説明

タンクのマンホール構造体

【課題】構成が簡単で、しかも、低コストに気密性に優れたタンクのマンホール構造体を提供することを目的としている。
【解決手段】タンクのマンホール構造体であって、マンホール胴部1の内周に設けられたリブ板5と、そのリブ板5のフランジ蓋板3側に載置されるシール板6と、そのシール板6及びフランジ蓋板3間に設けられる充填材7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG等の低温液体を貯留する大型のタンクのマンホール構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LNG等の低温液体を貯留する大型のタンクには、保守点検用のために、タンクの屋根や側壁にマンホールが設けられている。
このマンホール構造体は、マンホール胴部と、マンホール蓋板とを有している。そして、マンホール胴部は、一端側がタンク外に位置し、他端側がタンク内に位置するようにタンクの屋根や側壁を貫通して設けられている。また、マンホール胴部の一端側にはフランジが設けられており、マンホール蓋板は、パッキンを介してフランジに設けられている。
【0003】
このようなマンホール構造体では、パッキンの変形やフランジの接合面の傷等によって気密性が損なわれるおそれがある。このため、マンホールの内部、すなわち、マンホール胴部内にそのマンホール胴部の貫通状態を完全に閉止するシール部材を配置して気密性を向上させることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−95382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案に係るマンホール胴部内にシール部材を配置するマンホール構造体は、シール部材により気密性を向上させることができるという優れた効果を有しているが、構造が複雑でコスト高になる欠点があった。
より詳細には、上記提案に係るマンホール構造体では、マンホール胴部内にシール部材を受けるリブ板を設け、そのリブ板上に、厚さが30mm程度の鋼板からなるシール部材を溶接により取り付けて所定の圧力に耐える構造を呈している。このため、構造が複雑でコスト高になる欠点があった。
このようなことから、シール部材の構成が簡単で、かつ、低コストに気密性を向上させることができるマンホール構造体が望まれていた。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、構成が簡単で、しかも、低コストに気密性に優れたタンクのマンホール構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタンクのマンホール構造体は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、タンクの筐体を貫通して設けられるマンホール胴部と、該マンホール胴部の外側の端部に設けられるフランジと、該フランジにパッキンを介在して上記マンホール胴部を閉止するフランジ蓋板とを備えるタンクのマンホール構造体であって、上記マンホール胴部の内周に設けられたリブ板と、上記リブ板の上記フランジ蓋板側に載置されるシール板と、上記シール板及び上記フランジ蓋板間に設けられる充填材と、を備えるという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1発明において、上記充填材が、ポリウレタンフォームであるという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記タンクが、LNGやLPG等の可燃性流体を貯留するものであるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るタンクのマンホール構造体は、シール板及びフランジ蓋板間に充填材が設けられているので、シール板に圧力がかかる場合であってもシール板を充填材を介してフランジ蓋板で受け止めることができ、シール部の構成を簡単にでき、したがって、低コストのマンホール構造体とすることができる。
また、充填材をポリウレタンフォームとしたときは、容易に実施することができる。
そして、マンホール胴部の内周面壁に断熱材を設けたときは、マンホール胴部の断熱効果を高めることができる。
さらに、タンクが液化天然ガス等の流体を貯留するものであるときは、液化天然ガス等の流体を貯留する大型のタンクのマンホールを構造が簡単で、かつ、低コストに実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るタンクのマンホール構造体を適用したタンクの一部分の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るタンクのマンホール構造体の上部部分を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るタンクのマンホール構造体の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
図1は、本発明に係るマンホール構造体Mを適用したタンクTの一部分の正面図である。また、図2は、そのマンホール構造体Mの上部部分の拡大断面図である。
ここで、タンクTは、可燃性流体の一例である液化天然ガス(LNG)流体を貯留する大型のタンクとして示している。また、マンホール構造体Mは、そのタンクTの屋根Taに設けられている。
また、タンクTは、周知の液化天然ガス用タンクと同様に、外槽と内槽との間に断熱材を挿入した二重殻タンクで構成されている。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態のタンクのマンホール構造体Mは、マンホール胴部1、フランジ2、フランジ蓋板3、パッキン4、リブ板5、シール板6、及びポリウレタンフォーム7(充填材)を備えている。
【0016】
マンホール胴部1は、所定長さの鋼製のパイプ材から構成されている。そして、このマンホール胴部1の一端側はタンクTの屋根Ta(筐体)の外側(図示の例では上端側)に位置し、その下端側は、図示しないが、タンクT内に位置している。
【0017】
フランジ2は、マンホール胴部1の先端外周に溶接により取り付けられていて、マンホール胴部1と一体化されている。
なお、図示しないが、このフランジ2の周囲には、等間隔を保って、ボルトの挿入される複数の孔が設けられている。
【0018】
フランジ蓋板3は、フランジ2と同径の円板状の板材から構成されている。このフランジ蓋板3には、フランジ2と同様に、図示しないが、フランジ蓋板3の周囲には、等間隔を保って、ボルトの挿入される複数の孔が設けられている。
【0019】
パッキン4は、フランジ2及びフランジ蓋板3間に設けられており、フランジ2及びフランジ蓋板3との間の隙間からLNGが気化することによって発生する気化ガス等が漏出することを防止するためのものである。
【0020】
なお、フランジ2及びフランジ蓋板3は、これらフランジ2及びフランジ蓋板3間にパッキン4を介在させてボルト・ナットを用いて締結される。そして、図2において、フランジ2、フランジ蓋板3及びパッキン4を貫通して描かれている一点鎖線8は、ボルト・ナットの位置を示している。
【0021】
このように、フランジ2及びフランジ蓋板3間にパッキン4を介在させてボルト・ナットを用いて締結されたマンホール構造体Mは、後述するシール板6を装着する前に所定の耐圧試験に供される。
つまり、この状態で所定の気密状態が保たれているか否かが判定される。もし所定の気密状態が保たれないときは、パッキンの交換やボルト・ナットの締め直し等の手直しが行われる。いずれにしても、フランジ2及びフランジ蓋板3間にパッキン4を介在させてボルト・ナットを用いて締結された状態で所定の気密状態が保たれていることが確認される。
【0022】
リブ板5は、中心部分が開口したドウナツ状の鋼製の板材からなり、その外形はマンホール胴部1の内径より少し小さく形成されている。
そして、このリブ板5は、フランジ蓋板3の位置から所定距離離れたマンホール胴部1に溶接により固定されている。この固定は、リブ板5の外周とマンホール胴部1の内壁との間に間隙が無いように行われる。
【0023】
シール板6は、鋼製の板材から構成されており、リブ板5上に載置されている。そして、このシール板6の外形は、マンホール胴部1の内径よりも十分に小さく、かつ、リブ板5の中心部分に設けられている開口の径よりも十分に大きくなるように決められている。
なお、従来のシール板の厚さは、30mm前後であるのに対し、ここで用いられるシール板6の厚さは3mm程度である。
また、従来のシール板はリブ板に溶接により固定されていたが、このシール板6は、リブ板5上に載置されるだけでよく、載置位置を保持するためにアルミ粘着テープを用いるようにしてもよい。
【0024】
ポリウレタンフォーム7は、本発明の充填材に相当するものであり、フランジ蓋板3とシール板6との間に間隙を生じることなく充填されている。このポリウレタンフォーム7は、タンクTの内圧に応じた圧縮強度を有しており、内圧によって作用する圧縮力に対して充分に耐えられる圧縮強度に設定されている。
このポリウレタンフォーム7は、シール板6がタンクTの内圧によって圧力を受けた場合に、このシール板6が受ける押圧力をフランジ蓋板3に伝達する。
また、ポリウレタンフォーム7は、押圧されることによって変形することができ、シール板6がタンクTの内圧によって押圧された場合に変形することで、シール板6に作用する押圧力の一部を吸収することができる。
【0025】
つまり、ポリウレタンフォーム7は、シール板6が受ける押圧力を確実にフランジ蓋板3に伝達するために、フランジ蓋板3とシール板6との間に隙間無く充填されていることが好ましい。
また、ポリウレタンフォーム7は、シール板6に作用する押圧力の一部を吸収可能とするために、適度に弾性変形することが好ましい。
【0026】
このような構成を有する本実施形態のマンホール構造体Mにおいては、タンクTにLNGが貯留された場合には、タンクTの内側から外側に向けて圧力を受けることとなる。このため、シール板6にも圧力がかかることとなるが、本実施形態のマンホール構造体Mによれば、この際、シール板6はポリウレタンフォーム7によって受け止められることとなる。
【0027】
以上のような本実施形態のマンホール構造体Mによれば、タンクTにLNGが貯留されたることによってシール板6に圧力がかかった場合であっても、ポリウレタンフォーム7を介してフランジ蓋板3によってシール板6が受け止められる。このため、シール板6の変位を抑制することができ、シール板6を厚くすることなく機密性を保持することが可能となる。
したがって、本実施形態のマンホール構造体Mによれば、シール部の構成を簡単にでき、低コストのマンホール構造体となる。
【0028】
また、本実施形態のマンホール構造体Mは、タンクTがLNGを貯留するLNGタンクに適用されている。
このため、LNGタンクのマンホール構造体が簡単な構造体で低コストなものとすることができる。
【0029】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態においては、本発明の充填材としてポリウレタンフォームを用いる構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の充填材として他の合成樹脂からなるフォームを用いることもできる。
さらには、本発明においては、充填材として、フォーム以外の材料を用いることも可能である。
【0031】
また、上記実施形態においては、マンホール構造体MがタンクTの屋根Taに取り付けられている構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、マンホール構造体がタンクTの側壁(筐体)に取り付けられる構成を採用することもできる。
【0032】
また、上記実施形態においては、タンクが液化天然ガス(LNG)の流体を貯留する大型のタンクである構成を採用した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、タンクの貯留する液体が他のLPG等の可燃性流体であっても良い。
【符号の説明】
【0033】
T…タンク、Ta…屋根(筐体)、M…マンホール構造体、1…マンホール胴部、2…フランジ、3…フランジ蓋板、4…パッキン、5…リブ板、6…シール板、7…ポリウレタンフォーム(充填材)、8……ボルト・ナットの位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの筐体を貫通して設けられるマンホール胴部と、該マンホール胴部の外側の端部に設けられるフランジと、該フランジにパッキンを介在して前記マンホール胴部を閉止するフランジ蓋板とを備えるタンクのマンホール構造体であって、
前記マンホール胴部の内周に設けられたリブ板と、
前記リブ板の前記フランジ蓋板側に載置されるシール板と、
前記シール板及び前記フランジ蓋板間に設けられる充填材と、
を備えることを特徴とするタンクのマンホール構造体。
【請求項2】
前記充填材は、ポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項1記載のタンクのマンホール構造体。
【請求項3】
前記タンクは、可燃性流体を貯留するものであることを特徴とする請求項1または2記載のタンクのマンホール構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−84316(P2011−84316A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239126(P2009−239126)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】