説明

タンク側板の補強構造及びその施工法

【課題】 耐震強度が不足するタンクを、供用中であってもタンク本体に溶接することなく簡単かつ短期間に補強施工し、側板の座屈変形の防止や底板の浮上がりの防止を図り、さらに、地震によって側板の一部が、変形や部分座屈など損傷した場合には、溶接を行わずに簡単に短期間で補修施工して、損傷箇所の拡大などの二次被害を防止するタンク側板の補強構造及びその施工法を提供する。
【解決手段】 平底円筒形鋼製タンクの側板で地震によって座屈変形を生じやすい箇所を含む所定高さ部位2aについて、離隔して所定幅位置に設置する支持枠体6と、この支持枠体6の内部及び又は支持枠体6の外周面に張設するテンションPC鋼線8と、支持枠体6の内部に連続的に打設するコンクリート7とで補強形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水や石油などの液体、穀物や粉体などの固体、或いは乾式ガスなどの気体を貯蔵するタンクの側板の補強構造及びその施工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平底円筒形鋼製の各種タンクに関わる耐震設計基準については、幾度もの震災の経験を踏まえて強化されてきている。
そのため、既設タンクにあっては、耐震性能の向上を図るための補強工事を必要とされるタンクが存在する。
なかでも、危険物の液体を貯蔵するタンクにあっては、早急な補強を要するが、これまでの溶接を行う補強工事では、危険物液体を他のタンクに移送した後、更に洗浄や清掃を行った後でなければ補強工事に着手できず、タンクの規模にもよるが 4ヶ月から1年程度の長期間を要する工事となる。そのため、設備の運用上、補強工事に直ぐには着手できない場合がある。更には、工事を実施するにあたっては、できる限り短期間での施工完了を求められる。
これらのタンクは、地震によって側板が座屈し変形などの損傷により貯蔵液が漏出する危険があり、更には浸水や津波によって浮いたり流されたりするなどの被害を生ずる心配もあった。
また、地震によってタンクの側板の一部が、変形や部分座屈、象脚型座屈などで損傷した場合には、これらのタンクは供用中であるため、貯蔵液を空にすることなく溶接などの火気を使用することなく、簡単に短期間で補修施工することも望まれていた。
【0003】
タンクの部分補修に関する従来の発明技術がある。
例えば特許文献1(特開2003−205995号公報)「PCタンクの修復工法」の発明には、従来例1の図6(a)〜(c)に示すように、コンクリート側壁1外周に装着した既設緊張部材2が腐食で体積膨張したPCタンクに対して、腐食部を含む周辺の保護被覆層3を除去又は補強し、この被覆除去部又は被覆補強部に保護被覆層3より外周側へ突出する態様で定着構造部10を構築すると共に、定着構造部10を支持部として新たな追加緊張部材13を設置した後に、腐食部を含む既設緊張部材2は定着構造部10の両側で切断する構成が開示されている。
【0004】
特許文献2(特開2006−56525号公報)「貯蔵タンクの補修方法」の発明には、従来例2の図7(a)〜(h)に示すように、燃料タンク1の周囲に側板上部5aに連結する複数のジャッキ6を配置し、側板5の周囲を溶断し、側板上部5aと側板下部5bとを縁切りし、各ジャッキ6を一斉にジャッキアップして側板上部5aを側板下部5bから分離し、底板4及び側板下部5bを撤去し、撤去後の地盤に新設の底板4Aを設置し、各ジャッキ6を一斉にジャッキダウンして側板上部5aを新設の底板4Aに接合し、接合位置に沿って溶接を行い側板上部5aと底板4Aを一体化する構成が開示されている。
【0005】
特許文献3(特開平10−194383号公報)「既設タンクの強度補強方法」の発明には、従来例3の図8(a),(b)に示すように、複数の等辺山形鋼9を、その材軸方向がタンク側板3の高さ方向に沿って略鉛直に延びるように、タンク側板3の外周面の周方向に沿って所定ピッチで離間する複数位置にそれぞれ配設して、各等辺山形鋼9の両側縁部をタンク側板3外周面にそれぞれ溶接し、特に、タンク側板3の高さ方向の略全長に等辺山形鋼9を溶接固定するなどの構成が開示されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−205995号公報
【特許文献2】特開2006−56525号公報
【特許文献3】特開平10−194383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1(特開2003−205995号公報)の従来例1の発明は、稼働中で側壁に貯蔵液体による内圧が作用しているPCタンクに対して修復が可能であり、PCタンクを休眠させる経済的な損失を無くすと共に、更に長期間の使用を可能にする構造であるが、部分的に座屈したタンク側板を応急的に補修し修復するものではない。
【0008】
特許文献2(特開2006−56525号公報)の従来例2の発明は、補修時期においてタンク底面とその近傍のみを交換するものであって、供用中のタンクの側板の一部を補強修復することはできない。
【0009】
また、特許文献3(特開平10−194383号公報)の従来例3の発明は、地震発生時の側板の変形や破損が発生する虞を回避できると共に、放爆構造とし得る既設タンクの強度補強方法であるが、鋼材を用いて側板の広範囲に施工するもので、大掛かりな溶接施工を必要とし、供用中のタンク側板の下部を対象として補強するものではない。
【0010】
このように、従来例の発明技術は、いずれも側板を部分的又は全体に補修し修復するものであって、耐震強度が不足するタンクの側板を簡単に短期間に補強施工するものではなく、さらに地震で損傷した供用中のタンクについて、タンク側板の座屈損傷箇所を応急的に補修施工することに対して配慮したものではなかった。
【0011】
この発明は上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、耐震強度が不足するタンクを、供用中であってもタンク本体に溶接することなく簡単かつ短期間に補強施工し、側板の座屈変形の防止や底板の浮上がりの防止を図り、さらに、地震によってタンクの側板の一部が、変形や部分座屈、象脚型座屈などで損傷した場合には、溶接を行わずに簡単に短期間で補修施工して、損傷箇所が拡大し破壊などの二次被害を防止するタンク側板の補強構造及びその施工法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係るタンク側板の補強構造は、平底円筒形鋼製タンクの側板で地震によって座屈変形を生じやすい箇所を含む所定高さ部位について、離隔して所定幅位置に設置する支持枠体と、この支持枠体の内部及び又は支持枠体の外周面に張設するPC鋼線と、支持枠体の内部に連続的に打設するコンクリートとで補強形成することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明に係るタンク側板の補強構造は、上記請求項1記載の側板の所定高さ部位は、地震によって座屈変形を生じた箇所を含む所定高さ部位であって、この座屈変形を生じた箇所の空隙部にスペーサ等を設置して形成することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明に係るタンク側板の補強構造の施工法は、平底円筒形鋼製タンクの側板で地震によって座屈変形を生じやすい箇所を含む所定高さ部位について、離隔して所定幅位置に縦ステーの枠体を側板に密着させて立設するステップと、複数本のPC鋼線を支持枠体の内部及び又は外周面に設置して仮止めするステップと、コンクリート打設用型枠材を縦ステー間に落とし込んで設置するステップと、PC鋼線をコンクリート打設の側圧抵抗値まで仮緊張するステップと、支持枠体の内部にコンクリートを連続的に打設するステップと、所定強度まで固化した後にPC鋼線を本緊張するステップを有することを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明に係るタンク側板の補強構造の施工法は、上記請求項3記載の側板の所定高さ部位は、地震によって座屈変形を生じた箇所を含む所定高さ部位であって、この座屈変形を生じた箇所の空隙部にスペーサ等を設置するステップと、座屈変形を生じた範囲を含む所定高さ部位について、離隔して所定幅位置に縦ステーを側板に密着させて立設するステップとを有することを特徴とする。

【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係るタンク側板の補強構造は、平底円筒形鋼製タンクの側板で地震によって座屈変形を生じやすい箇所を含む所定高さ部位について、離隔して所定幅位置に設置する支持枠体と、この支持枠体の内部及び又は支持枠体の外周面に張設するPC鋼線と、支持枠体の内部に連続的に打設するコンクリートとで補強形成するので、
耐震強度が不足する中小規模の既設タンクの耐震強度を向上することができる。経年劣化による側板の変形防止や底板の浮き上がり防止を図り、この耐震補強によって長く使い続けることができる。コンクリートの圧縮力で補給することができるとともに、PC鋼線の緊張テンションで側板に発生するフープ荷重を負担することにより、側板の強度を増し安全性を向上することが出来る。
地震によって側板が変形や座屈、象脚型座屈などで損傷を生じることがなく、地盤の浸水や津波によって浮いたり流されたりするなどの被害を生ずる心配もなくなる。
【0017】
請求項2の発明に係るタンク側板の補強構造は、上記請求項1記載の側板の所定高さ部位は、地震によって座屈変形を生じた箇所を含む所定高さ部位であって、この座屈変形を生じた箇所の空隙部にスペーサ等を設置して形成するので、
地震によってタンクの側板の一部が、変形や部分座屈、象脚型座屈などで損傷した場合、座屈箇所の凹凸部をスペーサと矢で調整して確りと力を伝達し、縦ステーとコンクリートとPC鋼線で確りと補強し、鋼製側板の座屈部塑性変形箇所の破壊を抑制することが出来る。
【0018】
請求項3の発明に係るタンク側板の補強構造の施工法は、平底円筒形鋼製タンクの側板で地震によって座屈変形を生じやすい箇所を含む所定高さ部位について、離隔して所定幅位置に縦ステーなどの支持枠体を側板に密着させて立設するステップと、複数本のPC鋼線を支持枠体の内部及び又は外周面に設置して仮止めするステップと、コンクリート打設用型枠材を縦ステー間に落とし込んで設置するステップと、PC鋼線をコンクリート打設の側圧抵抗値まで仮緊張するステップと、支持枠体の内部にコンクリートを連続的に打設するステップと、所定強度まで固化した後にPC鋼線を本緊張するステップを有するので、
タンクの側板を、縦ステーとコンクリートとPC鋼線で確りと補強することが出来る。また、供用中のタンク設備であっても、予め工場で必要な部材を製作し、現地では溶接などの火気を使用することなく組立て施工を簡素化することにより、作業性良く短期間に補強することが出来る。
地震によって変形や部分座屈、象脚型座屈などで損傷しやすいタンクの側板を、縦ステーとコンクリートとPC鋼線で確りと補強することが出来る。
【0019】
請求項4の発明に係るタンク側板の補強構造の施工法は、上記請求項3記載の側板の所定高さ部位は、地震によって座屈変形を生じた箇所を含む所定高さ部位であって、この座屈変形を生じた箇所の空隙部にスペーサ等を設置するステップと、座屈変形を生じた範囲を含む所定高さ部位について、離隔して所定幅位置に縦ステーを側板に密着させて立設するステップとを有するので、
変形し座屈、象脚型座屈などで損傷を生じた側板を、タンク供用中に応急の補修施工が可能となり、損傷箇所の破損の拡大防止、二次被害の防止をすることができる。供用中のタンク設備であっても、予め工場で必要な部材を製作し、現地では溶接などの火気を使用することなく組立て施工を簡素化することにより、作業性良く短期間に補強することが出来る。
予め工場で必要な部材を製作し、現地では溶接などの火気を使用することなく組立て施工を簡素化することにより、作業性良く短期間に補強することが出来る。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るタンク側板の補強構造の全体側面説明図である。
【図2】本発明に係るタンク側板の補強構造の全体平面説明図である。
【図3】図2のA部を示す説明図である。
【図4】図2のB部を示す説明図である。
【図5】座屈変形した箇所の修復補強状況を示す側断面説明図である。
【図6】従来例1の構造を示す説明図である。
【図7】従来例2の構造を示す説明図である。
【図8】従来例3の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るタンク側板の補強構造の実施形態例について図1から図5を参照しながら説明する。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素の省略または付加、構成要素の形状の変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。なお、図は概略を示すもので、一部のみを描き詳細構造は省略した。また、この構造は、既設のタンクに形成した場合を示すが、新規のタンクに採用しても良い。
【0022】
図1は平底円筒形鋼製のタンク1の全体側面説明図で、2は側板、3は基礎、4は底板、5は屋根である。この発明によるタンク側板の補強構造は、支持枠体6と、コンクリート7と、PC鋼線8とで形成する。
図のように、側板の所定高さにわたる部位2a(図5には地震などで損傷した座屈変形箇所2bを示している)について、離隔して所定幅位置に支持枠体6を設置し、この支持枠体6の外周面に複数列リング状にPC鋼線8を張設し、この支持枠体6の内部に連続的にコンクリート7を打設して補強形成する。
【0023】
図2は、本発明に係るタンク側板の補強構造の全体平面説明図で、1は平底円筒形鋼製のタンク、2は側板、5は屋根である。
この発明によるタンク側板の補強構造は、縦ステー6aと、コンクリート7と、PC鋼線8とで形成する。11は緊張接続具で、PC鋼線8にテンションを与えて緊張させる。
【0024】
図3は、図2のA部を示す斜視説明図で、H形鋼などの縦ステー6aとL形鋼や帯板鋼などの連結材6bを用いてブロック化した支持枠体6を、側板2から離隔して所定幅位置に設置する。この支持枠体6の縦ステー6aの外周面にPC鋼線セット用フック10を設け、このPC鋼線セット用フック10にPC鋼線8を引掛け支持させて複数列周方向に張設する。
支持枠体6の縦ステー6a,6a間の内側にコンクリート打設用型枠材9を差込んで固定し、このコンクリート打設用型枠材9の内部に連続的にコンクリート7を打設する。所定のコンクリート固化強度が得られた時期に、PC鋼線8に所定強度のテンションを与える。
なお図示はしないが、PC鋼線はコンクリートの内部にも、複数列周方向にテンションを与えて張設してもよい。
【0025】
図4は、図2のB部を示す説明図で、縦ステー6aの外周面に緊張接続具11を設置する。
この緊張接続具11を用いて、PC鋼線セット用フック10に引掛け支持させて設置したPC鋼線8にテンションを与える。
【0026】
図5は、座屈変形した箇所の修復補強状況を示す側断面説明図で、2は側板、3は基礎、4は底板、縦ステー6aと、コンクリート7と、PC鋼線8とで形成、2aは側板下部、2bは座屈変形部を示す。
図のように縦ステー6aを立設する際に、座屈変形部2bの下部の隙間に木製角材のスペーサ12を当てがい、上部の隙間に木製クイ状の矢13を打込み、さらに縦ステー6a外側には、サポートとなる傾斜材14、ベース板15、アンカー16を設けて固定する。
図示例は、PC鋼線8を外周PC鋼線8a,内部PC鋼線8bのように複数列円周方向に張設する場合を示す。内部のPC鋼線8bは、縦ステー6aに開口部17を設けてその内部に挿通する。
コンクリート打設用型枠材9の内側にコンクリート7を打設し、所定の固化強度が得られた時期に、PC鋼線8,8a,8bにテンションを与える。
【0027】
この発明に係るタンク側板の補強構造は、平底円筒形鋼製タンクの側板の所定高さにわたる部位2aについて、離隔して所定幅位置に設置する複数の縦ステー6aなどからなる支持枠体と、この支持枠体6の内部及び又は支持枠体6の外周面にリング状に張設する複数本のPC鋼線8と、支持枠体6の内部に連続的に打設するコンクリート7とで補強形成するので、
耐震強度が不足する中小規模の既設タンクの耐震強度を向上することができる。また、経年劣化による側板の変形防止や底板の浮き上がり防止を図り、この耐震補強によって長く使い続けることができる。コンクリート7の圧縮力で補給することができるとともに、PC鋼線8の緊張テンションで側板に発生するフープ荷重を負担することにより、側板2の強度を増し安全性を向上することが出来る。
【0028】
また、この発明に係るタンク側板の補強構造は、殊に上記側板の所定高さにわたる部位2aは、地震によって座屈変形を生じやすい箇所であるので、
地震によって側板が変形や座屈、象脚型座屈などの損傷を生じることがなく、地盤の浸水や津波によって浮いたり流されたりするなどの被害を生ずる心配もなくなる。
【0029】
さらに、この発明に係るタンク側板の補強構造は、上記側板の所定高さにわたる部位2aは、地震によって座屈変形を生じた箇所2bを含む全周であって、座屈変形を生じた空隙部にスペーサ12と矢13を設置して形成するので、
地震によってタンクの側板の一部が変形や部分座屈、象脚型座屈などで損傷した場合には、座屈変形箇所2bの凹凸部をスペーサ12と矢13を用いて垂直面を調整して確りと力を伝達させ、縦ステー6aとコンクリート7とPC鋼線8で確りと補強し、鋼製側板の座屈部塑性変形の拡大や破壊を抑制することが出来る。
なお、コンクリート7としては、早強セメントなどを使用すると復旧工事を短縮することができる。
【0030】
この発明に係るタンク側板の補強構造の施工法は、平底円筒形鋼製タンクの側板の所定高さにわたる部位2a、殊に地震によって座屈変形を生じやすい箇所について、離隔して所定幅位置に縦ステー6a(ブロック)を側板に密着させて立設するステップと、PC鋼線8をセット用フック10の上に置いて例えば全周2段張りに仮止めするステップと、コンクリート打設用型枠材9を縦ステー6a,6a間に落とし込んで設置するステップと、PC鋼線8をコンクリート打設の側圧抵抗値まで仮緊張するステップと、早強セメントなどのコンクリート7を打設するステップと、所定強度まで固化した後にPC鋼線8を本緊張するステップを有する。
【0031】
この施工法によると、タンクの側板の所定高さ部位2aを、縦ステー6aとコンクリート7とPC鋼線8で確りと補強することが出来る。また、供用中のタンク設備であっても、予め工場で必要な部材を製作し、現地では溶接などの火気を使用することなく組立て施工を簡素化することにより、作業性良く短期間に補強することが出来る。
殊に地震によって変形や部分座屈、象脚型座屈などで損傷しやすいタンクの側板の所定高さ部位2aを、縦ステー6aとコンクリート7とPC鋼線8で確りと補強することが出来る。
【0032】
また、地震によって座屈変形を生じた箇所2bについては、上記施工の前に、座屈変形を生じた空隙部にスペーサ12、矢13を用いて垂直面を調整して確りと力を伝達させ縦ステー6aを押付けて設置するステップを有する。
【0033】
このように、座屈し変形などの損傷を生じた箇所2bを含む側板の所定高さ部位2aについて、応急の補修施工をすることが可能となり、損傷箇所の拡大を抑え、二次被害の防止をすることができる。
また、供用中のタンク設備に対しては、補強施工に必要な部材は簡素化し予め工場で製作し、現地では溶接などの火気を使用することなく組立て施工するようにして、作業性良く短期間に補強することが出来る。

【産業上の利用可能性】
【0034】
上記補強構造及び施工法は、既設のタンクのみならず、耐震性能の向上や津波対策、強風対策などが望まれる新規のタンク、或いはモニュメントなどの構築物にも適用することができる。

【符号の説明】
【0035】
1タンク
2側板
2a所定高さ部位
2b座屈変形箇所
3基礎
4底板
5屋根
6支持枠体
6a縦ステー
6b連結材
7コンクリート
8,8a,8bPC鋼線
9コンクリート打設用型枠材
10PC鋼線セット用フック
11PC鋼線緊張接続具
12スペーサ
13矢
14サポート
15ベース板
16アンカー
17開口部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
平底円筒形鋼製タンクの側板で地震によって座屈変形を生じやすい箇所を含む所定高さ部位について、離隔して所定幅位置に設置する支持枠体と、この支持枠体の内部及び又は外周面に張設するPC鋼線と、支持枠体の内部に連続的に打設するコンクリートとで補強形成することを特徴とするタンク側板の補強構造。
【請求項2】
上記側板の所定高さ部位は、地震によって座屈変形を生じた箇所を含む所定高さ部位であって、この座屈変形を生じた箇所の空隙部にスペーサ等を設置して形成することを特徴とする請求項1記載のタンク側板の補強構造。
【請求項3】
平底円筒形鋼製タンクの側板で地震によって座屈変形を生じやすい箇所を含む所定高さ部位について、離隔して所定幅位置に縦ステーなどの支持枠体を側板に密着させて立設するステップと、複数本のPC鋼線を支持枠体の内部及び又は外周面に設置して仮止めするステップと、コンクリート打設用型枠材を縦ステー間に落とし込んで設置するステップと、PC鋼線をコンクリート打設の側圧抵抗値まで仮緊張するステップと、支持枠体の内部にコンクリートを連続的に打設するステップと、所定強度まで固化した後にPC鋼線を本緊張するステップを有することを特徴とするタンク側板の補強構造の施工法。
【請求項4】
上記側板の所定高さ部位は、地震によって座屈変形を生じた箇所を含む所定高さ部位であって、この座屈変形を生じた箇所の空隙部にスペーサ等を設置するステップと、座屈変形を生じた範囲を含む所定高さ部位について、離隔して所定幅位置に縦ステーを側板に密着させて立設するステップとを有することを特徴とする請求項3記載のタンク側板の補強構造の施工法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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