説明

タッチ式センサ

【課題】簡単な構造で、操作面を目視することなく操作者の意思に沿った操作を的確且つ迅速に行うことができるタッチ式センサを提供する。
【解決手段】複数の電極と、前記電極が接触されたことを検知して電極毎に検知信号を出力する検知手段と、前記検知信号に応じてどの電極が接触されているか接触されていないかを判定する接触判定手段を備えたタッチ式センサ1において、操作ボタン3aを有するスイッチと、前記操作ボタン3aの操作による前記スイッチからの入力信号に応じて、前記被制御装置の制御機能を決定する制御モード判定手段と、を備え、前記スイッチからの入力信号があったときに、前記接触判定手段による前記電極への接触判定を許可する制御部を設けるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の静電容量の変化によって人が電極に接触したことを検出するタッチ式センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば車両のエアコンやオーディオ等の各種機器を静電容量式のタッチ式センサによって制御するようにした構成が例えば特許文献1において提案されている。この構成によれば、操作者の指の移動軌跡をタッチ式センサによって読み取り、その移動軌跡がどの操作パターンにマッチングするかを判定し、操作パターンにマッチングする操作内容に基づいて各種機器を制御することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−131760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において提案されている構成においては、タッチ式センサを起動するための電源キー3と、各種動作モードを選択するためのレリーズキーが別々設けられている。そのため、スイッチの配置面を大きく取る必要があるとともに、目視しない状態では、どのスイッチが起動スイッチかがわからないため、操作部分にそれぞれ目印となる別個の凹凸を設けて、その形状で操作キーの役割を判断する必要がある。また、2つの異なる操作キーを操作しなければならないため、操作キーが何の機能を持つのかを操作者が記憶しておく必要があった。そのため、装置が大型化するとともに、操作も煩雑なものとなって操作者の負担が増加し、汎用として容易に設置することができないという問題があった。
【0005】
特に、車両のステアリングホイールにタッチ式センサを設ける場合には、設置面積が狭いため、大きな操作部を設けてしまうと、それが運転者のステアリング操作の邪魔になってしまう。又、運転をしながらの操作となるため、運転者が指を大きく動かすことが困難であり、単純な操作動作に限定されることから複数の操作キーを設けない単純な操作システムが望まれている。
【0006】
一方、運転者には車両の運転をしながらのスイッチ操作が必要となるため、タッチ式センサの操作面を目視することなく運転者の意思に沿った操作が簡単に把握できる操作システムが望まれる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、簡単な構造で、操作面を目視することなく操作者の意思に沿った操作を的確且つ迅速に行うことができるタッチ式センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
複数の電極と、
前記電極が接触されたことを検知して電極毎に検知信号を出力する検知手段と、
前記検知信号に応じてどの電極が接触されているか接触されていないかを判定する接触判定手段を備えたタッチ式センサにおいて、
操作ボタンを有するスイッチと、
前記操作ボタンの操作による前記スイッチからの入力信号に応じて、前記被制御装置の制御機能を決定する制御モード判定手段と、を備え、
前記スイッチからの入力信号があったときに、前記接触判定手段による前記電極への接触判定を許可する許可手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
少なくとも2つの前記電極を前記操作ボタンの外周に沿って円弧状に配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、
前記電極と前記スイッチを背面側に配置し、前記操作ボタンが露出するように設けられたケースと、
該ケースの表面に、前記電極の外周縁よりも内側の範囲で、前記電極の操作位置を示す凹状のガイド部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、操作ボタンによるスイッチへの操作がない限り、電極への接触が検知可能な状態とはならないため、操作者の意図的でない電極への接触は検知されず、タッチ式センサへの不用意な接触による誤作動を防ぐことができる。また、被制御装置の制御機能を選択するスイッチの入力信号により、電極への接触検知を許可するようにしているので、別途、起動スイッチを設ける必要が無いため、構成を簡素化することができ、狭いスペースに効率的に配置することができる。また、被制御装置の制御機能を選択するスイッチであるため、操作時には必ず最初に操作をするようになるため、スイッチを目視しなくても、単一の操作で、連続して操作をすることができるので、操作動作を覚える必要がなく、簡単に操作を行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項2記載の発明によれば、タッチ式センサとスイッチを設けることにより、メニュー選択が容易となり、又、そのスイッチの操作ボタンの周囲に複数の電極を円弧状に配置しているので、スイッチに近接した状態で複数の電極を配置することができ、操作ボタンの操作に連続して電極への操作が容易となる。
【0013】
例えば、タッチ式センサを車両のステアリングハンドルに設置した場合に、運転者はステアリングハンドルを握りながらタッチ式センサを操作することとなるため、運転者の操作指となる親指の関節を中心としたコンパクトな設置範囲にスイッチとタッチ式センサを配置することができる。このため、運転者は、スイッチの操作及びタッチ式センサの操作をステアリングハンドルから手を離すことなく親指一本でスムーズに行うことができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、タッチ式センサの操作位置を示すガイド部を電極よりも狭い範囲としたため、ガイド部内における電極への接触を確実に検知することができる。又、操作者は、操作部を目視することなく、ガイド部に案内されてタッチ式センサの電極部を確実に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るタッチ式センサが設置されたステアリングホイールの正面図である。
【図2】本発明に係るタッチ式センサの正面図である。
【図3】本発明に係るタッチ式センサの背面図である。
【図4】本発明に係るタッチ式センサの回路構成図である。
【図5】(a),(b)は本発明に係るタッチ式センサの電極への非接触時と接触時の出力変化を示す図である。
【図6】本発明に係るタッチ式センサの動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係るタッチ式センサが設置されたステアリングホイールの正面図、図2は同タッチ式センサの正面図、図3は同タッチ式センサの背面図であり、本実施の形態では、タッチ式センサ1は図1に示すように車両のステアリングホイール50にケース2を介して取り付けられている。
【0018】
上記ケース2の背面側には、図3に示すように機械的なプッシュスイッチであるモード選択スイッチ3と2つの電極A,Bが配置されており、図2に示すようにモード選択スイッチ3の円形の操作ボタン3aは、ケース2の表面に露出している。そして、図2に示すようにケース2の表面には、前記電極A,Bに連なるタッチ操作部4,5が前記操作ボタン3aの外周に沿って円弧状に配置されている。ここで、モード選択スイッチ3はオーディオ、エアコン、ナビゲーションシステム等の被制御装置の制御モード(オーディオモード、エアコンモード、ナビゲーションモード等)を選択するスイッチであり、オーディオモードでは選曲や音量の調整、エアコンモードでは温度や風量の調整、ナビゲーションモードではメニューの選択等がタッチ式センサ1の操作によってなされる。又、2つの電極A,Bはその静電容量が互いに異なっている。
【0019】
なお、図1及び図2に示すように、ケース2の表面に露出する前記タッチ操作部4,5の外周縁よりも内側に沿った範囲は、該タッチ操作部4,5の配置位置を示すように表面部よりも凹状としたガイド部として形成されている。本実施形態では、2つの湾曲した長方形の凹溝状のガイド溝4a,5aとして形成しており、電極A,Bの境界部分は、表面部と同じ高さとして、タッチ操作部4からタッチ操作部5に移動するとき、その凹凸が変化することにより、操作ストロークがわかるようになっている。そのため、タッチ操作部4,5のガイド溝4a,5aは、2つとする必要はなく、モード選択スイッチ3の操作ボタン3aに沿って湾曲した円弧状の1つの溝形状としてもよい。この場合には、電極A,Bの境界部分に凹凸を設け、操作ストロークがわかるようにすればよい。
【0020】
本実施形態では、操作ボタン3aは、表面部より低くなるように構成しており、すり鉢状に凹んだ凹部の中央に配置されている。これによって、前記タッチ操作部4,5を操作するときに操作ボタン3aが邪魔にならず、誤って操作ボタン3aを押してしまうことがない。
【0021】
また、図2及び3に示すように電極A,Bは、薄板状の銅板で形成されており、ケース2の表面部の裏側に固着されている。この電極A,Bは、タッチ操作部4,5のガイド溝4a,5aは、電極A,Bの幅よりも広い幅としている。言い換えれば、ガイド溝4a,5aは、電極A,Bの内側となるように形成されている。これによって、ガイド溝4a,5aの範囲内を触れたときには、必ず電極A,Bによって接触を検知することができる。
【0022】
次に、本発明に係るタッチ式センサ1の回路構成を図4に基づいて以下に説明する。
【0023】
図4は本発明に係るタッチ式センサの回路構成図であり、本発明に係るタッチ式センサ1は、互いに異なる静電容量を有する2つの前記電極A,Bと、周期的な方形波から成る作動信号を出力してこれを抵抗R3,R5を介して電極A,Bにそれぞれ入力する発振器としての機能を有するマイコン(マイクロコンピュータ)6と、直流電源電圧VCCを分割するように直列に接続された抵抗R1,R2と、各電極A,Bの出力電圧と抵抗R1とR2との間のa点の電位(基準電圧)Vaとを比較して電極の出力電圧の方が基準電圧Vaよりもが高ければOFFして所定の電圧を出力し、電極の出力電圧の方が基準電圧Vaよりも低ければONして所定の出力電圧を出力しないコンパレータ7,8と、これらのコンパレータ7,8の出力をそれぞれ積分する積分回路9,10等を備えている。
【0024】
なお、本実施形態では、電極A,Bが有する静電容量がそれぞれ異なるように設定しているが、電極A,Bからの出力は、それぞれマイコンへの別々の入力ポートに接続する構成としているため、入力ポートを判別することによって、どの電極からの入力信号であるかを判定してもよい。その場合には、電極A,Bは同じ静電容量を有する同じ電極で構成することができる。
【0025】
上記マイコン6は制御部を構成するものであって、このマイコン6は、電極A,Bが接触されたことを検知し、その電極A,Bへの接触状態に応じて被制御装置を制御するための制御信号を出力する。そのため、このマイコン6には、前記検知信号に応じてどの電極が接触されているか接触されていないかを判定する接触判定手段6aと、該接触判定手段6aによって電極A,Bへの接触が検知されたときに、電極A,Bのどちらの検知信号であるかを判定し、電極A,Bの接触順序や接触時間により、操作入力モード(本実施形態では、アップ操作又はダウン操作)を決定する操作入力判定手段6cと、前記モード選択スイッチ3の操作に応じて被制御装置の操作入力モードを決定する制御モード判定手段6dと、操作入力判定手段6cによって決定される操作入力モードと、制御モード判定手段6dによって決定される被制御装置(オーディオ、エアコン、ナビゲーションシステム等)の制御機能に対する操作入力モードが記憶された記億部6bが内蔵されている。
【0026】
なお、マイコン6には前記モード選択スイッチ3が接続されており、マイコン6には、このモード選択スイッチ3からの入力信号があったときに接触判定手段6aに電極A,Bへの接触検知を許可する許可手段6eが設けられている。そのため、モード選択スイッチ3からの入力信号は、制御モード判定手段6dと許可手段6eに入力され、許可手段6eからの許可信号に応じて、接触判定手段6aが電極A,Bへの接触検知が許可されるようになっている。すなわち、モード選択スイッチ3は、接触検知起動スイッチの役割を果たすように構成されている。又、各コンパレータ7,8の出力部は、抵抗R4,R6を介してマイコン6と抵抗R3,R5の間の接続点b,cとそれぞれ接続されている。即ち、各コンパレータ7,8の出力は、マイコン6と接続され、マイコン6の方形波出力をプルアップ電源としている。
【0027】
なお、許可手段6eの機能を接触判定手段6cに持たせてもよく、接触判定手段6cがモード選択スイッチ3からの入力信号をトリガーとして接触検知を開始する構成としてもよい。また、マイコン自体をスリープ状態にしておき、モード選択スイッチ3からの入力信号によって、マイコンが起動するようにしてもよい。この場合には、モード選択スイッチ3は、マイコンの起動スイッチとしての役割を果たすことになる。
【0028】
次に、本発明に係るタッチ式センサ1の検出原理を図5(a),(b)に基づいて以下に説明する。
【0029】
図5(a),(b)は、本発明に係るタッチ式センサ1の電極A,Bへの非接触時と接触時の出力変化を示す図であり、電極A,Bは、その静電容量によって作動電圧を歪ませる。このため、各電極A,Bからの出力信号は、マイコン6から入力される方形波を歪ませた鋸刃状に近い波形(図5には完全な三角波として図示)の電圧信号となる。
【0030】
コンパレータ7,8は、電極A,Bの出力(出力信号)がa点の電圧(基準電圧)Vaよりも高いときだけ電圧を出力する。積分回路9,10は、コンパレータ7,8の出力を積分するため、その出力は時間の経過と共に略直線的に上昇し、その勾配はコンパレータ7,8の出力のデューティ比(ONしている時間の害l合)に比例する。
【0031】
而して、マイコン6は、積分回路9,10が積分を開始してから1msec後の積分回路9,10の出力電圧をデジタル変換して検出値vmとして記憶部6bに記憶する。従って、コンパレータ7,8と積分回路9,10及びマイコン6は、電極A,Bの出力信号とa点の基準電圧Va
との差に応じた検出値Vmを生成する検出回路として機能する。
【0032】
電極A,Bに操作者の指が接触していないときには、図5(a)に示すように電極A,Bの出力信号の振幅が比較的大きいため、電極A,Bの出力信号(出力電圧)が基準電圧Va以上となる時間が比較的長くなる。このため、コンパレータ7,8の出力電圧のデューティ比が比較的大きく、積分回路9,10の出力電圧の上昇勾配が比較的大きく、1msecの後の電圧が比較的高くなるため、マイコン6が取得する検出値Vmが比較的大きくなる。
【0033】
すると、マイコン6の判定手段6aは、検出値Vmをマイコン6内の記億部6bに記億されている閾値Soと比較し、検出値Vmが閾値So以上となっていれば電極A,Bに操作者の指が接触していないものと判定し、OFF信号を外部出力する。
【0034】
他方、電極A,Bに操作者の指が接触すると、電極A,Bの静電容量が増加するため、電極A,Bに操作者の指が接触していない図5(a)に示す場合と比べて、図5(b)に示すように電極A,Bの出力信号の振幅が小さくなる。このため、電極A,Bの出力信号が基準電圧Va以上となる時間が短くなり、コンパレータ7,8の出力電圧のデューティ比が低下し、積分回路9,10の出力電圧の上昇勾配が小さくなり、1msec後の電圧が低くなるため、マイコン6が取得する検知値Vmが小さくなる。
【0035】
すると、マイコン6の接触判定手段6aは、検出値Vmをマイコン6内の記憶部6bに記憶されている閾値Soと比較し、検出値Vmが閾値So以下となったときに電極A,Bに操作者の指が接触していないものと判定し、ON信号を外部出力する。
【0036】
次に、本発明に係るタッチ式センサ1の動作の流れを図6に基づいて以下に説明する。
【0037】
図6はタッチ式センサの動作の流れを示すフローチャートであり、図1に示すステアリングホイール50に設置されたタッチ式センサ1においては、マイコン6に設けられた接触判定手段6aによって接触が検知されると、操作入力判定手段6cが、最初に接触が検知された電極A(B)をスタート電極とし、該スタート電極A(B)への接触が検知されず、且つ、他の電極B(A)への接触が検知されると前記スタート電極をリセットするとともに、次に接触が検知された電極B(A)を新たにスタート電極とし、該スタート電極と最初に接触が検知された電極A(B)の位置関係を判定して被制御装置の操作入力モードを決定する。
【0038】
又、マイコン6は、電極A(B)の接触を検知して、スタート電極にとしてから所定時間内に他の電極B(A)への接触が検知されない場合には、全ての電極A,Bにおける接触検知を無効とし、その後にモード選択スイッチ3が押されて、電極A(B)への接触が再度検知されたときに、その電極A(B)をスタート電極とするようにしている。
【0039】
即ち、図6に示すように、タッチ式センサ1の動作がスタートすると(ステップS1)、初期化が実行され(ステップS2)、まず、モード選択スイッチ3が運転者によってONされたか否かが判定される(ステップS3)。すなわち、モード選択スイッチ3が押されない限り、電極A,Bへの接触検知がされないようになっている。これにより、ステアリングホイール50を操作しているときに、誤ってタッチ式センサ1の電極A,Bに接触してしまった場合であっても、被制御装置の設定が変更されるような誤作動を防止することができる。なお、その後、さらにモード選択スイッチ3を押すことによって、オーディオモード、エアコンモード等の選択判定がなされ、例えばエアコンモードが選択された場合には、さらに風量、温度、内外気切替等をモード選択スイッチ3によって選択する。
【0040】
モード選択スイッチ3が運転者によって押されてONした場合(ステップS3での判定結果がYesである場合)には、アクティブフラグ(モード選択スイッチのON/OFFを示すフラグ)をONモードに変更し(ステップS4)、タッチ式センサ1の電極A,Bへの運転者による接触の検知を開始する(ステップS5)。
【0041】
他方、モード選択スイッチ3が運転者によって押されないために該モード検出スイッチ3がOFFで或る場合(ステップS3での判定結果がNoである場合)には、アクティブフラグがONモードであるか否かが判定され(ステップS6)、既にモード選択スイッチ3が押されており、アクティブフラグが既にONモードに設定されている場合(ステップS6での判定結果がYesである場合)、タッチ式センサの電極への運転者による接触の検知を開始する(ステップS5)。これに対して、アクティブフラグがOFFモードに設定されている場合(ステップS6での判定結果がNoである場合)には、運転者によってモード選択スイッチ3が1度も押されていないために処理はステップS2に戻る。すなわち、モード選択スイッチ3が押されていない状態では、タッチ式センサへの接触がマイコン6によって検知されることはない。
【0042】
タッチ式センサ1の電極A,Bへの運転者による接触の検知において、電極A,Bの何れか一方(例えば電極A)に運転者の指が接触したか否かが判定され(ステップS7)、接触が検知された場合(ステップS7での判定結果がYesとなり)、次にスタート電極が設定済みであるか否かが判定される(ステップS8)。スタート電極が既に設定されている場合(ステップS8での判定結果がYes)には、逆側の電極(例えば電極B)が運転者によって接触(ON)されたか否かが判定される(ステップS9)。この場合、例えば電極Aの接触が検知された後に逆側の電極Bの接触が検知されない場合、400msecが経過すると電極Aをスタート電極とする設定が解除(リセット)され、電極A又はBの接触が再度検知された場合に、その検知された電極A又はBがスタート電極として設定される。又、スタート電極が未だ設定されていない場合(ステップS8での判定結果がNoである場合)には、その接触が検知された電極(例えば電極B)がスタート電極として設定される(ステップS10)。
【0043】
最初に接触が検知された電極(電極A)と逆側の電極(電極B)の接触が検知された場合(ステップS9での判定結果がYesである場合)には、同じ側の電極A(B)が接触(ON)状態にあるか否か、つまり、例えば一方の電極AがONした後にOFFし、他方の電極BがONしたが電極AもONしているか否か、或いは電極A,Bが同時に接触(ON)されている(同時押しされているか否か)が判定される(ステップS11)。両電極A,Bが同時に接触(ON)状態にある場合(ステップS11での判定結果がYesである場合)には、運転者による操作の方向が確定しないために出力はOFFとなり、スタート電極の設定はキャンセルされる。
【0044】
同じ側の電極A(B)が接触(ON)状態にない場合(ステップS11での判定結果がNoである場合)には、電極Aがスタート電極で電極Bの接触(ON)を検知した場合には(運転者の指が電極Aから電極Bへと移動していれば)アップ(例えば、エアコンの風量や温度アップ、モード選択では、一方向、例えば上方向へのカーソルの移動)と判定し、逆に電極Bがスタート電極で電極Aの接触(ON)を検知した場合には(運転者の指が電極Bから電極Aへと移動していれば)ダウン(例えば、エアコンの風量や温度ダウン、モード選択では、他方向、例えば下方向へのカーソルの移動)と判定する(ステップS12)。そして、その後、スタート電極の設定をリセットし(ステップS13)、処理はステップS2に戻る。この場合、例えば運転者が指を電極A→電極Bと移動させた後、指を離して再び電極A→電極Bと移動させる操作を繰り返した場合には、指を離していたOFF時間が70msec未満の場合には、指の移動は電極A→電極B、電極B→電極Aと判定され、OFF時間が70msec以上の場合には、指の移動は電極A→電極B、電極A→電極Bと判定される。尚、2番目の電極がONした後、その○N状態が維持された場合には、判定した操作方向に連続してアップ又はダウンへと移動するようにしても良い。この場合、徐々にスクロールの速度を高めるようにしても良い。
【0045】
他方、モード選択スイッチ3が押されても電極A,Bへの接触が検知されない場合(ステップS7での判定結果がNoである場合)には、スタート電極の設定済みであるか否かが判定され(ステップS14)、スタート電極が設定されている場合(ステップS14での判定結果がYesである場合)にはタイマ作動中であるか否かが判定される(ステップS15)。これに対して、スタート電極が設定されていない場合(ステップS14での判定結果がNoである場合)には、処理はステップS3に戻る。
【0046】
スタート電極が設定されていてタイマが作動中である場合(ステップS15での判定結果がYesである場合)には70msec以上の時間が経過したか否かが判定され(ステップS16)、タイマが作動中でない場合(ステップS15での判定結果がNoである場合)にはタイマがスタートされ(ステップS17)、70msec以上の時間が経過したか否かが判定される(ステップS16)。
【0047】
70msec以上の時間が経過すると(ステップS16での判定結果がYesであると)、スタート電極の設定がリセットされ(ステップS18)、70msec以上の時間が経過するまでは(ステップS16での判定結果がNoである間は)、処理はステップS3に戻る。
【0048】
そして、70msec以上の時間が経過してスタート電極の設定がリセットされると(ステップS18)、400msec以上の時間が経過したか否かが判定され(ステップS19)、400msec以上の時間が経過すると(ステップS19での判定結果がYesであるとき)、アクティブフラグがリセットされ(ステップS20)、400msec以上の時間が経過するまでは(ステップS19での判定結果がNoである間は)、処理はステップS3に戻る。
【0049】
而して、以上のように動作する本実施の係るタッチ式センサ1によれば、スタート電極を随時変更していくことによって、注視する電極A(B)を特定することができ、運転者の指の移動方向を判定してオーディオやエアコン等の車載機器の制御モードを決定することによって、操作面を目視することなく運転者の意思に沿った操作を的確且つ迅速に行うことができる。そして、操作パターンを記憶する制御回路が不要である他、操作パターンを運転者が記憶しておく必要がないため、構造が単純化するとともに、運転者の負担が軽減されるという効果が得られる。
【0050】
又、本実施の形態に係るタッチ式センサ1によれば、モード選択スイッチ3による被制御機器の制御機能選択機能と、タッチ式センサの電極A,Bによる選択された制御機能に対する選択機能とが明確に分離しているため、メニュー選択が容易となり、その後の調整や選択もタッチ式センサのガイド部に沿って操作すればよいため、操作部を目視することなく、容易に操作ボタン3aとタッチ操作部4,5(電極A,B)の操作を判別することができる。
【0051】
また、モード選択スイッチ3が押されないかぎり、タッチ式センサの電極A,Bに接触したとしても、接触が検知されないように構成しているので、電極への不用意な接触による誤作動を確実に防止することができる。さらに、接触検知を開始する起動スイッチを別に設ける必要が無いため、少ない配置スペースで誤作動を防止できる効率な配置構成とすることができる。
【0052】
また、検知そのモード選択スイッチ3の操作ボタン3aの周囲に複数のタッチ操作部4,5(電極A,B)を円弧状に配置したため、操作ボタン3aの操作に連続してタッチ操作部4,5(電極A,B)への操作が容易となる。特に運転者はステアリングハンドル50に設けた場合には、ステアリングハンドル50を握って操作しながら、さらにタッチ式センサ1を操作することとなるため、運転者の操作指となる親指の関節を中心としたタッチ式センサ1の配置とすることで、運転者が、ステアリングハンドル50から出を離すことなく、プッシュ式のモード選択スイッチ3及びタッチ式センサ1の操作をスムーズに行うことができる。
【0053】
更に、本実施の形態に係るタッチ式センサ1においては、電極A,Bに接触した後、電極A,Bのいずれにも、所定時間以上接触がないときには、運転者の意図的でない接触であると判断して操作をキャンセルするようにしたため、タッチ式センサ1の不用意な誤作動を防ぐことができる。なお、電極A,Bのいずれかの電極に所定時間以上、接触し続けた場合にも、意図的でない接触であると判断し、操作をキャンセルするようにしてもよい。
【0054】
又、本実施の形態では、タッチ式センサ1の操作位置を示すガイド部をタッチ操作部4,5(電極A,B)よりも狭い範囲としたため、ガイド部内におけるタッチ操作部4,5(電極A,B)への接触を確実に検知することができるようにしている。そして、運転者は、操作部を目視することなく、ガイド部に案内されてタッチ式センサ1のタッチ操作部4,5(電極A,B)を確実に操作することができる。
【0055】
本実施形態では、湾曲した長方形のガイド部を2つ分離して形成したが、1つの長い湾曲したガイド部として、電極A,Bの境界部に感触でわかるような凹凸形状を形成してもよい。操作ボタンに沿って円弧状に形成され、各電極への移動がわかるようになっていれば、形状は長方形でなくても、他の形状であってもよい。
【0056】
尚、以上は本発明に係るタッチ式センサ1を車両のステアリングハンドル50に設置した形態について説明したが、本発明に係るタッチ式センサ1は、他の任意の部位に設置することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1 タッチ式センサ
2 ケース
3 モード選択スイッチ
3a モード選択スイッチの操作ボタン
4,5 タッチ操作部
6 マイコン(制御部〉
6a マイコンの接触判定手段
6b マイコンの記憶部
6c マイコンの操作入力判定手段
6d マイコンの制御モード判定手段
6e マイコンの許可手段
7,
8 コンパレータ
9,10 積分回路
50 ステアリングホイール
A,B 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極と、
前記電極が接触されたことを検知して電極毎に検知信号を出力する検知手段と、
前記検知信号に応じてどの電極が接触されているか接触されていないかを判定する接触判定手段を備えたタッチ式センサにおいて、
操作ボタンを有するスイッチと、
前記操作ボタンの操作による前記スイッチからの入力信号に応じて、前記被制御装置の制御機能を決定する制御モード判定手段と、を備え、
前記スイッチからの入力信号があったときに、前記接触判定手段による前記電極への接触判定を許可する許可手段を設けたことを特徴とするタッチ式センサ。
【請求項2】
少なくとも2つの前記電極を前記操作ボタンの外周に沿って円弧状に配置したことを特徴とする請求項1記載のタッチ式センサ。
【請求項3】
前記電極と前記スイッチを背面側に配置し、前記操作ボタンが露出するように設けられたケースと、
該ケースの表面に、前記電極の外周縁よりも内側の範囲で、前記電極の操作位置を示す凹状のガイド部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のタッチ式センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112197(P2013−112197A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260763(P2011−260763)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】