説明

タッチ位置検出装置、情報入力システム、タッチ位置検出方法、タッチ位置検出プログラム

【課題】タッチパネルにおける多重タッチ時のタッチ位置を高精度に検出する。
【解決手段】行電極と列電極を有するマトリックス上のタッチパネルにあって、隣り合う列電極に相互の異なる一端側から逆方向に入力信号を印加する列電極駆動回路8と、行電極からの出力信号を検出すると共に、この出力信号を予め設定された第1のしきい値と比較しこのしきい値よりも大きい場合に、検出された位置を第1タッチ位置情報として保持し、第1のしきい値より小さい第2のしきい値と出力信号の大きさとを比較し第2のしきい値より大きい場合に検出された位置を第2タッチ位置情報として判定する位置検出処理部21aと、第1タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標と当該座標に行方向に隣り合う第2タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標との論理和をタッチと判定された座標を示す最終タッチ位置情報として決定する座標演算回路11aを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標入力のための抵抗膜を用いたマトリックス型タッチパネルに関し、特にタッチパネルにおける多重タッチを検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶ディスプレイのような表示装置の表示面に接触する物体の位置情報を検出するタッチパネルは、入力装置の一つとして広く利用されている。タッチパネルの方式として、ITO(Indium Tin Oxide)等の抵抗膜を用いた抵抗膜方式がある。抵抗膜方式のタッチパネルは、構成が単純で安価に作製されることから、タッチパネルの中で最も多く利用されている。
【0003】
抵抗膜方式のタッチパネルにはアナログ型とマトリックス型がある。アナログ型のタッチパネルは押圧側基板と非押圧側基板それぞれに抵抗膜が面状に形成されている構成で、押圧側基板と非押圧側基板はスペーサを介して対向配置されている。
例えば、押圧側基板の抵抗膜のX方向に電圧を印加し、非押圧側基板の抵抗膜でタッチ位置に応じて押圧側基板の抵抗膜によって分圧された電圧を非押圧側基板で読み取る。
次に、非押圧側基板の抵抗膜のY方向に電圧を印加し、押圧側基板の抵抗膜でタッチ位置に応じて非押圧側基板の抵抗膜によって分圧された電圧を押圧側基板で読み取る。読み取られたX方向、Y方向の電圧に基づき、X方向の座標、Y方向の座標が計算される。
このような処理方法から、アナログ型のタッチパネルでは、2点以上同時にタッチされたとき(多重タッチ)、その中間点をタッチ位置として計算してしまうため、多重タッチに対応することができないという不都合があった。
【0004】
一方、マトリックス型のタッチパネルは、アナログ型のタッチパネルにおける抵抗膜が短冊状に形成されており、押圧側基板と非押圧側基板とでその形成方向が直交している。
例えば、押圧側基板の短冊状の抵抗膜に順次電圧を印加しながら、非押圧側基板の短冊状の抵抗膜に出力される電圧の大きさによって座標を計算する。つまり、マトリックス型のタッチパネルはタッチ位置をそれぞれの基板の短冊状の抵抗膜を単位として検出することができるため、2点以上の同時のタッチを認識することができ、多重タッチに対応することができる。
【0005】
ここで、マトリックス型のタッチパネルの構造、検出処理方法について説明する。マトリックス型のタッチパネルは、図1に示すように、主にスペーサ(図示なし)を介して対向配置された第1基板1、第2基板2から成る。第1基板1上にはITO等の透明性導電材料からなる行電極3が複数形成され、第2基板2上には同じく透明性導電材料からなる列電極4が複数形成される。
第2基板2側から指等でタッチするとタッチ点付近の行電極3と列電極4がそれらの交点で接触する。この接触を検出することにより、タッチ点が認識される。
図1において、1列目の列電極C1に電圧信号を印加し、全ての行電極3の電圧の変化を検出することによって1列目のどの行が接触しているかを判断する。この操作を全ての列電極4について行うことにより、タッチ位置を計算する。
ここで、ある列電極4に信号を印加しているときは他の列電極4はハイインピーダンスにし、かつ、行電極3についても検出する行電極3以外はGNDに接続させることにより、行電極3と列電極4の各々の交点が独立して接触を検出できるため、多重タッチにも対応できる。
【0006】
しかしながら、上述のようなマトリックス型のタッチパネルでは、多重タッチ時にマスキングと呼ばれる現象が発生し、タッチ検出の精度が低下してしまう不都合がある。
ここで、このマスキングについて、図2に基づき説明する。
同じ列電極4において信号入力側の端に近い箇所でのタッチ(図2タッチP1)と他方の端に近い箇所でのタッチ(図2タッチP2)による多重タッチが発生した場合、タッチP1で交差する行電極3によって印加された信号の電圧が分圧されるため、タッチP2で交差する行電極3で検出される電圧は非常に小さくなってしまう。
ここで、タッチP1の有無によるタッチP2で検出される電圧の変化を示すグラフ(図3)を示す。この図3では、グラフの横軸はタッチの圧力、縦軸は行電極で検出される電位を表すものとする。
このとき、電位はタッチP1が存在することにより減少する。タッチの圧力がTの時、タッチP1が無い場合は検出される電位がしきい値より大きいため、タッチP2はタッチと認識される。
しかしながら、タッチP1がある場合は検出される電位がしきい値より小さくなるため、タッチP2はタッチと認識されずマスキングが発生してしまう。
【0007】
これに対する関連技術として、マトリックス型のタッチパネルの多重タッチ時における検出信号の低下によるマスキングの発生を防ぐために、行電極、及び、列電極を互いにかみ合う構造にする手法が開示されている(特許文献1)。
この特許文献1では、電極が互いにかみ合う構造になっているため、隣り合う2本の電極への信号入力は互いに逆方向となる。
このため、例えば、タッチ面の中にマスキングによって検出できない電極があっても、それに隣り合う電極は信号入力側にマスキングを引き起こす他のタッチが無いので、タッチの検出が可能となる。
【0008】
また、マスキングの発生を抑制するための他の関連技術として、検出信号をデジタル変換するためのしきい値を変化させる手法が開示されている(特許文献2)。
前述のように、マスキングはマスキングされるタッチ位置よりも信号入力側の他のタッチの影響により、検出信号が小さくなるため発生する。従って、信号入力側から離れた電極からの小さくなった検出信号がタッチと認識されるように、タッチの有無を判断するためのデジタル変換のしきい値を小さくする。これにより、マスキングによって信号が小さくなったタッチ位置でもタッチと認識され、マスキングの発生が抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2004−523833号公報
【特許文献2】特表2007−527061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に開示された関連技術では、マスキングが発生したときでもタッチの認識はできるが、タッチに対応する信号を検出する電極は半分になってしまい、タッチ検出の解像度は減少してしまう不都合がある。
また、上記特許文献2の関連技術では、タッチパネルが劣化したときに実際にはタッチしていない位置でも小さなしきい値に反応してしまい、タッチと誤認識してしまう不都合が生じ得る。つまり、上記の手段を適用することにより、タッチパネルの検出精度が低下してしまうという不都合がある。
【0011】
[発明の目的]
本発明は、上記関連技術の有する不都合を改善し、マスキングの発生を抑制すると共に高精度に多重タッチに対応した検出を行う位置検出装置、情報入力システム、タッチ位置検出方法、タッチ位置検出プログラムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るタッチ位置検出装置は、予め設定された行方向に沿って平行に形成された行電極と前記行方向に交差する列方向に沿って形成された列電極とが対向配置されたタッチパネルと、隣り合う前記列電極に対して当該列電極相互の異なる一端側から逆方向に入力信号を印加する外部端子と、前記列電極および行電極の接触により前記入力信号に対応して前記行電極から出力される出力信号に基づき前記タッチパネルにおける外部圧力が加えられた位置を検出するタッチ位置検出部とを備えたタッチ位置検出装置であって、前記タッチ位置検出部は、前記列電極および前記行電極を順次走査駆動すると共に、前記列電極に対して前記入力信号を印加するタイミングに同期して前記行電極からの出力信号を検出する出力信号検出手段と、前記出力信号の大きさを予め設定された第1のしきい値と比較すると共に当該第1のしきい値よりも大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第1タッチ位置情報として保持する第1のタッチ位置判定手段と、予め設定された前記第1のしきい値より小さい第2のしきい値と前記出力信号の大きさとを比較すると共に当該出力信号の大きさが前記第2のしきい値より大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第2タッチ位置情報として保持する第2のタッチ位置判定手段と、前記第1タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標と、当該座標に行方向に隣り合う前記第2タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標との論理和をタッチと判定された座標とする最終タッチ位置情報を決定する最終タッチ位置決定手段とを備えた構成をとっている。
【0013】
また、本発明にかかるタッチ位置検出方法は、予め設定された行方向に沿って平行に形成された行電極と前記行方向に交差する列方向に沿って形成された列電極とが対向配置されたタッチパネルと、隣り合う前記列電極に対して当該列電極相互の異なる一端側から逆方向に入力信号を印加する外部端子と、前記列電極および行電極の接触により前記入力信号に対応して前記行電極から出力される出力信号を取得するタッチ位置検出部とを備えたタッチ位置検出装置にあって、前記タッチパネルにおける外部圧力が加えられた位置を検出するタッチ位置検出方法であって、前記列電極および前記行電極を順次走査駆動すると共に、前記列電極に対して前記入力信号を印加するタイミングに同期して前記行電極からの出力信号を検出し、前記出力信号の大きさを予め設定された第1のしきい値と比較すると共に当該第1のしきい値よりも大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第1タッチ位置情報として保持し、前記第1のしきい値より小さい予め設定された第2のしきい値と前記出力信号の大きさとを比較すると共に前記出力信号の大きさが前記第2のしきい値より大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第2タッチ位置情報として保持し、前記第1タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標と、当該座標に行方向に隣り合う前記第2タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標との論理和をタッチと判定された座標とする最終タッチ位置情報を決定することを特徴としている。
【0014】
又、本発明にかかるタッチ位置検出プログラムは、予め設定された行方向に沿って平行に形成された行電極と前記行方向に交差する列方向に沿って形成された列電極とが対向配置されたタッチパネルと、隣り合う前記列電極に対して当該列電極相互の異なる一端側から逆方向に入力信号を印加する外部端子と、前記列電極および行電極の接触により前記入力信号に対応して前記行電極から出力される出力信号を取得するタッチ位置検出部とを備えたタッチ位置検出装置にあって、前記タッチパネルにおける外部圧力が加えられた位置を検出するためのタッチ位置検出プログラムであって、前記列電極および前記行電極を順次走査駆動すると共に、前記列電極に対して前記入力信号を印加するタイミングに同期して前記行電極からの出力信号を検出する出力信号検出機能と、前記出力信号の大きさを予め設定された第1のしきい値と比較すると共に当該第1のしきい値よりも大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第1タッチ位置情報として保持する処理を行う第1タッチ位置判定機能と、前記第1のしきい値より小さい予め設定された第2のしきい値と前記出力信号の大きさとを比較すると共に前記出力信号の大きさが前記第2のしきい値より大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第2タッチ位置情報とする処理を行う第2タッチ位置判定機能と、前記第1タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標と、当該座標に行方向に隣り合う前記第2タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標との論理和をタッチと判定された座標とする最終タッチ位置情報を決定する最終タッチ位置決定機能とを、前記タッチ位置検出部に設定されたコンピュータに実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上のように構成され機能するので、これによると、第1のしきい値と第2のしきい値でタッチを判断し、それぞれのしきい値でのタッチ位置情報から最終的なタッチ位置情報を決定する構成としたことにより、マスキングが発生した状態であっても、多重タッチを、検出精度を低下させることなく高精度に検出することができるタッチ位置検出装置、情報入力システム、タッチ位置検出方法、タッチ位置検出プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】抵抗膜方式のマトリックス型のタッチパネルの構成を示す説明図である。
【図2】抵抗膜方式のマトリックス型のタッチパネルにおけるマスキングの状態を示す説明図である。
【図3】図2の抵抗膜方式のマトリックス型のタッチパネルでのマスキング発生時の検出電位の変化示す説明図である。
【図4】本発明によるタッチ位置検出装置における一実施形態を示す概略ブロック図である。
【図5】図4に開示したタッチ位置検出装置におけるタッチパネルの構成を示す説明図である。
【図6】図4に開示したタッチ位置検出装置における検出処理のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】図4に開示したタッチ位置検出装置における座標演算回路の処理機能の動作ステップを示すフローチャートである。
【図8】図7の行演算の処理機能の動作ステップを示すフローチャートである。
【図9】図4に開示したタッチ位置検出装置における検出処理におけるマスキングの発生を示す説明図である。
【図10】図4に開示したタッチ位置検出装置における検出処理の工程でのタッチ位置情報を示す説明図である。
【図11】本発明によるタッチ位置検出装置における一実施形態を示す概略ブロック図である。
【図12】図11に開示したタッチ位置検出装置における検出処理のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図13】図11に開示したタッチ位置検出装置におけるX座標演算回路の処理機能の動作ステップを示すフローチャートである。
【図14】図11に開示したタッチ位置検出装置における検出処理の工程でのタッチ位置情報を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態1]
次に、本発明にかかる実施形態1について、その基本的構成内容を説明する。
【0018】
本実施形態1は、図4に示すように、抵抗膜方式のマトリックス型のタッチパネルの位置検出装置であって、タッチパネルの位置検出装置は、第1及び第2基板が対向配置された抵抗膜方式のマトリックス型のタッチパネル6aと、このタッチパネル6aの第1基板上に設けられた行電極からの出力信号を取得する行電極駆動回路7と、タッチパネル6aの第2基板上に設けられた列電極に対して入力信号の印加を行う列電極駆動回路8と、信号検出処理のタイミングを決定するためのパルス信号を行電極駆動回路7および列電極駆動回路8に対して出力するタイミング生成回路9と、検出された信号を一時的に保持するメモリ10と、検出された信号に基づきタッチパネル上におけるタッチ位置を決定する座標演算回路11aと、上記各種回路における動作機能を制御するCPU(Central Processing Unit)部(以下「CPU」という)12を備えた構成となっている。
また、本実施形態の位置検出装置では、行電極駆動回路7、メモリ10、および座標演算回路11aからなる位置検出処理部21aが形成されているものとする。
【0019】
ここで、本実施形態の抵抗膜方式のマトリックス型のタッチパネル6aについて、図5に基づき説明する。このタッチパネル6aは、上記関連技術におけるタッチパネル(図1)とほぼ同等の構成を備え、対向配置された2枚のPETフィルムやガラス板のような透明性絶縁基板上に、ITOのような透明性導電材料からなる短冊状の電極(行電極13、列電極14)が形成されているものとする。
【0020】
ここで、このタッチパネル6aに対する指によるタッチを想定した場合、タッチされる側の基板(押圧側基板:第2基板に対応)に少なくとも電極(列電極14)が2本以上設定されている必要があるため、電極のピッチ(電極の幅と間隔の和)は4mm以下であることが望ましい。
また、押圧側基板には、上述のように、タッチ位置検出のための入力信号が印加される複数の列電極14が設けられている。
更に、この押圧側基板に対して対向配置された非押圧側基板(第1基板(図1)に対応)は、接触することにより列電極14からの信号を検知する複数の行電極13を有する。
【0021】
更に、列電極14と行電極13は相互に垂直な方向に形成される。なお、本発明において、列電極14に対する行電極13の形成方向は垂直であることは必須ではない。また、2枚の基板のどちらか一方に高さが5〜10μm程度のドット状のスペーサが形成される。
また、各列電極14の一端には、入力信号を印加するための外部端子15(列電極駆動回路8の一部)が設けられ、この外部端子15は、隣り合う列電極14では相互に異端側となる一端に設けられ、これにより、外部端子15は操作(タッチパネル)面の両端(図4および5では上側と下側)にそれぞれ設けられた構成となっている。
【0022】
すなわち、外部端子15は、列電極X1、X3、・・・についてはタッチパネル下方向側(図5)に、列電極X2、X4、・・・についてはタッチパネル上方向側(図5)にそれぞれ設置される。これらの外部端子15は列電極駆動回路8に接続されるものとする。
【0023】
また、行電極13は、タッチパネル左方向側(図4および5)で行電極駆動回路7に接続されているものとする。更に、タッチパネルでは、行電極13と列電極14との交差部がマトリックス状に配置され、1本の行電極13と1本の列電極14の交差部がスイッチとなり、このスイッチは列電極14からの入力信号を列電極14と行電極13が接触して行電極13へ導通させる機能を有する。
【0024】
このため、本実施形態であるタッチパネル6aをユーザーがタッチすると、行電極13と列電極14の交差部からなるスイッチを介して、列電極14からの入力信号が行電極13からの出力信号として検出される。
ここで、位置検出処理部21aが、どの列電極からの入力信号がどの行電極で出力信号として出力されたかを検出(判定)することにより、タッチパネル上におけるタッチ位置を決定する。
【0025】
[実施形態1の動作説明]
次に、上記実施形態1である位置検出装置の全体的な動作について、概説する。
まず、列電極駆動回路8、及び、行電極駆動回路7が、列電極および前記行電極を順次走査駆動すると共に、位置検出処理部21aが、列電極に対して入力信号を印加するタイミングに同期して、行電極からの出力信号を検出し(出力信号検出工程)、出力信号の大きさを予め設定された第1のしきい値と比較すると共に、当該第1のしきい値よりも大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第1タッチ位置情報として保持する(第1のタッチ位置判定工程)、
次いで、第1のしきい値より小さい予め設定された第2のしきい値と前記出力信号の大きさとを比較すると共に前記出力信号の大きさが前記第2のしきい値より大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第2タッチ位置情報として保持する(第2のタッチ位置判定工程)。
次に、座標演算回路11aが、第1タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標と当該座標に隣り合う第2タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標との論理和をタッチと判定された座標とする最終タッチ位置情報として決定する(最終タッチ位置決定工程)。
【0026】
ここで、出力信号検出工程、第1のタッチ位置判定工程、第2のタッチ位置判定工程、および最終タッチ位置決定工程については、その実行内容をプログラム化し、コンピュータに実行させるように構成してもよい。
【0027】
以下、これを詳説する。
まず、タッチパネル6a上におけるタッチ位置を検出する処理について、図6に基づき説明する。図6は、図4に示したタッチパネル6aの位置検出装置を用いてタッチ位置の検出を行うための信号送信のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0028】
位置検出処理部21aが、タッチパネルがタッチされたことを検知したときに、行電極駆動回路7から出力された割り込み信号がCPU12によって認識され、CPU12は、相応な信号群をタイミング生成回路9に送信する。
【0029】
タイミング生成回路9は、CPU12から送信された信号に基づき、検出処理の開始のタイミングを決定するためのパルス状の検出開始信号を、列電極駆動回路8と行電極駆動回路7とにそれぞれ出力する。ここで、検出開始信号の印加の周期はタッチパネルの検出周波数の逆数(検出周期)と等しくなるように設定されるものとする。
【0030】
また、タイミング生成回路9は、検出開始信号と共に行電極、列電極の入力信号印加、および出力信号検出を開始するタイミングを通知するパルス状のXY走査開始信号を、行電極駆動回路7、列電極駆動回路8に出力する。
このXY走査開始信号は、検出周期に2回出力され、1回目は検出開始信号と同じタイミングで、2回目は検出周期の中間点に出力されるものとする。
ここで、1回目の検出開始信号の出力から2回目の検出開始信号の出力までを第1検出期間101、2回目の検出開始信号の出力から次の検出周期の1回目の検出開始信号の出力までを第2検出期間102とする(図6)。
【0031】
更に、タイミング生成回路9は、1回目のXY走査開始信号が列電極駆動回路に出力されるタイミングで、列電極X1、X2、・・・、Xnの順にパルス幅tの入力信号を選択的に印加する。ここで、入力信号が印加されていない期間、列電極はハイインピーダンスの状態に設定されるものとする。また、列電極に入力信号が印加されている期間tには、全ての行電極の出力信号の検出が行われる。
【0032】
次いで、行電極の出力信号は行電極駆動回路7に内蔵されているコンパレータによってデジタル信号に変換される。
具体的には、例えば、行電極からの出力信号がコンパレータの予め設定されたしきい値よりも大きい場合は、Hレベルの信号が、小さい場合はLレベルの信号が出力されるものとする。ここで、行電極駆動回路7は、Hレベルの信号を検出した行をタッチと認識し、各列のタッチ位置情報を記憶する。
【0033】
また、行電極駆動回路7は、第1検出期間101では、第1しきい値に基づき全ての行のタッチを判定する(しきい値判定)。
次いで、列電極Xnの入力信号の印加が終了した後、行電極駆動回路7は、行電極駆動回路7に記憶された各列のタッチ位置情報を、タイミング生成回路9から出力される第1検出期間101に設定される読み出し信号のタイミングで第1タッチ位置情報としてメモリ10に格納する。
【0034】
また、第1タッチ位置情報がメモリ10に格納された後、同様に、2回目のXY走査開始信号が列電極駆動回路に出力されるタイミングで、列電極X1、X2、・・・、Xnの順にパルス幅tの入力信号が選択的に印加され、行電極駆動回路7は、期間tに全ての行電極の出力信号の検出を行う。
この第2検出期間102では、コンパレータのしきい値は第1しきい値よりも小さな第2しきい値に設定されているものとする。
ここで、行電極駆動回路7に記憶された各列のタッチ位置情報は、タイミング生成回路9から出力される第2検出期間102に設定される読み出し信号のタイミングで、第2タッチ位置情報としてメモリ10に格納される。
【0035】
尚、第1しきい値はタッチパネルの劣化や、その他の位置検出装置内の各種配線の抵抗値のばらつきによる微弱信号がタッチと認識されないような高い値に設定されるのが望ましい。また、第2しきい値は、その第1しきい値よりも小さな値に設定され、該微弱信号を含め、小さな出力信号もタッチと認識されるような低い値に設定されるのが好適である。
【0036】
これにより、例えば、タッチパネルにおける多重タッチ時のマスキングが発生した場合、マスキングされたタッチ位置に対応する出力信号は非常に小さい値であるため、上述の第1しきい値では認識されないが、第1しきい値よりも小さな値に設定された第2しきい値に基づくしきい値判定では、このマスキングされたタッチを確実に認識することができる。
【0037】
次いで、第2タッチ位置情報がメモリ10に格納された後、第1および第2タッチ位置情報は、CPU12により座標演算回路11aに送信される。
【0038】
座標演算回路11aは、第1タッチ位置情報のタッチと認識された座標とそれらの座標に隣り合う第2タッチ位置情報のタッチと認識された座標との論理和を計算し、この計算結果に基づいて最終タッチ位置情報を決定し、これをCPU12に対して出力する。
【0039】
ここで、座標演算回路11aにおける処理動作について、図7のフローチャートに基づき説明する。ここで、タッチパネルのマトリックスはM行N列であるものとする。
【0040】
座標演算回路11aは、処理対象の行であるi行目を1行目から設定し(1→i)、このi行目に対して行演算を行い(行演算)、次いでi行目を1昇順したi+1行目に設定すると共に(i+1→i)、このi行目が上限であるM行目のMより大きいか否かの判定を行い、設定されたiが上限であるMより大きくない場合に、このi行目に対して演算処理を行う(行演算)。また、iが、上限であるM行目のMより大きい値である場合(Yes)、処理を終了する。
これにより、座標演算回路11aは、1行目からM行目までの行演算を再帰的に(繰り返し)実行を行う。
【0041】
次に、座標演算回路11aにおけるi行目の演算処理について、図8のフローチャートに基づき説明する。尚、この演算処理は1列目からN列目まで、再帰的に処理されるものとする。
ここで、Ai,j、Bi,j、およびCi,jは、それぞれ第1タッチ位置情報、第2タッチ位置情報、および最終タッチ位置情報のi行j列目のデータを示すものとする。
また、Ai,j、Bi,j、およびCi,jの座標におけるデータが0の場合はタッチなし、1の場合はタッチありを示すものとする。
【0042】
まず、座標演算回路11aは、1列目の演算処理を行うのに先立ち、0列目の仮のデータを決定する。また、同様に、N列目の処理に先立って、N+1列目の仮のデータ値を設定する。ここでは、データ値を0に設定する(ステップS0:図8)
尚、このステップS0は、後述するステップS3の処理で必要となるステップである。
【0043】
次いで、座標演算回路11aはマトリックスにおける1列目を、処理対象であることを示すj列目に設定し(1→j)、Ai,j、Bi,jにおけるデータ値を比較する。
ここで、Ai,jとBi,jのデータ値が等しい場合(Yes:ステップS1)、Ai,j=Bi,j=0のときはCi,jのデータ値を0と判定する。また、Ai,j=Bi,j=1のときはCi,jのデータ値を1と判定する(ステップS2)。すなわち、ステップS2では、Ai,jのデータ値をCi,jのデータとする処理を行う。
【0044】
一方、Ai,jとBi,jのデータ値が異なる場合のうち(No:ステップS1)、Ai,j=0、Bi,j=1のとき、つまり、第1しきい値ではタッチと判定されず(Ai,j=0)、第2しきい値でタッチと判定された(Bi,j=1)場合、処理するタッチ位置の両隣の位置のAのデータが0かどうかの判定を行う(ステップS3)。
【0045】
尚、1列目の処理の場合、隣り合うデータは2列目のデータのみなので、処理結果(値)におけるエラーの発生を回避するため、0列目の仮のデータを決定されているものとする(ステップS0)。
同様に、N列目の処理の場合にも、隣り合うデータはN−1列目のデータのみなので、ステップS0でN+1列目の仮のデータを決定しておくものとする(ステップS0)。
【0046】
このステップS3で、Ai,jの両隣(Ai,j-1,Ai,j+1)のデータ値が0であれば該タッチ位置Ci,jのデータ値は0と判定(決定)される(Yes:ステップS3)ので、次いで、ステップS2の処理が行われる。
【0047】
一方、ステップS3でAi,jの両隣(Ai,j-1i,j+1)のデータ値のうち少なくとも一方が1であれば該タッチ位置Ci,jのデータ値は1と判定する。
このため、ステップS4ではBi,jのデータ値をCi,jのデータ値として設定する処理を行う。
【0048】
次いで、jを1昇順したj+1列目を、処理対象に設定すると共に(j+1→j)、このj列目が上限であるN列目のNより大きいか否かの判定を行い、設定されたjが上限であるNより大きくない場合(No)に、このj行について演算処理を行う(ステップS1へ)。また、設定されたjが、上限であるNより大きい値である場合(Yes)、処理を終了する。
【0049】
以上のように、本実施形態における座標演算回路11aでは、最終タッチ位置情報としてタッチと認識される座標(データ値)が、座標演算回路11aによるデータ値の設定処理が行われることにより、第1タッチ位置情報のタッチと認識された座標とそれらの座標に行方向に隣り合う第2タッチ位置情報のタッチと認識された座標におけるデータ値の論理和として決定される。
【0050】
次に、本実施形態におけるタッチパネルで、多重タッチによるマスキングが発生した場合の、位置検出処理部21aにおけるデータ値の検出処理、および座標演算回路11aの演算処理について、図9、および10に基づいて、詳細に説明する。
【0051】
ここでは、タッチパネルのマトリックス構造を10行10列であるものとする。
また、図9では、3列目(図9の左から3列目)の列電極では図面下方側から入力信号が印加され、このため、タッチパネルの両端に多重タッチ(タッチAとタッチB)が検出された場合に、タッチAの1行3列目のタッチが、タッチBによりマスキングされる場合を示している。
【0052】
また、図10(a)は、第1しきい値に基づき認識される第1タッチ位置情報を示す。つまり、予め設定された第1しきい値より大きい(高い)信号が検知された点をタッチとして検知(認識)する。また、図10(b)は、第2しきい値に基づき認識される第2タッチ位置情報を示したものであり、つまり、予め設定された第2しきい値より大きい(高い)信号が検知された点をタッチとして検知(認識)する。ただし、この第2しきい値は第1しきい値より低い値に設定されているものとする。また、タッチと認識された点(座標の値)は1、認識されなかった点は0で表されているものとする。
【0053】
ここで、第1しきい値に対応する第1タッチ位置情報では、タッチBは、図10(a)のように、全てタッチと認識されているが、タッチAに含まれる(図9)1行3列目はタッチと認識されない。
一方、第2しきい値に対応する第2タッチ位置情報では、第2しきい値が第1しきい値より低く設定されているため、図10(b)のように、タッチAの1行3列目は出力信号が非常に小さくてもタッチとして認識されている。
【0054】
また、この第2しきい値に対応する第2タッチ位置情報では、図10(b)に示すように、1行9列目、及び、1行10列目のように、実際のタッチ動作とは無関係な微弱信号が検出されることによってタッチと誤認識される場合が生じ得る。
【0055】
このとき、座標演算回路11aは、第1タッチ位置情報と第2タッチ位置情報として検知された位置情報に基づき、まず、第2タッチ位置情報におけるタッチAの1行3列目は第1タッチ位置情報のタッチと認識される座標(1行2列目)に隣り合っているため、最終タッチ位置情報(図10(c))ではタッチと認識する。これにより、検出されるべきタッチ位置が検出されないマスキングの発生を有効に抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態1のタッチパネルのマトリックス構造では、隣り合う列電極は互いに反対方向から入力信号が印加されるため、マスキングの発生により出力信号が非常に小さくなった場合でも、隣接する列電極からの入力信号によってタッチと認識され、これにより、マスキングの発生した点においても確実にタッチを検出(認識)することができる。
【0057】
図10(b)の1行9列目、及び、1行10列目のように、第2タッチ位置情報でタッチとは無関係な微弱信号によってタッチと認識された座標については、第1タッチ位置情報でタッチと認識された座標に隣り合わないため、最終的なタッチ位置情報(最終タッチ位置情報:図10(c))でタッチと誤認識されるのを抑制することができる。
本実施形態(のタッチパネルのタッチ位置検出処理)では、第2タッチ位置情報でタッチと認識された座標それぞれは、第1タッチ位置情報に基づき最終的なタッチ位置情報の決定がなされるため、タッチの誤認識を有効に抑制することができる。
【0058】
したがって、本実施形態では、異なる2つのしきい値に基づきそれぞれタッチの認識を行い、さらに、認識されたそれぞれの値の相互位置関係に基づき最終タッチ位置情報を決定する構成としたことにより、タッチ位置検出精度を低下させることなく、多重タッチ時のマスキングの発生を有効に抑制することができる。
【0059】
[実施形態2]
次に、本発明に係る実施形態2の位置検出装置について説明する。ここで、前述した実施形態1と同一の部分については、同一の符号を付するものとする。
この実施形態2である、抵抗膜方式のマトリックス型のタッチパネル(以下「タッチパネル6b」とする)の位置検出装置は、図11に示すように、装置の機器構成部分は前述した実施形態1(図4)とほぼ同一の構成を備えており、位置検出処理部21aの座標演算回路11aを、タッチパネルにおける各行電極に対応した1次元のデータを単位とした演算処理を行うことによりタッチパネル上におけるタッチ位置を決定するX座標演算回路11bに置換えた構成とした点が実施形態1の場合と相違する。
【0060】
[実施形態2の動作説明]
まず、タッチパネル6b上におけるタッチ位置を検出する処理について、図12に基づき説明する。この図12は、図11に示したタッチパネル6bの位置検出装置を用いてタッチ位置の検出を行うための信号処理を行うタイミングを示すタイミングチャートである。
【0061】
ここでは、X座標演算回路11b、メモリ10、行電極駆動回路7からなる位置検出処理部21bが、タッチパネル6bがタッチされたことを検知したときに、行電極駆動回路7から出力された割り込み信号がCPU12によって認識され、CPU12は、この信号に対応した相応な信号群をタイミング生成回路9に送信する。
【0062】
タイミング生成回路9は、CPU12から送信された信号に基づき、検出処理の開始のタイミングを決定するためのパルス状の検出開始信号を、列電極駆動回路8と行電極駆動回路7とにそれぞれ送信する。ここで、検出開始信号が印加される周期は、タッチパネルの検出周波数の逆数(検出周期)と等しくなるように設定されるものとする。
【0063】
また、タイミング生成回路9は、検出開始信号と共に行電極、列電極の入力信号印加、および出力信号検出を開始するタイミングを通知するパルス状のY走査開始信号を、行電極駆動回路7、および列電極駆動回路8それぞれに送信する。
ここで、タイミング生成回路9は、Y走査開始信号の印加のタイミングで、行電極Y1、Y2、・・・、Ymの順にパルス幅tの検出サイクル信号が選択的に行電極に対して出力されるものとする。
【0064】
ここで、CPU12は、検出サイクル信号が印加されていない行電極をGNDに接続する設定とする。また、期間tに、全ての列電極に順次入力信号が印加され、検出サイクル信号が印加された行電極は、期間tに列電極毎の入力信号の検出動作を行う。
検出サイクル信号は、Y走査開始信号の周期に2回出力されるものとする。
尚、1、2回目の検出サイクル信号が印加されている期間をそれぞれ第1の行検出期間201、第2の行検出期間202とする(図12)。
【0065】
次いで、第1の行検出期間201に行電極駆動回路7で検出された出力信号は、行電極駆動回路7に内蔵されたコンパレータの第1しきい値によりデジタル信号に変換されるものとする。
また、行方向のタッチ位置情報は、検出サイクル信号の印加終了後に、タイミング生成回路9から出力される読み出し信号に基づき、行電極駆動回路7が、第1の行タッチ位置情報としてメモリ10に格納する。
更に、第2の行検出期間202では、第1しきい値よりも小さい第2しきい値でコンパレータに基づきデジタル信号に変換され、読み出し信号に基づき第2の行タッチ位置情報としてメモリ10に格納される。
尚、第1しきい値、第2しきい値の大きさは、それぞれ実施形態1と同様に設定されるものとする。
【0066】
次いで、第2の行タッチ位置情報がメモリ10に格納された後、CPU12は、第1および第2の行タッチ位置情報を、X座標演算回路11bに送信する。
【0067】
X座標演算回路11bは、第1の行タッチ位置情報のタッチと認識された座標とそれらの座標に隣り合う第2の行タッチ位置情報のタッチと認識された座標との論理和を計算し、この計算結果に基いて、1次元の最終の行タッチ位置情報を生成すると共に、行タッチ位置情報CPU12に出力する。
上述の処理が各行電極全てに対して、順次行われることにより、2次元のタッチ位置情報(最終タッチ位置情報に相当)が生成される。
【0068】
ここで、X座標演算回路11bにおける処理動作について、図13のフローチャートに基づき説明する。
尚、本実施形態におけるタッチパネル6bのマトリックスはN列であるものとする。また、A、B、およびCは、それぞれ第1の行タッチ位置情報、第2の行タッチ位置情報、および最終の行タッチ位置情報のj列目のデータ値を示し、データ値が0の場合はタッチなし、1の場合はタッチありを示すものとする。また、X座標演算回路11bによる演算処理は、1列目からN列目まで再帰的に行われる。
【0069】
まず、X座標演算回路11bは、AおよびAN+1のデータ値を0に設定する(ステップS0:図13)。尚、このステップS0は後述するステップS3の処理で必要となるステップである。
【0070】
次いで、X座標演算回路11bはA、Bを、演算対象であることを示すA、Bに設定し(1→j)、A、Bにおけるデータ値を比較する(ステップS1)。
=B=0のときはCのデータ値は0に設定され、A=B=1のときはCのデータ値は1に設定される(ステップS2)。すなわち、ステップS2ではAのデータ値をCのデータ値に設定する処理が行われる。
【0071】
一方、A、Bにおけるデータ値が異なる場合(No:ステップS1(図13))、例えば、A=0、B=1のときは、第1しきい値判定ではタッチと判定されず第2しきい値判定でタッチと判定された場合を示すので、処理するタッチ位置の両隣の位置のAのデータが0であるか否かの判定を行う(ステップS3)。
【0072】
尚、1列目の処理の場合、隣り合う列のデータ値は2列目のデータのみなので、処理結果におけるエラーの発生を回避するため、0列目の仮のデータ値を予め決定しておくものとする(ステップS0)。同様に、N列目の処理の場合には、隣り合うデータはN−1列目のデータ値のみとなるので、ステップS0でN+1列目の仮のデータを予め決定しておく。このため、ステップS3でAの両隣のデータ値(Aj-1,Aj+1)が0であればタッチ位置のCのデータ値は0と設定されるので、次いで、ステップS2の処理が行われる。
【0073】
また、X座標演算回路11bは、ステップS3でAの両隣(Aj-1,Aj+1)のデータ値のうち、少なくとも一方が1であればタッチ位置のCのデータは1と判定されるので、Bのデータ値をCのデータ値として設定する処理を行う(ステップS4)。
【0074】
次いで、jを1昇順したj+1列目を、処理対象に設定すると共に(j+1→j)、このj列目が上限であるN列目のNより大きいか否かの判定を行い、設定されたjが上限であるNより大きくない場合(No)に、このj行について演算処理を行う(ステップS1へ)。また、設定されたjが、上限であるNより大きい値である場合(Yes)、処理を終了する。
【0075】
以上のように、本実施形態におけるX座標演算回路11bは、第1の行タッチ位置情報のタッチと認識された座標と、この座標に隣り合う第2の行タッチ位置情報のタッチと認識された座標との論理和として、最終の行タッチ位置情報を設定する。
【0076】
次に、実施形態1における図9に示した場合と同様に、本実施形態においてマスキングが発生した場合の、X座標演算回路11bによる処理動作について説明する。
【0077】
まず、タッチパネルの両端に多重タッチ(タッチAとタッチB)が検出された場合、タッチパネル(6b)における行電極1行目では、図9に示すように、タッチAの3列目のタッチがタッチBによりマスキングされる。
【0078】
まず、図7における1行目のタッチ位置情報を抜き出したものを図14(a〜c)に示す。尚、ここでは、タッチと認識された点は1、認識されなかった点は0で表している。
ここで、第1しきい値に対応する(第1しきい値判定による)第1の行タッチ位置情報では、図14(a)に示すように、マスキングされた3列目はタッチと判断されない。
【0079】
一方、第2しきい値に対応する(第2しきい値判定による)第2の行タッチ位置情報では、しきい値が低く設定されているため、図14(b)に示すように、タッチAの3列目は出力信号が小さい場合でも認識される。
また、この図14(b)では、9列目、及び、10列目のように、タッチとは無関係な微弱信号の検出によってタッチと誤認識される点が現れている。
【0080】
ここで、X座標演算回路11bは、第1の行タッチ位置情報と第2の行タッチ位置情報に基づき、第2の行タッチ位置情報の3列目は第1の行タッチ位置情報のタッチと認識される座標(2列目)に隣り合っているため、図14(c)に示すように、最終の行タッチ位置情報ではタッチと設定する。これにより、マスキングの発生が抑制される。
【0081】
以上のように、本実施形態では、第1実施形態と同様、マスキングの発生により出力信号が非常に小さくなっても隣接する列電極からの入力信号によりタッチと認識されることにより、マスキングの発生する点も確実にタッチと認識(設定)することができる。
【0082】
また、例えば、図14(b)の9列目、及び、10列目のように、第2の行タッチ位置情報でタッチとは無関係な微弱信号によってタッチと認識された座標については、第1の行タッチ位置情報でタッチと認識された座標に隣り合わないため、タッチなしと判定する。
【0083】
このため、本実施形態のタッチパネルの位置検出処理では、第1実施形態と同様に、第2の行タッチ位置情報でタッチと認識された座標は、第1の行タッチ位置情報に基づき最終的なタッチの判断がなされるため、タッチの誤認識の発生を有効に抑制することができる。
【0084】
したがって、上記実施形態1と同様の効果が得られ、位置検出精度を低下させることなく、多重タッチ時のマスキングを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、X座標演算回路11bで処理される位置情報が1次元のデータであるため、位置検出処理部21bを構成するメモリ10の処理負荷を有効に低減することができるという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、OA機器や携帯端末等、ディスプレイを入力インターフェースとして利用する情報機器に搭載されるタッチパネル位置検出装置に対して有用に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 第1基板
2 第2基板
3、13 行電極
4、14 列電極
6a、6b タッチパネル
7 行電極駆動回路
8 列電極駆動回路
9 タイミング生成回路
10 メモリ
11a 座標演算回路
11b X座標演算回路
12 CPU
15 外部端子
21a、21b 位置検出処理部
101 第1検出期間
102 第2検出期間
201 第1行検出期間
202 第2行検出期間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された行方向に沿って平行に形成された行電極と前記行方向に交差する列方向に沿って形成された列電極とが対向配置されたタッチパネルと、隣り合う前記列電極に対して当該列電極相互の異なる一端側から逆方向に入力信号を印加する外部端子と、前記列電極および行電極の接触により前記入力信号に対応して前記行電極から出力される出力信号に基づき前記タッチパネルにおける外部圧力が加えられた位置を検出するタッチ位置検出部とを備えたタッチ位置検出装置であって、
前記タッチ位置検出部は、
前記列電極および前記行電極を順次走査駆動すると共に、前記列電極に対して前記入力信号を印加するタイミングに同期して前記行電極からの出力信号を検出する出力信号検出手段と、
前記出力信号の大きさを予め設定された第1のしきい値と比較すると共に前記第1のしきい値よりも大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第1タッチ位置情報として保持する第1のタッチ位置判定手段と、
予め設定された前記第1のしきい値より小さい第2のしきい値と前記出力信号の大きさとを比較すると共に当該出力信号の大きさが前記第2のしきい値より大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第2タッチ位置情報として保持する第2のタッチ位置判定手段と、
前記第1タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標と、当該座標に行方向に隣り合う前記第2タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標との論理和をタッチと判定された座標とする最終タッチ位置情報を決定する最終タッチ位置決定手段とを備えたことを特徴とするタッチ位置検出装置。
【請求項2】
予め設定された行方向に沿って平行に形成された行電極と前記行方向に交差する列方向に沿って形成された列電極とが対向配置されたタッチパネルと、隣り合う前記列電極に対して当該列電極相互の異なる一端側から逆方向に入力信号を印加する外部端子と、前記列電極および行電極の接触により前記入力信号に対応して前記行電極から出力される出力信号に基づき前記タッチパネルにおける外部圧力が加えられた位置を検出するタッチ位置検出部とを備えたタッチ位置検出装置であって、
前記タッチ位置検出部は、
前記列電極に前記入力信号を順次印加し、前記列電極に対して前記入力信号を印加するタイミングに同期して前記行電極からの出力信号を検出する出力信号検出手段と、
前記出力信号の大きさを予め設定された第1のしきい値と比較すると共に前記第1のしきい値よりも大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第1タッチ位置情報として保持する第1のタッチ位置判定手段と、
予め設定された前記第1のしきい値より小さい第2のしきい値と前記出力信号の大きさとを比較すると共に当該出力信号の大きさが前記第2のしきい値より大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第2タッチ位置情報として保持する第2のタッチ位置判定手段と、
前記第1タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標と、当該座標に行方向に隣り合う前記第2タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標との論理和をタッチと判定された座標とする、前記行電極からの前記出力信号が検出された当該行電極に対応する1次元の最終タッチ位置情報を決定する最終タッチ位置決定手段とを備えたことを特徴とするタッチ位置検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の前記タッチ位置検出装置を情報入力用の入力インターフェースとして備えたことを特徴とする情報入力システム。
【請求項4】
予め設定された行方向に沿って平行に形成された行電極と前記行方向に交差する列方向に沿って形成された列電極とが対向配置されたタッチパネルと、隣り合う前記列電極に対して当該列電極相互の異なる一端側から逆方向に入力信号を印加する外部端子と、前記列電極および行電極の接触により前記入力信号に対応して前記行電極から出力される出力信号を取得するタッチ位置検出部とを備えたタッチ位置検出装置にあって、前記タッチパネルにおける外部圧力が加えられた位置を検出するタッチ位置検出方法であって、
前記列電極および前記行電極を順次走査駆動すると共に、前記列電極に対して前記入力信号を印加するタイミングに同期して前記行電極からの出力信号を検出し、
前記出力信号の大きさを予め設定された第1のしきい値と比較すると共に前記第1のしきい値よりも大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第1タッチ位置情報として保持し、
前記第1のしきい値より小さい予め設定された第2のしきい値と前記出力信号の大きさとを比較すると共に前記出力信号の大きさが前記第2のしきい値より大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第2タッチ位置情報として保持し、
前記第1タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標と、当該座標に行方向に隣り合う前記第2タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標との論理和を最終タッチ位置情報として決定することを特徴とするタッチ位置検出方法。
【請求項5】
予め設定された行方向に沿って平行に形成された行電極と前記行方向に交差する列方向に沿って形成された列電極とが対向配置されたタッチパネルと、隣り合う前記列電極に対して当該列電極相互の異なる一端側から逆方向に入力信号を印加する外部端子と、前記列電極および行電極の接触により前記入力信号に対応して前記行電極から出力される出力信号を取得するタッチ位置検出部とを備えたタッチ位置検出装置にあって、前記タッチパネルにおける外部圧力が加えられた位置を検出するタッチ位置検出プログラムであって、
前記列電極および前記行電極を順次走査駆動すると共に、前記列電極に対して前記入力信号を印加するタイミングに同期して前記行電極からの出力信号を検出する出力信号検出機能と、
前記出力信号の大きさを予め設定された第1のしきい値と比較すると共に前記第1のしきい値よりも大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第1タッチ位置情報として保持する処理を行う第1のタッチ位置判定機能と、
前記第1のしきい値より小さい予め設定された第2のしきい値と前記出力信号の大きさとを比較すると共に前記出力信号の大きさが前記第2のしきい値より大きい場合をタッチと判定し当該タッチの位置を示す情報を第2タッチ位置情報とする処理を行う第2のタッチ位置判定機能と、
前記第1タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標と、当該座標に行方向に隣り合う前記第2タッチ位置情報のうちタッチと判定された座標との論理和を最終タッチ位置情報として決定する最終タッチ位置決定機能とを、前記タッチ位置検出部に設定したことを特徴とするタッチ位置検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−59793(P2011−59793A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206154(P2009−206154)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(303018827)NEC液晶テクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】