説明

タマゴサラダ

【課題】タマゴサラダをpH5.5以下に調整したにも拘らず、茹卵特有のコク味を増強したタマゴサラダ、及びタマゴサラダ用調味液を提供する。
【解決手段】茹卵40%以上及び調味液を配合するタマゴサラダにおいて、前記調味液が、pH3.5〜5、ブリックス60以上であり、かつ、糖アルコール(固形分換算)10%以上及び卵黄(生換算)3〜15%であることを特徴とするタマゴサラダ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茹卵を40%以上配合したタマゴサラダをpH5.5以下に調整したにも拘らず、茹卵特有のコク味を増強したタマゴサラダ、及びタマゴサラダ用調味液に関する。
【背景技術】
【0002】
茹で卵の截断物をマヨネーズ等の酸性調味料で和えたタマゴサラダは、製造後の日持ち期間を延ばすために、タマゴサラダのpHを5.5以下に調整する場合がある。しかしながら、この場合、茹卵の配合量を増やしたとしても、pHが低いため茹卵特有のコク味が失われてしまう問題があった。
【0003】
従来、茹卵特有のコク味を増す方法として、例えば、特開2004−290053号公報(特許文献1)には、卵黄と共役リノール酸とからなるゲル状卵加工組成物が記載されている。しかしながら、共役リノール酸を有効量となる4〜15%配合した場合、原材料費が高く消費者の要望を十分に満足するものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−290053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、茹卵40%以上及び調味液を配合したタマゴサラダをpH5.5以下に調整したにも拘らず、茹卵特有のコク味を増強することができるタマゴサラダ、及びタマゴサラダ用調味液を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、前記調味液を特定のpH及びブリックスに調整し、かつ、卵黄及び糖アルコールを特定量配合するならば、意外にも茹卵特有のコク味が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、(1)茹卵40%以上及び調味液を配合するタマゴサラダにおいて、前記調味液が、pH3.5〜5、ブリックス60以上であり、かつ、糖アルコール(固形分換算)10%以上及び卵黄(生換算)3〜15%であるタマゴサラダ、(2)前記調味液の卵黄がリゾ化処理されてなる(1)のタマゴサラダ、(3)茹卵を60%以上配合する(1)又は(2)のタマゴサラダ、(4)茹卵を40%以上配合するタマゴサラダ用調味液であって、pH3.5〜5、ブリックス60以上であり、かつ、糖アルコール(固形分換算)10%以上及び卵黄(生換算)3〜15%を配合するタマゴサラダ用調味液、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、茹卵特有のコク味を増強したタマゴサラダを提供できる。これにより、保存期間が長く、かつ風味に優れたタマゴサラダを製造することができるようになり、タマゴサラダ市場の更なる需要拡大が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のタマゴサラダ及び調味液を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0010】
本発明のタマゴサラダは、茹卵40%以上及び調味液を配合する。まず、調味液を中心に詳述する。
【0011】
本発明の調味液は、pH3.5〜5、ブリックス60以上であり、かつ、糖アルコール(固形分換算)10%以上及び卵黄(生換算)3〜15%を配合することを特徴とする。また、本発明は、調味液を茹卵全体に略均一に浸透させることで、茹卵特有のコク味増強効果を得ている。
【0012】
本発明の調味液のpHは、3.5〜5であり、4〜5が好ましく4.2〜4.8がより好ましい。pHが上記範囲より低い場合、卵蛋白質が酸変性することで調味液が茹卵に浸透せず、本発明のコク味増強効果が得られ難い。pHが上記範囲より高い場合、本発明のコク味増強効果が得られ難い。
【0013】
本発明の調味液に用いる酸材は、特に限定されないが、レモン、リンゴ、グレープフルーツ等の果汁、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸等の有機酸等を挙げることができ、風味の面で特に酢酸が好ましい。
【0014】
本発明の調味液のブリックスは、調味液が茹卵に浸透し易いように高く調整する必要が有り、具体的には60以上であり、好ましくは65以上であり、より好ましくは70以上である。また、ブリックスが85を超えると、調味液の粘性が高くなり過ぎ、茹卵に概均一に絡めることが難しい場合がある。ブリックスを調整する方法は、食用に用いられる固形分であれば特に限定せず配合すればよい。
【0015】
本発明においてブリックスは、品温20℃における屈折率を測定し、純蔗糖溶液(サッカロース)の質量/質量パーセントに換算(ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表を使用)した値をいう。ブリックスの測定は、一般に市販されている糖度計を用いて行えばよい。
【0016】
本発明の調味液に用いる糖アルコールは、調味液に耐熱性を持たせる目的で配合している。調味液と茹卵とを熱い状態で混合することで、調味液が茹卵に浸透し易くなり、本発明のコク味増強効果が発揮され好ましい。糖アルコールの配合量は、固形分換算で10%以上であり、12%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。糖アルコールの配合量が上記範囲より少ないと、本発明のコク味増強効果が得られ難い。また、糖アルコールの配合量が80%を超えると、調味液の粘性が高くなり過ぎ、茹卵に概均一に絡めることが難しい場合がある。
【0017】
本発明の調味液に用いる糖アルコールは、糖のアルデヒド基及びケトン基を還元してアルコール基とした多価アルコールであり、食用に用いられるものであれば何れのものでも良いが、保水効果が高く茹卵に浸透し易いオリゴ糖アルコールが好ましい。オリゴ糖アルコール以外には、特に限定されないが、例えば、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、デキストリン糖アルコール等が挙げられる。
【0018】
本発明の調味液に用いる卵黄の配合量は、生卵黄換算で3〜15%であり、5〜15%が好ましく、7〜15%がより好ましい。卵黄の配合量が上記範囲より少ない場合、本発明のコク味増強効果が得られ難い。卵黄の配合量が上記範囲より多い場合、本発明のコク味増強効果は得られるものの、卵黄由来の苦味が強くなり風味を損ねてしまい好ましくない。
【0019】
本発明の調味液に用いる卵黄は、ホスフォリパーゼで処理し卵黄中のリン脂質がリゾ化されたリゾ化卵黄を用いることが好ましい。リゾ化卵黄以外には、特に限定されないが、例えば、鶏卵を割卵して得られる生卵黄をはじめ、当該生卵黄にストレーナー等によるろ過処理、加熱等による殺菌処理、冷凍処理、乾燥処理、ホスフォリパーゼ又はプロテアーゼ等による酵素処理、酵母又はグルコースオキシダーゼ等による脱糖処理、超臨界二酸化炭素処理等の脱コレステロール処理、イオン交換樹脂等による脱塩処理、食塩又は糖類等の混合処理等の処理を施したもののうち、1種又は2種以上を混合したものを挙げることができる。
【0020】
本発明の調味液は、本発明のコク味増強効果を損なわない範囲で、調味液に一般的に使用されている原料を適宜選択し配合すればよい。具体的には、例えば、菜種油、大豆油等の食用油脂、砂糖、食塩、醤油、味噌、みりん、L−グルタミン酸ナトリウム、核酸等の各種調味料、湿熱処理澱粉、化工澱粉、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム等の増粘材、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸の塩、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、色素、各種具材等が挙げられる。特に、醤油を少量配合した場合に、本発明のコク味増強効果が増強され、調味液全体に対し0.1〜3%が好ましく、0.2〜1.5%がより好ましい。
【0021】
本発明の調味液の粘度は、茹卵に概均一に絡めることができればよく、糖アルコール、卵黄及びその他原料を配合して0.1〜100Pa・sに調整すればよい。
【0022】
茹卵とは、常法により、殻付き生卵を少なくとも卵白部が殻を剥くことができる程度に加熱凝固させて殻剥きしたものである。卵黄の凝固具合は特に問わず、流動性のある液状から凝固してほぐれやすい状態にまで、加熱されているものを含む。また、茹卵に用いる原料卵としては、鶏卵、鶉卵、アヒル卵等用いることができる。
【0023】
本発明のタマゴサラダは、茹卵と本発明の調味液とを60〜100℃に加熱した際に、コク味増強効果が高く発揮され、70〜90℃でより好ましい。また、そのまま食事に供すれば、温かい状態でタマゴサラダを提供することができ好ましい。
【0024】
本発明の茹卵を40%以上配合したタマゴサラダは、一定量の調味液に対し、茹卵の配合量を増やしたとしても同様のコク味増強効果が得られることから、茹卵の配合量は50%以上が好ましく65%以上がより好ましい。また、茹卵が90%を超えると、本発明の調味液を茹卵に概均一に絡めることが難しい場合がある。
【0025】
本発明のタマゴサラダは、ダイス状から、小片状、粉末状まで自由な大きさにカットして用いることができ、平均10〜200mmに調整することで食感にも優れ好ましく、平均100〜200mmがより好ましい。
【0026】
本発明のタマゴサラダにおいて、茹卵に対する調味液の配合量は、調味液が茹卵全体に行き渡る量であれば良い。さらに、本発明の調味液とマヨネーズ等の酸性液状調味料とを併用することで、調味液の配合量をより少量にしても茹卵截断物全体に行き渡らせることができる。具体的には、タマゴサラダ全体に対し、0.1〜40%配合すれば良く、0.2〜30%が好ましい。前記範囲より少ないと、本発明の効果を奏さない場合があり、多いと、配合量に応じた効果が得られず経済的でない場合がある。
【0027】
本発明のタマゴサラダは、前記茹卵及び調味液以外には、必要に応じて、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、動植物等のエキス類等の各種調味料、辛子粉、胡椒等の香辛料、オリゴ糖、水あめ等の糖類、酢酸ナトリウム、グリシン、ポリリジン、卵白リゾチーム、プロタミン等の保存料、キレート剤等、その他キュウリ、ニンジン、タマネギ等の食品原料を用意し、これらの原材料を、ホバートミキサー、ニーダー等に投入し、常法により攪拌混合することによりタマゴサラダを製することができる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明のタマゴサラダ及び調味液を実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0029】
[実施例1]
撹拌タンクを用いて、グラニュ糖35%、オリゴ糖アルコール(粉末)30%、醸造酢(酢酸酸度4%)7%、リゾ化卵黄10%、醤油3%、清水15%を常法に従い混合して、本発明の調味液を調製した。なお、得られた調味液のpHは4.4、ブリックスは70であった。
【0030】
[実施例2]
オリゴ糖アルコール(粉末)30%を糖アルコール20%及び清水10%に置換えた以外は、実施例1に準じて本発明の調味液を調製した。なお、得られた調味液のpHは4.4、ブリックスは60であった。
【0031】
[比較例1]
オリゴ糖アルコール(粉末)30%を糖アルコール10%及び清水20%に置換えた以外は、実施例1に準じて調味液を調製した。なお、得られた調味液のpHは4.4、ブリックスは50であった。
【0032】
[比較例2]
オリゴ糖アルコール(粉末)をグラニュ糖に置換えた以外は、実施例1に準じて調味液を調製した。なお、得られた調味液のpHは4.4、ブリックスは70であった。
【0033】
[比較例3]
リゾ化卵黄を全粉乳に置換えた以外は、実施例1に準じて調味液を調製した。なお、得られた調味液のpHは4.5、ブリックスは73であった。
【0034】
[比較例4]
リゾ化卵黄10%及びオリゴ糖アルコール(粉末)30%を、鶏卵を割卵し生卵黄と生卵白とを分けた後、前記生卵黄を30メッシュのストレーナーでろ過して調製した液卵黄40%に置換えた以外は、実施例1に準じて調味液を調製した。なお、得られた調味液のpHは4.6、ブリックスは58であった。
【0035】
[試験例1]
本発明のコク味増強効果を調べるため、茹卵(2mmダイス、約10mm)75%と、上記実施例1、2及び比較例1〜4の各調味液25%とを攪拌混合し、タマゴサラダを調製した。官能評価の比較対照として、茹卵(2mmダイス、約10mm)75%に液卵黄2.5%を加え卵の配合量を揃え、更に酢酸を添加してpH5.5に調整したタマゴサラダを調製した。この比較対照に対し、下記の評価基準に従い、各調味液のコク味増強効果を評価した。なお、得られたタマゴサラダのpHは全て5.5であった。結果を表1に示す。
【0036】
[評価基準]
A:茹卵特有のコク味が増強された。
B:茹卵特有のコク味がやや増強された。
C:茹卵特有のコク味が増強されなかった。
【0037】
[表1]

【0038】
表1の結果より、pH3.5〜5、ブリックス60以上であり、かつ、糖アルコール(固形分換算)10%以上及び卵黄(生換算)3〜15%を配合する調味液を用いて、タマゴサラダを調製した場合、茹卵特有のコク味を増強することができた(実施例1)。一方、pH3.5〜5、ブリックス60以上、糖アルコール(固形分換算)10%以上及び卵黄(生換算)3〜15%のいずれかが上記範囲を外れる場合、卵黄の配合量を増やしたとしても茹卵特有のコク味が生じ品位を損ねた(比較例1〜4)。また、試験例1の茹卵配合量を45%に減らしたところ、試験例1の実施例1と比較して同程度の効果が得られたことから、茹卵の配合比率を増やしても少量の調味液で効果が発揮されることが理解できる。
【0039】
[試験例2]
本発明のコク味増強効果に対する、調味液のpH及び卵黄配合量の影響を調べた。各種調味液は、実施例1の調味液に準じて、pHは醸造酢の配合量で調整し、卵黄配合量は表2に従い調整した。なお、得られた調味液は、全てブリックス60以上であり、得られたタマゴサラダのpHは全て5.5以下であった。評価は、試験例1と同様にタマゴサラダを調製して行った。結果を表2に示す。
【0040】
[表2]

【0041】
表2の結果より、本発明の調味液は、pH3.5〜5において茹卵特有のコク味増強効果を奏し、4〜5が好ましく4.2〜4.8がより好ましいことが理解できる(No.1〜5)。さらに、卵黄(生換算)の配合量が3〜15%において茹卵特有のコク味増強効果を奏し、5〜15%が好ましく、7〜15%がより好ましいことが理解できる(No.6〜10)。
【0042】
[試験例3]
本発明のコク味増強効果に対する、調味液のブリックス及び糖アルコール(固形分換算)の値の影響を調べた。各種調味液は、実施例1の調味液に準じて、ブリックスはグラニュ糖の配合量で調整し、糖アルコール(固形分換算)配合量はグラニュ糖との置換えで調整した。なお、得られた調味液は、全てpH4.4であり、得られたタマゴサラダのpHは全て5.5以下であった。評価は、試験例1と同様にタマゴサラダを調製して行った。結果を表3に示す。
【0043】
[表3]

【0044】
表3の結果より、本発明の調味液は、ブリックス60以上において茹卵特有のコク味増強効果を奏し、65以上が好ましく、70以上がより好ましいことが理解できる(No.11〜13)。さらに、糖アルコール(固形分換算)の配合量が10%以上において茹卵特有のコク味増強効果を奏し、12%以上が好ましく、15%以上がより好ましいことが理解できる(No.14〜17)。
【0045】
[実施例3]
タマゴサラダを更に品温80℃まで加温した以外は、試験例1に準じて実施例3のタマゴサラダを調製した。得られたタマゴサラダは、味がマイルドでコク味増強効果に優れていた。
【0046】
[実施例4]
茹卵(2mmダイス、平均10mm)を茹卵(5mmダイス、平均130mm)に置換えた以外は、試験例1に準じて本発明のタマゴサラダを調製した。得られたタマゴサラダは、茹卵特有のコク味増強され、かつ食感に優れ好ましかった。
【0047】
[実施例5]
茹卵(2mmダイス、約10mm)75%を、茹卵(2mmダイス、約10mm)50%及び玉ねぎ(2mmダイス、約10mm)25%に置換えた以外は、試験例1に準じて本発明のタマゴサラダを調製した。得られたタマゴサラダは、茹卵特有のコク味増強され好ましかった。
【0048】
[実施例6]
茹卵(2mmダイス、約10mm)75%、前記市販のマヨネーズ24.5%及び実施例1の調味液0.5%を配合した本発明のタマゴサラダを調製した。得られたタマゴサラダは、茹卵(2mmダイス、約10mm)75%、前記市販のマヨネーズ24.5%及び液卵黄0.5%を配合したタマゴサラダと比べ、茹卵特有のコク味増強され好ましかった。このことから、少量の調味液で十分な効果が発揮されることが理解できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
茹卵40%以上及び調味液を配合するタマゴサラダにおいて、前記調味液が、pH3.5〜5、ブリックス60以上であり、かつ、糖アルコール(固形分換算)10%以上及び卵黄(生換算)3〜15%であることを特徴とするタマゴサラダ。
【請求項2】
前記調味液の卵黄がリゾ化処理されてなる請求項1記載のタマゴサラダ。
【請求項3】
茹卵を60%以上配合する請求項1又は2記載のタマゴサラダ。
【請求項4】
茹卵を40%以上配合するタマゴサラダ用調味液であって、pH3.5〜5、ブリックス60以上であり、かつ、糖アルコール(固形分換算)10%以上及び卵黄(生換算)3〜15%を配合することを特徴とするタマゴサラダ用調味液。

【公開番号】特開2012−90542(P2012−90542A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239132(P2010−239132)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】