説明

タルク微粉末及びその製造方法

【課題】分散安定性に優れたタルク微粉末を提供する。
【解決手段】レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が0.1〜2μmであるタルク微粉末であって、前記タルク微粉末を大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後のタルク微粉末Aを発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波により1分間分散して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzと、さらに前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間分散して得られたタルク微粉末Cの前記メディアン径D5019.5kHzとの比[D5019.5kHz/D5045kHz]が0.88以上であることを特徴とするタルク微粉末とその製造方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散安定性に優れたタルク微粉末及びその製造方法に関する。さらには、高アスペクト比のタルク微粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タルクは、滑石を粉砕して得られる粉末であり、化学組成[MgSi10(OH)]を有する含水ケイ酸マグネシウムからなる。
【0003】
タルクは、耐熱性に優れるとともに化学的に安定であることから、製紙、プラスチック・ゴム、医薬品、化粧品、肥料等の各種分野における充填材(フィラー)として幅広く用いられている(例えば特許文献1〜4など)。
【特許文献1】特開2005−246027号公報
【特許文献2】特開2004−244605号公報
【特許文献3】特開2004−208775号公報
【特許文献4】特開2003−96689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにタルクの主な用途がフィラーであることから、その分散性が非常に重要な特性となる。
【0005】
しかしながら、従来のタルクは、たとえ微細に粉砕(又は分級)したとしても、経時的に凝集を起こし、当初の分散状態を長期間にわたり維持することはできない。特に、その粒度が小さくなるほどその凝集の問題は深刻となる。このように凝集が生じたタルクでは、フィラーとして所望の効果を十分に達成することが困難ないしは不可能となる。
【0006】
また、従来のタルク又はその製法では、タルクの微細化に伴ってアスペクト比も小さくなるため(すなわち、扁平でなくなるため)、扁平性というタルクの本来の性状(特性)を十分に得ることが困難となる。
従って、本発明の主な目的は、特に、分散安定性に優れたタルク微粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定の方法により調製されたタルク微粉末が上記目的を達成できることを見出し、ついに本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記のタルク微粉末及びその製造方法に係る。
1. レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が0.1〜2μmであるタルク微粉末であって、
前記タルク微粉末を大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後のタルク微粉末Aを発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波により1分間分散して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzと、さらに前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間分散して得られたタルク微粉末Cの前記メディアン径D5019.5kHzとの比[D5019.5kHz/D5045kHz]が0.88以上であることを特徴とするタルク微粉末。
2. アスペクト比が15以上である、前記項1に記載のタルク微粉末。
3. かさ比重が0.12以下である、前記項1又は2に記載のタルク微粉末。
4. レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が2μmを超えるタルク粉末の粒子をジェット気流により加速して粒子どうし又は衝突板に衝突させることにより得られる、前記項1〜3のいずれかに記載のタルク微粉末。
5. レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が2μmを超えるタルク粉末の粒子をジェット気流により加速して粒子どうし又は衝突板に衝突させることにより、メディアン径D50が0.1〜2μmであるタルク微粉末を製造する方法。
6. ジェット気流の一部又は全部がヘリウムガス、窒素、空気である、前記項5に記載の製造方法。
7. 前記タルク微粉末が、これを大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後のタルク微粉末Aを発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波により1分間分散して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzと、さらに前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間分散して得られたタルク微粉末Cのメディアン径D5019.5kHzとの比[D5019.5kHz/D5045kHz]が0.88以上である、前記項5又は6に記載の製造方法。
8. 前記タルク微粉末がアスペクト比15以上である、前記項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
9. 前記タルク微粉末がかさ比重0.12以下である、前記項5〜8のいずれかに記載の製造方法。
10. レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が0.1〜2μmである、分散安定性に優れたタルク微粉末を選別する方法であって、
前記タルク微粉末を大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後のタルク微粉末Aを発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波により1分間分散して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzと、さらに前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間分散して得られたタルク微粉末Cの前記メディアン径D5019.5kHzとの比[D5019.5kHz/D5045kHz]が0.88以上であるタルク微粉末を選び出す工程を有する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長期にわたり高い分散性を維持することができるタルク微粉末を提供することができる。とりわけ、大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置という条件下でも高い分散状態を維持することができる。これは、上記条件下で凝集が比較的大幅に進行する従来のタルク微粉末との大きな違いである。
【0010】
しかも、本発明では、アスペクト比の高い(扁平性の高い)粒子を提供することも可能である。一般に、タルクを微細に粉砕しようとした場合、微細化に伴ってタルクの特徴である高アスペクト比も損なわれるため、アスペクト比の高い粒子を得ることは困難となることがある。これに対し、本発明では、微細な粒子である場合であっても、高いアスペクト比をもつ粒子として提供することができる。これにより、微細化されても、タルク本来の特性を十分に活かすことができる。
【0011】
本発明の製造方法では、上記のような分散安定性の高いタルク微粉末を効率的に製造することができる。特に、媒体としてジェット気流を用いるので、比較的速く粉砕できるととともに、湿式粉砕における液媒体との分離のような工程を省くことができる。
【0012】
また、本発明の製造方法によれば、上記のようにアスペクト比の高い粒子をより効率的かつ確実に製造することができる。すなわち、本発明の製造方法では、粒子を微細化できると同時に、高いアスペクト比を維持することができる。換言すれば、本発明の製造方法では、タルク粉末の微細化に伴うアスペクト比の低下を回避できる結果、微細でかつ高アスペクト比のタルク微粉末を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.タルク微粉末
本発明のタルク微粉末は、レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が0.1〜2μmであるタルク微粉末であって、
前記タルク微粉末を大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後のタルク微粉末Aを発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波により1分間分散して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzと、さらに前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間分散して得られたタルク微粉末Cの前記メディアン径D5019.5kHzとの比[D5019.5kHz/D5045kHz]が0.88以上であることを特徴とする。
【0014】
<メディアン径D50>
本発明のタルク微粉末は、レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が、通常0.1〜2μmであり、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.1〜0.9μmである。本発明は、このような微細粒子から構成されるにもかかわらず、優れた分散安定性を発揮するものである。特に、本発明では、ナノスケールの微粒子(ナノ微粒子)であっても、効果的に凝集が抑制され、長期にわたり高い分散性を発揮することができる。
【0015】
上記メディアン径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(製品名「SALD−2000J」(株)島津製作所製)を用いて測定した値を示す(以下同じ)。
【0016】
<比[D5019.5kHz/D5045kHz]>
本発明の最も大きな特徴は、上記比が0.88以上、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.92以上という点にある。上記比は最大値を1とし、1に近づくほど分散安定性が高いことを示す。すなわち、上記比の値が高いほど長期にわたり高い分散性を維持できることを示す。
【0017】
従来のタルク微粉末は、たとえ粉砕により微細化されたとしても(粉砕直後のものであっても)、時間の経過とともに凝集が進み、比較的大きな二次粒子を形成することになる。特に、大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後においてはほとんどすべてのタルク微粉末が凝集する。このような凝集した粒子群に対し、比較的弱い超音波処理(第1処理)を施す。次いで、第1処理により得られたタルク微粉末に対して比較的強い超音波処理を施す。この場合、凝集が進行した粒子群では、第1処理では凝集が十分に解れず、第2処理でさらに解れることになる。このため、第2処理で粒度が小さくなり、従って比[D5019.5kHz/D5045kHz]が小さくなる。すなわち、上記比が0.88未満となる。これに対し、本発明のタルク微粉末では、大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後においても、凝集の進行が抑制ないしは防止されているため、第1処理でほとんどの凝集が解れるので、第2処理を実施しても粒度の大幅な低下は認められない。すなわち、上記比が0.88以上となる。
【0018】
上記比の測定方法は、まず測定対象となる微粉末(被測定粉末)を大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置する。1ヶ月放置した直後のタルク微粉末Aについて発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波による1分間連続の分散を実施して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzを測定する。次いで、前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間(3秒発振と2秒休止の繰り返し、計108秒照射)分散して得られたタルク微粉末Cの前記メディアン径D5019.5kHzを測定する。
【0019】
分散方法は、前記の第1処理及び第2処理の条件下で測定方法に定められた条件で実施すれば良い。例えば、100mlガラスビーカーを容器とし、蒸留水50mlに対してアニオン界面活性剤1重量%を添加し、これにタルク微粉末を0.1g加えた上で、超音波分散に供することができる。
【0020】
超音波分散機は、公知の装置を使用すれば良く、例えば市販の超音波洗浄器を用いることができる。超音波の条件は前記のとおりとすれば良い。特に、第1処理後のものを第2処理へ、というように、断続的に超音波分散を実施することが再現性という点で好ましい。
【0021】
<アスペクト比>
本発明タルク微粉末のアスペクト比は、通常15以上、特に17以上であることが好ましい。本発明のタルク微粉末は、上記アスペクト比に見られるように、微細であっても扁平性が高く、従来のタルク微粉末に比べて薄い粒子である。一般にタルク粉末は、微細化に伴ってそのアスペクト比も低下して鱗片状でなく粒状に近い形状となるが、本発明のタルク微粉末は例えばメディアン径が2μm以下という微細なものであっても15以上という高いアスペクト比を有する。
【0022】
本発明におけるアスペクト比の測定方法は、タルク微粉末の粒子を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(製品名「S−4800」日立製作所製)にて3万〜10万倍で観察し、断面の観察が可能な粒子を任意で10個選び出し、それぞれの断面の厚みと長さを測定した上で各アスペクト比(長さ/厚み)を計算し、さらにその算術平均値を算出することにより求めた。
【0023】
<かさ比重>
本発明タルク微粉末のかさ比重は、通常0.12以下、特に0.11以下、さらには0.07以下であることが好ましい。このため、本発明タルク微粉末は、従来のタルク微粉末よりも嵩高い。なお、かさ比重の下限値は一般的には0.05程度である。
【0024】
本発明におけるかさ比重の測定方法は、JIS K 5101のかさ比重、静置法に規定された方法に準拠して実施する。
2.タルク微粉末の製造方法
本発明のタルク微粉末は、レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が2μmを超えるタルク粉末の粒子をジェット気流により加速して粒子どうし又は衝突板に衝突させることにより、レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が0.1〜2μmであるタルク微粉末を製造する方法により好適に製造することができる。
【0025】
出発原料とするタルク粉末は、レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が2μmを超えるタルク粉末を用いる。特に、本発明では、メディアン径D50が2μmを超え、かつ、10μm以下のタルク粉末、さらにはメディアン径D50が3μm以上10μm以下のタルク粉末を用いることが好ましい。上記範囲のタルク粉末を出発原料として用いることにより、より効率的に分散安定性に優れたタルク微粉末を得ることができる。このようなタルク粉末は、公知又は市販のものを使用することができる。
【0026】
粉砕は、タルク粉末をジェット気流にのせて加速し、タルク粉末の粒子どうし又は衝突板に衝突させることにより実施する。衝突板としては、アルミナセラミック等の材質からなる衝突板を好適に用いることができる。
【0027】
ジェット気流として用いる気体は、所望の加速性能が得られるものであれば特に限定されない。例えば、空気のほか、窒素ガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを単独又は混合して用いることができる。特に、本発明では、より高い加速性能が得られるという点でヘリウムガスを用いることが望ましい。
【0028】
加圧条件(粉砕圧)は、得られるタルク微粉末の所望の粒径、用いる気体の種類等に応じて適宜設定することができるが、通常は0.4〜1.5MPa、特に0.6〜1.4MPaとなるように調節することが望ましい。
【0029】
粉砕回数(パス数)は特に限定されず、1回又は2回以上とすることができる。目的とする粒径が小さい場合は、パス数を増加させれば良い。
【0030】
本発明における粉砕は、乾式ジェット粉砕を実行できるものであれば限定されず、公知又は市販のジェット粉砕装置(システム)を用いることができる。例えば、乾式ジェットミル等を用いることができる。これらの装置を用い、前記の粉砕条件に設定して粉砕を行うことにより、分散安定性に優れるタルク微粉末を好適に製造することができる。
【0031】
3.タルク微粉末の選別方法
本発明は、レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が0.1〜2μmである、分散安定性に優れたタルク微粉末を選別する方法であって、
前記タルク微粉末を大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後のタルク微粉末Aを発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波により1分間分散して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzと、さらに前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間分散して得られたタルク微粉末Cの前記メディアン径D5019.5kHzとの比[D5019.5kHz/D5045kHz]が0.88以上であるタルク微粉末を選び出す工程を有する方法を包含する。
【0032】
すなわち、前記2.で本発明のタルク微粉末を好適に製造することができるが、その得られたタルク微粉末の分散安定性を確認する場合等に上記選別方法を有効に利用することができる。
【0033】
上記選別方法で規定されている各物性は、前記と同様の方法により同定・特定することができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより一層明確にする。ただし、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0035】
実施例1
出発原料としてのタルク粉末(製品名「ミクロエースP−3」日本タルク(株)製,D50:5.1μm,BET比表面積:8.5m/g)を乾式ジェット粉砕により粉砕し、タルク微粉末(D50:0.5μm)を得た。
【0036】
粉砕装置は、ヘリウム循環式粉砕システム(製品名「PJM−80SP」日本ニューマチック工業(株)製)を用いた。粉砕条件は、粉砕圧0.6MPa、原料供給量0.5kg/hrとした。粉砕回数は2パスとした。また、ライン全体の雰囲気はヘリウムガス雰囲気とした。
【0037】
実施例2
原料供給量を2.0kg/hr、粉砕回数1パスとしたほかは、実施例1と同様にしてタルク粉末を粉砕することにより、タルク微粉末(D50:1.0μm)を得た。
【0038】
実施例3
出発原料としてのタルク粉末(製品名「ミクロエースP−3」日本タルク(株)製,D50:5.1μm,BET比表面積:8.5m/g)を乾式ジェット粉砕により粉砕し、タルク微粉末(D50:1.0μm)を得た。
【0039】
粉砕装置は、製品名「ナノ・グラインディングミル」(株)アイシン ナノテクノロジーズ製)を用いた。粉砕条件は、粉砕圧1.4MPa、原料供給量16kg/hrとした。粉砕回数は4パスとした。また、ライン全体の雰囲気は空気雰囲気とした。
【0040】
実施例4
原料供給量を16kg/hr、粉砕回数4パス、さらに原料供給量を8.5kg/hrにして、粉砕回数1パス、計5パスとしたほかは、実施例3と同様にしてタルク粉末を粉砕することにより、タルク微粉末(D50:0.8μm)を得た。
【0041】
実施例5
原料供給量を16kg/hr、粉砕回数4パス、さらに原料供給量を8.5kg/hr、粉砕回数2パス、計6パスとしたほかは、実施例3と同様にしてタルク粉末を粉砕することにより、タルク微粉末(D50:0.7μm)を得た。
【0042】
実施例6
原料供給量を16kg/hr、粉砕回数4パス、さらに原料供給量を8.5kg/hr、粉砕回数4パス、計8パスとしたほかは、実施例3と同様にしてタルク粉末を粉砕することにより、タルク微粉末(D50:0.6μm)を得た。
【0043】
比較例1
出発原料としてのタルク粉末(製品名「ミクロエースP−3」日本タルク(株)製,D50:5.1μm,BET比表面積:8.5m/g)を湿式ジェット粉砕により粉砕し、タルク微粉末(D50:0.5μm)を得た。
【0044】
粉砕装置は、製品名「アルティマイザー」(株)スギノマシン製)を用いた。粉砕条件は、粉砕圧245MPa、原料供給量8kg/minとした。粉砕回数は40パスとした。また、液媒体として蒸留水を用いた。
【0045】
比較例2
原料供給量を8kg/min、粉砕回数20パスとしたほかは、比較例1と同様にしてタルク粉末を粉砕することにより、タルク微粉末(D50:0.7μm)を得た。
【0046】
比較例3
出発原料としてのタルク粉末(製品名「ミクロエースP−3」日本タルク(株)製,D50:5.1μm,BET比表面積:8.5m/g)を乾式ビーズ粉砕により粉砕し、タルク微粉末(D50:0.7μm)を得た。
【0047】
粉砕装置は、製品名「撹拌ミル」(株)栗本鐵工所製)を用いた。粉砕条件は、回転数250rpm、原料供給量3kgとした。粉砕はバッチ運転で30分とした。また、ライン全体の雰囲気は空気雰囲気とした。ビーズは、アルミナ製(ビーズ径2mm)を用いた。
【0048】
試験例1
各実施例及び比較例で得られたタルク微粉末について、(1)比D5019.5kHz/D5045kHz(SALD比)、(2)かさ比重、(3)アスペクト比についてそれぞれ調べた。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
なお、各物性は、それぞれ以下のようにして測定した。
(1)比D19.5kHz/D45kHz
タルク微粉末を大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃に設定された恒温室内で1ヶ月放置した直後のタルク微粉末0.1gをとり、容器である100mlガラスビーカーに入れる。その容器に、アニオン界面活性剤1重量%が添加、調整された蒸留水50mlを加える。超音波洗浄器にその容器を置き、発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波により1分間連続分散して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzを測定し、さらに前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間(3秒発振と2秒休止の繰り返し、計108秒照射)分散して得られたタルク微粉末Cの前記メディアン径D5019.5kHzとの比[D5019.5kHz/D5045kHz]を求めた。
(2)かさ比重
JIS K 5101、かさ比重 静置法に規定された方法に準拠して実施した。
(3)アスペクト比
タルク微粉末の粒子を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(製品名「S−4800」日立製作所製)にて3万〜10万倍で観察し、断面の観察が可能な粒子を任意で10個選び出し、それぞれの断面の厚みと長さを測定した上で各アスペクト比(長さ/厚み)を計算し、さらにその算術平均値を算出することにより求めた。より具体的には、図1に示すように、断面が観察できる粒子を選択し、その断面の厚み(t)とその断面の長さ(D)を測定し、その比[D/t]を求めた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例2で得られたタルク微粉末の粒子を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡で観察した結果を示す図(イメージ画像)である。
【図2】実施例6で得られたタルク微粉末の粒子を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡で観察した結果を示す図(イメージ画像)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が0.1〜2μmであるタルク微粉末であって、
前記タルク微粉末を大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後のタルク微粉末Aを発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波により1分間分散して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzと、さらに前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間分散して得られたタルク微粉末Cの前記メディアン径D5019.5kHzとの比[D5019.5kHz/D5045kHz]が0.88以上であることを特徴とするタルク微粉末。
【請求項2】
アスペクト比が15以上である、請求項1に記載のタルク微粉末。
【請求項3】
かさ比重が0.12以下である、請求項1又は2に記載のタルク微粉末。
【請求項4】
レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が2μmを超えるタルク粉末の粒子をジェット気流により加速して粒子どうし又は衝突板に衝突させることにより得られる、請求項1〜3のいずれかに記載のタルク微粉末。
【請求項5】
レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が2μmを超えるタルク粉末の粒子をジェット気流により加速して粒子どうし又は衝突板に衝突させることにより、メディアン径D50が0.1〜2μmであるタルク微粉末を製造する方法。
【請求項6】
ジェット気流の一部又は全部がヘリウムガス、窒素、空気である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記タルク微粉末が、これを大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後のタルク微粉末Aを発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波により1分間分散して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzと、さらに前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間分散して得られたタルク微粉末Cのメディアン径D5019.5kHzとの比[D5019.5kHz/D5045kHz]が0.88以上である、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記タルク微粉末がアスペクト比15以上である、請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記タルク微粉末がかさ比重0.12以下である、請求項5〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
レーザー回折・散乱法によるメディアン径D50が0.1〜2μmである、分散安定性に優れたタルク微粉末を選別する方法であって、
前記タルク微粉末を大気圧中で相対湿度70%及び温度25℃で1ヶ月放置した後のタルク微粉末Aを発振周波数45kHz−定格出力100Wの超音波により1分間分散して得られたタルク微粉末Bのメディアン径D5045kHzと、さらに前記タルク微粉末Bを発振周波数19.5kHz−定格出力300Wの超音波により3分間分散して得られたタルク微粉末Cの前記メディアン径D5019.5kHzとの比[D5019.5kHz/D5045kHz]が0.88以上であるタルク微粉末を選び出す工程を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−88041(P2008−88041A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273883(P2006−273883)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(505360801)日本タルク株式会社 (8)
【Fターム(参考)】