説明

タッチパネル

【課題】 直線性(リニアリティ)や押圧荷重を均一化すると共に、ニュートンリング環の発生を防止できるタッチパネルを提供する。
【解決手段】
透明電極と引き回し電極とを設けた上基板と、透明電極と引き回し電極とを設けた下基板とを所定の隙間を持たせて対向配置し、絶縁性のシール材で前記上下基板の外周域を周回して接合してなるタッチパネルにおいて、少なくともシール材と該シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極との縦方向に対向する間隔と、横方向に対向する間隔とがほぼ同一で、かつシール材がシール材内スペーサ部材を有し、シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極が電極内スペーサ部材を有し、該電極内スペーサ部材の粒径はシール材内スペーサ部材の粒径より大きい値に設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置の画面上に配置し使用者が情報の表示画面を指やペン等で直接押してデータを入力するタッチパネルに関し、特にニュートンリング環が発生せず入力エリアも確保されるタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の入力スイッチとしてのタッチパネルは、液晶表示装置の表示面上に配置されて使用される。このタッチパネルは可撓性を有する透明基板とその下面に形成された透明電極とからなる上基板と、透明基板とその上面に形成された透明電極とからなる下基板とが、所定の空間を隔てて透明電極同士が対面するように配置されシール剤で貼着されている。更に、下基板の透明電極上には、マトリックス状にドットスペーサが配置されている。
【0003】
このタッチパネルは、手、或いは入力ペン等の入力手段により上基板を押圧し、上基板の透明電極の何れか1点が下基板の透明電極に接触することにより、両透明電極が相互通電される。これにより、制御装置が、その位置の抵抗値によって変化された電圧値を読みとり、電位差の変化に応じて位置座標を読み込む構成となっている。このためタッチパネルの入力側の上基板は、常に下基板側に押し付けられる力が働くので長期間の使用では上基板が下基板に接触する方向に変形し、絶縁性が徐々に低下し誤動作の原因となって耐久性を低下させることが問題となっていた。
【0004】
また、これに伴って、上基板の撓んだ部分を中心にして同心円状の干渉縞、いわゆるニュートンリング環が発生する。このニュートンリング環は、見栄えが悪く、感覚的にも不快で入力動作を遅らせたり誤入力したりすることが問題となっていた。従って上基板 入力側 は外側に対してわずかに凸状に膨らんでいるか、または入力基板中央エリアが凹状にへたらないような引っ張り力、或いは外側に湾曲させようとするわずかな力が常時加わっていることが好ましい。入力側基板が樹脂フィルムの場合、撓みやすく、垂れやすいので特にこの様な状態が好ましい。また入力側が撓みにくいガラスの場合にも、撓みやすい中央付近と撓みにくい周辺部との押圧荷重を均一にする意味でも、やはり中央近辺がわずかに凸状に膨らんでいるいることが望ましい。
【0005】
このような入力側基板を凸状に湾曲させるか、或いは凹状に変形しないようにした第1の従来技術としてシール材 粘着材塗布堤 を二重に周回させ、内側のシール材をやや厚く形成することで凸状湾曲を実現している例が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。図4は、この第1の従来技術におけるタッチパネルを説明するための模式図であり、図4(a)は上基板側から透視した平面図、図4(b)は図4(a)のA−A断面図、図4(c)は図4(a)のB−B断面図を示す。
【0006】
図4に示すように第1の従来技術におけるタッチパネルは上基板1と下基板6の内面には、それぞれ透明電極1A、6Aが被着形成されている。これらの透明電極1A、6Aの周囲はシール領域であり、このシール領域の内側に入力領域ARが形成されている。各透明電極1A、6Aのそれぞれは、タッチパネルの最外周に位置するシール領域において引き回し電極2と引き回し電極5Aに電気的に接続されている。引き回し電極2は上下接続給電電極5Bに接続される。この上下接続電極5Bは上下接続電極用配線5Cで基板の所定の辺に引き回される。
【0007】
上基板1の透明電極1A、下基板の引き回し電極5Aおよび上下接続電極用配線5Cのそれぞれは、図4(b)に示したように、シール領域において上絶縁層9Aと下絶縁層9Bで被覆される。これらの上絶縁層9Aと下絶縁層9Bの間を粘着層を構成する2列のシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bで粘着固定される。また、図4(c)に示したように、上基板の引き回し電極2と上下接続電極5Bはシール領域において2列のシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bで粘着固定される。シール材(粘着材塗布堤)11A、11Bは入力領域を周回して下基板6側に印刷塗布され、それぞれが頂上を持ち、各頂上が上基板1に当接して貼り付けられる。
【0008】
長辺側と短辺側に上記2列のシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bを印刷塗布する際、外側を周回するシール材(粘着材塗布堤)11Aの頂上高さが内側を周回するシール材(粘着材塗布堤)11Bの頂上高さより低くなるようにする。このようなシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bを用いて上基板1の周縁を下基板6の周縁に粘着固定することにより、上基板1は下基板6に対して入力領域AR方向に開いた傾きで粘着固定される。その結果、上基板1は全体として上に凸となる形状で下基板6に粘着されて一体化される。これによって上基板1の撓みを防止して、ニュートンリング環の発生を回避しようとするものである。
【0009】
また、第2の従来例として引き回し電極の高さを、最外周のシール材よりわずかに高く形成し、同じく上基板全体の断面が略台形状に変形するような構成とした例がある(例えば、非特許文献1参照。)。図5は、この第2の従来技術におけるタッチパネルを説明するための模式図であり、図5(a)は上基板側から透視した平面図、図5(b)は図5(a)のX−X断面図である。図5に示すようにこのタッチパネル50は、方形形状をなす下基板41と可撓性を有する上基板51と対向配置し、シール材17で外縁を周回して貼合わせ一体化されている。下基板41の上面には透明電極3と、この透明電極3の対向する両辺に沿って接続形成されFPC19の取付部まで延設した一対の引き回し電極44及び45とが形成されている。また、透明電極3上にマトリツクス状に配置したドットスペーサ48が設けられている。さらに、下基板41のFPC19の取付部付近には後述する上基板51の引き回し電極54、55に導通接続を行うため接続電極46、47が形成されている。
【0010】
上基板51には下面に透明電極13と、この透明電極13の対向する両辺に沿って接続形成されFPC19の取付部方向に向かって延設した一対の引き回し電極54、55とが形成されている。この上下基板51、41の引き回し電極54、55、及び44、45が方形配置となるように対向配置し、上下基板51、41とに10μm前後の隙間を持たせてスペーサボール17cを分散したシール材17で上下基板51、41とを接着固定している。この上基板51に設けた引き回し電極54、55、及び下基板41に設けた引き回し電極44、45はシール材17の厚みより僅かに厚く形成している。このため、上下基板51、41を貼合わせたときに、図5(b)に示すように、上基板51は外側に膨らんで湾曲した形状になる。これによって上基板51の内側への撓みを防止して、ニュートンリング環の発生を回避しようとするものである。
【0011】
【特許文献1】特開2002−196886号公報(第2−3頁、図1)
【非特許文献1】特願2003−075098号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、タッチパネルにおけるニュートンリング環の発生防止対策として開示されている第1の従来例において下基板に対して上基板が凸状に湾曲するように構成する技術は、シール材を二重に周回させているため入力可能エリアが減少する。また、上下基板にガラス材料を使用するタッチパネルにおいては上下基板の間隙が10μm前後と、小さく設定する必要があり、第1の従来例のように引き回し電極とシール材を重ね合わせることは困難であり、二重構造のシール材の内側に電極を這わせる必要があり、入力エリアは減少せざるを得ないという問題があった。
【0013】
このような第1の従来例の問題点を解決するために、第2の従来例では引き回し電極54、55、44、45の高さを、最外周のシール材17よりわずかに高く形成し、同じく上基板51全体の断面が略台形状に湾曲するような構成としている。しかしながら、シール材17の高さはスペーサ17cの添加で加圧・焼成されるので良好に管理されるが、引き回し電極54、55、44、45は銀ペーストの焼成のみなのでシール材17ほどには高さが管理できず、場所によっては凹凸或いは、うねりが発生する。
【0014】
一方、図6に示すよう上基板51の湾曲面の傾斜角Qの値はシール材17の内周とシール材17の内周に沿って隣接配置されている引き回し電極45の外周との間隔bと、シール材17の高さと引き回し電極45の高さの差tとの関係によって決まる。このためシール材17と引き回し電極45との間隔bやシール材17と引き回し電極45との高さの差tがばらつくと上基板51の湾曲形状に歪みが生じ未接触不良または押圧荷重が上昇するおそれがある。
【0015】
したがって、第2従来例のようにに引き回し電極の高さをシール材17の高さより大きくすることによって上基板51を台形形状としても、前述のように引き回し電極に凹凸或いは、うねりが発生すると台形形状に歪みが発生し、図7に示すように入力点Bと接触点Pとが一致せず直線性(リニアリティ)不良や作動荷重のバラツキが大きくなるという問題があった。
【0016】
(発明の目的)
本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、引き回し電極の高さ方向の凹凸や、うねりを無くし引き回し電極の高さを一定とすることによって、上基板の凸状湾曲を均一な形状とし、凸状に湾曲した上基板の頂点をほぼ直線状に保ち、直線性(リニアリティ)や押圧荷重の均一化を図ると共に、ニュートンリング環の発生を防止し耐久性に優れるタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するための本発明のタッチパネルは、透明電極と引き回し電極とを設けた上基板と、透明電極と引き回し電極とを設けた下基板とを所定の隙間を持たせて対向配置し、絶縁性のシール材で上下基板の外周域を周回して接合してなるタッチパネルにおいて、少なくともシール材と該シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極との縦方向に対向する間隔と、横方向に対向する間隔とがほぼ同一で、かつシール材がシール材内スペーサ部材を有し、シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極が電極内スペーサ部材を有し、該電極内スペーサ部材の粒径はシール材内スペーサ部材の粒径より大きい値に設定されていることを特徴とする。
【0018】
また、電極内スペーサ部材の粒径とシール材内スペーサ部材の粒径との差が1〜5μmの範囲に設定されていることを特徴とする。
【0019】
また、引き回し電極に含有されている電極内スペーサ部材の含有率が10〜20容量%の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0020】
また、電極内スペーサが金、銀、銅などの導電被膜が形成された導電粒からなることを特徴とする。
【0021】
また、上基板の傾斜は1mm当たり0.0015〜0.006mmの傾斜であることを特徴とする。
【0022】
また、上基板はガラス板からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のタッチパネル。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明のタッチパネルはシール材にシール材内スペーサ部材を混入し、シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極にシール材内スペーサ部材の粒径より大きい粒径の電極内スペーサ部材を混入することによって引き回し電極の高さ方向の凹凸や、うねりを無くし引き回し電極の高さを一定とすることができる。
また、シール材と該シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極との縦方向に対向する間隔と、横方向に対向する間隔とがほぼ同一となるように構成することによって上基板の凸状湾曲が均一な形状となり凸状に湾曲した上基板の頂点がほぼ直線状となり、直線性(リニアリティ)の誤差を小さくすると共に押圧荷重を均一化することができる。この結果、ニュートンリング環の発生を防止し、耐久性に優れたタッチパネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図1から図3に基づいて本発明の実施形態におけるタッチパネルについて説明する。図1は本実施形態におけるタッチパネルを示す模式図で、図1(a)は上基板側から透視した平面図、図1(b)は図1(a)のF−F断面図である。また、図2は本実施形態における引き回し配線の長手方向の部分拡大断面図、図3は図1(b)におけるA部の部分拡大図である。本実施形態におけるタッチパネルは引き回し電極に特徴があり、その他の基本的な構成は従来技術と類似している。したがって従来技術と同様の構成要素については同一番号を付与し説明を省略する。
【0025】
図1に示すように、タッチパネル40は、上基板31と下基板41とを透明電極3、13同士が互いに対向するようにシール剤27を介して配置し、上下基板31、41の周辺部が一定間隔を保つように、シール剤27で貼着され一体化されている。シール剤27は、エポキシ樹脂接着剤等が選択され、スクリーン印刷等の方法で幅0.5mm、厚さ30μmで印刷され、上下基板の張り合わせ工程において焼成され幅1.5mm、厚さ10μmに形成される。又、このシール剤27には、シール材内スペーサ部材22として粒径が10μmの大きさのプラスチックボールが分散されており、このスペーサ部材22もって上基板31と下基板41との周辺部を10μmの間隔に保持する役目を成している。
【0026】
下基板41は厚みが1.1mmのソーダガラス板からなり、このソーダガラス板に透明電極3と、透明電極3の対向する両辺にそれぞれ電気的に接続される引き回し電極24、25とが形成されている。引き回し電極24、25はシール剤27の内周に沿うように配置され、その一端が下基板41の一辺においてまとめられ、FPC19の端部と接続されている。透明電極3は、厚みが50〜4000オングストローム程度のITO膜をスパッタリング或いはCVD等により成膜し、エッチング加工によりパターン形成される。
【0027】
更に、透明電極3の表面上には、ドットスペーサ48がマトリックス状に配列されている。ドットスペーサ48は、大きさが30〜40μm程度の円形の形状で、基板からの高さが3〜5μm程度に設定されている。更に、ドットスペーサ48同士の中心間距離は4〜5mm程度に設定されている。また、ドットスペーサ48はエポキシ樹脂系の紫外線硬化型樹脂をマトリックス状に印刷し、紫外線を照射して硬化させ形成される。さらに、下基板41のFPC19の取付部付近には後述する上基板31の引き回し電極34、35に導通接続を行うため接続電極46、47が形成されている。
【0028】
引き回し電極24、25は銀粉等の導電性金属粉を熱硬化性のエポキシ樹脂に混入したインクからなる銀ペースト膜をスクリーン印刷法等により印刷し、130℃で約60分焼成して形成される。この引き回し電極24、25のうちシール材27の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極25には、ガラス、樹脂のボール、ファイバーからなり粒径12μmの大きさの電極内スペーサ部材32が混入添加されており、このスペーサ部材32をもって引き回し電極25を12μmの高さで一定に保つ役目を成している。
【0029】
また、図2に示すように下基板41の引き回し電極25の銀ペースト膜部分25aは焼成した時に高さにばらつきが生じるため、焼成した状態における銀ペースト膜部分25aの高さaの値を電極内スペーサ部材32の高さdの値の1/2〜2/3の範囲となるようにスクリーン印刷時の銀ペースト膜部分の高さを調整する。本実施形態においては、焼成した状態における銀ペースト膜部分25aの高さaの値を6〜8μmの範囲に形成した。また、引き回し電極24にはスペーサ部材32を混入せず、高さ6〜8μmの範囲に形成した。
【0030】
上基板31は厚みが0.2mmで材質がホウケイ酸ガラス等のマイクロガラス板からなり、下基板41と同様に透明電極13が形成されており、この透明電極13の対向する両辺のそれぞれに接続する引き回し電極34、35が形成されている。この引き回し電極34、35の一端は下基板41のFPC19の取付部付近に設ける接続電極46、47に導通接続されるように延長配置されている。この引き回し電極34、35のうち、シール材27の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極34は、前述の下基板41の引き回し電極25と同様に粒径12μmの電極内スペーサ部材32が混入添加されており、一定の高さ12μmに形成されている。
【0031】
この引き回し電極34の銀ペースト膜部分は、前述の下基板41の引き回し電極25の銀ペースト膜部分25aと同様に、焼成した時に高さにばらつきが生じるため、焼成した状態における銀ペースト膜部分の高さの値を電極内スペーサ部材32の高さdの値の1/2〜2/3の範囲となるようにスクリーン印刷時の銀ペースト膜部分の高さを調整する。本実施形態においては、前述の下基板41の引き回し電極25の銀ペースト膜部分25aと同様に、上基板31の引き回し電極34の焼成した状態における銀ペースト膜部分の高さの値を6〜8μmの範囲に形成した。また、引き回し電極35にはスペーサ部材32を混入せず、高さ6〜8μmの範囲に形成した。
【0032】
また、下基板41の引き回し電極25及び上基板の引き回し電極34に混入添加する電極内スペーサ部材32の添加割合は10〜20容量%の範囲が好ましく、多すぎると下基板41の引き回し電極25及び上基板31の引き回し電極34の導電性に支障が生じるため好ましくない。
【0033】
また、電極内スペーサ部材32として金、銀、銅などの導電被膜が形成された粒径12μmの大きさの導電ボールを用いると下基板41の引き回し電極25及び上基板31引き回し電極34の導電信頼性の面でより好ましい。
尚、電極内スペーサ部材32を添加する引き回し電極は、シール材27の内側に沿って隣接して配置される部分だけで良いが、引き回し電極の形成上の都合で全ての引き回し電極に電極内スペーサ部材32を添加しても差し支えない。
【0034】
この上下基板31、41は上基板31の引き回し電極34、35及び下基板41の引き回し電極24、25が方形配置となるように対向配置されシール剤27で貼着されている。また、シール材27の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極25、34は、シール材27との縦方向に対向する間隔bと、横方向に対向する間隔bとがほぼ同一となるように配置される。また、引き回し電極25、34の隅部の形状が略直角の場合はシール材27の内周の隅部27aを略直角に形成することが好ましい。また、引き回し電極25、34の隅部の形状を略円弧状の形状に形成する場合は、シール材27の内周の隅部27aを略円弧状の形状に形成しても良いが、引き回し電極25、34の隅部の円弧状形状と同心円形状とするか、或いは同心円形状よりも小さい半径の円弧状とすることが好ましい。
【0035】
図3は図1(b)におけるA部の部分拡大図である。図3に示すように上下基板31、41の周辺部は10μm程度の一定間隔を保つように、シール材内スペーサ部材22を混入したシール剤27で貼着されている。また、シール材27の内側に沿って隣接して配置される下基板41の引き回し電極25には電極内スペーサ部材32が混入され、その高さはシール材27の高さ10μmより大きく12μmに形成されている。また、図1(b)に示すように上基板31の引き回し電極34についても、引き回し電極25と同様に電極内スペーサ部材32が混入され、その高さはシール材27の高さ10μmより大きく12μmに形成されている。この結果、図1(b)に示すように上下基板31、41を貼合わせたときに、上基板31は外側に膨らんで略角錐台形状に湾曲した形状になる。
【0036】
この上基板31における湾曲形状の傾斜角Qの値は、図3に示すように引き回し電極25とシール材27との対向する間隔bと、引き回し電極25の高さとシール材27の高さとの差、即ち、電極内スペーサ部材32の粒径dとシール材内スペーサ部材22の粒径cとの差tの値によって決められる。したがって、間隔bと、差tとの値を適正に設定すると共に、間隔bと、差tとの値を上下基板の全周に亘って一定に保持することによって上基板31の凸状湾曲を均一な形状にすることができる。尚、電極内スペーサ部材32の粒径dと、シール材内スペーサ部材22の粒径cとの差tの値は1〜5μmの範囲に設定することが好ましく本実施形態においては2μmに設定した。
【0037】
上基板31における湾曲形状の傾斜角Qの値は1mm当たり0.0015〜0.006mmの傾斜の範囲に設定することが好ましい。この傾斜角Qの値が0.0015mmより小さいと、ニュートンリング環が視認されるようになり好ましくない。また、0.006mmより大きいと上基板31の湾曲の高さが大きくなり強い押圧力が必要となる。従って傾斜角Qの値を上記範囲とすることで、指に殆ど力の負担を欠けずタッチパネルを操作することができる。
【0038】
このように、シール材27に対して引き回し電極25、34の高さと配置を所定の範囲に設定し下基板41の引き回し電極25及び上基板の引き回し電極34の高さを一定に保持することによって、上基板31の凸状湾曲を均一な形状にすることができる。この結果、図1(b)に示すように上下基板31、41を貼合わせたときに上基板31は外側に膨らんで略角錐台形状に湾曲した形状になる。尚、上下基板の貼り合わせ工程においては上基板31の上面外周部に額縁状の合い紙を載置し、合い紙の弾力性を利用して押圧し上下基板の貼り合わせる。この方法については従来技術と同様であり説明を省略する。
【0039】
以上のように本実施形態におけるタッチパネル40は、シール材27にシール材内スペーサ部材22を混入し、シール材27の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極25、34にシール材内スペーサ部材22の粒径より大きい粒径の電極内スペーサ部材32を混入することによって引き回し電極25、34の高さ方向の凹凸や、うねりを無くし、引き回し電極25、34の高さを一定とする。
【0040】
また、シール材27とシール材27の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極25、34との縦方向に対向する間隔bと、横方向に対向する間隔bとがほぼ同一となるように引き回し電極25、34を配置する。また、隅部においても、シール材27とシール材27の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極25、34との間隔を上記間隔bとほぼ同一に設定する。
【0041】
このようにシール材27と引き回し電極25、34との間隔を略全周に亘ってほぼ同一に設定することによって、上基板31の凸状湾曲が均一な形状となり凸状に湾曲した上基板31の頂点がほぼ直線状となり、直線性(リニアリティ)の誤差を小さくすると共に押圧荷重を均一化することができる。この結果、ニュートンリング環の発生を防止し、耐久性に優れたタッチパネルを実現することができる。
【0042】
尚、本実施形態においては上基板にマイクロガラス板を使用した例で説明したが、これに限定されるものではなく他のガラス板、透明樹脂板を使用する場合においても適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態におけるタッチパネルを示す模式図で、図1(a)は上基板側から透視した平面図、図1(b)は図1(a)のF−F断面図である。
【図2】本発明の実施形態における引き回し電極の部分拡大断面図である。
【図3】図1(b)のA部の部分拡大断面図である。
【図4】第1の従来技術におけるタッチパネルを示す模式図で、図4(a)は上基板側から透視した平面図、図6(b)は図6(a)のA−A断面図、図6(c)は図6(a)のB−B断面図である。
【図5】第2の従来技術におけるタッチパネルを示す模式図で、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のX−X断面図である。
【図6】第2の従来技術における上基板の湾曲形状の傾斜角を説明するための図である。
【図7】第2の従来技術におけるタッチパネルのデータ入力時の上基板の変形状態を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
3、13 透明電極
19 FPC
22 シール材内スペーサ部材
24、25 引き回し電極
25a 銀ペースト膜部分
27 シール剤
27a シール材内周の隅部
31 上基板
32 電極内スペーサ部材
34、35 引き回し電極
40、50 タッチパネル
41 下基板
46、47 接続電極
48 ドットスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極と引き回し電極とを設けた上基板と、透明電極と引き回し電極とを設けた下基板とを所定の隙間を持たせて対向配置し、絶縁性のシール材で前記上下基板の外周域を周回して接合してなるタッチパネルにおいて、
少なくとも前記シール材と該シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極との縦方向に対向する間隔と、横方向に対向する間隔とがほぼ同一で、かつ前記シール材がシール材内スペーサ部材を有し、前記シール材の内側に沿って隣接して配置される引き回し電極が電極内スペーサ部材を有し、該電極内スペーサ部材の粒径は前記シール材内スペーサ部材の粒径より大きい値に設定されていることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記電極内スペーサ部材の粒径と前記シール材内スペーサ部材の粒径との差が1〜5μmの範囲に設定されていることを特徴とする請求項lに記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記引き回し電極に含有されている電極内スペーサ部材の含有率が10〜20容量%の範囲に設定されていることを特徴とする請求項lまたは請求項2記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記電極内スペーサ部材が金、銀、銅などの導電被膜が形成された導電粒からなることを特徴とする請求項lまたは請求項2記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記上基板の傾斜は1mm当たり0.0015〜0.006mmの傾斜であることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記上基板はガラス板からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−48552(P2006−48552A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231634(P2004−231634)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】