説明

タペンタドール組成物

本発明は、治療的有効量の持続放出性タペンタドール、及び、治療的有効量の第2の鎮痛薬(第2の鎮痛薬はトラマドール、γ‐アミノ酪酸(GABA)アナログ又はNSAIDである)とを、処置を必要とする患者に投与することによって、疼痛及び疼痛に関連する病気を処置する方法を提供する。本発明は、更に、治療的有効量の持続放出性塩酸タペンタドールと、治療的有効量の第2の鎮痛薬(第2の鎮痛薬はトラマドール、γ‐アミノ酪酸(GABA)アナログ又はNSAIDである)とを含む、医薬品組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本文中に技術分野に該当する記載なし。)
【0002】
<関連出願>
本出願は、2007年11月23日に出願された米国仮特許出願第61/004,029号の優先権を主張し、この仮出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
タペンタドール(3‐(3‐ジメチルアミノ‐1‐エチル‐2‐メチル‐プロピル)‐フェノール(化合物1))は、二重作用モード(即ち、μ‐オピオイド受容体活性化作用、及びノルアドレナリン再取り込み阻害作用)を有する中枢性鎮痛薬である。その二重作用モードは、例えば、ヒドロコドン、オキシコドン及びモルヒネなどのより強力な麻薬性鎮痛薬と同程度のレベルの鎮痛作用を、より許容できる副作用プロファイルで提供する。タペンタドールは、ヨーロッパの特許第EP693,475号で最初に開示され、現在、FDAレビュー中である。
【0004】
【化1】

【0005】
経口投与のためのタペンタドールの典型的な製剤は、消化管における薬の迅速な放出を導き、それ故、その鎮痛作用は迅速に開始する。しかしながら、鎮痛活性の急速な低下が観察されている。それ故、タペンタドールを用いた治療では、患者の血漿中での必要な有効成分濃度を維持するために、比較的短い間隔(しばしば1日当たりに4〜10回程度)で、医薬品組成物を繰り返し投与することが必要とされる。この繰り返しの投与の必要性は、投与過誤(errors in administration)の原因となり得、血漿中での所望の濃度を維持できなくなる可能性の原因となり得、これらのことは患者コンプライアンス及び治療目的(therapeutic objective)にとって有害であり、特に、病気が慢性的な疼痛又は疼痛に関連する病気である場合には有害である。従って、有効成分(タペンタドール)の経口投与のための持続放出又は制御放出医薬品組成物を手にするという満たされていない要求がある。更に、疼痛及び疼痛に関連する病気の長期的な治療に適した組成物は、特にそのような病気が社会の高齢層の間で続くので、必要とされている。
【0006】
γ‐アミノ酪酸(GABA)アナログであるプレガバリン(化合物2)は、部分発作、神経障害痛に対する補助治療、及び全般性不安障害における補助治療として使用される抗痙攣剤である。プレガバリンは、ガバペンチンのより強力な後継薬として設計された。プレガバリンはLyrica(登録商標)という商品名でファイザーにより販売されている。最近の研究では、プレガバリンが、例えば線維筋痛及び脊髄損傷などの障害において、慢性痛の治療に効果的であることが示されている。
【0007】
ガバペンチン(化合物3)は、プレガバリンと同様に、別のGABAアナログであり、神経伝達物質γ‐アミノ酪酸(GABA)の化学構造を模倣するように当初は合成されたが、同じ脳受容体に作用するとは信じられていない。ガバペンチンの正確な作用機序は分かっていないが、神経障害痛におけるガバペンチンの治療的な作用は電位依存性のN型カルシウムイオンチャネルに関係すると考えられる。
【0008】
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの大部分の抗炎症薬は、深刻な上部消化管合併症のリスクの増加と関係付けられてきた。このリスクは用量依存性であると信じられており、2以上の抗炎症薬が投与される場合により高まる可能性がある。それ故、抗炎症薬はできるだけ単剤療法で投与されるべきである。このリスクは、非アスピリン系‐非ステロイド系抗炎症(NA‐ASAID)薬の場合には、より顕著でありえる。グループとしてのNA‐NSAIDの摂取には、上部消化管合併症(UGIC)において4倍〜5倍の増加が一貫して関係付けられている。この証拠は、リスクが用量依存性であることを示す。最近のメタ分析において推定された合併心臓血管相対リスク(pooled cardiovascular Relative Risk(RR))は、低用量では3.0(95%CI,2.6‐3.4)、中用量では4.1(95%CI,3.6‐4.5)、及び高用量では6.9(95%CI、5.8‐8.1)であった。最近の研究は、薬効分類としてのNA‐NSAIDが4.1(95%CI,3.6‐4.8)の相対リスク(RR)を有することを示している。
【0009】
オキシカム誘導体であるメロキシカム(化合物4)は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)のエノール酸基のメンバーである。メロキシカムは、選択的なCOX‐2阻害剤であることが報告されている。メロキシカムは、4‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐N‐(5‐メチル‐2‐チアゾリル)‐2H‐1,2‐ベンゾチアジン‐3‐カルボキサミド‐1,1‐ジオキシド)として、化学的に知られている。メロキシカムは、MOBIC(登録商標)の商品名で市販されている。メロキシカムは、骨関節炎及び関節リウマチ、2歳以上の患者における少関節型若年性関節リウマチ、又は多関節型若年性関節リウマチの兆候並びに症状を軽減する治療に適応される。
【0010】
ナプロキセン(化合物5)は、病気(例えば骨関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、痛風、強直性脊椎炎、(骨折のような)怪我、生理痛、腱炎、滑液包炎など)に起因する軽度から中等度の疼痛、熱、炎症及び凝りの軽減並びに一次性月経困難症の治療のために一般に使用される別の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である。化学的に(+)‐(S)‐2‐(6‐メトキシナフタレン‐2‐イル)プロパン酸として知られるナプロキセン、及びナプロキセンナトリウムは、Aleve,Anaprox,Naprogesic,Naprosyn,Naprelan及びSynflexを含む様々な商品名で販売されている。他のNSAIDと同様に、消化管中で障害を引き起こすナプロキセンの報告もある。更なるNSAIDには、化合物6:ジクロフェナク、化合物7:セレコキシブ、化合物8:ジフルニサル、化合物9:エトドラク、化合物10:フェノプロフェン、化合物11:イブプロフェン、化合物12:インドメタシン、化合物13:ケトプロフェン、及び化合物14:ケトロラクが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0011】
【化2】

【0012】
トラマドール(化合物15)は、中枢性合成オピオイド鎮痛薬である。トラマドールは、化学的には(±)シス‐2‐[(ジメチルアミノ)メチル]‐1‐(3‐メトキシフェニル)シクロ‐ヘキサノール塩酸塩である。市販の形状は、Ultram(ウルトラム)錠のような塩酸塩である。トラマドールは、成人の軽度から中等度の疼痛の管理に使用されてきた。トラマドールは、非ステロイド系抗炎症性薬(NSAID)に関連する胃潰瘍のリスク、及び内出血のリスクを増加させるとは信じられていない非NSAID鎮痛薬である。しかしながら、トラマドールにはまだ、吐き気、便秘、眩暈、頭痛、眠気及び嘔吐を含む、いくつかのよく報告される副作用がある。他にも、痒み、発汗、口渇、下痢、発疹、視覚障害及び眩暈を含む副作用が報告された。従って、疼痛の軽減を損なうことなくトラマドールを低用量で処方することによって、これらの副作用を防止するか、又は軽減することが望ましい。
【0013】
文献報告は、ナプロキセンなどのNSAIDが、ナトリウム及びリチウムの排出を妨げる可能性があることを示す。それ故、疼痛軽減の程度を含むことなく患者の副作用を緩和するために、NSAIDの投薬量を制御することが望ましい。同様に、眩暈、眠気、口渇、浮腫、かすみ目、体重増加、及び「思考障害」(主に集中力/注意力の障害)は、プレガバリンのようなGABAアナログを用いた治療を受ける被験者によって、より多くの報告がなされている。
【0014】
トラマドール、プレガバリン及びNSAIDに関連する副作用の無い薬に対する、満たされていない強い医学的要求がある。しばしば慢性的である疼痛を管理するために、そのような薬が高齢患者によって長期にわたって頻繁に使用されることを考えると、治療的有用性を含むことなく、いずれか若しくは両方の種類の薬の用量又は頻度の低減を支援することが可能な組成物は、この満たされていない医学的要求を満たすだろう。
【0015】
同程度の鎮痛作用を生むのに必要とされるオピオイドの量を低くし、オピオイドによる副作用を低減することを試みるために、オピオイドは、非オピオイド鎮痛成分を含む他の薬と組合せられてきた。これらの組合せ製品のいくつかについては、相乗的な鎮痛効果も有することが報告された。例えば、A.takemori著、Annals New York Acad.Sci.の281,262(1976年)を参照のこと。ここには、オピオイド鎮痛薬と非鎮痛薬との組合せを含む組成物が、例えば、準相加的(sub additive)(阻害的)、相加的(additive)、又は相乗的(super additive)などの様々な効能を示すことが報告されている。また、R.Taberらによる、J.Pharm.Expt.の169(1),29(1969年)には、モルヒネと、メタドン(別のオピオイド鎮痛薬)の組合せについて記述されている。米国特許第4,571,400号は、ジヒドロコデイン(オピオイド鎮痛薬)及びイブプロフェン(非オピオイド鎮痛薬)の組合せを開示している。米国特許第4,587,252号及び第4,569,937号についても参照のこと。これらの特許文献は、他のイブプロフェンオピオイドの組合せを開示している。A.Pircioらによる、Arch.Int.Pharmacodyn.の235,116(1978年)には、ブトルファノール(別のオピオイド鎮痛薬)と、アセトアミノフェン(非オピオイド鎮痛薬)との1:125の混合物が、1:10の混合物よりも大きな効能を有することが報告されている。
【0016】
非オピオイド鎮痛薬の組合せは、オピオイドと関連する副作用を避けるために調製されてきた。そして、この組合せは、必要とする各々の成分がより少ないという利点を持つために注目されており、相加効果をもたらし得る。例えば、G.Stacherらによる、Int.J.Clin.Pharmacol.Biopharmacy.の17,250(1979年)、米国特許第4,260,629号、米国特許第4,132,788号を参照のこと。しかしながら、非オピオイド鎮痛薬混合物を毎日摂取すること、並びに、1つの非オピオイド鎮痛薬を大量に摂取すること、又は長期間にわたって摂取することに対して、警鐘が鳴らされてきている(D.WoodburyとE.Finglの349頁を参照のこと)。更に、イブプロフェン、アスピリン及びいくつかの他のNSAIDは、特には繰り返し使用される場合に、胃腸の副作用を引き起こし得る。例えば、M.J.S.LangmanによるAm.J.Med.の84(Suppl.2A):15‐19,1988年);P.A.Inselの“Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics.”Gilman AG,Rail TW,Nies ASらによる編集のPergamon Press,8th Ed,1990年,Chapter 26,664‐668頁を参照のこと。
【0017】
神経障害痛は、神経系での一次病巣又は機能障害に起因すると信じられている。神経障害痛は、末梢神経系の病巣に起因する末梢神経障害痛と、中枢神経系の病巣に伴う中枢性疼痛とに分類されてきた。神経障害痛のプレバレンス(有病率,罹患率)は、約1%であると推定される。神経障害痛は、治療抵抗性であることが示されてきた。しかしながら、NSAID、オピオイド、抗うつ薬、抗けいれん薬、興奮性アミノ酸アンタゴニスト、GABA性アゴニスト、サブスタンスPアンタゴニストなどを含む、いくつかの成分は、神経障害痛を処置するために使用されてきた。そして、カルバマゼピン及びアミトリプチリンの低用量、一般に神経障害痛に対して推奨されてきた。ガバペンチン、プレガバリンなどのGABAアゴニストの副作用は、文献に報告されてきた。それ故、疼痛軽減の程度を含むことなく、GABAアゴニストの副作用の患者を楽にするために、GABAアゴニストの投薬量を減らすことは望ましい。
【0018】
単剤投与に関するいくつかの処置が、鎮痛のために現在推奨されている。麻酔性及び非麻薬性の鎮痛薬、並びにNSAIDの単剤投与は、疼痛を緩和する特性を示すことが分っている。例えば、ガバペンチン及びプレガバリンなどのいくつかの抗てんかん薬は、糖尿病性神経障害において疼痛を緩和する特性を有することも報告されている。
【0019】
現在の単剤薬鎮痛処方から得られる利点にもかかわらず、これらの処方には欠点がある。タペンタドール、トラマドール、GABAアナログ、又はNSAIDに関連した副作用が無い薬に対する、満たされていない強い医学的要求がある。関心事の1つの領域は、今日利用できる多くの疼痛治療の処方に起因する、望まれない副作用の発生に関係する。例えば、モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬は、有名な常習性作用と、重大な中枢神経系(CNS)副作用と、胃腸への副作用のために、疼痛に対して慎重に処方される。更にタペンタドールは、むかつき、嘔吐、眠気、眩暈、痒み、鎮静状態、口渇、発汗及び便秘を含む、悪影響を引き起こすことが知られている。
【0020】
しかしながら、処置を必要とする患者を処置するための医薬品組成物は、持続放出性タペンタドールと、第2の鎮痛薬とを含み、ここで、第2の鎮痛薬は、トラマドール、γ‐アミノ酪酸(GABA)アナログ、又はNSAIDである。更に、処置を必要とする哺乳類に、持続放出性タペンタドールと、第2の鎮痛薬とを含む、開示されていない医薬品組成物を投与する方法であって、ここで、第2の鎮痛薬がトラマドール、γ‐アミノ酪酸(GABA)アナログ、又はNSAIDである、方法を含む、疼痛或いは疼痛に関連する障害を治療する方法を先行技術は開示していない。望ましくない効果が低減されつつ、高い鎮痛効果を提供する鎮痛性薬剤に対する、引き続きの必要性がある。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、持続放出性タペンタドールと、第2の鎮痛成分とを含む医薬品の組合せ(合剤)を提供する。第2の鎮痛成分は、トラマドール、γ‐アミノ酪酸(GABA)アナログ、又はNSAIDであり得る。本発明は更に、持続放出性タペンタドールと、第2の鎮痛成分とを含む、有効量の組成物を哺乳類に投与することを含む、哺乳類における疼痛及び疼痛関連の障害を処置するための方法を提供する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、糖尿病性神経障害、関節リウマチ、及び骨関節炎などに関連する中等度から重度の疼痛症状を、処置を必要とする被検体に、約25〜約400mgの持続(制御)放出性タペンタドールと、第2の鎮痛成分と含む、鎮痛薬の薬理学的組合せを投与することによって、処置するタペンタドール/鎮痛薬の組合せであって、ここで、第2の鎮痛成分は、約5から約500mgの塩酸トラマドール、約5から約500mgのGABAアナログ、又は約5から約500mgのNSAIDであり、よりよい疼痛管理を提供するために薬理学的に許容可能な担体を有する、組合せを提供する。医薬品組成物において、タペンタドールは放出制御の形態であり、また、塩酸トラマドール、GABAアナログ、若しくはNSAIDは、薬理学的に許容可能な担体とともに、速放の形態(immediate release form)、長期間放出(制御放出)の形態、又は遅延放出の形態である。
【0023】
開示された組成物の長所は、例えば、トラマドール、GABAアナログ又はNSAIDなどの有効成分の患者への投与量の減少であり、このことは患者コンプライアンスの向上を促進する。更に、組成物は、よりよい疼痛管理を提供するために、約25〜約400mgの持続放出性タペンタドールと、第2の鎮痛成分とを含み、ここで、第2の鎮痛薬は、塩酸トラマドール、GABAアゴニスト、又はNSAIDであって、薬理学的に許容可能な担体を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】持続放出性タペンタドールHCl100mgと、ナプロキセン250mgの錠剤における、インビトロでのタペンタドールHClの溶解プロファイルの比較を図解する。
【図2】1週‐6週の平均に基づいた、持続放出性タペンタドール100mgと、ナプロキセン250mgとを含む組合せ薬に関するVASスコアにおけるベースラインからのLS平均変化と、タペンタドール及びナプロキセンの単剤療法のLS平均変化との比較を図解する。
【図3】4つの治療群に関する、週ごとのベースラインからのLS平均変化を図解する。
【図4】4つの製剤に関する、平均VAS疼痛スコア変化を図解する;タペンタドール100mg,プレガバリン250mg,及び持続放出性タペンタドール100mg+プレガバリン250mgの固定用量の組合せ。
【図5】3つの製剤に関する、平均VAS疼痛スコア変化を図解する;トラマドール50mg,タペンタドール100mg,プラシーボ,及び持続放出性タペンタドール100mg+トラマドール50mgの固定用量の組合せ。
【図6】4つの製剤に関する、平均VAS疼痛スコア変化を図解する;タペンタドール100mg,ガバペンチン250mg,及び持続放出性タペンタドール100mg+ガバペンチン250mgの固定用量の組合せ。
【0025】
本発明の1つの目的は、疼痛及び疼痛に関連する病気の処置において使用することができる方法を提供することである。この方法は、治療的に有効量の持続放出性タペンタドール及び第2の鎮痛成分を、処置を必要とする患者に投与することを含み、ここで、第2の鎮痛成分はトラマドール、γ‐アミノ酪酸(GABA)アナログ又はNSAIDである。
【0026】
例えば、持続放出性タペンタドール及び第2の鎮痛成分などの2つの鎮痛成分が、1つの薬剤で共投与されてもよく、又は、それらは2つの薬剤として個別に投与されてもよい。更に、第1の薬(タペンタドール)は、第2の薬の個別の投与すること、又は第2の薬を第1の薬と一緒の組成で投与することを更に含む、処方で投与され得る。
【0027】
更に別の実施形態において、本発明は、準最適投薬量(suboptimal dosage)で投与される持続放出性タペンタドールと第2の鎮痛成分とを提供する。
【0028】
更に別の実施形態において、本発明は、相乗効果を生む量で、相乗効果を生むのに十分な時間の間投与される、持続放出性タペンタドールと、第2の鎮痛成分とを提供する。
【0029】
更に別の実施形態において、本発明は、第2の活性成分が速放性コーティング内に含まれる、組成物を提供する。
【0030】
更に別の実施形態において、本発明は、1つの層がタペンタドールを含み、もう1つの層が第2の有効成分を含む、2重層の組成物を提供する。
【0031】
更に別の実施形態において、5〜500mgのタペンタドール、又は約5〜約500mgの塩酸トラマドール、約5〜約500mgのGABAアゴニスト、若しくは約5〜約500mgのNSAIDである第2の鎮痛薬を、薬理学的に許容可能な担体との混合物で含む医薬品組成物を、処置を必要とする被検体に投与することにより、中等度から重度の疼痛を処置する方法が提供される。
【0032】
また更に、持続放出性タペンタドールの患者への投与のための用量漸増療法(titration dosing regimen)。用量漸増療法は、持続放出性タペンタドール投与の導入による悪影響の発生の顕著な低減をもたらし、それによって、患者コンプライアンス及び薬物許容性を高める。
【0033】
更に別の実施形態で、本発明は、医療(例えば、神経障害性痛などの疼痛の治療)で使用するためのタペンタドール組成物及び第2の鎮痛成分、或いは薬理学的に許容可能なその塩を提供する。
【0034】
更に別の実施形態では、本発明は、哺乳類種(例えば、ヒト)における疼痛治療のための薬剤を調製するために、タペンタドール、及び第2の鎮痛成分、或いは薬理学的に許容されるその塩を使用する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明において使用される「鎮痛薬」という用語は、パラセタモール(アセトアミノフェン)、サリチル酸塩などの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、モルヒネなどの麻酔薬、トラマドールなどの麻酔特性を有する合成薬、プレガバリン及びガバペンチンのようなGABAアナログ、及び通常は鎮痛薬とは見なされない様々な他のクラスの薬物(これらは神経障害痛症候群を治療するために使用され、三環系抗鬱薬及び抗けいれん薬を含む)を含む、疼痛を緩和するために使用される任意の薬物を含むことが意図される。
【0036】
本発明の目的に関する「バンド幅(band range)」という用語は、(保管される前に)コーティングされた生産物の製造完了時に制御放出製剤によって得られる溶解プロファイル(曲線)と、コーティングされた生産物を加速貯蔵条件(accelerated storage condition)に曝した後で得られた溶解プロファイルとを比較した際の、制御放出製剤のインビトロでの溶解測定値における差異として定義され、溶出曲線に沿った任意の溶解時間点において、コーティングされた生産物から放出される有効成分のパーセントでの変化として表される。
【0037】
本明細書で使用される「共投与」という用語は、2つの薬(成分)を一緒に投与する(例えば、混合物として同時に)ことを意味し、又は投与は順次的であり得る。タペンタドールの順次的な投与は、第2の鎮痛成分の投与の前又はその後に数分間隔以内であり得、又は、最高でも、他の成分の投与後約48時間以内であり得る。好ましくは、タペンタドールの投与は、第2の鎮痛成分の投与の約24時間以内であり、また、より好ましくは第2の鎮痛成分の投与の約12時間以内である。
【0038】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、選択された効能を生じる投薬量を意味する。例えば、鎮痛薬の有効量は、治療無しの場合と比較して、患者の疼痛が和らげられるのに十分な量のことである。
【0039】
本発明で使用される「GABAアナログ」という用語は、グルタミン酸塩、ノルアドレナリン、及びサブスタンスPなどのいくつかの神経伝達物質の放出を阻害する、哺乳類の神経伝達物質γ‐アミノ酪酸(GABA)の任意のアナログを意味する。GABAアナログの.非限定的な例には、プレガバリン、ガバペンチン、その薬理学的に等価な塩類、異性体、多形体、水和物、錯体又はクラスレートなどが含まれる。
【0040】
本明細書で使用される「NSAID」という用語は、任意の非ステロイド性抗炎症薬を意味する。非限定的な例には、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルビロフェン(Flurbirofen)、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン(Nabumetone)、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、及びトルメチン、並びにその薬理学的に等価な塩類、異性体、多形体、水和物、錯体、又はクラスレートなどが含まれる。GABAアナログの非限定的な例は、ガバペンチン、プレガバリン、又はそれらの薬理学的に許容される塩類である。
【0041】
更に別の実施形態において、本発明は、第2の有効成分が速放性コーティングに含まれる組成物を提供する。請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬品組成物は、37℃、900mlの0.1N HCl中で75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した場合に、2時間後に約0重量%から約30重量%のタペンタドールが放出され、4時間後に約5重量%から約22重量%のタペンタドールが放出され、6時間後に約15重量%から約30重量%のタペンタドールが放出され、また、8時間後に約40重量%以上のタペンタドールが放出されるようなインビトロでの溶解プロファイルを示す組成物である。
【0042】
本明細書で使用される「薬剤」という用語は、患者への薬理学的活性化合物の投与に適した医薬品組成物を意味する。
【0043】
「薬理学的に許容される塩」という用語は、開示された化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、且つ、生物学的に、又は別の面で好ましくないものではない塩類のことを指す。多くの場合、開示された化合物は、アミノ基又はカルボキシル基、或いはそれに類似する基の存在によって、酸性塩又は塩基性塩を形成することができる。これらの塩類並びに適切な酸又は塩基の調製は、当該技術分野では周知である。
【0044】
本明細書で使用される「準最適投薬量」という用語は、単一化合物療法で使用される場合は、その化合物に対する最適投薬量以下の投薬量を意味する。
【0045】
本明細書で使用される「相加効果」という用語は、個々の化合物から得られる効果を合計した結果もたらされる効果を意味する。
【0046】
本明細書で使用される「相乗効果」という用語は、2つの個々の化合物の効果を合計した結果もたらされる相加効果よりも大きな効果を意味する。
【0047】
本明細書で使用される「疾患の処置」という用語は、疾患、病気、又は障害を発症している患者の管理及びケア(care)を意味する。処置の目的は、疾患、病気、又は障害と闘うことである。処置には、疾患、病気、又は障害と関連する症状或いは合併症を軽減するだけでなく、疾患、病気、又は障害を取り除くか、又は制御するために、有効化合物を投与することが含まれる。
【0048】
本明細書で使用される「疾患の予防」という用語は、疾患の臨床的発症前における、疾患を発症する恐れがある個人の管理及びケアとして定義される。予防の目的は、疾患、病気、又は障害の発症と闘うことであり、症状又は合併症の発症を予防又は遅らせるために、および、関連する疾患、病気、又は障害の発症を予防又は遅らせるために、有効化合物を投与することを含む。
【0049】
本明細書で使用される「疼痛、及び疼痛に関連した病気」という用語は、神経障害痛、骨関節炎、関節リウマチ、線維筋痛、及び背痛、筋骨格痛、強直性脊椎炎、若年性関節リウマチ、片頭痛、歯痛、腹痛、虚血性疼痛、術後疼痛、を含む医学的症状に起因する、又は、麻酔又は術後の疼痛(surgical contrition)による、任意の疼痛として定義される。
【0050】
内側固体粒子相又は外側固体連続相内に存在する「持続放出(extended release)材料」という用語は、1以上の親水性ポリマー、及び/若しくは1以上の疎水性ポリマー、並びに/又は1以上の他の種類の疎水性材料(例えば、1以上のワックス、脂肪アルコール、及び/又は脂肪酸エステルなどの)のことを言う。内側固体粒子相に存在する「持続放出材料」は、外側固体連続相に存在する「持続放出材料」と同じであっても、異なっていてもよい。
【0051】
本明細書で使用される「持続放出(徐放性)」又は「制御放出」という用語は、速放性以外の製剤からの任意の放出に対して適用され、ここで有効成分の放出は実際上遅くなる。これは、薬理学的文脈において交換可能に使用される、長期間放出、遅延放出、持続放出、制御放出、時限式放出(timed release)、特異的放出、及び標的式放出(targeted release)などの様々な用語を含む。
【0052】
「持続放出の候補」という用語は、短い除去半減期と、その結果として生じる1日につき1回以上の投与という特性や、単回投与産物が持続性放出で投与されることで、より良い臨床結果を達成し、速放性と関連した副作用を避けることになる特性などのような、薬を、薬が持続放出するように処方するための候補にさせる、全ての薬の特性を包含する。
【0053】
本明細書で使用される「結合剤」という用語は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ワックスなどの薬理学的に許容される従来既知の任意の結合剤のことを言う。上記の結合剤の混合物もまた、使用され得る。好ましい結合剤は、平均分子量25,000〜3,000,000の重さを有するポリビニルピロリドンなどの水溶性物質である。結合剤は、コア(core)の総重量の約0%〜約40%を含み得、より好ましくはコアの総重量の約3%〜約15%を含み得る。一実施形態において、コア中の結合剤の使用は、随意である。
【0054】
「薬理学的に許容される誘導体」という用語は、タペンタドール又はトラマドール又はGABAアナログ又はNSAIDの薬理学的に等価な様々な異性体、光学異性体、錯体、塩類、水和物、多形体、エステル類などを意味する。
【0055】
「治療的に有効量」という用語は、哺乳類に生物学的応答を引き起こす量を意味し、準最適量を含む。
【0056】
本明細書で使用される「親水性ポリマー」という用語は、これらに限定されるわけではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウム、カルボキシメチル‐セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポビドン、カルボマー、カリウムペクテート(potassium pectate)、カリウムぺクチネート(potassium pectinate)などを含む。
【0057】
本明細書で使用される「疎水性ポリマー」という用語は、これらに限定されるわけではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アンモニオメタクリレートコポリマー(EudragitTM RL又はEudragitTM RS)、メタクリル酸共重合体(EudragitTM L又はEudragitTM S)、メタクリル酸‐アクリル酸エチルエステル共重合体(EudragitTM L 100‐5)、メタクリル酸エステル中性共重合体(EudragitTM NE 30D)、ジメチルアミノエチルメタクリレート‐メタクリル酸エステル共重合体(EudragitTM E 100)、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸(malefic anhydride)共重合体、その塩類、及びそのエステル類(GantrezTM)などを含む。
【0058】
内側固体粒子相及び/又は外側固体連続相に利用され得るその他の疎水性材料には、これらに限定されるわけではないが、ワックス(例えば、蜜蝋、カルナウバワックス、微結晶ワックス、及びオゾケライトなど);脂肪アルコール(例えば、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール;セチルアルコール;ミリスチルアルコールなど);脂肪酸エステル(例えば、グリセリルモノステアレート、グリセリンモノオレアート、アセチル化モノグリセリド、トリステアリン、トリパルミチン、セチルエステルワックス、パルミトステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、水素添加ヒマシ油などを含む。
【0059】
組成物のためのNSAIDの非限定的な例は、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルビロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、及びトルメチン、並びにその薬理学的に等価な、塩類、異性体、多形体、水和物、錯体、又はクラスレート(clatharates)などを含む。GABAアナログの非限定的な例は、ガバペンチン、プレガバリン又はその薬理学的に許容される塩である。
【0060】
開示された医薬品組成物は、37℃、900mlの0.1N HCl中で75rpmでUSPバスケット法を用いて測定した場合に、2時間後に約0重量%〜約30重量%のタペンタドールが放出され、4時間後に約5重量%から約22重量%のタペンタドールが放出され、6時間後に約15重量%から約30重量%のタペンタドールが放出され、また、8時間後に約40重量%以上のタペンタドールが放出されるようなインビトロでの溶解プロファイルを示し得る。
【0061】
トラマドール材料は、(1R,2R又は1S,2S)‐(ジメチルアミノメチル)‐1‐(3‐メトキシフェニル)‐シクロ‐ヘキサノール(トラマドール)、そのN‐オキシド誘導体(“トラマドールN‐オキシド”)、及びそのO‐デスメチル誘導体(“O‐デスメチルトラマドール”)或いはそれらの混合物のうちの任意のものである。トラマドール材料はまた、トラマドール材料の個別の立体異性体、ラセミ化合物を含む立体異性体の混合物、アミンの薬理学的に許容される塩類(例えば、塩酸塩など)、溶媒和化合物、及び多形体を含む。トラマドールはGrunenthalから市販されており、又は、米国特許第3,652,589号に記述される処理によって製造されてもよい(この特許文献は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0062】
持続放出性タペンタドールと、第2の鎮痛成分(第2の鎮痛成分は、トラマドール、γ‐アミノ酪酸(GABA)アナログ、又はNSAIDである)とを含む、組合せ。開示された組成物は、好ましくは、治療的に有効量のタペンタドール又は薬理学的に許容されるその塩と、治療的に有効量の第2の鎮痛成分と、を含み、ここで、タペンタドールは、単位投薬量当たりに、約5〜約800mgの範囲であり、好ましくは約50〜約600mgの範囲内であり、より好ましくは約100〜約400mgの範囲であり、更に好ましくは約200から約300mgの範囲であり(塩酸タペンタドールとして計算される)、第2の鎮痛成分は、約5〜約500mgのトラマドール、約5〜約500mgのトラマドールγ‐アミノ酪酸(GABA)アナログ、及び約5〜約500mgのトラマドールNSAIDである。
【0063】
開示された組成物は、例えば、顆粒、回転楕円体、ペレット、多微粒子(multiparticulate)、カプセル、パッチ、タブレット、小袋、制御放出懸濁液、或いはそのような顆粒、回転楕円体、ペレット、又は多微粒子を組み込む他の任意の適切な投薬形状であり得る。
【0064】
組成物は、例えば、コーティングされたタブレットであってもよく、このコーティングは、少なくとも1つの水不溶性‐水透過性膜形成ポリマー、少なくとも1つの可塑剤、及び少なくとも1つの水溶性ポリマー、並びに第2の有効成分を含む。好ましい形状では、コーティングは、コーティングの乾燥重量の約20%から約90%で変化する少なくとも1つの水不溶性‐水透過性膜形成ポリマー、コーティングの乾燥重量の約5%から約30%で変化する少なくとも1つの可塑剤の割合、並びにコーティングの乾燥重量の10%から75%で変化する少なくもと1つの水溶性ポリマーの割合、を有することも可能である。
【0065】
好ましい水不溶性‐水透過性膜形成性ポリマーは、エチルセルロースである。好ましい水不溶性ポリマーは、ポリビニルピロリドンである。好ましい可塑剤は、セバシン酸ジブチルである。
【0066】
本発明に係る組合せにおける1以上の有効成分は、マトリックスに適切に組み込まれ得る。このマトリックスは、少なくとも約12時間にわたって持続放出タペンタドールを提供し、また、好ましくは、治療的有効範囲内のインビトロでの溶出速度と、インビボでの吸収速度とを提供する、当業者には周知の任意のマトリックスであり得る。本発明に係る組合せは、好ましくは持続放出性マトリックスを使用し得る。代わりに、タペンタドールの持続放出を提供するコーティングを備えた、普通の放出マトリックスが使用されてもよい。
【0067】
本発明の組合せで使用される持続放出性マトリックスは、希釈剤、滑沢剤、結合剤、顆粒化補助剤(granulating aid)、着色剤、フレーバー剤、界面活性剤、pH調整剤、抗付着剤(anti‐adherent)、及び流動促進剤(glidant)(例えば、セバシン酸ジブチル、水酸化アンモニウム、オレイン酸、及びコロイド状ケイ酸など)などの薬理学分野において一般的な他の薬理学的に許容される成分も含み得る。例えば、微結晶セルロース、ラクトース、及び第二リン酸カルシウムなどの既知の任意の希釈剤が、この組合せを調製するのに使用され得る。適切な滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムである。適切な結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビドン、及びメチルセルロースである。適切な崩壊剤は、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、及びクロスカルメロースナトリウムである。
【0068】
本発明に適切な界面活性剤は、ポロキサマー(Poloxamer)188.RTM、ポリソルベート80、及びラウリル硫酸ナトリウムである。本発明のための適切な流動補助剤は、タルク、コロイド状無水ケイ酸である。マトリックスを調製するのに使用され得る非限定的な水溶性ポリマーには、約1000〜約6000の範囲の平均分子量の重さを有するPEGが含まれる。本発明に係る持続放出性タペンタドールを含む組合せは、薬理学分野で一般的な任意の膜コーティング材料を用いて便宜上膜コーティングされ得るが、好ましくは、水性膜コーティングが使用される。
【0069】
代わりに、持続放出性タペンタドールと、第2の鎮痛薬(第2の鎮痛薬は、トラマドール、γ‐アミノ酪酸(GABA)アナログ、又はNSAID、である)と、を含む本発明に係る組合せが、持続放出性コーティングを有する普通の放出マトリックスを含み得る。好ましくは、この組合せは、有効成分と、球状化(spheronising)剤とを含む膜でコーティングされた回転楕円体を含む。球状化剤は、回転楕円体を形成するために有効成分と共に球状化され得る、薬理学的に許容される任意の適切な材料であり得る。本発明に係る好ましい球状化剤は、微結晶セルロースである。使用される微結晶セルロースは、適切には、例えば、AvicelTM PH 101、又はAvicelTM PH 102(FMC社)であり得る。回転楕円体は、例えば、結合剤、膨張性剤、及び着色剤など薬理学分野で一般的な他の薬理学的に許容される成分を随意に含み得る。適切な結合剤は、水溶性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性ヒドロキシアルキルセルロース、或いは、例えばアクリルポリマー、又はアクリル共重合体(例えば、エチルセルロース)などの水不溶性ポリマー(これは、制御放出特性にも貢献し得る)を含み得る。適切な膨張性剤はラクトースを含む。
【0070】
回転楕円体は、水性媒体において遅い速度での有効成分の放出を可能にする材料でコーティングされる。本発明において使用され得る適切な持続放出性コーティング材料は、水不溶性ワックス、及び例えばポリメチルアクリレートなどのポリマー(例えば、EudragitTMポリマー)、或いは水不溶性セルロース(特にエチルセルロース)、を含む。随意に、例えばポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリマー、或いは、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性セルロースが含まれ得る。随意に例えばポリソルベート80などの他の水溶性成分が添加され得る。
【0071】
更に、代わりの実施形態において、流動促進剤(flux‐enhancing agent)も膜に含めることができ、或いは、持続放出性コーティングは先に記述したポリマーのうちの1つを含むことができる。流動促進剤は、剤形が経路又は多孔質膜を通して、全てのタペンタドールを実質的に投薬することができるように、コアに吸収される流体の量を増加することができる。流動促進剤は、水溶性材料又は腸溶性材料であり得る。流動促進剤として有用な好ましい材料の例には、これらに限定されるわけではないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアルコール、メタクリル酸共重合体、ポロキサマー(例えば、LUTROLTM F68、LUTROL F127、LUTROL F108であり、これらはBASFから市販されている)、及び、これらの混合物が含まれる。本発明で使用される好ましい流動促進剤はPEG 400である。
【0072】
流動促進剤はまた、タペンタドール若しくはその薬理学的に許容される塩類などの水混和性/水溶性の薬であってもよく、或いは、流動促進剤は腸内条件下で溶解する薬であってもよい。流動促進剤が薬である場合は、本医薬品組成物には、流動促進剤として選択されている薬の速放性をもたらす更なる長所がある。流体がコアに入って有効成分を溶解することを可能にするチャネルを、膜又は持続放出コーティングに形成するために、流動促進剤は溶解して、膜又は持続放出コーティングから浸出する。好ましい実施形態では、流動促進剤は、コーティングの総重量の約0%〜約40%を含み、もっとも好ましくはコーティングの総重量の約2%から約20%を含む。
【0073】
可塑剤などの一般に既知の賦形剤もまた、膜又は持続放出性コーティングを調製するために使用され得る。いくつかの一般に既知の可塑剤には、これらに限定されるわけではないが、アジピン酸、アゼライン酸、ベンゾエート(enzoate)、クエン酸、ステアリン酸、イソエブケート(isoebucate)、セバシン酸、クエン酸トリエチル、クエン酸トリ‐n‐ブチル、クエン酸アセチルトリ‐n‐ブチル、クエン酸エステル類、並びに、John Wiley及びSonsによる出版のEncyclopedia of Polymer Science and TechnologyのVol.10(1969年)に記載される全てのものが含まれる。好ましい可塑剤は、トリアセチン、アセチル化モノグリセリド、ブドウの種油、オリーブ油、胡麻油、アセチルクエン酸トリブチル(acetyltributylcitrate)、アセチルクエン酸トリエチル(acetyltriethylcitrate)、グリセリンソルビトール、ジエチルオキザラート、リンゴ酸ジエチル(diethylmalate)、フマル酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、セバチン酸ジブチル(dibutylsebacate)、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、グリセリルトリブチラート(glyceroltributyrate)などである。使用される正確な量は、使用される可塑剤の種類に依存するが、典型的には、膜又は持続放出性コーティングの総重量に基づいて、0%から約25%の量が使用され、好ましくは約2%から約15%の可塑剤が使用され得る。
【0074】
一般に、コア周辺の膜又は持続放出性コーティングは、コアとコーティングの総重量に基づいて、約1%から約20%を含み、また、好ましくは約2%から約10%を含む。
【0075】
コアを取り囲んでいる膜又は持続放出性コーティングは、更に経路を含み得、この経路は、好ましい実施形態においては、コアからの薬の制御放出を可能にする。本明細書で使用される用語経路は、剤形からタペンタドールを放出するための浸透性の通路を形成するために、開口部、穴、ボア、ホール、弱くなった部分、又はクレディブルエレメント(credible element)(例えば、徐々に破壊されるゼラチンプラグなど)を含む。本発明に係る使用される経路はよく知られたものであり、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第4,034,758号;第4,077,407号;第4,783,337号;及び第5,071,607号に記載されている。
【0076】
以下の実施例1‐13は、持続放出性タペンタドールと、第2の鎮痛薬(第2の鎮痛薬は塩酸トラマドール、γ‐アミノ酪酸(GABA)アナログ又はNSAIDである)と、を含む組合せに関連する本発明を説明するために示される。本発明に関して、我々は、塩酸トラマドールと、特定のGABAアナログであるプレガバリン及びガバペンチン、特定のNSAIDであるメロキシカム及びナプロキセンを、例示目的で単なる実施例として使用してきた。そして、これらの実施例は、本発明の範囲を少しも限定しない。他のGABAアナログ、又は例えばセレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルビロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、及びトルメチンなどの他のNSAIDを用いて、或いは、当該技術分野で周知の他の製造方法を用いて、本組合せがどのように変更され得るかについては、当業者にとっては周知であろう。
【0077】
【表1】

【0078】
<製造工程>
持続放出性塩酸タペンタドールタブレットと、ナプロキセンとを含む組合せは、標準的なコーティング工程を使用する2つの段階で製造された。第Iの段階で、塩酸タペンタドールは、コアへと形成された。このコアは更に、持続放出性タペンタドールコアを得るために、持続放出性コートでコーティングされた。第IIの段階では、詳細については下記に示されるように、この持続放出性コーティングされた塩酸タペンタドールのコアは、ナプロキセンを含む速放性層でコーティングされた。
【0079】
<第Iの段階:コアの調製>
タペンタドールHClは、微結晶セルロース及びコロイド状二酸化ケイ素、並びに、充填剤のうちの1つ又は混合物と混合され、そして、当該技術分野で周知の適切な方法を用いて、ポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールを含む結合剤溶液を使って造粒される。造粒された塩酸タペンタドールは、乾燥し、選別された。この塩酸タペンタドールは更に、流動促進剤(glidant)の有無にかかわらず水素添加植物油を用いて、滑らかにされる。滑らかにされたブレンド物は、圧縮機械を用いてタブレットへと圧縮される。
【0080】
<コーティング溶液とコーティング>
コーティング溶液は、水不溶性水透過性ポリマーのエチルセルロースと、水溶性ポリマーのポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースとの水分散液を使用して調製される。ポリエチレングリコールの混合物は、プロペラ式攪拌機を用いて調製され、また、この同じポリエチレングリコールの混合物は適切なホモジナイザーを使用して均質化される。コアタブレットは、チップセットが4’’、溶射速度が25ml/ガン/分、排出温度が約45℃付近、噴霧圧力が10‐35psiで、パン速度(pan speed)が5‐8rpmで、空気流量が350CFMで、O’Haraなどの標準的なコーターを用いてコーティング溶液を使って、コーティングされる。
【0081】
<第IIの段階>
第IIの段階では、ナプロキセン製剤は、当該技術分野で周知の造粒技術を用いて調製され、その後、崩壊剤及び滑沢剤とブレンドされる。タペンタドール持続放出タブレットがコアとして使用され、ナプロキセン製剤の速放性層が外側層を形成する場合には、第Iの段階で調製されるタペンタドール持続放出タブレットは、圧縮コーティング機を用いて、滑らかにブレンドされたナプロキセン製剤でコーティングされる。
【0082】
ナプロキセンコーティングは、上述のコーターを用いて、持続放出性コーティングされた100mgの塩酸タペンタドールタブレットに適用された。このナプロキセンがコーティングされたシールがコーディングされている100mgの塩酸タペンタドールタブレットを覆って、同様のコーター(coat)を用いてカラーコーティングがなされた。噴霧は、温度46‐47℃、噴霧圧力40‐60psi、容射速度180グラム/分/3ガンで行なわれた。パン速度は4‐8rpm及び空気容量lOOO±lOOであった。
【0083】
最後に、カラーコーティングされたタブレットは乾燥され、随意に、Cindrellaワックスを用いて磨かれた。そして、完成した最終的なタブレットは、適切な乾燥剤と伴にHDPEボトルに包装され、その後適切な安定性研究及び臨床研究を受けた。実施例1において、100mgの持続放出性タペンタドールと、250mgのナプロキセンとを含む医薬品組成物が表1に従って調製された。
【0084】
ここに例示される製造工程は説明のためのみに向けられており、この医薬品組成物は当該技術分野でよく確立されているいくつかの方法を使用して調製され得る。その他の例示された製剤については、以下の表2‐5に記載される。
【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
<コアの調製>
タペンタドールHClと、コロイド状二酸化ケイ素とが混合され、1.0mmのふるい(screen)に通された。ポリビニルアルコールが純水に溶解された。混合されたタペンタドールHClとコロイド状二酸化ケイ素粉体は、流動層造粒機(GLATT GPCG1)において、ポリビニルアルコールの水溶液を用いて造粒され、その後乾燥された。造粒の後、顆粒はフマル酸ステアリルナトリウムとブレンドされ、その後、1.0mmのスクリーンに通された。ブレンド物は、その後、Manesty Betapressを用いて、タブレットコアへと圧縮された。
【0090】
<コーティング調製>
エチルアルコールとイソプロパノールとが重さを量った後に、混合された。プロペラ式攪拌機(Coframo RZR1)を用いて撹拌しながら、セバシン酸ジブチル及びエチルセルロースが、エチルアルコール及びイソプロピルアルコールに加えられ、溶解された。エチルセルロース及びセバシン酸ジブチルは、完全に溶解させることができた。ポリビニルピロリドンが加えられた。すべての成分が溶解するまで、溶液は撹拌された。溶液は、高圧ホモジナイザー(Bee Internationalの#7ノズルを取り付けたMini DeBee 2000)にかけられた。タブレットコアは、孔あきコーティングパン(Vector LCDSのO’Ηara Labcoat I11 36’’ Pan)において、コーティング溶液を用いてコーティングされた。このコーティングパラメータを表6に列挙する。
【0091】
【表6】

【0092】
更に別の実施例では、本発明は、必要とする患者に対する治療的有効量の持続放出性タペンタドールと、NSAIDとを含み、疼痛又は疼痛に関連する病気の治療に効果的に使用され得る医薬品組成物を開示しており、この組成物は別な方法で処方され得る。例えば、持続放出性タペンタドールと、ナプロキセンなどのNSAIDとを含む組合せは、以下に例示されるように、2重層のタブレットとして調製された。

層1:
タペンタドールHCl 200mg
微結晶セルロース 10‐25%
ポリビニルアルコール 3‐5%
エチルセルロース(5‐20cp) 10‐20%
ヒドロキシエチルセルロース 5‐15%
コロイド状二酸化ケイ素 2‐5%
フマル酸ステアリルナトリウム 1‐2%

層2:
ナプロキセン 250mg
微結晶セルロース 5‐20%
ポビドン 10‐15%
クロスカルメロースナトリウム 5‐10%
ステアリン酸マグネシウム 0.5‐2%
【0093】
層1の調製:
塩酸タペンタドール、微結晶セルロース、及びコロイド状二酸化ケイ素は、ポリビニルアルコールを用いて造粒され、その後乾燥された。乾燥した顆粒はエチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースと混合され、フマル酸ステアリルナトリウムを用いて滑らかにされた。
【0094】
層2の調製:
微結晶セルロースを混合したナプロキセンはポビドンを用いて造粒された。顆粒は乾燥した後に、クロスカルメロースナトリウムと混合され、最後にステアリン酸マグネシウムを用いて滑らかにされた。
【0095】
圧縮:
層1と層2は、二分子層回転圧縮機のホッパーにセットされ、所望の硬さに圧縮された。
【0096】
【表7】

【0097】
【表8】

【0098】
<製造工程,持続放出性塩酸タペンタドール及びメロキシカム>
持続性塩酸タペンタドールタブレットと、メロキシカムとを含む組合せは、標準的な造粒工程とコーティング工程を用いて製造された。塩酸タペンタドールとラクトースは、造粒機において、共に造粒され、その後エチルセルロースと水を噴霧された。顆粒状の塩酸タペンタドールは乾燥の後、選別された。塩酸タペンタドール顆粒は、セトステアリルアルコールと混合された。タルク、及びステアリン酸マグネシウムは、塩酸タペンタドールと混合され、その顆粒はタブレットへと圧縮された。圧縮されたタブレットは、コーティング成分を用いてコーティングされた。上記で調製されたコーティングされた持続放出性タペンタドールタブレットは、更にチップセットが4’’、溶射速度が25ml/ガン/分、排出温度が約45℃付近、噴霧圧力が10‐35psi、パン速度が5‐8rpmで、空気流量が350CFMで、O’Haraなどの標準的なコーターを用いて、Opadry Clear(YS-1-7006)溶液で密封コーティングされた。メロキシカムコーティングは、上記で述べたコーターを使用して、コーティングされた100mgの塩酸タペンタドールタブレットに適用された。これを覆って、7.5mgのメロキシカムコーティングされたシールが100mgの塩酸タペンタドールタブレットをコーティングし、カラーコーティングが同様のコーター(coat)を使って行なわれた。噴霧は46-47℃の温度、噴霧加圧40-60psi、溶射速度180グラム/分/3ガンで行なわれた。パン速度は4‐8rpm、空気容量lOOO±lOOであった。
【0099】
最終的に、カラーコートティングされたタブレットは乾燥され、Cindrellaワックスを用いて磨かれた。そして、完成した最終的なタブレットは適切な乾燥剤と伴に、HDPEビンに包装され、その後適切な安定性研究及び臨床研究を受けた。
【0100】
【表9】

【0101】
【表10】

【0102】
【表11】

【0103】
【表12】

【0104】
【表13】

【0105】
開示された組成物はまた、当該技術分野で十分に確立している方法を用いても調製され得る。開示された組成物は、表14及び表15にて概略される一般的な調製を用いて調製され得る。
【0106】
【表14】

【0107】
【表15】

【0108】
<投与方法>
本発明は更に、疼痛及び疼痛に関連する病気を処置する方法を含む。この方法は、組合せの各種類毎に、よく制御されたヒトに対する臨床試験を用いて確立された。典型的な研究で、持続放出性タペンタドール及びプレガバリンを含む組合せと、持続放出性タペンタドール及びナプロキセン(NSAID)を含む組合せと、持続放出性タペンタドール及びトラマドールを含む組合せの薬効を測定した。患者の疼痛及び疼痛に関連する病気の治療に関して、これらの組合せのそれぞれと、個々の薬剤を用いる単剤療法との比較が行なわれた。
【0109】
<臨床試験>
以下の一般的な方法は、全て研究において使用された。
【0110】
無作為化:
無作為化は、10ブロックにおいて、コンピュータ生成の乱数を用いて行なわれた。単剤療法又は併用療法の無作為化コード(randomization code)は、生検センターにて、順番に番号付けされた不透明な密封封筒に入れられた。患者を募集し、同意が得られた場合は、次の番号が付けられた封筒は、治療に先立って無作為化コードを知っていないオペレーターにより、開封された。
【0111】
尺度と測定:疼痛は、0‐100mmで段階付けられる視覚アナログ尺度(VAS:visual analogue scale)を用いて評価された。疼痛の評価は、1週、2週、3週、4週、5週及び6週の診察の度に行なわれた。患者は、治療期間中に経験する疼痛の強度を段階付けするために、0から100mmまでのVASの評価をどのように用いるかについて、医者による標準的な方法で教えられた。その尺度では、左端の0は全く疼痛が無い状態として定義され、右端の100は患者が想像でき得る最悪の疼痛として定義された。この線上には、更なる指標は無かった。疼痛の強度は、左端からのミリメートル単位での距離によって示された。患者は、薬投与の後の疼痛の強度を段階付けするように依頼された。疼痛は、患者の毎週の疼痛の評価日誌において、患者により評価された。薬を処方した医者は、この特定の患者に対する全てのVAS形状(VAS form)を得た。
【0112】
統計解析:
データは、平均値±標準偏差(SD)として表される。VASにおける差は、unpaired Student t検定を用いて分析され、また、2つのグループ間での疼痛スコアの減少における差は、差の中央値に対してMann‐whitney U検定を用いて分析された。必要に応じて、同様の統計的検定が、他の結果変数の群比較の間に対しても使用された。0.5未満のtwo tailed P valueが統計的有意性を示すために考慮された。SASソフトウェアが、統計解析に使用された。
【0113】
<研究I,タペンタドールとNSAIDの組合せ>
患者:
薬効は、変形性膝関節症の治療において、固定用量の持続放出タペンタドールER及びナプロキセンタブレットと、タペンタドール及びナプロキセンタブレットの6週間、多施設共同(multi center)、二重盲検式、無作為化、並行、3群間での薬効比較を用いて確立された。機能クラス1‐111の骨関節炎に関連する中等度から重度の疼痛を有する18歳から75歳までの50人の患者が研究に登録された。登録は、各群において、最低30人の患者が研究を完了する方式に設計された。インフォームド・コンセントに署名した後で、選定において試験対象患者基準及び除外基準に適合した患者は、全ての鎮痛薬が中止される7日間の休薬期間(washout period)に入った。研究の第1週目の開始時における診察2(visit 2)の期間中に、指標となる膝関節において、VAS(視覚アナログ尺度)で240mmの疼痛強度を報告した適格患者には、VASベースラインスコアを測定してもらい、これらの患者は無作為に3つの群、即ち、固定用量のタペンタドールER及びナプロキセン、又はタペンタドール群、又はナプロキセン群に割り当てられた。表16は研究における患者のプロファイルを示す。
【0114】
【表16】

【0115】
薬と治療群:
治療群と、投薬計画を以下に列挙する。

治療群 薬/日当たり/患者当たり
1.治療A: プラシーボ
2.治療B: タペンタドールHCl 100mg×2
3.治療C: ナプロキセン 250mg×2
4.治療D: タペンタドールHCl 200mg+ナプロキセン 500mgの組合せ

【0116】
患者は、プラシーボ、又はタペンタドールHCl100mg、又はナプロキセン250mg、又は固定用量のタペンタドール100mg+ナプロキセン250mgの組合せのいずれかに割り当てられた。治療に対して無反応な疼痛を有する患者、又は許容できない副作用を有する患者は、中止された。患者は、1週、2週、3週、4週、5週と6週に薬効測定のために戻った。
【0117】
薬効の主要な測定は、診療にきた患者による関節炎痛の強度VAS(視覚アナログ尺度)スコアであった。関節炎VASは、疼痛強度を評価するための最も一般的に行なわれる有効なツールであり、製剤の鎮痛能を評価するためのFDAによって推奨される1つである。
【0118】
我々は、固定用量での持続放出性タペンタドールHClとナプロキセンの使用の臨床的に顕著な効果は、塩酸タペンタドール又はナプロキセンのいずれかを用いた単剤療法と比較して疼痛スコア(VAS)を少なくとも15%低減することであると考えた。或いは、共投与される組合せとして使用される場合に、ナプロキセン又はタペンタドールのいずれかの用量を少なくとも15%減少させることが、単剤療法に勝る顕著な効果であると考えた。
【0119】
本発明の目的は、臨床試験からの以下の結果によって達成される。合計で206人の患者は無作為化され、安全性の評価が可能であった。これらのうち、170人は包括解析集団(ITT:intent‐to‐treat population)の評価が可能であった。ITT集団は、ベースライン(基準)となる診察(診察2)、及び1週の診察(診察3:治療における最初の有効性の主要評価項目収集点)において記録された有用性の主要評価情報を有する、安全性評価が可能な全ての患者を含んでいた。ITT集団はまた、治療効果が無いために1週の診察の前に途中中止された全ての患者も含んだ。登録した患者の年齢の中央値は61歳であった、また、骨関節炎期間の中央値は10年であった。
【0120】
タペンタドール又はナプロキセンのいずれかを使用する単剤療法と比較して、持続放出性タペンタドールとナプロキセンとを含む固定用量の組合せは、変形性膝関節症に伴う疼痛強度における有効性の主要評価項目について、統計的に有意であり、また、臨床的に意味のある低減をもたらした。
【0121】
<タペンタドール及びGABAアナログの組合せ,研究II>
研究は、二重盲検式、無作為化、プラセボ対照、及び2‐期間クロスオーバーの設計であった。2週間のrun‐in期間後、32人の糖尿病患者(2型糖尿病の男性17人、女性15人、[平均値±標準誤差]年齢61.7±1.6、糖尿病罹病期間8.8±1.5年、疼痛を伴う神経障害期間2.2±0.4年)は、無作為化され、4週間にわたって、プラシーボ、又は塩酸タペンタドール100mg、又はプレガバリン250mg/ガバペンチン250mg、又は持続放出性タペンタドールHCl+プレガバリン250mg又はガバペチン250mgの多剤混合薬(FDC:Fixed Dose Combination)のいずれかを受けた。2週間のウオッシュアウト期間の後、更に4週間にわたって、それらの治療を交換した。患者は、就寝時刻の前に両足にスプレーを投与された。隔週の疼痛と、他の感覚症状が、視覚アナログ尺度(VAS)を使って評価された。患者特性を表17に示す。
【0122】
【表17】

【0123】
各患者は疼痛を伴う神経障害の治療が困難であるという長い経歴を有し、また、各患者は症状が無反応であったり、又は許容できない副作用に起因して、例えばアセトアミノフェン、デュロキシチン(duloxitine)、アミトリプチリン、又はガバペンチンなどの様々な薬を試してきた。適格な被検体は、その神経障害痛に対する何らかの他の薬が認められず、また、安定な糖尿病コントロールを有する、1型糖尿病患者、及び2型糖尿病患者を含んだ。除外基準には、異常な血糖管理、足の脈拍が触知できない末梢血管疾患(PVD)、活動性足潰瘍の存在、舌下腺の三硝酸グリセリンによる処置、勃起障害薬の患者、患者の疼痛評価に影響を及ぼす要因、及び末梢性神経障害の他の原因の存在、を含んだ。研究の継続期間中に糖尿病治療に対する大きな変更は成されなかった。
【0124】
患者はrun‐in期間の開始時に神経学的に評価された。その後で、患者は、無作為に割り振られ、4週にわたって、プラシーボ、又は塩酸タペンタドール100mg、又はプレガバリン250mg/ガバペンチン250mg、又はタペンタドールHCl100mg+プレガバリン250mg/ガバペンチン250mgの多剤混合薬(FDC)、を受けた。疼痛に対して、10cmの視覚アナログ尺度(VAS)が患者により隔週で記録された。ここで、0は疼痛が全く無いことを意味し、また、10はこれまでに経験したなかで最も重度の疼痛を意味する。治療効果は、各治療段階に対するLickertスケールでの最終スコアとベースラインスコアとの間の差異であるように定義された。
【0125】
本発明の目的は、糖尿病性神経障害に関する疼痛強度の有効性の主要評価項目について、タペンタドール又はプレガバリンのいずれかを用いる単剤療法と比較して、統計学的に有意で臨床的に意義のある低減をもたらす、持続放出性タペンタドール、及びプレガバリン/ガバペンチンを含む固定用量の組合せによって達成される。我々は、固定用量の持続放出性タペンタドールHCl及びプレガバリン/ガバペンチンを用いる臨床的に有意な利点は、その他の治療と比較して少なくとも15%の疼痛スコア(VAS)における低減であると考える。
【0126】
<タペンタドール及びトラマドールの組合せ,研究III>
持続放出性塩酸タペンタドール及び塩酸トラマドールの固定用量の組合せは、ヒトの臨床試験でテストされた。この研究IIIにおいて、神経障害痛、骨関節炎、関節リウマチ、線維筋痛、並びに背痛及び筋骨格痛を含み、6ヶ月以上にわたる疼痛として定義される、非ガン性慢性疼痛(CNCP)を患う40人の患者が、臨床試験に使用された。疼痛の種類に基づいて患者を分離する努力は成されなかったし、我々は疼痛種類に基づいて疼痛軽減の程度を評価しなかった。片頭痛、歯痛、腹痛(慢性膵炎、腎結石などに由来する)、及び血管疾患に由来する虚血性疼痛を有するこれらの患者は、大抵CNCPとして分類されないため除外された。中毒(アルコール又はドラッグ)の経歴を有する患者は、試験から除外された。患者特性及びVAS疼痛スコアは、以下の表18及び表19に列挙される。
【0127】
【表18】

【0128】
【表19】

【0129】
本発明の目的は、糖尿病性神経障害に関する疼痛強度における有効性の主要評価項目について、タペンタドール又はトラマドールのいずれかを用いる単剤療法と比較して、統計的に有意で臨床的に意味がある低減をもたらす、持続放出性タペンタドール及びトラマドールを含む固定用量の組合せによって達成される。我々は、固定用量の持続放出性タペンタドールHClとトラマドール(実施例13)を使用する臨床的に有意な利点は、その他の治療と比較して少なくとも15%の疼痛スコア(VAS)における低減である考えた。
【0130】
<結果>
発明の目的は、以下の結果によって達成される:
【0131】
図1は、実施例1に従って処方される、持続放出性タペンタドールHCl100mg、及びナプロキセン250mgのタブレット中のタペンタドールHClのインビトロでの溶解プロファイルを図解する。
【0132】
図2は、1週‐6週平均値に基づいて、持続放出性タペンタドール100mg及びナプロキセン250mg(実施例1)を含む組合せ薬に対するVASスコアにおけるベースラインからのLS平均変化と、タペンタドール及びナプロキセンの単剤療法のLS平均変化とを比較する。主要評価項目(6週にわたるベースラインからのLS平均変化)に関して、タペンタドール群については38%、ナプロキセン群については28%、及びプラシーボ群については21%であるのと比較して、持続放出性タペンタドール及びナプロキセン250mgの固定用量の組合せにおいては、関節炎痛の強度VASがベースラインから49%変化があった。
【0133】
図3は、4つの治療群に対する、毎週のベースラインからのLS平均変化を示す。一番最初の週に、タペンタドールHCl100mg×2、又はナプロキセン250mgX2、或いはタペンタドール100mg&ナプロキセン250mgの組合せ(実施例1)×2、のいずれかを患者が受けていた場合に、薬物反応における差異が現れた。全ての薬に対する反応は、1週から6週までで、プラシーボと相対的に増加した。組合せ薬に対する反応は、ナプロキセン又はタペンタドールのいずれかを用いる単剤療法による反応よりも顕著に高かった。
【0134】
図4は、4つの治療に関する平均VAS疼痛スコア変化を示す;タペンタドール100mg,プレガバリン250mg,及び持続放出性タペンタドール100mgの+プレガバリン250mgの固定用量の組合せ(実施例10)。
【0135】
図5は、3つの治療に関する平均VAS疼痛スコア変化を示す;トラマドール50mg、タペンタドール100mg、プラシーボ、及び持続放出性タペンタドール100mg+トラマドール50mg(実施例13)の固定用量組合せ。
【0136】
図6は、4つの治療に関する平均VAS疼痛スコア変化を示す;タペンタドール100mg、ガバペンチン250mg、及び持続放出性タペンタドール100mg+ガバペンチン250mgの固定用量組合せ(実施例11)。
【0137】
本明細書において使用される省略形は、化学分野及び生物学分野の範囲における、それらの通常の意味を有する。本明細書で引用される全ての出版物、特許、及び特許文献は、参照によりまるで個別に組み込まれるかのように、参照によって本明細書に組み込まれる。何らかの矛盾がある場合は、その中にいくつかの定義を含む本開示が優先される。本発明は、様々な特定の好ましい実施形態及び技術に関連して記述されてきた。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲内に留まりながら、多くの変形及び変更が成され得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続放出性タペンタドールと、少なくとも1つの薬理学的に許容可能な担体と、第2の有効成分とを含む医薬品組成物であって、前記第2の有効成分がトラマドール、GABAアナログ又はNSAIDである、医薬品組成物。
【請求項2】
前記NSAIDが、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルビロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、又はその薬理学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬品組成物。
【請求項3】
前記GABAアナログが、ガバペンチン、プレガバリン、又はその薬理学的に許容される塩である、請求項1又は2に記載の医薬品組成物。
【請求項4】
前記第2の有効成分を含む、速放性コーティングを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項5】
前記組成物が、持続放出性タペンタドール層と、前記第2の有効成分を含む層とを含む、二重層構成である、請求項1から4のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項6】
前記組成物が、37℃、900ml 0.1N HCl中で75rpmでUSPバスケット法を使用して測定した場合に、2時間後に約0重量%から約30重量%のタペンタドールが放出され、4時間後に約5重量%から約22重量%のタペンタドールが放出され、6時間後に約15重量%から約30重量%のタペンタドールが放出され、また、8時間後に40重量%以上のタペンタドールが放出される、インビトロでの溶解プロファイルを示す、請求項1から5のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項7】
前記組成物が、少なくとも1つの水不溶性水透過性膜形成性ポリマーと、少なくとも1つの可塑剤と、少なくとも1つの水溶性ポリマーと、前記第2の有効成分とを含む、コーティングでコーティングされたタブレットである、請求項1から6のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項8】
前記水不溶性水透過性膜形成性ポリマーの割合が、前記コーティングの乾燥重量の約20%から約90%であり、前記可塑剤の割合が、前記コーティングの乾燥重量の約5%から約30%であり、また、前記水溶性ポリマーの割合が、前記コーティングの乾燥重量の約10%から約75%である、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項9】
前記水不溶性水透過性膜形成性ポリマーがエチルセルロースであり、前記水溶性ポリマーが、ポリビニルピロリドンであり、及び、前記可塑剤がセバシン酸ジブチルである、請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項10】
前記コアが滑沢剤、結合剤、流動促進剤、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項11】
前記担体は、アジュバント、防腐剤、抗酸化剤、増粘剤、キレート剤、抗真菌剤、抗菌剤、等張剤、フレーバー剤、甘味剤、消泡剤、着色剤、希釈剤、湿潤剤、壁細胞活性剤、又はそれらの組合せを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項12】
トラマドール、メロキシカム、ナプロキセン、プレガバリン、又はガバペンチンの請求項1から11のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項13】
前記第2の有効成分が、ガバペンチン及びプレガバリン或いはそれらの薬理学的に許容される塩である、請求項12に記載の医薬品組成物。
【請求項14】
前記第2の有効成分が、ナプロキセンである、請求項19に記載の医薬品組成物。
【請求項15】
前記タペンタドールが、約5mgから約400mgの量で含まれる、請求項1から14のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項16】
前記GABAアナログが、約5mgから約500mgの量で含まれる、請求項1から14のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項17】
前記NSIADが約5mgから約400mgの量で含まれる、請求項1から14のいずれか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項18】
持続放出性タペンタドールと、薬理学的に許容される担体と、第2の有効成分とを含み、前記第2の有効成分はトラマドール、GABAアナログ、又はNSAIDである、請求項1から17のいずれか1項に記載の医薬品組成物を、処置を必要とする患者に投与することを含む、疼痛を処置する方法。
【請求項19】
前記NSAIDが、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルビロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、及びトルメチン、或いはその薬理学的に許容される塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記GABAアナログが、ガバペンチン及びプレガバリン、或いはそれらの薬理学的に許容される塩である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記疼痛が、神経障害痛、骨関節炎、関節リウマチ、線維筋痛、並びに背痛及び筋骨格痛、強直性脊椎炎、若年性関節リウマチ、糖尿病性神経障害、片頭痛、歯痛、腹痛、虚血性疼痛、術後疼痛、或いは、麻酔又は術後の疼痛による疼痛である、請求項18から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から17のいずれか1項に記載される、持続放出性タペンタドールと、少なくとも1つの薬理学的に許容される担体と、第2の有効成分の組成を含み、前記第2の有効成分が、トラマドール、GABAアナログ、及びNSAIDから選択される、医薬品キット。
【請求項23】
疼痛を処置するための薬剤を調製するための請求項1から17のいずれか1項に記載の組成物の用途。
【請求項24】
前記NSAIDがナプロキセンである、請求項23に記載の用途。
【請求項25】
前記GABAアナログがプレガバリン又はガバペンチンである、請求項23に記載の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−504509(P2011−504509A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535107(P2010−535107)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/084423
【国際公開番号】WO2009/067703
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(510142069)プロテクト ファーマスーティカル コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】PROTECT PHARMACEUTICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】759 Bloomfield Ave,Suite 411,West Caldwell,New Jersey 07006,United States of America
【Fターム(参考)】