説明

タフテッドカーペット、カーペットタイル及びその製造方法

【課題】カーペットの素材感を損なわず、歩行によるかすれを生じない方法で、種々の模様、写真、印刷物などをカーペットの柄として再現したタフテッドカーペット、これを用いたカーペットタイル、及び、その製造方法の提供。
【解決手段】柄として再現しようとする模様等を画像データとして取り込み、該画像データを色調データに変換し、該色調データを基にしてタフトデータ(パイル高さデータ)を作成し、該タフトデータに基づいて、カーペット基布に前記データに応じたパイル高さでタフトすることにより得られるタフテッドカーペット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タフテッドカーペット、カーペットタイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大理石や木材などの種々のものの表面模様、写真、印刷物などをカーペットの柄に利用することは公知である。その方法としては、無地のカーペットにスクリーン印刷やインクジェットプリンター、熱転写等で印刷する方法が採用されている(特許文献1)。
この方法によれば、元の模様などを容易にカーペットに再現できるが、印刷であるためカーペットの素材感を損なうし、カーペットの上を歩くと印刷が徐々にかすれてしまい、歩行耐久性が低いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−322077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、カーペットの素材感を損なわず、歩行によるかすれを生じない方法で、種々の模様、写真、印刷物など(以下、これらを纏めて「模様等」という)をカーペットの柄として再現したタフテッドカーペット、これを用いたカーペットタイル、及び、その製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、次の1)〜4)の発明によって解決される。
1) 柄として再現しようとする模様等を画像データとして取り込み、該画像データを色調データに変換し、該色調データを基にしてタフトデータ(パイル高さデータ)を作成し、該タフトデータに基づいて、カーペット基布に前記タフトデータに応じたパイル高さでタフトすることにより得られるタフテッドカーペット。
2) 1)記載のタフテッドカーペットを用いて作製されたカーペットタイル。
3) 柄として再現しようとする模様等を画像取り込み装置により画像データとして取り込むステップ、該画像データをデータ変換装置により変換して多段階の色調データとするステップ、該色調データを基にしてタフトデータ(パイル高さデータ)を作成するステップ、該タフトデータに基づいてパイル高さを調整可能なタフト機を用いて、カーペット基布に前記タフトデータに応じたパイル高さでタフトするステップ、からなるタフテッドカーペットの製造方法。
4) 前記画像データを多段階の色調データとするステップにおいて、画像データを一旦グレースケールに変換した後、多段階の色調データとする3)記載のタフテッドカーペットの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カーペットの素材感を損なわず、歩行によるかすれを生じない方法で、種々の模様、写真、印刷物など(模様等)をカーペットの柄として再現したタフテッドカーペット、これを用いたカーペットタイル、及び、その製造方法を提供できる。自然界にある複雑な模様でも容易に再現できるので非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のタフテッドカーペット及びこれを用いたカーペットタイルの作製工程の概要を示す図。
【図2】パイル糸の高低差によって色の変化が発現する理由の説明図。(a)H1>H2の場合、(b)H1≒H2の場合、(c)H1<H2の場合。
【図3】(A)実施例1で用いたプラスチックタイルの原板の表面模様を示す図。(B)実施例1で作製したカーペットタイルを示す図。
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明は、種々の模様、写真、印刷物など(模様等)をカーペットの柄として再現し、利用しようとするものである。後述する説明から分かるように、最終的にタフテッドカーペットやカーペットタイルに表わされた柄は、元になる模様等をデータ処理して得られるものであるから、上記再現とは文字通りの再現ではなく、元になる模様等と類似性の高い柄を表すという意味である。また、カラーの模様等を用いて後述するグレースケール変換を行った場合には、明度は再現されるが、カラーに関してはそのままの色は再現されない。
【0009】
本発明のタフテッドカーペット及びこれを用いたカーペットタイルの製造工程の概要を図1に基づいて説明する。
まず、スキャナ−、デジタルカメラなどの画像取り込み装置により、柄として再現しようとする模様等を画像データとして取り込む。模様等は特に限定されず、大理石や木材などの種々のものの表面模様、写真、印刷物など何でもよい。
次に、この画像データを、パソコンなどのデータ変換装置により色調データに変換する。このとき、画像データを一旦グレースケールに変換した後、色調データに変換することが好ましい。これは、グレースケールならば明度のみの処理でよいが、カラーの画像データの場合には色彩に関するデータが加わるためデータ量が多くなり、処理できない場合があることによる。したがって、処理可能なデータ量であればカラーの画像データをそのまま処理してもよい。この場合、色彩データを糸の配色データとして扱うことによりカラー画像を再現できる。
【0010】
色調データへの変換は、パソコンなどにより、柄がよりはっきりと見えるように明るさ・コントラストで色調補正し、色調によって整列させることにより行う。即ち、この時の色数を、後でパイル高さに変換することを考慮して6〜600色とし、6〜600段階の色調データとする。この操作により、色調を連続的な変化量から段階的変化量に置き換えることができる。6色よりも少ないと元の画像の再現性に乏しくなる。また、600色を超えても元の画像の再現性が更に良くなるわけではないし、タフト機の性能からも現状では600色が限界である。
色数が多ければ、柄表現を細密にすることが可能であるが、現在のタフト機では、16〜160色が好ましい。また、コントラストを調整し、輪郭を不鮮明にすることにより、タフテッドカーペットにした際に、よりリアリティーのある柄表現とすることが出来る。
なお、最初の模様等の一部を使用したい場合には、必要部分だけを切り抜いて使用すればよい。
また、上記説明における色には無彩色である白、黒、灰色も含むものとする。
【0011】
次に、上記色調データを基にして、パソコンなどにより、タフトデータ(パイル高さデータ)を作成する。
パイル高さは2.00〜7.99mmの間を0.01mm刻みとした600段階の範囲内とすることが望ましい。タフト時のパイル高さは、模様等の再現性及び歩行の耐久性を得るために2.00mm以上とする。2.00mm未満では、歩行耐久性が低くなるし、模様等の再現性も乏しくなる。また、7.99mmより高いと、歩行によるパイルのへたりが生じることがあり好ましくない。なお、2.0〜7.9mmの間を0.1mm刻みとした60段階にしてもよいし、刻みの幅を適宜変更しても構わない。
【0012】
次に、タフトデータに基づいてパイル高さを調整できるタフト機を用いて、該タフト機の奇数針、偶数針に2〜10色の糸を割り当て、前記タフトデータに基づいて基布にタフトを行い、連続的な色調変化により、元の模様等を再現したタフテッドカーペットを作製する。
糸の割り当ては、例えば元の模様が全体的にグレー系であれば、白系、黒系の二つの糸を使用すれば良い。また、このグレー系の中にブラウン系やレッド系の糸を適宜加えることにより、加えた部分にこれらの色を発現させることが出来る。
更に、タフテッドカーペットに、定法により塩化ビニル樹脂などからなるバッキング層などを設けた後、適当な大きさに裁断すればカーペットタイルが得られる。
また、カーペットタイルにする場合には、裁断した時にそれぞれ別な柄になるように、ランダムな柄にすることが好ましい。
【0013】
本発明は、色の異なる複数の糸及びそのパイル高さの調整により、元の模様等を柄として再現するものであるが、以下に説明するように、パイル糸の高低差によって色の変化が発現する。
即ち、基布にパイル糸をタフトした場合にパイル高さが異なると、例えば図2に示すような状態になる。図2は奇数針のパイルと偶数針のパイルの高さを変えた場合に、どのように模様が現れるかについて一例を示したものである。パイル高さが高い部分は、パイル高さが低い部分に比べてパイル糸の占める面積が大きいため色が目立つので、そのコントラストにより元の模様等が再現される。
図2のように、奇数針のパイルの色を黒、偶数針のパイルの色を薄いグレーとし、奇数針のパイルの高さをH1、偶数針のパイルの高さをH2としたとき、H1>H2であれば(a)のような黒が目立つ模様となり、H1≒H2であれば(b)のような模様となり、H1<H2であれば(c)のようなグレーが目立つ模様となる。H1、H2をステッチ(一針)毎に指定することにより、元の画像を忠実にカーペットに再現することが出来る。
糸の色数を増やしても基本原理は同じである。
【実施例】
【0014】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0015】
実施例1
プラスチックタイルの原板(タイルに打ち抜く前の板:縦2m×横4m)の表面模様をデジタルスキャナーで取りこみ、図3(A)に示す画像のデジタルデータを作成した。
次に、Adobe社製のソフトウェアPhotoshopとNedGraphics社製のソフトウェアTexcelleを使用し、前記デジタルデータをパソコンによりグレースケールに変換し、明るさ・コントラストで柄がよりはっきりと見えるように色調補正し、色調によって整列させた。
次に、中川製作所社製のソフトウェアTuftWinを使用し、上記色調データを基にして、パイル高さ2.5〜4.1mmの間を0.1mm刻みとしたタフトデータ(パイル高さデータ)を作成した。
次に、タフトデータに基づいてパイル高さを調整できるタフト機(中川製作所社製)を用い、パイル糸の配列を奇数針1色、偶数針1色(合計2色)として、上記タフトデータに従ってポリエステル基布にタフトし、タフテッドカーペットを作製した。
次に、上記タフテッドカーペットに、下記の材料からなる塩ビバッキング層及び目付量30g/mのガラス不織布層を積層した後、裁断して、前記原板の表面模様を再現した図3(B)に示すカーペットタイルを作製した。
図3(A)と(B)を対比すると、プラスチックタイルの原板の表面模様が再現されていることが分かる。

<塩ビバッキング層の材料処方>
・塩ビペースト樹脂(カネカ社製:PSM−176) 100重量部
・可塑剤(ジェイプラス社製:DOP) 75重量部
・充填材(白石カルシウム社製:炭酸カルシウム) 230重量部
・その他の添加剤(安定剤等) 10重量部

【0016】
実施例2
パイル糸の配列を、奇数針2色、偶数針1色(合計3色)とした点以外は、実施例1と同様にしてポリエステル基布にタフトし、タフテッドカーペットを作製した。
奇数針に同系色の糸2色を使用したことにより、奇数針1色のときよりも、より深みのある模様を再現することが出来た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄として再現しようとする模様等を画像データとして取り込み、該画像データを色調データに変換し、該色調データを基にしてタフトデータ(パイル高さデータ)を作成し、該タフトデータに基づいて、カーペット基布に前記タフトデータに応じたパイル高さでタフトすることにより得られるタフテッドカーペット。
【請求項2】
請求項1記載のタフテッドカーペットを用いて作製されたカーペットタイル。
【請求項3】
柄として再現しようとする模様等を画像取り込み装置により画像データとして取り込むステップ、該画像データをデータ変換装置により変換して多段階の色調データとするステップ、該色調データを基にしてタフトデータ(パイル高さデータ)を作成するステップ、該タフトデータに基づいてパイル高さを調整可能なタフト機を用いて、カーペット基布に前記タフトデータに応じたパイル高さでタフトするステップ、からなるタフテッドカーペットの製造方法。
【請求項4】
前記画像データを多段階の色調データとするステップにおいて、画像データを一旦グレースケールに変換した後、多段階の色調データとする請求項3記載のタフテッドカーペットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−17744(P2013−17744A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155070(P2011−155070)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000133076)株式会社タジマ (34)
【Fターム(参考)】