説明

タバコに含まれるニコチンおよびニトロソアミンの濃度の変更

【課題】ニコチンおよび/またはタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)の量が低下したタバコおよびタバコ製品を得ることを可能とする。
【解決手段】本発明は一般に、ニコチンおよび/またはタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)の量が低下したタバコおよびタバコ製品に関する。
より詳細には、ニコチンおよびTSNAの濃度を低下させたタバコ植物を作製するいくつかの方法を発見した。実施形態には、前記タバコ植物から収穫したタバコ、前記タバコ植物から乾燥したタバコ、前記乾燥したタバコで作製したタバコ製品、およびこれらの組成物を作製する方法が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ニコチンおよび/またはタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)の量を低下させた、タバコおよびタバコ製品に関する。より詳細には、ニコチンおよびTSNAの濃度を低下させたタバコ植物を育てるいくつかの方法が開示されている。実施形態には、前記タバコ植物から収穫したタバコ、前記タバコ植物から乾燥したタバコ、前記乾燥したタバコで作製したタバコ製品、およびこれらの構成物を作製する方法が含まれる。
【背景技術】
【0002】
タバコの消費が健康に及ぼす影響が知られているが、多くの人々はタバコ製品を使用し続けている。タバコ製品が持つ常用依存性は、ニコチンの存在が大きな原因となっている。ニコチンは、最も常用依存性のある物質として知られるものの1つである他に、タバコおよび身体に存在する多数の発癌性化合物の前駆体でもある。
【0003】
現在、タール、ニトロソアミン、およびニコチンを含めた有害な、発癌性の、または常用依存性のある物質の濃度を低下させたタバコを製造する方法に、関心が集まっている。タバコ製品のニコチン含量またはニコチン送達を低下させたいくつかの手法を研究者が開発したが、その多くの技法では、味、香り、または喫煙性の乏しい製品になる。たとえばいくつかのプロセスでは、収穫した後のタバコのニコチン含量を、微生物酵素分解、化学処理、または高圧抽出によって低下させる(米国特許第4,557,280号、第4,561,452号、第4,848,373号、第4,183,364号、および第4,215,706号参照、その全体を参照により本明細書に特に組み込む)。
【特許文献1】米国特許第4,557,280号
【特許文献2】米国特許第4,561,452号
【特許文献3】米国特許第4,848,373号
【特許文献4】米国特許第4,183,364号
【特許文献5】米国特許第4,215,706号
【特許文献6】PCT/US98/11893
【特許文献7】米国特許第6,135,121号
【非特許文献1】Tso、Physiology and Biochemistry of Tobacco Plants、第233〜34頁、Dowden、Hutchinson & Ross、Stroudsburg、Pa.(1972)
【非特許文献2】Feth他、Planta、168、第402〜07(1986)
【非特許文献3】Wagner他、Physiol.Plant.、68、第667〜72(1986)
【非特許文献4】WagnerおよびWagner、Planta、165:532(1985)
【非特許文献5】SaundersおよびBush、Plant Physiol 64:236(1979)
【特許文献8】NakataniおよびMalik、米国特許第5,369,023号
【特許文献9】NakataniおよびMalik、米国特許第5,260,205号
【特許文献10】WahadおよびMalik、PCT出願WO94/28142
【特許文献11】Timko、PCT出願WO00/67558
【特許文献12】DavisおよびMarcum、WO93/05646
【非特許文献6】Conkling他、Plant Phys.93、1203(1990)
【非特許文献7】Van der Krol他、「An Anti-Sense Chalcone Synthase Gene in Transgenic Plants Inhibits Flower Pigmentation」、Nature、333、第866〜69頁(1988)
【非特許文献8】Smith他、「Antisense RNA Inhibition of Polygalacturonase Gene Expression in Transgenic Tomatoes」、Nature、334、第724〜26頁(1988)
【非特許文献9】Sheehy他、「Reduction of Polygalacturonase Activity in Tomato Fruit by Antisense RNA」、Proc.NM.Acad SU USA、85、第8805〜09頁(1988)
【非特許文献10】Rodenrmel他、「Nuclear-Organelle Interactions:Nuclear Antisense Gene Inhibits Ribulose Bisphosphate Carboxylase Enzyme Levels in Transformed Tobacco Plants」、Cell、55、第673〜81頁(1988)
【特許文献13】T.Cech他、米国特許第4,987,071号
【特許文献14】Keene他、米国特許第5,559,021号
【特許文献15】Donson他、米国特許第5,589,367号
【特許文献16】Torrence他、米国特許第5,583,032号
【特許文献17】Joyce他、米国特許第5,580,967号
【特許文献18】Gold他、米国特許第5,595,877号
【特許文献19】Wagner他、米国特許第5,591,601号
【特許文献20】米国特許第5,622,854号
【非特許文献11】J.Sambrook他、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(第2版、1989)(Cold Spring Harbor Laboratory)
【非特許文献12】M.Conkling他、Plant Physiol.93、1203〜1211(1990)
【非特許文献13】Cornelissen他、「Both RNA Level and Translation Efficiency are Reduced by Anti-Sense RNA in Transgenic Tobacco」、Nucleic Acids Res.17、第833〜43頁
【非特許文献14】Rezaian他、「Anti-Sense RNAs of Cucumber Mosaic Virus in Trensgenic Plants Assessed for Control of the Virus」、Plant Molecular Biology 11、第463〜71頁(1988)
【非特許文献15】Rodermel他、「Nuclear-Organelle Interactions:Nuclear Antisense Gene Inhibits Ribulose Bisphosphate Carboxylase Enzyme Levels in Transformed Tobacco Plants」、Cell 55、第673〜81頁(1988)
【非特許文献16】Lam他、「Site-Specific Mutations Alter In Vitro Factor Binding and Change Promotor Expression Pattern in Transgenic Plants」、Proc.Nat.Acad Sci.USA 86、第7890〜94頁(1989)
【非特許文献17】Poulsen他、「Dissection of 5' Upstream Sequences for Selective Expression of the Nicotiana plumbaginifolia rbcS-8B Gene」、Mol.Gen.Genet.214、第16〜23頁(1988)
【特許文献21】Conkling他、米国特許第5,459,252号
【非特許文献18】Yamamoto他、The Plant Cell、3:371(1991)
【特許文献22】Conkling他、米国特許出願第08/508,786号
【特許文献23】PCT WO 9705261
【特許文献24】WO 00055333
【特許文献25】WO 09913085
【特許文献26】米国特許第5599670号
【特許文献27】米国特許第5432081号
【特許文献28】米国特許第5268463号
【特許文献29】米国特許第4,459,355号
【特許文献30】米国特許第4,795,855号
【特許文献31】Schilperoort他、米国特許第4,940,838号
【特許文献32】SanfordおよびWolf、米国特許第4,945,050号
【特許文献33】Christou他、米国特許第5,015,580号
【非特許文献19】Shillito他、「Direct Gene Transfer to Protoplasts of Dicotyledonous and Monocotyledonous Plants by a Number of Methods,Including Electroporation」、Methods in Enzymology 153、第313〜36頁(1987)
【非特許文献20】Meyerowitz、Plant Mol.Biol.Rep.5:237(1987)
【非特許文献21】Hughes他、J Bact.、175:479(1993)
【非特許文献22】Brosius、1984
【非特許文献23】VogelおよびBonner、1956
【非特許文献24】Legg他、Can J Genet Cytol、13:287〜91(1971)
【非特許文献25】Legg他、J Hered、66:213〜17(1969)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の事項に鑑み、かつ従来技術で例示したさまざまな試みにも関わらず、ニコチンおよびTSNAが減少したタバコとそのようなタバコを製造する方法が、依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、ニコチンおよび/またはタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)の量を低下させたタバコおよびタバコ製品の製造に関する。本発明のいくつかのタバコおよびタバコ製品は、そのニコチンの濃度を低下させる他、N'-ニトロソノルニコチン(NNN)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、N'-ニトロソアナバシン(NAB)、4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)、4-(N-ニトロソメチルアミノ)-4-(3-ピリジル)-1-ブタナール(NNA)-4-N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール(NNAL)、4-N-ニトロソメチルアミノ)-4-(3-ピリジル)-1-ブタノール(イソ-NNAL)、および/または4-(N-ニチロソメチルアミノ)-4-(3-ピリジル)-ブタン酸(イソ-NNAC)の量を低下させる。たとえばいくつかの実施形態では、N'-ニトロソノルニコチン、4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン、N'-ニトロソアナタビン、およびN'-ニトロソアナバシンからなる群から選択された少なくとも1つのTSNAを実質的に含まない。「タバコ製品」という用語には、喫煙材料(たとえば紙巻きタバコや葉巻、パイプタバコ)、嗅ぎタバコ、噛みタバコ、ガム、およびトローチ剤が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、たとえば、量を減少させたニコチンと、合わせた含量が約0.5μg/g、0.4μg/g、または0.2μg/g未満であるNNN、NAT、NAB、およびNNKとを含む、遺伝子組み換えした乾燥済みのタバコを含む。すなわち前記乾燥済みのタバコは、遺伝子組み換えしたタバコ植物から作製する。
【0006】
本発明の別の態様は、タバコに含まれるニコチンおよび/またはTSNAの量を実質的になくしまたは低下させる方法に関する。一手法によれば、遺伝子操作を使用してタバコ植物がニコチンを合成する能力を妨げることにより、タバコ植物からニコチンを実質的になくす。これらの遺伝子組み換えしたタバコ植物からニコチンをなくすことによって、これらのタバコ植物から作製されたタバコおよびタバコ製品では、TSNAの量も低下する。好ましい方法では、N'-ニトロソノルニコチン(NNN)、4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、および/またはN'-ニトロソアナバシン(NAB)を含むがこれらに限定されない1つまたは複数のTSNAが減少するように、遺伝子導入したタバコを生成する。次いで喫煙材料(たとえば紙巻きタバコや葉巻、パイプタバコ)、嗅ぎタバコ、噛みタバコ、ガム、およびトローチ錠を含むがこれらに限定されないタバコ製品を、従来の技法を使用して、前記遺伝子導入したタバコ植物から作製する。これらのタバコ製品は、タバコを作製する従来の技法によって切り取り、乾燥し、乾燥し、かつ/または発酵させた、収穫済みのタバコの葉および茎から製造することが好ましい。しかし、TSNAの濃度をさらに低下させるため、乾燥してタバコを加工する技法に、修正を加えることもできる。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態で、ニコチンおよびTSNAを実質的に含まないタバコは、5'から3'の方向に、植物細胞内で作動可能なプロモーターと、ニコチン合成経路で酵素をコードするDNA配列の一部を含有したDNAとを有する外因性DNA構成体に、選択された品種の少なくとも1個のタバコ細胞を曝すことによって作製する。DNAを、前記プロモーターに作動可能に結合し、タバコ細胞をDNA構成体で形質転換し、形質転換した細胞を選択して、その形質転換した細胞から、少なくとも1個の遺伝子導入タバコ植物を再び生成する。遺伝子導入タバコ植物は、そこに含有されるニコチンおよび/またはTSNAの量が、同じ品種の対照タバコ植物に比べて低下している。好ましい実施形態では、ニコチン合成経路で酵素をコードするDNA配列の一部を有するDNA構成体は、酵素のコード配列全体またはその任意の部分を有してよい。
【0008】
いくつかの実施形態で、ニコチン合成経路に関与する酵素は、プトレッシンN-メチルトランスフェラーゼ、N-メチルプトレッシンオキシダーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、S-アデノシルメチオニンシンテターゼ、NADHデヒドロゲナーゼ、ホスホリボシルアントラニル酸イソメラーゼ、またはキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)である。好ましい実施形態では、酵素はQPTaseである。ニコチン合成経路で酵素をコードするDNA配列のセグメントは、アンチセンス方向またはセンス方向にあればよい。いくつかの実施形態で、ニコチンおよび/またはTSNAを実質的に含まないタバコは、バーレー(Burley)タバコ(たとえばBurley 21)、オリエンタル(Oriental)タバコ、または煙管火力乾燥(Flue-cured)タバコの品種から調製される。しかし、本明細書で述べる実施形態を使用することにより、タバコのほとんどの品種について、ニコチンおよび/またはTSNAを含まないように作製できることが理解されよう。たとえば、ニコチンおよび/またはTSNAの減少をもたらす遺伝子操作用の宿主として、Burley 21という品種の植物細胞を使用し、したがって得られた遺伝子導入植物は、ニコチンおよび/またはTSNAの量が低下したBurley 21品種である。
【0009】
本発明の一態様は、配列番号1を含む単離DNA分子と、配列番号2を有する酵素をコードするDNA配列と、そのようなDNAにハイブリダイズしてキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ酵素またはそのような酵素の一部をコードするDNA配列と、遺伝コードの縮退が原因で上記DNAとは異なっているDNA配列も含む。そのようなDNAによってコードされるペプチドは、本発明の別の態様である。
【0010】
本発明の別の態様は、植物細胞内で作動可能なプロモーターと、このプロモーターの下流に位置してこのプロモーターに作動可能に結合された、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ酵素をコードするDNAセグメントを含む、DNA構成体に関する。酵素をコードするDNAは、アンチセンス方向またはセンス方向にあればよい。
【0011】
本発明の別の態様は、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼを発現することで知られている種類の植物細胞を準備し、その植物細胞を、プロモーターと、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼmRNAをコードする配列の一部を含むDNAとを含む外因性DNA構成体で形質転換することによって、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)の発現を低減させた遺伝子導入植物細胞を作製する方法に関する。好ましい実施形態では、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードするDNA配列の一部を有するDNA構成体は、酵素のコード配列全体またはその任意の部分を有してよい。キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)遺伝子またはその断片であって長さが少なくとも13ヌクレオチドのものに対応する配列を含む、遺伝子組換え生成物を含有するタバコがより好ましい。
【0012】
本発明の別の態様は、非形質転換対象植物よりもキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)の発現を低減させた、Nicotiana種の遺伝子導入植物に関する。そのような植物の細胞は、植物のキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼmRNAまたはその一部をコードするDNA配列を含んだDNA構成体を含む。
【0013】
本発明の別の態様は、外因性DNAを含有するよう形質転換された植物細胞を成長させることによって、植物細胞内でのキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を低減させる方法に関し、この方法では、外因性DNAの転写鎖が、細胞に対して内在するキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼmRNAに相補的なものである。相補的な鎖の転写により、内因性キノリン酸ホスホリボシル遺伝子の発現が低減する。
【0014】
本発明の別の態様は、細胞内の内因性キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼメッセンジャーRNAの領域に相補的なRNAをコードする外因性DNA配列を含む細胞から、タバコ植物を再生することによって、タバコ植物の葉に含まれるニコチンの濃度を低下させたタバコ植物を生産する方法を含む。
【0015】
本発明の別の態様は、外因性DNA配列を含む細胞からタバコ植物を再生することを含む、ニコチンおよび/またはTSNAを低下させたタバコ植物を生産する方法に関し、この方法では、外因性DNA配列の転写鎖が、細胞内の内因性キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼメッセンジャーRNAの領域に相補的なものである。関連する実施形態には、ニコチンおよび/またはTSNAの量を低下させた前記タバコ植物からタバコ製品を生産する方法が含まれ、前記タバコ製品には、紙巻きタバコ、葉巻、パイプタバコ、噛みタバコが含まれ、また、葉タバコ、小刻みタバコ(shredded tobacco)または刻みタバコ(cut tobacco)の形をしたものでよいが、これらに限定するものではない。
【0016】
本発明の別の態様は、ニコチンおよび/またはTSNAの量を低下させたタバコ植物をもたらすニコチン生合成に関与する遺伝子の突然変異を示すタバコ変異体の製造、単離、および/または特徴付けに関する。たとえばいくつかの実施形態では、プトレッシンN-メチルトランスフェラーゼ、N-メチルプトレッシンオキシダーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、S-アデノシルメチオニンシンテターゼ、NADHデヒドロゲナーゼ、ホスホリボシルアントラニル酸イソメラーゼ、またはキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)が含まれるがこれらに限定することのないニコチン生合成に関与する少なくとも1個の遺伝子に、突然変異が生ずる。上記遺伝子の自然変異体は、植物を育てる一般的な技法を使用してニコチンおよび/またはTSNAの濃度が低下するよう選択することができる。いくつかの実施形態では、上記タバコ変異体を、Bureleyタバコ(たとえばBurley 21)、Orientalタバコ、またはFlue-curedタバコの品種から調製する。しかし、ニコチン生合成における遺伝子の変異体は、ほとんどのタバコの品種から選択できることが理解されよう。これらのタバコ植物を使用して、ニコチンおよび/またはTSNAの濃度が低下したタバコ製品を作製することもできる。
【0017】
追加の実施形態には、所望の濃度のニコチンおよび/またはTSNAが得られるように慎重にブレンドされたタバコ製品が含まれる。たとえば上述のように調製された、ニコチンおよび/またはTSNAの濃度が低下したタバコを、事実上あらゆる量のニコチンおよび/またはTSNAが得られるように、従来のタバコとブレンドすることができる。さらに、所望の量のニコチンおよび/またはTSNAが得られるように、ニコチンおよび/またはTSNAの濃度が低下した2種以上の品種のタバコをブレンドすることができる。このように、品種、香り、ならびにニコチンおよび/またはTSNAの量の差は、徐々に調整することができる。これらのブレンドタバコ製品は、ニコチン依存症および発癌の可能性を減少させまたはなくすように設計された禁煙キットおよび禁煙プログラムに組み込むことができる。そのようなキットおよびプログラムも、本発明の実施形態である。
【0018】
本発明の別の実施形態は、紙巻きタバコ、葉巻、噛みタバコ、嗅ぎタバコ、およびタバコを含有するガムおよびトローチ錠を含めたタバコ製品の発癌性を低下させる方法に関する。たとえばいくつかの方法では、ニコチンおよび/またはTSNAの量を低下させたタバコを調製し、また、前記タバコを含有するタバコ製品を製造する。このように、上述の遺伝子導入タバコ植物を収穫し、乾燥し、加工してタバコ製品にする。これらのタバコ製品は、ニコチンおよび/またはTSNAの量が減少したタバコから作製されるので、その発癌性が低下したものである。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、TSNA、好ましくはNNNおよびNNKと、喫煙し消費しまたは別の手段でタバコを摂取するヒトでのその代謝産物との量の低下に関する。この方法は、TSNAの量を低下させたタバコ製品を前記ヒトに提供することにより実施され、それによって、前記ヒトにおけるそのような製品の発癌性が低下する。たとえば1つの手法では、タバコの副流煙または主流煙に曝されたヒトに対するそのようなタバコの副流煙または主流煙の発癌性は、熱分解を受けた製品に上述の乾燥したタバコを含ませることによって低下し、この場合、前記製品の熱分解によって、タバコの副流煙および主流煙に含まれるTSNAの量が低下する。このため、上述の乾燥したタバコを使用することにより、副流煙および/または主流煙中のTSNAの量を低下させた喫煙製品が作製され、それによって、タバコの煙に接触したヒトに対する発癌性物質の量を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ニコチンおよび/またはTSNAの量を低下させたタバコおよびタバコ製品を作り出す、いくつかの手法が発見された。本明細書で述べる技術の態様は、PCT/US98/11893にも記載されており、その全体を参照により特に本明細書に援用する。1つの手法によれば、ニコチンおよびTSNA濃度を低下させた遺伝子導入タバコ植物が生成され、前記遺伝子導入タバコ植物から収穫したタバコを使用してさまざまなタバコ製品を作製する。そのような1つの遺伝子導入タバコ植物は、キノリン酸フォスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)遺伝子の少なくとも一部に相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA構成体を含む。RNAの相補鎖の転写によって、内因性キノリン酸フォスホリボシル遺伝子の発現が低減し、その結果、タバコ植物中のニコチンの量が低下し、それに付随してTSNAの量が低下する。このため、本発明の1つの概念とは、遺伝子操作を用いてタバコ植物中のニコチン含量を低下させることにより、前記植物中のTSNA含量を低下させることができることである。下記のセクションでは、ニトロソアミンおよびタバコ特異的ニトロソアミンに関してより詳細に説明する。
【0021】
ニトロソアミンおよびタバコ特異的ニトロソアミン
ニトロソアミンという用語は、一般に、一般式がR2NNOまたはRNHNO(ただしRはアミン含有基を示す)である有機化合物の種類のいずれかを指す。ニトロサミンは、非常に数多くの食品に含まれ、実験動物に対しては発癌性があることがわかっている。これらの化合物は、アミノ酸やアルカロイドなどのアミンと、亜硝酸化合物および/または亜酸化窒素とのニトロソ化反応によって形成される。ニトロソアミンは、それのみでは発癌性物質ではないが、哺乳類においては酵素活性によりニトロソアミンが分解し、それによって、バイオポリマーと反応して腫瘍誘発作用を引き起こすと考えられるアルキル化代謝産物を形成する。このため、ニトロソアミンの摂取量を低下させることによって、ヒトに対する発癌性が効果的に低減した。
【0022】
ニトロソアミンは、ガスクロマトグラフィ-熱交換分析(GC-TEA)などの技法を使用することによって、タバコ、タバコ製品、およびタバコの煙の中に確認されている。これらのニトロソアミンの一部は、タバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)であることが確認された。TSNAは主に、最も豊富に存在する2種のアルカロイド、すなわちニコチンおよびノルニコチンと、亜酸化窒素(NOX)との反応によって形成され、これらの量に比例して、タバコ製品と主流煙の両方に含まれるニトロソアミンが最高濃度になる。確認されたTSNA、および同様に紙巻きタバコに含まれることがわかったサブセットの中で、最も特徴的なものは、N-ニトロソアミン、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(N-ニトロソアミン-ケトン)、またはNNKである。NNKは、比較的高い用量で注射すると、げっ歯類に対して発癌性になる。乾燥していないタバコでは少量のTSNAが見られるが、これは、タバコの乾燥や乾燥、発酵、焼成、または貯蔵などのプロセスステップ中に、TSNA形成が生じる可能性があることを示している。
【0023】
TSNAの形成は、タバコの加工中、特に乾燥、発酵、および熟成中の、化学的な影響、酵素、および細菌による影響が原因である。ノルニコチン、アナタビン、およびアナバシンのニトロソ化によって、対応するニトロソアミン:N'-ニトロソノルニコチン(NNN)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、およびN'-ニトロソアナバシン(NAB)が得られる。水溶液中でのニコチンのニトロソ化によって、4-(ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)、NNN、および4-(N-ニトロソメチルアミノ)-4-(3-ピリジル)-1-ブタナール(NNA)の混合物が得られる。それほど一般的に見られないTSNAには、NNAL(4-N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール)、イソ-NNAL(4-N-ニトロソメチルアミノ)-4-(3-ピリジル)-1-ブタノール、11)、およびイソ-NNAC(4-(N-ニトロソメチルアミノ)-4-(3-ピリジル)-ブタン酸、12)が含まれる。米国特許第6,135,121号であって、その開示全体を参照により特に本明細書に援用するものを参照されたい。
【0024】
TSNAの濃度は、噛みタバコおよび嗅ぎタバコで特に高い。発酵中に行われる一部嫌気性のプロセスは、亜硝酸化合物濃度を増加させることによって、タバコアルカロイドからのTSNAの形成を促進させ、特に過剰発酵すると、硝酸化合物濃度および微生物酵素活性に及ぼす影響によって、嗅ぎタバコ中のTSNA濃度が高まる可能性がある。近年、これらの製品に含まれる細菌量を良好に制御し続けることによって、嗅ぎタバコのニトロソアミン濃度を低下させている。
【0025】
タバコの硝酸化合物濃度は、紙巻きタバコの煙の中でのニトロソアミンの形成に重要であるので、硝酸化合物の量が低い葉と茎をブレンドすることによって、煙の中のニトロソアミンを著しく減少させることができる。しかしこれらの方法は、タバコの喫煙性または味に悪影響を及ぼす可能性がある。主流煙のニトロソアミン含量は、酢酸セルロースフィルタによって80%程度低下させることができ、これはフィルタの換気によってさらに低下させることができる。
【0026】
バーレー(burley)種で燻蒸乾燥した(dark-fired)もの等の通気乾燥したタバコは、あるタイプの煙管火力乾燥した明色タバコ、バーレー(burley)種、または暗色タバコよりも、明らかにTSNAの濃度が高くなる可能性があるが、これは煙管火力乾燥に伴う高温によって、アルカロイドをTSNAに変換する微生物が死滅する可能性があるからである。通気乾燥タイプでは、煙管火力乾燥したタバコの場合よりも硝酸化合物(N-NO3)が豊富に葉(特に葉および茎)に含まれており、アルカロイド含量も非常に高い。このN-NO3は、乾燥中に微生物によって亜硝酸化合物(NO2)に還元され、NO2は、さらにNOXへと還元することができ、またはアルカロイドと直接反応してTSNAを形成することができる。
【0027】
上述の技法に加え、タバコ(特に葉)の硝酸化合物濃度は、ニトロソ化剤またはニトロソ化条件への曝露を制限することによって、低下させることができると考えられる。高温での通気乾燥実験は、乾燥温度が16℃よりも32℃のときに著しく高い濃度のN-ニトロソアミンが形成されることを示したが、これは、タバコに含まれる亜硝酸化合物の濃度上昇に関連したものであり、また、微生物酵素活性の上昇にも関連すると考えられる。間隔をより広く空けた状態またはより開放された乾燥構造から急速に乾燥させる、修正を加えた乾燥では、バーレータバコのTSNA濃度が低下することが示された。乾燥中の主な気候条件は、N-ニトロソアミンの形成に大きな影響を与え、通気乾燥中の相対湿度は重要なものになる可能性がある。幹干しでは、煙に含まれるTSNAの濃度が、摘み取り下葉を乾燥した場合よりも高くなる。日干ししたOrientalタバコのTSNA濃度は、Flueおよび通気乾燥した色の濃い(dark)タバコよりも低い。葉の均質化乾燥など、粗製タバコの乾燥を加速させると、細菌がニトロソ化反応を実行しようとする能力が制限される。しかし、Burleyタバコに含まれるTSNAを減少させるための上述の方法の多くは、タバコの味に望ましくない影響を及ぼす可能性がある。
【0028】
煙管火力乾燥したタバコでのTSNA形成は、やはり乾燥中にタバコが燃焼ガスに曝されることによって生じ、その場合、煙管火力乾燥したタバコ(たとえばVirginia Flue)に含まれるTSNAのほぼすべては、NOXとニコチンとの反応によって生じる。NOXの主な供給源は、直火式納屋で生じる燃焼ガスの混合物である。現在、煙管火力乾燥タバコは、商用の大規模納屋で主に乾燥させている。1960年代の米国でのエネルギーの圧力により、農家が建てた熱交換式火力システム付きの「スティックバーン(stick barn)」は、直火式液体プロパンガス(LPG)を使用した、よりエネルギー効率の高い大規模納屋へと徐々に代わっていった。これらのLPG直火式燃焼器システムは、燃焼ガスおよび燃焼副産物を納屋に直接排出し、そこで、乾燥するタバコと接触する。研究よれば、LPG燃焼副産物が、天然に生ずるタバコアルカロイドと反応してTSNAを形成することが示されている。
【0029】
直火式乾燥とは対照的に、熱交換燃焼器の構成では、燃焼ガスおよび燃焼副産物を、納屋の内部ではなく外の大気中に完全に逃がす。熱交換プロセスでは、タバコがLPG燃焼副産物に曝されず、それによってTNSA形成に重要なニトロソ化剤の供給源がなくなり、葉の品質または喫煙の質が悪化しない。熱交換器の使用により、TSNA濃度は約90%低下する。ステップは、熱交換器の使用により間接的に加熱するよう納屋を改造することによって、米国のタバコのTSNA濃度が低下するよう実行されるが、これらの方法は非常に費用がかかる。このセクションで述べた手法の多くには重大な欠点があるが、本明細書で述べるように、これらの技法のいずれかまたはすべてをその他の技法と共に使用して、ニトロソアミンを減少させたタバコおよびタバコ製品を作製できることが理解されよう。以下のセクションでは、ニコチンと、タバコに含まれるニコチンを減少させる手法について、より詳細に述べる。
【0030】
ニコチン
ニコチンは、主にタバコ植物の根で形成され、その後、葉に輸送されてそこに蓄えられる(Tso、Physiology and Biochemistry of Tobacco Plants、第233〜34頁、Dowden、Hutchinson & Ross、Stroudsburg、Pa.(1972))。古典的な作物栽培技法では、野生型タバコに見られるようなニコチンの量が8%程度に低い品種も含めた、ニコチンの濃度が低いタバコが生成される。本明細書で述べる多くの方法は、事実上どの品種のタバコでも使用することができるが、バーレー、オリエンタル、またはFlue(たとえばVirginia Flue)といった品種で使用することが好ましい。
【0031】
ニコチンは、ニコチン酸と4-メチルアミノブタナールとの縮合によって、タバコ植物で生成される。図1に、ニコチンを生成する生合成経路を示す。2個の調節遺伝子座(Nic1およびNic2)が、ニコチン生成の共優性調節遺伝子として働く。シングルおよびダブルNic変異体からの根の組織の酵素分析では、2つの酵素、すなわちキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(「QPTase」)とプトレッシンメチルトランスフェラーゼ(PMTase)の活性が、ニコチン生合成レベルに正比例することを示している。ニコチン生合成で必須のステップは、キノリン酸からニコチン酸を生成することであり、QPTaseによって触媒されるステップである。QPTaseは、タバコでニコチン生成するためのニコチン酸を供給する経路において、律速酵素と考えられる(Feth他、Planta、168、第402〜07(1986) およびWagner他、Physiol.Plant.、68、第667〜72(1986)であって、その全体を参照により本明細書に特に援用するものを参照)。ニコチン合成能力が異なるタバコ組織(根およびカルス)での酵素活性を比較すると、QPTase活性とニコチン含量とが厳密に相関していることが示される(WagnerおよびWagner、Planta、165:532(1985)、その全体を参照により本明細書に特に援用する)。実際にSaundersおよびBush(Plant Physiol 64:236(1979)、その全体を参照により本明細書に特に援用する)は、低ニコチン変異体の根に含まれるQPTase濃度が、葉に含まれるニコチンの濃度に比例することを示した。
【0032】
プトレッシンメチルトランスフェラーゼ(PMTase)発現のアンチセンス調節によって、タバコ植物に含まれるニコチンの濃度を変化させることが、NakataniおよびMalikの米国特許第5,369,023号および第5,260,205号と、WahadおよびMalikのPCT出願WO94/28142に提案されており、これらは、PMTをコードするDNAとセンスおよびアンチセンスPMT構造体の使用について述べており、そのそれぞれの開示全体を参照により本明細書に特に援用する。ニコチン濃度を低下させるために提案されたその他の遺伝子組換えが、TimkoのPCT出願WO00/67558と、DavisおよびMarcumのWO93/05646に記載されており、その内容全体を参照により本明細書に特に援用する。このセクションで述べた手法の多くには重大な欠点があるが、本明細書で述べるようにこれらの技法のいずれかまたはすべてをその他の技法と共に使用して、ニコチンを減少させたタバコおよびタバコ製品を作製できることが理解されよう。以下のセクションでは、タバコおよびタバコ製品に含まれるニコチンおよびTSNAの量を低下させる、新規な手法について述べる。
【0033】
ニコチンおよびタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)の量を減少させること
上記で論じたように、TSNAおよびニコチンは、タバコおよびタバコ製品の発癌性および常用依存性に大きく寄与する。このため、TSNAおよびニコチンの量を低下させたタバコおよびタバコ製品が、極めて有用である。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、ニコチンの量が低下したタバコ植物、タバコ、およびタバコ製品を作り出すことによって、TSNAの量も低下させるものである。すなわち、タバコ植物、タバコ、およびタバコ製品からニコチンを除去することによって、TSNAを形成するためのアルカロイド基質を効果的に除去する。タバコに含まれるニコチンの減少は、TSNAの減少に直接関係することがわかった。思いがけないことであるが、本明細書で述べる方法は、常用依存性が低下したタバコを製造するだけではなく、それと同時に発癌性も低下したタバコを製造する。
【0034】
「減少した量」という文言は、処理しまたは遺伝子導入したタバコ植物、タバコ、またはタバコ製品に含まれるニコチンおよび/またはTSNAの量であって、その量が、ニコチンおよび/またはTSNAを減少させるよう処理せずにまたは遺伝子導入せずに同じ手法で加工した同じ品種のタバコからのタバコ植物、タバコ、またはタバコ製品に見られるよりも少ない量を指すものとすることを強調すべきである。このため、ある状況では、同じ手法で加工された同じ品種の野生型タバコを、本明細書に記載する本発明の方法によってニコチンおよび/またはTSNAの減少が実現されたか否かを判断するための対照として使用する。
【0035】
野生型タバコに含まれるTSNA(たとえば、NNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量)とニコチンの量は、その品種と、成長させ収穫し乾燥させる手法に応じて著しく変化する。たとえば、乾燥したBurleyタバコの葉は、ニコチンを約30,000百万分率(ppm)、TSNA(たとえばNNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量)を8,000十億分率(ppb)で有する可能性があり;Flue-Cured品種の葉は、ニコチンを約20,000ppm、TSNA(たとえばNNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量)を300ppbで有する可能性があり;Oriental品種を乾燥させた葉は、ニコチンを約10,000ppm、TSNA(たとえばNNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量)を100ppbで有する可能性がある。ニコチンおよび/またはTSNAの量を低下させたタバコは、検出可能なニコチンおよび/またはTSNA(たとえばNNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量)を有することがなく、あるいは、ニコチンおよび/またはTSNAの量が、同じ品種で同じ条件下で成長させかつ同じ手法で乾燥および/または加工したタバコに見られるよりも少ないものである限り、いくらか検出可能な量の1種または複数のTSNAおよび/またはニコチンを含有してよい。すなわち、ニコチンの量を減少させた本明細書に記載の乾燥したBurleyタバコは、そのニコチンの量が0〜30,000ppmの間でありかつTSNAが0〜8,000ppbの間でよく、望ましくはニコチンが0〜20,000ppmの間でありTSNAが0〜6,000ppbの間、より望ましくはニコチンが0〜10,000ppmの間でありTSNAが0〜5,000ppbの間、好ましくはニコチンが0〜5,000ppmの間でありTSNAが0〜4,000ppbの間、より好ましくはニコチンが0〜2,500ppmの間でありTSNAが0〜2,000ppbの間、最も好ましくはニコチンが0〜1,000ppmの間でありTSNAが0〜1,000ppbの間である。また本明細書で述べる方法によって調製した乾燥したBurley葉の実施形態は、そのニコチンの量が0〜1000ppmの間でありかつTSNAが0〜500ppbの間、ニコチンが0〜500ppmの間でありTSNAが0〜250ppbの間、ニコチンが0〜250ppmの間でありTSNAが0〜100ppbの間、ニコチンが0〜100ppmの間でありTSNAが0〜50ppbの間、ニコチンが0〜50ppmの間でありTSNAが0〜5ppbの間でよく、本明細書で述べる乾燥したBurley葉のいくつかの実施形態は、事実上、検出可能な量のニコチンまたはTSNAを含まない。上記いくつかの実施形態で、TSNAの量は、NNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量を指す。
【0036】
同様に、ニコチンの量を減少させた本発明の乾燥したFlueタバコの実施形態は、そのニコチンの量が0〜20,000ppmの間でありかつTSNAが0〜300ppbの間でよく、望ましくはニコチンが0〜15,000ppmの間でありTSNAが0〜250ppbの間、より望ましくはニコチンが0〜10,000ppmの間でありTSNAが0〜200ppbの間、好ましくはニコチンが0〜5,000ppmの間でありTSNAが0〜150ppbの間、より好ましくはニコチンが0〜2,500ppmの間でありTSNAが0〜100ppbの間、最も好ましくはニコチンが0〜1,000ppmの間でありTSNAが0〜50ppbの間である。また、本明細書で述べた乾燥したFlueタバコの実施形態は、そのニコチンの量が0〜500ppmの間でありかつTSNAが0〜25ppbの間、ニコチンが0〜200ppmの間でありTSNAが0〜10ppbの間、ニコチンが0〜100ppmの間でありTSNAが0〜5ppbの間でよく、乾燥したFlueタバコのいくつかの実施形態は、事実上、検出可能な量のニコチンまたはTSNAを含まない。上記いくつかの実施形態で、TSNAの量は、NNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量を指す。
【0037】
さらに、ニコチンの量を減少させた乾燥したOrientalタバコの実施形態は、そのニコチンの量が0〜10,000ppmの間でありかつTSNAが0〜100ppbの間でよく、望ましくはニコチンが0〜7,000ppmの間でありTSNAが0〜75ppbの間、より望ましくはニコチンが0〜5,000ppmの間でありTSNAが0〜50ppbの間、好ましくはニコチンが0〜3,000ppmの間でありTSNAが0〜25ppbの間、より好ましくはニコチンが0〜1,500ppmの間でありTSNAが0〜10ppbの間、最も好ましくはニコチンが0〜500ppmの間でありTSNAは検出されない。また、乾燥したOrientalタバコの実施形態は、そのニコチンの量が0〜250ppmの間でありかつTSNAが検出されず、乾燥したOrientalタバコのいくつかの実施形態は、事実上、検出可能な量のニコチンまたはTSNAを含まない。上記いくつかの実施形態で、TSNAの量は、NNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量を指す。
【0038】
いくつかの実施形態は、対照品種に比べてニコチンの量が少ない乾燥タバコ(たとえばBurley、Flue、Oriental)を構成し、そのニコチンの量は、約2mg/g、1mg/g、0.75mg/g、0.5mg/g未満であり、望ましくは約0.1mg/g未満であり、好ましくは0.08mg/g、0.07mg/g、0.06mg/g、0.05mg/g、0.04mg/g、0.03mg/g、0.02mg/g、0.01mg/m未満である。ニコチンおよびTSNAを減少させたタバコから作製したタバコ製品も実施形態である。「タバコ製品」という用語には、喫煙材料(たとえば紙巻きタバコや葉巻、パイプタバコ)、嗅ぎタバコ、噛みタバコ、ガム、トローチ錠が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
ある場合において、「ニコチンおよび/またはTSNAの量を低下させた」という文言は、本明細書に記載するタバコ植物、乾燥タバコ、およびタバコ製品であって、そのニコチンおよび/またはTSNA(たとえばNNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量)の重量が、同じ方法で成長させ加工し乾燥させた同じ品種よりも少ないものを指す。たとえば野生型の乾燥タバコは、成長させ収穫し乾燥した手法に応じて、そのニコチンの乾燥重量が約1〜4%になり、TSNAの乾燥重量が約0.2%〜0.8%になる。典型的な紙巻きタバコのニコチンは2〜11mgの間であり、TSNAは約5.0μgである。このため本発明のタバコ植物、タバコ、およびタバコ製品は、そのニコチンの乾燥重量が、たとえば0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、0.08%、0.085%、0.09%、0.095%、0.1%、0.15%、0.175%、0.2%、0.225%、0.25%、0.275%、0.3%、0.325%、0.35%、0.375%、0.4%、0.425%、0.45%、0.475%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、および1.0%未満になり、TSNA(たとえばNNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量)の乾燥重量は、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.04%、0.045%、0.05%、0.055%、0.06%、0.065%、0.07%、0.075%、および0.08%未満になる。
【0040】
あるいは、本発明の紙巻きタバコは、たとえばニコチンが0.1mg、0.15mg、0.2mg、0.25mg、0.3mg、0.35mg、0.4mg、0.45mg、0.5mg、0.55mg、0.6mg、0.65mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1.0mg、1.1mg、1.15mg、1.2mg、1.25mg、1.3mg、1.35mg、1.4mg、1.45mg、1.5mg、1.55mg、1.6mg、1.65mg、1.7mg、1.75mg、1.8mg、1.85mg、1.9mg、1.95mg、2.0mg、2.1mg、2.15mg、2.2mg、2.25mg、2.3mg、2.35mg、2.4mg、2.45mg、2.5mg、2.55mg、2.6mg、2.65mg、2.7mg、2.75mg、2.8mg、2.85mg、2.9mg、2.95mg、3.0mg、3.1mg、3.15mg、3.2mg、3.25mg、3.3mg、3.35mg、3.4mg、3.45mg、3.5mg、3.55mg、3.6mg、3.65mg、3.7mg、3.75mg、3.8mg、3.85mg、3.9mg、3.95mg、4.0mg、4.1mg、4.15mg、4.2mg、4.25mg、4.3mg、4.35mg、4.4mg、4.45mg、4.4mg、4.45mg、4.5mg、4.55mg、4.6mg、4.65mg、4.7mg、4.75mg、4.8mg、4.85mg、4.9mg、4.95mg、5.0mg、5.5mg、5.7mg、6.0mg、6.5mg、6.7mg、7.0mg、7.5mg、7.7mg、8.0mg、8.5mg、8.7mg、9.0mg、9.5mg、9.7mg、10.0mg、10.5mg、10.7mg、および11.0mg未満であり、TSNA(たとえばNNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量)は、0.001ug、0.002ug、0.003ug、0.004ug、0.005ug、0.006ug、0.007ug、0.008ug、0.009ug、0.01ug、0.02ug、0.03ug、0.04ug、0.05ug、0.06ug、0.07ug、0.08ug、0.09ug、0.1ug、0.15ug、0.2ug、0.25ug、0.3ug、0.336ug、0.339ug、0.345
ug、0.35ug、0.375ug、0.4ug、0.414ug、0.45ug、0.5ug、0.515ug、0.55ug、0.555ug、0.56ug、0.578ug、0.58ug、0.6ug、0.611ug、0.624ug、0.65ug、0.7ug、0.75ug、0.8ug、0.85ug、0.9ug、0.95ug、1.0ug、1.1ug、1.114ug、1.15ug、1.2ug、1.25ug、1.3ug、1.35ug、1.4ug、1.45ug、1.5ug、1.55ug、1.6ug、1.65ug、1.7ug、1.75ug、1.8ug、1.85ug、1.9ug、1.95ug、2.0ug、2.1ug、2.15ug、2.2ug未満である。
【0041】
思いがけないことであるが、植物内部のニコチン濃度を低下させるためのいくつかの方法は、ニトロソアミン、特にTSNAを実質的に含まないタバコを生成するのに適することを発見した。同様に、ノルニコチンを含めたその他のアルカロイドの濃度を低下させるどの方法も、ニトロソアミン、特にTSNAを実質的に含まないタバコを生成するのに適する。記述したように、本発明は、タバコ製品の発癌性を低下させる方法を含み、この方法は、本明細書で述べたように乾燥タバコを調製すること、および前記乾燥タバコからタバコ製品を作製することを含んだ方法を含み、それによって、前記タバコ製品の発癌性を低下させる。本発明のその他の実施形態は、対照品種に比べて発癌性物質の量を低下させかつ/またはタバコを吸う人のTSNAまたはTSNA代謝産物の量を低下させるタバコ製品を作製するために、本明細書に記載の乾燥タバコを使用することを含む。
【0042】
いくつかの実施形態で、たとえば本明細書で述べたタバコ喫煙製品では、タバコの煙の副流煙および主流煙に曝されたヒトに対するそのようなタバコの副流煙または主流煙による発癌性が低下する。本明細書に記載の遺伝子組換えした乾燥タバコを、熱分解を受ける製品に含ませることによって、たとえば前記製品によって生成される副流煙および/または主流煙は、そこに含まれるTSNAおよび/またはニコチンの量が低下する。このため、本明細書に記載の乾燥タバコを使用して、副流煙および/または主流煙に含まれるTSNAに量が少ないタバコ喫煙製品を作製することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、たとえば本明細書に記載の遺伝子組換えタバコを含んだタバコ製品から出る主流煙または副流煙中の、NNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量は、約0〜5.0μg/g、0〜4.0μg/g、0〜3.0μg/g、0〜2.0μg/g、0〜1.5μg/g、0〜1.0μg/g、0〜0.75μg/g、0〜0.5μg/g、0〜0.25μg/g、0〜0.15μg/g、0〜0.1μg/g、0〜0.05μg/g、0〜0.02μg/g、0〜0.015μg/g、0〜0.01μg/g、0〜0.005μg/g、0〜0.002μg/g、または0〜0.001μg/gの間である。すなわち、いくつかの実施形態は遺伝子組換えしたBurleyタバコであり、前記Burleyタバコを含むタバコ製品から生成された副流煙または主流煙は、その主流煙または副流煙に含まれるNNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量が、約0〜5.0μg/g、0〜4.0μg/g、0〜3.0μg/g、0〜2.0μg/g、0〜1.5μg/g、0〜1.0μg/g、0〜0.75μg/g、0〜0.5μg/g、0〜0.25μg/g、0〜0.15μg/g、0〜0.1μg/g、0〜0.05μg/g、0〜0.02μg/g、0〜0.015μg/g、0〜0.01μg/g、0〜0.005μg/g、0〜0.002μg/g、または0〜0.001μg/の間である。
【0044】
その他の実施形態は、遺伝子組換えしたFlueタバコに関し、前記Flueタバコを含むタバコ製品から生成された副流煙または主流煙は、その主流煙または副流煙に含まれるNNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量が、約0〜5.0μg/g、0〜4.0μg/g、0〜3.0μg/g、0〜2.0μg/g、0〜1.5μg/g、0〜1.0μg/g、0〜0.75μg/g、0〜0.5μg/g、0〜0.25μg/g、0〜0.15μg/g、0〜0.1μg/g、0〜0.05μg/g、0〜0.02μg/g、0〜0.015μg/g、0〜0.01μg/g、0〜0.005μg/g、0〜0.002μg/g、または0〜0.001μg/の間である。
【0045】
別の実施形態は、遺伝子組換えしたOrientalタバコに関し、前記Orientalタバコを含むタバコ製品から生成された副流煙または主流煙は、その主流煙または副流煙に含まれるNNN、NAT、NAB、およびNNKを合わせた分量が、約0〜5.0μg/g、0〜4.0μg/g、0〜3.0μg/g、0〜2.0μg/g、0〜1.5μg/g、0〜1.0μg/g、0〜0.75μg/g、0〜0.5μg/g、0〜0.25μg/g、0〜0.15μg/g、0〜0.1μg/g、0〜0.05μg/g、0〜0.02μg/g、0〜0.015μg/g、0〜0.01μg/g、0〜0.005μg/g、0〜0.002μg/g、または0〜0.001μg/の間である。
【0046】
ニコチンおよびTSNAの量が低下したタバコ製品を製造する好ましい方法は、ニコチンおよび/またはノルニコチンまたはその他のアルカロイドの濃度を低下させることを対象として遺伝子操作することを含む。ニコチン合成経路に関わるどの酵素も、ニコチンの濃度、および任意選択でノルニコチンを含むその他のアルカロイドの濃度を低下させるための遺伝子操作に適した標的となることができる。ニコチンおよび/またはニトロソアミン、特にTSNAの量を低下させたタバコを生成するための遺伝子操作に適した標的には、プトレッシンN-メチルトランスフェラーゼ、N-メチルプトレッシンオキシダーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、S-アデノシルメチオニンシンテターゼ、NADHデヒドロゲナーゼ、ホスホリボシルアントラニル酸イソメラーゼ、またはキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)が含まれるがこれらに限定されない。さらに、ニコチン合成経路への前駆体の流れを調節する酵素は、ニコチンおよびニトロソアミン、特にTSNAの量を低下させたタバコを生成するための遺伝子操作に適した標的である。遺伝子操作の適切な方法は当技術分野で知られており、たとえば、酵素の産生を減少させるのにアンチセンスおよびセンス抑圧技術を使用すること、ならびにたとえばT-DNA挿入またはEMS突然変異誘発を利用して遺伝子機能を妨害するランダムまたは標的突然変異誘発を利用することを含む。
【0047】
例として、ニコチンおよびTSNAの量が低下したタバコは、5'から3'の方向に、植物細胞内で作動可能なプロモーターと、ニコチン合成経路内で酵素をコードするDNA配列の一部またはその相補体を含有するDNAとを有する外因性DNA構成体に、選択されたタバコの品種(好ましくはBurley 21)の少なくとも1個のタバコ細胞を曝したタバコ植物から生成する。DNAは、前記プロモーターに作動可能に結合しており、タバコ細胞をDNA構成体で形質転換する。形質転換した細胞は、ネガティブ選択またはポジティブ選択の技法を使用して選択し、少なくとも1種のタバコ植物を、形質転換した細胞から再生する。再生したタバコ植物またはその一部を分析して、存在するニコチンおよび/またはTSNAの量を決定することが好ましく、これらの値を、好ましくは同じ品種の対照タバコ植物または部分に含まれるニコチンおよび/またはTSNAの量と比較することができる。
【0048】
ニコチン合成経路で酵素をコードするDNA配列の一部を有するDNA構成体は、酵素のコード配列全体、この配列の相補体、またはその任意の部分を有してよい。ニコチン合成経路で酵素をコードするDNA配列の一部、またはその相補体は、少なくとも25、または好ましくは50、または75、または100、または150、または250、また500、または750、または1000、または1500、または2000、または2500、または5000、または酵素のコード配列全体、またはその相補体を有してよい。したがってこれらのDNA構成体は、アンチセンスまたはコサプレッションメカニズムによって、ニコチン合成経路での内因性酵素の産生を妨害する能力を持つ。アンチセンス構造とコサプレッション構造の両方が、タバコ植物に含まれるニコチンおよび/またはニトロソアミンの濃度を低下させるのに効果的であることも企図される。
【0049】
好ましい実施形態で、ニコチン合成経路に関与する酵素は、たとえばプトレッシンN-メチルトランスフェラーゼ、N-メチルプトレッシンオキシダーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、S-アデノシルメチオニンシンテターゼ、NADHデヒドロゲナーゼ、ホスホリボシルアントラニル酸イソメラーゼ、またはキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)でよい。好ましい実施形態で、酵素はQPTaseである。ニコチン合成経路で酵素をコードするDNA配列のセグメントは、アンチセンス方向またはセンス方向にあるものでよい。特に好ましい実施形態で、酵素はQPTaseである。
【0050】
1つの手法では、配列番号2の植物キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)をコードする新規なcDNA配列(配列番号1)を使用する。QPTase活性はニコチン含量に厳密に相関するので、植物の根に含まれるQPTaseの濃度が低下した(野生型植物での濃度に比べて)遺伝子導入タバコ植物を構成することによって、葉に含まれるニコチンの濃度が低下した植物が得られる。本発明の実施形態は、そのような遺伝子導入植物を生成するための方法および核酸構成体、ならびに遺伝子導入植物そのものを提供する。そのような方法は、タバコの根に含まれるQPTaseの量を低下させるアンチセンスNtQPT1 RNAの発現を含む。
【0051】
本発明の態様は、QPTaseまたはQPTaseアンチセンスRNA分子をコードするセンスおよびアンチセンス組換えDNA分子と、これらの組換えDNA分子を含むベクター、ならびにこれらのDNA分子およびベクターで形質転換した遺伝子導入植物細胞および植物にも関する。本明細書に記載の遺伝子導入タバコ細胞および植物は、それらのニコチンおよび/またはTSNAの量が、非組換えまたは対照のタバコ細胞および植物に比べて少ないことを特徴とする。
【0052】
本明細書で述べるタバコ植物は、従来の成長および収穫技法(たとえば摘心を行いまたは摘心を行わず、花の袋掛けをしまたは花の袋掛けをせず、肥料の富む土壌での栽培または肥料なしの土壌での栽培)に適しており、収穫した葉および茎は、パイプ、葉巻、紙巻きタバコ、および噛みタバコであって、葉タバコ、小刻みタバコまたは刻みタバコを含めた任意の形をとるものを含むがこれらに限定されない任意の伝統的なタバコ製品での使用に適している。また、ニコチンおよび/またはニトロソアミノの量がさまざまな、広範囲にわたるタバコ製品が作製されるように、本明細書で述べる低ニコチンおよび/またはTSNAタバコを加工して、従来のタバコとブレンドできることも企図される。これらのブレンドしたタバコ製品は、消費者を高ニコチンおよびTSNA製品から低ニコチンおよびTSNA製品にゆっくりと移行させるように、タバコ製品禁煙プログラムで使用することができる。本発明のいくつかの実施形態は、ニコチンおよび/またはニトロソアミンの濃度が異なる2種以上のタバコ製品を含んだ禁煙キットを含む。たとえば喫煙者はそのプログラムを、ニコチンが5mgでニトロソアミンが0.3μgであるブレンドした紙巻きタバコから始め、消費者が事実上ニコチンおよびニトロソアミンを含まない紙巻きタバコしか吸わないと決心するかまたは吸うことを完全に止めるまで、徐々に、ニコチンが3mgでニトロソアミンが0.2μgである紙巻きタバコへと移行したその後に、ニコチンが2mgでニトロソアミンが0.1μgである紙巻きタバコにし、その後、ニコチンが1.0mgでニトロソアミンが0.05μgの紙巻きタバコに、さらにニコチンが0.05mgでTSNAが検出不可能な紙巻きタバコへと移行することができる。このように本明細書で述べるブレンド紙巻きタバコは、ヒトに対する発癌性を段階的に低下させる手法の基礎を提供する。本明細書で述べる禁煙キットの構成要素は、喫煙材料(たとえば紙巻きタバコや葉巻、パイプタバコ)、嗅ぎタバコ、噛みタバコ、ガム、トローチ錠を含むがこれらに限定されないその他のタバコ製品を含んでよい。
【0053】
本発明者等は、TobRD2遺伝子(Conkling他、Plant Phys.93、1203(1990)参照)がNicotiana tabacum QPTaseをコードすることを発見し、ここではNtQPT1(以前はTobRD2と呼んだ)のcDNA配列と、コードされた酵素のアミノ酸配列を提供する。また本明細書で述べる技術の態様はPCT/US98/11893にも記載されており、その全体を参照により特に本明細書に援用する。NtQPT1アミノ酸配列をGenBankデータベースと比較することにより、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)をコードする細菌タンパク質と同様の限られた配列が明らかにされる(図3)。
【0054】
キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼは、原核生物と真核生物の両方におけるde novoニコチンアデニンジヌクレオチド(NAD)生合成に必要である。タバコでは、高濃度のQPTaseが根から検出され、葉では検出されない。NtQPT1がQPTaseをコードしたこと決定するため、本発明者等は、Escherichia coli細菌株(TH265)、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(nadC)が不足している変異体を利用した。この変異体は、ニコチン酸が不足している最小培地では成長することができない。しかし、この細菌株でのNtQPT1タンパク質の発現によって、NadC+表現型が得られ(図4)、NtQPT1がQPTaseをコードすることが確認された。
【0055】
NtQPT1定常状態でのmRNA濃度およびニコチン濃度に対する、タバコのNiclおよびNic2変異体の影響ならびにタバコ植物の摘心の影響を決定した(開花の始まりに摘心を行うことによって頂芽優性を排除すると、タバコでのニコチンの生合成および輸送のレベルが増大することは周知であり、これはタバコの生産で標準的に実施されることである)。NTQPT1が実際にニコチン生合成に関与する場合、(1)NtQPT1 mRNA濃度はnicl/nic2ダブル変異体で低くなり、(2)NtQPT1 mRNA濃度は摘心後に高くなることが予想される。nicl/nic2ダブル変異体でのNtQPT1 mRNA濃度は、野生型の場合の約25%であることがわかった(図5)。さらに、摘心から6時間以内に、タバコ植物に含まれるNtQPT1 mRNAの濃度が約8倍に増大した。したがってNtQPT1は、ニコチン生合成経路で鍵となる調節遺伝子であることが決定された。次のセクションでは、遺伝子導入タバコ植物細胞と遺伝子導入タバコ植物について述べる。
【0056】
遺伝子導入植物細胞および植物
植物細胞ゲノムにおける遺伝子発現の調節は、宿主内で機能するプロモーターの転写制御下で、異種DNAを組み込むことによって実現することができ、転写された異種DNAの鎖は、調節する内因性遺伝子から転写されるDNAの鎖に相補的なものである。アンチセンスDNAと呼ばれる導入されたDNAは、天然に生ずる(内因性の)mRNAに相補的で内因性mRNAの発現を阻害するRNA配列を提供する。アンチセンスのメカニズムは完全にわかっていないが、アンチセンス構造を使用して遺伝子発現を調節できることが知られている。
【0057】
本発明のいくつかの方法で、アンチセンス生成物は、天然に生ずる標的RNAのコード部分または非コード部分あるいはその両方に相補的でよい。アンチセンス構造は、適切な手法で植物細胞に導入することができ、アンチセンス配列の誘導転写または構成転写のため植物ゲノムに組み込むことができる。
【0058】
本明細書で使用する外因性または異種DNA(またはRNA)は、人為的に細胞(または細胞の前身)に導入されたDNA(またはRNA)を指す。そのような異種DNAは、形質転換された細胞内に自然に見られる配列のコピー、またはその断片でよい。形質転換していないタバコ植物または対照のタバコ植物あるいはその一部に比べてQPTase濃度が低下し、またニコチンおよびTSNAの量が低下したタバコ植物を生成するため、作動可能に結合した適切な調節配列と共に、アンチセンス方向に部分QPT cDNA配列、完全長QPT cDNA配列、部分QPT染色体配列、または完全長QPT染色体配列を含んだ外因性QPTアンチセンス転写単位で、タバコ細胞を形質転換することができる。適切な調節配列は、形質転換する植物の内部で作動可能な転写開始配列(「プロモーター」)と、ポリアデニル化/転写終結配列を含む。次いで制限地図作製やサザンブロットハイブリダイゼーション、ヌクレオチド配列分析などの標準的な技法を使用して、制限配列に作動可能に結合したアンチセンス方向にQPTase配列を持つクローンを同定する。
【0059】
次いで従来の技法を使用して、首尾良く形質転換した細胞からタバコ植物を再生する。使用したアンチセンス配列は内因性配列に相補的であることが最も好ましいが、外因性および内因性の配列に少し変化を加えたものも許容される。アンチセンスDNA配列は、以下に述べるストリンジェントな条件下、調節する細胞の内因性配列に結合可能な程度まで十分に類似している配列であることが好ましい。
【0060】
特異的酵素の通常の量よりも少ないことを特徴とする遺伝子導入植物を作製するために、アンチセンス技術が数々の実験室で使用されてきた。たとえば、花の色素の生合成経路の酵素であるカルコンシンターゼの濃度が低い植物は、タバコおよびペチュニアのゲノムにカルコンシンターゼアンチセンス遺伝子を挿入することによって生成してきた。これらの遺伝子導入タバコおよびペチュニア植物は、通常の色よりも薄い花を咲かせる(Van der Krol他、「An Anti-Sense Chalcone Synthase Gene in Transgenic Plants Inhibits Flower Pigmentation」、Nature、333、第866〜69頁(1988))。また、アンチセンスRNA技術を使用して、トマトの酵素ポリガラクツロナーゼの産生を阻害し(Smith他、「Antisense RNA Inhibition of Polygalacturonase Gene Expression in Transgenic Tomatoes」、Nature、334、第724〜26頁(1988);Sheehy他、「Reduction of Polygalacturonase Activity in Tomato Fruit by Antisense RNA」、Proc.NM.Acad SU USA、85、第8805〜09頁(1988))、タバコの酵素リブロースビスリン酸カルボキシラーゼの小さいサブユニットの産生を阻害する(Rodenrmel他、「Nuclear-Organelle Interactions:Nuclear Antisense Gene Inhibits Ribulose Bisphosphate Carboxylase Enzyme Levels in Transformed Tobacco Plants」、Cell、55、第673〜81頁(1988))のにも成功している。
【0061】
あるいは、所与の酵素の通常の量よりも多いことを特徴とする遺伝子導入植物は、センス(すなわち通常の)方向にその酵素に関する遺伝子で植物を形質転換することによって、生成することができる。本発明の遺伝子導入タバコ植物中のニコチン濃度は、標準的なニコチンアッセイにより検出することができる。形質転換していない対照植物に比べてQPTaseの濃度が低い形質転換植物は、それに相応して対照よりもニコチン濃度が低くなり、形質転換していない対照植物に比べてQPTaseの濃度が高い形質転換植物は、それに相応して対照よりもニコチン濃度が高くなる。
【0062】
本発明のアンチセンス法で使用した異種配列は、QPTase mRNA配列全体にまたはその一部に相補的なRNA産物が産生されるよう、選択することができる。配列は、天然のメッセンジャーRNAの任意の連続する配列に相補的でよく、すなわち5'末端またはキャッピング部位に隣接し、キャッピング部位の下流にあり、キャッピング部位と開始コドンの間にある内因性mRNA配列に相補的でよく、非コード領域のすべてまたは一部のみを包含してよく、非コード領域とコード領域を架橋してよく、コード領域のすべてまたは一部に相補的、コード領域のC末端に相補的、またはmRNAの3'末端非翻訳領域に相補的でよい。適切なアンチセンス配列は、少なくとも約13〜約15ヌクレオチド、少なくとも約16〜約21ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約75ヌクレオチド、少なくとも約100ヌクレオチド、少なくとも約125ヌクレオチド、少なくとも約150ヌクレオチド、少なくとも約200ヌクレオチド、またはそれ以上のものからでよい。さらに、配列は、その3'または5'末端まで延長しまたは短くすることができる。
【0063】
特定のアンチセンス配列とそのアンチセンス配列の長さは、所望の阻害の程度やアンチセンス配列の安定性などに応じて異なる。当業者なら、当技術分野で利用可能な技法および本明細書で提供される情報を使用して、適切なQPTaseアンチセンス配列を選択できることが理解されよう。図2Aおよび本明細書の配列番号1を参照すると、本発明のオリゴヌクレオチドは、レシピエント植物細胞に形質転換するときに所望の効果が得られるよう十分な任意の長さを持つ、アンチセンス方向にQPTase cDNA配列に連続する断片でよい。
【0064】
本発明は、ニコチン生成のセンスコサプレッション法にも使用することができる。本発明を実施する際に使用されるセンスDNAは、植物細胞内で発現するときに、その植物細胞内で、本明細書で述べたように植物QPTaseタンパク質の自然な発現を抑圧するのに十分な長さのものである。そのようなセンスDNAは、本質的に、QPTase酵素をコードするゲノムDNAまたは相補的DNAの全体あるいはその断片でよく、そのような断片の長さは、典型的な場合、少なくとも15ヌクレオチドである。細胞内の生来の遺伝子の発現を抑制する、センスDNAの長さを確認する方法は、当業者が利用することができる。
【0065】
本発明の代替の実施形態では、酵素RNA分子(すなわち「リボザイム」)をコードするDNAセグメントを含有するDNA構成体で、Nicotiana植物細胞を形質転換するが、この酵素RNA分子は、本明細書で述べる植物QPTaseをコードするDNAのmRNA転写を対象とする(切断する)ものである。リボザイムは、標的mRNAの接触可能な領域に結合する基質結合ドメインと、RNAの切断を触媒して翻訳およびタンパク質産生を妨げるドメインを含有する。結合ドメインは、標的mRNA配列に相補的なアンチセンス配列を含んでよく、触媒モチーフは、ハンマーヘッドモチーフ、またはヘアピンモチーフなどのその他のモチーフでよい。RNA標的内のリボザイム切断部位は、リボザイム切断部位(たとえばGUA、GUU、またはGUC配列)に関して標的分子を走査することにより、最初に特定することができる。特定した後、切断部位を含有する標的遺伝子の領域に対応する、15、20、30、またはそれ以上のリボヌクレオチドを含んだ短いRNA配列を、予測される構造的特徴に関して評価することができる。候補標的の適合性も、当技術分野で知られているリボヌクレアーゼタンパク質アッセイを使用して、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの容易性を試験することにより評価することができる。酵素RNA分子をコードするDNA配列は、既知の技法に従って生成することができる。たとえば、T.Cech他の米国特許第4,987,071号;Keene他の米国特許第5,559,021号;Donson他の米国特許第5,589,367号;Torrence他の米国特許第5,583,032号;Joyce他の米国特許第5,580,967号;Gold他の米国特許第5,595,877号;Wagner他の米国特許第5,591,601号;および米国特許第5,622,854号を参照されたい(その開示全体を参照により本明細書に援用する)。
【0066】
植物細胞内でのそのような酵素RNA分子の産生と、QPTaseタンパク質産生の妨害により、アンチセンスRNA分子の産生と本質的に同じ手法で、すなわち酵素を産生する細胞内のmRNAの翻訳を妨害することによって、植物細胞内でのQPTase活性が低下する。「リボザイム」という用語は、本明細書では、酵素(エンドリボヌクレアーゼ)として機能するRNA含有核酸について述べるために使用し、「酵素RNA分子」と同義に使用してよい。本発明はさらに、リボザイムをコードするDNA、発現ベクターに挿入されたリボザイムをコードするDNA、そのようなベクターを含有する宿主細胞、およびリボザイムを使用して植物内でのQPTase産生を低下させる方法を含む。
【0067】
本発明を実施する際に使用される核酸配列は、配列番号1と同様の配列を有しキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするものを含む。この定義は、QPTaseタンパク質に含まれる天然の対立遺伝子の変種を包含するものである。このため、配列番号1のDNAにハイブリダイズしてQPTaseの発現、特に植物QPTase酵素の発現をコードするDNA配列も、本発明を実施するのに使用することができる。タバコQPT酵素には多数の形が存在してよい。酵素に多数の形が存在するのは、単一の遺伝子産物の翻訳後修飾に起因し、またはNtQPT1遺伝子に多数の形があることに起因する。
【0068】
QPTase活性を有するタンパク質の発現をコードするその他のDNA配列を、配列番号1のDNAに、または配列番号2として与えられたタンパク質をコードするその他のDNAにハイブリダイズさせる条件は、決まった手法で決定することができる。たとえばそのような配列と、配列番号2として与えられたタンパク質をコードするDNAとのハイブリダイゼーションは、本明細書では、標準的なin situハイブリダイゼーションアッセイで、ストリンジェンジーを低下させた条件下でまたはさらにストリンジェントな条件下で(たとえば、洗浄ストリンジェンシーが0.3M NaCl、0.03Mクエン酸ナトリウム、0.1% SDS、60℃またはさらに70℃である条件下で)実施することができる。J.Sambrook他、Molecular Cloning、A Laboratory Manual(第2版、1989)(Cold Spring Harbor Laboratory)を参照されたい。一般にそのような配列は、配列番号1として本明細書で与えられた配列、または配列番号2のタンパク質をコードするDNA配列に対して、少なくとも65%、75%、80%、85%、90%、またはさらに95%以上類似することになる(配列の類似性の決定は、2つの配列が最大限一致するように並べて行い、最大限一致させることによって、2つの配列のそれぞれのギャップが一致する。ギャップの長さは10以下が好ましく、ギャップの長さは5以下がより好ましく、ギャップの長さは2以下がさらに好ましい。)。
【0069】
mRNAの濃度がポリ(A)RNAの約0.05%程度に低いcDNAクローンの単離を可能にする、ディファレンシャルハイブリダイゼーション法が利用可能である。M.Conkling他、Plant Physiol.93、1203〜1211(1990)を参照されたい。簡単に言うと、植物組織(たとえば、根および/または葉)から逆転写したmRNAの1本鎖cDNAプローブを使用して、cDNAライブラリーをスクリーニングする。ディファレンシャルスクリーニングでは、ニトロセルロースまたはナイロン膜を5×SSCに浸漬し、96ウェル吸引マニホールドに配置し、一晩静置した培養物150μLをマスタープレートから各ウェルに移し、すべての液体がフィルタを通過するまで真空にする。マルチプルピペッターを使用して、変性溶液(0.5M NaOH、1.5M NaCl)約150μLを各ウェルに入れ、約3分静置する。上述のように吸引し、フィルタを除去し、0.5M Tris-HCl(pH8.0)、1.5M NaClで中和する。次いで真空中で2時間ベークし、適切なプローブと共にインキュベートする。ナイロン膜フィルタを使用し、マスタープレートを7% DMSO中に-70℃で保存することによって、フィルタは、数年間保存した後に回収した多数のプローブおよび適切なクローンで、多数回スクリーニングすることができる。
【0070】
本明細書で使用する「遺伝子」という用語は、(1)プロモーターを含んだ上流(5')調節シグナル、(2)遺伝子の産物、タンパク質、またはRNAを特定するコード領域、(3)転写終結およびポリアデニル化シグナルを含んだ下流領域、および(4)効率的で特異的な発現に必要な関連配列を組み込むDNA配列を指す。本発明のDNA配列は、本質的に、本明細書で提供される配列(配列番号1)、あるいはこれらの遺伝子の対立遺伝子または多型の変種を表す同等なヌクレオチド配列、あるいはこれらのコード領域からなるものでよい。本発明の明細書および特許請求の範囲で「実質的な配列の類似性」という文言を使用する場合、本明細書に開示しかつ特許請求する実際の配列とわずかに異なる配列であってそれほど大きくは異ならないDNA、RNA、またはアミノ酸配列を、本発明の配列と均等であるとみなすことを意味する。この点に関し、「わずかに異なる配列であってそれほど大きくは異ならない」とは、「類似する」配列(すなわち、本明細書に開示し特許請求するDNA、RNA、またはタンパク質との実質的な配列の類似性を有する配列)が、本発明で開示し特許請求する配列に機能的に均等であることを意味する。機能的に均等な配列は、本明細書に開示し特許請求する核酸およびアミノ酸組成物と実質的に同じ組成物が生成されるように、実質的に同じ手法で機能することになる。
【0071】
本明細書で提供されるDNA配列は、さまざまな宿主細胞に形質転換することができる。所望の成長特性および取扱い特性を有する適切な宿主細胞の種類は、当技術分野で容易に入手可能である。DNA、RNA、ポリペプチド、またはタンパク質の修飾因子として本発明の明細書および特許請求の範囲で「単離した」または「実質的に純粋な」という文言を使用した場合は、そのように設計されたDNA、RNA、ポリペプチド、またはタンパク質を、そのin vivo細胞環境から人為的に分離したことを意味する。
【0072】
本明細書で使用する「生来のDNA配列」または「自然のDNA配列」は、非遺伝子導入細胞または組織から単離することができるDNA配列を意味する。生来のDNA配列は、部位特異的突然変異誘発などによって人工的に変化を加えなかったものである。生来のDNA配列が特定されると、当技術分野で知られている組換えDNAの手法を使用して、生来のDNA配列を有するDNA分子を化学的に合成しまたは生成することができる。本明細書で使用する生来の植物DNA配列は、非遺伝子導入植物細胞または組織から単離することができるものである。本明細書で使用する生来のタバコDNA配列は、非遺伝子導入タバコ細胞または組織から単離することができるものである。
【0073】
本発明のDNA構成体または「転写カセット」は、5'から3'の転写方向に、本明細書で論じたプロモーターと、このプロモーターに作動可能に結合された本明細書で論じたDNA配列と、任意選択で、RNAポリメラーゼに対する停止シグナルおよびポリアデニル化シグナルを含む終結配列を含む。これら調節領域のすべては、形質転換する組織の細胞内で作動可能であるべきである。任意の適切な終結シグナルは、本発明を実施するのに使用することができ、その例には、ノパリンシンターゼ(nos)ターミネーター、オクタピンシンターゼ(ocs)ターミネーター、CaMVターミネーター、または生来の終結シグナルであって、転写開始領域と同じ遺伝子から誘導されまたは異なる遺伝子から誘導されたものが含まれるが、これらに限定されない。たとえば、前掲のRezian他(1988)、および前掲のRodermel他(1988)を参照されたい。
【0074】
本明細書で使用する「作動可能に結合」という用語は、1つの配列の機能が他の配列の影響を受けるように結合している単一のDNA分子上のDNA配列を指す。このためプロモーターは、DNAの転写に影響を与えることができるとき、そのDNAに作動可能に結合している(すなわちDNAは、プロモーターの転写制御下にある)。プロモーターは、転写されたDNA配列の「上流」にあると言え、すなわちプロモーターの「下流」にあると言える。
【0075】
転写カセットは、少なくとも1つの複製系も有するDNA構成体に含ませることができる。便宜上、ColE1やpSC101、pACYC184などのEscherichia coli内で機能する複製系を有することが一般的である。このように、各操作後の各段階で、得られた構成体をクローニングし、配列決定し、操作の正確さを決定することができる。これに加え、あるいはE.coli複製系に代えて、たとえばpRK290のようなP-1不和合性プラスミドの複製系など、広範囲にわたる宿主の複製系を使用することができる。複製系の他、しばしば、1つまたは複数の宿主に役立てることができる少なくとも1つのマーカーが存在し、あるいは個々の宿主ごとに異なるマーカーが存在することになる。すなわち、原核宿主での選択のため1つのマーカーを使用することができ、一方、真核宿主、特に植物宿主での選択のため別のマーカーを使用することができる。マーカーは、殺生物剤(抗生物質や毒素、重金属など)に対する保護になり、栄養要求宿主に原栄養性を与えることによって相補性をもたらすことができ、かつ/または植物内での新規な化合物の産生によって目に見える表現型をもたらすことができる。
【0076】
さまざまな構成体、転写カセット、マーカーなどを含むさまざまな断片は、適切な複製系の制限酵素切断と、利用可能な部位への特定の構成体または断片の挿入によって、続けて導入することができる。ライゲーションおよびクローニングの後、DNA構成体を単離して、さらに操作をすることができる。これらの技法のすべては、J.Sambrook他のMolecular Cloning、A Laboratory Manual(第2版、1989)(Cold Spring Harbor Laboratory)に実証されるように、文献に詳細に例示されている。
【0077】
本発明の核酸構成体で植物組織を形質転換するのに使用することができるベクターには、Agrobacteriumベクターおよび弾道ベクター、ならびにDNAで媒介される形質転換に適したベクターが含まれる。「プロモーター」という用語は、コード配列の効率的な発現に必要なシグナルを組み込んだDNA配列の領域を指す。これは、RNAポリメラーゼが結合する配列を含んでよいが、そのような配列に限定されず、タンパク質の翻訳の制御に関与する領域と共にその他の調節タンパク質が結合する領域を含んでよい。これらはコード配列も含むことができる。
【0078】
本発明を実施する際に使用されるプロモーターは、構成上活性なプロモーターでよい。植物内で作動可能な非常に数多くの構成上活性なプロモーターが利用可能である。好ましい例は、Cauliflower Mosaic Virus(CaMV)35Sプロモーターであり、これはほとんどの植物組織で構成上発現するものである。代替例として、プロモーターは、以下により詳細に述べるように、根特異的プロモーターまたは根皮層特異的プロモーターでよい。
【0079】
アンチセンス配列は、Cauliflower Mosaic Virus(CaMV)35Sプロモーターを使用して、遺伝子導入タバコ植物で発現した。たとえば、Cornelissen他、「Both RNA Level and Translation Efficiency are Reduced by Anti-Sense RNA in Transgenic Tobacco」、Nucleic Acids Res.17、第833〜43頁;Rezaian他、「Anti-Sense RNAs of Cucumber Mosaic Virus in Trensgenic Plants Assessed for Control of the Virus」、Plant Molecular Biology 11、第463〜71頁(1988);Rodermel他、「Nuclear-Organelle Interactions:Nuclear Antisense Gene Inhibits Ribulose Bisphosphate Carboxylase Enzyme Levels in Transformed Tobacco Plants」、Cell 55、第673〜81頁(1988);Smith他、「Antisense RNA Inhibition of Polyalacturonase Gene Expression in Transgenic Tomatoes」、Nature 334、第724〜26頁(1988);Van der Krol他、「An Anti-Sense Chalcone Synthase Gene in Transgenic Plants Inhibits Flower Pigmentation」、Nature 333、第866〜69頁(1988)を参照されたい。
【0080】
本発明の、形質転換したタバコ細胞および植物でのQPTase発現のために、CaMV 35Sプロモーターを使用することが好ましい。タバコの根のその他の組換え遺伝子の発現に、CaMVプロモーターを使用することが、十分に記載されている(Lam他、「Site-Specific Mutations Alter In Vitro Factor Binding and Change Promotor Expression Pattern in Transgenic Plants」、Proc.Nat.Acad Sci.USA 86、第7890〜94頁(1989);Poulsen他、「Dissection of 5' Upstream Sequences for Selective Expression of the Nicotiana plumbaginifolia rbcS-8B Gene」、Mol.Gen.Genet.214、第16〜23頁(1988))。
【0081】
根の組織でのみ活性なその他のプロモーター(根特異的プロモーター)も、本発明の方法に特に適している。たとえば、Conkling他の米国特許第5,459,252号;Yamamoto他、The Plant Cell、3:371(1991)を参照されたい。TobRD2根-皮層特異的プロモーターも利用することができる。たとえば、現在許可されているConkling他の米国特許出願第08/508,786号;PCT WO 9705261を参照されたい。本明細書で引用するすべての特許は、その全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【0082】
本発明の、形質転換したタバコ細胞および植物の生成に使用される、QPTase組換えDNA分子およびベクターは、優性選択マーカー遺伝子をさらに含んでよい。タバコでの使用に適する優性選択マーカーには、とりわけ、ネオマイシンホスフォトランスフェラーゼ(NPTII)およびヒグロマイシンホスフォトランスフェラーゼ(HPT)をコードする抗生物質耐性遺伝子が含まれる。タバコでの使用に適するその他の周知の選択可能なマーカーには、メトトレキセート耐性ジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする突然変異ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子が含まれる。適切な抗生物質耐性遺伝子を含有するDNAベクター、および対応する抗生物質は、市販されている。
【0083】
形質転換したタバコ細胞は、選ばれた優性選択マーカー遺伝子産物が耐性をもたらす適切な濃度の抗生物質(またはタバコ細胞に対して通常有毒なその他の化合物)を含有する培地に細胞の混合集団を置くことによって、非形質転換細胞の周囲の集団から選択する。このため、形質転換したタバコ細胞だけが生存し、増殖することになる。さらに、Jeffersonによって記述されたポジティブ選択の技法(たとえばWO 00055333;WO 09913085;米国特許第5599670号;第5432081号;第5268463号であって、その全体を参照により本明細書に援用する)を使用することができる。
【0084】
本発明の組換え植物を作製する方法は、一般に、まず再生可能な植物細胞(典型的な場合、再生可能な組織に存在する植物細胞)を提供することを含む。次いで植物細胞を、本発明の転写カセットを含むDNA構成体で形質転換し(本明細書で述べるように)、その形質転換した植物細胞から組換え植物を再生する。以下に述べるように、形質転換ステップは、転写カセットを運ぶ微粒子で植物細胞に衝撃を与えること、細胞を、転写カセットを運ぶTiプラスミドを含有するAgrobacterium tumefaciensに感染させること、または遺伝子導入植物の生成に適した任意のその他の技法を含むがこれらに限定することのない、当技術分野で知られている技法によって実施する。
【0085】
本発明を実施するのに有用な非常に数多くのAgrobacteriumベクター系が知られている。たとえば米国特許第4,459,355号は、Tiプラスミドを含有するAgrobacterium株の影響を受け易い双子葉植物などの植物を形質転換するための方法を開示している。米国特許第4,795,855号には、Agrobacteriumベクターによる木本性植物の形質転換が開示されている。さらに、Schilperoort他の米国特許第4,940,838号は、本発明を実施するのに有用なバイナリーAgrobacteriumベクター(すなわちAgrobacteriumが、T領域ではなくTiプラスミドのvir領域を有する1つのプラスミドと、vir領域ではなくT領域を有する第2のプラスミドを含有するもの)を開示している。
【0086】
本発明のDNA構成体を運ぶ植物細胞の弾道形質転換に適する微粒子は、本明細書で述べる形質転換植物を作製するのにも有用である。この微粒子は植物細胞内に進んで、形質転換植物細胞を生成し、その形質転換植物細胞から植物を再生する。本発明を実施するには、任意の適切な弾道細胞形質転換法およびその装置を使用することができる。例示的な装置および手順は、SanfordおよびWolfの米国特許第4,945,050号と、Christou他の米国特許第5,015,580号に開示されている。弾道形質転換法を使用する場合、転写カセットは、形質転換する細胞内で複製可能でありまたはその細胞に一体化することが可能なプラスミドに組み込むことができる。そのような系内での使用に適する微粒子の例には、1〜5μmの金の球体が含まれる。DNA構成体は、沈澱などの任意の適切な技法により微粒子表面に堆積することができる。
【0087】
植物の種類は、植物細胞プロトプラストのDNA媒介形質転換によって、本発明のDNA構成体で形質転換することができる。植物は、当技術分野で周知の手順に従って、形質転換したプロトプラストから引き続き再生することができる。エレクトロポレーションを介したDNA含有リポソームまたはDNA構成体とタバコプロトプラストとの融合は、当技術分野で知られている(Shillito他、「Direct Gene Transfer to Protoplasts of Dicotyledonous and Monocotyledonous Plants by a Number of Methods,Including Electroporation」、Methods in Enzymology 153、第313〜36頁(1987))。
【0088】
本明細書で使用する形質転換は、外因性DNAで安定に形質転換された遺伝子導入細胞が生成されるように、細胞内に外因性DNAを導入することを指す。当技術分野で周知のタバコ細胞および組織を培養する技法を利用することによって、無傷のタバコ植物が再生されるよう、形質転換細胞を生成する。植物を再生する方法は、形質転換の方法に適合するよう選択する。遺伝子導入タバコ植物中にQPTase配列が安定して存在し配向しているかどうかは、制御交雑によって得られた後代に標準的なDNA分析を行うことにより明らかにされるように、QPTase配列のメンデル遺伝によって確認することができる。形質転換細胞から遺伝子導入タバコ植物を再生した後、従来の植物栽培技法によってかつ余分な実験をせずに、導入されたDNA配列を別のタバコ品種に直ちに移す。
【0089】
たとえば、導入遺伝子の分離を分析するため、再生した形質転換植物(RO)を完全に成長させて、ニコチンおよび/またはTSNA濃度に関して試験をし、自家受粉させR1植物を生成することができる。あるパーセンテージの導入遺伝子を持つR1植物は、導入遺伝子に対するホモ接合体である。ホモ接合R1植物を同定するには、遺伝子導入R1植物を完全に成長させて自家受粉させる。ホモ接合R1植物は、各後代植物が導入遺伝子を持つR2後代を生成し、ヘテロ接合R1の後代では、植物は3:1に分離する。
【0090】
器官発生的であろうと胚形成的であろうと、引き続きクローン増殖が可能な任意の植物組織は、本発明のベクターで形質転換することができる。本明細書で使用する「器官発生」という用語は、分裂中心から茎および根が順次発生するプロセスを意味し、本明細書で使用する「胚形成」という用語は、茎および根が、体細胞からであろうと配偶子からであろうと、協働して(順次ではない)一緒に発生するプロセスを意味する。選択された特定の組織は、形質転換する特定の種類に利用可能でありその種類に最も適したクローン増殖系に応じてさまざまに異なる。例示的な組織標的には、中心葉、花粉、胚、子葉、胚軸、カルス組織、既存の分裂組織(たとえば頂端分裂組織や腋芽、根分裂組織)、および誘発された分裂組織(たとえば子葉分裂組織や胚軸分裂組織)が含まれる。
【0091】
本発明の植物は、さまざまな形をとることができる。植物は、形質転換細胞および非形質転換細胞のキメラでよく、植物は、クローン形質転換体(たとえば、転写カセットを含有するように形質転換したすべての細胞)でよく、植物は、形質転換組織および非形質転換組織の移植片(たとえば、柑橘類の形質転換していない接ぎ木にグラフトした形質転換した根株)を含んでよい。形質転換した植物は、クローン増殖や古典的な栽培技法などのさまざまな手段により、繁殖させることができる。たとえば、第1世代(またはT1)の形質転換植物を自家受粉して、ホモ接合第2世代(またはT2)の形質転換植物を得ることができ、このT2植物は、古典的な栽培技法によってさらに繁殖させることができる。優性選択マーカー(nptIIなど)は、栽培を助けるよう転写カセットに結合することができる。
【0092】
本明細書で使用する作物は、複数の本発明の植物、および1つの農場に一緒に植えられた同じ種類の植物を含む。「農場」とは、一般的な土壌または温室の画地を意味する。このため本発明は、同じ種類および品種の非形質転換植物である同様の作物に比べてQPTase活性が低く、したがってニコチンおよび/またはTSNA濃度が低い植物である作物を生産する方法を提供する。以下の実施例は本発明の例示であり、それに限定されるものではない。
【実施例1】
【0093】
単離および配列決定
TobRD2 cDNA(Conkling他、Plant Phys.93、1203(1990))を配列決定して本明細書では配列番号1とし、推定アミノ酸配列を配列番号2とした。推定アミノ酸配列は、細胞質タンパク質であると予測した。植物QPTase遺伝子はまだ報告されていないが、NtPT1アミノ酸配列とGenBankデータベース(図3)との比較により、ある特定の細菌およびその他のタンパク質との配列類似性が限定されることが明らかされ、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)活性が、S.typhimurium、E.coli、およびN.tabacum遺伝子で実証された。NtQPT1でコードされたQPTaseには、Arabidopsis EST(発現配列タグ)配列(Genbank受入番号F20096)によりコードされた推定ペプチド断片との類似性があり、Arabidopsis QPTase遺伝子の一部を示すことができる。
【実施例2】
【0094】
In-Situハイブリダイゼーション
さまざまな根の組織でのTobRD2 mRNA転写の空間的分布を決定するため、非形質転換植物でin situハイブリダイゼーションを行った。TobRD2のアンチセンス鎖と根の組織のTobRD2 mRNAとのin-situハイブリダイゼーションは、Meyerowitz、Plant Mol.Biol.Rep.5:237(1987)およびSmith他、Plant Mol.Biol.Rep.5:237(1987)に記載されている技法を使用して行った。7日経過したタバコ(Nicotania tabacum L.)実生根をリン酸緩衝グルタルアルデヒドに固定し、Paraplast Plus(Monoject Inc.、St.Louise、MO)に埋め込んで、8ミクロンの厚さに切断することにより、横方向ならびに縦方向のセクションを得た。35S-ATPの存在下でin vitro合成したアンチセンスTobRD2転写物を、プローブとして使用した。標識したRNAをアルカリ処理によって加水分解し、使用前に、100〜200塩基質量平均長さを得た。
【0095】
ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション溶液1ミリリットル当たり約5×106カウント毎分(cpm)で標識したRNAを用い、50%ホルムアルデヒド中、42℃で16時間行った。曝した後、スライドを現像して、明視野および暗視野顕微鏡検査で視覚化した。
【0096】
ハイブリダイゼーションのシグナルは、根の細胞の皮層に局在化した。同じセクションの明視野と暗視野の像を比較すると、TobRD2転写物が根の皮層の実質細胞に局在化していた。表皮、または中心柱にはハイブリダイゼーションのシグナルは見られなかった。
【実施例3】
【0097】
NiclおよびNic2タバコ変異体中のTobRD2 mRNA濃度と、ニコチン濃度との相関
TobRD2定常状態mRNA濃度について、NiclおよびNic2変異体タバコ植物で試験した。NiclおよびNic2は、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性およびプトレッシンメチルトランスフェラーゼ活性を調節することが知られており、ニコチン産生の共優性調節遺伝子である。この結果を図5Aおよび5Bに示すが、TobRD2発現はNiclおよびNic2によって調節されることが示されている。
【0098】
野生型Burley 21タバコ植物(Nicl/Nicl Nic2/Nic2)の根、Nicl-Burley 21(nicl/nicl Nic2/Nic2)の根、Nic2-Burley 21(Nicl/Nicl nic2/nic2)の根、およびNic1-/Nic2-Burley 21(nicl/nicl nic2/nic2)の根からRNAを単離した。
【0099】
4種のBurley 21タバコの系統を、土壌に播いた種子から1カ月間成長させて、温室内の、通気した養分溶液内の水耕チャンバに、1カ月間移した。これらの系統は、2種の低ニコチン遺伝子座以外、同質遺伝子型であり、またその遺伝子型は、Nicl/Nicl Nic2/Nic2;nicl/nicl Nic2/Nic2;Nicl/Nicl nic2/nic2;nicl/nicl nic2/nic2であった。各遺伝子ごとに約20本の植物から根を収穫し、RNA単離用に蓄えた。各遺伝子型からの全RNA(1μg)を、1.1Mホルムアルデヒドを含有する1%アガロースゲルで電気泳動し、Sambrook他(1989)に従ってナイロン膜に移した。この膜を、IP標識したTobRD2 cDNA断片とハイブリダイズした。TobRD2転写物の相対強度を、デンシトメトリーで測定した。図5(べた塗りの棒)は、4種の遺伝子型それぞれに関する相対的な転写物濃度(Nicl/Nicl Nic2/Nic2と比べたもの)を示す。4種の遺伝子型の相対的なニコチン含量(Nicl/Nicl Nic2/Nic2と比べたもの)は、斜線付きの棒で示す。
【0100】
図5は、野生型Burley 21(Nicl/Nicl Nic2/Nic2)に見られる濃度を基準量として使用して、相対的な定常状態TobRD2 mRNA濃度をグラフにより比較する。nicl/nicl nic2/nic2ダブル変異体中のTobRD2 mRNA濃度は、野生型タバコの約25%であった。図5Bは、この実施例で調査したタバコのほぼ同質の遺伝子系統に含まれるニコチンの相対濃度をさらに比較する(べた塗りの棒はTobRD2転写レベルを示し、斜線付きの棒はニコチン濃度を示す)。ニコチン濃度とTobRD2転写レベルとの間には密接な相関関係があった。
【実施例4】
【0101】
配列番号1のDNAを有するQPTaseが不足した細菌変異体の相補性
Escherichia coli株TH265は、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼが不十分な変異体であり(nadC-)、したがって、ニコチン酸が不足している培地では増殖することができない。TH265細胞を、配列番号1のDNAを含有する発現ベクター(pWS161)で形質転換し、または発現ベクター(pKK233)だけで形質転換した。形質転換した細菌の増殖を、TH265(pKK233)形質転換体の増殖と比較し、非形質転換TH265 nadC-変異体の増殖と比較した。増殖は、ME最小培地(ニコチン酸が不足)で、またニコチン酸を加えたME最小培地で比較した。
【0102】
QPTase変異によるE.coli株(nadC)、TH265は、Dr.K.T.Hughesの好意により提供された(Hughes他、J Bact.、175:479(1993))。この細胞をLB培地上に維持し、コンピテント細胞を、Sambrook他(1989)が記述するように調製した。Tacプロモーターの制御下、TobRD2 cDNAをクローニングした状態で、pKK2233に発現プラスミドを構成した(Brosius、1984)。得られたプラスミド、pWS161を、TH265細胞に形質転換した。次いで形質転換した細胞を、ニコチン酸を補った(0.0002%)または補わない最小培地(VogelおよびBonner、1956)寒天平板に塗布した。TH265細胞のみ、およびpKK2233で形質転換したTH265を、対照として使用するため同様の平板上に塗布した。
【0103】
結果を図4に示す。配列番号1のDNAで形質転換したTH265だけが、ニコチン酸が不足している培地で増殖した。これらの結果は、TH265細菌細胞での配列番号1のDNAの発現によって、これらの細胞にNadC+表現型が与えられたことを示しており、この配列が、QPTaseをコードしたことが確認された。したがってTobRD2という名称はNtQPT1に変わった。
【実施例5】
【0104】
タバコ植物の形質転換
アンチセンス方向にある配列番号1のDNAは、植物プロモーター(CaMV 35SまたはTobRD2根-皮層特異的プロモーター)に作動可能に結合して、2つの異なるDNAカセット、CaMV35Sプロモーター/アンチセンス配列番号1とTobRD2プロモーター/アンチセンス配列番号1を生成する。
【0105】
たとえば野生型Burley 21タバコ(Nic1+/Nic2+)やホモ接合Nicl-/Nic2- Burley 21など、形質転換のため、野生型タバコ系統および低ニコチンタバコ系統を選択する。各系統からの複数のタバコ植物細胞を、各DNAカセットを使用して形質転換する。形質転換は、Agrobacteriumベクター、たとえばTiボーダー配列およびnptII遺伝子を運ぶ(カナマイシンに対する耐性を与え、またnosプロモーター(nptII)の制御下で)Agrobacteriumバイナリーベクターを使用して行う。
【0106】
形質転換した細胞を選択し、ROと呼ばれる遺伝子導入タバコ植物中に再生する。RO植物を完全に成長させてニコチン濃度の試験をする。形質転換したタバコ植物のサブセットは、形質転換していない対照植物に比べて著しく低いニコチン濃度を示す。
【0107】
次いでRO植物を自家受粉し、次の世代、R1後代での導入遺伝子の分離について分析する。R1後代を完全に成長させて自家受粉する。R2後代での導入遺伝子の分離は、導入遺伝子に対してどのR1植物がホモ接合するかを示す。
【実施例6】
【0108】
ニコチン濃度が低下したタバコ
Burley 21 LAという品種のタバコを、バイナリーAgrobacteriumベクターpYTY32で形質転換して、低ニコチンタバコ品種、ベクター21-41を生成した。バイナリーベクターpYTY32は、Agrobacterium tumefaciens T-DNAからのNtQPT1 cDNAおよびノパリンシンターゼ(nos)3'末端配列のアンチセンス発現を誘発する2.0kbのNtQPT1根-皮層特異的プロモーターを運搬する。この構成体に関する選択可能マーカーは、カナマイシンに対する耐性をもたらすE.coli Tn5からのネオマイシンホスフォトランスフェラーゼ(nptII)であり、nptIIの発現は、Agrobacterium tumefaciens T-DMAからのnosプロモーターによって引き起こされた。形質転換した細胞、組織、実生は、300μg/mlのカナマイシンを含有するMurashige-Skoog(MS)培地上で増殖できるものを選択した。Burley 21 LAは、Burley 21に比べてニコチンの濃度が著しく低下したBurley 21の品種である(すなわち、Burley 21 LAのニコチン濃度はBurley 21の8%である。Legg他、Can J Genet Cytol、13:287〜91(1971);Legg他、J Hered、66:213〜17(1969)参照)。
【0109】
Burley 21 LA(T0)の、100個の独立したpYTY32形質転換体を、自家受粉させた。自家受粉植物(T1)の後代を、カナマイシンを含有する培地で発芽させ、カナマイシン耐性の分離を評価した。3:1に分離するT1後代が単一の遺伝子座での形質転換から得られ、これを別の分析にかけた。
【0110】
3:1に分離するT1後代のニコチン濃度を、マイクロアッセイ技法を使用して定性的に測定した。約200mgの新鮮なタバコの葉を収集し、1mlの抽出溶液に散布した(抽出溶液:1mlの酢酸を100mlのH2Oに溶かしたもの)。ホモジェネートを14,000×gで5分間遠心分離し、上澄みを透明なチューブに取り出して、そこに以下の試薬を添加した。すなわち、100μL NH4OAC(5g/100ml H2O+50μL Brij 35)、500μL臭化シアン(Sigma C-6388、0.5g/100ml H2O+50μL Brij 35)、400μLアニリン(0.3ml緩衝アニリンを100μL NH4OAC+50μL Brij 35に溶かしたもの)である。ニコチン標準ストック溶液10mg/mlを抽出溶液に溶かしたものを調製して希釈し、較正用の一連の標準物質を生成した。460nmでの吸光度を読み取り、標準較正曲線を使用して試験サンプルのニコチン含量を決定した。
【0111】
親であるBurley 21 LAのニコチン濃度の10%未満を有するT1後代を自家受粉して、T2後代を生成した。カナマイシンを含有する培地上で種子を発芽させ、後代の100%がカナマイシンに対して耐性を持つクローンを選択することによって、ホモ接合T2後代を特定した(すなわち4:0に分離し、ヘテロ接合後代は3:1に分離した)。ホモ接合およびヘテロ接合T2後代のニコチン濃度を、マイクロアッセイを使用して定性的に測定したが、やはり親であるBurley 21 LAの10%未満の濃度であることが示された。ホモ接合T2後代の葉のサンプルを、NC、WilsonのSouthern Research and Testing Laboratoryに送り、ガスクロマトグラフィ/水素炎イオン化検出(GC/FID)を使用してニコチン濃度の定量分析を行った。形質転換体#41のホモ接合T2後代は、最も低いニコチン濃度を示し(約70ppm)、この形質転換体を「ベクター21-41」と名付けた。
【0112】
ベクター21-41植物を自家交雑させて、T3後代を生成した。T3後代を成長させ、ニコチン濃度を定性的かつ定量的にアッセイにかけた。T3後代を自家交雑させて、T4後代を生成した。T4後代のバルク状種子サンプルを成長させ、ニコチン濃度の試験をした。
【0113】
一般にベクター21-41は、アルカロイド含量および全還元糖以外(たとえばニコチンやノルニコチン)、評価したすべての特定がBurley 21 LAに類似している。ベクター21-41は、そのニコチン、ノルニコチン、および全アルカロイドの含量が著しく減少していることから、親であるBurley 21 LAと区別することができる。以下に示すように、ベクター21-41の全アルカロイド濃度は、親であるBurley 21 LAの濃度に対してほぼ有意に低下しており、ベクター21-41のニコチンおよびノルニコチンの濃度は、Burley 21 LAに比べて劇的に低下することが示される。またベクター21-41の還元糖の濃度は、Burley 21 LAに比べて著しく高い。
【0114】
ベクター21-41 T4後代の圃場試験をCentral Crops Research Station(Clayton、NC)で行い、親であるBurley 21 LAと比較した。設計は、3つの処理をし(ベクター21-41、NtQPT1プロモーターのみ運搬するBurley 21 LA形質転換系[プロモーター対照]、および非形質転換Burley 21 LA[野生型])、15の反復試験区であり、反復試験区当たり10の植物であった。以下の実用形質、すなわち移植から開花までの日数、開花時の高さ、開花時の葉の数、収量、ニコチン%、ノルニコチン%、全窒素%、よび還元糖%を測定し、比較した。
【実施例7】
【0115】
低ニコチンおよびニトロソアミンのブレンドタバコ
以下の実施例は、ブレンドによって特定の量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ製品を生成する、いくつかの方法について述べる。いくつかのブレンド手法は、ニコチンおよび/またはTSNAの量が極めて低い品種から調製したタバコから始める。低ニコチン/TSNA品種(たとえば検出不可能なニコチンおよび/またはTSNA)から調製したタバコと従来のタバコ(たとえば、ニコチンが30,000百万分率(ppm)でTSNAが8,000十億分率(ppb)のBurley、ニコチンが20,000ppmでTSNAが300ppbのFlue-Cured、ニコチンが10,000ppmでTSNAが100ppbのOriental)とをブレンドすることによって、事実上任意の所望量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ製品を製造することができる。タバコを吸う者がニコチン依存性を低下させまたはなくすのを助け、発癌性が低下するように、さまざまな量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ製品を喫煙キットおよびプログラムに組み込むことができる。
【0116】
たとえばステップ1では、タバコ製品を、約25%の低ニコチン/TSNAタバコと75%の従来のタバコとからなるものにし、ステップ2では、タバコ製品を、約50%の低ニコチン/TSNAタバコと50%の従来のタバコとからなるものにし、ステップ3では、タバコ製品を、約75%の低ニコチン/TSNAタバコと25%の従来のタバコとからなるものにし、ステップ4では、タバコ製品を、約100%の低ニコチン/TSNAタバコと0%の従来のタバコとからなるものにすることができる。禁煙キットは、消費者が1カ月のプログラムで満足するように、前述のブレンドのそれぞれから、ある量のタバコ製品を含むことができる。すなわち、たとえば消費者が1日に1パックを吸う喫煙者である場合、1カ月のキットは、各ステップから7パック提供することができ、合計で28パックの紙巻きタバコになる。各禁煙キットは、ステップごとに進むプロセスによって消費者を具体的に手引きする1組の取扱い説明書を含む。当然ながら、特定の量のニコチンおよび/またはTSNAを有するタバコ製品は、消費者が個々に望むニコチンおよび/またはTSNAの量を選択することができるよう、都合の良いサイズの量で入手可能である(たとえば、複数箱の葉巻、複数パックの紙巻きタバコ、複数缶の嗅ぎタバコ、複数の袋またはひねった噛みタバコ)。本明細書で述べる教示を使用して、さまざまな低ニコチン/低TSNAタバコブレンドを得る数多くの方法があるが、下記の事項は、単に当業者を1つの可能な手法に導くものである。
【0117】
低ニコチン/TSNAを25%ブレンドしたステップ1のタバコ製品を得るには、ニコチン/TSNAが約0ppmのタバコから調製したタバコを、従来のBurley、Flue-cured、またはOrientalと、それぞれ25%/75%の割合で混合し、それによって、ニコチンが22,500ppmでTSNAが6,000ppbのBurleyタバコ製品、ニコチンが15,000ppmでTSNAが225ppbのFlue-cured製品、およびニコチンが7,500ppmでTSNAが75ppbのOriental製品を得ることができる。同様に、低ニコチン/TSNAを50%ブレンドしたステップ2の製品を得るには、ニコチン/TSNAが約0ppmのタバコから調製したタバコを、従来のBurley、Flue-cured、またはOrientalと、それぞれ50%/50%の割合で混合し、それによって、ニコチンが15,000ppmでTSNAが4,000ppbのBurleyタバコ製品、ニコチンが10,000ppmでTSNAが150ppbのFlue-cured製品、およびニコチンが5,000ppmでTSNAが50ppbのOriental製品を得ることができる。さらに、低ニコチン/TSNAを75%/25%でブレンドしたステップ3の製品は、ニコチン/TSNAが約0ppmのタバコから調製したタバコを、従来のBurley、Flue-cured、またはOrientalと、それぞれ75%/25%の割合で混合し、それによって、ニコチンが7,500ppmでTSNAが2,000ppbのBurleyタバコ製品、ニコチンが5,000ppmでTSNAが75ppbのFlue-cured製品、およびニコチンが2,500ppmでTSNAが25ppbのOriental製品を得ることができる。
【0118】
タバコ製品は、しばしばさまざまな成長条件下で世界中の数多くの異なる場所で成長させた、数多くの異なるタイプのタバコのブレンドであることを理解されたい。その結果、ニコチンおよびTSNAの量は、作物ごとに異なることになる。それにも関わらず、従来の技法を使用することによって、所望のブレンドを生成するのに使用される作物当たりのニコチンおよびTSNAの平均的な量を、容易に決定することができる。ブレンドを作製するそれぞれのタイプのタバコの量を調整することによって、当業者は、ニコチンおよび/またはTSNAの量と、外観や香り、喫煙性などのその他の考慮事項とのバランスをとることができる。このように、さまざまな濃度のニコチンおよび/またはニトロソアミンならびにさまざまな外観および香りおよび喫煙性を有する、さまざまなタイプのタバコ製品を作製することができる。
【0119】
本発明について、実施形態および実施例を参照しながら述べてきたが、本発明の精神から逸脱することなくさまざまな変更を加えることができることを理解されたい。したがって本発明は、上述の特許請求の範囲によってのみ限定される。本明細書で引用したすべての参考文献を、参照により本明細書に特に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】ニコチンに至る生合成経路を示す図である。Nic1およびNic2により調節されることが知られている酵素活性は、QPTase(キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ)およびPMTase(プトレッシンメチルトランスフェラーゼ)である。
【図2A】NtQPT1 cDNA(配列番号1)の核酸配列を示し、コード配列(配列番号3)を大文字で示した図である。
【図2B】NtQPT1 cDNAによってコードされたタバコQPTaseの、推定アミノ酸配列(配列番号2)を示す図である。
【図3A】推定NtQPT1アミノ酸配列、および関連するRhodospirillum rubrum、Mycobacterium lepre、Salmonella typhimurium、Escherichia coli、ヒト、およびSaccharomyces cerevisiaeの配列を並べた図である。
【図3B】図3Aの続きである。
【図4】キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼが不足しているEscherichia coli変異体(TH265)を、NtQPT1 cDNAと相補させた結果を示す図である。細胞を、NtQPT1を運ぶ発現ベクターで形質転換した。ニコチン酸が不足している最小培地上での、NtQPT1を発現する形質変換TH265細胞の増殖は、NtQPT1がQPTaseをコードすることを実証した。
【図5】Nic1およびNic2タバコ変異体;野生型Bueley 21(Nicl/Nicl Nic2/Nic2);Nic1-Burley 21(nicl/nicl Nic2/Nic2);Nic2-Burley 21(Nicl/Nicl nic2/nic2);およびNicl-Nic2-Burley 21(nicl/nicl nic2/Nnc2)の、ニコチンの濃度と、比較的安定な状態にあるNtQTP1 mRNAの濃度とを比較した図である。ベタ塗りの棒はmRNA転写レベルを示し、斜線を付けた棒はニコチン濃度を示す。
【0121】
[配列表]







【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンを含有する第一のタバコ製品と、第一のタバコ製品に存在する量より少ない量のニコチンを含有する第二のタバコ製品とを含む禁煙キット。
【請求項2】
前記第一又は第二のタバコ製品は遺伝子組換えされたタバコを含む請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項3】
前記遺伝子組み換えが、ニコチンの合成を阻害する遺伝子物質の導入を含み、前記遺伝子物質は、ニコチン生合成遺伝子に対応する単離された核酸又はその断片を含む請求項2に記載の禁煙キット。
【請求項4】
前記ニコチン生合成遺伝子が、プトレッシンN-メチルトランスフェラーゼ、N-メチルプトレッシンオキシダーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、S-アデノシルメチオニンシンテターゼ、NADHデヒドロゲナーゼ、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPTase)、及びホスホリボシルアントラニル酸イソメラーゼからなる群から選択される請求項3に記載の禁煙キット。
【請求項5】
前記ニコチン生合成遺伝子が、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする請求項4に記載の禁煙キット。
【請求項6】
前記ニコチン生合成遺伝子が、プトレッシンN-メチルトランスフェラーゼをコードする請求項4に記載の禁煙キット。
【請求項7】
前記ニコチン生合成遺伝子の前記断片が、少なくとも13ヌクレオチドの長さである請求項3に記載の禁煙キット。
【請求項8】
前記キットは一パックの紙巻きタバコである請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項9】
前記キットは複数パックの紙巻きタバコを含む請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項10】
前記キットは、嗅ぎタバコ、噛みタバコ、ガム、又はトローチ錠を含む請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項11】
前記第一若しくは第二のタバコ製品、又はそれらの両方が11.0mg未満のニコチンを有し、かつ、前記タバコ製品が紙巻きタバコである請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項12】
第二のタバコ製品に存在するニコチンの量より少ない量のニコチンの量を含有する第三のタバコ製品をさらに含む、請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項13】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品は、バーレー、フルー、及びオリエンタルからなる群から選択されるタバコを含む請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項14】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品は、バーレータバコを含む請求項13に記載の禁煙キット。
【請求項15】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品は、フルータバコを含む請求項13に記載の禁煙キット。
【請求項16】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品は、オリエンタルタバコを含む請求項13に記載の禁煙キット。
【請求項17】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品によってもたらされるニコチンの量は、0.75mg未満である請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項18】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品によってもたらされるニコチンの量は、0.5mg未満である請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項19】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品によってもたらされるニコチンの量は、0.1mg未満である請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項20】
前記第一及び前記第二のタバコ製品は紙巻きタバコであり、かつ、前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品によってもたらされる前記ニコチンの量は、0.6mg未満である請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項21】
前記第一及び前記第二のタバコ製品は紙巻きタバコであり、かつ、前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品によってもたらされる前記ニコチンの量は、0.3mg未満である請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項22】
前記第一及び前記第二のタバコ製品は紙巻きタバコであり、かつ、前記第二のタバコ製品によってもたらされる前記ニコチンの量は、0.1mg未満である請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項23】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品は、そこから生成される主流煙中のN'-ニトロソノルニコチン(NNN)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、N'-ニトロソアナバシン(NAB)、及び4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)の総含量が0-5.0μg/gである請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項24】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品は、そこから生成される主流煙中のN'-ニトロソノルニコチン(NNN)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、N'-ニトロソアナバシン(NAB)、及び4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)の総含量が0-4.0μg/gである請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項25】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品は、そこから生成される主流煙中のN'-ニトロソノルニコチン(NNN)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、N'-ニトロソアナバシン(NAB)、及び4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)の総含量が0-3.0μg/gである請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項26】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品は、そこから生成される主流煙中のN'-ニトロソノルニコチン(NNN)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、N'-ニトロソアナバシン(NAB)、及び4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)の総含量が0-2.0μg/gである請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項27】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品は、そこから生成される主流煙中のN'-ニトロソノルニコチン(NNN)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、N'-ニトロソアナバシン(NAB)、及び4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)の総含量が0-1.0μg/gである請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項28】
前記第一のタバコ製品、前記第二のタバコ製品、又は前記第一及び前記第二のタバコ製品は、そこから生成される主流煙中のN'-ニトロソノルニコチン(NNN)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、N'-ニトロソアナバシン(NAB)、及び4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)の総含量が0-0.5μg/gである請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項29】
前記第二のタバコ製品は、そこから生成される主流煙中のN'-ニトロソノルニコチン(NNN)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、N'-ニトロソアナバシン(NAB)、及び4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)の総含量が0-0.1μg/gである請求項1に記載の禁煙キット。
【請求項30】
前記第二のタバコ製品は、そこから生成される主流煙中のN'-ニトロソノルニコチン(NNN)、N'-ニトロソアナタビン(NAT)、N'-ニトロソアナバシン(NAB)、及び4-(N-ニトロソメチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)の総含量が0-0.01μg/gである請求項1に記載の禁煙キット。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−304800(P2006−304800A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134163(P2006−134163)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【分割の表示】特願2003−503030(P2003−503030)の分割
【原出願日】平成14年6月6日(2002.6.6)
【出願人】(502108422)ベクター、タバコ、リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】VECTOR TOBACCO LTD.
【Fターム(参考)】