説明

タンク内給水装置

【課題】ボールタップ装置における給水弁の1次側からの水を流動弁の開弁により洗浄タンク内に給水する場合において、給水による着水音を小さくして騒音を低減することのできるタンク内給水装置を提供する。
【解決手段】ボールタップ装置22及び、ボールタップ装置22の給水弁58の1次側から分岐して延び出した流動水路102とこれを開閉する流動弁110とを備え、流動弁110の開弁により1次側の水を流動水路102の末端の流動水吐水口106から洗浄タンク10内に吐水する流動弁装置100を備えて成るタンク内給水装置において、流動水吐水口106から径方向に離隔した位置でこれを外側から覆い、流動水吐水口106から吐水された流動水に当ってその流れを筒壁104の外面に向け、筒壁104の外面を伝って流下させるカバー壁192を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は便器洗浄用の洗浄タンク内に給水を行うタンク内給水装置に関し、詳しくはボールタップ装置と流動弁装置とを備えて成るタンク内給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器の洗浄水を内部に貯える洗浄タンクへの給水装置として、給水弁を備えたボールタップ本体と、洗浄タンク内の洗浄水の水位に連動して昇降するフロートと、フロートと給水弁とを連繋する連繋アームとを備え、フロートの下降により給水弁を開いて洗浄タンク内に給水を行い、洗浄タンク内の洗浄水が設定した満水状態となったとき、フロートの上昇により給水弁を閉じて給水停止するボールタップ装置を備えたものが広く用いられている。
【0003】
ところで、寒冷地においては配管内や便器のトラップ部の水が凍結を起す問題があり、そこで寒冷地に用いられるタンク内給水装置としては、小量で水を連続的に流して便器に給水する流動弁を備えたものが用いられている。
【0004】
例えば下記特許文献1には、洗浄タンク内に貯溜されている洗浄水中に水没する状態で、洗浄水をタンク底部の排水弁の下流部位に導くホースを設けて、そのホースに流動弁を取り付け、流動弁の開弁により洗浄タンク内の洗浄水を連続的に便器に向けて小量で連続供給するようになしたものが開示されている。
【0005】
このタンク内給水装置では、流動弁を経由して洗浄水が流れ、洗浄タンク内の洗浄水が減少して水位が所定水位まで下がると、ボールタップ装置が給水弁を開いて洗浄タンク内に給水を行う。そしてその給水により洗浄タンク内の洗浄水が満水状態になると、そこで給水弁を閉じて給水停止する。そしてこれを間欠的に繰り返し行って減少したタンク内洗浄水を補給する。
このため給水弁を開いて多量の水を一度に洗浄タンク内に給水するごとに大きな音が発生し、これが騒音となってしまう問題を生ずる。
【0006】
これに対し、ボールタップ装置の給水弁の1次側から流動水路を分岐して延び出させて、その流動水路に流動弁を設け、流動弁の開弁により1次側の水を連続的に小量で洗浄タンク内に給水し、そして給水した水をタンク内のオーバーフロー管を通じて便器に連続的に給水することも行われている。
【0007】
例えば下記特許文献2に、この種給水方式のタンク内給水装置が開示されている。
この特許文献2に開示のタンク内給水装置では、ボールタップ装置における給水弁の1次側の水を便器に連続供給するため、即ち洗浄タンク内の洗浄水は便器への給水によって減少しないために、ボールタップ装置の給水弁が間欠的に給水及び給水停止を繰り返すことはなく、従ってその際に騒音を発生する問題は生じない。
【0008】
しかしながら一方で、流動水路の末端の流動水吐水口から吐水された水は洗浄タンク内に貯えられている洗浄水の水面に給水されるため、その際に着水音が発生して、これが騒音になってしまうといった問題を生ずる。
しかも流動水は連続して洗浄タンク内の水面に落下し続けるため着水音が連続的に発生してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−324060号公報
【特許文献2】特開2005−213906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上のような事情を背景とし、ボールタップ装置における給水弁の1次側からの水を流動弁の開弁により洗浄タンク内に給水する場合において、流動弁を経て流動吐水口から吐水された水が洗浄タンク内の洗浄水に給水される際の着水音を可及的に小さくし、その際に発生する騒音を低減することのできるタンク内給水装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
而して請求項1のものは、(A)給水弁を備えたボールタップ本体と、洗浄タンク内の洗浄水の水位に連動して昇降するフロートと、該フロートと該給水弁とを連繋する連繋アームとを備え、該フロートの下降により該給水弁を開いて洗浄タンク内に給水を行い、該洗浄タンク内の洗浄水が設定した満水状態となったとき、前記フロートの上昇により前記給水弁を閉じて給水停止させるボールタップ装置、及び(B)前記給水弁の1次側から分岐して延び出した流動水路と、該流動水路を開閉する流動弁とを備え、該流動弁の開弁により該1次側の水を該流動水路の末端の流動水吐水口から前記洗浄タンク内に吐水する流動弁装置を備えて成るタンク内給水装置において、前記ボールタップ本体には、内側に前記流動水路を形成するための筒壁を上向きに起立状態に具備させて、該筒壁に且つ該筒壁における付根位置よりも上側位置に前記流動水吐水口を該筒壁を貫通して横向きに設けるとともに、該流動水吐水口から径方向に離隔した位置で該流動水吐水口を外側から覆い、該流動水吐水口から吐水された流動水に当って該流動水を下向きの流れとし且つ少なくとも一部を前記筒壁の外面に向う流れとして該流動水を該筒壁の外面を伝って流下させるカバー壁を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2のものは、請求項1において、前記流動弁装置の操作部が、可撓性且つ非伸縮性の長尺のインナ部材及び該インナ部材を移動案内するアウタチューブを有する操作力の伝達部材を備えた遠隔操作式のもので、該伝達部材の先端側が組付ナットにて前記流動弁に組み付けられており、前記カバー壁が該組付ナットに一体に構成してあることを特徴とする。
【0013】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記連繋アームは、前記ボールタップ本体の前記筒壁とは反対側の下側部位から延出していることを特徴とする。
【0014】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記ボールタップ本体には、前記流動水吐水口の下側位置で前記カバー壁よりも径方向外側まで突出し、該カバー壁にて下向きの流れとされた前記流動水を該下側位置で受ける水受部が設けてあることを特徴とする。
【0015】
請求項5のものは、請求項4において、前記水受部の少なくとも一部が、前記連繋アームを前記ボールタップ本体に固定する固定ナットであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0016】
以上のように本発明は、内側に流動水路を形成するための筒壁を上向きに起立状態にボールタップ本体に具備させて、その筒壁に流動水吐水口を横向きに設けるとともに、流動水吐水口から径方向に離隔した位置で流動水吐水口を外側から覆い、流動水吐水口から吐出された流動水に当って流動水を下向きの流れとし且つ少なくとも一部を筒壁の外面に向う流れとしてこれを筒壁の外面を伝って流下させるカバー壁を設けたものである。
【0017】
上記のカバー壁を設けていない場合、横向きをなす流動水吐水口から吐水された流動水は、特にその流動水吐水口が小さいときには勢い良く横向きに吐水された後放物線を描いて洗浄タンク内の洗浄水の水面に落下する。そのときの大きな着水音を生じてしまう。
【0018】
しかるに本発明のタンク内給水装置にあっては、流動水吐水口に対向するようにして、これを外側から覆うカバー壁が設けてあるため、流動水吐水口から吐水された流動水は一旦そのカバー壁に当り、その後下向きに流れの向きを変えつつカバー壁に当った反力で筒壁の外面側に戻され、以後その筒壁の外面を伝って下向きに流下する。
【0019】
これにより、流動水吐水口から吐水された流動水の全体を洗浄タンク内の洗浄水の水面に直接落下させた場合に比べて、流動水による着水音を効果的に低減することができる。
尚、流動水吐水口から吐水された流動水の全体を筒壁の外面を伝って流下させたときに最も効果的に着水音を低減できるが、場合によって流動水吐水口から吐出された流動水の一部が、カバー壁に当った後に筒壁の外面を伝わずにそのまま下向きに落下する場合も生じ得る。
但しこの場合においても、流動水吐水口から吐水された流動水の全体がそのまま直接水面に落下する場合に比べて着水音は小さくなる。
【0020】
本発明では、流動弁装置の操作部を、可撓性且つ非伸縮性の長尺のインナ部材及びインナ部材を移動案内するアウタチューブを有する操作力の伝達部材を備えた遠隔操作式のものとなして、その伝達部材の先端側を流動弁に組み付ける組付ナットに、上記のカバー壁を一体に構成しておくことができる(請求項2)。
このようにすることで、装置の所要部品点数を少なくすることができ、装置コストを低減することができる。
【0021】
本発明では、上記ボールタップ装置における連繋アームを、ボールタップ本体の上記筒壁とは反対側の下側部位から延出させておくことができる(請求項3)。
このようにしておけば、ボールタップ本体の上記の筒壁を伝って流下した水を、更にボールタップ装置における連繋アーム及び連繋アームに取り付けられているフロートを伝って流下させることができ、流動水吐水口から吐水された水を、洗浄タンク内の洗浄水の水面に静かに流入させることができ、流動水の着水音をより一層効果高く低減でき、静粛性を高めることができる。
【0022】
本発明では、上記流動水吐水口の下側位置でカバー壁よりも径方向外側まで突出し、カバー壁にて下向きの流れとされた流動水を下位置で受ける水受部をボールタップ本体に設けておくことができる(請求項4)。
【0023】
このようにしておけば、流動水吐水口から吐水された水がたとえ筒壁の外面を伝って流れずに、そのまま落下した場合であっても、その落下した水が直接タンク内の洗浄水の水面に落下せず、一旦水受部で受けられてそこで勢いが殺されるため、その後に水受部で受けた水が水面に落下することがあっても着水音を小さくすることができる。
またその水受部はボールタップ本体に設けてあるため、水受部で受けた水を、ボールタップ本体を更に伝って下向きに流すことができ、着水音をより一層低減できる。
【0024】
この場合において、水受部の少なくとも一部を、上記連繋アームをボールタップ本体に固定するための固定ナットにて構成しておくことができる(請求項5)。
このような固定ナットを水受部の少なくとも一部とすることで、ボールタップ装置に備えられている部品を、着水音低減のための部材として有効に活用することができるとともに、水受部で受けた水をボールタップ装置における連繋アームへと円滑に案内でき、かかる連繋アームを伝って流動水を流下させるようになすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態であるタンク内給水装置を洗浄タンクの内部構造とともに示した図である。
【図2】同実施形態のタンク内給水装置を示した図である。
【図3】同実施形態におけるボールタップ装置の給水弁と周辺部を示した図である。
【図4】図3の給水弁を閉弁状態と開弁状態とで示した図である。
【図5】同実施形態のタンク内給水装置の要部を拡大して示した図である。
【図6】同実施形態における流動弁装置の操作部の要部を示した図である。
【図7】同実施形態の要部を図5とは異なる方向から示した図である。
【図8】同実施形態の作用説明図である。
【図9】同実施形態の利点を比較例と比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗浄タンクで樹脂製のアウタタンク12と、その内側の樹脂製のインナタンク14との2重タンク構造をなしている。
アウタタンク12の上部には、その蓋を兼用した樹脂製の手洗鉢16が設けられており、この手洗鉢16から起立する形態で手洗吐水管18が手洗鉢16に設けられている。
手洗鉢16の底部には排水口20が設けられており、手洗吐水管18から吐水された手洗水が、この排水口20から洗浄タンク10内部へと落下する。
【0027】
22は、洗浄タンク10内部に配設されたボールタップ装置で、ボールタップ本体24を有しており、そのボールタップ本体24がインナタンク14に取り付けられ、そしてそのボールタップ本体24に対して給水管26が接続されている。
給水管26を通じて供給された水は、ボールタップ装置22の後述の図2に示す給水弁58の開弁によって洗浄タンク10内部に給水され、また給水弁58の閉弁によって給水停止される。
【0028】
ボールタップ装置22は、洗浄タンク10内部の洗浄水の水位に連動して昇降するフロート28と、フロート28と給水弁58とを連繋する連繋アーム30とを有している(フロート28及び連繋アーム30は何れも樹脂製)。
また連繋アーム30は、アーム部32と、その先端から下向きに延びる軸部34とを有しており、その軸部34に対してフロート28が組み付けられている。
【0029】
洗浄タンク10の壁部には、洗浄ハンドル36が回転可能に設けられている。
38は、洗浄タンク10内部において洗浄ハンドル36に連動して回動する、L字状をなす作用レバーで、その先端が鎖40を介して図示を省略する排水弁に連結されている。
その排水弁は、洗浄ハンドル36の回転操作によって閉弁状態から開弁させられ、これにより洗浄タンク10内部に貯えられている洗浄水が、洗浄タンク10底部の排出口から便器に向けて勢い良く排出せしめられる。
【0030】
図2において、44はボールタップ本体24の本体ボデーで全体として筒状をなしている。
この本体ボデー44の図2中左端部には図1の給水管26が接続され、また右端部には、本体ボデー44とは別体をなし且つボールタップ本体24の一部を成す筒状のソケット状の分岐管46の左端部が外嵌状態に接続されている。
更にこの分岐管46の図中右端部には、補給水管48が接続されている。
補給水管48は便器に補給水を供給するためのもので、図1に示しているようにその先端側がアダプタを介して洗浄タンク10内部のオーバーフロー管42に組み付けられ、補給水管48からの補給水がオーバーフロー管42内に流入するようになっている。
この実施形態において、補給水管48はゴムチューブから成っている。
【0031】
分岐管46には、本体ボデー44からの水を洗浄タンク、具体的にはインナタンク14内に吐水する筒状のタンク内吐水口50と、図1の手洗吐水管18に向けて供給するための筒状の手洗用給水口52とが斜め下向きに一体に設けられている。
この実施形態では、手洗用給水口52に対して、本体ボデー44からの水を図1に示す手洗吐水管18に導くための導水管54の一端側が接続されている。
ここで導水管54は蛇腹管から成っており、その先端側が手洗吐水管18に接続されている。
【0032】
尚、洗浄タンク10には図1の洗浄タンク10のように手洗吐水管18を備えたものと、手洗吐水管18を備えていないものとがあり、而して洗浄タンク10が手洗吐水管18を備えていない場合には、手洗用給水口52に対して導水管54を接続しないで手洗用給水口52をそのまま開放しておく。
【0033】
即ちこの実施形態では、手洗吐水管18を備えている場合には手洗用給水口52に導水管54を接続し、また手洗吐水管18を備えていない場合には手洗用給水口52に導水管54を接続せず、手洗用給水口52をそのまま開放状態としておくことで、手洗吐水管18有りのものと無しのものとに対して容易に対応することができる。
【0034】
而して手洗用給水口52をそのまま開放しておく場合には、本体ボデー44からの水はタンク内吐水口50と手洗用給水口52との両方とから洗浄タンク10内に吐水される。
この場合には、手洗用給水口52が洗浄タンク内に水を吐水する第2のタンク内吐水口となる。
【0035】
図2に示しているように、ボールタップ本体24には水路56を連通及び連通遮断する給水弁58が設けられている。この給水弁58は、フロート28の昇降に伴って連繋アーム30が軸60周りに回動することで開弁及び閉弁せしめられる。
具体的には、フロート28の上昇により連繋アーム30が軸60周りに反時計回りに回動することで、給水弁58が閉弁せしめられ、またフロート28の下降に伴って連繋アーム30が軸60周りに図中時計回りに回動運動することで、給水弁58が開弁せしめられる。
【0036】
而して給水弁58が開弁すると水路56が連通状態即ち開放状態となって、給水管26からの水が本体ボデー44から分岐管46へと流れ込み、そしてその分岐管46のタンク内吐水口50から洗浄タンク10内に向けて吐水され、また手洗用給水口52を通じて手洗吐水管18に(手洗吐水管18がある場合)、或いは手洗用給水口52を通じて洗浄タンク10内に吐水される(手洗吐水管18を備えていない場合)。
また分岐管46に流れ込んだ水が、更に補給水管48を通じてオーバーフロー管42から便器へと流れ込み、便器に対して補給水が供給される。
【0037】
本実施形態において、給水弁58はダイヤフラム式且つパイロット式の弁とされている。
図3に、その構成が具体的に示してある。
図3において、62は給水弁58における主弁体でダイヤフラム弁体から成っている。
この主弁体62は、ゴム等の弾性材から成るダイヤフラム膜66と、これよりも硬質の(ここでは樹脂製)ダイヤフラムホルダ68とから成っている。
【0038】
ダイヤフラム膜66は外周部70が厚肉とされており、この外周部70が、本体ボデー44とカップ状をなすダイヤフラム押え72とによって上下に挟持されている。そしてそれらによる挟持によってダイヤフラム膜66の外周部70が、本体ボデー44に固定されている。
ここでダイヤフラム膜66の外周部70は同時にシール部としての働き、即ち水路56と外部とを水密に遮断し、シールする働きをなしている。
【0039】
このカップ状をなすダイヤフラム押え72は、本体ボデー44に一体に構成された円筒部74に対して、図中下側から上向きに内嵌状態に嵌入せしめられ、そして円筒部74の外周面の雄ねじ76に対して、固定ナット80の内周面の雌ねじ78が螺合されることによって、ダイヤフラム押え72が円筒部74に即ち本体ボデー44に固定されている。
【0040】
即ちこの実施形態では、固定ナット80を図中上向きにねじ込むことで、円筒部74に内嵌状態に嵌入されたダイヤフラム押え72が上向きに押し上げられて、かかるダイヤフラム押え72が本体ボデー44と協働してダイヤフラム膜66の外周部70を所定の締代で弾性圧縮状態に締め付ける構造となっている。
【0041】
カップ状をなすダイヤフラム押え72は、背圧室形成部材としての働きも有しており、ダイヤフラム弁体から成る主弁体62の図中下側の背後に背圧室82を形成している。
この背圧室82は内部の圧力を主弁体62に対して図中上向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0042】
一方、主弁体62には中心から偏心した位置において、水路56における1次側と背圧室82とを連通させる貫通の導入小孔84が設けられている。
この導入小孔84は、水路56における1次側の水を背圧室82に流入させて背圧室82の圧力を増大させる働きをなす。
【0043】
一方、ダイヤフラム押え72にはその中心部にこれを貫通する水抜水路としてのパイロット水路86が設けられている。
このパイロット水路86は、背圧室82内の水を抜いて背圧室82の圧力を減少させる働きをなす。
【0044】
上記連繋アーム30のアーム部32の基端部にはパイロット弁体88が設けられ、このパイロット弁体88のシール部90がパイロット弁座92に上向きに着座することでパイロット水路86が閉鎖される。
【0045】
この実施形態において、給水弁58は次のように作用する。
即ち、図4(A)に示すように給水弁58が閉弁状態の下で、図2のフロート28の下降により連繋アーム30が軸60周りに回動してパイロット弁体88がパイロット弁座92から図中下向きに離間し開弁すると、図3の背圧室82内の水がパイロット水路86を通じて流出し、背圧室82の圧力が減少する。
すると水路56における1次側の圧力が背圧室82の圧力に打ち勝つに到って、主弁体62が図3(A)及び図4(A)に示す状態から下向きに離間し開弁する。
【0046】
そして主弁体62が開弁することで水路56が連通状態となり、本体ボデー44から図2の分岐管46及び補給水管48に向けて水が流れ込む。
ここにおいてタンク内吐水口50,手洗用給水口52から水が吐出され、更に補給水管48を通じてオーバーフロー管42から便器内に補給水が供給される。
【0047】
一方、フロート28の上昇に連動して連繋アーム30が図2の軸60周りに反時計回りに回動運動すると、フロート28が上昇端に到ったところで、即ち洗浄タンク内の水が設定した満水状態になったところでパイロット弁体88のシール部90がパイロット弁座92に上向きに着座して閉弁し、ここにおいて背圧室82からの水の流出が停止する。
【0048】
すると導入小孔84を通じての背圧室82への水の流入により背圧室82の圧力が上昇し、そしてその圧力上昇によってダイヤフラム弁から成る主弁体62が主弁座64に上向きに着座し、閉弁する。
ここにおいて水路56の水の流れが停止し、洗浄タンク10及び手洗吐水管18への給水が停止する。
【0049】
図3(A)及び図4に示しているように、背圧室82の内部には金属製のコイルばね95が設けられている。
コイルばね95は、その上端を主弁体62に当接させ、またその下端をダイヤフラム押え72の底部に当接させている。
【0050】
コイルばね95の図中下端からは上向きにクリーニングピン97が延び出しており、このクリーニングピン97が、主弁体62における上記の導入小孔84を挿通して上向きに突き出している。
このクリーニングピン97は、主弁体62が図3及び図4中上下に移動する際に導入小孔84内を相対摺動運動して、導入小孔84内に微細なゴミや異物が詰まるのを防止する働きを有している。
この実施形態において、クリーニングピン97はコイルばね95の下端から図中上向きにストレート形状で延びた後、主弁体62の上側で僅かに折り曲げられている。図中98はその折曲部を表している。
【0051】
図5において、100は本実施形態のタンク内給水装置における流動弁装置で、水路56における給水弁58よりも上流側の1次側から分岐して延び出す流動水路102と、これを内側に形成するための円筒状の筒壁104を有している。図7において、108はその流動水路102の分岐口を表している。
ここで筒壁104は、上向きに起立する形態でボールタップ本体24、詳しくは本体ボデー44に一体に構成されている。
【0052】
図7において、106は流動水路102の末端の流動水吐水口で、筒壁104の付根よりも所定距離上側位置で、筒壁104を貫通して横向き(径方向外向き)に設けられている。
流動水路102に導かれた1次側の水は、後述の流動弁110の開弁により、この流動水吐水口106から小量で連続して洗浄タンク10内に供給される。
供給された流動水は洗浄タンク10内のオーバーフロー管42を通じて便器へと連続的に給水される。
【0053】
筒壁104の内部には、流動水路102を開閉する流動弁110が設けられている。
流動弁110は、円筒形状の弁ハウジング112と、軸状の弁体114とを有しており、その弁ハウジング112が、筒壁104の内部に嵌合状態に固定されている。
またこの弁ハウジング112の内部に、弁体114が軸方向(上下方向)に摺動可能に嵌合されている。
【0054】
ここで弁ハウジング112と筒壁104との間はOリング116にて水密にシールされ、また弁体114と弁ハウジング112との間はOリング118にて水密にシールされている。
尚、弁ハウジング112の下端部の内側には、流動水路102に流入する1次側の水の流れを定流量化する定流量弁120が設けられている。
【0055】
この流動弁110における弁ハウジング112の外面と筒壁104の外面とには、それぞれ係合溝132,134が設けられており、それら係合溝132,134にまたがって平面形状が略U字状をなす固定クリップ136が嵌め込まれている。
弁ハウジング112は、この固定クリップ136により筒壁104に対し軸方向(上下方向)に固定されている。
【0056】
軸状をなす弁体114は下端側に弁部122を、上端側に連結部124を有し、その連結部124に対して後述の操作部138における伝達部材142の先端部、詳しくはインナケーブル144の先端部が連結されている。
図中130は、その下端側の弁部122と上端側の連結部124との間の中間部を表しており、この中間部130は横断面形状が十字状をなしている。
【0057】
下端側の弁部122は、円環状のシール部材126を有している。
弁部122は、このシール部材126を弁ハウジング112の内周側に形成された弁座128に水密に嵌合させることで閉弁する。
また一方、弁体114が図中下向きに前進移動し、シール部材126が弁座128から下向きに離間することで開弁する。その開弁状態において流動水路102が開放され、水路56における1次側から流動水路102に流入した水(流動水)が上記の流動水吐水口106から外部に吐水される。
【0058】
図5において、138は流動弁装置100における操作部で、この操作部138は、図6に示しているように操作力の入力部となる回転式の摘み140と、加えられた操作力を流動弁110に、詳しくは弁体114に伝達して、これを図5,図6中上下方向に進退移動させる伝達部材142とを有している。
【0059】
伝達部材142は、可撓性を有し且つ軸方向に非伸縮性のインナケーブル(インナ部材)144と、これを移動案内するアウタケーブル(アウタチューブ)146とを有しており、そのアウタケーブル146内部にインナケーブル144が摺動可能に挿通されている。
【0060】
図6において、148は摘み140を保持する保持筒でフランジ部150を有しており、そのフランジ部150と、保持筒148の先端部の雄ねじ部152に螺合されたナット154とで、リング状の中間部材156を介しタンク12の側壁12Wを内外両側から挟み付ける状態に、タンク12の側壁12Wに固定されている。
この保持筒148は内周面に雌ねじ158を有し、また一方摘み140の外周には雄ねじ160が設けられていて、それらが螺合されている。
摘み140は、回転によりねじ送りで図6中左右方向に前進後退移動せしめられる。
【0061】
上記インナケーブル144の図中左端部には、大径の端部材162が固定されており、この端部材162が摘み140の図中右側の端面に当接せしめられている。
164は、摘み140とともに端部材162を図中左右方向に挟持する挟持部材で筒状をなしており、その左端側には爪166が設けられていて、この爪166が、摘み140に形成された係合孔168に弾性的に係合せしめられている。
【0062】
この状態で、端部材162は摘み140と挟持部材164とで挟持された状態となり、摘み140と挟持部材164とが一体に図6中左右方向に進退移動したとき、インナケーブル144がともに左右方向に進退移動せしめられる。
【0063】
尚アウタケーブル142は、図中左端部が筒状の固定部材170を介して保持筒148に固定状態とされている。
また固定部材170は、図中左端のフランジ部172と止め輪174とで保持筒148の図中右端部を挟持する状態に、保持筒148に固定されている。
【0064】
伝達部材142は、図5に示しているように右端側(先端側)が曲り管176の内部に挿入されており、伝達部材142の先端部が、曲り管176によって図中下向きに保持された状態で組付ナット178により流動弁110に組み付けられている。
【0065】
詳しくは、組付ナット178の雌ねじ部180が、流動弁110における弁ハウジング112の雄ねじ部182にねじ込まれることで、アウタケーブル146の下端を受ける受部材184のフランジ部と、曲り管176のフランジ部とが組付ナット178の内向きのフランジ部186と弁ハウジング112とで上下に挟持され、そしてそのことによって受部材184と曲り管176の下端部とが固定され、併せてアウタケーブル146の下端が弁ハウジング112に固定されている。
またインナケーブル144に固定された端部材188が、流動弁110における弁体114の係合凹部190に係合されることで、インナケーブル144の先端部が弁体114に一体移動状態に固定され、連結されている。
【0066】
この実施形態では、図6の摘み140を回転させて同図中右向きに前進させると、伝達部材142におけるインナケーブル144が右向きに押し出されて、図5の下端部が流動弁110の弁体114を図中下向きに押し出し、これを開弁させる。
すると水路56における1次側の水が流動水路102に流れ込んで流動水路102を流通し、そして末端の図7に示す流動水吐水口106から外部に吐水される。
【0067】
一方、摘み140を上記とは逆方向に回転させてこれを図6中左向きに後退させると、インナケーブル144が同図において左向きに引き込まれ、弁体114が図5において上向きに後退移動せしめられる。そして弁体114が後退移動することによって、弁部122のシール部材126が弁ハウジング112の弁座128に水密に嵌合した状態となり、ここにおいて弁部122が閉弁する。
但し凍結防止を図る必要があるときには弁体114は開弁状態に維持され、従って水路56における1次側の水は小量で連続的に流動水路102を流れて、流動吐水口106から連続的に洗浄タンク10内に吐水される。
【0068】
本実施形態において、上記組付ナット178には、下向きに垂下して上記流動水吐水口106から径方向に離隔した位置で流動水吐水口106に対向し、これを外側から覆う円筒状のカバー壁192が一体に構成されている。
ここでカバー壁192は、流動水吐水口106よりも下側まで延びており、上記筒壁104との間に下向きの開口を形成している。
【0069】
このカバー壁192は次のような働きを有する。
このようなカバー壁192が設けられていないと、図9(B)の比較例図に示しているように、流動水吐水口106からの水は横向きに噴き出して、以後放物線を描きながら洗浄タンク10内の洗浄水中に落下する。そのときに大きな着水音を発生させてしまう。
【0070】
しかるにこの実施形態ではカバー壁192が流動水吐水口106を径方向に離隔した位置で外側から覆っているため、流動水吐水口106から吐水された水は、図8に示しているようにカバー壁192に当って下向きの流れに変えられるとともに、カバー壁192からの反力で筒壁104の外面側に押し返され、筒壁104の外面を伝って下向きに流下して行く。
【0071】
但し場合によってその一部が筒壁104の外面には到らずに、カバー壁192と筒壁104との間の開口からそのまま下向きに落下して行く場合も生ずる。
もっともその量は僅かであるため、筒壁104の外面を伝わらないで一部の水が落下して洗浄タンク10内の洗浄水の水面に着水したとしても着水音は小さい。
【0072】
但しこの実施形態ではボールタップ装置22における連繋アーム30をボールタップ本体24に固定するための固定ナット80が、上記組付ナット178のカバー壁192よりも大径をなしていて、この固定ナット80がカバー壁192よりも径方向外方まで突出しているため、固定ナット80が、カバー壁192と筒壁104との間の下向きの開口から筒壁104を伝わらないで直接落下した水を受ける水受部として働く。
尚このとき、ボデー44に一体に構成された上記の円筒部74もまたその水受部の一部として働く。
従ってこの実施形態では、流動水吐水口106から吐水された水がそのまま直接に洗浄タンク内の洗浄水の水面に落下するといったことは殆んど生じない。
【0073】
本実施形態では更に加えて、ボールタップ本体24の筒壁104とは反対側の下側位置から連繋アーム30が延び出して、その軸部34及びフロート28が洗浄水中に入り込んでいるため、筒壁104の外面を伝って流下した水、及びその筒壁104の外面を伝わらないで直接下向きに落下した一部の水は、その殆んどがボールタップ装置22における連繋アーム30を伝って更に流下して行き、そして連繋アーム30の軸部34及びフロート28を伝いながら洗浄水中に静かに流入して行く。
このとき軸部34,フロート28を伝いながら洗浄水中に流入して行く水は着水音を実質発生させない。
【0074】
以上のような本実施形態のタンク内給水装置にあっては、流動水吐水口106に対向するようにして、これを外側から覆うカバー壁192によって、流動水吐水口106から吐水された水の着水音を効果的に低減することができる。
【0075】
またそのカバー壁192は、伝達部材142の先端側を流動弁110に組み付ける組付ナット178に一体に構成してあるため、装置の所要部品点数を少なくでき、装置コストを低減することができる。
【0076】
また本実施形態では、ボールタップ装置22における連繋アーム30が、ボールタップ本体24の上記筒壁104とは反対側の下側部位から延出しているため、流動水吐水口106から吐水された水を連繋アーム30及びこれに取り付けられたフロート28を伝って流下させ得て洗浄タンク10内の洗浄水の水面に静かに流入させることができる。これにより流動水の着水音をより一層効果高く低減でき、静粛性を高めることができる。
【0077】
更に水受部が固定ナット80及びボールタップ本体24の円筒部74、つまりボールタップ装置22の構成部分から成っているため、水受部のための特別の部品も要しない。
【0078】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば筒壁104は垂直に起立している場合の他、少し傾斜して起立していても良いし、また流動水吐水口106からの水(流動水)をできる限り筒壁104の外面を伝って流下させるようにするため、カバー壁192を更に下側まで延びるように設けたり、或いはその下端側に逆テーパ形状部を設けて、カバー壁192に当った流動水をその逆テーパ形状部の案内作用で筒壁104の外面により積極的に戻すようになすといったことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 洗浄タンク
22 ボールタップ装置
24 ボールタップ本体
28 フロート
30 連繋アーム
58 給水弁
80 固定ナット
100 流動弁装置
102 流動水路
104 筒壁
106 流動水吐水口
110 流動弁
138 操作部
144 インナケーブル(インナ部材)
146 アウタケーブル(アウタチューブ)
178 組付ナット
192 カバー壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)給水弁を備えたボールタップ本体と、洗浄タンク内の洗浄水の水位に連動して昇降するフロートと、該フロートと該給水弁とを連繋する連繋アームとを備え、該フロートの下降により該給水弁を開いて洗浄タンク内に給水を行い、該洗浄タンク内の洗浄水が設定した満水状態となったとき、前記フロートの上昇により前記給水弁を閉じて給水停止させるボールタップ装置、及び(B)前記給水弁の1次側から分岐して延び出した流動水路と、該流動水路を開閉する流動弁とを備え、該流動弁の開弁により該1次側の水を該流動水路の末端の流動水吐水口から前記洗浄タンク内に吐水する流動弁装置を備えて成るタンク内給水装置において、
前記ボールタップ本体には、内側に前記流動水路を形成するための筒壁を上向きに起立状態に具備させて、該筒壁に且つ該筒壁における付根位置よりも上側位置に前記流動水吐水口を該筒壁を貫通して横向きに設けるとともに、該流動水吐水口から径方向に離隔した位置で該流動水吐水口を外側から覆い、該流動水吐水口から吐水された流動水に当って該流動水を下向きの流れとし且つ少なくとも一部を前記筒壁の外面に向う流れとして該流動水を該筒壁の外面を伝って流下させるカバー壁を設けたことを特徴とするタンク内給水装置。
【請求項2】
請求項1において、前記流動弁装置の操作部が、可撓性且つ非伸縮性の長尺のインナ部材及び該インナ部材を移動案内するアウタチューブを有する操作力の伝達部材を備えた遠隔操作式のもので、該伝達部材の先端側が組付ナットにて前記流動弁に組み付けられており、前記カバー壁が該組付ナットに一体に構成してあることを特徴とするタンク内給水装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記連繋アームは、前記ボールタップ本体の前記筒壁とは反対側の下側部位から延出していることを特徴とするタンク内給水装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記ボールタップ本体には、前記流動水吐水口の下側位置で前記カバー壁よりも径方向外側まで突出し、該カバー壁にて下向きの流れとされた前記流動水を該下側位置で受ける水受部が設けてあることを特徴とするタンク内給水装置。
【請求項5】
請求項4において、前記水受部の少なくとも一部が、前記連繋アームを前記ボールタップ本体に固定する固定ナットであることを特徴とするタンク内給水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−184906(P2011−184906A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49966(P2010−49966)
【出願日】平成22年3月6日(2010.3.6)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】