説明

タンクの屋根改修方法及びこれに用いる新設屋根

【課題】給水を中断することなく既存屋根を新設屋根へと改修する。
【解決手段】水を貯蔵するタンク1を稼動している状態で、その既存屋根を解体し、続いて、アルミドーム10を施工した後、既存屋根の解体前から既存屋根の代用をなす、貯蔵水Wを密閉するとともに、貯蔵水Wに接触しても水質を悪化させず、かつ、貯蔵水Wへの落下物を遮断する遮蔽シート21及びこの遮蔽シート21の上方にて仮設されている保護ネット22からなる仮設屋根構造体20を、架台Lからアルミドーム10の中央部の開口部11を介して貯蔵空間Uへ向けて設けられている回転伸縮装置31及びロープ32によりタンク1外に撤去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水、例えば飲料用または工業用などの水を貯蔵するタンク、いわゆる貯水タンクの既存屋根を新設屋根に改修するタンクの屋根改修方法及びこれに用いる新設屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
貯水タンクは、多くがプレストレストコンクリート造(以下、「PC造」という。)により構築され、タンク本体と、このタンク本体の頂部に架設された屋根とで構成されている。タンク本体は、円形の底版と、この底版の周縁に立設された所要の厚さを有する平面視円環状に形成された円筒状の側壁とで、内部に内容物としての水(水道水、井戸水などの飲料用水、工業用水)を貯蔵する貯蔵空間を有するように構成されている。タンク本体の側壁は、PC造で構成され、コンクリート中に縦方向および横方向にPC鋼材が配設されている。
屋根は、タンク本体と一体化した鉄筋コンクリート造(以下、「RC造」という。)の屋根板体(スラブ)をドーム状に形成したドーム状屋根で、屋根の屋根板体は、コンクリート断面厚さを薄くし(通常10cm程度が多い。)、鉄筋を配筋している。このため、鉄筋のかぶり厚さを適正に確保できず、水道水からの塩素雰囲気に曝され、コンクリートの経時的劣化が進行して耐久性に劣ることがあり、RC造の屋根の耐用年数がタンク本体部の耐用年数よりも短い場合、タンク本体自体は未だ使用できるのに、タンク全体を取り壊さなければならず、不経済性であるという問題が生じている。
【0003】
従来、このような不経済性を解決するため、屋根の屋根板体を修理して再利用するか、又は解体して新設屋根に取り替えてタンク本体を再利用する改修方法が複数提案されてきたが、これらの提案では、いずれもタンクの利用(稼働)を一時中止、中断して改修しなければならない。しかし、タンクの利用(稼働)を中止することなく、給水を継続しながら、既存の屋根を新設屋根へと改修することが社会的に要請されている。
【0004】
本出願人は、給水を中断することなく既存屋根部を改修(解体)することができるタンクの屋根部改修方法を、下記特許文献1にて提案している。
【特許文献1】特許第4138139号公報
【0005】
特許文献1に開示した発明では、貯水タンク内の貯蔵水の貯蔵空間を、水に接触しても水質を悪化させる物質を放出しない仮設密閉構造体で密閉し、この仮設密閉構造体よりも上側の貯蔵空間に、仮設密閉構造体を損傷させる落下物を遮断する仮設張力構造体を架設することにより、タンクを使用しながらも、貯蔵水の水質を劣化させることなく、既存屋根を修理するか、または解体してタンク本体部を再利用することができることとなった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、給水を中断することなく、既存屋根を解体し、さらに新設屋根へ改修するという一連の改修作業を完成させるためには、上記のような貯蔵水の空間を密閉する仮設密閉構造体の密閉機能、及び、仮設密閉構造体を損傷させる落下物を遮断する仮設張力構造体の屋根葺き材機能を維持しながら、新設屋根を施工する必要があるという課題がある。これに伴い、新設屋根を施工した後に、仮設密閉構造体及び仮設張力構造体をタンク外に撤去しなければならないという課題がある。
【0007】
この発明は、上記実情に応えるために提案され、タンクに新設屋根を施工した後に、タンク内に架設されている仮設密閉構造体及び仮設張力構造体等の仮設屋根手段をタンク外に撤去することができ、既存屋根を新設屋根へ改修するという一連の改修作業を完成させることができるタンクの屋根改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、タンクの既存屋根を改修するタンクの屋根改修方法であって、開口部が設けられた新設屋根を施工した後、前記タンク内に架設されていた仮設屋根手段を、前記タンク外から前記開口部を介して前記タンク内へ向けて設けられている仮設屋根撤去手段により前記タンク外に撤去することを特徴とする。
【0009】
特に、上記タンクの屋根改修方法において、新設屋根は、中央に開口部を有し、タンク上で、骨組部を開口部の周縁から屋根外縁まで放射状に延伸させて設けるとともに、この延伸させた骨組部のそれぞれの間を覆うように金属板を架設して施工してなることが好ましい。
【0010】
また、仮設屋根手段は、タンク内の貯留空間を密閉する第一仮設屋根手段と、この第一仮設屋根手段が落下物の落下で損傷するのを防止する第二仮設屋根手段とからなり、仮設屋根撤去手段は、新設屋根とタンク内の仮設屋根手段との間の空間で所定の動きをする回転伸縮手段と、タンク外に接続されている吊り部材とからなり、回転伸縮手段によって、タンクと第一仮設屋根手段及び第二仮設屋根手段との架設を取り外した後、回転伸縮手段を第二仮設屋根手段とともにタンク外に撤去するとともに、吊り部材によって第一仮設屋根手段をタンク外に撤去する、ことがさらに好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係るタンクの屋根改修方法に用いる新設屋根は、中央に設けられた前記開口部と、この開口部の周縁から屋根外縁まで放射状に延伸させた骨組部と、延伸させた前記骨組部のそれぞれの間を覆うようにして架設した金属板と、前記開口部にユニット化されて取り付けられる蓋部と、から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るタンクの屋根改修方法では、開口部が設けられた新設屋根を施工した後、タンク内に架設されていた仮設屋根手段を、タンク外から開口部を介してタンク内へ向けて設けられている仮設屋根撤去手段によりタンク外に撤去するので、新設屋根を施工した後に仮設屋根撤去手段によって仮設屋根手段をタンク外に撤去することができ、タンク内の貯蔵水を落下物等によって汚染することなく、又はその汚染を最小限に抑えつつ、仮設屋根手段をタンク外に撤去することができて、タンクの利用(稼働)を中止することなく、給水を継続しながら、既存屋根を新設屋根へ改修することができる。
【0013】
特に、新設屋根は、中央に開口部を有し、タンク上で、骨組部を開口部の周縁から屋根外縁まで放射状に延伸させて設けるとともに、この延伸させた骨組部のそれぞれの間を覆うように金属板を架設して施工してタンクの屋根改修方法を行うので、既存屋根の解体後、タンク内の貯蔵水を落下物等によって汚染することなく、又は、その汚染を最小限に抑えつつ、仮設屋根手段が架設された状態で、新設屋根を施工することができる。また、新設屋根は、タンク上で施工するために、新設屋根の施工のためのスペースは不要となって、様々なタンクの既存屋根の新設屋根への改修に柔軟に対応することが可能となる。
【0014】
さらに、仮設屋根手段は、タンク内の貯留空間を密閉する第一仮設屋根手段と、この第一仮設屋根手段が落下物の落下で損傷するのを防止する第二仮設屋根手段とからなり、仮設屋根撤去手段は、新設屋根とタンク内の仮設屋根手段との間の空間で所定の動きをする回転伸縮手段と、タンク外に接続されている吊り部材とからなり、回転伸縮手段によって、タンクと第一仮設屋根手段及び第二仮設屋根手段との架設を取り外した後、回転伸縮手段を第二仮設屋根手段とともにタンク外に撤去するとともに、吊り部材によって第一仮設屋根手段をタンク外に撤去するので、タンク内の貯蔵水を落下物等によって汚染させない又はその汚染を最小限に抑えつつ、人的、経済的及び工期的な観点から合理的なタンクの屋根改修方法を提供することができる。
【0015】
また、本発明に係るタンクの屋根改修方法に用いる新設屋根は、中央に設けられた開口部と、この開口部の周縁から屋根外縁まで放射状に延伸させた骨組部と、この延伸させた骨組部のそれぞれの間を覆うようにして架設した金属板と、開口部にユニット化されて取り付けられる蓋部とから構成されるので、タンク上での施工を可能にし、新設屋根の施工のためのスペースは不要となって、様々なタンクの既存屋根の新設屋根への改修に柔軟に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るタンクの屋根改修方法及びこれに用いる新設屋根の実施形態について、図面とともに詳細に説明する。
図1は、本発明に係るタンクの屋根改修方法の概略を説明するフロー図、図2は、既存屋根を解体するまでの概略工程を説明するフロー図、図3は、タンクにアルミドームを施工した状態において、説明のためにその一部を欠損させて示した概略平面図、図4は、第一仮設屋根手段としての遮断シート及び第二仮設屋根手段としての保護ネットを説明する説明図である。
【0017】
本発明は、水(水道水、井戸水などの飲料用水、工業用水)を貯蔵するタンクが稼動している状態で、その既存屋根を解体し、新設屋根としてのアルミドームを施工した後、既存屋根の解体前から既存屋根の代用をなす、貯蔵水を密閉するとともに、貯蔵水に接触しても水質を悪化させず、かつ、貯蔵水へ落下物が落下することを遮断する仮設屋根手段としての仮設屋根構造体(仮設密閉構造体及び仮設張力構造体)を、タンク外からアルミドームの中央部の開口部を介してタンク内(貯蔵空間)へ向けて設けられている仮設屋根撤去手段によりタンク外に撤去することを目的とするタンクの屋根改修方法である。
【0018】
具体的には、図1に示すような工程、即ち、既存屋根が解体、撤去されたタンク本体の側壁上端部にアルミドームを施工するためのアルミドーム支承部を構築する施工前工程Aと、タンク上でアルミドームを施工する施工工程Bと、仮設屋根撤去手段によって、アルミドームの開口部を通して仮設屋根構造体をタンク外へ撤去する施工後工程Cと、仮設屋根構造体をタンク外へ撤去した後直ちに、アルミドームの開口部をこの開口部とユニット化されている蓋部で閉口するとともに、屋根改修に必要な備品群を撤去する改修完了工程Dとからなる。
【0019】
特に、施工工程Bにおけるタンク上でアルミドームを施工する方法を詳述すると、既存屋根の解体前からタンクの外周に設置されている架台によって、アルミドームの中央の開口部となるフランジ部を有するリング体を吊り下げ固定するとともに、タンク本体の側壁上端部に構築されたアルミドーム支承部へ向けて、リング体のフランジ部(開口部の周縁)から骨組部としての金属棒を放射状に延伸させて設け、続いて、この延伸させた金属棒のそれぞれの間を覆うように金属板としてのアルミ板を架設して施工する。
また、施工前工程Aで構築するアルミドーム支承部は、タンク本体の側壁上端部に、放射状に延伸した金属棒と連結する複数の連結部と、これらの連結部の周囲を固めているRC造部とから、レベルを揃えて構築されるもので、アルミドームの金属棒との締結、金属棒のそれぞれの間を覆うように架設したアルミ板により、アルミドームとタンク本体の側壁上端部との隙間から雨水、埃等が貯蔵空間に一切入らないようにしている。
【0020】
ここで、図3に示すように、新設屋根としてのアルミドーム10は、上記の通りに施工されてなり、中央に設けられた開口部11と、この開口部11の周縁11a(リング体のフランジ部)から屋根外縁となるタンク本体2の側壁上端部3のアルミドーム支承部3aへ放射状に延伸させた骨組部としての金属棒12と、延伸させた金属棒12のそれぞれの間を覆うようにして架設した金属板としてのアルミ板13と、開口部11にユニット化されて取り付けられる蓋部14と、から構成されている。
また、延伸させた金属棒12のそれぞれの間を覆うようにして架設されるアルミ板13は、一部に凹部13aを有している。この凹部13aは、アルミドーム10の施工前から、仮設屋根構造体(仮設密閉構造体及び仮設張力構造体)20の周縁部をタンク本体2の側壁上端部3の内壁側4にて固定している締結具5を、アルミドーム10の施工後にタンク本体2の側壁上端部3の内壁側4から取り外して撤去するための空間を確保するために設けられ、締結具5を除去した後に、この凹部13aを覆う図示されないユニット化された第二蓋部が取り付けられる。なお、締結具5は、タンク本体2の側壁上端部3の内壁側4に埋め込むアンカーボルトと、アンカーボルトに螺合するボルト、アンカーボルトが挿通される押さえプレートと、仮設屋根構造体の張力を維持するテンション機構を内蔵した締結具本体とからなり、耐腐食性を考慮してステンレス製又は樹脂合成製とされている。
【0021】
仮設屋根手段としての仮設屋根構造体20は、図4に示すように、貯蔵空間Uにおいて、コンクリート破片などの固体物、粉塵、濁水、雨水などが貯蔵水Wに混入するのを防ぎつつ貯蔵水Wを密閉するとともに、貯蔵水Wに接触しても水質を悪化させない第一仮設屋根手段としての仮設密閉構造体(例えば、遮蔽シート21)と、この遮断シート21の上側に架設され、遮断シート21が落下物により損傷するのを防止することにより、貯蔵水Wが落下物により汚染されることを防ぐ第二仮設屋根手段としての仮設張力構造体(例えば、保護ネット22)とからなる。遮断シート21、保護ネット22は、上記した機能を確保するため、可撓性、引張り強度の高い材料を使用して構成し、貯蔵空間Uで平面的に展開される張力構造とすることが望ましい。
【0022】
仮設密閉構造体として例示する遮断シート21は、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなど)などの熱可塑性材料などで構成された薄いシート材として形成され、例えば、エチレンと酢酸ビニルを共重合した熱可塑性プラスチックは、塩素、可塑性を含まない無毒で柔軟な樹脂であり、食品衛生法第10条第1項に基づいて定められた食品添加物などの規格基準(厚生省告示第370号)に適合するもので、飲食物、飲料水の容器にも使用し得るものであるために、さらに好ましい。
仮設張力構造体として例示する保護ネット22は、張力構造を構成する張力構造部材22aと、落下物遮断部材22bとで構成される。張力構造部材22aは、遮断シート21の鉛直荷重を少なくとも支持する支持機能を有し、軽量、可撓性、引張り強度、作業性に優れた材料、例えば、高張力化学繊維(アラミド繊維)を帯状シート部材または棒状部材に形成した構造部材である。また、例えば、金属材、例えば、ピアノ線などがその構造部材として例示することができる。落下物遮断部材22bは、既存屋根を解体する際に遮断シート21を損傷させる大きさのコンクリート破片などの落下物を遮断する篩の機能を有し、例えば、7cm角、5cm角の落下物を篩う網構造で構成されることが好ましい。
そして、遮断シート21及び保護ネット22は、上述した締結具5により、その周縁部がタンク本体2の側壁上端部3の内壁側4に固定される。
【0023】
仮設屋根撤去手段30は、図5〜図7に示すような、自身を回転させたり、伸縮させたりしながら、アルミドーム10と遮断シート21や保護ネット22との間の貯蔵空間Uを自由に動きまわることができる回転伸縮手段としての回転伸縮装置31と、既存屋根の解体前からタンク1の外周に設置されている架台Lに一方が接続されている吊り部材としての例えば、ロープ32とからなる。
【0024】
回転伸縮装置31は、金属製で、I字型の形態で一端部が架台Lに取り付けられ、先端部がアルミドーム10の開口部11を通して貯蔵空間Uに導入された後、回転の機能及び伸縮の機能を発揮できる状態にするため、その先端部を展開させて貯蔵空間UにおいてL字型の形態になるものである。また、L字型に展開した後には、回転の機能及び伸縮の機能のほか、作業員が通ることができる足場31aの機能を有している。また、ロープ32も一方を架台Lに接続させており、他方はアルミドーム10の開口部11を通して遮断シート21と接続することができる構造になっている。ロープ32は、遮断シート21を持ち上げても切れることがないような、軽量、可撓性、引張り強度、作業性に優れた材料のものを採用している。
なお、上下の位置関係は、図7から明らかなように、上から架台L、アルミドーム10、保護ネット22、遮蔽シート21、貯蔵水Wの順である。また、仮設屋根撤去手段30としての回転伸縮装置31及びロープ32は、架台Lからアルミドーム10の中央の開口部11を貫通し、貯蔵空間Uへ向けて設けられている。
【実施例】
【0025】
以下、本発明に係るタンクの屋根改修方法の代表的な実施形態の一つを実施例として、図面に基づいて説明する。
図5は、既存屋根の解体方法において既存屋根に開口部を形成した後、仮設屋根構造体により貯蔵空間を密閉する工程を説明する説明図、図6は、既存屋根の解体方法において既存屋根を解体した状態を説明する説明図、図7は、タンクの屋根改修方法の実施例として例示するアルミドームの施工工程までを説明する説明図、図8は、タンクの屋根改修方法の実施例として例示する遮断シートをタンク外へ撤去する工程を説明する説明図、図9は、タンクの屋根改修方法の実施例として例示するアルミドームの開口部への蓋部の取り付けから架台を除去するまでの工程を説明し、屋根改修方法が完了した状態のタンクを示す説明図である。
【0026】
まず、本発明に係るタンクの屋根改修方法の理解を進めるため、当該タンクの屋根改修方法を使用するに至るまでのタンクの既存屋根の解体方法について図2を参照しつつ、図5及び図6に基づいて簡単に説明する。
はじめに、図2及び図5に示すように、タンク1の外周に架台Lを設置した後、既存屋根100の換気孔蓋を撤去して中央開口部101を形成するとともに、既存屋根100の周縁の所定の箇所に、仮設屋根構造体20(遮断シート21及び保護ネット22)の周縁部を固定する図示されない締結具をタンク1外から確認できるようにするための開口部102を形成する。
次に、この既存屋根100の開口部101から貯蔵空間Uに、作業員がボートに乗り込んで入り、図示されない上記締結具を既存屋根100の周縁開口部102の下方であって、タンク本体2の側壁上端部3の内壁側4に設置するとともに、ロープ32の一方をタンク1外に通して架台Lに接続する。
さらに、既存屋根の開口部から遮断シート21を搬入し、この遮断シート21にロープ32の他方を接続して展開し、遮断シート21の周縁部を図示されない上記締結具によりタンク本体2の側壁上端部3の内壁側4に固定し、貯蔵空間Uを密閉する。また、回転伸縮装置31を、一方を架台Lに固定した後、その先端部を既存屋根の開口部を通して貯蔵空間Uに向けて設置し、L字型の形態に展開する。この後、既存屋根の開口部から保護ネット22を挿入し、L字型の形態の回転伸縮装置31を使って展開し、その周縁部を図示されない上記締結具によりタンク本体2の側壁上端部3の内壁側4に固定する。
最後に、図6に示すように既存屋根を解体する。その方法は、既存屋根100の中央からドーナツ状にウォールソー工法にてPC造の既存屋根を切断し、撤去して解体するものであることが望ましい。
【0027】
そして、以下が、本発明に係るタンクの屋根改修方法の代表的な実施形態としての実施例であり、図3、図4、図7〜図9に基づいて説明する。
【0028】
まず、既存屋根100が解体され、撤去されたタンク本体2の側壁上端部3にアルミドーム10を施工するためのアルミドーム支承部3aを構築する。続いて、アルミドーム10の中央の開口部11となるフランジ部を有するリング体を、架台Lに接続されている回転伸縮装置31を囲むようにして架台Lから吊り下げて固定するとともに、リング体のフランジ部(開口部11の周縁11a)からアルミドーム10の屋根外縁となるアルミドーム支承部3aへ向けて、金属棒12を放射状に延伸させ、アルミドーム支承部3aの連結部と締結する。さらに、この延伸させた金属棒12のそれぞれの間を覆うようにアルミ板13を架設し、アルミドーム10を施工する(例えば、図3参照)。アルミドーム支承部3aは、タンク本体2の側壁上端部3においてレベルを揃え、放射状に延伸した金属棒12と連結する連結部と、この連結部の周囲を固めているRC造部とから環状に構築し、アルミドーム10の金属棒12との締結、金属棒12のそれぞれの間を覆うように架設したアルミ板13により、アルミドーム10とタンク本体2の側壁上端部3との隙間から雨水、埃等が貯蔵空間Uに一切入らないようにする(例えば、図4参照)。なお、架設されたアルミ板13には、一部に凹部13aを有しているので、タンク1外からアルミ板13の凹部13aを覗いた場合、貯蔵空間Uのタンク本体2の側壁上端部3の内壁側4に固定されている締結具5を確認することができる(例えば、図4及び図7参照)。
【0029】
次に、図7に示すように、貯蔵空間UでL字型に展開されている回転伸縮装置31の足場を使い、作業員がタンク本体2の側壁上端部3の内壁側4にて図示されない締結具によって架設されている遮断シート21及び保護ネット22を取り外す。続いて、作業員が保護ネット22の一部を回転伸縮装置31に接続しつつ、回転伸縮装置31の足場を使ってアルミドーム10の開口部11からタンク1外へ脱出したことを確認した後、回転伸縮装置31を縮めて折り畳み、I字型の形態になったところで、保護ネット22とともにアルミドーム10の開口部11を通してタンク1外に撤去する。さらに、図8に示すように、一方が架台Lに、他方が遮断シート21に接続されているロープ32を使って、遮断シート21をアルミドーム10の開口部11を通してタンク1外に撤去する。
【0030】
最後に、回転伸縮装置31、ロープ32、遮断シート21及び保護ネット22を、アルミドーム10の開口部11を通してタンク1外に撤去したことを確認した後、直ちに開口部11にユニット化された蓋部14を取り付ける。また、アルミドーム10のアルミ板13の図示されない一部の凹部から、図示されない締結具などの必要な備品群を回収すると共に、この凹部をユニット化された第二蓋部で覆って、貯蔵空間Uを密閉し、アルミドーム10とタンク本体2の側壁上端部3との隙間から雨水、埃等が貯蔵空間Uに一切入らないようにする。そして、タンク1外の架台Lを撤去すれば、図9に示すように、タンクの屋根改修方法が完了する。
【0031】
以上のように、本発明に係るタンクの屋根改修方法を使用することにより、新設屋根としてのアルミドーム10を施工した後、貯蔵空間Uに架設されていた仮設屋根手段としての遮断シート21及び保護ネット22を、アルミドーム10の開口部11を介して、仮設屋根撤去手段としての回転伸縮装置31及びロープ32によりタンク1外に撤去するので、タンクの利用(稼働)を中止することなく、給水を継続しながら、タンクの既存屋根を新設屋根(アルミドーム10)に改修することが可能となる。特に、アルミドーム10を施工した後に、貯蔵空間Uの遮断シート21及び保護ネット22を撤去するので、貯蔵空間Uの貯蔵水を落下物等によって汚染することなく、又は、その汚染を最小限に抑えて既存屋根を新設屋根へ改修することができる。
【0032】
さらに、アルミドーム10は、タンク1上で施工するため、アルミドーム10の施工のためのスペースは不要となって、様々な設置環境にあるタンク1の新設屋根への改修に柔軟に対応することが可能となる。また、回転伸縮装置31によって、タンク本体2の側壁上端部3の内壁側4に架設されている遮断シート21及び保護ネット22を取り外した後、回転伸縮装置31を保護ネット22とともにタンク1外に撤去し、さらに、ロープ32によって遮断シート21をタンク1外に撤去するので、本発明に係るタンクの屋根改修方法は、人的、経済的及び工期的な観点から極めて合理的な屋根改修方法を提供するものとなる。
【0033】
以上、本発明の代表的な実施形態の一つを実施例として詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0034】
例えば、新設屋根としてのアルミドームは、タンク上で施工することができ、かつ、中央に設けた開口部を介して、仮設屋根手段を撤去することができるものであれば、上記実施例の開示した形態に限定されない。例えば、図10に示すような、アルミ板としての三角形状のアルミパネル13Aにより、その骨組部(図示省略)を覆うようにして架設して施工し、複数枚のアルミパネル13Aを外して中央の開口部11Aを形成するアルミドーム10A(アルミパネル13Aが蓋部14Aを兼ねることとなる)や、図11に示すような、アルミ板としての六角形のハニカム形状のアルミパネル13Bをその骨組部(図示省略)のそれぞれの間を覆うようにして架設して施工し、ハニカム形状のアルミパネル13Bを外して中央の開口部11Bを形成するアルミドーム10B(アルミパネル13Bが蓋部14Bを兼ねることとなる)等を例示することができる。また、新設屋根は、上記実施例において、その軽量性、耐久性能からアルミ製のアルミドームを例示して説明したが、他の金属製、木製、強化プラスチック、強化カーボン等様々な材質で構築することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のタンクの屋根改修方法の概略を説明するフロー図である。
【図2】既存屋根を解体するまでの概略工程を説明するフロー図である。
【図3】タンクにアルミドームを施工した状態において、説明のためにその一部を欠損させて示した概略平面図である。
【図4】第一仮設屋根手段としての遮断シート及び第二仮設屋根手段としての保護ネットを説明する説明図である。
【図5】既存屋根の解体方法において既存屋根に開口部を形成した後、仮設屋根構造体により貯蔵空間を密閉する工程を説明する説明図である。
【図6】既存屋根の解体方法において既存屋根を解体した状態を説明する説明図である。
【図7】タンクの屋根改修方法の実施例として例示するアルミドームの施工工程までを説明する説明図である。
【図8】タンクの屋根改修方法の実施例として例示する遮断シートをタンク外へ撤去する工程を説明する説明図である。
【図9】タンクの屋根改修方法の実施例として例示するアルミドームの開口部への蓋部の取り付けから架台を除去するまでの工程を説明し、屋根改修方法が完了した状態のタンクを示す説明図である。
【図10】三角形状のアルミパネルにより構成されるアルミドームの平面図である。
【図11】六角形のハニカム形状のアルミパネルにより構成されるアルミドームの平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 タンク
2 タンク本体
3 側壁上端部
4 内壁側
5 締結具
10 アルミドーム(新設屋根)
10A アルミドーム(新設屋根)
10B アルミドーム(新設屋根)
11 開口部(リング体)
11A 開口部
11B 開口部
11a 開口部の周縁(リング体のフランジ部)
12 金属棒(骨組部)
13 アルミ板(金属板)
13a アルミ板の一部の凹部
13A 三角形状のアルミパネル
13B ハニカム形状のアルミパネル
14 蓋部
14A 蓋部
14B 蓋部
20 仮設屋根構造体(仮設屋根手段)
21 遮蔽シート(第一仮設屋根手段、仮設屋根密閉構造体)
22 保護ネット(第二仮設屋根手段、仮設屋根張力構造体)
22a 張力構造部材
22b 落下物遮断部材
30 仮設屋根撤去手段
31 回転伸縮装置(回転伸縮手段)
31a 足場
32 ロープ(吊り部材)
100 既存屋根
101 既存屋根の中央開口部
102 既存屋根の周縁開口部
U 貯蔵空間
W 貯蔵水
L 架台
A 施工前工程
B 施工工程
C 施工後工程
D 改修完了工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの既存屋根を改修するタンクの屋根改修方法であって、
開口部が設けられた新設屋根を施工した後、前記タンク内に架設されていた仮設屋根手段を、前記タンク外から前記開口部を介して前記タンク内へ向けて設けられている仮設屋根撤去手段により前記タンク外に撤去する、
ことを特徴とするタンクの屋根改修方法。
【請求項2】
前記新設屋根は、中央に前記開口部を有し、前記タンク上で、骨組部を前記開口部の周縁から屋根外縁まで放射状に延伸させて設けるとともに、この延伸させた前記骨組部のそれぞれの間を覆うように金属板を架設して施工してなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のタンクの屋根改修方法。
【請求項3】
前記仮設屋根手段は、前記タンク内の貯蔵空間を密閉する第一仮設屋根手段と、この第一仮設屋根手段が落下物の落下で損傷するのを防止する第二仮設屋根手段とからなり、
前記仮設屋根撤去手段は、前記新設屋根と前記タンク内の前記仮設屋根手段との間の空間で所定の動きをする回転伸縮手段と、前記タンク外に接続されている吊り部材とからなり、
前記回転伸縮手段によって、前記タンクと前記第一仮設屋根手段及び前記第二仮設屋根手段との架設を取り外した後、前記回転伸縮手段を前記第二仮設屋根手段とともにタンク外に撤去するとともに、前記吊り部材によって前記第一仮設屋根手段をタンク外に撤去する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタンクの屋根改修方法。
【請求項4】
中央に設けられた前記開口部と、
この開口部の周縁から屋根外縁まで放射状に延伸させた骨組部と、
延伸させた前記骨組部のそれぞれの間を覆うようにして架設した金属板と、
前記開口部にユニット化されて取り付けられる蓋部と、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載のタンクの屋根改修方法に用いる新設屋根。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−144423(P2010−144423A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322534(P2008−322534)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】