説明

タッチ位置検出装置及び携帯電話機

【課題】簡易な構成で、タッチパネル上で複数タッチされた位置を適切に検出するタッチ位置検出装置及び携帯電話機を提供することを目的とする。
【解決手段】タッチパネル上でタッチされたn点(nは2以上の整数)を検出するタッチ位置検出装置であって、互いに平行に配された複数の透明電極の組を(n+1)個含み、それらの組同士が互いに交差する所定の角度関係を持たせて配されたタッチパネルと、前記タッチパネル上でn点がタッチされると、タッチされた当該n個の箇所に対応する、前記電極の組毎の位置情報を検出し、前記検出された位置情報と前記所定の角度関係とに基づいて、前記タッチパネル上においてタッチされた前記n個の位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル操作、特に、n点(nは2以上の整数)のタッチ位置を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル機能を有する端末装置が多く出現している。
例えば、特許文献1では、互いに直交するx方向及びy方向それぞれに、複数の電極線を配したタッチパネルが開示されている。このタッチパネルにおいては、ある一点がタッチされると、タッチされた電極線の電圧変化がタッチされていない電圧変化とは異なることを利用して、タッチされたx方向の一の電極線とy軸方向の一の電極線とを特定している。そして、その組み合わせでタッチされた一点が決定されることとなる。
【0003】
このような技術により、タッチパネル上で一点のタッチを検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−13680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、タッチパネル上で、例えば、2点同時にタッチされることがある。
しかしながら、上記の特許文献1では、同時に2点がタッチされるとその2点を同時に検出することができない。なぜなら、2点が同時にタッチされると、x方向及びy方向それぞれから2つの電極線が特定されることなる。そうすると、x方向の電極線とy方向の電極線との組み合わせパターンは4つになり、2点を特定することができない。
【0006】
そのため、複数点を同時に検出するためには、x方向の電極線とy方向の電極線との交点にタッチを検知するセンサーを設けることが考えられるが、これはタッチパネルの構成が複雑になり、得策とは言えない。
そこで、本発明は、タッチパネル上で複数タッチされた位置を適切に検出するタッチ位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、タッチ位置検出装置であって、互いに平行に配された複数の透明電極の組を(n+1)個含み(nは2以上の整数)、それらの組同士が互いに交差する所定の角度関係を持たせて配されたタッチパネルと、前記タッチパネル上でn点がタッチされると、タッチされた当該n個の箇所に対応する、前記電極の組毎の位置情報を検出する検出部と、前記検出された位置情報と前記所定の角度関係とに基づいて、前記タッチパネル上においてタッチされた前記n個の位置を特定する特定部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この構成によると、タッチ位置検出装置は、所定の角度関係を持つn+1個の電極の組を有するタッチパネルから検出された位置情報に基づいて、当該所定の角度関係からタッチされたn個の組み合わせを特定するので、タッチされたn個の位置を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は携帯電話機(タッチ位置検出装置)1の外観を示す図であり、(b)は携帯電話機(タッチ位置検出装置)1の内部構成を示すブロック図である。
【図2】携帯電話機1におけるタッチ検出機能についての構成を示す図である。
【図3】透明電極の配置を示す図である。
【図4】タッチパネル10の模式的な構造を示す図である。
【図5】x軸成分とy軸成分の組に応じたz軸成分の関係を示す図である。
【図6】携帯電話機1における2点同時検出に係る処理の動作を示す流れ図である。
【図7】x軸とz軸とがなす角度がθである場合におけるx軸成分とy軸成分の組に応じたz軸成分の関係を示す図である。
【図8】(a)は2点同時検出時の具体例を、(b)は3点同時検出時の具体例を、それぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1の実施の形態
本発明に係る第1の実施の形態としてのタッチ位置検出装置1について説明する。
1.1 概要
タッチ位置検出装置1は、例えば、携帯電話機に適用され、その外観について図1の(a)を参照しつつ説明する。
【0011】
タッチ位置検出装置1は筐体2、3を備えており、筐体2を筐体3に対してスライドさせることで相互に開閉できるように構成されている。
筐体2には、タッチパネル機能を有した液晶ディスプレイ(以下、LCD(Liquid Crystal Monitor))などで構成された表示部4と、スピーカ部6とが配置されている。
【0012】
筐体3には、キー操作部5とマイクロフォン7とが配置されている。
次に、図1の(a)に示されるタッチ位置検出装置としての携帯電話機1の内部構成について、図1の(b)を参照して説明する。図1の(b)に示されるように、携帯電話機1は、CPU(Central Processing Unit)とも呼ばれるプロセッサ301を有する。
【0013】
そして、プロセッサ301に、図1の(a)に示される表示部4、キー操作部5、スピーカ6、マイク7が接続され、さらに、RAM(Random Access Memory)302、フラッシュメモリ303、外部メモリ304が接続されている。なお、図1の(b)に示される内部の構成部材は、タッチ位置検出装置としての携帯電話機1のうちの主要なものを図示したものであって、本実施の形態のタッチ位置検出装置としての携帯電話機1には、図1の(b)に示される部材以外のものも含まれてもよい。
【0014】
表示部4は、後述するタッチパネルを構成し、画像を表示するとともに、タッチ入力を受け付ける。
キー操作部5は、テンキーなどを含んで構成され、キー入力を受け付ける。
スピーカ部6は、外部に対して音を発する。
マイク7は、外部からの音を取得する。
【0015】
プロセッサ301は、タッチ位置検出装置としての携帯電話機1の全体の動作を制御する。
RAM302は、プロセッサ301の作業領域として用いられる。
フラッシュメモリ303には、タッチ位置検出装置としての携帯電話機1に使用される文字データ、画像データその他の各種データ、及びプロセッサ301と協働して処理を行うプログラムデータなどが格納される。
【0016】
なお、携帯電話機1のメモリとしてフラッシュメモリ303に限定されず、その他の媒体であってもよい。
外部メモリ304は、記録媒体を着脱自在に装着する。この着脱自在な記録媒体としては、SDカード(登録商標)、USB(Universal Serial Bus)メモリなどその他の適宜な記録媒体である。この記録媒体には、タッチ位置検出装置としての携帯電話機1に使用される文字データ、画像データその他の各種データ、及びプロセッサ301と協働して処理を行うプログラムデータなどが格納される。
【0017】
外部メモリ304は、SDカード(登録商標)やUSBメモリなどに限定されず、その他の媒体であってもよい。
表示部4において2点がタッチされると、タッチ位置検出装置1は、タッチパネル機能によりタッチされた2点を検出する。なお、本実施の形態のタッチパネル機能は、静電容量方式により動作するものとする。
【0018】
また、以下にいう同時のタッチとは、タッチパネル上の複数の点のタッチ期間が、タッチ開始から終了までに完全に一致する場合のみならず、複数のタッチのそのタッチ期間の少なくとも一部が同時であればよい。
また、以下にいう同時検出とは、タッチパネル上の複数のタッチが同時である期間において、その同時期間における複数のタッチ位置を検出することを含む。
【0019】
1.2 構成
ここでは、タッチ位置検出装置1における2点同時検出機能の構成について説明する。
タッチ位置検出装置1の2点同時検出機能は、図2に示すように、表示部4、検出処理部20から構成されている。
なお、タッチ位置検出装置1は、図2においては2点同時検出機能に係る構成要素だけを示しているが、その他キー操作部5、及び通信機能に係る構成要素など、携帯電話機としての機能を備えている。
【0020】
以下においては、表示部4上において、2点が同時にタッチされた場合におけるタッチ位置の検出について説明する。
(1)表示部4
表示部4は、指でタッチされた2点を同時検出する機能を備えたタッチパネル10を備える。
【0021】
ここで、タッチパネルのタッチ位置の検出方法は、自己キャパシタ型の静電容量方式である。
タッチパネル10は、x軸、y軸及びz軸それぞれに応じた複数の透明電極を有している。図3(a)は、各軸に対する透明電極の配置の一例を示す。
x軸と直交する透明電極101a、101b、・・・、101cは、x軸の成分を特定するためのものであり、y軸と直交する透明電極102a、102b、・・・、102cは、y軸の成分を特定するためのものである。ここで、x軸とは画像等の表示する際の横軸方向であり、y軸とは縦軸方向である。x軸とy軸とは、直交しているので、透明電極101a、101b、・・・、101cは透明電極102a、102b、・・・、102cと直交していることが分かる。
【0022】
また、z軸は、図3(b)で示すように、x軸とy軸とから形成される平面上において、x軸と45°で交差しており、このz軸と直交する透明電極103a、103b、・・・、103cは、z軸の成分を特定するためのものである。ここで、電極の組毎の位置情報とは、3軸が交差するOからの距離(長さ)である。この距離は、各軸の成分となる。
図4(a)は、タッチパネル10の構造を模式的に示すものである。
【0023】
タッチパネル10は、図4(a)で示すように、誘電体110、111、112、x軸用透明電極120a、120b、y軸用透明電極121a、121b、z軸用透明電極122a、122b、パルス駆動バッファ130、電圧比較器131及びタイマキャプチャレジスタ132を含んでいる。
x軸用透明電極120a、120bは図3の透明電極101a、101b、・・・、101cに、y軸用透明電極121a、121bは図3の透明電極102a、102b、・・・、102cに、z軸用透明電極122a、122bは図3の透明電極103a、103b、・・・、103cに、それぞれ相当するものである。
【0024】
タッチパネル10は、上位から順に、誘電体110、x軸用透明電極120a、120b、誘電体111、y軸用透明電極121a、121b、誘電体112、z軸用透明電極122a、122bと配置されている。
また、パルス駆動バッファ130は、x軸用透明電極120aと接続されており、図4(b)に示すようなLowを0V、Highを5Vとするパルス信号を、周期1/100sでx軸用透明電極120aへ送信するものである。なお、図示はしてないが、例えば、y軸用透明電極121a及びz軸用透明電極122aのそれぞれにおいても、個別にパルス駆動バッファが接続されている。
【0025】
電圧比較器131は、x軸用透明電極120bと接続されており、x軸用透明電極120bの電圧が5Vであるか0Vであるかを比較している。タイマキャプチャレジスタ132は、電圧比較器131の比較結果に基づいて、周期1/100sで、パルス信号による電圧の変化がなされているか否かを特定するものである。なお、図示はしてないが、例えば、y軸用透明電極121b及びz軸用透明電極122bのそれぞれにおいても、個別に電圧比較器及びタイマキャプチャレジスタが接続されている。
【0026】
具体的には、x軸用透明電極120aはパルス駆動バッファ130からパルス信号を受け取ると、電界結合によりx軸用透明電極120bにおいても、x軸用透明電極120aと同様の電圧が印加される。静電容量方式によるタッチパネルでは、ある点がタッチされると、その直下にある透明電極に電荷が蓄積され、パルス駆動バッファ130から入力されるパルス信号の立ち上がり(0Vから5Vへの立ち上がり)が、鈍くなる。つまり、周期1/100Sで電圧の定期的な変化に乱れが生じる。タイマキャプチャレジスタがこれの変化を特定することで、x軸用透明電極120a及びx軸用透明電極120bのうち少なく1つがタッチされたことが分かる。
【0027】
また、y軸用透明電極121a、121b及びz軸用透明電極122a、122bそれぞれにおいても、同様の原理でタッチされたか否かが分かる。
(2)検出処理部20
検出処理部20は、図2で示すように、軸成分検出部201及び特定部202を有している。
【0028】
(2−1)軸成分検出部201
軸成分検出部201は、x、y、z軸それぞれについて、タッチされた軸成分を検出するものである。この軸成分が、電極の組毎の位置情報となる。
具体的には、軸成分検出部201は、x軸の成分を検出する際には、x軸用透明電極毎に接続されたタイマキャプチャレジスタそれぞれの機能により、定期的な変化に乱れが生じている2つの成分を検出する。
【0029】
なお、y軸、z軸についても、同様に、各軸用の透明電極毎に接続されたタイマキャプチャレジスタそれぞれの機能により、定期的な変化に乱れが生じている2つの成分を検出する。
軸成分検出部201の機能により、x軸の成分としてX1、X2が、y軸の成分としてY1、Y2が、z軸の成分としてZ1、Z2が検出されることになる。
【0030】
(2−2)特定部202
特定部202は、軸成分検出部201で検出された各軸の成分から、タッチされた2点を特定するものである。
具体的には、以下のようにしてタッチされた2点を特定する。
特定部202は、軸成分検出部201で検出されたx軸及びy軸からなる一の組み合わせ(X1、Y1)を選択する。特定部202は、選択した(X1、Y1)に応じたz軸成分Z3を下記の数式1を用いて算出する。
【0031】
【数1】

特定部202は、算出したZ3が、軸成分検出部201で検出されたZ1及びZ2の何れかと等しいか否かを判断する。何れかと等しいと判断する場合には、特定部202は、選択した一の組み合わせ(X1、Y1)と残りの組み合わせ(X2、Y2)とがタッチされた正しい位置を示すものとして特定する。Z3が何れかとも等しくないと判断する場合には、特定部202は、選択した一の組み合わせ(X1、Y1)は誤りであると判断し、他の組み合わせ(X1、Y2)と(X2、Y1)がタッチされた正しい位置を示すものとして特定する。
【0032】
以下、上記数式1で、選択した(X1、Y1)に応じたz軸成分Z3が求まることを説明する。
z軸は、上述したように、x軸と45°の角度をなしているので、z軸は、一次関数“y=x”と表される。(X1、Y1)を通るz軸用透明電極は、z軸と直交しているので、一次関数“y=−x+b”と表される。また、(X1、Y1)は、一次関数“y=−x+b”を通ることにより、“b=X1+Y1”となり、一次関数“y=−x+b”は、“y=−x+(X1+Y1)”と変換できる。
【0033】
選択した(X1、Y1)に応じたz軸成分Z3は、一次関数“y=x”と一次関数“y=−x+(X1+Y1)”との交点から算出することできる。
一次関数“y=x”と一次関数“y=−x+(X1+Y1)”との交点を算出すると、交点のx軸成分は“(X1+Y1)/2”となり、交点のy軸成分は“(X1+Y1)/2”となる。
【0034】
ここで、z軸成分のZ3は、図5で示すように、x軸成分“(X1+Y1)/2”とy軸成分“(X1+Y1)/2”とが直交する直角二等辺三角形の斜辺であるので、三平方の定理により上記の数式1が導かれる。
1.3 動作
ここでは、2点同時検出に係る処理について、図6に示す流れ図を用いて説明する。
【0035】
ユーザは、タッチパネル10上の2点をタッチする(ステップS5)。
軸成分検出部201は、軸毎に備えられた複数のタイマキャプチャレジスタそれぞれの機能により、x軸の成分としてX1、X2を、y軸の成分としてY1、Y2を、z軸の成分としてZ1、Z2を検出する(ステップS10)。
特定部202は、軸成分検出部201で検出されたx軸及びy軸からなる一の組み合わせ(X1、Y1)を選択する(ステップS15)。
【0036】
特定部202は、上述した数式1を用いて、選択した(X1、Y1)に応じたz軸成分Z3を算出し(ステップS20)、算出したZ3が軸成分検出部201で検出されたz軸成分Z1及びZ2の少なくとも何れかと等しいか否かを判断する(ステップS25)。
Z3がZ1及びZ2の少なくとも何れかと等しいと判断する場合(ステップS25における「Yes」)、特定部202は、選択した一の組み合わせ(X1、Y1)と残りの組み合わせ(X2、Y2)とがタッチされた正しい位置を示すものとして特定する(ステップS30)。
【0037】
Z3がZ1及びZ2の何れかとも等しくないと判断する場合(ステップS25における「No」)、特定部202は、他の組み合わせ(X1、Y2)と(X2、Y1)とがタッチされた正しい位置を示すものとして特定する(ステップS35)。
1.4 変形例
(1)2点同時検出の変形例
上記第1の実施の形態において、z軸は、x軸と45°の角度をなす、すなわち透明電極103a、103b、・・・、103cは透明電極101a、101b、・・・、101cと45°の角度をなすとしたが、これに限定されない。
【0038】
x軸とz軸は交差していればよく、交差する角度は、θ(0°<θ<90°)であればよい。つまりは、x軸、y軸及びz軸は互いに交差していればよい。この場合、x軸と垂直な透明電極101a、101b、・・・、101cと、z軸と垂直な透明電極103a、103b、・・・、103cとなす角度もθとなる。
この場合、特定部202が用いる数式が、上記実施の形態とは異なる。
【0039】
特定部202は、下記の数式2を用いて、選択した(X1、Y1)が検出されたZ1及びZ2の少なくとも何れかと等しいか否かを判断する。
【0040】
【数2】

算出したZ3がZ1及びZ2の何れかと等しいと判断する場合、特定部202は、選択した一の組み合わせ(X1、Y1)と残りの組み合わせ(X2、Y2)とがタッチされた正しい位置を示すものとして特定する。算出したZ3がZ1及びZ2の何れかとも等しくないと判断する場合、特定部202は、他の組み合わせ(X1、Y2)と(X2、Y1)とがタッチされた正しい位置を示すものとして特定する。
【0041】
以下、z軸とx軸とがなす角度がθである場合、上記の数式2で、選択した(X1、Y1)に応じたz軸成分Z3が求まることを説明する。
z軸とx軸とがなす角度がθであるので、z軸は、一次関数“y=tanθ・x”と表される。(X1、Y1)を通るz軸用透明電極は、z軸と直交しているので、一次関数“y=(−1/tanθ)・x+b”と表される。また、(X1、Y1)は、一次関数“y=(−1/tanθ)・x+b”を通ることにより、“b=(1/tanθ)・X1+Y1”となり、一次関数“y=−x+b”は、“y=−x+((1/tanθ)・X1+Y1)”と変換できる。
【0042】
選択した(X1、Y1)に応じたz軸成分Z3は、一次関数“y=tanθ・x”と一次関数“y=(−1/tanθ)・x+((1/tanθ)・X1+Y1)”との交点から算出することできる。
そこで、一次関数“y=tanθ・x”と一次関数“y=(−1/tanθ)・x+((1/tanθ)・X1+Y1)”との交点を算出すると、交点のx軸成分は“(X1+tanθ・Y1)/(tanθ+1)”となり、交点のy軸成分は“tanθ・(X1+tanθ・Y1)/(tanθ+1)”となる。
【0043】
ここで、z軸成分のZ3は、図7に示すように、x軸成分“(X1+Y1)/2”とy軸成分“(X1+Y1)/2”とが直交する直角三角形の斜辺である。そして、三平方の定理により、“(Z3)=(tanθ・Y1+X1)/(tanθ+1)となる。ここで、”tanθ+1=1/cosθ“、”tanθ=sinθ/cosθ“の関係式により、“(Z3)=(X1+tanθ・Y1)/(tanθ+1)=(X1+(sinθ/cosθ)・Y1)・cosθ”となる。そうすると、“Z3=(X1+(sinθ/cosθ)・Y1)・cosθ=X1・cosθ+sinθ・Y1”が導かれる。
【0044】
(2)3点同時検出
上記第1の実施の形態では、タッチ位置検出装置が2点同時検出することについて説明したが、これに限定されない。タッチ位置検出装置は3点同時検出してもよい。
この場合、z軸は、上記の変形例と同様に、x軸とθの角度をなす。さらに、z軸と90°の角度をなすw軸を設ける。また、タッチパネルでは、上記第1の実施の形態及び上記変形例と同様に、x軸用透明電極、y軸用透明電極及びz軸用透明電極をそれぞれ複数備え、さらに、w軸と直交するw軸用透明電極を複数個有する。構造としては、図3にて示す構造に、さらに、z軸用透明電極の下面に、さらに誘電体と、w軸用透明電極とを設ける。また、複数のw軸用透明電極において、他の軸の透明電極と同様に、パルス駆動バッファと、電圧比較器及びタイマキャプチャレジスタとが、交互に接続されているものとする。
【0045】
この場合、軸成分検出部201は、x、y、z、w軸それぞれについて、タッチされた軸成分(位置情報)を検出する。例えば、軸成分検出部201は、x軸成分としてX1、X2、X3を、y軸成分としてY1、Y2、Y3を、z軸成分としてZ1、Z2、Z3を、w軸成分としてW1、W2、W3をそれぞれ検出する。
特定部202は、下記の数式3を用いて、x軸成分(X1、X2、X3)、y軸成分(Y1、Y2、Y3)、z軸成分(Z1、Z2、Z3)、w軸成分(W1、W2、W3)のうち、当該数式3を満たすx軸成分、y軸成分、z軸成分、w軸成分の組を3つ特定する。
【0046】
【数3】

特定部202は、特定した各組のx軸成分及びy軸成分がタッチされた正しい位置を示すものとして特定する。
【0047】
数式3を用いることで、z−w軸を回転させて、x−y軸と一致させて、検出されたx−y軸で定まる位置と、z−w軸で定まる位置とが一致するか否かを判断することができる。このとき、一致する場合が、実際にタッチされた位置と特定することができる。
1.5 具体例
図8(a)は、2点同時検出時における具体例を示すものである。
【0048】
この図では、P1(X1、Y1)とP2(X2、Y2)とが実際にタッチされた位置であるとする。この場合、x軸用の透明電極、y軸用の透明電極及びz軸用の透明電極を用いることで、X1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2が検出されることになる。そうすると、x軸成分とy軸成分との組み合わせとして、上記のP1及びP2以外に、図8(a)に示すP3(X2、Y1)及びP4(X1、Y2)が存在する。そこで、特定部202は、これら組み合わせのうち一の組み合わせを選択する。もし仮に、選択した組み合わせが正しいもの、つまり実際にタッチされた位置を示すものであれば、選択した組み合わせに応じたz軸成分は、検出されたZ1、Z2の何れかと一致する。
【0049】
図8(a)から分かるように、特定部202がP1を選択した場合にはP1に応じたz軸成分は、Z1となり、実際に検出されたZ1であるので、選択したP1は正しいものとなる。そうすると、x軸成分とy軸成分とからなる残りの組み合わせは必然的に、P2となり、これも実際にタッチされた位置である。
特定部202が、例えば、P3を選択した場合には、P3に応じたz軸成分は、実際に検出されたZ1及びZ2の何れとも一致しないことが図8(a)より分かる。その結果、選択したP3は誤ったものである、つまりタッチされていない位置であることが分かる。また、P3を選択した場合におけるx軸成分とy軸成分とからなる残りの組み合わせ(ここでは、P4)もタッチされていない位置であることが分かる。つまり、特定部202は、P3、P4とは異なる組み合わせ、つまりP1、P2が正しいものであると特定することができる。
【0050】
図8(b)は3点同時検出時における具体例を示すものである。
この図では、P1(X1、Y1)とP2(X2、Y2)とP3(X3、Y3)が実際にタッチされた位置であるとする。この場合、x軸用の透明電極、y軸用の透明電極及びz軸用の透明電極を用いることで、X1、X2、X3、Y1、Y2、Y3、Z1、Z2、Z3、W1、W2、W3が検出されることになる。そうすると、x軸成分とy軸成分との組み合わせとして、上記のP1及びP2以外に、図8(b)に示すP4からP9が存在する。
【0051】
そして、特定部202は、数式3を用いて、当該数式が成立する組み合わせを特定する。例えば、ここでは、(X1、Y1、Z1、W1)、(X2、Y2、Z2、W2)、(X3、Y3、Z3、W3)が特定される。
特定部202は、特定した3つの組み合わせそれぞれから、当該組み合わせを構成するx軸成分とy軸成分とから定まる位置を、タッチされた位置として特定する。例えば、ここでは、(X1、Y1)、(X2、Y2)、(X3、Y3)が、タッチされた位置として特定される。
【0052】
1.6 その他の変形例
以上、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態及び変形例に限られない。例えば、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記第1の実施の形態においては、タッチ位置検出装置1の適用される一例として、スライド式の携帯電話機を用いたがこれに限定されない。
【0053】
タッチ位置検出装置1は、折り畳み型の携帯電話機であってもよいし、ストレートタイプの携帯電話機であってもよいし、その他の適宜な形態の携帯電話機であってもよい。
また、タッチ位置検出装置1の適用される機器は、携帯電話機に限るものではなく、タッチパネル機構を有する装置であれば、PDA(Personal Digital Assistant)、PHS(Personal Handy−phone System)、音楽プレーヤ、電子ブック、ゲーム機、パーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0054】
(2)上記の実施の形態及び変形例では、2点、3点の同時検出について、説明したが、これに限定されない。
タッチ位置検出装置は、n+1本の軸を設けて、n点を同時検出してもよい。
(3)上記の実施の形態及び変形例で説明した手法の手順を記述したプログラムをメモリに記憶しておき、CPU(Central Processing Unit)などがメモリからプログラムを読み出して、読み出したプログラムを実行することによって、上記の手法が実現されるようにしてもよい。
【0055】
また、当該手法の手順を記述したプログラムを記録媒体に格納して、頒布するようにしてもよい。
なお、上記プログラムを記憶する媒体としては、例えば、図1の(b)に示されるような、一時的ではない記録媒体、つまり、フラッシュメモリ303や、USBメモリやSDカード(登録商標)などの外部メモリ304を一例として挙げることができる。
【0056】
(4)上記実施の形態及び変形例では、タッチされた位置に対応する各軸の軸成分をn個検出するものとしたが、これに限定されない。各軸毎に、n個以下の軸成分を検出した場合においても、上記の検出方法が適用できる。
例えば、2点同時検出の場合においては、検出されたx軸の軸成分とy軸の軸成分の組み合わせ毎に、対応するz軸の軸成分を数式1を用いて算出し、算出した軸成分と等しい軸成分が検出されているかどうかを検証することで、2点同時検出を行うことができる。
【0057】
3点同時検出も同様に、検出されたx軸の軸成分とy軸の軸成分の組み合わせ毎に、数式2を用いて検証すればよい。
(5)上記実施の形態において、各電極は透明電極としたが、これに限定されない。タッチパネルに用いられる電極であれば、その種類は問わない。
(6)上記実施の形態において、透明電極101a、101b、・・・、101cと、透明電極102a、102b、・・・、102cとがなす角度を90°としたが、これに限定されない。
【0058】
透明電極101a、101b、・・・、101cと、透明電極102a、102b、・・・、102cとがなす角度は、厳密に90°でなくてもよい。おおよそ90°であればよい。
また、3点同時検出の場合でも同様に、z軸とw軸とが厳密に直交していなくてもよい。z軸とw軸とがなす角度がおおよそ90°であればよい。つまり、z軸用の透明電極とw軸用の透明電極とがなす角度が、おおよそ90°であればよい。
【0059】
(7)上記実施の形態及び変形例を組み合わせるとしてもよい。
2.まとめ
(1)本発明の一態様である、タッチ位置検出装置は、互いに平行に配された複数の透明電極の組を(n+1)個含み(nは2以上の整数)、それらの組同士が互いに交差する所定の角度関係を持たせて配されたタッチパネルと、前記タッチパネル上でn点がタッチされると、タッチされた当該n個の箇所に対応する、前記電極の組毎の位置情報を検出する検出部と、前記検出された位置情報と前記所定の角度関係とに基づいて、前記タッチパネル上においてタッチされた前記n個の位置を特定する特定部とを備えることを特徴とする。
【0060】
この構成によると、タッチ位置検出装置は、所定の角度関係を持つn+1個の電極の組を有するタッチパネルから検出された位置情報に基づいて、当該所定の角度関係からタッチされたn個の組み合わせを特定するので、タッチされたn個の位置を適切に検出することができる。
(2)ここで、前記nの値は、2であり、3つの電極の組のうち第1の電極の組に含まれる電極と第2の電極の組に含まれる電極とは略90度で交差するように配され、前記所定の角度関係とは、3つの電極の組のうち第1の電極の組に含まれる電極と第3の電極の組に含まれる電極とが、角度θをなす関係であり、前記検出部は、第1の電極の組における位置情報X1、X2、第2の電極の組における位置情報Y1、Y2、及び第3の電極の組における位置情報Z1、Z2を検出し、前記特定部は、検出されたX1とY1とからなる座標(X1、Y1)から定まる位置情報Z3を算出し、算出したZ3が、検出されたZ1及びZ2の少なくとも何れかと等しい場合には座標(X1、Y1)、(X2、Y2)がタッチされた位置と特定し、何れとも等しくない場合には座標(X1、Y2)、(X2、Y1)がタッチされた位置と特定するとしてもよい。
【0061】
この構成によると、タッチ位置検出装置は、座標(X1、Y1)から定まる位置情報Z3が、検出されたZ1及びZ2の少なくとも何れかと等しいか否かにより、タッチされた2点を特定している。これにより、タッチ位置検出装置は、適切にタッチされた2点を特定することができる。
(3)ここで、 前記Z3は、
【0062】
【数4】

で求められるとしてもよい。
この構成によると、タッチ位置検出装置は、所定の角度関係を有していることにより、Z3は上記の式を用いて求めることができる。
【0063】
(4)ここで、 前記nの値は、3であり、4つの電極の組のうち第1の電極の組に含まれる電極と第2の電極の組に含まれる電極とは略90度で交差するように配され、第3の電極の組に含まれる電極と第4の電極の組に含まれる電極とは略90度で交差するように配され、前記所定の角度関係とは、前記第1の電極の組に含まれる電極と前記第3の電極の組に含まれる電極とが、角度θをなす関係であり、前記検出部は、タッチされた3点に基づいて、前記第1の電極の組における位置情報X1、X2、X3、前記第2の電極の組における位置情報Y1、Y2、Y3、前記第3の電極の組における位置情報Z1、Z2、Z3、及び前記第4の電極の組における位置情報W1、W2、W3を検出し、前記特定部は、検出された前記第3の電極の組における位置情報と前記第4の電極の組における位置情報との組み合わせが、
【0064】
【数5】

を満たす前記第1の電極の組における位置情報と前記第2の電極の組における位置情報とからなる3つの組み合わせを、タッチされた3点として特定するとしてもよい。ただし、xは前記第1の電極の組における位置情報、yは前記第2の電極の組における位置情報、zは前記第3の電極の組における位置情報及びwは前記第4の電極の組における位置情報の値である。
【0065】
この構成によると、タッチ位置検出装置は、所定の角度関係を有していることにより、タッチされた3点を上記の式を用いて求めることができる。
(5)ここで、前記電極の組毎の位置情報は、当該電極に垂直な方向に設定された軸の軸成分であるとしてもよい。
この構成によると、タッチ位置検出装置は、電極に垂直な方向に設定された軸を用いることで、電極の組毎の位置情報を特定することができる。
【0066】
(6)また、本発明の一態様である、携帯電話機は、上記(1)から(5)の何れか1つに記載のタッチ位置検出装置を備えることを特徴とする。
この構成によると、携帯電話機は、上記(1)から(5)の何れか1つに記載のタッチ位置検出装置を備えるので、タッチされたn個の位置を適切に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、タッチパネル機構を有するタッチ位置検出装置において、タッチされたn個(nは2以上の整数)の位置を検出するために有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 タッチ位置検出装置
2、3 筐体
4 表示部
5 キー操作部
6 スピーカ部
7 マイクロフォン
10 タッチパネル
20 検出処理部
130 パルス駆動バッファ
131 電圧比較器
132 タイマキャプチャレジスタ
201 軸成分検出部
202 特定部
301 プロセッサ
302 RAM
303 フラッシュメモリ
304 外部メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配された複数の透明電極の組を(n+1)個含み(nは2以上の整数)、それらの組同士が互いに交差する所定の角度関係を持たせて配されたタッチパネルと、
前記タッチパネル上でn点がタッチされると、タッチされた当該n個の箇所に対応する、前記電極の組毎の位置情報を検出する検出部と、
前記検出された位置情報と前記所定の角度関係とに基づいて、前記タッチパネル上においてタッチされた前記n個の位置を特定する特定部とを備える
ことを特徴とするタッチ位置検出装置。
【請求項2】
前記nの値は、2であり、
3つの電極の組のうち第1の電極の組に含まれる電極と第2の電極の組に含まれる電極とは略90度で交差するように配され、
前記所定の角度関係とは、3つの電極の組のうち第1の電極の組に含まれる電極と第3の電極の組に含まれる電極とが、角度θをなす関係であり、
前記検出部は、第1の電極の組における位置情報X1、X2、第2の電極の組における位置情報Y1、Y2、及び第3の電極の組における位置情報Z1、Z2を検出し、
前記特定部は、
検出されたX1とY1とからなる座標(X1、Y1)から定まる位置情報Z3を算出し、算出したZ3が、検出されたZ1及びZ2の少なくとも何れかと等しい場合には座標(X1、Y1)、(X2、Y2)がタッチされた位置と特定し、何れとも等しくない場合には座標(X1、Y2)、(X2、Y1)がタッチされた位置と特定する
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチ位置検出装置。
【請求項3】
前記Z3は、
【数1】

で求められる
ことを特徴とする請求項2に記載のタッチ位置検出装置。
【請求項4】
前記nの値は、3であり、
4つの電極の組のうち第1の電極の組に含まれる電極と第2の電極の組に含まれる電極とは略90度で交差するように配され、第3の電極の組に含まれる電極と第4の電極の組に含まれる電極とは略90度で交差するように配され、
前記所定の角度関係とは、前記第1の電極の組に含まれる電極と前記第3の電極の組に含まれる電極とが、角度θをなす関係であり、
前記検出部は、タッチされた3点に基づいて、前記第1の電極の組における位置情報X1、X2、X3、前記第2の電極の組における位置情報Y1、Y2、Y3、前記第3の電極の組における位置情報Z1、Z2、Z3、及び前記第4の電極の組における位置情報W1、W2、W3を検出し、
前記特定部は、
検出された前記第3の電極の組における位置情報と前記第4の電極の組における位置情報との組み合わせが、
【数2】

を満たす前記第1の電極の組における位置情報と前記第2の電極の組における位置情報とからなる3つの組み合わせを、タッチされた3点として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチ位置検出装置。ただし、xは前記第1の電極の組における位置情報、yは前記第2の電極の組における位置情報、zは前記第3の電極の組における位置情報及びwは前記第4の電極の組における位置情報の値である。
【請求項5】
前記電極の組毎の位置情報は、
当該電極に垂直な方向に設定された軸の軸成分である
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチ位置検出装置。
【請求項6】
上記請求項1から5の何れか1項に記載のタッチ位置検出装置を備えることを特徴とする携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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