説明

タマネギ抽出物およびその製造方法

【課題】エグ味や渋みを有さず、またタマネギが本来有するおいしさや甘さを有するタマネギ抽出物およびその製造方法並びに前記特性を有するタマネギ抽出物を含有する香料組成物および飲食品を提供する。
【解決手段】グルタミルメチオニンが350ppm以上、且つ、クエルセチンが170ppm以下、且つ、プロトカテキュ酸が650ppm以下であり、さらに、クエルセチン/グルタミルメチオニンの重量比が0〜0.49で、且つ、プロトカテキュ酸/グルタミルメチオニンの重量比が0〜1.86であるタマネギ抽出物。このような特性を有するタマネギ抽出物は、生タマネギを抽出および/または搾汁した液を濃縮して得たタマネギ粗抽出物を、加熱処理し、さらに有機溶剤で分配洗浄する、あるいは生タマネギを加熱処理した後に抽出および/または搾汁し、さらにこの抽出液または搾汁液を濃縮後、有機溶剤で分配洗浄するなどの方法により製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タマネギ抽出物、より詳細には、エグ味・渋味がなく、タマネギが本来有するおいしさ・甘さを飲食品に賦与することのできるタマネギ抽出物に関する。また、本発明は、該特性を有するタマネギ抽出物の製造方法、さらには該タマネギ抽出物を含む香料組成物並びに飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タマネギは、ドレッシング、シチュー、スープなどを作製する際の材料、カレー、その他食品の具材、飲料の香味材などとして汎用されている。タマネギが食品の具材あるいは飲料の香味材として用いられることにより、タマネギ特有の風味とともに、甘さがプラスされ、おいしい飲食品を提供することができる。また、前記のごとき飲食品を商業的に製造する際には、作業効率などの関係で、生タマネギにかえてタマネギ抽出物(エキス)もまたしばしば使用されている。このように、タマネギおよびタマネギ抽出物は、呈味賦与機能を有する機能性食品素材として飲食品に添加されるほか、調味液成分としても用いられている。さらに、タマネギ抽出物は、健康食品成分、医薬品成分、害虫駆除剤、土壌改良剤、殺菌剤などの成分としても用いられている。
【0003】
生のタマネギからタマネギ抽出物を製造する方法としては、従来さまざまな方法が提案されている。それらのいくつかを例示すると、例えば、タマネギを細断後、油脂等を適宜添加し、ローストし、ローストしたタマネギに加水し、60〜100℃で可溶性成分を抽出し、この抽出液を圧搾ろ過した後、遠心分離等を行って不溶性成分を除去し、必要に応じ濃縮する方法、およびタマネギを細断し、加水して熱を加えることにより、可溶性成分を抽出し、これを圧搾ろ過した後必要に応じ濃縮する方法(特許文献1参照)、タマネギを温度−15℃〜−25℃で細胞膜が破壊されるに十分な時間処理した後、水又はアルコール系溶媒で抽出し、次いで抽出液から溶媒を除去する方法(特許文献2参照)、タマネギをアルコール性溶媒で抽出し、抽出液から溶媒を除去する方法(特許文献3、4参照)、タマネギを、糖質分解酵素および核酸分解酵素からなる群から選ばれる一種以上の酵素と蛋白質分解酵素を用いて処理するオニオンエキスの製造方法(特許文献5参照)、外皮を除いたタマネギをブランチング処理し、次いで糖質分解酵素を作用させることによるオニオンエキスの製造方法(特許文献6参照)、タマネギを−25〜5℃の低温下、含水アルコールで抽出するタマネギ抽出物の製造方法(特許文献7参照)、剥皮した生のタマネギを原料とし、酵素反応前に生タマネギの加熱を行わず、未粉砕のまま、あるいは最小限の裁断を行った後、水およびプロトペクチナーゼと、ペクチナーゼ及び/またはセルラーゼなどの細胞壁破壊酵素を加え、酵素反応を行うオニオンエキスの製造方法(特許文献8参照)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−155766号公報
【特許文献2】特開平8−10503号公報
【特許文献3】特開2002−186448号公報
【特許文献4】特開2002−186449号公報
【特許文献5】特開2003−102417号公報
【特許文献6】特開2004−33022号公報
【特許文献7】特開2004−357650号公報
【特許文献8】特開2008−61589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法により得られたタマネギ抽出物においては、エグ味や渋みがあり、またタマネギが本来有する甘味やおいしさ、コクなどの点でも十分なものでなく、特にエグ味や渋みのないタマネギ本来の甘さやおいしさを飲食品に付与するには未だ十分といえるものでない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、既存のタマネギ抽出物(エキス)に見られるエグ味や渋みを有さず、また既存のタマネギ抽出物に比べタマネギが本来有するおいしさや甘さの度合いが高く、少量で飲食品に前記優れた特性を付与することのできるタマネギ抽出物を提供することである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、上記好ましい特性を有するタマネギ抽出物を製造する方法を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、上記好ましい特性を有するタマネギ抽出物を含有する香料組成物を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の他の目的は、上記好ましい特性を有するタマネギ抽出物あるいは上記香料組成物を含有する飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究、検討を行ったところ、調理したタマネギの甘さ・おいしさを司る有効成分の一つがグルタミルメチオニン(Glutamylmethionine、以下GMと略記することがある)であること、また既存のタマネギエキスに見られえる「エグ味・渋味」の原因物質がクエルセチン(Quercetin、以下QCと略記することがある)とプロトカテキュ酸(Protocatechuic Acid、以下PAと略記することがある)の2成分から構成されること、さらに、タマネギ抽出物固形分中のグルタミルメチオニンとクエルセチン、グルタミルメチオニンとプロトカテキュ酸の重量比が特定の値を満たす値であり、また好ましい態様として、それらのタマネギ抽出物固形分中の濃度がそれぞれ所定の範囲となるように調整すると、前記エグ味や渋味なく飲食品に優れたタマネギの風味、おいしさを賦与できる素材となることを見出し、これら知見に基づいて本発明を成したものである。得られたタマネギ抽出物は、たれ・つゆを始めとする様々な加工食品に応用でき、エグ味や渋みのないタマネギ本来の甘さ、おいしさを有する加工食品を製造することができる。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に記載のタマネギ抽出物、該タマネギ抽出物の製造方法、該タマネギ抽出物を含む香料組成物および飲食品に関する。
【0012】
[1]クエルセチンとグルタミルメチオニンの重量比(クエルセチン/グルタミルメチオニン)が0〜0.49で、且つ、プロトカテキュ酸とグルタミルメチオニンの重量比(プロトカテキュ酸/グルタミルメチオニン)が0〜1.86となる量のグルタミルメチオニン、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸を含有することを特徴とするタマネギ抽出物。
【0013】
[2]抽出物固形分中のグルタミルメチオニン、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸の濃度が、グルタミルメチオニンが350ppm以上、且つ、クエルセチンが170ppm以下、且つ、プロトカテキュ酸が650ppm以下であることを特徴とする上記[1]に記載のタマネギ抽出物。
【0014】
[3]生タマネギを抽出および/または搾汁して得たタマネギ粗抽出物、またはその濃縮物を、加熱処理し、さらに有機溶剤で分配洗浄することを特徴とする、上記[1]または[2]に記載のタマネギ抽出物の製造方法。
【0015】
[4]生タマネギを加熱処理した後に抽出および/または搾汁して得たタマネギ粗抽出物、またはその濃縮物を、有機溶剤で分配洗浄することを特徴とする、上記[1]または[2]に記載のタマネギ抽出物の製造方法。
【0016】
[5]生タマネギを加熱抽出して得たタマネギ粗抽出物、またはその濃縮物を、有機溶剤で分配洗浄することを特徴とする、上記[1]または[2]に記載のタマネギ抽出物の製造方法。
【0017】
[6]生タマネギを加熱処理した後に細断処理をして得たタマネギ懸濁液、またはその濃縮物を、有機溶剤で分配洗浄することを特徴とする、上記[1]または[2]に記載のタマネギ抽出物の製造方法。
【0018】
[7]前記分配洗浄に使用する有機溶剤が、酢酸エチルおよび/またはエタノールであることを特徴とする、上記[3]〜[6]のいずれかに記載のタマネギ抽出物の製造方法。
【0019】
[8]上記[1]または[2]に記載のタマネギ抽出物を0.01〜50重量%含有する香料組成物。
【0020】
[9]上記[1]または[2]に記載のタマネギ抽出物を0.00001〜10重量%含有する飲食品。
【0021】
[10]上記[8]に記載の香料組成物を0.01〜10重量%含有する飲食品。
【発明の効果】
【0022】
本発明のタマネギ抽出物は、既存のタマネギ抽出物(エキス)に比べ、飲食品に添加、使用した際に、渋みやエグ味なくタマネギ本来が有するうま味や甘味を賦与することができる。
【0023】
また、本発明のタマネギ抽出物の製造方法により、市販のタマネギ抽出物(エキス)を用いて、簡単に、より高品質のタマネギ抽出物を製造することができる。さらに、従来のタマネギ抽出物を得る工程で、加熱処理と有機溶剤による処理という簡単な処理を適用することにより、タマネギ抽出物固形分中のグルタミルメチオニン、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸の重量比および濃度を調整することにより、既存のタマネギ抽出物が有する渋みやエグ味がなく、またタマネギ本来が有するうま味や甘味を飲食品に賦与することのできるタマネギ抽出物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例6および比較例5〜7で得たタマネギ抽出物の甘味、旨味、こく、渋味、苦味、酸味、焦げ感の7評価項目についての蜘蛛の巣グラフ(レーダーチャート)である。
【図2】実施例7および比較例8〜10で得たタマネギ抽出物の甘味、旨味、こく、渋味、苦味、酸味、焦げ感の7評価項目についての蜘蛛の巣グラフ(レーダーチャート)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
上記したごとく、本発明のタマネギ抽出物は、抽出物中に含有されるクエルセチンとグルタミルメチオニンの重量比(クエルセチン/グルタミルメチオニン)が0〜0.49であり、且つ、プロトカテキュ酸とグルタミルメチオニンの重量比(プロトカテキュ酸/グルタミルメチオニン)が0〜1.86となる特定量のグルタミルメチオニン、クエルセチン、プロトカテキュ酸を含有することを特徴とする。これらの比は、より好ましくは(クエルセチン/グルタミルメチオニン)は重量比で、0〜0.25であり、(プロトカテキュ酸/グルタミルメチオニン)は重量比で、0〜1.40である。
【0026】
本発明のタマネギ抽出物は、上記重量比を満足すればよく、製造方法はどのようなものであってもよい。したがって、本発明のタマネギ抽出物を製造する際には、生タマネギから本発明のタマネギ抽出物を製造することもできるし、市販されているタマネギ抽出物(以下、原料タマネギ粗抽出物ということがある)を用いて本発明のタマネギ抽出物を製造することもできる。市販のタマネギ抽出物(つまり、原料タマネギ粗抽出物)は、本発明のタマネギ粗抽出物またはその濃縮物に該当する。
【0027】
またグルタミルメチオニンのタマネギ抽出物における固形分中濃度は、ある程度以上でないとタマネギの甘味や旨み、コク味をタマネギ抽出物に付与することが難しくなる。また、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸はエグ味や渋味の原因となることから、それらの濃度は一定濃度以下であることが好ましい。これらグルタミルメチオニン、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸の抽出物固形分中の濃度は、グルタミルメチオニンが350ppm以上、且つ、クエルセチンが170ppm以下、且つ、プロトカテキュ酸が650ppm以下であることが好ましい。より好ましくは、グルタミルメチオニンは400ppm以上、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸は各々100ppmおよび560ppm以下である。
【0028】
本発明のタマネギ抽出物を製造するための原料としては、生タマネギが用いられてもよいし、簡便に本発明のタマネギ抽出物を得るのであれば、市販のタマネギ抽出物(つまり、原料タマネギ粗抽出物)が用いられてもよい。しかし、従来の方法で生タマネギからタマネギ抽出物が製造される場合、得られたタマネギ抽出物の固形分中のクエルセチンおよびプロトカテキュ酸の濃度は高く、一方、グルタミルメチオニンの濃度は低い。これは市販のタマネギ抽出物(エキス)でも同様である。したがって、本発明のタマネギ抽出物のクエルセチン/グルタミルメチオニン重量比、プロトカテキュ酸/グルタミルメチオニン重量比を満たさない。クエルセチンおよびプロトカテキュ酸は、前記したようにタマネギ抽出物のエグ味・渋味の元となっていることから、エグ味・渋味のないタマネギ抽出物を得るにはこれらの量を低減させることが必要とされるし、一方、グルタミルメチオニンについてはタマネギ抽出物固形分中での濃度を高めることが必要とされる。
【0029】
タマネギ抽出物固形分中のグルタミルメチオニン濃度の増大方法としては、グルタミルメチオニン単品をタマネギ抽出物に添加することが最も簡単な方法であるが、グルタミルメチオニン自体高価であることから、必ずしも好ましい方法と言えるものではない。
【0030】
タマネギ抽出物固形分中のグルタミルメチオニンの濃度を増大させる他の方法として、生タマネギから本発明のタマネギ抽出物を得るまでのいずれかの工程で加熱を行うことにより、グルタミルメチオニンの固形分中の濃度を高めることができる。加熱工程は、生タマネギを抽出する際であってもよいし、生タマネギを抽出および/または搾汁した後の液の加熱であってもよい。勿論、生タマネギを抽出および/または搾汁する前に行われてもよい。また抽出および/または搾汁後の液の加熱は、濃縮液とされた状態で行われてもよいし、濃縮前の状態で行われてもよい。さらに、加熱は生タマネギ自体を炒めるなどの方法で、直接生タマネギを加熱してもよい。この際には、油を加えて加熱しても良い。油には動物性または植物性油など汎用されているものが使用できる。
【0031】
加熱温度としては、概して60℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。また、加熱時間は、概して5分〜12時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1〜3時間である。加熱温度が高ければ短時間の加熱で済むが、高温となりすぎると焦げ付く可能性がある。また、長時間処理を行えば低温でも効果はあるが、作業効率上現実的ではない。
【0032】
一方、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸の濃度を低減する方法としては、有機溶剤を用いての分配洗浄処理により、前記成分以外の成分はできるだけ取り除くことなく、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸を選択的にタマネギ粗抽出物固形分中から取り除く方法が好ましい方法として挙げられる。もちろん、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸の濃度を低減する方法が、有機溶剤を用いての分配洗浄処理に限定されるものではない。グルタミルメチオニンを除去することなくクエルセチンおよびプロトカテキュ酸を除去すれば、グルタミルメチオニンに対するクエルセチンおよびプロトカテキュ酸の重量比は低くなるし、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸などがタマネギ抽出物固形分から除去されることにより、グルタミルメチオニンの量は変わることなく、タマネギ抽出物の固形分の量が少なくなることから、グルタミルメチオニンの固形分中の濃度は相対的に上昇し、本発明の好ましいグルタミルメチオニン濃度とすることが可能となる。
【0033】
分配洗浄処理の際に用いられる有機溶剤としては、上記したようにタマネギ粗抽出物中のクエルセチンおよびプロトカテキュ酸は溶解するが、グルタミルメチオニンは溶解しないものが好ましい。このような有機溶剤としては、例えば酢酸エチルおよびエタノールが好ましいものとして挙げられる。使用する溶剤は、1種類のみを使用してもよいし、複数の溶剤を混合した混合溶剤を使用してもよい。分配洗浄処理に用いられる有機溶剤の量は、本発明の目的を達成できる範囲であればよく任意であるが、通常タマネギ粗抽出物、またはその濃縮物に対して0.01〜2倍重量を用いるのが好ましい。分配洗浄処理の処理回数は特に限定されないが、通常、同一組成の溶剤につき1〜3回程度、好ましくは1〜2回程度である。この後、異なる組成の溶剤を用いてさらに同様に洗浄処理を行うことができる。つまり、分配洗浄処理は、同一組成の溶剤のみで行われてもよいし、処理の回ごとに異なる組成の溶剤を用いて行われてもよい。
【0034】
また、タマネギ粗抽出物をエタノールのような水と容易に混和する溶剤で分配洗浄処理する場合、タマネギ粗抽出物が濃縮されていないと溶剤と混和してしまうため、溶剤を取り除くことができない。このため、水と容易に混和する溶剤で分配洗浄処理する際には、分配洗浄処理時のタマネギ粗抽出物の濃度は、Bx.60以上が好ましく、Bx.70以上がより望ましい。
【0035】
上記有機溶剤による分配洗浄処理は、通常、本発明のタマネギ抽出物を製造する最終工程として行われることから、溶剤処理にかけられるタマネギ粗抽出物またはタマネギ懸濁液を製造することがいずれにしても必要とされる。加熱処理も溶剤処理も行われていないタマネギ粗抽出物を得る方法としては、従来知られたいずれの方法が用いられてもよい。このようなタマネギ粗抽出物を製造する方法としては、例えば、従来技術の項で述べたような任意の方法が挙げられる。
【0036】
典型的な方法としては、(1)生タマネギをそのままあるいは細断した後、溶媒を添加して適宜の温度で抽出し、不溶物を除去して抽出液を得、必要に応じて抽出液から減圧濃縮して抽出溶媒を除去する方法、(2)生タマネギを圧搾、搾汁し、不溶物を除去して搾汁液を得、必要に応じて減圧濃縮する方法、(3)生タマネギの細胞膜を何らかの手段、例えば、酵素あるいは氷結により破壊した後、細胞内の成分を溶媒(水あるいは含水アルコールなど)で適宜の温度で抽出し、その後抽出液から抽出溶媒を除去する方法、(4)生タマネギをそのままあるいは適当な大きさに切った後、溶媒を添加して適宜の温度で抽出し、さらに抽出に使用したタマネギを抽出溶媒ごと搾汁し、不溶物を除去して搾汁液を得、必要に応じてこの搾汁液を減圧濃縮して溶媒を除去する方法、(5)生タマネギをそのままあるいは適当な大きさに切った後、溶媒を添加して適宜の温度で抽出し、不溶物を除去して抽出液を得、さらに抽出に使用したタマネギを搾汁し、不溶物を除去して搾汁液を得、抽出液と搾汁液を合わせ、必要に応じてこの合わせた液を減圧濃縮して溶媒を除去する方法、などが挙げられる。
【0037】
上記(1)の方法では、洗浄した生タマネギをそのまま、あるいは細断した後、抽出溶媒を加える。抽出溶媒としては、水、含水エタノールが好ましいものである。含水エタノールは、エタノール濃度70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。溶媒を生タマネギに対して0.5〜20倍重量、好ましくは1〜10倍重量、より好ましくは1〜3倍重量用い、10〜55℃の温度、30分〜12時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1〜4時間で抽出を行い、次いで不溶物を除去し、必要に応じて減圧濃縮してタマネギ粗抽出物を得る。不溶物を除去する方法としては、例えば、遠心分離、圧搾濾過、濾紙濾過、助剤濾過等、汎用の方法があげられる。
【0038】
上記(2)の方法では、洗浄した生タマネギを圧搾し、不溶物を除去して得た搾汁液を、必要に応じて減圧濃縮してタマネギ粗抽出物を得る。上記不溶物を除去する方法としては、例えば、遠心分離、圧搾濾過、濾紙濾過、助剤濾過等、汎用の方法があげられる。生タマネギは、食品用ミキサー等により細断することもできる。
【0039】
上記(4)、(5)の方法における抽出条件および不溶物を除去する方法は、前記した(1)と同様である。
【0040】
こうして得られたタマネギ粗抽出物は加熱処理された後、有機溶剤を用いての分配洗浄処理によりクエルセチンおよびプロトカテキュ酸量が低減された後、必要であればグルタミルメチオニンが添加されて本発明のタマネギ抽出物とされる。
【0041】
また、有機溶剤での分配洗浄処理にかけられるタマネギ粗抽出物として、生タマネギを加熱した後、抽出および/または搾汁して得た液を、必要に応じ濃縮して製造されたタマネギ粗抽出物が挙げられる。生タマネギの加熱処理方法としては、生タマネギをきつね色になるまで加熱する方法、生タマネギに溶媒を加えた後、60℃以上の温度で加熱する方法などが挙げられる。
【0042】
前者の方法では、(A)生タマネギをきつね色になるまで加熱した後、加熱されたタマネギを圧搾、搾汁し、不溶物を除去することにより搾汁液を得、必要に応じ濃縮する方法により、分配洗浄処理にかけられるタマネギ粗抽出物が得られる。(B)また、加熱されたタマネギに溶媒を加え抽出を行い、不溶物を除去して抽出液を得、必要に応じ濃縮する方法により、分配洗浄処理にかけられるタマネギ粗抽出物が得られる。(C)さらには、加熱されたタマネギに溶媒を加え抽出を行った後、更に抽出に使用したタマネギを抽出溶媒ごと搾汁し、不溶物を除去してタマネギ搾汁液を得、これを必要に応じ濃縮することにより溶剤での分配洗浄処理にかけられるタマネギ粗抽出物が製造されてもよい。(D)また、加熱されたタマネギに溶媒を加え抽出を行った後、不溶物を除去して抽出液を得、さらに抽出に使用したタマネギを搾汁し、不溶物を除去して搾汁液を得、抽出液と搾汁液を合わせて、これを必要に応じ濃縮することにより溶剤での分配洗浄処理にかけられるタマネギ粗抽出物が製造されてもよい。勿論、これら方法以外の方法であってもよい。上記抽出溶媒としては、水、含水エタノールが好ましいものである。含水エタノールは、エタノール濃度70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。加熱処理したタマネギに対して溶媒を0.5〜20倍重量、好ましくは1〜10倍重量、より好ましくは1〜3倍重量用い、10℃以上の温度、30分〜12時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1〜4時間で抽出が行われる。不溶物を除去する方法としては、遠心分離、圧搾濾過、濾紙濾過、助剤濾過等、汎用の方法があげられる。
【0043】
一方、加熱溶媒による加熱が行われる後者の方法では、加熱工程が抽出工程をも兼ねることから別工程として加熱工程をさらに付与する必要はなく、不溶物を除去して抽出液を得、必要に応じ濃縮することにより分配洗浄処理にかけられるタマネギ粗抽出物が得られる。さらには、上記の加熱抽出した後に、抽出に用いたタマネギを抽出溶媒ごと圧搾、搾汁し、不溶物を除去し、得られた搾汁液を必要に応じ濃縮することにより有機溶剤による分配洗浄処理にかけられるタマネギ粗抽出物が製造される。また、上記の加熱抽出した後に不溶物を除去して抽出液を得、さらに抽出に用いたタマネギを圧搾、搾汁し、不溶物を除去して搾汁液を得、これらの抽出液と搾汁液を合わせ、必要に応じこれを濃縮することにより有機溶剤による分配洗浄処理にかけられるタマネギ粗抽出物が製造される。上記抽出溶媒としては、水、含水エタノールが好ましい。含水エタノールは、エタノール濃度70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。溶媒を生タマネギに対して0.5〜20倍重量、好ましくは1〜10倍重量、より好ましくは1〜3倍重量用い、60℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上の温度、30分〜12時間、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1〜4時間、で抽出及び加熱処理が行われる。不溶物を除去する方法としては、遠心分離、圧搾濾過、濾紙濾過、助剤濾過等、汎用の方法があげられる。
【0044】
こうして得たタマネギ粗抽出物は、有機溶剤による分配洗浄処理にかけられて、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸量が低減され、必要に応じグルタミルメチオニンが添加されて本発明のタマネギ抽出物とされる。有機溶剤で分配洗浄する際の条件は、上記した分配洗浄と同様の条件とされればよい。
【0045】
次に有機溶剤での分配洗浄処理にかけられるタマネギ懸濁液またはその濃縮物について説明する。
タマネギ懸濁液またはその濃縮物を得る好ましい方法としては、まず、生タマネギをきつね色になるまで加熱処理し、必要に応じて溶媒を添加し、食品用ミキサーやホモジナイザーなどで細断処理を行う。添加する溶媒は、水、含水エタノールが好ましい。含水エタノールは、エタノール濃度70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。溶媒を加熱処理したタマネギに対して0.5〜20倍重量、好ましくは1〜10倍重量、より好ましくは1〜3倍重量用いる。得られた懸濁液は、不溶物を除去する必要はない。
【0046】
こうして得たタマネギ懸濁液は、有機溶剤による分配洗浄処理にかけられて、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸量が低減され、必要に応じグルタミルメチオニンが添加されて本発明のタマネギ抽出物とされる。有機溶剤で分配洗浄する際の条件は、上記した分配洗浄と同様の条件とされればよい。
【0047】
以上本発明のタマネギ抽出物を得る代表的な方法を説明したが、これらをまとめると、次のように整理することができる。
(a)生タマネギを抽出および/または搾汁して得たタマネギ粗抽出物またはその濃縮物を加熱処理し、有機溶剤で分配洗浄する方法
(b)生タマネギを直接加熱し、抽出および/または搾汁して得たタマネギ粗抽出物、またはその濃縮物を有機溶剤で分配洗浄する方法
(c)生タマネギを加熱抽出(抽出温度が60℃以上であり、抽出と加熱を同時に行い、後の加熱処理が不要である。)し、必要に応じタマネギの圧搾を行い、得たタマネギ粗抽出物またはその濃縮物を有機溶剤で分配洗浄する方法
(d)生タマネギを加熱し、細断処理をして得たタマネギ懸濁液、またはその濃縮物を有機溶剤で分配洗浄する方法
【0048】
また、上記方法では、最後にタマネギ粗抽出物の溶剤分配洗浄が行われるが、溶剤分配洗浄後に加熱処理が施されてもよい。さらに、加熱処理されたタマネギ粗抽出物を有機溶剤により分配洗浄処理した後、得られたタマネギ抽出物を再度加熱処理してもよい。
【0049】
また、本発明においては、グルタミルメチオニン、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸が上記の固形分中成分濃度を実現できればよく、タマネギ粗抽出物またはその濃縮物、タマネギ懸濁液またはその濃縮物の処理方法は、上記溶剤分配処理に限られるものではない。溶剤分配処理以外の成分調整方法としては、例えば陽イオン交換樹脂処理や合成吸着樹脂処理など、任意の方法を採用することができる。
【0050】
本発明のタマネギ抽出物は、飲食品に対し、苦みや渋みを付与することなく、タマネギの風味、おいしさ、甘味、コク味などを付与することができる。従来香料として、タマネギ風味を有するフレーバーが各種知られているが、本発明のタマネギ抽出物は、このようなタマネギ風味を包含するフレーバーのタマネギ風味成分として、好ましく用いることができる。
【0051】
本発明のタマネギ抽出物を添加することのできる香料の例としては、例えば、オニオンフレーバー、ビーフフレーバー、ポークフレーバー、チキンフレーバー、野菜炒めフレーバー、カレーフレーバーなどが代表的なものとして挙げられる。
【0052】
香料組成物中にタマネギ抽出物とともに配合することのできる他の成分としては、例えば、アルコール類、動植物油脂、多価アルコール(プロピレングリコール、グリセリン等)、天然ガム(アラビアガム、トラガントガム等)、包接剤(サイクロデキストリン等)、賦形剤(ゼラチン、デキストリン等。粉末化に使用)、担体、安定剤、色素、抗酸化剤(ビタミンE、ビタミンC等)、抗微生物剤(安息香酸、安息香酸ナトリウム等)、日持向上剤(酢酸ナトリウム、グリシン等)、保存料、増量剤(無水珪酸塩、無水硫酸塩、各種無機塩化物、糖類、多糖類)、界面活性剤、pH調整剤、その他食品添加物が挙げられる。
【0053】
香料組成物に添加する際のタマネギ抽出物の配合量は、添加される香料により異なるものの、通常、香料組成物全量に対し、0.01〜50重量%である。
【0054】
上記のとおり、本発明のタマネギ抽出物は飲食品に対し、苦みや渋みを付与することなく、タマネギの風味、おいしさ、甘味、コク味などを付与することができることから、従来タマネギがその材料として用いられている飲食品に好ましく用いることができる。本発明のタマネギ抽出物は直接飲食品に添加されてもよいし、香料組成物の形で飲食品に添加されてもよい。本発明の香料組成物は、飲食品に0.01〜10重量%添加することができる。本発明のタマネギ抽出物の添加は、飲食品の半製品への添加でもよいし、最終的な飲食品への添加でもよい。また、ドレッシング、焼き肉のタレなどの飲食品への添加であってもよい。
【0055】
本発明のタマネギ抽出物を添加できる飲食品の例を具体的に例示すると、例えば、カレーやハヤシライスやホワイトシチューなどのルーやソース、ドレッシング、マリネ液、焼肉のタレ、蒲焼のタレ、粉末スープ、インスタント味噌汁、ポタージュスープ、コーンスープ、ラーメンスープ、コンソメスープ、野菜ジュース、ソース、畜肉製品(ハム・ソーセージ等)、スナック、菓子類、惣菜、冷凍食品、健康食品、清涼飲料などが挙げられるが、本発明のタマネギ抽出物を添加できる飲食品がこれらに限定されるものではない。
【0056】
また、本発明のタマネギ抽出物は、天然調味料、配合調味料などの従来知られている調味料に添加され、飲食品の香味付けに使用することもできる。本発明のタマネギ抽出物を添加できる天然調味料、配合調味料としては、例えば下記のようなものが挙げられるが、調味料が下記のもの限られるわけではない。
【0057】
天然調味料:
抽出型(肉エキス、魚介エキス、野菜エキス、海草エキス)
分解型(酵母エキス、HVP(植物性蛋白加水分解物)、HAP(動物性蛋白加水分解物))
醸造型(醤油、味噌、みりん、食酢)
配合調味料(天然調味料に、旨味調味料、有機酸、糖類等を配合したもの)
【0058】
飲食品への本発明のタマネギ抽出物の添加は、飲食品を製造する際のいずれの段階で行われてもよく、必要であれば飲食品を作製後、食する直前に調味料として飲食品に付与してもよい。その配合量は、飲食品により異なるものの、飲食品に対し通常0.00001〜10重量%程度である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例により何ら限定されるものでなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更されてもよい。
なお、以下の例中でのグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)、プロトカテキュ酸(PA)の成分濃度測定は、次の方法により行った。
【0060】
<GM濃度の測定>
検体の2%溶液(70%EtOHで希釈)100mlを強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR120BNa)30mlに通液し、吸着部をアンモニア水で溶離後濃縮してアンモニアを除去した溶液を、オルトフタルアルデヒドで誘導体化した後、以下の条件で分析を行った。
【0061】
測定装置:高速液体クロマトグラフ(Agilent社製)
カラム;5C18−AR−II 4.6×150mm(ナカライテスク)
カラム温度;40℃
移動相;A:40mMリン酸2水素ナトリウム(pH7.8)
;B:アセトニトリル/メタノール/水=45/45/10
グラジエント;A/B=100/0→70/30(20min)→50/50(30min)→50/50(40min)
流速;1.0ml/min
検出器;紫外線吸光光度計(Agilent社製)
検出波長;338nm
【0062】
<QC(クエルセチン)およびPA(プロトカテキュ酸)濃度の測定>
検体を0.45μmシリンジフィルター(Whatman社製)を通過させて不溶物を除去して、以下の条件で分析を行った。
【0063】
測定装置:高速液体クロマトグラフ(Agilent社製)
カラム;CAPCELLPAK C18 UG120 4.6×150mm(資生堂)
カラム温度;40℃
移動相;A:10mMギ酸アンモニウム+0.1%ギ酸
;B:アセトニトリル
グラジエント;A/B=90/10→90/10(10min)→100/0(40min)→100/0(50min)
流速;0.3ml/min
検出器;紫外線吸光光度計(Agilent社製)
検出波長;254nm
【0064】
〔試験例1〕
上記測定方法により、Bx.70の市販の原料タマネギ粗抽出物(TOP FLAVORS社製)の固形分中のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)の濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
〔実施例1〕
試験例1で使用した市販の原料タマネギ粗抽出物(TOP FLAVORS社製)250gに対してイオン交換水750gを加え、室温(25℃)で1時間攪拌した。その後、酢酸エチル100mLを加えて洗浄した。この洗浄操作を2回行った。酢酸エチルを分液した後、タマネギエキスにイオン交換水を適量加えて溶解させ、エキスをペースト状になるまで減圧濃縮することによって残留酢酸エチルを除去して、ペースト状のタマネギエキスA 232.5g(Bx.70)を得た。こうして得たタマネギエキスAの20gに、グルタミルメチオニン(GM)を添加し、固形分中のグルタミルメチオニン濃度を350ppmに調整し、実施例1のタマネギ抽出物を作製した。実施例1のタマネギ抽出物の固形分中の成分濃度を表2に示す。
【0067】
〔実施例2〕
実施例1で得たタマネギエキスAの20gにグルタミルメチオニン(GM)およびクエルセチン(QC)を添加し、それぞれ固形分中濃度を350ppmおよび170ppmに調整して、実施例2のタマネギ抽出物を作製した。実施例2のタマネギ抽出物の固形分中の成分濃度を表2に示す。
【0068】
〔実施例3〕
実施例1で得たタマネギエキスAの20gにグルタミルメチオニン(GM)およびプロトカテキュ酸(PA)を添加し、それぞれ固形分中濃度を350ppmおよび650ppmに調整して、実施例3のタマネギ抽出物を作製した。実施例3のタマネギ抽出物の固形分中の成分濃度を表2に示す。
【0069】
〔実施例4〕
実施例1で製造したタマネギエキスAの20gにグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)を添加し、それぞれ固形分中濃度を350ppm、170ppmおよび650ppmに調整して、実施例4のタマネギ抽出物を作製した。実施例4のタマネギ抽出物の固形分中の成分濃度を表2に示す。
【0070】
〔実施例5〕
実施例1で製造したタマネギエキスAの20gにグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)を添加し、それぞれ固形分中濃度を429ppm、170ppmおよび650ppmに調整して、実施例5のタマネギ抽出物を作製した。実施例5のタマネギ抽出物の固形分中の成分濃度を表2に示す。
【0071】
〔比較例1〕
試験例1で使用した市販の原料タマネギ粗抽出物(TOP FLAVORS社製)を比較例1のタマネギ抽出物とした。市販の原料タマネギ粗抽出物の固形分中のGM(グルタミルメチオニン)、QC(クエルセチン)、PA(プロトカテキュ酸)の各成分濃度は上記試験例1に示したとおりである。参考のため、その値を表2に示す。
【0072】
〔比較例2〕
実施例1で製造されたタマネギエキスAを比較例2のタマネギ抽出物とした。タマネギエキスAの固形分中のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)、プロトカテキュ酸(PA)の各成分濃度を上記方法により測定した。結果を表2に示す。
【0073】
〔比較例3〕
実施例1で得たタマネギエキスAの20gにグルタミルメチオニン(GM)およびクエルセチン(QC)を添加し、それぞれ固形分中濃度を350ppmおよび214ppmに調整して、比較例3のタマネギ抽出物を作製した。比較例3のタマネギ抽出物の固形分中の成分濃度を表2に示す。
【0074】
〔比較例4〕
実施例1で得たタマネギエキスAの20gにグルタミルメチオニン(GM)およびプロトカテキュ酸(PA)を添加し、それぞれ固形分中濃度を350ppmおよび714ppmに調整して、比較例4のタマネギ抽出物を作製した。比較例4のタマネギ抽出物の固形分中の成分濃度を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
<タマネギ抽出物の官能評価>
検体である実施例1〜5および比較例1〜4のタマネギ抽出物のエキス濃度はBx.70に揃え、希釈等は行わずエキスそのものを官能評価した。評価はタマネギの風味およびエグ味について12名のパネラーにより行った。風味については、強い、弱い、非常に弱い、の3段階で評価し、エグ味については、強い、弱い、無しの3段階で評価した。結果を表3に示す。表中の数字は、パネラーの人数である。
【0077】
【表3】

【0078】
表3から、QC/GMが0〜0.49、且つ、PA/GMが0〜1.86である本発明のタマネギ抽出物である実施例1〜5のタマネギ抽出物は、タマネギ風味が強く、且つ、エグ味が少ないのに対し、QC/GMの値および/またはPA/GMの値がこれら範囲内にない場合は、タマネギの風味が弱いか、エグ味が強いか、これらの両方を有するタマネギ抽出物であることが分かる。
【0079】
〔実施例6〕
試験例1で使用した市販の原料タマネギ粗抽出物(TOP FLAVORS社製)250gに対してイオン交換水750gを加え、100℃で1時間攪拌し、内温が室温に達するまで冷却して、タマネギ粗抽出物を得た。タマネギ粗抽出物990gに酢酸エチル89gを加えて分配洗浄した。この分配洗浄操作を計2回実施した。洗浄後のエキスをペースト状になるまで減圧濃縮した後、濃縮エキスの1.25倍重量のエタノールを加えて分配洗浄した。この操作を計2回実施した。洗浄物にイオン交換水を少量混合した後、減圧濃縮し残留エタノールを除去し、実施例6のタマネギ抽出物97g(Bx.70)を得た。こうして得たタマネギ抽出物のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)のタマネギ抽出物固形分中の濃度を、上記測定法にしたがって測定した。結果を表4に示す。
【0080】
〔比較例5〕
試験例1で使用した市販の原料タマネギ粗抽出物(TOP FLAVORS社製)250gに対してイオン交換水750gを加え、室温(25℃)で1時間攪拌した。このタマネギ粗抽出物をペースト状になるまで減圧濃縮し、比較例5のタマネギ抽出物241g(Bx.70)を得た。こうして得たタマネギ抽出物のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)のタマネギ抽出物固形分中の濃度を、上記測定法にしたがって測定した。結果を表4に示す。
【0081】
〔比較例6〕
試験例1で使用した市販の原料タマネギ粗抽出物(TOP FLAVORS社製)250gに対してイオン交換水750gを加え、100℃で1時間攪拌した。内温が室温に達するまで冷却した後、タマネギ粗抽出物がペースト状になるまで減圧濃縮し、比較例6のタマネギ抽出物240g(Bx.70)を得た。こうして得たタマネギ抽出物のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)のタマネギ抽出物固形分中の濃度を、上記測定法にしたがって測定した。結果を表4に示す。
【0082】
〔比較例7〕
試験例1で使用した市販の原料タマネギ粗抽出物(TOP FLAVORS社製)250gに対してイオン交換水750gを加え、室温(25℃)で1時間攪拌した。攪拌後、酢酸エチル89gを加えて分配洗浄した。この操作を計2回実施した。洗浄後のタマネギ抽出物をペースト状になるまで減圧濃縮した後、濃縮抽出物の1.25倍重量のエタノールを加えて分配洗浄した。この操作を計2回実施した。洗浄物にイオン交換水を少量混合した後、減圧濃縮し残留エタノールを除去し比較例7のタマネギ抽出物103g(Bx.70)を得た。こうして得たタマネギ抽出物のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)のタマネギ抽出物固形分中の濃度を、上記測定法にしたがって測定した。結果を表4に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
<タマネギ抽出物の官能評価>
実施例6、比較例5〜7で得たタマネギ抽出物の甘味、旨味、こく、渋味、苦味、酸味、焦げ感の各評価項目に対し、3名のパネラーにより、下記評価方法にしたがって官能評価し、各評価項目についての平均値を算出した。結果を表5に示す。また、この結果を図1に蜘蛛の巣グラフで示す。なお、図においては、甘味、旨味、コクについては強度の強い方がグラフの外側に、渋味、苦味、酸味、焦げ感については強度の弱い方がグラフの外側に来るように表した。
【0085】
(評価方法)
タマネギ抽出物サンプル(各々Bx.70)を、蒸留水で15重量倍希釈した。希釈液を口に含み、各官能評価項目(甘味、旨味、こく、渋味、苦味、酸味、焦げ感)、に対して1〜10の10段階で絶対評価した。但し、甘味、旨味、コクについては1(弱)〜10(強)にて評価し、渋味、苦味、酸味、焦げ感、については1(強)〜10(弱)にて評価した。
【0086】
【表5】

【0087】
表5から、本発明のタマネギ抽出物である実施例6のタマネギ抽出物は、甘味、旨味、コクのいずれもが比較例のものに比べきわだって強く、一方、渋味、苦味、酸味、焦げ感のいずれもが比較例のものに比べ弱いことから、本発明のタマネギ抽出物はタマネギ風味を付与する呈味剤として極めて優れたものであることが分かる。
【0088】
〔実施例7〕
外皮を取り除きみじん切りにした市販タマネギ(北海道産)500gを、ガスコンロで加熱したフライパンできつね色になるまで加熱した。加熱したタマネギ470gにイオン交換水1000gを加え、30℃で4時間攪拌抽出した。濾紙濾過して不溶物を取り除き、清澄な抽出液1180gを得た。次いで減圧濃縮し、Bx.70のタマネギ粗抽出物53gを得た。このタマネギ粗抽出物に酢酸エチル30gを加えて攪拌後、静置し、分かれた酢酸エチルを除去した。この操作を計2回実施した。酢酸エチル処理後の抽出物にイオン交換水20gを加え、減圧濃縮して、残留酢酸エチルを除去したBx.70のタマネギ抽出物37gを得た。これを実施例7のタマネギ抽出物とした。得られたタマネギ抽出物のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)のタマネギ抽出物固形分中の濃度を、上記測定法にしたがって測定した。結果を表6に示す。
【0089】
〔比較例8〕
外皮を取り除きみじん切りにした市販タマネギ(北海道産)500gに、イオン交換水1000gを加え、30℃で4時間攪拌抽出した。濾紙濾過して不溶物を取り除き、清澄な抽出液1060gを得た。次いで減圧濃縮し、Bx.70のタマネギ粗抽出物50gを得た。これを比較例8のタマネギ抽出物とした。得られた抽出物のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)の固形分中の濃度を、上記測定法にしたがって測定した。結果を表6に示す。
【0090】
〔比較例9〕
外皮を取り除きみじん切りにした市販タマネギ(北海道産)500gを、ガスコンロで加熱したフライパンできつね色になるまで加熱した。加熱したタマネギ470gにイオン交換水1000gを加え、30℃で4時間攪拌抽出した。濾紙濾過して不溶物を取り除き、清澄な抽出液1180gを得た。次いで減圧濃縮し、Bx.70のタマネギ粗抽出物53gを得た。これを比較例9のタマネギ抽出物とした。得られた抽出物のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)の固形分中の濃度を、上記測定法にしたがって測定した。結果を表6に示す。
【0091】
〔比較例10〕
外皮を取り除きみじん切りにした市販タマネギ(北海道産)500gに、イオン交換水1000gを加え、30℃で4時間攪拌抽出した。濾紙濾過して不溶物を取り除き、清澄な抽出液1060gを得た。次いで減圧濃縮し、Bx.70のタマネギ粗抽出物50gを得た。この粗抽出物に酢酸エチル28gを加えて攪拌後、静置し、分かれた酢酸エチルを除去した。この操作を計2回実施した。酢酸エチル処理後の抽出物にイオン交換水15gを加え、減圧濃縮してBx.70の濃縮抽出物21gを得た。これを比較例10のタマネギ抽出物とした。得られた抽出物のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)およびプロトカテキュ酸(PA)の固形分中の濃度を、上記測定法にしたがって測定した。結果を表6に示す。
【0092】
【表6】

【0093】
<タマネギ抽出物の官能評価>
実施例7、比較例8〜10で得た抽出物の甘味、旨味、こく、渋味、苦味、酸味、焦げ感の各評価項目に対し、5名のパネラーにより、上記評価方法にしたがって官能評価し、各評価項目についての平均値を算出した。結果を表7に示す。また、この結果を図2に蜘蛛の巣グラフで示す。なお、図においては、甘味、旨味、コクについては強度の強い方がグラフの外側に、渋味、苦味、酸味、焦げ感については強度の弱い方がグラフの外側に来るように表した。
【0094】
【表7】

【0095】
表7から、本発明のタマネギ抽出物である実施例7のタマネギ抽出物は、甘味、旨味、コクのいずれもが比較例のものに比べきわだって強く、一方、渋味、苦味、酸味、焦げ感のいずれもが比較例のものと同程度か、比較例のものに比べ弱く、タマネギ風味を付与する呈味剤として極めて優れたものであることが分かる。
【0096】
〔実施例8〕
外皮を取り除きみじん切りにした市販タマネギ(北海道産)400gに、20重量%の含水エタノールを800g加えた。続いて、80℃に加熱して、2時間攪拌抽出した。濾紙濾過して不溶物を取り除いた後、減圧濃縮してBx.65のタマネギ粗抽出物85gを得た。このタマネギ粗抽出物に酢酸エチル40gを加えて分配洗浄した。洗浄物にイオン交換水20gを加えた後、減圧濃縮してBx.70のタマネギ粗抽出物60gを得た。さらに、このタマネギ粗抽出物にエタノールを60g加えて分配洗浄した。洗浄物にイオン交換水20gを加えた後、減圧濃縮してBx.70のタマネギ抽出物48gを得た。これを実施例8のタマネギ抽出物とした。得られたタマネギ抽出物のグルタミルメチオニン(GM)、クエルセチン(QC)、およびプロトカテキュ酸(PA)の固形分中の濃度を、上記測定法に従って測定した。結果を表8に示す。
【0097】
【表8】

【0098】
〔実施例9〕
〈タマネギ抽出物添加飲食品の官能評価〉
実施例8のタマネギ抽出物を以下の飲食品に添加して、添加前と添加後の飲食品の風味の比較を官能評価により行った。官能評価は4名のパネラーで行った。
【0099】
○カレー
市販の固形カレールウ「バーモントカレー(甘口)」(ハウス食品株式会社)を、120gの水に対して15g加え、加熱溶解してカレーソースを調製した。
一方、このカレーソースに、実施例8のタマネギ抽出物を0.1重量%添加して、タマネギ抽出物添加カレーソースを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加したカレーソースは、添加していないものと比較して、タマネギの甘さが付与され、カレーとしての美味しさが高まっていた。
【0100】
○ハヤシ
市販の固形ハヤシルウ「バーモントハヤシ」(ハウス食品株式会社)を110gの水に対して20g加え、加熱溶解してハヤシソースを調製した。
一方、このハヤシソースに、実施例8のタマネギ抽出物を0.1重量%添加して、タマネギ抽出物添加ハヤシソースを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加したハヤシソースは、添加していないものと比較して、タマネギの風味が向上し、ハヤシソースの味のボリューム感が高まっていた。
【0101】
○ホワイトシチュー
市販シチュールウ「北海道シチュー(クリーム)」(ハウス食品株式会社)を、水120g、牛乳20g(市販牛乳「明治おいしい牛乳」(明治乳業株式会社))に対して15g加え、加熱溶解してホワイトシチューソースを調製した。
一方、このホワイトシチューソースに、実施例8のタマネギ抽出物を0.05重量%添加して、タマネギ抽出物添加ホワイトシチューソースを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加したホワイトシチューソースは、添加していないものと比較して、タマネギの甘さが付与され、ホワイトシチューとしての美味しさが高まっていた。
【0102】
○ドレッシング
市販ドレッシング「サラダをおいしく食べるお酢まろやかトマト酢」(株式会社ミツカン)に、実施例8のタマネギ抽出物を0.06重量%添加して、タマネギ抽出物添加ドレッシングを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加したドレッシングは、添加していないものと比較して、タマネギの甘さが付与され、また酸味が低減されていた。
【0103】
○マリネ液
市販マリネ液「マリネ用」(キューピー株式会社)に、実施例8のタマネギ抽出物を0.08重量%添加して、タマネギ抽出物添加マリネ液を調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加したマリネ液は、添加していないものと比較して、タマネギの甘さが付与され、また酸味が低減されていた。
【0104】
○焼肉のたれ
市販焼肉のたれ「黄金の味中辛」(エバラ食品工業株式会社)に、実施例8のタマネギ抽出物を0.15重量%添加して、タマネギ抽出物添加焼肉のたれを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加した焼肉のたれは、添加していないものと比較して、タマネギの甘さが付与され、焼肉のたれとしての美味しさが高まっていた。
【0105】
○蒲焼のタレ
市販蒲焼のたれ「蒲焼のたれ」(株式会社鈴勝)に、実施例8のタマネギ抽出物を0.3重量%添加して、タマネギ抽出物添加蒲焼のたれを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加した蒲焼のたれは、添加していないものと比較して、タマネギの甘さが付与され、蒲焼のたれとしての美味しさが高まっていた。
【0106】
○即席味噌汁
市販即席味噌汁「あさげ(生みそタイプ)」(株式会社永谷園)を、180gのお湯に対して19g加え、攪拌溶解して即席味噌汁を調製した。
一方、この味噌汁に、実施例8のタマネギ抽出物を0.02重量%添加して、タマネギ抽出物添加味噌汁を調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加した味噌汁は、添加していないものと比較して、タマネギの甘味が付与され、味噌汁としての美味しさが高まっていた。
【0107】
○ポタージュスープ
市販ポタージュスープ「クノール 北海道とろ〜りポタージュ(乾燥スープ)」(味の素株式会社)を、150gのお湯に対して19.8g加え、溶解してポタージュスープを調製した。
一方、このポタージュスープに、実施例8のタマネギ抽出物を0.1重量%添加して、タマネギ抽出物添加ポタージュスープを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加したポタージュスープは、添加していないものと比較して、タマネギの旨味が付与され、スープとしての美味しさが高まっていた。
【0108】
○コーンスープ
市販コーンスープ「クノール カップスープコーンクリーム(乾燥スープ)」(味の素株式会社)を、150gのお湯に対して19.6g加え、溶解してコーンスープを調製した。
一方、このコーンスープに、実施例8のタマネギ抽出物を0.05重量%添加して、タマネギ抽出物添加コーンスープを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加したコーンスープは、添加していないものと比較して、タマネギの旨味が付与され、スープとしての美味しさが高まっていた。
【0109】
○ラーメンスープ
市販即席中華めん「サッポロ一番(しょうゆ味)」(サンヨー食品株式会社)に付属の粉末スープ(8.5g)を、500gのお湯に溶解してラーメンスープを調製した。
一方、このラーメンスープに、実施例8のタマネギ抽出物を0.03重量%添加して、タマネギ抽出物添加ラーメンスープを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加したラーメンスープは、添加していないものと比較して、タマネギの甘さが付与され、ラーメンスープとしての美味しさが高まっていた。
【0110】
○コンソメスープ
市販乾燥コンソメスープ「味の素KKコンソメ(固形タイプ)」(味の素株式会社)を、300gの水に対して5.3g加え、加熱溶解してコンソメスープを調製した。
一方、このコンソメスープに、実施例8のタマネギ抽出物を0.04重量%添加して、タマネギ抽出物添加コンソメスープを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加したコンソメスープは、添加していないものと比較して、タマネギの甘さが付与され、スープとしての美味しさが高まっていた。
【0111】
○野菜ジュース
市販野菜ジュース「1日分の野菜ベジタブル100」(株式会社伊藤園)に、実施例8のタマネギ抽出物を0.02重量%添加して、タマネギ抽出物添加野菜ジュースを調製した。
評価結果
タマネギ抽出物を添加した野菜ジュースは、添加していないものと比較して、タマネギの甘さが付与され、野菜ジュースとしての美味しさが高まっていた。
【0112】
〔実施例10〕
実施例8のタマネギ抽出物20重量%、タマネギ精油(「オニオンオイル」、株式会社プラスワン製)0.001重量%、グリセリン30重量%、エタノール0.999重量%および水49重量%を調合し、実施例10の香料組成物を調製した。
【0113】
〔比較例11〕
タマネギ精油(「オニオンオイル」、株式会社プラスワン製)0.001重量%、グリセリン30重量%、エタノール0.999重量%および水69重量%を調合し、比較例11の香料組成物を調製した。
【0114】
〔比較例12〕
試験例1の原料タマネギ粗抽出物20重量%、タマネギ精油(「オニオンオイル」、株式会社プラスワン製)0.001重量%、グリセリン30重量%、エタノール0.999重量%および水49重量%を調合し、比較例12の香料組成物を調製した。
【0115】
上記実施例10、比較例11、比較例12で調合された香料組成物の組成を表9に纏めて示す。
【0116】
【表9】

【0117】
〈香料組成物添加ドレッシングの官能評価〉
市販ドレッシング「サラダをおいしく食べるお酢まろやかトマト酢」(株式会社ミツカン)を生地とし、実施例10、比較例11、比較例12の香料組成物を0.1重量%添加して、実施例10香料組成物添加ドレッシング、比較例11香料組成物添加ドレッシング、および比較例12香料組成物添加ドレッシングを調製し、各香料組成物添加ドレッシングの風味の比較を行った。官能評価は6名のパネラーで行った。官能評価結果を表10に示す。
【0118】
【表10】

【0119】
表10のコメント欄に示されるように、実施例10香料組成物を添加したドレッシングは、甘さが高まっており、またツンとした酸味が抑えられていた。そしてドレッシングとしての美味しさが高まっていた。一方、比較例11香料組成物を添加したドレッシングは、タマネギの香りが高まっているものの、甘さやツンとした酸っぱさに変化は認められなかった。比較例12香料組成物を添加したドレッシングは、甘さの高まり方が弱く、またエグ味が目立っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエルセチンとグルタミルメチオニンの重量比(クエルセチン/グルタミルメチオニン)が0〜0.49で、且つ、プロトカテキュ酸とグルタミルメチオニンの重量比(プロトカテキュ酸/グルタミルメチオニン)が0〜1.86となる量のグルタミルメチオニン、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸を含有することを特徴とするタマネギ抽出物。
【請求項2】
抽出物固形分中のグルタミルメチオニン、クエルセチンおよびプロトカテキュ酸の濃度が、グルタミルメチオニンが350ppm以上、且つ、クエルセチンが170ppm以下、且つ、プロトカテキュ酸が650ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のタマネギ抽出物。
【請求項3】
生タマネギを抽出および/または搾汁して得たタマネギ粗抽出物、またはその濃縮物を、加熱処理し、さらに有機溶剤で分配洗浄することを特徴とする、請求項1または2に記載のタマネギ抽出物の製造方法。
【請求項4】
生タマネギを加熱処理した後に抽出および/または搾汁して得たタマネギ粗抽出物、またはその濃縮物を、有機溶剤で分配洗浄することを特徴とする、請求項1または2に記載のタマネギ抽出物の製造方法。
【請求項5】
生タマネギを加熱抽出して得たタマネギ粗抽出物、またはその濃縮物を、有機溶剤で分配洗浄することを特徴とする、請求項1または2に記載のタマネギ抽出物の製造方法。
【請求項6】
生タマネギを加熱処理した後に細断処理をして得たタマネギ懸濁液、またはその濃縮物を、有機溶剤で分配洗浄することを特徴とする、請求項1または2に記載のタマネギ抽出物の製造方法。
【請求項7】
前記分配洗浄に使用する有機溶剤が、酢酸エチルおよび/またはエタノールであることを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載のタマネギ抽出物の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載のタマネギ抽出物を0.01〜50重量%含有する香料組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載のタマネギ抽出物を0.00001〜10重量%含有する飲食品。
【請求項10】
請求項8に記載の香料組成物を0.01〜10重量%含有する飲食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−19464(P2011−19464A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168394(P2009−168394)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】