説明

タッチパネル

【課題】各種電子機器に用いられるタッチパネルに関し、安価で確実な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】上基板11下面に複数の粒子15を設け、この下面の上導電層13を凹凸状に形成することによって、凹凸状の上導電層13を容易に形成できると共に、上導電層13と下導電層14の間が狭くなり、押圧操作時の上基板11の撓みが小さくなるため、上基板11の元の状態への復帰が速やかに行われ、誤操作が生じづらく、確実な操作が可能なタッチパネルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられるタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電子カメラ等の各種電子機器の高機能化や多様化が進むなか、液晶表示素子等の表示素子の前面に光透過性のタッチパネルを装着し、このタッチパネルを通して背面の表示素子の表示を見ながら、指やペン等でタッチパネルを押圧操作することによって、機器の様々な機能の切換えを行うものが増えており、確実で容易に操作を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来のタッチパネルについて、図3を用いて説明する。
【0004】
なお、この図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図3は従来のタッチパネルの断面図であり、同図において、1はフィルム状で光透過性の上基板、2はガラス等の光透過性の下基板で、上基板1下面のほぼ全面には酸化インジウム錫等の光透過性の上導電層3が、下基板2上面のほぼ全面には同じく下導電層4が各々形成されている。
【0006】
なお、下基板2はフッ化水素等の所定の溶剤を噴霧する化学処理によって、上面が微細な凹凸状に形成されると共に、この上面にスパッタ法等によって積層された下導電層4も、算出平均粗さ0.08〜0.13前後で、最大高さ0.7〜1.3前後の凹凸状に形成されている。
【0007】
そして、下導電層4上面には絶縁樹脂によって、複数のドットスペーサ(図示せず)が所定間隔で形成されると共に、上導電層3の両端には一対の上電極(図示せず)が、下導電層4の両端には、上電極とは直交方向の一対の下電極(図示せず)が各々形成されている。
【0008】
また、5は上基板1と下基板2間の外周内縁に形成された略額縁状のスペーサで、このスペーサ5の上下面または片面に塗布形成された接着剤(図示せず)によって、上基板1と下基板2の外周が貼り合わされ、上導電層3と下導電層4が所定の空隙を空けて対向している。
【0009】
さらに、6は液状で絶縁性の光透過性の封止剤で、この封止剤6が上導電層2と下導電層5の間の空隙内に充填されて、タッチパネルが構成されている。
【0010】
そして、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、一対の上電極と下電極が配線基板やコネクタ(図示せず)等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0011】
以上の構成において、タッチパネル背面の表示素子の表示を見ながら、所望の表示上の上基板1上面を指やペン等で押圧操作すると、上基板1が撓み、押圧された箇所の上導電層3が下導電層4に接触する。
【0012】
そして、電子回路から上電極と下電極へ順次電圧が印加され、上導電層3両端及びこれと直交方向の下導電層4両端の電圧比によって、押圧された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0013】
つまり、タッチパネル背面の表示素子に、例えば複数のメニュー等が表示された状態で、所望のメニュー上の上基板1上面を押圧操作すると、上電極と下電極間の電圧比によって、この操作した位置を電子回路が検出し、複数のメニューの中から所望のメニューの選択等が行えるように構成されている。
【0014】
また、下基板2上面や下導電層4を、高さ0.2〜0.4μm前後の微細な凹凸状に形成することによって、電灯や太陽光等の外部光の反射による干渉縞、所謂ニュートンリングが生じることを防ぐことが可能なようになっている。
【0015】
すなわち、下基板2上面や下導電層4を微細な凹凸状に形成し、タッチパネル背面の液晶表示素子等の表示の視認を阻害する、ニュートンリングの発生を防ぐことで、メニュー等の表示を見易くし、操作を容易に行えるように形成されているものであった。
【0016】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−312124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記従来のタッチパネルにおいては、化学処理によって下基板2上面を微細な凹凸状に形成しているため、加工に手間がかかると共に、これらの凹凸が低くなだらかに形成されているため、押圧操作時には封止剤6が充填された空隙内に、上基板1を大きく撓ませて上導電層2を下導電層5に接触させる必要があり、指等を離し押圧操作力を解除した際に、上基板1が元の状態に復帰するのに遅れが生じ易くなってしまうという課題があった。
【0019】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、安価で確実な操作が可能なタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明は、上基板下面に複数の粒子を設け、この下面の上導電層を凹凸状に形成してタッチパネルを構成したものであり、凹凸状の上導電層を容易に形成できると共に、上導電層と下導電層の間が狭くなり、押圧操作時の上基板の撓みが小さくなるため、上基板の元の状態への復帰が速やかに行われ、誤操作が生じづらく、確実な操作が可能なタッチパネルを得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、安価で確実な操作が可能なタッチパネルを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図
【図2】同部分断面図
【図3】従来のタッチパネルの断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。
【0024】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0025】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図であり、同図において、11はポリエチレンテレフタレートやポリエーテルサルホン、ポリカーボネート等のフィルム状で光透過性の上基板、12は同じくフィルム状またはガラス等の薄板状で光透過性の下基板で、上基板11下面のほぼ全面には酸化インジウム錫や酸化錫等の光透過性の上導電層13が、下基板12上面のほぼ全面には同じく下導電層14が各々、スパッタ法等によって形成されている。
【0026】
そして、上基板11下面にはシリカやアクリル等の複数の粒子15が設けられ、この下面に積層された上導電層13が、算出平均粗さ0.13〜0.30前後で、最大高さ1.3〜5.4前後の凹凸状に形成されている。
【0027】
また、下導電層14上面にはエポキシやシリコーン等の絶縁樹脂によって、高さ5〜15μm前後の複数のドットスペーサ(図示せず)が所定間隔で形成されると共に、上導電層13の両端には銀やカーボン等の一対の上電極(図示せず)が、下導電層14の両端には、上電極とは直交方向の一対の下電極(図示せず)が各々形成されている。
【0028】
さらに、16はポリエステルやエポキシ、不織布等のスペーサで、上基板11と下基板12間の外周内縁に略額縁状に形成されると共に、このスペーサ16の上下面または片面に塗布形成されたアクリルやゴム等の接着剤(図示せず)によって、上基板11と下基板12の外周が貼り合わされ、上導電層13と下導電層14が所定の空隙、例えば25〜150μm前後の空隙を空けて対向している。
【0029】
また、17はポリイソブテンやエーテル、シリコーンオイル等の液状で絶縁性の光透過性の封止剤で、この動粘度0.5〜30cStの封止剤17が、上導電層13と下導電層14の間の空隙内に充填されて、タッチパネルが構成されている。
【0030】
なお、以上のような下面に凹凸状の上導電層13が形成された上基板11を製作するには、図2(a)の部分断面図に示すように、先ず所定の粒径、例えば0.1〜2μm前後の粒径の複数の粒子15を、溶剤やバインダと共に上基板11上面に塗布あるいは印刷する。
【0031】
そして、この後、図2(b)に示すように、この上にスパッタ法等によって、上基板11上面と複数の粒子15を覆うように上導電層13を形成して、凹凸状の上導電層13が形成された上基板11が完成する。
【0032】
つまり、所定の溶剤を噴霧する化学処理によって、上基板上面を微細な凹凸状に形成する場合等に比べ、手間がかからず容易に上基板11に凹凸を形成できると共に、上導電層13の凹凸を大きな高さに形成することが可能なようになっている。
【0033】
そして、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、一対の上電極と下電極が配線基板やコネクタ(図示せず)等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0034】
以上の構成において、タッチパネル背面の表示素子の表示を見ながら、所望の表示上の上基板11上面を指やペン等で押圧操作すると、上基板11が撓み、押圧された箇所の上導電層13が下導電層14に接触する。
【0035】
そして、電子回路から上電極と下電極へ順次電圧が印加され、上導電層13両端及びこれと直交方向の下導電層14両端の電圧比によって、押圧された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0036】
つまり、タッチパネル背面の表示素子に、例えば複数のメニュー等が表示された状態で、所望のメニュー上の上基板11上面を押圧操作すると、上電極と下電極間の電圧比によって、この操作した位置を電子回路が検出し、複数のメニューの中から所望のメニューの選択等が行えるように構成されている。
【0037】
また、この時、上基板11下面の上導電層13が複数の粒子15によって凹凸状に形成され、この凹凸の分だけ上導電層13と下導電層14の間が狭くなっているため、軽い力の良好な操作感触で押圧操作が行えると共に、指等を離し押圧操作力を解除した際には、上基板11が速やかに元の状態へ復帰するようになっている。
【0038】
すなわち、上基板11下面に複数の粒子15を設け、この下面の上導電層13を凹凸状に形成することで、上述したように、凹凸状の上導電層13を容易に形成できると共に、押圧操作時の上基板11の撓みが小さくなり、上基板11の元の状態への復帰が速やかに行われるため、誤操作が生じづらく、確実な操作が行えるように構成されている。
【0039】
なお、上導電層13と下導電層14の間の空隙内に充填する封止剤17としては、上述したように動粘度0.5〜30cStのものを用いることが可能であるが、動粘度が小さすぎると製作時に揮発し易くなり、動粘度が大きすぎると操作性を阻害する場合があるため、製作し易く、良好な操作感触を得るには、動粘度1.5〜20cStのものを用いることがより好ましい。
【0040】
さらに、上導電層13と下導電層14の間の空隙内に封止剤17を充填すると共に、上基板11下面の上導電層13を凹凸状に形成することによって、電灯や太陽光等の外部光の反射による干渉縞、所謂ニュートンリングが生じることを防ぐことが可能なようになっている。
【0041】
つまり、空隙内に充填された封止剤17と、上基板11下面の凹凸状の上導電層13によって、タッチパネル背面の液晶表示素子等の表示の視認を阻害する、ニュートンリングの発生を防ぎ、メニュー等の表示を見易くすることで、誤操作が生じづらく、容易に操作が行えるように構成されている。
【0042】
このように本実施の形態によれば、上基板11下面に複数の粒子15を設け、この下面の上導電層13を凹凸状に形成することによって、凹凸状の上導電層13を容易に形成できると共に、上導電層13と下導電層14の間が狭くなり、押圧操作時の上基板11の撓みが小さくなるため、上基板11の元の状態への復帰が速やかに行われ、誤操作が生じづらく、確実な操作が可能なタッチパネルを得ることができるものである。
【0043】
なお、以上の説明では、上基板11下面のほぼ全面に上導電層13を、下基板12上面のほぼ全面に下導電層14を設け、これらを対向させた構成について説明したが、上導電層13または下導電層14のいずれかを複数の略帯状に形成した構成や、あるいは上導電層13と下導電層14の両方を、互いに直交する複数の略帯状に形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によるタッチパネルは、安価で確実な操作が可能なものを得ることができるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0045】
11 上基板
12 下基板
13 上導電層
14 下導電層
15 粒子
16 スペーサ
17 封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に上導電層が形成された上基板と、上面に上記上導電層と所定の空隙を空けて対向する下導電層が形成された下基板と、上記空隙内に充填された絶縁性の封止剤からなり、上記上基板下面に複数の粒子を設け、上記上導電層を凹凸状に形成したタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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