説明

タンク冷却水の温度管理システム

【課題】タンクに設置された大気開放弁によることなく温水洗浄後の冷却工程で設定温度を下回る冷却水の使用を防止可能なタンク冷却水の温度管理システムを提供する。
【解決手段】流入経路R1及び流出経路R2がタンクにそれぞれ設けられ、加温された洗浄水で各タンク2を洗浄した後にタンク2を冷却するための冷却水の温度を管理するタンク2冷却水の温度管理システム10であって、各タンク2に流入する冷却水の温度を測定する温度計11と、流入経路R1から分岐してタンク2を回避するバイパス路R3上に配置されたバイパスバルブ12と、温度計11の測定結果に基づいてバイパスバルブ12を開閉するように制御する制御装置13と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク洗浄時における冷却水の温度を管理するタンク冷却水の温度管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の製造過程にて使用されるタンクの洗浄作業において、温水洗浄の後に行われる冷却工程で急速にタンクを冷却したことによるタンク内の圧力低下を原因としたタンクの凹み等の破損を防止するため、一般的には、タンクの負圧を検知し、大気開放弁を開くことが行われている。また、冷却工程前にタンク内を加圧する加圧工程を設けて圧力低下を防止する技術が知られている(特許文献1参照。)。その他、タンクの洗浄方法として特許文献2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3996375号公報
【特許文献2】特開2007−301462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記加圧工程を設けていないタンクでは、冷却工程で段階的に温度を下げた冷却水で複数回タンクをすすいでタンク内が負圧となることを防止している。しかしながら、冬季の作業等、冷却工程で使用する冷却水の温度が使用可能な下限温度を下回った状態でタンク内を冷却すると、想定以上に圧力が低下してタンクが破損するおそれがある。タンクの負圧変動が激しい場合、タンクの負圧を検知する方法ではタンクの破損に間に合わないことがある。また、大気開放弁が設置されていないタンクにおいて自動洗浄による冷却工程を行う場合には、各タンクに新たに大気開放弁を設置しなければならず、負担が大きい。
【0005】
そこで、本発明はタンクに設置された大気開放弁によることなく温水洗浄後の冷却工程で設定温度を下回る冷却水の使用を防止可能なタンク冷却水の温度管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタンク冷却水の温度管理システムは、導入路(R1)及び排出路(R2)がタンクにそれぞれ接続されて流路が形成され、加温された洗浄水でタンク(2)を洗浄した後に前記タンクを冷却するための冷却水の温度を管理するタンク冷却水の温度管理システム(10)であって、前記タンクに流入する冷却水の温度を測定する温度測定手段(11)と、前記導入路から分岐して前記タンクを回避する経路(R3)上に配置されたバイパスバルブ(12)と、前記温度測定手段の測定結果に基づいて前記バイパスバルブを開閉するように制御するバルブ制御手段(13)と、を備えたことにより上記課題を解決する。
【0007】
本発明のタンク洗浄水の温度管理システムによれば、タンクを冷却する冷却水の温度を測定し、その測定結果に基づいて冷却水をタンクに流入させるか否かが制御される。測定された冷却水の温度がタンクを負圧にするおそれがある場合には、バイパスバルブを開くことによりタンクへの冷却水の流入を回避することができる。従って、冷却水の温度が予期せずに下がっていたとしてもタンクの破損を防止することができる。
【0008】
本発明の温度管理システムの一形態において、前記バルブ制御手段は、前記バイパスバルブの開閉制御を判断する冷却水の下限温度を前記タンクの冷却が進むにつれて徐々に下げるように設定してもよい。この形態によれば、冷却工程が進むにつれてタンクへ流入させてもよい冷却水の下限温度を下げるようにすることで、タンク内が負圧になることを防止しつつ確実にタンクを冷却することができる。
【0009】
本発明の温度管理システムの一形態において、前記バルブ制御手段は、測定された冷却水の温度が、前記バイパスバルブの開閉制御を判断する冷却水の下限温度未満の場合に前記バイパスバルブを開くように制御してもよい。この形態によれば、測定された冷却水の温度が、下限温度未満の場合にバイパスバルブを開くように制御することにより、タンク内が負圧となることを確実に防止することができる。
【0010】
下限温度未満の場合にバイパスバルブを開くように制御する形態において、前記バルブ制御手段は、前記下限温度以上に冷却水の温度が上昇した場合に前記バイパスバルブを閉じるように制御してもよい。この形態によれば、冷却水が下限温度未満となったことによりバイパスバルブを開いてタンク内への冷却水の流入が回避されている状態のときに、冷却水の温度が上昇して下限温度以上となるとバイパスバルブを閉じるように制御することにより、再び冷却水をタンク内へ流入させることができる。従って、タンク内の負圧を確実に防止しつつ、タンクの冷却を進めることができる。
【0011】
本発明の温度管理システムの一形態において、前記導入路には、送液弁(27a、28a)が設けられ、前記排出路には、排液弁(27d、28d)が設けられ、前記バルブ制御手段は、前記バイパスバルブを開いたときには前記送液弁及び前記排液弁を閉じるように制御し、前記バイパスバルブを閉じたときには前記送液弁及び前記排液弁を開くように制御してもよい。この形態によれば、バイパスバルブを開いたときには送液弁及び排液弁を閉じることでタンクへ冷却水が流入することを防止し、バイパスバルブを閉じたときには送液弁及び排液弁を開くことで冷却水をタンクへ流入させることができる。
【0012】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように、本発明のタンク冷却水の温度管理システムにおいては、タンクを冷却する冷却水の温度を測定し、その測定結果に基づいて冷却水をタンクに流入させるか否かが制御される。測定された冷却水の温度がタンクを負圧にするおそれがある場合には、バイパスバルブを開くことによりタンクへの冷却水の流入を回避することができる。従って、タンクの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一形態に係るタンク冷却水の温度管理システムが適用されたタンク洗浄システム全体の概略構成を示す図。
【図2】冷却工程における冷却水の流路を示す図。
【図3】制御装置が実行する温度管理処理のフローチャート。
【図4】測定された温度が下限温度未満における冷却水の流路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に本発明の一形態に係るタンク冷却水の温度管理システムが適用されたタンク洗浄システム全体の概略構成を示す図である。タンク洗浄システム1は、タンク2A、2B(区別する必要がない場合は参照符号2で代表する。)を洗浄するためのシステムである。各タンク2A、2Bは、飲料や調味料等の各種液体を保持するタンクで定期的に各タンク2内が洗浄される。各タンク2は、液体が流入する導入路としての流入経路R1と、液体が流出する排出路としての流出経路R2とそれぞれ接続されている。洗浄作業において、タンク2は加温された水で温水洗浄された後、冷却水でタンク2内がすすがれ、これにより冷却される。
【0016】
タンク洗浄システム1は、タンク2の他に、水を保持する水タンク3と、加温された水を保持する温水タンク4と、アルカリ洗浄するための水酸化ナトリウムを含む薬液を保持するアルカリタンク5と、タンク洗浄システム1内を流れる液体の熱交換を行う熱交換器6とを備えている。水タンク3は、井戸水・地下水等から汲み上げた水又は水道水を保持する。温水タンク4は、加温した水を保持する。各タンク3〜5は水流路21と接続され、適宜水を導入することができる。また、アルカリタンク5は薬液が流れる薬液流路22と接続され、適宜薬液を導入することができる。
【0017】
熱交換器6は、流入経路R1に設けられている。熱交換器6は、流入経路R1へ流入する液体の温度を上げる。熱交換器6での熱交換には、スチーム流路23から流入するスチーム熱を利用して液体を加温する。熱交換器6には各タンク3〜5からの各種液体が流入可能であり、各タンク3〜5と熱交換器6との間で適宜バルブを設けつつ配管され、ポンプ24で熱交換器6に送液される。なお、熱交換器6には、各種周知技術を適用してよい。
【0018】
さらに、タンク洗浄システム1は、熱交換器6にて加温された液体の温度を測定する温度測定手段としての温度計11と、各タンク2への液体の流入を回避するためのバイパス路R3に設けられたバイパスバルブ12とを備えている。温度計11は、熱交換器6と各タンク2との間に設けられ、各タンク2へ流れる液体の温度を測定する。なお、温度計11は、温度指示調節計のように温度計機能を含むような装置であってもよい。バイパス路R3は流入経路R1と流出経路R2とを接続するバイパスラインで、バイパス路R3を流れる液体はタンク2への流入が回避される。バイパスバルブ12は、バイパス路R3を開閉するバルブである。バイパスバルブ12として、ボール弁やバタフライ弁等の各種バルブを利用してよい。
【0019】
タンク洗浄システム1は、バルブ制御手段としての制御装置13を備えている。制御装置13は、マイクロプロセッシングユニットを備えたコンピュータユニットの一種として構成される。制御装置13は、温度計11、バイパスバルブ12、後述する送液弁27a、28a及び戻り弁27d、28dを含む適宜のバルブと接続されている。制御装置13は、温度計11からの出力信号に基づいてバイパスバルブ12、送液弁27a、28a及び戻り弁27d、28dの開閉動作を制御する。なお、図中では、送液弁28a及び戻り弁28dと制御装置13との接続を省略している。タンク洗浄システム1に設けられた温度計11、バイパスバルブ12、制御装置13、送液弁27a、28a及び戻り弁27d、28dが、温度管理システム10として機能する。なお、タンク洗浄システム1を流れる液体の移送経路は、配管、ホース等で各タンク2〜5を適宜接続しつつ構成され、移送経路上には液体の流れを制御するためのバルブ、ポンプ等が必要に応じて設けられている。
【0020】
まず、タンク洗浄システム1の温水洗浄手順について図1を参照して説明する。タンク2を温水洗浄するために温水タンク4から温水をタンク2へ流す。温水タンク4からの温水は、ポンプ24で送り出されて熱交換器6で所定温度まで加熱される。タンク2A前後の流入経路R1及び流出経路R2に設けられたバルブ27a〜27dと、タンク2B前後の流入経路R1及び流出経路R2に設けられたバルブ28a〜28dの各バルブを開いて各タンク2へ温水を流して洗浄する。各バルブ27a〜27d、28a〜28dの開閉制御は、制御装置13にて実行される。なお、バルブ27a、28aを送液弁27a、28aと、バルブ27d、28dを排液弁としての戻り弁27d、28dと称することがある。洗浄後の温水は排水路29から排水される。あるいは、排水路29から分岐した戻し路30を流れて温水タンク4へ再び戻すようにしてもよい。
【0021】
温水洗浄後は、冷却工程が行われる。図2を参照して冷却工程について説明する。水タンク3から所定温度の冷却水が各タンク2へ流れる。温水洗浄時と同様、水タンク3からの冷却水は、熱交換器6Aにて所定温度まで加温された後、流入経路R1を介して各タンク2へ流入して各タンク2内をすすぐ。タンク2をすすいだ後の冷却水は排水路29から排水される。この冷却工程は、冷却水の温度を徐々に下げながら複数回行われる。
【0022】
図3を参照して冷却工程における温度管理システム10の温度管理処理について説明する。まず、ステップS1にて制御装置13は、温度計11にて冷却水の温度を測定する。冷却工程中は、温度計11にて冷却水の温度が常時測定されている。そしてステップS2にて制御装置13は、測定された冷却水の温度と予め設定された下限温度とを比較して測定した温度が設定温度以上か否かを判断する。ここで下限温度とは、温水洗浄後のタンク2を冷却するのに許容される冷却水の下限の温度をいう。温水洗浄後のタンク2を急に冷却するとタンク2内が負圧になり、タンク破損のおそれがある。このため、例えば十分に大きなサイズの大気開放弁をタンクに設けることでタンク破損を回避することが一般的ではあるが、既存のタンクを流用する場合や、タンク洗浄システム1の設計時に温水洗浄を予定していなかった場合には、タンクの改造費用が生じる。本形態においてはこれを避け、冷却水の温度管理をすることでタンクの破損を防止している。
【0023】
この下限温度は、所定時間毎に段階的に下げるようにして温度を設定してもよいし、一定の勾配を有するように連続的に下降する下限温度を設定してもよい。冷却水の温度は、熱交換器6にて調整可能である。温度計11の測定結果によりスチーム流路23に設けられたバルブ32を開閉して温度調整するようにしてもよい。ステップS2にて測定温度が下限温度以上ある場合には、制御装置13はステップS3に進んでタンク2へ冷却水を流入させる。具体的には、流入経路R1及び流出経路R2にある各バルブ27a〜27d、28a〜28dを開き、かつバイパスバルブ12を閉じることによりタンク2へ冷却水を流入させる。そして、制御装置13は今回の処理を終了する。
【0024】
一方、ステップS2にて測定温度が下限温度未満である場合には、制御装置13はステップS4に進んでバイパス路R3に冷却水を流して各タンク2への冷却水の流入を回避する。図4に、測定温度が下限温度未満における冷却水の流路を示す。具体的には、送液弁27a、28a及び戻り弁27d、28dを閉じ、かつバイパスバルブ12を開くことによりバイパス路R3へ冷却水を流入させる。冷却水は、排水路29へ流れて排水される。あるいは、戻し路30を介して温水タンク4へ再び戻すようにしてもよい。従って、各タンク2へ冷却水が流入することが回避されタンク2の破損を防止することができる。そして、制御装置13は、ステップS2へ戻り、上述の処理を繰り返す。これにより、バイパスバルブ12が開いている間に冷却水の温度が上昇し、温度計11の測定温度が下限温度以上となれば、再び各タンク2へ冷却水を流入させることができる。
【0025】
上述の温度管理処理によれば、各タンク2へ流入する前の冷却水の温度を測定することにより、その測定温度が各タンク2へ流入可能な下限温度以上であれば各タンク2へ冷却水を流入させ、下限温度未満であればバイパスバルブ12を開きバイパス路R3に冷却水を流すことで各タンク2へ流入することを回避する。そして、冷却水の温度が再び下限温度以上となれば各タンク2へ流入するようにバイパスバルブ12を閉じ、かつ流入経路R1及び流出経路R2上のバルブを開く。従って、タンク2の破損を防止しつつ、冷却水の温度が下限温度以上となれば再びタンク2への送液を開始することができる。このような温度管理処理は、ボイラー不良や蒸気圧の低下等の外乱による温度制御の不備にも対応することができ、このような場合にもタンク2内の負圧を原因とするタンク破損を防止することができる。
【0026】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本形態では、タンク2が2つある形態で説明したがこれに限られない。タンクの個数やタンクと接続される流入経路R1及び流出経路R2の構成は適宜変更してよい。各経路R1、R2に設けられるバルブの個数や位置も適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 タンク冷却システム
2 タンク
10 温度管理システム
11 温度計(温度測定手段)
12 バイパスバルブ
13 制御装置(バルブ制御手段)
R1 流入経路(導入路)
R2 流出経路(排出路)
R3 バイパス路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入路及び排出路がタンクにそれぞれ接続されて流路が形成され、加温された洗浄水でタンクを洗浄した後に前記タンクを冷却するための冷却水の温度を管理するタンク冷却水の温度管理システムであって、
前記タンクに流入する冷却水の温度を測定する温度測定手段と、
前記導入路から分岐して前記タンクを回避する経路上に配置されたバイパスバルブと、
前記温度測定手段の測定結果に基づいて前記バイパスバルブを開閉するように制御するバルブ制御手段と、
を備えたタンク冷却水の温度管理システム。
【請求項2】
前記バルブ制御手段は、前記バイパスバルブの開閉制御を判断する冷却水の下限温度を前記タンクの冷却が進むにつれて徐々に下げるように設定する請求項1に記載の温度管理システム。
【請求項3】
前記バルブ制御手段は、測定された冷却水の温度が、前記バイパスバルブの開閉制御を判断する冷却水の下限温度未満の場合に前記バイパスバルブを開くように制御する請求項1又は2に記載の温度管理システム。
【請求項4】
前記バルブ制御手段は、前記下限温度以上に冷却水の温度が上昇した場合に前記バイパスバルブを閉じるように制御する請求項3に記載の温度管理システム。
【請求項5】
前記導入路には、送液弁が設けられ、
前記排出路には、排液弁が設けられ、
前記バルブ制御手段は、前記バイパスバルブを開いたときには前記送液弁及び前記排液弁を閉じるように制御し、前記バイパスバルブを閉じたときには前記送液弁及び前記排液弁を開くように制御する請求項1〜4のいずれか一項に記載の温度管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110516(P2011−110516A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270299(P2009−270299)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(392032100)キリンエンジニアリング株式会社 (54)
【Fターム(参考)】