説明

タレット旋盤

【課題】 ワークの工具にかかる負荷が安定し、球面状に精度良く加工でき、かつタレットインデックスクリアランスを小さくでき、旋盤の大型化を抑制することのできるタレット旋盤を提供する。
【解決手段】 タレット旋盤は、ワークWを支持可能な主軸と、周囲に複数の工具を装着自在であって、1つの工具65を主軸に支持されたワーク側に旋回して割出せるタレット16とを備える。前記工具の少なくともに1つは、タレット16の周囲に取り付けた工具旋回ユニット17に装着されたものであり、この工具旋回ユニット17は、前記ワークWを球面状に加工するために、工具65がほぼワークWの球面中心に向かう姿勢を維持した状態で工具65の刃先65aを円弧軌跡上で旋回させる。前記タレット16は、前記工具旋回ユニット17を駆動する旋回駆動機構を内蔵する。前記工具旋回ユニット17は、タレット16の旋回中心線と直交する工具旋回中心線O2回りに工具65を旋回する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールジョイントのようなワークの球面加工に用いられるタレット旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを球面状に加工する場合、旋盤で球面形状に加工した後、転造機にて転造加工するという方法が採られている。上記旋盤による球面加工の方法は、図9に示すように、チャック80に把持されたワークWに対して、バイト81の切込量を変えながら送りを行うことにより、バイト81の刃先を円弧軌道上で移動させるというものである。
【0003】
また、タレット刃物台に、ワークを支持する主軸と直交する旋回軸回りに旋回自在に工具を取り付け、工具を前記旋回軸回りに旋回させながらワークを切削することにより、ワークに球面加工をする旋盤が提案されている。
【特許文献1】特開2000−308901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の旋盤と転造機を併用する方法は、複数の機械を使用するため、ワークの付け替えに時間がかかることから作業能率が悪く、かつワーク付け替え時に誤差が生じやすいことから加工精度に難がある。
【0005】
また、特許文献1に記載の旋盤は、工具を旋回させる旋回駆動手段がタレットの外周部に設けられているため、周辺部を含むタレット装置全体が大型化するという問題がある。さらに、タレットインデックスクリアランスの接線方向(例えば鉛直方向)の旋回軸回りに工具が旋回するため、旋回位置によっては工具がタレットの径方向外側に大きく張り出すこととなり、タレットインデックスクリアランスが大きくなる。このことから、旋盤自体を大きくしなければならないという不具合が生じる。
【0006】
この発明の目的は、ワークの工具にかかる負荷が安定し、球面状に精度良く加工できるタレット旋盤を提供することである。
この発明の他の目的は、タレットインデックスクリアランスを小さくでき、旋盤の大型化を抑制することである。
この発明のさらに他の目的は、タレットから入力される回転の減速比を調整可能とすることで、工具の旋回速度をワークの種類や各種加工条件に応じて変更できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のタレット旋盤は、ワークを支持可能な主軸と、周囲に複数の工具を装着自在であって、1つの工具を主軸に支持されたワーク側に旋回して割出せるタレットとを備えたタレット旋盤であって、前記工具の少なくともに1つは、タレットの周囲に取り付けた工具旋回ユニットに装着されたものであり、この工具旋回ユニットは、前記ワークを球面状に加工するために、工具がほぼワークの球面中心に向かう姿勢を維持した状態で工具の刃先を円弧軌跡上で旋回させるものであり、前記タレットは、前記工具旋回ユニットを駆動する旋回駆動機構を内蔵したものである。
この発明のタレット旋盤によると、工具旋回ユニットにより、工具の刃先を円弧軌跡上で旋回させることで、ワークを球面状に加工することができる。このとき、工具はワークの球面中心に向かう姿勢を維持するため、ワークの工具にかかる負荷が安定しており、精度良く加工することができる。工具旋回ユニットを駆動する旋回駆動機構がタレットに内蔵されているため、タレット装置が大型化しない。
【0008】
この発明において、前記工具旋回ユニットは、タレットの旋回中心線と直交する工具旋回中心線回りに工具を旋回するものであるのが良い。
この構成であると、工具旋回ユニットにより、工具の刃先を円弧軌跡上で旋回させても、工具のタレット径方向位置が変化しないため、タレットインデックスクリアランスが大きくなることを防げる。
【0009】
また、この発明において、前記旋回駆動機構は、タレットの旋回中心線と直交する軸心を有するドライブ軸を備え、前記工具旋回ユニットは、前記ドライブ軸と結合する回転伝達軸と、この回転伝達軸に設けた駆動側歯車と、この駆動側歯車と噛合する従動側歯車と、この従動側歯車に取り付けられ、従動側歯車の中心位置から外れた位置に、刃先が従動側歯車の中心方向を向くように工具を装着可能な工具ホルダとより成る。
この構成によれば、ドライブ軸と回転伝達軸との結合を解除することで、タレットから工具旋回ユニットを取り外すことができる。このため、加工条件に応じて、駆動側歯車と従動側歯車との伝動比(減速比)が異なる工具旋回ユニットに交換することが可能で、最適な状態で球面加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明のタレット旋盤は、ワークを支持可能な主軸と、周囲に複数の工具を装着自在であって、1つの工具を主軸に支持されたワーク側に旋回して割出せるタレットとを備えたタレット旋盤であって、前記工具の少なくともに1つは、タレットの周囲に取り付けた工具旋回ユニットに装着されたものであり、この工具旋回ユニットは、前記ワークを球面状に加工するために、工具がほぼワークの球面中心に向かう姿勢を維持した状態で工具の刃先を円弧軌跡上で旋回させるものであり、前記タレットは、前記工具旋回ユニットを駆動する旋回駆動機構を内蔵したため、ワークの工具にかかる負荷が安定し、球面状に精度良く加工でき、タレット装置が大型化しない。
【0011】
前記工具旋回ユニットが、タレットの旋回中心線と直交する工具旋回中心線回りに工具を旋回するものである場合は、タレット装置の最大半径を小さくでき、旋盤の大型化を抑制できる。
【0012】
また、前記旋回駆動機構が、タレットの旋回中心線と直交する軸心を有するドライブ軸を備え、前記工具旋回ユニットは、前記ドライブ軸と結合する回転伝達軸と、この回転伝達軸に設けた駆動側歯車と、この駆動側歯車と噛合する従動側歯車と、この従動側歯車に取り付けられ、従動側歯車の中心位置から外れた位置に、刃先が従動側歯車の中心方向を向くように工具を装着可能な工具ホルダとより成る場合は、タレットから入力される回転の減速比を調整することが可能であるため、工具の旋回速度をワークの種類や各種加工条件に応じて変更でき、最適な状態で球面加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の一実施形態を図1ないし図6と共に説明する。このタレット旋盤は、図1の平面図に示されるように、ベッド1上に主軸台2およびタレット刃物台6が設置されている。主軸台2には主軸3が設けられ、この主軸3は、主軸台2の下方等でベッド1に設置された主軸モータ4により回転駆動される。主軸3は、主軸チャック5を有していて、ワークWを把持可能である。
【0014】
タレット刃物台6は、刃物台移動機構7に設置されて、直交する2軸(X軸方向、Y軸方向)方向に移動可能とされている。刃物台移動機構7は、ベッド1に案内8を介して進退自在に設置された送り台9を備え、この送り台9にタレット刃物台6を、送り台移動方向(X軸方向)と直交する方向(Z軸方向)に移動自在に設置している。刃物台移動機構7は、この送り台9を進退させる送り台進退機構10と、送り台9に設置されてタレット刃物台6を進退させるタレット進退機構11とを備える。これら送り台進退機構10および刃物台進退機構11は、各々ボールねじ機構等の送りねじ機構12,13と、そのねじ軸を回転させるサーボモータ等の駆動源14,15とで構成される。
【0015】
タレット刃物台6は、正面形状が多角形のドラム状をしたタレット16を備え、このタレット16の各平面状の周面部分が工具ステーションSとなっている。各工具ステーションSには、バイト等の各種の工具が装着される。この実施形態は、タレット16が正10角形のドラム状であり、10箇所の工具ステーションSを有する。そして、そのうちの少なくとも1つの工具ステーションSに、球面加工用の工具65が工具旋回ユニット17を介して装着される。タレット16は、任意の工具ステーションSが主軸3に対応する位置となるように、後述する割出機構の駆動で割出可能である。
【0016】
図2はタレット刃物台6の内部構造を示す図である。タレット刃物台6、固定フレーム22と、固定フレーム22に対して旋回自在に設けられて先端に前記タレット16を有する中空の旋回軸24と、この旋回軸24に挿通された中空の不旋回軸26と、この不旋回軸26の先端に設けられてドライブ軸28を支持する不旋回部材27とを有する。不旋回軸26内に駆動伝達軸29が挿通され、伝達機構30を介して駆動伝達軸29からドライブ軸28に回転が伝達される。
【0017】
不旋回部材25の外周に周方向に沿ってガイド35が設けられ、ガイド35はタレット16に装着された回転工具36のタレット16の旋回に伴う移動を、回転角度を一定に保持しながら案内する。タレット16と固定フレーム22との間には噛合カップリング34が設けてある。この噛合カップリング34は、3ピースカップリングであり、タレット16の後部に設けられた第1継手歯31と、固定フレーム22に設けられた第2継手歯32と、これら第1、第2継手歯31,32の両方に係脱自在な第3継手歯33とを有する。第3継手歯33は、係脱駆動源40により前後に進退駆動される。
【0018】
固定フレーム22は、支持台52に固定状態に設置されている。不旋回軸26は、後端で固定フレーム22に対して連結部材38,39で連結されている。連結部材38,39は、それぞれボルトおよび位置決めピンからなる。
タレット16は、旋回軸24の部分において、不旋回軸26の外周に軸受42を介して回転自在に支持されている。タレット16の後部の外周にリング歯車等の歯車部43を有し、タレット割出用モータ(図示せず)により駆動されるタレット駆動軸44に設けられた歯車45が、タレット16の歯車部43に噛み合っている。
【0019】
噛合カップリング34の第1継手歯31および第2継手歯32は、互いに同心のリング状に設けられ、同じ軸方向位置で後ろ向きに設けられている。これら継手歯31,32は、噛み合い歯が円周方向に並んで形成されたものであり、各歯の円周方向の断面形状は、例えば台形状に形成されている。第3継手歯33は、第1および第2の継手歯31,32の両方に噛み合う径方向幅を有するリング状の部材である。
【0020】
噛合カップリング34の係脱駆動源40は、固定フレーム32に内蔵された油圧シリンダ等の流体圧シリンダからなり、前後移動自在なピストン41を有している。噛合カップリング34の第3継手歯33は、ピストン41の前方に設けられている。ピストン41はリング状の部材であり、固定フレーム22の段付き円筒面状の内周面部に進退自在に嵌合している。ピストン41に流体圧を作用させる前後の流体圧室53a,53bは、ピストン41の外周側において固定フレーム22に設けられ、それぞれ流体路54a,54b(図3参照)に連通している。
【0021】
図2において、駆動伝達軸29は、工具旋回ユニット17または他の回転工具18を駆動する軸であり、後端でモータ等の工具回転駆動源に伝達機構(図示せず)を介して接続されている。駆動伝達軸29は後部が軸受46を介して支持台52に支持され、前部が軸受47により不旋回軸26に支持されている。
ドライブ軸28は、所定位置で軸受48,49により不旋回部材27に回転自在に支持され、タレット16の旋回中心線O1と直交する方向、すなわちタレット16の半径方向に延びている。駆動伝達軸29から工具伝達軸28に回転伝達する伝達機構30は、両軸29,28にそれぞれ設けられて互いに噛み合う一対の傘歯車50,51からなる。
駆動伝達軸29、伝達機構30、およびドライブ軸28で、工具旋回ユニット17を駆動する旋回駆動機構を構成している。この旋回駆動機構はタレット16に内蔵されている。
【0022】
図4および図5に示すように、工具旋回ユニット17は、前記ドライブ軸28と後述する結合手段60により結合される回転伝達軸61と、この回転伝達軸61と一体回転するように設けた駆動側歯車62と、この駆動側歯車62と噛合する従動側歯車63と、この従動側歯車63の支持軸63aに取付けられた工具ホルダ64とより成る。工具ホルダ64は、従動側歯車63の中心位置から外れた位置に、刃先が従動側歯車の中心方向を向くように工具65を装着可能である。駆動側歯車62および従動側歯車63はいずれも平歯車であり、駆動側歯車62よりも従動側歯車63の方が歯数が多く、回転伝達軸61から支持軸63aに減速して回転を伝達するようになっている。
【0023】
駆動側歯車62および従動側歯車63を収容するハウジング66は、複数本(この実施形態では4本)のボルト67によりタレット16の周面に固定される。ボルト67を挿通するハウジング66のボルト孔68は、ボルト径に対して大きめの孔とされ、ボルト孔68におけるボルト67の挿通位置を変更することにより、タレット16に対するハウジング66の取付角度を調節可能である。
【0024】
前記結合手段60は、図6に示すように、ドライブ軸28の先端面に直線溝状の凹部28aを形成し、この凹部28aに噛み合う直線状の凸部61aを、工具旋回ユニット17の回転伝達軸61の回転入力側の端部に形成したものである。ドライブ軸28は位置固定であるが、結合手段60の凹部28aと凸部61aとは、その直線状の形状により、タレット16の回転方向に係脱自在となっている。
【0025】
ガイド35(図4)は、タレット16に装着された工具旋回ユニット17または回転工具18を、向きを一定に保持しつつ、タレット16の旋回時にドライブ軸28まで案内する部材である。ガイド35は、ドライブ軸28に対応する円周方向の位置に、ドライブ軸28が介在する途切れ部35bを有している。このガイド35は、回転伝達軸61の凸部61aを周方向に移動自在に係合させるガイド溝35aを外周に有する。詳しくは、ガイド35は、凸部57aを挟む隙間を開けて対向する2枚の円板状の案内板59で形成され、両案内板59間の外周部が上記ガイド溝35aとなる。案内板59は、タレット軸心を中心に配置されて、タレット軸心と垂直に固定されている。これら案内板59は、不旋回部材27が内部に入る開口部59aを中央に有し、上記途切れ部35bが周方向の1箇所に形成してある。
【0026】
このタレット旋盤の動作を説明する。タレット16に取付けられた工具旋回ユニット17は、ドライブ軸28の位置する加工位置Qに割出されたときに、その回転伝達軸61の凸部61aがドライブ軸28の凹部28aと噛み合い、駆動伝達軸29およびドライブ軸28を介して工具回転駆動源(図示せず)による回転駆動が可能とされる。
この場合に、凹部28aと凸部61aとは直線状に形成されており、タレット16を回転させるだけで、所定位置に待機する凹部28aに回転伝達軸61の凸部61aが噛み合う。回転伝達軸61の回転入力側の端部は、タレット16を回転させるとドライブ軸28から外れるが、ガイド35で凸部61aが挟み込み状態に案内されることにより、回転角度が維持される。そのため、次に回転伝達軸61の凸部61aがドライブ軸28の凹部28aと噛み合うときに、互いの方向が合致しており、噛み合いが円滑かつ確実に行われる。
【0027】
このように、タレット16を回転させるだけで、工具旋回ユニット17の回転伝達軸61がドライブ軸28と連結されて直ちに駆動可能な状態となる。したがって、タレット回転後のクラッチ動作が不要で、タレット16の回転工具割出時間が短縮される。
【0028】
つぎに、図3と共に、タレット16のカップリング34によるクランプ動作を説明する。タレット16を旋回させるときは、図3(B)に示すように、カップリング34の第3継手歯33は、ピストン41と共に後退させ、第1および第2継手歯31,32から離れた状態とする。タレット16の旋回が終わると、同図(A)のように、カップリング34の第3継手歯33をピストン41と共に前進させ、第1および第2継手歯31,32に噛み合わせる。ピストン41は、前方の流体圧室33aに作動流体を供給すると後退し、後方の流体圧室53bに作動流体を供給すると前進する。
【0029】
このように、噛み合い状態とすると、タレット16に設けられた第1継手歯31と、固定フレーム22に設けられた第2継手歯32とが、第3継手歯33を介して互いに固定されることになる。そのため、タレット16は固定フレーム22に対して回転角度が固定され、加工時に回転方向の剛性が得られて、高加工精度が得られる。
カップリング34は、3ピースカップリングとしたため、噛み合いの係脱に際して、タレット16を前後移動させる必要がなく、ピストン41を進退させるだけで済む。そのため、カップリング34の係脱駆動源40が大がかりなものとならず、コンパクトな構成となる。また、タレット16は、前後に移動しないため、前後方向の剛性が高く、これによっても高精度の加工が可能である。
【0030】
主軸5に把持されたワークWに球面加工を施す場合、上記のようにして工具旋回ユニット17を加工位置Qに割出した後、工具65の刃先65aの先端がワークWの所定位置に当たるようにタレット刃物台6の位置決めする。その状態で工具回転駆動源(図示せず)を出力オンにすると、タレット16内の旋回駆動機構28,29,30を介して回転伝達軸61が所定方向に回転し、その回転伝達軸61の回転が、一対の歯車62,63を介して歯車63の支持軸63aに減速して伝達される。これにより、工具ホルダ64と共に工具65が支持軸63の軸心を工具旋回中心線O2として円弧状軌跡C上を旋回する。このように工具65を旋回させながら工具65による切削加工を行うことで、図7において実線で示すように、ワークWの球面部Waが工具65の工具旋回中心線O2を中心とする球面に加工される。この球面加工の際に、工具65はほぼワークWの球面中心に向かう姿勢を維持するため、ワークWの工具65にかかる負荷が安定しており、精度良く加工することができる。
【0031】
工具旋回中心線O2の上下位置が不適正である場合、図7において2点鎖線で示すように両端が尖ったラグビーボール状に加工されたり(A)、1点鎖線で示すように扁平な擬似球形に加工されたりする(B)。その場合には、ハウジング66のボルト孔68における取付用ボルト67の挿通位置を変更することにより、タレット16に対するハウジング66の取付角度を調節して、工具旋回中心線O2の上下位置を適正位置に修正することができる。
【0032】
この工具旋回ユニット17は、タレット16の旋回中心線O1と直交する工具旋回中心線O2回りに工具65を旋回させるため、工具65の刃先65aが円弧軌跡C上を旋回しても、工具65のタレット径方向位置が変化しない。このため、タレットインデックスクリアランスが大きくなることを防げる。このことから、旋盤自体が大型になることを防げる。
【0033】
また、工具旋回ユニット17を駆動する旋回駆動機構31がタレット16に内蔵されているため、タレット装置が大型化しない。このため、1つおきの工具ステーションSに工具旋回ユニット17を設けることが可能である。したがって、10箇所の工具ステーションSを有する本実施形態の場合、1つのタレット16につき5個の工具旋回ユニット17を設けることができる。
【0034】
さらに、この工具旋回ユニット17は、ドライブ軸28と回転伝達軸61との結合を解除することで、タレット16から取り外すことができる。このため、ワークWの種類や加工条件に応じて、駆動側歯車62と従動側歯車63との減速比が異なる工具旋回ユニットに交換することが可能で、最適な状態で球面加工を行うことができる。
【0035】
この実施形態では、工具回転駆動源(図示しない)をタレット16の外部に設けた構成としたが、図8に示すように、工具回転駆動源70をタレット16の内部に設けた構成としても良い。図8の例では、工具回転駆動源70はモータであり、そのモータの出力軸が回転伝達軸61となっている。このようにタレット16の内部に工具回転駆動源70を設けると、動力伝達機構が簡略になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一実施形態にかかるタレット旋盤の平面図である。
【図2】同タレット旋盤のタレット刃物台の断面図である。
【図3】その噛合カップリングの動作説明図である。
【図4】同タレット刃物台のタレットおよび工具旋回ユニットの破断正面図である。
【図5】(A)は同工具旋回ユニットの一部破断平面図、(B)はその側面図である。
【図6】伝動カップリング機構の斜視図である。
【図7】球面加工されたワークの形状を示す図である。
【図8】この発明の異なる実施形態にかかるタレット旋盤のタレットおよび工具旋回ユニットの破断正面図である。
【図9】従来の球面加工の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
3…主軸
6…タレット刃物台
7…刃物台移動機構
9…送り台
16…タレット
17…工具旋回ユニット
28…ドライブ軸(旋回駆動機構)
29…駆動伝達軸(旋回駆動機構)
30…伝達機構(旋回駆動機構)
31…旋回駆動機構
61…回転伝達軸
62…駆動側歯車
63…従動側歯車
63a…従動側歯車の支持軸
64…工具ホルダ
65…工具
66…ハウジング
67…ボルト
68…ボルト孔
C…円弧状軌跡
O1…タレット旋回中心線
O2…工具旋回中心線
S…工具ステーション
W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持可能な主軸と、周囲に複数の工具を装着自在であって、1つの工具を主軸に支持されたワーク側に旋回して割出せるタレットとを備えたタレット旋盤であって、
前記工具の少なくともに1つは、タレットの周囲に取り付けた工具旋回ユニットに装着されたものであり、この工具旋回ユニットは、前記ワークを球面状に加工するために、工具がほぼワークの球面中心に向かう姿勢を維持した状態で工具の刃先を円弧軌跡上で旋回させるものであり、
前記タレットは、前記工具旋回ユニットを駆動する旋回駆動機構を内蔵したものであるタレット旋盤。
【請求項2】
前記工具旋回ユニットは、タレットの旋回中心線と直交する工具旋回中心線回りに工具を旋回するものである請求項1記載のタレット旋盤。
【請求項3】
前記旋回駆動機構は、タレットの旋回中心線と直交する軸心を有するドライブ軸を備え、前記工具旋回ユニットは、前記ドライブ軸と結合する回転伝達軸と、この回転伝達軸に設けた駆動側歯車と、この駆動側歯車と噛合する従動側歯車と、この従動側歯車に取り付けられ、従動側歯車の中心位置から外れた位置に、刃先が従動側歯車の中心方向を向くように工具を装着可能な工具ホルダとより成る請求項1または請求項2記載のタレット旋盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−210062(P2007−210062A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32018(P2006−32018)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】