説明

タンクの洗浄方法

危険性物質の残留物をタンク1内の蒸気から除去する方法及び装置。この蒸気が加熱され、タンクの外部に流れ出た後に冷却され、残っている乾燥蒸気が再循環される。a)蒸気が、危険性物質の融点よりも少なくとも5℃高く、且つ危険性物質の自己発火点よりも低い温度まで加熱され、b)それにより形成された蒸気混合体が、ポンプ3によってタンクから排出ユニットを通過して回収ユニットへ移り、c)回収ユニット内で少なくとも5℃低く且つ危険性物質の融点よりも高い温度まで冷却され、d)蒸気の液体成分が回収され、乾燥ガス混合体が所望の温度まで再加熱された後にタンクへ再循環され、e)この再循環が必要なだけ繰り返されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵タンク及び船舶タンクなどのタンクの洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このようなタンクは、特にベンゼンなどの危険性物質を収容した後で、排気が行われていた。排気は時間のかかる送風作業であり、環境に害を及ぼす可能性のある蒸気の発生を伴うものである。したがって、刺激性の蒸気は、焼却装置で燃焼させるか、あるいは船舶が外洋にでて排気しなければならない。したがって、どちらの選択肢も費用のかかるものである。
【0003】
英国特許出願公開第470,419号は、内部表面が汚染されている可能性があるタンク車、燃料タンク、並びに油及び化学物質運搬コンテナなどの閉鎖空間内部を洗浄する方法及び装置に関するものである。この方法は、閉鎖空間内へ蒸気及び液体の双方の形態で溶媒を導入すること、及び溶解した不純物を含む液体溶媒を閉鎖空間から除去することを含む。
【0004】
米国特許第3,046,163号は、まず塩素化炭化水素系溶媒の熱い蒸気をタンク内に送り、タンク壁に前記蒸気を凝結させ、汚染した凝結液を排出させて溶媒を回収し、続いて内部に液体溶媒を圧力噴霧し、次いで再度熱い溶媒蒸気をタンク内に送り、最後に熱せられていない外気をタンクに通して、残留した微量の溶媒蒸気を空気中から除去することによりタンク内部を洗浄する方法及び装置に関する。
【0005】
上述の特許はどちらも、適切な溶媒を使用し、残留物質が壁から除去されるまで回収した溶媒を再循環させて、タンクの壁に付着した残留物質を除去する方法、及びこの方法での使用に適した装置に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許出願公開第470,419号明細書
【特許文献2】米国特許第3,046,163号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
どちらの特許権も20年以上前に消滅したので、現在使用されている排気システムの高コストと環境被害を避けるための安易な方法として、これらの方法及び装置を使用することは当然である。しかし、タンクを適切に清掃するには、これらの方法及び装置が十分に洗練されていないことは明らかであった。
【0008】
上述の欠点は、本発明による方法によって回避される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タンクから危険性物質を除去する方法を提供し、それにより1〜2時間以内で危険性物質の90%がタンクから除去される。
【0010】
本発明は、タンク内の蒸気から危険性物質の残留物を除去する方法を提供する。タンク内に存在する危険性物質を含む蒸気が加熱され、タンクの外部に流れた後に冷却され、残りの乾燥蒸気が再循環される。危険性物質を含む蒸気は、除去すべき危険性物質の融点よりも少なくとも5℃高く、且つ危険性物質の自己発火点よりも低い温度まで、適切な手段によって加熱され、ポンプによって冷却器を通過し、そこで蒸気が適切な手段により、初期温度よりも少なくとも5℃低く且つ危険性物質の融点よりも高い温度まで冷却され、蒸気の液体成分が回収され、残りの乾燥蒸気がタンクへ再循環され、危険性物質レベルが所望の値に達するまで、この再循環が続けられる。
【0011】
上述の方法において、蒸気は乾燥蒸気であることが好ましい。蒸気流量を大きくして、それにより処理時間を短縮するために、ポンプが必要とされる。
【0012】
タンクをさらに使用できるようにするために、残留している可能性のあるいかなる不要な物質も、スクラバ又は他の適切な方法により除去される。
【0013】
タンクで運搬される物質の例としては、特にベンゼン、石油及びペトロール(ガソリン)などの石油製品、パーム油及びオリーブ油が挙げられる。
【0014】
より具体的には、本発明による方法は、危険性物質としてのベンゼン及びエタノールの処理に関するものである。タンクの内容物は初めに所望の温度まで予熱される。ベンゼン蒸気は6℃よりも高い温度まで、又はエタノール蒸気は4℃よりも高い温度まで冷却されることが好ましく、この冷却は好ましくは水などの冷却媒体によって行われるが、初期の蒸気はベンゼンでは11℃〜30℃であり、エタノールでは9℃〜30℃である。加熱は、水などの適切な加熱媒体によって行われることが好ましい。
【0015】
危険性物質は冷却ユニット(冷却器)内で凝結することになり、そこから分離できるが、残った蒸気はタンクへ戻される。この処理は、所望の危険性物質レベルが達成されるまで、蒸気を再循環することによって繰り返される。
【0016】
ベンゼンに関しては、蒸気が最終再循環ステップにおいてベンゼンの凝固点である5.5℃未満に冷却されてもよい。
【0017】
以下において、図面を参照して本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】タンクに対して本発明による方法を実施するための各ユニットの配列を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
加熱手段(図示せず)により適切な温度まで加熱された蒸気は、ポンプ3により導管2を通ってタンク1から冷却ユニット4へ移動される。この冷却ユニットには、ジャケット10(下部のみ図示されている)が備えられている。凝結した蒸気は、導管11により冷却ユニット4から収集器12へ排出される。冷却ユニット8は、導管9を介して冷却ユニット4のジャケット10に冷却媒体を供給し、この冷却媒体は、収集容器6及び導管5、7を介して冷却ユニット8へ戻される。冷却ユニット4内に残留した蒸気は、導管2の最後の部分を介してタンク1へ戻される。すべての導管は、部分的に又は完全に可撓性ホースにより構成することができる。
【0020】
本発明について上記のように説明したが、本発明の範囲及び原理から逸脱することなく、記載された実施例が、変形及び修正して実施できることが当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクから危険性物質の残留物を除去する方法において、
ガス混合体を、a)危険性物質の残留物を収容している前記タンクを、除去すべき前記危険性物質の融点よりも少なくとも5℃高く且つ前記危険性物質の自己発火点よりも低い温度で通過させ、
b)それにより形成された蒸気混合体を、前記タンクから排出ユニットを通して回収ユニットへ移動させ、
c)前記蒸気混合体を、前記回収ユニット内で、少なくとも5℃低い温度であって前記危険性物質の融点よりも高い温度まで冷却し、
d)前記蒸気から液体成分を回収して、乾燥ガス混合体をa)での温度まで再加熱しながら前記タンクへ再循環させ、
e)危険性物質のレベルが必要とされるレベルに達するまで、前記再循環を繰り返すことを特徴とする、危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項2】
前記ガス混合体が乾燥ガス混合体であることを特徴とする、請求項1に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項3】
最終ステップとして、残留した不要な物質をスクラバで除去することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項4】
前記危険性物質がベンゼンであることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項5】
ベンゼンを6℃よりも高い温度まで冷却することを特徴とする、請求項4に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項6】
前記冷却を、冷却された水によって行うことを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項7】
初期の前記ガス混合体の温度が11℃〜30℃であることを特徴とする、請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項8】
初期の前記ガス混合体の通過に先立って、前記タンクの内容物を所望の温度に予熱することを特徴とする、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項9】
加熱を、適切に加熱された水によって行うことを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項10】
冷却を、冷却された媒体によって行うことを特徴とする、請求項4又は請求項9に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項11】
初期蒸気の温度が9℃〜30℃であることを特徴とする、請求項9又請求項は10に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項12】
前記タンク内の前記蒸気を、前記冷却器への移送に先立って所望の温度に予熱することを特徴とする、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載された危険性物質の残留物を除去する方法。
【請求項13】
タンク内の蒸気から危険性物質の残留物を除去する装置において、該装置は、ポンプ(3)を備える導管(2)を有し、該導管(2)は、冷却器(4)に接続し且つ前記冷却器から前記タンクへ戻り、前記冷却器(4)が冷却ジャケット(10)を備え、冷却媒体が冷却媒体用の収集容器(6)を介して導管(5)を通過し且つ冷却ユニット(8)及び導管(9)経由で導管(7)を介して循環するようになっており、凝結した危険性物質を導管(11)により冷却ユニット(4)から収集容器(12)へ除去することができるようになっている、危険性物質の残留物を除去する装置。

【図1】
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【公表番号】特表2012−508099(P2012−508099A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535049(P2011−535049)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008004
【国際公開番号】WO2010/052020
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(511112227)ザ ヨーロピアン イノベーション グループ ベスローテン フェンノートシャップ (1)
【Fターム(参考)】