説明

タンク内給水装置

【課題】タンク内給水時の騒音を効果的に低減することのできるタンク内給水装置を提供する。
【解決手段】洗浄タンクの内部に配置されたボールタップ22の吐水口50から、タンク内の貯溜水よりも上方に位置で吐水してタンク内に給水を行うタンク内給水装置において、吐水口50をタンク壁14Aに向けて配向させるとともに、タンク壁14Aの側には吐水口50からの水流を通過させることで水流の勢いを減殺し落下させる緩衝部材55を設けておく。その緩衝部材55は、タンク壁14Aに向って吐水方向に延びる複数の板状部84を備えた上部通水部80と、タンク壁14Aに沿って延びる複数の板状部88を備えた下部通水部82とを有する、平面視形状が格子状のものとなしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は洗浄タンクの内部に配置されたボールタップの吐水口から吐水し、タンク内に給水を行うタンク内給水装置に関し、詳しくは給水音を低減するための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種タンク内給水装置として、従来、図8に示すものが公知である(下記特許文献1に開示)。
図において200は洗浄タンク,202はその内部に配置されたボールタップ、204はボールタップ202の吐水口から下向きに延びた吐水パイプである。
吐水パイプ204はタンク内の貯留水Wの内部に深く入り込んでおり、従ってこのタンク内給水装置では、ボールタップ202の吐水口からの吐水が貯留水Wの内部に静かに流入し、タンク内給水時の給水音が静かで騒音を発生させない利点を有する。
【0003】
しかしながらこのタンク内給水装置の場合、タンク内の貯溜水Wがボールタップ202側に逆流するのを防止するための逆流防止機構を設けることが必要であり、これによりタンク内給水装置のコストが高くなってしまう問題がある。
【0004】
この逆流防止機構を不要とするためには、ボールタップ202の吐水口とタンク内部の貯留水Wとの間に空間形成し、貯留水Wよりも上方位置の吐水口からタンク内に吐水し、給水を行うことが必要である。
但しこのとき吐水口から吐水した水流が貯留水Wの水面に勢い良く落下するとそのときに大きな着水音が発生し、これが給水騒音となってしまう。
【0005】
その対策として、吐水口にメッシュ状の整流部材を2重,3重に設けておき、水流をそれら整流部材を通過させて吐水口から吐水し、タンク内に給水することも行われている。
例えば下記特許文献2に、この種のタンク内給水装置の例が開示されている。
このタンク内給水装置では、これら整流部材に水流を通すことで、その整流部材による流動抵抗で水流の勢いを減殺し、以て水流が貯留水Wの水面に落下したときの着水音を小さくする。
【0006】
しかしながら一方でこのタンク内給水装置の場合、水流が整流部材を通過する際の流動抵抗で吐水性能に悪影響が及び、吐水口からの吐水の流量が少なくなってしまう。従って例えばボールタップからの給水を図8に示す手洗吐水管206に導いて、そこから手洗水を吐水させる形式のタンク内給水装置にあっては、手洗吐水管206の側にボールタップ202からの給水が多量に回り込んでしまい、手洗吐水管206からの手洗水が過剰になってしまうといった問題を生ずる。
【0007】
また上記のような整流部材をボールタップの吐水口に2重,3重に設けておくとそこにゴミが溜り易く、而してそこにゴミが溜ってしまうと吐水性能は更に悪化し、またこの段階で手洗吐水管206の側に回り込む給水の量が急激に多くなってしまう。
【0008】
他の対策として、ボールタップの吐水口をタンク壁に向けて配向しておき、吐水口からの水流をタンク壁に当てて、タンク壁に沿って流下させるといったことが考えられる。
この場合には水流がタンク壁に沿って流下し貯留水Wに流入するために、着水音は静かとなる。
【0009】
ところがこの方式を本発明者が検討したところ、吐水口からの水流がタンク壁に当ったときに、例えばタンク壁が樹脂製のタンク壁であったりすると、タンク壁が水流の衝突により振動し、騒音を発生させてしまう問題の生じることが判明した。
【0010】
尚本発明に対する他の先行技術として、下記特許文献3にはシスターンの壁面に海綿状の材料から成る緩衝材を、下部が貯留水に浸漬する状態に、壁面に固定しておき、その真上の位置にボールタップの吐水口を下向きに設けて、吐水口からの水流を緩衝材に当て、シスターンに給水するようになしたものが開示されている。
但しこの特許文献3に開示のものは、吐水口からの水流を緩衝する機構が本発明と異なっており、特許文献3に開示のものは本発明と別異のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−167833号公報
【特許文献2】特開昭48−32350号公報
【特許文献3】実開昭50−115763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような事情を背景とし、タンク内給水時の騒音を効果的に低減することのできるタンク内給水装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して請求項1のものは、洗浄タンクの内部に配置されたボールタップの吐水口から、タンク内の貯溜水よりも上方の位置で吐水してタンク内に給水を行うタンク内給水装置において、前記吐水口を斜め下向きに配向させるとともに、該吐水口から吐水した水流を通過させ且つ通過時に水流の勢いを減殺して落下させる緩衝部材を前記洗浄タンクにおけるタンク壁の内側に設け、該緩衝部材は、(a)平面視において前記吐水口からの吐水方向に延びる複数の板状部を備え、各板状部の間に複数のスリット状の水流通過空間を形成する上部通水部と、(b)該上部通水部の下側の位置で前記吐水方向と交差する方向に延びる複数の板状部若しくは線状部を水流の当り部として備え、各当り部の間に水流の通過空間を形成する下部通水部と、を有する平面視形状が格子状のものとなしてあることを特徴とする。
【0014】
請求項2のものは、請求項1において、前記吐水口は前記タンク壁に向って斜め下向きの角度をなしていることを特徴とする。
【0015】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記緩衝部材を前記タンク壁と別体に構成して、該緩衝部材から取付用のブラケットを延び出させ、該ブラケットを前記ボールタップの本体部とタンク壁とで挟持する状態にタンク壁に固定してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0016】
以上のように本発明は、ボールタップの吐水口から斜め下向きに吐水するようになすとともに、吐水口からの水流を通過させ且つその通過時に水流の勢いを減殺して落下させる緩衝部材をタンク内に設けたものである。
【0017】
ここで緩衝部材は、平面視において吐水口からの吐水方向に延びる複数の板状部を備え、各板状部の間に複数のスリット状の水流通過空間を形成する上部通水部と、その下側の位置で吐水方向と交差する方向(平面視において)に延びる複数の板状部若しくは線状部を水流の当り部として備え、各当り部の間に水流の通過空間を形成する下部通水部とを有する、全体として平面視形状が格子状のものとなしてある。
【0018】
本発明のタンク内給水装置では、吐水口からの水流が先ず緩衝部材の上部通水部に到ってこれを通過する。
このとき、上部通水部では複数の板状部が吐水方向に延びているため、吐水口からの水流がこれらの板状部に当って水跳ねを生じるといったことはなく、各板状部により整流作用を受けながら板状部間のスリット状の通水空間を通じて下側へと流れる。
その際に水流は板状部の板面に接触しながらこれに沿って流れるため、それら板状部による流動抵抗によって水流の勢いが減殺される。
【0019】
上部通水部を通過した水流は次に下側の下部通水部へと到るが、この下部通水部の複数の板状部若しくは線状部は吐水方向と交差する方向に延びているため、上部通水部を通過することで一旦勢いの低下した水流がこれら板状部若しくは線状部に当って、そこで更に水流の勢いが減殺される。
【0020】
水流がこの下部通水部の板状部若しくは線状部に当る段階では、既に水流の勢いが上部通水部を通過することで弱くなっているため、水流が下部通水部の板状部若しくは線状部に当ったときに水跳ねの生じるのが抑制されるのに加えて、たとえ下部通水部において水跳ねが生じたとしても、その水跳ねは上部通水部の複数の板状部に当ることによって緩衝部材内部で吸収され、従って緩衝部材から外部に向けて水跳ねが周辺に飛び散るといったことが防止される。
【0021】
その結果吐水口から吐水された水流は、タンク内に設けられた緩衝部材を通過する過程で勢いが十分に弱められた上で下方に落下せしめられる。
これによりタンク内給水時に吐水口からの水流がタンク内の貯留水に強い勢いで着水して大きな着水音を発生するといったことがなく、給水音を効果的に低減することができる。
【0022】
本発明では、緩衝部材によって吐水口からの水流の勢いを十分に減殺した上で下方に静かに落下させることができるため、吐水口に水流の勢いを弱めるためのメッシュ状の整流部材を2重,3重に設けておく必要はなく、従ってそれら整流部材による流動抵抗によって吐水口からの吐水の流量が減少し、吐水性能が悪化してしまうのを防ぐことが可能である。またそれら整流部材にゴミ詰まりが生じて、そのことにより吐水流量が更に減少してしまう問題も解決することができる。
【0023】
本発明では、下部通水部を、吐水方向と交差する方向に延びる線状部と、更にこれに対して交差する方向に延びる線状部とを有するメッシュ状の部材として構成しておくこともできる。
但し下部通水部においては、吐水方向と交差する方向に延びる複数の板状部を設けておき、これを水流の当り部となしておくことが望ましい。
このようにすれば、上部通水部を通過した水流に対して下部通水部の板状部を面で当てることができ、その勢いをより効果的に減殺することができる。
【0024】
本発明では、上記吐水口をタンク壁に向って斜め下向きの角度で設けておくことができる(請求項2)。
【0025】
次に請求項3は、上記緩衝部材をタンク壁と別体に構成して、緩衝部材から取付用のブラケットを延び出させ、そのブラケットをボールタップの本体部とタンク壁とで挟持する状態にタンク壁に固定するようになしたもので、この請求項3によれば、ボールタップそのものがブラケットの取付部材となり、ボールタップの本体部をタンク壁に固定すると同時にブラケットをタンク壁に固定し、緩衝部材を所定の目的とする位置に位置させることができる。
この請求項3によれば、ブラケット取付けのための専用の特別の部材を不要となし得、またタンク壁に対して後付けで緩衝部材を簡単に設けることができる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態のタンク内給水装置を含む洗浄タンクを一部切り欠いて内部を示した図である。
【図2】図1の洗浄タンクの要部の平面断面図である。
【図3】同要部の斜視図である。
【図4】図2,図3の要部を分解して示した斜視図である。
【図5】同実施形態における緩衝部材をブラケットとともに示した図である。
【図6】図5の緩衝部材の要部を拡大して示した斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態の要部を示した図である。
【図8】従来のタンク内給水装置の一例を含む洗浄タンク内部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗浄タンクで樹脂製のアウタタンク12と、その内側の樹脂製のインナタンク14との2重タンク構造をなしている。
アウタタンク12の上部には、その蓋を兼用した樹脂製の手洗鉢16が設けられており、この手洗鉢16から起立する形態で手洗吐水管18が手洗鉢16に設けられている。
手洗鉢16の底部には排水口20が設けられており、手洗吐水管18から吐水された手洗水が、この排水口20から洗浄タンク10内部へと落下する。
【0028】
22は洗浄タンク10内部に配設されたボールタップ、24はその本体部である。
本体部24はインナタンク14に取り付けられており、そしてその本体部24に対して外部給水管26が接続されている。
外部給水管26を通じて供給された水は、ボールタップ22の給水弁の開弁によって洗浄タンク10内部に給水され、また給水弁の閉弁によって給水停止される。
【0029】
ボールタップ22は、洗浄タンク10内部の洗浄水の水位に連動して昇降するフロート28と、フロート28と給水弁とを連繋する連繋アーム30とを有している。
また連繋アーム30は、アーム部32と、その先端から下向きに延びる軸部34とを有しており、その軸部34に対してフロート28が組み付けられている。
【0030】
洗浄タンク10の外側面には洗浄ハンドル36が回転可能に設けられている。
38は、洗浄タンク10内部において洗浄ハンドル36に連動して回動する、L字状をなす作用レバーで、その先端が鎖40を介して図示を省略する排水弁に連結されている。
その排水弁は、洗浄ハンドル36の回転操作によって閉弁状態から開弁させられ、これにより洗浄タンク10内部に貯えられている洗浄水が、洗浄タンク10底部の排出口から便器に向けて勢い良く排出せしめられる。
【0031】
本体部24には、図中右端側に補給水管(ここではゴムチューブ)48が接続されている。
補給水管48は、便器に補給水を供給するためのもので、図1に示しているようにその先端側がアダプタを介して洗浄タンク10内部のオーバーフロー管42に組み付けられ、補給水管48からの補給水がオーバーフロー管42内に流入するようになっている。
【0032】
上記本体部24には、タンク内に吐水し給水を行う吐水口50と、手洗吐水管18に給水を行う給水口52(図3参照)とが設けられている。
54は、給水口52からの水を手洗吐水管18に導くための蛇腹管から成る導管で、一端側が給水口52に、また他端側が手洗吐水管18に接続されている。
【0033】
この実施形態では、ボールタップ22の上記の給水弁が開弁することによって、吐水口50からタンク内に吐水が行われる。また給水口52から導管54を経て手洗吐水管18に給水され、そこから手洗鉢16に向けて手洗水が吐水される。
また給水弁が閉弁することによってそれら吐水口50,給水口52からの吐水及び給水が停止する。
【0034】
図3(A)に示しているように、吐水口50及び給水口52は何れもインナタンク14のタンク壁14Aに向けて45°の角度で斜め下向きに設けられている。
尚、手洗吐水管18を備えないタイプの洗浄タンク10においては給水口52に対して導管54は接続されず、給水口52はそのまま開放状態とされる。
この場合には、外部給水管26を通じて送られて来た水は給水口52から直接タンク内に吐水される。即ちこの場合には給水口52は第2の吐水口として働く。
尚この実施形態において、吐水口50及び給水口52の何れにもメッシュ状の整流部材は取り付けられておらず、それら吐水口50及び給水口52は全体的に開放ままとされている。
【0035】
タンク壁14Aの側には、タンク壁14Aに向って吐水口50又は吐水口50と給水口52とから(手洗吐水管18を有しない場合)吐水した水流を通過させ、そしてその通過時に水流の勢いを減殺して落下させる緩衝部材55が設けられている(但し以下は吐水口50を通じてのみタンク内に吐水が行われるものとして説明する)。
【0036】
この実施形態では、緩衝部材55から、途中で直角に折れ曲った形態の板状のブラケット56が延び出しており、このブラケット56がタンク壁14Bに取付固定されることで、緩衝部材55がタンク壁14A側に設けられている。
ブラケット56は、図4及び図5に示しているようにタンク壁14Bへの固定部58に、4角形状の貫通の開口60が設けられている。
【0037】
一方、図4に示しているようにタンク壁14Bにも対応する4角形状の貫通の開口62が設けられており、ブラケット56は固定部58を、貫通の4角形状の開口64を有するパッキン66を介してタンク壁14Bに密着させる状態に、ボールタップ22の本体部24とタンク壁14Bとに挟持される状態に、抜止クリップ68にてタンク壁14Bに固定されている。
【0038】
詳しくは、図4及び図2に示しているようにボールタップ22の本体部24には、タンク内に位置する4角形状のフランジ部70と、タンク外に位置する円形のフランジ部72とが設けられ、そしてフランジ部72とタンク壁14Bの開口62周りの厚肉の縁部74との間に抜止クリップ68が差し込まれることで、ボールタップ22の本体部24がタンク壁14Bに固定され、またこのとき同時に、ブラケット56の固定部58がパッキン66を介して本体部24のフランジ部70とタンク壁14Bとに挟み込まれ、挟持される状態にタンク壁14Bに固定されている。
【0039】
尚、本体部24には4角形状の嵌合部76が設けられており、この嵌合部76がタンク壁14Bの開口62に嵌合せしめられている。これにより本体部24がタンク壁14Bに対し回転方向に位置決めされている。
ここで本体部24は、図2に示しているようにインナタンク14の外部において接続クリップ78にて外部給水管26と接続されている。
【0040】
上記緩衝部材55は、吐水口50(及び給水口52)から吐出する水流の軌跡上に位置せしめられている。
図3及び図6に、この緩衝部材55の構造が詳しく示してある。
図に示しているようにこの緩衝部材55は、上部通水部80と下部通水部82とを有している。
【0041】
上部通水部80は、平面視においてタンク壁14Aに直交する方向にタンク壁14Aに向って且つ吐水口50からの吐水方向に、互いに等間隔で平行に延びる複数の板状部84を備えており、各板状部84と84との間に複数のスリット状の水流通過空間86を形成している。
この実施形態において、その水流通過空間86の幅は2mmとされている。
【0042】
一方下部通水部82は、上部通水部80の各板状部84と直交する方向(平面視で吐水方向と直交方向)に延びる、即ちタンク壁14Aに沿ってこれと平行方向に延びる水流の当り部としての複数の板状部88を備え、そして各板状部88の間にスリット状の水流通過空間90を形成している。
ここで下部通水部82の各板状部88もまた、一定間隔で互いに平行をなす状態に延びている。
この下部通水部82における水流通過空間90もまた幅2mmとされている。
【0043】
緩衝部材55において、上部通水部80の各板状部84と下部通水部82の各板状部88とは、図5(C)に示しているように平面視形状が格子状をなしている。
尚、緩衝部材55の図中左右の各端部は板状の閉鎖部92にて閉鎖されている。
【0044】
この実施形態では、吐水口50から吐出された水流は先ず緩衝部材55における上部通水部80を通過して流れる。
このとき上部通水部80における各板状部84は、タンク壁14Aと直交方向且つ吐水口50からの吐水方向を向いているため、吐水口50からの水流は上部通水部80における板状部84に対してそれらの板面に直角に当るといったことはなく、各板状部84と84との間のスリット状の通水空間86の内部にほぼそのまま流れ込む。
【0045】
従って水流が上部通水部80に到ったときにそこで水跳ねを生じることは殆んど無く、上部通水部80に到った水流は各板状部84にて整流作用を受けつつ、板状部84の板面に沿ってスリット状の通水空間86を下向きに流れる。
このとき吐水口50からの水流は、板状部84の各板面が水流に対する流動抵抗として作用するため、上部通水部80を通過する過程でその勢いが減殺される。
【0046】
上部通水部80を通過した水流は、次にその下側の下部通水部82に到ってこれを通過し流れる。
このとき、下部通水部82においては各板状部88がタンク壁14Aと平行方向の向きをなしているため、尚且つ各板状部88が垂直向きをなしているため(上部通水部80の各板状部84も垂直向きをなしている)、上部通水部80を通過した水流は下部通水部80の各板状部88に対して、その板面に斜め下向きの角度で当り、そこで水流の勢いが大きく減殺される。
【0047】
このとき、水流は上部通水部80を通過することですでに勢いが弱められているために、下部通水部82の板状部88の板面に当ったとしても水跳ねが抑制されるのに加えて、この下部通水部82の上側には上部通水部80における複数の板状部84が僅かな間隔で並び、下部通水部82から立ち上っているため、たとえ部分的な水跳ねが生じたとしてもその水跳ねは上部通水部80の各板状部84に当ることによってそこで消失し、緩衝部材55の外部に向けて水跳ねが飛び散るといったことは殆んど生じない。
このようにして吐水口50からの水流は、緩衝部材55を通過することでそこで勢いが減殺され、柔らかな流れとなって下方のタンク内の貯留水Wに流入する。
ここで上部通水部80は、下部通水部82よりも高さを高くしてある。下部通水部82は主として水を分散させる部分であり、高さはそれほど必要ない。
一方上部通水部80は水跳ねを防止する部分であり、この意味で高さは高い方が望ましい。
【0048】
以上のような本実施形態では、緩衝部材55によって吐水口50からの水流の勢いを十分に減殺した上で下方に静かに落下させることができ、タンク内給水時の給水音を低減することができる。
また吐水口50に水流の勢いを弱めるためのメッシュ状の整流部材を2重,3重に設けておく必要はなく、従ってそれら整流部材による流動抵抗によって吐水口50からの吐水の流量が減少し、吐水性能が悪化してしまうのを防ぐことが可能である。またそれら整流部材にゴミ詰まりが生じて、そのことにより吐水流量が更に減少してしまう問題も解決することができる。
【0049】
更にこの実施形態によれば、ブラケット56取付けのための専用の特別の部材を不要となし得、またタンク壁14Aに対して後付けで緩衝部材55を簡単に設けることができる利点が得られる。
【0050】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上部通水部80における上記の板状部84は、必ずしも平面視において吐水方向と厳密に同一方向(上記実施形態ではタンク壁14Aと直交方向)でなくても良く、多少傾いた角度で設けておくこともできる。
【0051】
更に下部通水部82における上記板状部88もまた、吐水方向と厳密に直交方向(上記実施形態ではタンク壁14Aと平行方向、つまり上部通水部80の板状部84と直交方向)でなくても良く、図7(A)に示すように多少傾きを持たせ、全体で同図に示すような格子状をなすようにすることも可能である。
これらの場合において、板状部84は吐水方向(上記実施形態ではタンク壁14Aと直交方向)とのなす角度を30°以下となしておくのが望ましい。
また下部通水部82の板状部88は、吐水方向と直交方向(上記実施形態ではタンク壁14Aと平行方向)に対する角度を45°以内となしておくことが望ましい。
【0052】
更に、図7(B)に示すように板状部88を互いに異なる2方向に設けて板状部88と板状部84とで全体として格子状をなすようにするといったことも可能である。
また緩衝部材55における下部通水部82の水流の当り部を線状の部材で構成することもできるし、またその際に下部通水部82をメッシュ状に構成しておくことも可能である。
【0053】
その他、本発明においては緩衝部材55をタンク壁14Aに直接一体的に設けておくといったことも可能であるし、更に緩衝部材55をタンク壁以外のタンク内の位置に設けておくことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 洗浄タンク
14 インナタンク
14A,14B タンク壁
22 ボールタップ
24 本体部
50 吐水口
55 緩衝部材
56 ブラケット
80 上部通水路
82 下部通水路
84,88 板状部
86,90 水流通過空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄タンクの内部に配置されたボールタップの吐水口から、タンク内の貯溜水よりも上方の位置で吐水してタンク内に給水を行うタンク内給水装置において、
前記吐水口を斜め下向きに配向させるとともに、該吐水口から吐水した水流を通過させ且つ通過時に水流の勢いを減殺して落下させる緩衝部材を前記洗浄タンクにおけるタンク壁の内側に設け、
該緩衝部材は、(a)平面視において前記吐水口からの吐水方向に延びる複数の板状部を備え、各板状部の間に複数のスリット状の水流通過空間を形成する上部通水部と、(b)該上部通水部の下側の位置で前記吐水方向と交差する方向に延びる複数の板状部若しくは線状部を水流の当り部として備え、各当り部の間に水流の通過空間を形成する下部通水部と、を有する平面視形状が格子状のものとなしてあることを特徴とするタンク内給水装置。
【請求項2】
請求項1において、前記吐水口は前記タンク壁に向って斜め下向きの角度をなしていることを特徴とするタンク内給水装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記緩衝部材を前記タンク壁と別体に構成して、該緩衝部材から取付用のブラケットを延び出させ、該ブラケットを前記ボールタップの本体部とタンク壁とで挟持する状態にタンク壁に固定してあることを特徴とするタンク内給水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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