タンク内洗浄水の排出装置
【課題】必要なフロートが1つで済み、洗浄タンク内でフロートの占めるスペースを少なくし得るとともに、玉鎖に対する引上げの操作量の大小に影響されないで意図した大洗浄と小洗浄とを安定して行い得るタンク内洗浄水の排出装置を提供する。
【解決手段】タンク内洗浄水の排出装置を、フラッパ弁22と、レバーアームと、フラッパ弁22に設けられた空気室50と、上側への引上げ力で開弁し、空気室50の空気を抜いて内部に水を流入させる空気抜き弁58と、レバーアームの一方向の回転によりフラッパ弁22を直接引き上げて開弁させ、他方向の回転により空気抜き弁58を介してフラッパ弁22を引き上げて開弁させる玉鎖と、玉鎖に取り付けられたフロートとを含んで構成する。この場合他方向の回転時には、玉鎖にて空気抜き弁58を開弁させるのに必要な力を、フラッパ弁22を開弁させるのに必要な力よりも小さく設定しておく。
【解決手段】タンク内洗浄水の排出装置を、フラッパ弁22と、レバーアームと、フラッパ弁22に設けられた空気室50と、上側への引上げ力で開弁し、空気室50の空気を抜いて内部に水を流入させる空気抜き弁58と、レバーアームの一方向の回転によりフラッパ弁22を直接引き上げて開弁させ、他方向の回転により空気抜き弁58を介してフラッパ弁22を引き上げて開弁させる玉鎖と、玉鎖に取り付けられたフロートとを含んで構成する。この場合他方向の回転時には、玉鎖にて空気抜き弁58を開弁させるのに必要な力を、フラッパ弁22を開弁させるのに必要な力よりも小さく設定しておく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗浄タンクの内部に貯溜された洗浄水を、タンク底部の排水口より便器に向けて排出させるタンク内洗浄水の排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のタンク内洗浄水の排出装置として、従来、排水弁としてのフラッパ弁を2枚設けて、それぞれに玉鎖(引上げ材)を繋ぐとともに、各フラッパ弁に対応した玉鎖のそれぞれにフロートを個別に取り付けて、各フロートの高さ位置を異ならせ、大洗浄時の排出水量と小洗浄時の排出水量とを異ならせるようになしたものが知られている。
【0003】
しかしながらこの場合、1つのタンク内洗浄水の排出装置にフロートが2つ必要となるとともに、洗浄タンクの内部スペースがこの2つのフロートによって広く占有されてしまう。
近年、洗浄タンクが小型化してきており、これに伴って内部のスペースが狭小化してきている中で、2つのフロートが洗浄タンク内で広いスペースを占有してしまうといったことは望ましくない。
【0004】
一方、フラッパ弁を上部弁体と下部弁体とに分けて、下部弁体に空気を保持する空気室(浮力室)を設け、玉鎖(引上げ材)を上部弁体と下部弁体とにそれぞれ接続し、そして上部弁体に接続した玉鎖にフロートを取り付けたものが下記特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示のものはフロートが1つであるものの、このものは空気室に空気を保持したり、空気を抜いたりする機構は備えていない。
これと同種のものは下記特許文献2にも開示されている。
【0005】
他方下記特許文献3には、フラッパ弁に空気室を設けて、その空気室を開閉する空気抜き弁としての蓋部を設け、そして蓋部に玉鎖(引上げ材)を接続してその玉鎖にフロートを取り付けた形態のものが開示されている。
【0006】
図17は具体例を示している。
図において、200は排水口を開閉するフラッパ弁で、このフラッパ弁200には空気室202が設けられている。
204は空気室202を開閉する蓋部で、通常時はマグネット206と208との吸引力で閉弁状態、即ち空気室202の上端の開口を閉鎖する状態に保持されている。
210は蓋部204に接続された玉鎖で、この玉鎖210にフロート212が取り付けられている。
【0007】
この図17に示すタンク内洗浄水の排出装置では、タンク内部の洗浄水の圧力に抗してフラッパ弁200を引き上げて開弁させるのに必要な力よりも、蓋部204をフラッパ弁200から引き上げて開動作させ、空気室202を開放するための力の方が強く設定されている。
【0008】
従ってこのタンク内洗浄水の排出装置では、玉鎖210を上向きに引き上げると、先ずフラッパ弁200が引き上げられて開弁し、その状態から玉鎖210を更に上向きに引き上げると、蓋部204が開いて空気室202にタンク内の水が流入する。
【0009】
そしてフラッパ弁200を開弁させ、蓋部204を閉じた状態の下では、空気室202に空気が保持されて浮力が働くため、この状態の下では大洗浄が行われる。
一方この状態から更に蓋部204を引き上げて空気室202を開放した状態の下では、空気室202に浮力が働かないため、この状態の下では小洗浄が行われる。
【0010】
しかしながらこの図17に示すタンク内洗浄水の排出装置の場合、小洗浄を行うつもりで玉鎖210を引き上げても、その引上げの操作量が不足すると、意図と反して大洗浄が行われてしまうといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−183719号公報
【特許文献2】特開2003−27554号公報
【特許文献3】米国特許第6263520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような事情を背景とし、必要なフロートが1つで済み、洗浄タンク内でフロートの占めるスペースを少なくし得るとともに、引上げ材に対する引上げの操作量の大小に影響されないで、意図した通りに大洗浄と小洗浄とを安定して行い得るタンク内洗浄水の排出装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して請求項1のものは、洗浄タンクの内部に貯溜された洗浄水を、タンク底部の排水口より便器に向けて排出させるタンク内洗浄水の排出装置であって、(a)前記排水口を開閉するフラッパ弁と、(b)前記タンクの内部に延出したレバーアームと、(c)前記フラッパ弁に設けられ、内部に空気を保持する空気室と、(d)該空気室を開閉する弁であって、上側への引上げ力で開弁し、該空気室の空気を抜いて該空気室内にタンク内の水を流入させる空気抜き弁と、(e)前記レバーアームから垂れ下り、該レバーアームの一方向の回転により、前記空気抜き弁に開弁の力を与えることなく前記フラッパ弁を引き上げて開弁させ、他方向の回転により該空気抜き弁を開弁許容状態で該空気抜き弁を介して該フラッパ弁を引き上げて開弁させる引上げ材と、(f)該引上げ材に取り付けられたフロートと、を有しており、前記他方向の回転時に前記引上げ材にて前記空気抜き弁を開弁させるのに必要な力が、前記フラッパ弁を開弁させるのに必要な力よりも小さく、該空気抜き弁の開弁を伴って該フラッパ弁を引き上げるようになしてあることを特徴とする。
【0014】
請求項2のものは、請求項1において、前記空気抜き弁を下向きの閉弁方向に付勢する弾性を有する付勢部材が設けてあることを特徴とする。
【0015】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記引上げ材が、前記フラッパ弁に直接接続された第1引上げ材と、前記空気抜き弁に接続され、前記フロートの取り付けられた第2引上げ材とを含んでいることを特徴とする。
【0016】
請求項4のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記引上げ材を1本となして、該引上げ材に前記フロートを取り付けるとともに、該引上げ材を前記空気抜き弁に接続し、前記レバーアームの前記他方向の回転時には前記空気抜き弁の開弁を許容する一方、前記一方向の回転時には該空気抜き弁をロック状態として開弁阻止するロック機構を設けてあることを特徴とする。
【0017】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記空気室が前記フラッパ弁の下部に設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0018】
以上の本発明によれば、必要なフロートが1つで足り、タンク内でフロートが占めるスペースを小スペース化することができる。
本発明では、レバーアームの一方向の回転により、レバーアームから垂れ下った引上げ材にて空気抜き弁に開弁の力を与えることなくフラッパ弁を引き上げて開弁させることで、フラッパ弁に設けた空気室にて浮力を発生させることができ、これを第2のフロートとして働かせることができる。
この状態の下ではフラッパ弁が閉じるまでの時間を長くすることができ、タンク内洗浄水を多く排出して大洗浄を行うことができる。
【0019】
本発明では、レバーアームの他方向の回転により、空気抜き弁を開弁許容状態でその空気抜き弁を介してフラッパ弁を引き上げるようになし、且つその他方向の回転時に、引上げ材にて空気抜き弁を開弁させるのに必要な力が、タンク内の洗浄水の圧力に抗してフラッパ弁を開弁させるのに必要な力よりも小さく設定してあり、従ってレバーアームを他方向に回転させたときには、フラッパ弁が開く前に先ず空気抜き弁が開弁し、そしてその空気抜き弁の開弁を伴ってその後にフラッパ弁が開弁する。
この場合、フラッパ弁に設けた空気室にはタンク内の水が流入し、空気室は第2のフロートとしての働きを消失する。
この場合には、引上げ材に取り付けたフロートのみが浮力を発生させるため、フラッパ弁が開弁後に早く閉じることとなり、タンクから排出される洗浄水の水量は少なくなる。即ちこのときには小洗浄が行われる。
かかる本発明では、引上げ材の引上げの操作量の大小によらずに、レバーアームの回転方向の違いによって、使用者の意図した通りに大洗浄と小洗浄とを安定して行うことができる。
【0020】
本発明では、空気抜き弁を下向きの閉弁方向に付勢する弾性を有する付勢部材を設けておくことができる(請求項2)。
このようにしておけば、小洗浄時において引上げ材による引上げ操作を終了した時点では、付勢部材によって空気抜き弁が自動的に閉じた状態にあるため、フラッパ弁が閉弁した後の止水不良を防ぐことができる。
また大洗浄時においては、空気室内の空気が空気抜き弁を押し上げて漏出するのを防ぐことができ、これにより空気室に働く浮力が安定し、大洗浄時において一定の安定した水量で洗浄水を排出することが可能となる。
【0021】
本発明ではまた、上記の引上げ材を、フラッパ弁に直接接続された第1引上げ材と、空気抜き弁に接続され、フロートの取り付けられた第2引上げ材とを含んで構成しておくことができる(請求項3)。
このようになした場合、第1引上げ材を引き上げることでフラッパ弁を直接開弁させ大洗浄を行うことができる一方、第1引上げ材とは別の第2引上げ材を引き上げることで小洗浄を行うことができ、大洗浄と小洗浄とを確実に区別し、切り替えて実行することができる。
【0022】
次に請求項4は、引上げ材を1本となして、これにフロートを取り付けるとともに引上げ材を空気抜き弁に接続し、レバーアームの上記他方向の回転時には空気抜き弁の開弁を許容する一方、上記一方向の回転時には空気抜き弁をロック状態として開弁を阻止するロック機構を設けたもので、この場合においても大洗浄と小洗浄とを確実に切り替えて実行することができる。
またこの請求項4によれば、必要な引上げ材を1本だけとしてタンク内洗浄装置の排出装置を構成することができる。
【0023】
本発明では、上記空気室をフラッパ弁の下部に設けておくことができる(請求項5)。
この請求項5によれば、空気室をタンク外に配置することができ、洗浄タンクの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態のタンク内洗浄水の排出装置を洗浄タンク等とともに示した図である。
【図2】図1のフラッパ弁とその周辺部を示した図である。
【図3】図2のフラッパ弁と周辺部を各部品に分解して示した斜視図である。
【図4】図2のフラッパ弁とその周辺部を拡大して示した図である。
【図5】同実施形態におけるレバーアームと周辺部を示した図である。
【図6】同レバーアームの要部を夫々拡大して示した図である。
【図7】同レバーアームの要部を図6とは異なった方向で示した図である。
【図8】同レバーアームの要部と玉鎖との結合関係を示した図である。
【図9】同レバーアームの要部の作用説明図である。
【図10】同レバーアームの利点を説明するために比較例を示した比較例図である。
【図11】大洗浄時におけるフラッパ弁とフロート等の作用説明図である。
【図12】図11に続く作用説明図である。
【図13】図12に続く作用説明図である。
【図14】小洗浄時におけるフラッパ弁とフロート等の作用説明図である。
【図15】図14に続く作用説明図である。
【図16】本発明の他の実施形態の図である。
【図17】従来のタンク内洗浄水の排出装置の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗浄タンク(以下単にタンクとする)で、アウタタンク12と、インナタンク14とを有している。
図中16はタンク10の底部を、18はタンク壁を表している。
タンク10の底部16には、図2に示しているように内部の洗浄水を便器に向けて排出する排水口20と、これを開閉する排水弁としてのフラッパ弁22とが設けられている。
図2において、24は排水口20に連通して設けられたオーバーフロー管で、タンク10の内部において底部16から上向きに立ち上がっている。
【0026】
フラッパ弁22は、図3及び図4に詳しく示しているようにシール部材26を保持した円板状の弁部28と、これから図中右方に延び出した一対のアーム30とを有している。
アーム30の夫々の図中右端部には、フック状の掛止部32が設けられており、これら一対の掛止部32が、オーバーフロー管24の周方向に180°隔たった2個所から突出した軸部34に回転可能に下向きに掛止されている。
フラッパ弁22は、軸部34に対する掛止部32の掛止に基づき、軸部34周りに回転運動することによって開閉動作する。
【0027】
図1において、35は引上げ材としての玉鎖で、この玉鎖35は大洗浄用の玉鎖(第1引上げ材)36と、小洗浄用の玉鎖(第2引上げ材)70とから成っている。
これら大洗浄用の玉鎖36と小洗浄用の玉鎖70とは、それぞれ一定ピッチで配置された玉38と、それらを繋ぐ線材から成る繋ぎ材40とから成っている。
【0028】
フラッパ弁22の弁部28には、図1及び図3に示すように外周部の2個所、詳しくはタンク10に対する正面視において、周方向に180°異なった右位置と左位置とに、玉鎖36の取付部42R,42Lが設けられている。
これら取付部42R,42Lのそれぞれは、図3に示しているように繋ぎ材40を挿通する挿通孔120と、挿通された繋ぎ材40の上側の玉38と下側の玉38とに係合する係合部122とを有している。
【0029】
右側の取付部42Rは右ハンドル用、即ちタンク10に対する正面視においてタンク10の右側に後述の洗浄ハンドル94が取り付けられた場合の右ハンドル用の取付部で、取付部42Lは、洗浄ハンドル94がタンク10の左側に取り付けられた場合の左ハンドル用の取付部である。
ここでは大洗浄用の玉鎖36は、右ハンドル用の取付部42Rに取り付けられている。
尚、図4に示しているように排水口20の上端の開口周りに設けられた弁座44は、図中左方向に向って斜め下向きに傾斜しており、従ってフラッパ弁22は、閉弁状態で弁部28が同じく左方向に向って斜め下向きに傾斜した状態となる。
【0030】
図4において、46はフラッパ弁22の動作を小洗浄動作に切り替える切替機構で、この切替機構46は、弁部28の下側においてフラッパ弁22に設けられた空気チャンバ48を有している。この空気チャンバ48は、内側に空気室50を形成している。
尚この空気チャンバ48は、下部が下向きに先細りとなるテーパ部52とされている。このテーパ部52の下端は開口部54とされ、また上部には貫通の細孔55が設けられている。
ここで細孔55は、空気室50内部を満たした水を開口部54から抜く際に、空気室50内部に空気を導入するための孔である。
尚この細孔55は、空気室50に空気が保持された状態の下で、その内部空気が水中に漏出できない程度の小さな孔である。
【0031】
切替機構46はまた、円筒状の筒壁56と、筒壁56の上端の開口を閉鎖する上壁部82とを有するハウジング47と、その内部に図中上下方向に摺動可能に収容され、空気室50の上端の開口57を開閉する空気抜き弁58と、空気抜き弁58を図中下向きの閉弁方向に付勢する付勢部材としてのばね(ここではコイルばね)60とを有している。
【0032】
ここで空気抜き弁58は、シール部材62を保持した円板状の弁部64と、内部中空の軸部66とを有している。
軸部66の端部は、挿通孔120及び係合部122(図3参照)を有する取付部68とされており、そこに玉38と繋ぎ材40とを有する小洗浄用の玉鎖70の下端部が固定状態に取り付けられている。
またハウジング47における筒壁56には、これを貫通して水流入口72が設けられている。
【0033】
上記空気チャンバ48は、図3及び図4に示しているようにその大部分をなすキャップ146と、その取付部148とを有している。
取付部148には係止孔150が、またキャップ146の側には係止爪152が設けられ、それらが弾性係止されることで、空気チャンバ48が取付部148に上向きに差込状態に取り付けられている。
【0034】
本実施形態において、切替機構46は次のように働く。
空気抜き弁58が閉弁状態にあり、空気室50に空気が溜められた状態の下では、フラッパ弁22は開弁及び閉弁によって大洗浄、即ち便器に向けて洗浄水を大量排出する大洗浄のための動作を行う。
【0035】
一方空気抜き弁58を図中上向きに引き上げて開弁させると、ここにおいて筒壁56周りの外部の水が、流入口72より筒壁56内部に流入し、更に開口57を通じて空気室50に入り込み、空気室50を水で埋める。
このときにはフラッパ弁22は小洗浄、即ち便器に向けて洗浄水を少量排出する小洗浄のための動作を行う。
即ちこの実施形態では、空気抜き弁58を開弁させることによって、フラッパ弁22の動作を小洗浄の動作に切り替える。
尚その切替えの具体的な原理については後述する。
【0036】
74は、後述のフロート84の重みを受けて下向きの力をフラッパ弁22に対して伝達し、フラッパ弁22に下向きの閉弁方向の力を及ぼす円筒形状の筒体で、その内部に小洗浄用の玉鎖70を挿通させる状態に玉鎖70に取り付けられている。
【0037】
76は筒体74のガイド部で、図3及び図4に示しているように筒体74を間にして互いに対向する板状の一対のガイド壁78,その下側の筒部80を有しており、その筒部80に、上記の上壁部82及びこれから下向きに突出した嵌込部154が一体に形成されている。
この嵌込部154には係止爪156が設けられている。
【0038】
一方上記の筒壁56には、対応する係止孔158が設けられており、ガイド部76は、嵌込部154を筒壁56に内嵌状態に嵌め込み、そして係止爪156を係止孔158に係止させることで、筒壁56に取り付けられている。即ちガイド部76がフラッパ弁22に設けられている。
上記筒体74は、このガイド部76における筒部80を介して下向きの力をフラッパ弁22に作用させる。
【0039】
ここでガイド部76は、小洗浄用の玉鎖70の傾き側の方向には筒体74の傾きを許容し、傾き側の方向とは直交する方向へはガイド壁78の当接作用で傾き防止する働きをなす。
このガイド部76における一対のガイド壁78のそれぞれの上端部には、互いにハの字状に開いた案内部160が設けられている。
これら案内部160は、筒体74を一対のガイド壁78の間に挿入案内する部分である。
【0040】
図1及び図2において、84はフロートでドーナツ環状の密閉された空気室86を有しており、そこに空気を保持している。
またその中心部には挿通孔88を有し、その挿通孔88に小洗浄用の玉鎖70を上下方向に挿通させる状態に玉鎖70に取り付けられている。
ここでフロート84は、小洗浄用の玉鎖70に沿って上下にスライド移動可能である。
【0041】
図1に示しているように、小洗浄用の玉鎖70には所定高さ位置にストッパ90が固定状態に取り付けられている。
但しこのストッパ90は、小洗浄用の玉鎖70に対する固定位置を上下に調節することが可能である。
ストッパ90は板状の部材であって、その中心部に繋ぎ材40を挿通する挿通孔120と、係合部122とを備えた取付部162を有している。
【0042】
ここでストッパ90は、筒体74が上記のガイド部76の筒部80に下向きに当った状態の下で、筒体74の上端とストッパ90との間の距離が、フロート84の上下寸法よりも一定距離大となるような位置で、小洗浄用の玉鎖70に固定されている。
従ってフロート84は、筒体74の上端とストッパ90との間で小洗浄用の玉鎖70に沿って所定距離上下にスライド移動することができる。
【0043】
図1において、92は洗浄ハンドル94に連結されてタンク10内に延出したレバーアームで、スピンドル部96とレバー部112とを有している。
図5において、98は洗浄ハンドル94及びレバーアーム92をタンク壁18に取り付けるための取付部材で、雄ねじ部100を有しており、そこにナット102がねじ込まれることでタンク壁18に固定されている。
【0044】
レバーアーム92のスピンドル部96は、先端側に角形状の雄嵌合部104と、弾性を有する嵌込部106とを有しており、その雄嵌合部104を洗浄ハンドル94の対応する角形状の雌嵌合部108に嵌合させる状態に、嵌込部106が洗浄ハンドル94に設けられた嵌込孔110に弾性的に嵌め込まれている。
これによりスピンドル部96が、取付部材98の中心の挿通孔を挿通して洗浄ハンドル94に軸方向及び回転方向に固定されている。
ここでスピンドル部96は、タンク内奥部に向って直線状に延びている。
【0045】
スピンドル部96の先端側には、スピンドル部96に対して直角に湾屈曲したレバー部112が一体に設けられている。
ここでレバー部112は縦向き、即ち通常の状態において、垂直下向きに延びている。
尚この実施形態において、図5に示しているようにレバー部112は、ナット102を嵌めてこれを通過させることが可能なサイズである。スピンドル部96もまた同様である。
【0046】
レバー部112は、図6(C)及び図7に示しているように先端側(図中下端側)にヘッド部114を有している。
またヘッド部114は、その上端部に且つスピンドル部96に対する先端側からの正面視において左,右の位置に、大洗浄側の取付部116と、小洗浄側の取付部118とを有している。
そして図8に示しているように取付部116に大洗浄用の玉鎖36が、また取付部118に小洗浄用の玉鎖70が、夫々固定状態に取り付けられている。
【0047】
ここで各取付部116,118は、図6(A),(C)及び図7に示しているように、夫々上記の繋ぎ材40を上下方向に挿通する挿通孔120と、そこに挿通された繋ぎ材40の上側の玉38a(図8参照)と下側の玉38bとに係合する係合部122とを有している。
大洗浄用の玉鎖36及び小洗浄用の玉鎖70の夫々は、繋ぎ材40を挿通孔120に挿通し、上側の玉38aと下側の玉38bとに係合部122を係合させることで各取付部116,118に取り付けられる。
これら取付部116,118に取り付けられた大洗浄用の玉鎖36と小洗浄用の玉鎖70とは、夫々取付部116,118から左,右に分かれて下向きに垂れ下がった状態となる。
【0048】
ヘッド部114は、また、取付部116と118との左右の間の位置において、取付部116,118よりも設定距離下側位置まで垂直下向きに延び出た引上げアーム124を有している。
ここで引上げアーム124は板状のリブにて構成してある。
この引上げアーム124は、大洗浄用の玉鎖36及び小洗浄用の玉鎖70の何れにも固定されておらず、通常時においてそれらに対しフリーの状態にある。
【0049】
そして大洗浄用の玉鎖36,小洗浄用の玉鎖70の夫々は、取付部116,118から引上げアーム124に沿って垂直下向きに垂れ下がった状態にある。
従ってこの状態で洗浄ハンドル94を、図1中右からの正面視において反時計方向に回転させると、これと同方向にスピンドル部96及び引上げアーム124が回転し、引上げアーム124がその先端部124aを、大洗浄用の玉鎖36に引掛けてこれを引き上げる。
【0050】
ここにおいて玉鎖36が直接(空気抜き弁58を介することなく、つまり空気抜き弁58に開弁の力を与えることなく)フラッパ弁22を引き上げて開弁させ、タンク10内の洗浄水を大量排出させて便器の大洗浄を行わせる。
このとき、小洗浄用の玉鎖70は当然ながら引上げアーム124にて引き上げられることはなく、取付部118から垂れ下がったままとなる。
【0051】
逆に洗浄ハンドル94を、図1中右側からの正面視において時計方向に回転させると、今度は同方向に回転する引上げアーム124がその先端部124aを、小洗浄用の玉鎖70に引掛けてこれを引き上げる。
【0052】
本実施形態において、空気抜き弁58をばね60の付勢力に抗して上向きに引き上げて開弁させるのに必要な力は、閉弁状態のフラッパ弁22をタンク10内の洗浄水の圧力に抗して引き上げ、開弁させるのに必要な力よりも小さく設定してあり、従って小洗浄用の玉鎖70が引き上げられると、空気抜き弁58が先ず引き上げられて開弁し、そしてこの空気抜き弁58の開弁を伴ってフラッパ弁22が引き上げられる。
ここにおいてフラッパ弁22が開弁し、タンク内の洗浄水が便器に向けて少量排出され、便器の小洗浄が行われる。
このとき、大洗浄用の玉鎖36は引上げアーム124によって引き上げられることはなく、取付部116から下向きに垂れ下がったままである。
【0053】
ヘッド部114は、更に、図6及び図7に示しているように引上げアーム124に対してスピンドル部96の軸方向の前後の位置で、取付部116,118から引上げアーム124に沿って下向きに延びる、前後に対向した各一対の板状のガイド壁128を有する、大洗浄側の外れ防止部(第2外れ防止部)130と、小洗浄側の外れ防止部(第2外れ防止部)132とを備えている。
【0054】
大洗浄側の外れ防止部130は、大洗浄用の玉鎖36に対するガイド壁128の前後方向の当接作用により、引上げアーム124に沿った垂れ下り位置にある大洗浄用の玉鎖36が、その垂れ下り位置から前後方向に外れ防止する働きを有している。
【0055】
同様に小洗浄側の外れ防止部132もまた、小洗浄用の玉鎖70に対するガイド壁128の前後方向の当接作用により、引上げアーム124に沿った垂れ下り位置から小洗浄用の玉鎖70が前後方向に外れるのを防止する働きを有する。
【0056】
これら外れ防止部130及び132による玉鎖の外れ防止は、次のような意味を有している。
タンクの種類やサイズ等によっては、玉鎖36,70の上端側の取付部116,118への取付位置と、フラッパ弁22側の下端側の位置とが、スピンドル部96の軸方向の前後に一定以上異なる場合がある。
【0057】
この場合、上記のガイド壁128を有する外れ防止部130,132が設けてないと、図10の比較例図に示すように大洗浄用の玉鎖36,小洗浄用の玉鎖70が、それぞれ引上げアーム124に沿った垂れ下り位置から前後方向に外れてしまうことがある。
そのような状態になると、引上げアーム124を回転させても、その先端部124aを玉鎖36,70の予め定めた位置に引掛けて、これを引上げ動作することができなくなってしまう。
そこでここでは、一対のガイド壁128を有する外れ防止部130,132を設けてこれを防止するようになしている。
【0058】
ヘッド部114はまた、引上げアーム124の回転時に垂れ下り側となる玉鎖が取付部から左右方向外方に外れるのを防止する、上記とは別の外れ防止部(第1の外れ防止部)として、大洗浄側の外れ防止部134と、小洗浄側の外れ防止部136とを備えている。
【0059】
ここで外れ防止部134,136は、それぞれ取付部116,118からガイド壁128に沿って湾曲しながら下向きに延びるカバー部138と、取付部116,118の挿通孔120に続いてカバー部138に設けられたスリット140とを有している。
【0060】
ここでカバー部138は、図8に示しているように取付部116,118に取り付けられた、上下に隣接した一対の玉38a,38bのうちの下側の玉38bを内部に収容する状態に、下側の玉38bを左右方向の外方から覆う形状をなしている。
【0061】
尚スリット140は、玉鎖36,70を取付部116,118に取り付けるに当って、図9に示すように玉鎖36,70における繋ぎ材40を、カバー部138を通過して取付部116,118の挿通孔120に持ち来すためのものである。
このときには、図9に示すように下側の玉38bをカバー部138の内側に先ず嵌め入れた状態とし、その状態でスリット140に沿って繋ぎ材40を上側の玉38aとともに取付部118,116側に移動させる。
ここでカバー部138の下端には、繋ぎ材40をスリット140に向けて案内する傾斜形状の案内部144が設けてある。
【0062】
尚、ヘッド部114の上端からは、引上げアーム124に連続して補強用のリブ142がスピンドル部96に向って延びている。
この補強用のリブ142は、引上げアーム124の一部を成していると考えることもできる。
【0063】
次に本実施形態の作用を説明する。
この実施形態において、洗浄ハンドル94が図5に示す中立位置にあるとき、図11(I)に示しているようにフラッパ弁22は閉弁状態にあり、またフロート84は水中に没した位置で浮力によりストッパ90に上向きに当接した状態にある。
またこのとき、フラッパ弁22に設けられている空気室50の内部は空気で満たされている。
【0064】
この状態から洗浄ハンドル94を大洗浄側、つまり上記した反時計方向に回転させると、レバー部112に設けられた引上げアーム124が同方向に回転し、そしてその先端部124aを、大洗浄用の玉鎖36の、取付部116から設定距離下側の部位を引掛けて玉鎖36を一定の所要の距離だけ引き上げる。
このとき大洗浄用の玉鎖36は、図1においてオーバーフロー管24に接近する側に引張られながら引き上げられる。
これにより、図11(II)に示しているようにフラッパ弁22が玉鎖36によって直接持ち上げられ、開弁する。
開弁したフラッパ弁22は(フラッパ弁22は設定した最大開弁位置に到ると図示を省略するフラッパ弁ストッパにて更なる回転が阻止される)、依然として水中に没した状態のフロート84による浮力と,空気チャンバ48による浮力とによって,その後も開弁状態に維持され、タンク10内の洗浄水が排水口20から便器に向けて排出される。
【0065】
タンク10内の洗浄水の排出に伴って、タンク内の水位Wは降下していく。
そして図12(III)に示しているように、水位Wがフロート84の上端から一定距離下側位置まで下がったところで、フロート84に作用する浮力とフロート84自体の重力とがバランスした状態となり、その後フロート84は水位Wの降下に連れて玉鎖70に沿って下向きに移動して行く。
【0066】
尚このとき、空気チャンバ48の内部の空気室50は依然として空気で満たされた状態にあり、従って空気チャンバ48に対しては引き続き浮力が作用しており、図12(IV)に示すようにフロート84が水位Wの降下に連動して下向きに移動しても、フラッパ弁22は依然として開弁状態に保持されている。
従って図12(IV)に示しているように、フロート84はストッパ90から離れて単独で小洗浄側の玉鎖70に沿って下向きに移動していく。
【0067】
単独で下向きに移動したフロート84は、ストッパ90から離れて一定距離下がったところで、図13(V)に示しているように筒体74の上端に当接するに到る。
この状態から水位Wが更に降下すると、フロート84に対する浮力はますます減少し、これに伴ってフロート84の重みが筒体74にかかり、且つ水位Wの降下に伴って筒体74に加わる重みが増大していく。
【0068】
即ち筒体74をフロート84が下向きに押す力が漸次増大していく。
そしてその下向きの力が、空気チャンバ48に対する浮力よりも打ち勝つに到ると、フラッパ弁22が開弁状態を維持できなくなって、その後は水位Wの降下に伴ってフラッパ弁22が閉弁開始し、最終的にフラッパ弁22が完全閉弁状態となる。
ここにおいて排水口20からの洗浄水の放出が停止する。
【0069】
一方洗浄ハンドル94を大洗浄時とは逆の小洗浄側、つまり上記の時計方向に回転させると、今度はレバー部112の引上げアーム124がその先端部124aを、小洗浄用の玉鎖70に引掛けて、詳しくは小洗浄用の玉鎖70の、取付部118から設定距離下側の部位に引掛けて、玉鎖70を一定の所要距離だけ引き上げる。
このときには小洗浄用の玉鎖70は、図1においてオーバーフロー管24から離れる側に引張られながら上向きに引き上げられる。
【0070】
このとき、フラッパ弁22が閉弁した状態の下で先ず切替機構46の空気抜き弁58が、ばね60の付勢力に抗して上向きに引き上げられて開弁する。
すると空気室50の上端の開口57が開放状態となって、流入口72を通じ空気室50にタンク10内の水が流入して、空気室50を水で埋める。
【0071】
上向きに引き上げられた空気抜き弁58が、ハウジング47の上壁部82に当ると、小洗浄用の玉鎖70による引上げ力がフラッパ弁22自体に及ぼされ、ここにおいてフラッパ弁22が開弁動作する。
このとき、弁座44から離れたフラッパ弁22は速やかにばね60の付勢力で空気抜き弁58に対し相対的に上向き移動する。即ち一旦開弁した空気抜き弁58が、その後速やかにもとの閉弁状態に戻る。
そしてその状態でフラッパ弁22が小洗浄用の玉鎖70により引き上げられ、その後最大開弁状態となる(図14(I)参照)。
【0072】
フラッパ弁22の開弁によって、タンク10内の洗浄水は排出され、水位Wはその排出に伴って降下していく。
そして図14(II)に示すようにフロート84の頭が僅かに水面から露出した位置となると、そこでフロート84に対する浮力とフロート84に対して下向きに加わる力とが釣り合った状態となり(大洗浄時と異なって、小洗浄時には空気チャンバ48に対して浮力は働いていない)、その後は水位Wの降下と一緒にフロート84が降下即ち下向きに移動し、これに伴ってフラッパ弁22は弁開度を漸次少なくしていき、そして図15(III)に示すように最終的に弁座44に着座して完全閉弁状態となる。
【0073】
この間、空気チャンバ48に対して浮力は働いていないため、フロート84はストッパ90に当った状態を維持したまま、即ち筒体74との間に一定の距離を隔てた状態を維持したまま、水位Wの降下と一緒に下向きに移動していく。
そのためにこの小洗浄時においては、フラッパ弁22が完全開弁してから閉弁開始するまでの時間が短く、即ち大洗浄時に較べて早い段階で閉弁開始し、閉弁状態に到る。
そのため、小洗浄時においては洗浄水の排出水量が少なく、少ない水量で便器洗浄(小洗浄)を行う。
【0074】
以上の本実施形態によれば、必要なフロートが1つで足り、タンク10内でフロート84が占めるスペースを小スペース化することができる。
本実施形態では、レバーアーム92の一方向(反時計方向)の回転により、レバーアーム92から垂れ下った大洗浄用の玉鎖36にて、空気抜き弁58に開弁の力を与えることなくフラッパ弁22を直接引き上げて開弁させることで、フラッパ弁22に設けた空気室50にて浮力を発生させ、これを第2のフロートとして働かせる。
この状態の下ではフラッパ弁22が閉じるまでの時間を長くすることができ、タンク10内洗浄水を多く排出して大洗浄を行うことができる。
【0075】
一方レバーアーム92を他方向(時計方向)に回転させたときには、小洗浄用の玉鎖70の引上げによって、フラッパ弁22が開く前に先ず空気抜き弁58が開弁し、そしてその空気抜き弁58の開弁を伴ってその後にフラッパ弁22が開弁する。
この場合には、フラッパ弁22に設けた空気室50にはタンク10内の水が流入し、空気室50は第2のフロートとしての働きを消失し、玉鎖70に取り付けたフロート84のみが浮力を発生させるため、フラッパ弁22が開弁後に早く閉じることとなり、タンク10から排出される洗浄水の水量は少なくなる。即ちこのときには小洗浄が行われる。
かかる本実施形態では、玉鎖の引上げの操作量の大小によらずに、レバーアーム92の回転方向の違いによって、使用者の意図した通りに大洗浄と小洗浄とを安定して行うことができる。
【0076】
本実施形態では、空気抜き弁58を下向きの閉弁方向に付勢するばね60が設けてあるため、小洗浄時において玉鎖70による引上げ操作を終了した時点では、ばね60によって空気抜き弁58が自動的に閉じた状態にあるため、フラッパ弁22が閉弁した後の止水不良を防ぐことができる。
また大洗浄時においては、空気室50内の空気が空気抜き弁58を押し上げて漏出するのを防ぐことができ、これにより空気室50に働く浮力が安定し、大洗浄時において一定の安定した水量で洗浄水を排出することが可能となる。
【0077】
本実施形態ではまた、空気室50をフラッパ弁22の下部に設けてあるため、空気室50をタンク外に配置することができ、洗浄タンク10の小型化を図ることができる。
【0078】
図16は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、引上げ材として玉鎖351本だけとして、これを空気抜き弁58に接続し、そして玉鎖35にフロート84を取り付けた例である(図16ではフロート84は図示省略してある)。
この例では、洗浄ハンドル94を大洗浄側に回転操作したときには空気抜き弁58をロック状態として開弁阻止する一方、洗浄ハンドル94を小洗浄側に回転操作したときには空気抜き弁58の開弁を許容するロック機構164が設けてある。
【0079】
ここで空気抜き弁58を開弁許容状態と開弁阻止状態とに切り替えるロック機構164は、空気抜き弁58の軸部66に設けられた、上向きに尖った形状の突起166と、ハウジング47側に設けられた溝168と、突起166を上向きに当接させて突起166、つまり空気抜き弁58を上向きに移動阻止する当接部170とを備えている。
【0080】
この例では、洗浄ハンドル94を大洗浄側に回転操作すると、図16(B)に示しているように突起166が当接部170に当接し、空気抜き弁58がロック状態となって開弁阻止される。
従ってこのときには、空気抜き弁58に開弁の力が与えられることなくフラッパ弁22が開弁する。
このとき空気室50には空気が保持されたままであり、空気チャンバ48には浮力が働く。
【0081】
他方、洗浄ハンドル94を小洗浄側に回転操作すると、このときには図16(A)に示しているように、玉鎖35がオーバーフロー管24から離れる側に引張られながら引き上げられるため、軸部66の突起166が溝168の側に入り込んで、溝に沿って上向きに相対移動する。
即ちこのときには空気抜き弁58が開弁動作し、そして空気抜き弁58の開弁を伴って、フラッパ弁22が開弁動作する。
このときには空気室50にタンク内の水が流入して空気室50が水で埋まった状態となり、空気チャンバ48への浮力は消失する。
従ってこの状態の下でのフラッパ弁22の開弁及び閉弁により小洗浄が行われる。
この実施形態においても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0082】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は筒体74を省略して、フロート84を玉鎖70に固定状態とした形態でタンク内洗浄水の排出装置を構成することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 洗浄タンク
16 底部
20 排水口
22 フラッパ弁
35,36,70 玉鎖
50 空気室
58 空気抜き弁
60 ばね
84 フロート
92 レバーアーム
164 ロック機構
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗浄タンクの内部に貯溜された洗浄水を、タンク底部の排水口より便器に向けて排出させるタンク内洗浄水の排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のタンク内洗浄水の排出装置として、従来、排水弁としてのフラッパ弁を2枚設けて、それぞれに玉鎖(引上げ材)を繋ぐとともに、各フラッパ弁に対応した玉鎖のそれぞれにフロートを個別に取り付けて、各フロートの高さ位置を異ならせ、大洗浄時の排出水量と小洗浄時の排出水量とを異ならせるようになしたものが知られている。
【0003】
しかしながらこの場合、1つのタンク内洗浄水の排出装置にフロートが2つ必要となるとともに、洗浄タンクの内部スペースがこの2つのフロートによって広く占有されてしまう。
近年、洗浄タンクが小型化してきており、これに伴って内部のスペースが狭小化してきている中で、2つのフロートが洗浄タンク内で広いスペースを占有してしまうといったことは望ましくない。
【0004】
一方、フラッパ弁を上部弁体と下部弁体とに分けて、下部弁体に空気を保持する空気室(浮力室)を設け、玉鎖(引上げ材)を上部弁体と下部弁体とにそれぞれ接続し、そして上部弁体に接続した玉鎖にフロートを取り付けたものが下記特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示のものはフロートが1つであるものの、このものは空気室に空気を保持したり、空気を抜いたりする機構は備えていない。
これと同種のものは下記特許文献2にも開示されている。
【0005】
他方下記特許文献3には、フラッパ弁に空気室を設けて、その空気室を開閉する空気抜き弁としての蓋部を設け、そして蓋部に玉鎖(引上げ材)を接続してその玉鎖にフロートを取り付けた形態のものが開示されている。
【0006】
図17は具体例を示している。
図において、200は排水口を開閉するフラッパ弁で、このフラッパ弁200には空気室202が設けられている。
204は空気室202を開閉する蓋部で、通常時はマグネット206と208との吸引力で閉弁状態、即ち空気室202の上端の開口を閉鎖する状態に保持されている。
210は蓋部204に接続された玉鎖で、この玉鎖210にフロート212が取り付けられている。
【0007】
この図17に示すタンク内洗浄水の排出装置では、タンク内部の洗浄水の圧力に抗してフラッパ弁200を引き上げて開弁させるのに必要な力よりも、蓋部204をフラッパ弁200から引き上げて開動作させ、空気室202を開放するための力の方が強く設定されている。
【0008】
従ってこのタンク内洗浄水の排出装置では、玉鎖210を上向きに引き上げると、先ずフラッパ弁200が引き上げられて開弁し、その状態から玉鎖210を更に上向きに引き上げると、蓋部204が開いて空気室202にタンク内の水が流入する。
【0009】
そしてフラッパ弁200を開弁させ、蓋部204を閉じた状態の下では、空気室202に空気が保持されて浮力が働くため、この状態の下では大洗浄が行われる。
一方この状態から更に蓋部204を引き上げて空気室202を開放した状態の下では、空気室202に浮力が働かないため、この状態の下では小洗浄が行われる。
【0010】
しかしながらこの図17に示すタンク内洗浄水の排出装置の場合、小洗浄を行うつもりで玉鎖210を引き上げても、その引上げの操作量が不足すると、意図と反して大洗浄が行われてしまうといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−183719号公報
【特許文献2】特開2003−27554号公報
【特許文献3】米国特許第6263520号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような事情を背景とし、必要なフロートが1つで済み、洗浄タンク内でフロートの占めるスペースを少なくし得るとともに、引上げ材に対する引上げの操作量の大小に影響されないで、意図した通りに大洗浄と小洗浄とを安定して行い得るタンク内洗浄水の排出装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して請求項1のものは、洗浄タンクの内部に貯溜された洗浄水を、タンク底部の排水口より便器に向けて排出させるタンク内洗浄水の排出装置であって、(a)前記排水口を開閉するフラッパ弁と、(b)前記タンクの内部に延出したレバーアームと、(c)前記フラッパ弁に設けられ、内部に空気を保持する空気室と、(d)該空気室を開閉する弁であって、上側への引上げ力で開弁し、該空気室の空気を抜いて該空気室内にタンク内の水を流入させる空気抜き弁と、(e)前記レバーアームから垂れ下り、該レバーアームの一方向の回転により、前記空気抜き弁に開弁の力を与えることなく前記フラッパ弁を引き上げて開弁させ、他方向の回転により該空気抜き弁を開弁許容状態で該空気抜き弁を介して該フラッパ弁を引き上げて開弁させる引上げ材と、(f)該引上げ材に取り付けられたフロートと、を有しており、前記他方向の回転時に前記引上げ材にて前記空気抜き弁を開弁させるのに必要な力が、前記フラッパ弁を開弁させるのに必要な力よりも小さく、該空気抜き弁の開弁を伴って該フラッパ弁を引き上げるようになしてあることを特徴とする。
【0014】
請求項2のものは、請求項1において、前記空気抜き弁を下向きの閉弁方向に付勢する弾性を有する付勢部材が設けてあることを特徴とする。
【0015】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記引上げ材が、前記フラッパ弁に直接接続された第1引上げ材と、前記空気抜き弁に接続され、前記フロートの取り付けられた第2引上げ材とを含んでいることを特徴とする。
【0016】
請求項4のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記引上げ材を1本となして、該引上げ材に前記フロートを取り付けるとともに、該引上げ材を前記空気抜き弁に接続し、前記レバーアームの前記他方向の回転時には前記空気抜き弁の開弁を許容する一方、前記一方向の回転時には該空気抜き弁をロック状態として開弁阻止するロック機構を設けてあることを特徴とする。
【0017】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記空気室が前記フラッパ弁の下部に設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0018】
以上の本発明によれば、必要なフロートが1つで足り、タンク内でフロートが占めるスペースを小スペース化することができる。
本発明では、レバーアームの一方向の回転により、レバーアームから垂れ下った引上げ材にて空気抜き弁に開弁の力を与えることなくフラッパ弁を引き上げて開弁させることで、フラッパ弁に設けた空気室にて浮力を発生させることができ、これを第2のフロートとして働かせることができる。
この状態の下ではフラッパ弁が閉じるまでの時間を長くすることができ、タンク内洗浄水を多く排出して大洗浄を行うことができる。
【0019】
本発明では、レバーアームの他方向の回転により、空気抜き弁を開弁許容状態でその空気抜き弁を介してフラッパ弁を引き上げるようになし、且つその他方向の回転時に、引上げ材にて空気抜き弁を開弁させるのに必要な力が、タンク内の洗浄水の圧力に抗してフラッパ弁を開弁させるのに必要な力よりも小さく設定してあり、従ってレバーアームを他方向に回転させたときには、フラッパ弁が開く前に先ず空気抜き弁が開弁し、そしてその空気抜き弁の開弁を伴ってその後にフラッパ弁が開弁する。
この場合、フラッパ弁に設けた空気室にはタンク内の水が流入し、空気室は第2のフロートとしての働きを消失する。
この場合には、引上げ材に取り付けたフロートのみが浮力を発生させるため、フラッパ弁が開弁後に早く閉じることとなり、タンクから排出される洗浄水の水量は少なくなる。即ちこのときには小洗浄が行われる。
かかる本発明では、引上げ材の引上げの操作量の大小によらずに、レバーアームの回転方向の違いによって、使用者の意図した通りに大洗浄と小洗浄とを安定して行うことができる。
【0020】
本発明では、空気抜き弁を下向きの閉弁方向に付勢する弾性を有する付勢部材を設けておくことができる(請求項2)。
このようにしておけば、小洗浄時において引上げ材による引上げ操作を終了した時点では、付勢部材によって空気抜き弁が自動的に閉じた状態にあるため、フラッパ弁が閉弁した後の止水不良を防ぐことができる。
また大洗浄時においては、空気室内の空気が空気抜き弁を押し上げて漏出するのを防ぐことができ、これにより空気室に働く浮力が安定し、大洗浄時において一定の安定した水量で洗浄水を排出することが可能となる。
【0021】
本発明ではまた、上記の引上げ材を、フラッパ弁に直接接続された第1引上げ材と、空気抜き弁に接続され、フロートの取り付けられた第2引上げ材とを含んで構成しておくことができる(請求項3)。
このようになした場合、第1引上げ材を引き上げることでフラッパ弁を直接開弁させ大洗浄を行うことができる一方、第1引上げ材とは別の第2引上げ材を引き上げることで小洗浄を行うことができ、大洗浄と小洗浄とを確実に区別し、切り替えて実行することができる。
【0022】
次に請求項4は、引上げ材を1本となして、これにフロートを取り付けるとともに引上げ材を空気抜き弁に接続し、レバーアームの上記他方向の回転時には空気抜き弁の開弁を許容する一方、上記一方向の回転時には空気抜き弁をロック状態として開弁を阻止するロック機構を設けたもので、この場合においても大洗浄と小洗浄とを確実に切り替えて実行することができる。
またこの請求項4によれば、必要な引上げ材を1本だけとしてタンク内洗浄装置の排出装置を構成することができる。
【0023】
本発明では、上記空気室をフラッパ弁の下部に設けておくことができる(請求項5)。
この請求項5によれば、空気室をタンク外に配置することができ、洗浄タンクの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態のタンク内洗浄水の排出装置を洗浄タンク等とともに示した図である。
【図2】図1のフラッパ弁とその周辺部を示した図である。
【図3】図2のフラッパ弁と周辺部を各部品に分解して示した斜視図である。
【図4】図2のフラッパ弁とその周辺部を拡大して示した図である。
【図5】同実施形態におけるレバーアームと周辺部を示した図である。
【図6】同レバーアームの要部を夫々拡大して示した図である。
【図7】同レバーアームの要部を図6とは異なった方向で示した図である。
【図8】同レバーアームの要部と玉鎖との結合関係を示した図である。
【図9】同レバーアームの要部の作用説明図である。
【図10】同レバーアームの利点を説明するために比較例を示した比較例図である。
【図11】大洗浄時におけるフラッパ弁とフロート等の作用説明図である。
【図12】図11に続く作用説明図である。
【図13】図12に続く作用説明図である。
【図14】小洗浄時におけるフラッパ弁とフロート等の作用説明図である。
【図15】図14に続く作用説明図である。
【図16】本発明の他の実施形態の図である。
【図17】従来のタンク内洗浄水の排出装置の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗浄タンク(以下単にタンクとする)で、アウタタンク12と、インナタンク14とを有している。
図中16はタンク10の底部を、18はタンク壁を表している。
タンク10の底部16には、図2に示しているように内部の洗浄水を便器に向けて排出する排水口20と、これを開閉する排水弁としてのフラッパ弁22とが設けられている。
図2において、24は排水口20に連通して設けられたオーバーフロー管で、タンク10の内部において底部16から上向きに立ち上がっている。
【0026】
フラッパ弁22は、図3及び図4に詳しく示しているようにシール部材26を保持した円板状の弁部28と、これから図中右方に延び出した一対のアーム30とを有している。
アーム30の夫々の図中右端部には、フック状の掛止部32が設けられており、これら一対の掛止部32が、オーバーフロー管24の周方向に180°隔たった2個所から突出した軸部34に回転可能に下向きに掛止されている。
フラッパ弁22は、軸部34に対する掛止部32の掛止に基づき、軸部34周りに回転運動することによって開閉動作する。
【0027】
図1において、35は引上げ材としての玉鎖で、この玉鎖35は大洗浄用の玉鎖(第1引上げ材)36と、小洗浄用の玉鎖(第2引上げ材)70とから成っている。
これら大洗浄用の玉鎖36と小洗浄用の玉鎖70とは、それぞれ一定ピッチで配置された玉38と、それらを繋ぐ線材から成る繋ぎ材40とから成っている。
【0028】
フラッパ弁22の弁部28には、図1及び図3に示すように外周部の2個所、詳しくはタンク10に対する正面視において、周方向に180°異なった右位置と左位置とに、玉鎖36の取付部42R,42Lが設けられている。
これら取付部42R,42Lのそれぞれは、図3に示しているように繋ぎ材40を挿通する挿通孔120と、挿通された繋ぎ材40の上側の玉38と下側の玉38とに係合する係合部122とを有している。
【0029】
右側の取付部42Rは右ハンドル用、即ちタンク10に対する正面視においてタンク10の右側に後述の洗浄ハンドル94が取り付けられた場合の右ハンドル用の取付部で、取付部42Lは、洗浄ハンドル94がタンク10の左側に取り付けられた場合の左ハンドル用の取付部である。
ここでは大洗浄用の玉鎖36は、右ハンドル用の取付部42Rに取り付けられている。
尚、図4に示しているように排水口20の上端の開口周りに設けられた弁座44は、図中左方向に向って斜め下向きに傾斜しており、従ってフラッパ弁22は、閉弁状態で弁部28が同じく左方向に向って斜め下向きに傾斜した状態となる。
【0030】
図4において、46はフラッパ弁22の動作を小洗浄動作に切り替える切替機構で、この切替機構46は、弁部28の下側においてフラッパ弁22に設けられた空気チャンバ48を有している。この空気チャンバ48は、内側に空気室50を形成している。
尚この空気チャンバ48は、下部が下向きに先細りとなるテーパ部52とされている。このテーパ部52の下端は開口部54とされ、また上部には貫通の細孔55が設けられている。
ここで細孔55は、空気室50内部を満たした水を開口部54から抜く際に、空気室50内部に空気を導入するための孔である。
尚この細孔55は、空気室50に空気が保持された状態の下で、その内部空気が水中に漏出できない程度の小さな孔である。
【0031】
切替機構46はまた、円筒状の筒壁56と、筒壁56の上端の開口を閉鎖する上壁部82とを有するハウジング47と、その内部に図中上下方向に摺動可能に収容され、空気室50の上端の開口57を開閉する空気抜き弁58と、空気抜き弁58を図中下向きの閉弁方向に付勢する付勢部材としてのばね(ここではコイルばね)60とを有している。
【0032】
ここで空気抜き弁58は、シール部材62を保持した円板状の弁部64と、内部中空の軸部66とを有している。
軸部66の端部は、挿通孔120及び係合部122(図3参照)を有する取付部68とされており、そこに玉38と繋ぎ材40とを有する小洗浄用の玉鎖70の下端部が固定状態に取り付けられている。
またハウジング47における筒壁56には、これを貫通して水流入口72が設けられている。
【0033】
上記空気チャンバ48は、図3及び図4に示しているようにその大部分をなすキャップ146と、その取付部148とを有している。
取付部148には係止孔150が、またキャップ146の側には係止爪152が設けられ、それらが弾性係止されることで、空気チャンバ48が取付部148に上向きに差込状態に取り付けられている。
【0034】
本実施形態において、切替機構46は次のように働く。
空気抜き弁58が閉弁状態にあり、空気室50に空気が溜められた状態の下では、フラッパ弁22は開弁及び閉弁によって大洗浄、即ち便器に向けて洗浄水を大量排出する大洗浄のための動作を行う。
【0035】
一方空気抜き弁58を図中上向きに引き上げて開弁させると、ここにおいて筒壁56周りの外部の水が、流入口72より筒壁56内部に流入し、更に開口57を通じて空気室50に入り込み、空気室50を水で埋める。
このときにはフラッパ弁22は小洗浄、即ち便器に向けて洗浄水を少量排出する小洗浄のための動作を行う。
即ちこの実施形態では、空気抜き弁58を開弁させることによって、フラッパ弁22の動作を小洗浄の動作に切り替える。
尚その切替えの具体的な原理については後述する。
【0036】
74は、後述のフロート84の重みを受けて下向きの力をフラッパ弁22に対して伝達し、フラッパ弁22に下向きの閉弁方向の力を及ぼす円筒形状の筒体で、その内部に小洗浄用の玉鎖70を挿通させる状態に玉鎖70に取り付けられている。
【0037】
76は筒体74のガイド部で、図3及び図4に示しているように筒体74を間にして互いに対向する板状の一対のガイド壁78,その下側の筒部80を有しており、その筒部80に、上記の上壁部82及びこれから下向きに突出した嵌込部154が一体に形成されている。
この嵌込部154には係止爪156が設けられている。
【0038】
一方上記の筒壁56には、対応する係止孔158が設けられており、ガイド部76は、嵌込部154を筒壁56に内嵌状態に嵌め込み、そして係止爪156を係止孔158に係止させることで、筒壁56に取り付けられている。即ちガイド部76がフラッパ弁22に設けられている。
上記筒体74は、このガイド部76における筒部80を介して下向きの力をフラッパ弁22に作用させる。
【0039】
ここでガイド部76は、小洗浄用の玉鎖70の傾き側の方向には筒体74の傾きを許容し、傾き側の方向とは直交する方向へはガイド壁78の当接作用で傾き防止する働きをなす。
このガイド部76における一対のガイド壁78のそれぞれの上端部には、互いにハの字状に開いた案内部160が設けられている。
これら案内部160は、筒体74を一対のガイド壁78の間に挿入案内する部分である。
【0040】
図1及び図2において、84はフロートでドーナツ環状の密閉された空気室86を有しており、そこに空気を保持している。
またその中心部には挿通孔88を有し、その挿通孔88に小洗浄用の玉鎖70を上下方向に挿通させる状態に玉鎖70に取り付けられている。
ここでフロート84は、小洗浄用の玉鎖70に沿って上下にスライド移動可能である。
【0041】
図1に示しているように、小洗浄用の玉鎖70には所定高さ位置にストッパ90が固定状態に取り付けられている。
但しこのストッパ90は、小洗浄用の玉鎖70に対する固定位置を上下に調節することが可能である。
ストッパ90は板状の部材であって、その中心部に繋ぎ材40を挿通する挿通孔120と、係合部122とを備えた取付部162を有している。
【0042】
ここでストッパ90は、筒体74が上記のガイド部76の筒部80に下向きに当った状態の下で、筒体74の上端とストッパ90との間の距離が、フロート84の上下寸法よりも一定距離大となるような位置で、小洗浄用の玉鎖70に固定されている。
従ってフロート84は、筒体74の上端とストッパ90との間で小洗浄用の玉鎖70に沿って所定距離上下にスライド移動することができる。
【0043】
図1において、92は洗浄ハンドル94に連結されてタンク10内に延出したレバーアームで、スピンドル部96とレバー部112とを有している。
図5において、98は洗浄ハンドル94及びレバーアーム92をタンク壁18に取り付けるための取付部材で、雄ねじ部100を有しており、そこにナット102がねじ込まれることでタンク壁18に固定されている。
【0044】
レバーアーム92のスピンドル部96は、先端側に角形状の雄嵌合部104と、弾性を有する嵌込部106とを有しており、その雄嵌合部104を洗浄ハンドル94の対応する角形状の雌嵌合部108に嵌合させる状態に、嵌込部106が洗浄ハンドル94に設けられた嵌込孔110に弾性的に嵌め込まれている。
これによりスピンドル部96が、取付部材98の中心の挿通孔を挿通して洗浄ハンドル94に軸方向及び回転方向に固定されている。
ここでスピンドル部96は、タンク内奥部に向って直線状に延びている。
【0045】
スピンドル部96の先端側には、スピンドル部96に対して直角に湾屈曲したレバー部112が一体に設けられている。
ここでレバー部112は縦向き、即ち通常の状態において、垂直下向きに延びている。
尚この実施形態において、図5に示しているようにレバー部112は、ナット102を嵌めてこれを通過させることが可能なサイズである。スピンドル部96もまた同様である。
【0046】
レバー部112は、図6(C)及び図7に示しているように先端側(図中下端側)にヘッド部114を有している。
またヘッド部114は、その上端部に且つスピンドル部96に対する先端側からの正面視において左,右の位置に、大洗浄側の取付部116と、小洗浄側の取付部118とを有している。
そして図8に示しているように取付部116に大洗浄用の玉鎖36が、また取付部118に小洗浄用の玉鎖70が、夫々固定状態に取り付けられている。
【0047】
ここで各取付部116,118は、図6(A),(C)及び図7に示しているように、夫々上記の繋ぎ材40を上下方向に挿通する挿通孔120と、そこに挿通された繋ぎ材40の上側の玉38a(図8参照)と下側の玉38bとに係合する係合部122とを有している。
大洗浄用の玉鎖36及び小洗浄用の玉鎖70の夫々は、繋ぎ材40を挿通孔120に挿通し、上側の玉38aと下側の玉38bとに係合部122を係合させることで各取付部116,118に取り付けられる。
これら取付部116,118に取り付けられた大洗浄用の玉鎖36と小洗浄用の玉鎖70とは、夫々取付部116,118から左,右に分かれて下向きに垂れ下がった状態となる。
【0048】
ヘッド部114は、また、取付部116と118との左右の間の位置において、取付部116,118よりも設定距離下側位置まで垂直下向きに延び出た引上げアーム124を有している。
ここで引上げアーム124は板状のリブにて構成してある。
この引上げアーム124は、大洗浄用の玉鎖36及び小洗浄用の玉鎖70の何れにも固定されておらず、通常時においてそれらに対しフリーの状態にある。
【0049】
そして大洗浄用の玉鎖36,小洗浄用の玉鎖70の夫々は、取付部116,118から引上げアーム124に沿って垂直下向きに垂れ下がった状態にある。
従ってこの状態で洗浄ハンドル94を、図1中右からの正面視において反時計方向に回転させると、これと同方向にスピンドル部96及び引上げアーム124が回転し、引上げアーム124がその先端部124aを、大洗浄用の玉鎖36に引掛けてこれを引き上げる。
【0050】
ここにおいて玉鎖36が直接(空気抜き弁58を介することなく、つまり空気抜き弁58に開弁の力を与えることなく)フラッパ弁22を引き上げて開弁させ、タンク10内の洗浄水を大量排出させて便器の大洗浄を行わせる。
このとき、小洗浄用の玉鎖70は当然ながら引上げアーム124にて引き上げられることはなく、取付部118から垂れ下がったままとなる。
【0051】
逆に洗浄ハンドル94を、図1中右側からの正面視において時計方向に回転させると、今度は同方向に回転する引上げアーム124がその先端部124aを、小洗浄用の玉鎖70に引掛けてこれを引き上げる。
【0052】
本実施形態において、空気抜き弁58をばね60の付勢力に抗して上向きに引き上げて開弁させるのに必要な力は、閉弁状態のフラッパ弁22をタンク10内の洗浄水の圧力に抗して引き上げ、開弁させるのに必要な力よりも小さく設定してあり、従って小洗浄用の玉鎖70が引き上げられると、空気抜き弁58が先ず引き上げられて開弁し、そしてこの空気抜き弁58の開弁を伴ってフラッパ弁22が引き上げられる。
ここにおいてフラッパ弁22が開弁し、タンク内の洗浄水が便器に向けて少量排出され、便器の小洗浄が行われる。
このとき、大洗浄用の玉鎖36は引上げアーム124によって引き上げられることはなく、取付部116から下向きに垂れ下がったままである。
【0053】
ヘッド部114は、更に、図6及び図7に示しているように引上げアーム124に対してスピンドル部96の軸方向の前後の位置で、取付部116,118から引上げアーム124に沿って下向きに延びる、前後に対向した各一対の板状のガイド壁128を有する、大洗浄側の外れ防止部(第2外れ防止部)130と、小洗浄側の外れ防止部(第2外れ防止部)132とを備えている。
【0054】
大洗浄側の外れ防止部130は、大洗浄用の玉鎖36に対するガイド壁128の前後方向の当接作用により、引上げアーム124に沿った垂れ下り位置にある大洗浄用の玉鎖36が、その垂れ下り位置から前後方向に外れ防止する働きを有している。
【0055】
同様に小洗浄側の外れ防止部132もまた、小洗浄用の玉鎖70に対するガイド壁128の前後方向の当接作用により、引上げアーム124に沿った垂れ下り位置から小洗浄用の玉鎖70が前後方向に外れるのを防止する働きを有する。
【0056】
これら外れ防止部130及び132による玉鎖の外れ防止は、次のような意味を有している。
タンクの種類やサイズ等によっては、玉鎖36,70の上端側の取付部116,118への取付位置と、フラッパ弁22側の下端側の位置とが、スピンドル部96の軸方向の前後に一定以上異なる場合がある。
【0057】
この場合、上記のガイド壁128を有する外れ防止部130,132が設けてないと、図10の比較例図に示すように大洗浄用の玉鎖36,小洗浄用の玉鎖70が、それぞれ引上げアーム124に沿った垂れ下り位置から前後方向に外れてしまうことがある。
そのような状態になると、引上げアーム124を回転させても、その先端部124aを玉鎖36,70の予め定めた位置に引掛けて、これを引上げ動作することができなくなってしまう。
そこでここでは、一対のガイド壁128を有する外れ防止部130,132を設けてこれを防止するようになしている。
【0058】
ヘッド部114はまた、引上げアーム124の回転時に垂れ下り側となる玉鎖が取付部から左右方向外方に外れるのを防止する、上記とは別の外れ防止部(第1の外れ防止部)として、大洗浄側の外れ防止部134と、小洗浄側の外れ防止部136とを備えている。
【0059】
ここで外れ防止部134,136は、それぞれ取付部116,118からガイド壁128に沿って湾曲しながら下向きに延びるカバー部138と、取付部116,118の挿通孔120に続いてカバー部138に設けられたスリット140とを有している。
【0060】
ここでカバー部138は、図8に示しているように取付部116,118に取り付けられた、上下に隣接した一対の玉38a,38bのうちの下側の玉38bを内部に収容する状態に、下側の玉38bを左右方向の外方から覆う形状をなしている。
【0061】
尚スリット140は、玉鎖36,70を取付部116,118に取り付けるに当って、図9に示すように玉鎖36,70における繋ぎ材40を、カバー部138を通過して取付部116,118の挿通孔120に持ち来すためのものである。
このときには、図9に示すように下側の玉38bをカバー部138の内側に先ず嵌め入れた状態とし、その状態でスリット140に沿って繋ぎ材40を上側の玉38aとともに取付部118,116側に移動させる。
ここでカバー部138の下端には、繋ぎ材40をスリット140に向けて案内する傾斜形状の案内部144が設けてある。
【0062】
尚、ヘッド部114の上端からは、引上げアーム124に連続して補強用のリブ142がスピンドル部96に向って延びている。
この補強用のリブ142は、引上げアーム124の一部を成していると考えることもできる。
【0063】
次に本実施形態の作用を説明する。
この実施形態において、洗浄ハンドル94が図5に示す中立位置にあるとき、図11(I)に示しているようにフラッパ弁22は閉弁状態にあり、またフロート84は水中に没した位置で浮力によりストッパ90に上向きに当接した状態にある。
またこのとき、フラッパ弁22に設けられている空気室50の内部は空気で満たされている。
【0064】
この状態から洗浄ハンドル94を大洗浄側、つまり上記した反時計方向に回転させると、レバー部112に設けられた引上げアーム124が同方向に回転し、そしてその先端部124aを、大洗浄用の玉鎖36の、取付部116から設定距離下側の部位を引掛けて玉鎖36を一定の所要の距離だけ引き上げる。
このとき大洗浄用の玉鎖36は、図1においてオーバーフロー管24に接近する側に引張られながら引き上げられる。
これにより、図11(II)に示しているようにフラッパ弁22が玉鎖36によって直接持ち上げられ、開弁する。
開弁したフラッパ弁22は(フラッパ弁22は設定した最大開弁位置に到ると図示を省略するフラッパ弁ストッパにて更なる回転が阻止される)、依然として水中に没した状態のフロート84による浮力と,空気チャンバ48による浮力とによって,その後も開弁状態に維持され、タンク10内の洗浄水が排水口20から便器に向けて排出される。
【0065】
タンク10内の洗浄水の排出に伴って、タンク内の水位Wは降下していく。
そして図12(III)に示しているように、水位Wがフロート84の上端から一定距離下側位置まで下がったところで、フロート84に作用する浮力とフロート84自体の重力とがバランスした状態となり、その後フロート84は水位Wの降下に連れて玉鎖70に沿って下向きに移動して行く。
【0066】
尚このとき、空気チャンバ48の内部の空気室50は依然として空気で満たされた状態にあり、従って空気チャンバ48に対しては引き続き浮力が作用しており、図12(IV)に示すようにフロート84が水位Wの降下に連動して下向きに移動しても、フラッパ弁22は依然として開弁状態に保持されている。
従って図12(IV)に示しているように、フロート84はストッパ90から離れて単独で小洗浄側の玉鎖70に沿って下向きに移動していく。
【0067】
単独で下向きに移動したフロート84は、ストッパ90から離れて一定距離下がったところで、図13(V)に示しているように筒体74の上端に当接するに到る。
この状態から水位Wが更に降下すると、フロート84に対する浮力はますます減少し、これに伴ってフロート84の重みが筒体74にかかり、且つ水位Wの降下に伴って筒体74に加わる重みが増大していく。
【0068】
即ち筒体74をフロート84が下向きに押す力が漸次増大していく。
そしてその下向きの力が、空気チャンバ48に対する浮力よりも打ち勝つに到ると、フラッパ弁22が開弁状態を維持できなくなって、その後は水位Wの降下に伴ってフラッパ弁22が閉弁開始し、最終的にフラッパ弁22が完全閉弁状態となる。
ここにおいて排水口20からの洗浄水の放出が停止する。
【0069】
一方洗浄ハンドル94を大洗浄時とは逆の小洗浄側、つまり上記の時計方向に回転させると、今度はレバー部112の引上げアーム124がその先端部124aを、小洗浄用の玉鎖70に引掛けて、詳しくは小洗浄用の玉鎖70の、取付部118から設定距離下側の部位に引掛けて、玉鎖70を一定の所要距離だけ引き上げる。
このときには小洗浄用の玉鎖70は、図1においてオーバーフロー管24から離れる側に引張られながら上向きに引き上げられる。
【0070】
このとき、フラッパ弁22が閉弁した状態の下で先ず切替機構46の空気抜き弁58が、ばね60の付勢力に抗して上向きに引き上げられて開弁する。
すると空気室50の上端の開口57が開放状態となって、流入口72を通じ空気室50にタンク10内の水が流入して、空気室50を水で埋める。
【0071】
上向きに引き上げられた空気抜き弁58が、ハウジング47の上壁部82に当ると、小洗浄用の玉鎖70による引上げ力がフラッパ弁22自体に及ぼされ、ここにおいてフラッパ弁22が開弁動作する。
このとき、弁座44から離れたフラッパ弁22は速やかにばね60の付勢力で空気抜き弁58に対し相対的に上向き移動する。即ち一旦開弁した空気抜き弁58が、その後速やかにもとの閉弁状態に戻る。
そしてその状態でフラッパ弁22が小洗浄用の玉鎖70により引き上げられ、その後最大開弁状態となる(図14(I)参照)。
【0072】
フラッパ弁22の開弁によって、タンク10内の洗浄水は排出され、水位Wはその排出に伴って降下していく。
そして図14(II)に示すようにフロート84の頭が僅かに水面から露出した位置となると、そこでフロート84に対する浮力とフロート84に対して下向きに加わる力とが釣り合った状態となり(大洗浄時と異なって、小洗浄時には空気チャンバ48に対して浮力は働いていない)、その後は水位Wの降下と一緒にフロート84が降下即ち下向きに移動し、これに伴ってフラッパ弁22は弁開度を漸次少なくしていき、そして図15(III)に示すように最終的に弁座44に着座して完全閉弁状態となる。
【0073】
この間、空気チャンバ48に対して浮力は働いていないため、フロート84はストッパ90に当った状態を維持したまま、即ち筒体74との間に一定の距離を隔てた状態を維持したまま、水位Wの降下と一緒に下向きに移動していく。
そのためにこの小洗浄時においては、フラッパ弁22が完全開弁してから閉弁開始するまでの時間が短く、即ち大洗浄時に較べて早い段階で閉弁開始し、閉弁状態に到る。
そのため、小洗浄時においては洗浄水の排出水量が少なく、少ない水量で便器洗浄(小洗浄)を行う。
【0074】
以上の本実施形態によれば、必要なフロートが1つで足り、タンク10内でフロート84が占めるスペースを小スペース化することができる。
本実施形態では、レバーアーム92の一方向(反時計方向)の回転により、レバーアーム92から垂れ下った大洗浄用の玉鎖36にて、空気抜き弁58に開弁の力を与えることなくフラッパ弁22を直接引き上げて開弁させることで、フラッパ弁22に設けた空気室50にて浮力を発生させ、これを第2のフロートとして働かせる。
この状態の下ではフラッパ弁22が閉じるまでの時間を長くすることができ、タンク10内洗浄水を多く排出して大洗浄を行うことができる。
【0075】
一方レバーアーム92を他方向(時計方向)に回転させたときには、小洗浄用の玉鎖70の引上げによって、フラッパ弁22が開く前に先ず空気抜き弁58が開弁し、そしてその空気抜き弁58の開弁を伴ってその後にフラッパ弁22が開弁する。
この場合には、フラッパ弁22に設けた空気室50にはタンク10内の水が流入し、空気室50は第2のフロートとしての働きを消失し、玉鎖70に取り付けたフロート84のみが浮力を発生させるため、フラッパ弁22が開弁後に早く閉じることとなり、タンク10から排出される洗浄水の水量は少なくなる。即ちこのときには小洗浄が行われる。
かかる本実施形態では、玉鎖の引上げの操作量の大小によらずに、レバーアーム92の回転方向の違いによって、使用者の意図した通りに大洗浄と小洗浄とを安定して行うことができる。
【0076】
本実施形態では、空気抜き弁58を下向きの閉弁方向に付勢するばね60が設けてあるため、小洗浄時において玉鎖70による引上げ操作を終了した時点では、ばね60によって空気抜き弁58が自動的に閉じた状態にあるため、フラッパ弁22が閉弁した後の止水不良を防ぐことができる。
また大洗浄時においては、空気室50内の空気が空気抜き弁58を押し上げて漏出するのを防ぐことができ、これにより空気室50に働く浮力が安定し、大洗浄時において一定の安定した水量で洗浄水を排出することが可能となる。
【0077】
本実施形態ではまた、空気室50をフラッパ弁22の下部に設けてあるため、空気室50をタンク外に配置することができ、洗浄タンク10の小型化を図ることができる。
【0078】
図16は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、引上げ材として玉鎖351本だけとして、これを空気抜き弁58に接続し、そして玉鎖35にフロート84を取り付けた例である(図16ではフロート84は図示省略してある)。
この例では、洗浄ハンドル94を大洗浄側に回転操作したときには空気抜き弁58をロック状態として開弁阻止する一方、洗浄ハンドル94を小洗浄側に回転操作したときには空気抜き弁58の開弁を許容するロック機構164が設けてある。
【0079】
ここで空気抜き弁58を開弁許容状態と開弁阻止状態とに切り替えるロック機構164は、空気抜き弁58の軸部66に設けられた、上向きに尖った形状の突起166と、ハウジング47側に設けられた溝168と、突起166を上向きに当接させて突起166、つまり空気抜き弁58を上向きに移動阻止する当接部170とを備えている。
【0080】
この例では、洗浄ハンドル94を大洗浄側に回転操作すると、図16(B)に示しているように突起166が当接部170に当接し、空気抜き弁58がロック状態となって開弁阻止される。
従ってこのときには、空気抜き弁58に開弁の力が与えられることなくフラッパ弁22が開弁する。
このとき空気室50には空気が保持されたままであり、空気チャンバ48には浮力が働く。
【0081】
他方、洗浄ハンドル94を小洗浄側に回転操作すると、このときには図16(A)に示しているように、玉鎖35がオーバーフロー管24から離れる側に引張られながら引き上げられるため、軸部66の突起166が溝168の側に入り込んで、溝に沿って上向きに相対移動する。
即ちこのときには空気抜き弁58が開弁動作し、そして空気抜き弁58の開弁を伴って、フラッパ弁22が開弁動作する。
このときには空気室50にタンク内の水が流入して空気室50が水で埋まった状態となり、空気チャンバ48への浮力は消失する。
従ってこの状態の下でのフラッパ弁22の開弁及び閉弁により小洗浄が行われる。
この実施形態においても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0082】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は筒体74を省略して、フロート84を玉鎖70に固定状態とした形態でタンク内洗浄水の排出装置を構成することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 洗浄タンク
16 底部
20 排水口
22 フラッパ弁
35,36,70 玉鎖
50 空気室
58 空気抜き弁
60 ばね
84 フロート
92 レバーアーム
164 ロック機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄タンクの内部に貯溜された洗浄水を、タンク底部の排水口より便器に向けて排出させるタンク内洗浄水の排出装置であって、
(a)前記排水口を開閉するフラッパ弁と、
(b)前記タンクの内部に延出したレバーアームと、
(c)前記フラッパ弁に設けられ、内部に空気を保持する空気室と、
(d)該空気室を開閉する弁であって、上側への引上げ力で開弁し、該空気室の空気を抜いて該空気室内にタンク内の水を流入させる空気抜き弁と、
(e)前記レバーアームから垂れ下り、該レバーアームの一方向の回転により、前記空気抜き弁に開弁の力を与えることなく前記フラッパ弁を引き上げて開弁させ、他方向の回転により該空気抜き弁を開弁許容状態で該空気抜き弁を介して該フラッパ弁を引き上げて開弁させる引上げ材と、
(f)該引上げ材に取り付けられたフロートと、
を有しており、前記他方向の回転時に前記引上げ材にて前記空気抜き弁を開弁させるのに必要な力が、前記フラッパ弁を開弁させるのに必要な力よりも小さく、該空気抜き弁の開弁を伴って該フラッパ弁を引き上げるようになしてあることを特徴とするタンク内洗浄水の排出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記空気抜き弁を下向きの閉弁方向に付勢する弾性を有する付勢部材が設けてあることを特徴とするタンク内洗浄水の排出装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記引上げ材が、前記フラッパ弁に直接接続された第1引上げ材と、前記空気抜き弁に接続され、前記フロートの取り付けられた第2引上げ材とを含んでいることを特徴とするタンク内洗浄水の排出装置。
【請求項4】
請求項1,2の何れかにおいて、前記引上げ材を1本となして、該引上げ材に前記フロートを取り付けるとともに、該引上げ材を前記空気抜き弁に接続し、前記レバーアームの前記他方向の回転時には前記空気抜き弁の開弁を許容する一方、前記一方向の回転時には該空気抜き弁をロック状態として開弁阻止するロック機構を設けてあることを特徴とするタンク内洗浄水の排出装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記空気室が前記フラッパ弁の下部に設けてあることを特徴とするタンク内洗浄水の排出装置。
【請求項1】
洗浄タンクの内部に貯溜された洗浄水を、タンク底部の排水口より便器に向けて排出させるタンク内洗浄水の排出装置であって、
(a)前記排水口を開閉するフラッパ弁と、
(b)前記タンクの内部に延出したレバーアームと、
(c)前記フラッパ弁に設けられ、内部に空気を保持する空気室と、
(d)該空気室を開閉する弁であって、上側への引上げ力で開弁し、該空気室の空気を抜いて該空気室内にタンク内の水を流入させる空気抜き弁と、
(e)前記レバーアームから垂れ下り、該レバーアームの一方向の回転により、前記空気抜き弁に開弁の力を与えることなく前記フラッパ弁を引き上げて開弁させ、他方向の回転により該空気抜き弁を開弁許容状態で該空気抜き弁を介して該フラッパ弁を引き上げて開弁させる引上げ材と、
(f)該引上げ材に取り付けられたフロートと、
を有しており、前記他方向の回転時に前記引上げ材にて前記空気抜き弁を開弁させるのに必要な力が、前記フラッパ弁を開弁させるのに必要な力よりも小さく、該空気抜き弁の開弁を伴って該フラッパ弁を引き上げるようになしてあることを特徴とするタンク内洗浄水の排出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記空気抜き弁を下向きの閉弁方向に付勢する弾性を有する付勢部材が設けてあることを特徴とするタンク内洗浄水の排出装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記引上げ材が、前記フラッパ弁に直接接続された第1引上げ材と、前記空気抜き弁に接続され、前記フロートの取り付けられた第2引上げ材とを含んでいることを特徴とするタンク内洗浄水の排出装置。
【請求項4】
請求項1,2の何れかにおいて、前記引上げ材を1本となして、該引上げ材に前記フロートを取り付けるとともに、該引上げ材を前記空気抜き弁に接続し、前記レバーアームの前記他方向の回転時には前記空気抜き弁の開弁を許容する一方、前記一方向の回転時には該空気抜き弁をロック状態として開弁阻止するロック機構を設けてあることを特徴とするタンク内洗浄水の排出装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記空気室が前記フラッパ弁の下部に設けてあることを特徴とするタンク内洗浄水の排出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−162924(P2012−162924A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24445(P2011−24445)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】
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