値とすることにより、タッチパネルの駆動電圧を一定にする構成に比べ、消費電力を抑制することができる。
【0016】
本発明に係るタッチパネル駆動装置では、前記ノイズ低減手段は、前記駆動手段による前記タッチパネルの駆動周期を長くすることにより前記影響を低減するものであり、前記低減レベル制御手段は、前記駆動周期を変化させることにより、前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御することが好ましい。
【0017】
タッチパネルの駆動周期を長くするほど、スキャン時間が長くなるのでノイズの影響を低下させることができる。そこで、推定されたノイズの量に応じて、タッチパネルの駆動周期を誤動作防止のために必要十分な値とすることにより、タッチパネルの駆動周期を一定にする構成に比べ、入力操作の検出感度を向上させることができる。
【0018】
本発明に係るタッチパネル駆動装置では、前記ノイズ量推定手段は、前記ノイズの量を前記表示画面の複数の表示領域毎に推定し、前記ノイズ低減手段は、前記ノイズ量推定手段が前記複数の表示領域毎に推定した前記ノイズの量に応じて、前記複数の表示領域に対応する前記タッチパネルの領域毎に前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御することが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、タッチパネルの複数の領域毎にノイズ低減処理のレベルが制御されるので、ノイズ低減処理のレベルをさらに細かく制御することができる。
【0020】
本発明に係るタッチパネル駆動装置では、前記複数の領域はそれぞれ、前記タッチパネルの検出単位領域に対応しており、前記ノイズ低減手段は、前記ノイズ量推定手段が前記複数の表示領域毎に推定した前記ノイズの量に応じて、前記検出単位領域毎に前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御することが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、タッチパネルの検出単位領域毎にノイズ低減処理のレベルが制御されるので、ノイズ低減処理のレベルを必要最小限にすることができる。
【0022】
本発明に係る表示装置は、タッチパネルと、当該タッチパネルを駆動するタッチパネル駆動装置とを備える表示装置であって、前記タッチパネル駆動装置として、上述のタッチパネル駆動装置を備えることを特徴としている。
【0023】
本発明に係る表示装置は、液晶表示装置であってもよい。
【0024】
なお、上記タッチパネル駆動装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記タッチパネル駆動装置の各手段として動作させるプログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係るタッチパネル駆動装置は、表示装置に用いられるタッチパネルを駆動する駆動手段と、前記タッチパネルの出力信号に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出手段と、前記表示装置の表示画面から発生するノイズが前記検出手段に与える影響を低減するノイズ低減手段とを備えるタッチパネル駆動装置であって、前記表示装置に表示される画像から前記ノイズの量を推定するノイズ量推定手段と、前記ノイズ量推定手段が推定した前記ノイズの量に応じて、前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御する低減レベル制御手段とを備える構成である。
【0026】
また、本発明に係るタッチパネルの駆動方法は、表示装置に用いられるタッチパネルの駆動方法であって、前記タッチパネルの出力信号に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出ステップと、前記表示装置から発生するノイズが前記検出に与える影響を低減するノイズ低減ステップと、前記表示装置に表示される画像から前記ノイズの量を推定するノイズ量推定ステップと、前記ノイズ量推定ステップにおいて推定された前記ノイズの量に応じて、前記ノイズ低減ステップにおけるノイズ低減処理のレベルを制御する低減レベル制御ステップとを有している。
【0027】
したがって、タッチ位置の誤検出を防止できるとともに、操作性の良好なタッチパネル駆動装置およびタッチパネルの駆動方法を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】上記液晶表示装置のタッチパネルの具体的な構成を示す図である。
【図3】上記液晶表示装置のタッチパネルコントローラの構成を示すブロック図である。
【図4】上記液晶表示装置のノイズ低減部および低減レベル制御部の構成を示す図である。
【図5】ノイズ量の推定方法を説明するための図である。
【図6】タッチパネルのドライブラインに対応する領域毎にノイズ低減処理のレベルを制御している状態を示す図である。
【図7】タッチパネルの検出単位領域毎にノイズ低減処理のレベルを制御している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の一形態について図1〜図5に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0030】
(液晶表示装置の構成)
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置1の構成を示すブロック図である。液晶表示装置1は、液晶モジュール10、液晶コントローラ20、タッチパネル30、タッチパネルコントローラ40およびホストコントローラ50を備えている。
【0031】
液晶モジュール10は、液晶パネル11および液晶ドライバ12を含んで構成される。
【0032】
液晶パネル11には、ゲートライン、ソースラインおよび表示画素が設けられている。ゲートラインは、所定の間隔を空けて互いに平行に複数本設けられている。一方、ソースラインは、ゲートラインと直交する方向に、所定の間隔を空けて互いに平行に複数本設けられている。表示画素は、ゲートラインとソースラインとの各交差点に設けられている。また、各表示画素には、スイッチング素子としてのTFTが接続されている。
【0033】
液晶ドライバ12は、ゲートラインを駆動するゲートドライバと、ソースラインを駆動するソースドライバとを備えている。ゲートドライバは、TFTをオンするための走査信号を各ゲートラインに順次出力する。ソースドライバは、各ソースラインに階調表示電圧(駆動電圧)を出力する。
【0034】
TFTがオン状態のときに、表示画素にゲートラインからの駆動電圧が印加され、電荷が蓄積される。これにより、液晶の光透過率が駆動電圧に応じて変化して、液晶パネル11での画像表示が行われる。
【0035】
また、フリッカおよび焼付き現象を防止するため、液晶パネル11は交流駆動され、表示画素に印加される駆動電圧の極性が、1または複数のゲートライン毎、1または複数のソースライン毎かつ1または複数のフレーム毎に反転される(ドット反転駆動方式)。その他にも1または複数のソースライン毎かつ1または複数のフレーム毎に反転される方式などがある(ライン反転方式)。
【0036】
液晶コントローラ20は、ホストコントローラ50から供給される表示データDに基づき、その表示データDを垂直同期信号VS2、水平同期信号HSなどの液晶パネル11の表示制御を行うための信号とともに液晶ドライバ12に供給する。これにより、液晶表示の駆動タイミングが制御され、表示データDの画像が液晶パネル11に表示される。
【0037】
さらに、液晶コントローラ20は、表示データDをタッチパネルコントローラ40にも供給するように構成されている。後述するように、タッチパネルコントローラ40では、表示データDに基づいて、液晶パネル11から発生するノイズの量が推定される。
【0038】
タッチパネル30は、液晶パネル11の表示画面上でタッチ操作を行うために設けられる入力デバイスである。タッチパネル30に対してタッチ操作が行われると、タッチパネル30は、タッチ位置に応じた信号を出力する。
【0039】
(タッチパネルの構成)
タッチパネル30としては、あらゆる方式のタッチパネルを用いることができるが、本実施形態では、静電容量方式のタッチパネルを用いている。
【0040】
図2は、タッチパネル30の具体的な構成を示す図である。タッチパネル30は、x本のドライブラインT1〜Tx、y本のセンスラインR1〜Ry、および静電容量C11〜Cxyを備えて構成される。ドライブラインT1〜TxとセンスラインR1〜Ryとは格子状に配置されており、各静電容量C11〜Cxyは、ドライブラインT1〜TxとセンスラインR1〜Ryとの各交点に形成される。
【0041】
また、ドライブラインT1〜TxおよびセンスラインR1〜Ryは、タッチパネルコントローラ40に接続されている。タッチパネルコントローラ40は、特許請求の範囲に記載のタッチパネル駆動装置に相当するものであり、図1に示すように、タッチパネル駆動部41、入力操作検出部42、ノイズ量推定部43、ノイズ低減部44および低減レベル制御部45を備えている。
【0042】
タッチパネル駆動部41は、特許請求の範囲に記載の駆動手段に相当するものであり、タッチパネル30のドライブラインT1〜Txに電圧信号を順次印加する。これにより、静電容量C11〜Cxyに電荷が蓄えられる。ここで、タッチパネル30に物体が接触すると、接触位置に対応する静電容量の容量値が変化し、その静電容量が接続されているセンスラインの電流値が変化する。タッチパネルコントローラ40の入力操作検出部42は、センスラインR1〜Ryの出力信号に基づいて、タッチ位置やタッチ範囲などを検出することができる。なお、入力操作検出部42は、特許請求の範囲に記載の検出手段に相当する。
【0043】
(ノイズ低減の概要)
ノイズ量推定部43、ノイズ低減部44および低減レベル制御部45は、それぞれ特許請求の範囲に記載のノイズ量推定手段、ノイズ低減手段および低減レベル制御手段に相当する。
【0044】
ノイズ量推定部43は、液晶コントローラ20から入力される表示データDに基づいて、液晶パネル11から発生するノイズの量を推定する機能を有している。液晶パネル11から発生するノイズの量は、液晶パネル11に表示される画像の内容によって変化する。例えば、ドット反転駆動方式の場合、隣接画素との輝度差や駆動電圧の振幅が高いほどノイズ量が増大する。ノイズ量の推定に関する具体的内容は後述する。
【0045】
ノイズ低減部44は、液晶パネル11から発生するノイズが入力操作検出部42に与える影響を低減する機能を有しており、例えばノイズをフィルタリングするノイズフィルタで構成される。
【0046】
低減レベル制御部45は、ノイズ量推定部43が推定したノイズの量に応じて、ノイズ低減部44によるノイズ低減処理のレベルを制御する機能を有している。より具体的には、ノイズ量推定部43が推定したノイズの量が多いほど、低減レベル制御部45は、ノイズ低減部44によるノイズ低減処理のレベルが高くなるように、すなわち、ノイズがより多く低減されるように制御する。
【0047】
これにより、液晶パネル11から発生するノイズの量が比較的多いと推定される場合は、ノイズ低減部44によるノイズ低減量が多くなり、当該ノイズの量が比較的少ないと推定される場合は、ノイズ低減部44によるノイズ低減量が少なくなる。
【0048】
ここで、ノイズ低減部44をノイズフィルタで構成する場合、ノイズ低減量が多くなるほど、入力操作検出部42の検出時間が長くなる(応答速度が遅くなる)。しかしながら、ノイズ低減処理のレベルを一定にする構成では、誤動作を防止するため、当該レベルを想定される最大のノイズ量に対応させる必要があり、その結果、入力操作の検出時間が常に長くなってしまう。
【0049】
これに対し、本実施形態では、推定されるノイズの量に応じて、ノイズ低減処理を必要十分なレベルとすることができるので、ノイズ低減処理のレベルを一定にする構成に比べ、全体として入力操作の検出時間を短くすることができる。
【0050】
(タッチパネルコントローラの構成例)
続いて、タッチパネルコントローラ40のより具体的な構成について、図3および図4を参照して説明する。
【0051】
図3は、タッチパネルコントローラ40の構成を示すブロック図である。タッチパネルコントローラ40のタッチパネル駆動部41は、タッチパネル30のドライブラインT1〜Txに接続されており、ドライブラインT1〜Txを順次駆動する。
【0052】
入力操作検出部42は、サンプリング部42aおよびタッチ位置算出部42bを備えている。サンプリング部42aは、タッチパネル30のセンスラインR1〜Ryに接続されており、センスラインR1〜Ryの出力信号を順次サンプリングして、サンプリングしたデータをノイズ低減部44に入力する。
【0053】
図4は、ノイズ低減部44および低減レベル制御部45の構成を示す図である。ノイズ低減部44は、IIRフィルタ(無限インパルス応答フィルタ)で構成されており、係数A(0<A<1)の乗算器44a、加算器44b、レジスタ44cおよび係数1−Aの乗算器44dを備えている。サンプリング部42aからのデータは、乗算器44aを介して加算器44bに入力される。レジスタ44cおよび乗算器44dは、サンプリング部42aからのデータを無限長で扱うための帰還路を形成している。レジスタ44cは、1フレーム周期分の遅延回路として機能する。
【0054】
ここで、ノイズ量推定部43がiフレーム目に推定したノイズ量をZ、IIRフィルタのフィルタ係数の初期値をB(通常は0)とすると、
【0055】
【数1】

【0056】
となる。よって、サンプリング部42aから入力される、iフレーム目に測定したデータ(電圧測定値)をPとすると、タッチ位置算出部42bがタッチの有無判定に用いるuフレーム目における電圧の積算値SPは、
【0057】
【数2】

【0058】
となる。
【0059】
さらに、低減レベル制御部45は、乗算器44a・44dの係数を制御することにより、IIRフィルタのフィルタ係数を制御することができる。Aを1に近づけるほど、ノイズ低減量は増大するがタッチ検出時間は長くなる。一方、Aを0に近づけるほど、ノイズ低減量は減少するがタッチ検出時間は短くなる。
【0060】
(ノイズ量の推定方法)
続いて、ノイズ量推定部43によるノイズ量の推定方法について説明する。本実施形態では、ヒストグラムによる推定方法が用いられる。上述のように、ノイズ量推定部43は、液晶コントローラ20から入力される表示データDに基づいて液晶パネル11が発生するノイズの量を推定する。
【0061】
図5(a)は、1フレーム目における液晶パネル11の表示画像を示す図であり、図5(b)は、当該表示画像の一部の拡大図である。さらに図5(c)は、図5(b)に示す表示画像の一部に対応するゲートラインG1〜G2、ソースラインS1〜S5の範囲における画素の輝度を示す図である。
【0062】
液晶パネル11はドット反転駆動方式で駆動されているため、1ゲートライン毎および1ソースライン毎に駆動信号の極性が反転する。そのため、図5(d)に示すように、隣接するサブ画素の極性は互いに異なっている。
【0063】
ここで、隣接するサブ画素の電位差(階調差、輝度差)が高いほど、多くのノイズが発生することが知られている。そのため、図5(e)に示すように、ゲートラインG1とソースラインS1との交点に位置する画素や、ゲートラインG1とソースラインS3との交点に位置する画素では、隣接するサブ画素の電位差が大きいため、ノイズ量が多いと推定される。一方、例えばゲートラインG2とソースラインS1との交点に位置する画素では、2つのサブ画素の駆動電圧が低いため、隣接するサブ画素の電位差が小さく、ノイズ量が少ないと推定される。さらに、例えばゲートラインG1とソースラインS2との交点に位置する画素では、すべてのサブ画素の駆動電圧が低いため、ノイズ量が非常に少ないと推定される。このようにして、ノイズ量を画素毎に推定することができる。
【0064】
図5(f)は、推定された各画素のノイズ量を示す図である。各画素のノイズ量の総和が、1フレームあたりに液晶パネル11が発生するノイズの量となる。このように、ノイズ量推定部43は、隣接するサブ画素の電位差に基づいて、液晶パネル11が発生するノイズ量を推定することができる。
【0065】
(まとめ)
上記のように、ノイズ量推定部43によって推定されたノイズの量に応じて、低減レベル制御部45は、IIRフィルタによって構成されたノイズ低減部44のフィルタ係数を変化させて、ノイズ低減処理のレベルを制御する。これにより、ノイズ量の多いときは、タッチ検出時間が長くなるものの、ノイズ耐性が高くなるため誤動作を防止することができる。また、ノイズ量が少ないときは、ノイズ耐性を低くすることができるため、タッチ検出時間を短くすることができる。
【0066】
したがって、ノイズ低減処理のレベルを一定にする構成に比べ、ノイズ低減処理のレベルを、誤動作を防止するために必要十分なレベルとすることができるので、全体として入力操作の検出時間を短くすることができ、操作性を向上させることができる。
【0067】
(ソフトウェアによる実施例)
タッチパネルコントローラ40の各ブロック、特にタッチパネル駆動部41、入力操作検出部42、ノイズ量推定部43、ノイズ低減部44および低減レベル制御部45は、集積回路(ICチップ)上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェア的に実現してもよい。
【0068】
後者の場合、タッチパネルコントローラ40は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるタッチパネルコントローラ40の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、タッチパネルコントローラ40に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0069】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード類、マスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ類、あるいはPLD(Programmable logic device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路類などを用いることができる。
【0070】
また、タッチパネルコントローラ40を備える液晶表示装置1を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークは、プログラムコードを伝送可能であればよく、特に限定されない。例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、この通信ネットワークを構成する伝送媒体も、プログラムコードを伝送可能な媒体であればよく、特定の構成または種類のものに限定されない。例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11無線、HDR(High Data Rate)、NFC(NearField Communication)、DLNA(Digital Living Network Alliance)、携帯電話機網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0071】
(実施形態の総括)
上述した実施形態では、ノイズ低減部44は、IIRフィルタによって構成されていたが、例えば、FIRフィルタ(有限インパルス応答フィルタ)やアダプティブフィルタ(適応フィルタ)などのノイズフィルタを用いることができる。
【0072】
また、低減レベル制御部45は、ノイズフィルタのフィルタ係数を変化させることにより、ノイズ低減処理のレベルを制御していたが、ノイズ低減処理のレベルを制御する構成は、これに限定されない。例えば、タッチパネル駆動部41がタッチパネル30のドライブラインT1〜Txに印加する駆動電圧を変化させることによって、ノイズ低減処理のレベルを制御してもよい。この場合、駆動電圧を高くするほど、SN比が高くなるので、ノイズ低減処理のレベルが高くなる(ノイズがより多く低減される)。
【0073】
あるいは、タッチパネル30の駆動周期(1回のスキャン時間)を変化させることによって、ノイズ低減処理のレベルを制御してもよい。この場合、駆動周期を長くするほど、ノイズ低減処理のレベルが高くなる。
【0074】
また、上述した実施形態では、ノイズ量推定部43が、液晶パネル11の各画素が発生するノイズ量の総和を推定し、低減レベル制御部45は、推定されたノイズ量の総和に応じて、ノイズ低減部44によるノイズ低減処理のレベルを制御していた。これに対し、液晶パネル11を複数の領域に分割して、ノイズ量推定部43が、ノイズ量を前記複数の表示領域毎に推定し、低減レベル制御部45が、前記複数の表示領域に対応するタッチパネル30の領域毎に、ノイズ低減処理のレベルを制御してもよい。
【0075】
例えば、図6に示すように、タッチパネル30をドライブラインT1〜Txの各々に対応する領域に分割し、各ドライブラインT1〜Txの駆動電圧を異ならせることにより、タッチパネル30の領域毎にノイズ低減処理のレベルを制御することができる。
【0076】
さらに、低減レベル制御部45は、タッチパネル30の検出単位領域(タッチパネル30が静電容量方式のタッチパネルの場合、各静電容量に対応する領域)毎に、ノイズ低減処理のレベルを制御してもよい。
【0077】
例えば、図7に示すように、タッチパネル30の検出単位領域毎に、当該領域に対応するフィルタリング処理のフィルタ係数を異ならせることにより、タッチパネル30の領域毎にノイズ低減処理のレベルを制御することができる。これにより、ノイズ低減処理のレベルを必要最小限にすることができるので、操作性をさらに向上させることができる。
【0078】
上述した実施形態では、液晶パネル11の駆動方式がドット反転駆動方式である場合のヒストグラムによるノイズ量の推定方法について説明したが、ノイズ量の推定方法は、これに限定されない。例えば、パターンマッチによる推定方法や、FFT(高速フーリエ変換)による推定方法も用いることができる。さらに、液晶パネル11の駆動方式(ドット反転駆動方式、ライン反転駆動方式等)および表示装置の種類(液晶表示装置、有機EL表示装置等)に応じて、ノイズ量の推定方法は周知の方法から適宜選択される。
【0079】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係るタッチパネル駆動装置は、液晶表示装置だけでなく、有機EL表示装置等のあらゆる表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 液晶表示装置
10 液晶モジュール
11 液晶パネル
12 液晶ドライバ
20 液晶コントローラ
30 タッチパネル
40 タッチパネルコントローラ(タッチパネル駆動装置)
41 タッチパネル駆動部(タッチパネル駆動手段)
42 入力操作検出部(検出手段)
42a サンプリング部
42b タッチ位置算出部
43 ノイズ量推定部(ノイズ量推定手段)
44 ノイズ低減部(ノイズ低減手段)
44a 乗算器
44b 加算器
44c レジスタ
44d 乗算器
45 低減レベル制御部(低減レベル制御手段)
50 ホストコントローラ
C11〜Cxy 静電容量
R1〜Ry センスライン
T1〜Tx ドライブライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に用いられるタッチパネルを駆動する駆動手段と、
前記タッチパネルの出力信号に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出手段と、
前記表示装置の表示画面から発生するノイズが前記検出手段に与える影響を低減するノイズ低減手段とを備えるタッチパネル駆動装置であって、
前記表示画面に表示される画像から前記ノイズの量を推定するノイズ量推定手段と、
前記ノイズ量推定手段が推定した前記ノイズの量に応じて、前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御する低減レベル制御手段とを備えることを特徴とするタッチパネル駆動装置。
【請求項2】
前記ノイズ低減手段は、前記タッチパネルの出力信号に含まれるノイズをフィルタリングするノイズフィルタで構成され、
前記低減レベル制御手段は、前記ノイズフィルタのフィルタ係数を変化させることにより、前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル駆動装置。
【請求項3】
前記ノイズ低減手段は、前記駆動手段が前記タッチパネルを駆動するための駆動電圧を高めることにより前記影響を低減するものであり、
前記低減レベル制御手段は、前記駆動電圧を変化させることにより、前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル駆動装置。
【請求項4】
前記ノイズ低減手段は、前記駆動手段による前記タッチパネルの駆動周期を長くすることにより前記影響を低減するものであり、
前記低減レベル制御手段は、前記駆動周期を変化させることにより、前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル駆動装置。
【請求項5】
前記ノイズ量推定手段は、前記ノイズの量を前記表示画面の複数の表示領域毎に推定し、
前記ノイズ低減手段は、前記ノイズ量推定手段が前記複数の表示領域毎に推定した前記ノイズの量に応じて、前記複数の表示領域に対応する前記タッチパネルの領域毎に前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のタッチパネル駆動装置。
【請求項6】
前記複数の領域はそれぞれ、前記タッチパネルの検出単位領域に対応しており、
前記ノイズ低減手段は、前記ノイズ量推定手段が前記複数の表示領域毎に推定した前記ノイズの量に応じて、前記検出単位領域毎に前記ノイズ低減手段によるノイズ低減処理のレベルを制御することを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル駆動装置。
【請求項7】
タッチパネルと、当該タッチパネルを駆動するタッチパネル駆動装置とを備える表示装置であって、
前記タッチパネル駆動装置として、請求項1〜6のいずれか1項に記載のタッチパネル駆動装置を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
液晶表示装置であることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
表示装置に用いられるタッチパネルの駆動方法であって、
前記タッチパネルの出力信号に基づいて、前記タッチパネルに対する入力操作を検出する検出ステップと、
前記表示装置から発生するノイズが前記検出に与える影響を低減するノイズ低減ステップと、
前記表示装置に表示される画像から前記ノイズの量を推定するノイズ量推定ステップと、
前記ノイズ量推定ステップにおいて推定された前記ノイズの量に応じて、前記ノイズ低減ステップにおけるノイズ低減処理のレベルを制御する低減レベル制御ステップとを有することを特徴とするタッチパネルの駆動方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のタッチパネル駆動装置の各手段としてコンピュータを動作させるためのプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−97687(P2013−97687A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241617(P2011−241617)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】