説明

タンクの散水設備

【課題】 近隣火災などでタンクが高い熱を受ける際に、通常の散水装置が故障したり散水量が不足した時に、緊急用散水設備として、連結送水管や消防車などによる外部からの消防水を受けてタンク全体の冷却や消火に使用するか、或いはタンク支柱等の特定部位が高熱に曝され座屈することがないように、タンク支柱等の特定部位を重点的に散水冷却するために使用するタンクの散水設備を提供する。
【解決手段】 タンク1の頂部位置に連結送水管13などによる外部からの消防水を受ける水受け皿8を設置し、この水受け皿8に複数の細穴を設け、この複数の細穴からタンク1全体表面に散水するように形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮ガス、液化ガス、液体の危険物を貯蔵するタンクの散水設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の実開昭60−41393号「貯槽の屋根構造」には、従来例1の図5に示すように、頂部に散水装置1を有した貯槽屋根3の上面に堰板4を設けることにより、水の分散を良好にすると共に、水の流下速度を遅くして層厚を増大させることにより、均一且つ効果的な貯槽2の冷却を行い、貯槽2の安全性の向上をはかる考案技術が開示されている。
【0003】
特許文献2の特開平11−20894号「タンク」には、従来例2の図6に示すように、槽本体5の上端に固定された屋根6をドーム状に形成したタンク1において、槽本体5の上端部近傍外周に、屋根6の外周を囲むよう、底板18と該底板18の槽本体5径方向外方に設けられた壁17からなる断面形状が略L字形の樋19を取り付け、樋19の底板18に形成された排水口20に樋19から水を排水するための排水管21を接続する構成が開示されている。
【0004】
特許文献3の特開平11−257598号には、従来例3の図7に示すように、球形タンク2の下方に位置したタンク基礎3の内側に水槽4を設置し、この水槽4はタンク基礎3の少なくとも一部を利用することで、球形タンク2の設置スペースを立体的に利用する散水装置を設けた球形タンク用貯水槽が開示されている。
【0005】
特許文献4の特願2010−105418号「貯槽の屋根散水設備の構造」には、従来例4の図8に示すように、屋根散水設備4からの散水を側壁面3にも流下するように流路を変更させる散水構造6であって、この散水構造6は、ガイド板状のバッフル板7と取付け部材8とで一体化し、強力な永久磁石9を用いて屋根周縁部5へ固定する構成が開示されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60−41393号公報
【特許文献2】特開平11−20894号公報
【特許文献3】特開平11−257598号公報
【特許文献4】特願2010−105418号「貯槽の屋根散水設備の構造」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の実開昭60−41393号「貯槽の屋根構造」の従来例1の図5の構造は、貯槽屋根3の上面に設けた堰板4で散水装置1からの水による貯槽2の冷却を効果的に行うものであるが、タンクの特定部位の冷却を促進するものではない。
【0008】
特許文献2の特開平11−20894号「タンク」の従来例2の図6の構造は、屋根から雪の塊が落下したり屋根の外周肩部や歩廊の踏板に氷柱が発生することを防止するものであって、側壁の部分を重点的に散水冷却するものではない。
【0009】
特許文献3の特開平11−257598号の従来例3の図7は、タンク基礎3を利用した水槽4からポンプ14で球形タンク2に散水できるものであるが、支柱に対して重点的に散水して冷却するものではない。
【0010】
特許文献4の特願2010−105418号「貯槽の屋根散水設備の構造」の従来例4の図8は、貯槽の屋根天頂部近傍に設けた散水設備からの散水が飛散することなく側壁に沿って効率良く流下するようにしたものであるが、タンクの特定部分に重点的に散水して冷却するものではない。
【0011】
この発明は上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、近隣火災などでタンクが高い熱を受ける際に、通常の散水装置が故障したり散水量が不足した時に、緊急用散水設備として、消防車等から水を受けてタンク全体の冷却や消火に使用するか、或いはタンク支柱等の特定部位が高熱に曝されることがないように、タンク支柱等の特定部位を重点的に冷却するために使用するタンクの散水設備を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係るタンクの散水設備は、タンクの頂部位置に消防水を受ける水受け皿を設置し、この水受け皿に複数の細穴を設け、この複数の細穴からタンク全体表面に散水するように形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明に係るタンクの散水設備は、当該タンクは球形タンクであって、その頂部位置に消防水を受ける水受け皿を設置し、球形タンクを支える各支柱の上部位置から経線に沿った位置の上記水受け皿に開口を設け、この開口から各支柱の上端部に向けて分散する導水管を設け、この導水管の端部で各支柱の上端部に放散カップを設け、この放散カップの下部から支柱外周表面に沿って水を散水するように形成したことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明に係るタンクの散水設備は、請求項1又は2に記載の上記消防水は外部からの放水で補給される水であって、この放水を受けるように上記水受け皿は頂部作業床に囲まれた内部に設けたことを特徴とする。

【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係るタンクの散水設備は、タンクの頂部位置に消防水を受ける水受け皿を設置し、この水受け皿に複数の細穴を設け、この複数の細穴からタンク全体表面に散水するように形成したので、通常の散水装置が故障したり散水量が不足した時に、緊急用散水設備として、消防車等から水を受けて冷却や消火に使用することができるため、火災発生時や近隣火災などでタンクが高い熱を受ける際に二次災害の拡大を防止することが可能となる。
【0016】
請求項2の発明に係るタンクの散水設備は、当該タンクは球形タンクであって、その頂部位置に消防水を受ける水受け皿を設置し、球形タンクを支える各支柱の上部位置から経線に沿った位置の上記水受け皿に開口を設け、この開口から各支柱の上端部に向けて分散する導水管を設け、この導水管の端部で各支柱の上端部に放散カップを設け、この放散カップの下部から支柱外周表面に沿って水を散水するように形成したので、消防水によって各支柱が直接冷却されるため、近隣火災の高熱によって支柱が高温に曝されて熱劣化や破裂などして球形タンクが倒壊することがない。
【0017】
請求項3の発明に係るタンクの散水設備は、請求項1又は2に記載の上記消防水は外部からの放水で補給される水であって、この放水を受けるように上記水受け皿は頂部作業床に囲まれた内部に設けたので、近隣火災発生時に消防車などの外部からの消防放水をこぼれないように受けて、通常の散水装置が故障したり散水量が不足した時に、緊急用散水設備として、消防車等から水を受けて冷却や消火に使用することができる。さらに、支柱を重点的に冷却するように形成した場合には、近隣火災の高い熱により支柱が加熱され強度を失ってタンクが倒壊するなどの被害を防止することができる。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係るタンクの散水設備であって、球形タンクを事例としてタンク全体表面に散水するように形成した場合を示す説明図である。
【図2】この発明に係るタンクの散水設備であって、球形タンクを事例として球形タンクの各支柱に散水するように形成した場合を示す説明図である。
【図3】図2の要部を示す斜視説明図である。
【図4】図2の要部を示す斜視説明図である。
【図5】従来例1の散水装置と堰板を設けた貯槽の屋根構造を示す説明図である。
【図6】従来例2の貯槽屋根の散水を樋に受けて排水する構造を示す説明図である。
【図7】従来例3の球形タンクの散水と水槽を示す斜視説明図である。
【図8】従来例4の貯槽屋根の散水を側壁に沿って平均に流下させる構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るタンクの散水設備の実施形態の事例について図面を参照しながら説明する。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素の省略又は付加、構成要素の形状の変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。なお、図の球形タンクは概略を示すもので、複数の支持部のうちの一部のみを描き、またブレーシング等は省略した。
【0020】
図1に基づいて、本発明に係る散水設備を球形タンク1に適用した事例について説明する。
球形タンク1の球殻体4は、基版2の複数の基礎3と、この基礎3上に設置された複数の支柱5とによって支持されている。
6は一般的な散水装置で、球殻体4を冷却するようにリング状に配置されている。7は頂部に設置されている頂部作業床である。
この発明によるタンクの散水設備は、球形タンク1の頂部位置に水受け皿8を設置し、この水受け皿8内へ連結送水管12を経由して消防水を受けるように形成する。水受け皿8の底壁の外周近傍位置には複数の細穴を設け、消防散水12aに示すように給水された消防水を球殻体4の全体表面にわたって散水するように形成する。
【0021】
このように、水受け皿8の細穴から球殻体4の全体表面に散水することにより、通常の散水装置6が故障したり散水量が不足した時に、緊急用散水設備として、消防車等から水を連続的に受けて冷却や消火に使用することができるため、火災発生時や近隣火災などで球形タンクが高い熱を受ける際に、タンク倒壊から生じる漏洩や延焼などの二次災害の拡大を防止することが可能となる。
【0022】
図2に基づき、消防水を受けてタンクの特定部位を重点的に冷却する事例、緊急用散水設備の事例として、図1と同様の球形タンク1の支柱5への散水に適用した場合について説明する。
本発明に係るタンクの散水設備は、水受け皿8と導水管9と放散カップ10とで形成する。水受け皿8は、側壁8aと底壁8bとで受け皿状に形成し、頂部作業床7を利用してその内部に設ける。
導水管9は、各支柱5の上部位置の放散カップ10から経線に沿って水受け皿8の底部に向けて球殻体4の上面に配設する。11はシャワー水で、放散カップ10から支柱5の周囲表面に沿って均一に放散されるように形成する。
【0023】
図3は、図2の水受け皿8の近傍を示す斜視説明図である。
水受け皿8は、側壁8aと底壁8bとで受け皿状に形成し、頂部作業床7を利用してその内部に設ける。
導水管9は、各支柱の上部位置から経線に沿った位置の水受け皿8に開口9aを設け、この開口9aから各支柱の上端部に向けて球殻体4上面に配設する。
消防水としては、図3のように消防車など外部手段による消防放水13が供給される場合を示す。この消防放水13をこぼれないように頂部作業床7に囲まれた内部の水受け皿8へ受けて、開口9aから導水管9を経て各支柱5へ給水し確実に散水されるように形成する。
【0024】
図4は、図2の放散カップ10の近傍を示す斜視説明図である。
球殻体4上面に配設した導水管9の下端位置、各支柱5の取付部5aの外面全体を覆う位置に放散カップ10を設ける。この放散カップ10の下部は、取付部5aの張出し部を覆うように湾曲したカバー10aと下部を絞ったガイド10bを設ける。このガイド10bの内部には、図示はしないが水を平均に分散させる細穴やスリットなどを設けておく。
導水管9を通って降下した消防水は、放散カップ10のカバー10a内を通ってガイド10bから均一なシャワー水11となって支柱5の周囲表面に沿って放出される。
【0025】
このように、一般的な散水装置とは別個に設けた特定部位用の散水設備によって、連結送水管や消防車などの外部から継続的に給水される消防放水を水受け皿8に受け、導水管9下端部の放散カップ10から支柱5外周に沿ってシャワー水11を散水させるので、シャワー水11によって支柱5が直接確実に冷却されるため、近隣火災の高熱によって支柱5が高温に曝されて熱劣化や破裂することで、球形タンク全体の倒壊などの二次被害を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上記タンクの散水設備は、近隣火災への対策や球殻体及び支柱部の冷却が望まれる球形タンクのみならず、ガス状や液体状の危険物を貯蔵する各種貯槽や各種構築物などについて消防水利用の散水設備として適用することができる。

【符号の説明】
【0027】
1 球形タンク
2 基版
3 基礎
4 球殻体
5 支柱
6 散水装置
7 頂部作業床
8 水受け皿
9 導水管
10 放散カップ
11 シャワー水
12 連結送水管
13 消防放水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの頂部位置に消防水を受ける水受け皿を設置し、この水受け皿に複数の細穴を設け、この複数の細穴からタンク全体表面に散水するように形成したことを特徴とするタンクの散水設備。
【請求項2】
請求項1に記載のタンクは球形タンクであって、その頂部位置に消防水を受ける水受け皿を設置し、球形タンクを支える各支柱の上部位置から経線に沿った位置の上記水受け皿に開口を設け、この開口から各支柱の上端部に向けて分散する導水管を設け、この導水管の端部で各支柱の上端部に放散カップを設け、この放散カップの下部から支柱外周表面に沿って水を散水するように形成したことを特徴とするタンクの散水設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の上記消防水は外部からの放水で補給される水であって、この放水を受けるように上記水受け皿は頂部作業床に囲まれた内部に設けたことを特徴とするタンクの散水設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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