タンク及びタンクの施工方法
【課題】 防液堤等下部に鉛直方向緊張材を配した防液堤等を上部と下部に施工を区分することなく施工できる防液堤等を有する貯留タンクとその施工方法と提供する。
【解決手段】貯留槽3は、主に内槽11、外槽13等から構成され、略円柱状の形状を有する金属製の容器である。貯留槽3の下部は、鉄筋コンクリート製の基礎版7が設けられる。防液堤5は、貯留槽3に貯留される液体が漏洩した際に、低温液体がタンク1の外部へ流出することを防ぐ。防液堤5は、上部から下端までその厚さがほぼ同じであり、鉛直方向の所定の高さに定着部9を有している。定着部9は、防液堤5下方における鉛直方向のプレストレス力が特に必要な防液堤下端からの高さ範囲の上部に、防液堤5外面に所定の間隔で突き出た形状で設けられる。シース管21bは、防液堤5円周方向に所定の間隔で定着部9に鉛直方向に設けられる。また、シース管21aは、基礎版7に設けられる。
【解決手段】貯留槽3は、主に内槽11、外槽13等から構成され、略円柱状の形状を有する金属製の容器である。貯留槽3の下部は、鉄筋コンクリート製の基礎版7が設けられる。防液堤5は、貯留槽3に貯留される液体が漏洩した際に、低温液体がタンク1の外部へ流出することを防ぐ。防液堤5は、上部から下端までその厚さがほぼ同じであり、鉛直方向の所定の高さに定着部9を有している。定着部9は、防液堤5下方における鉛直方向のプレストレス力が特に必要な防液堤下端からの高さ範囲の上部に、防液堤5外面に所定の間隔で突き出た形状で設けられる。シース管21bは、防液堤5円周方向に所定の間隔で定着部9に鉛直方向に設けられる。また、シース管21aは、基礎版7に設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液体等を貯留する貯留槽と、その側部に設けられた壁体または防液堤とを具備するタンク及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温液体を貯留する貯留槽の場合、貯留する液体が内側の金属容器から漏洩した際に、貯留槽の外側に設けられる防液堤内面には漏洩した液体により液圧が作用し、液圧は防液堤下端において最大となる。この液体漏洩時の漏液圧に抗するために防液堤の円周方向に緊張材が配され、防液堤円周方向にプレストレス力が導入されている。液圧は防液堤下端ほど大きくなるので円周方向の緊張材は防液堤下部ほど密に、または大容量のものが配されており、円周方向プレストレス力も防液堤下部ほど大きくなる。貯留槽から液体の漏洩がない通常時、防液堤にはこの円周方向のプレストレス力により、防液堤下部には鉛直方向に外引張となる過大な曲げモーメントが発生、地震時には貯留槽の躯体慣性力により、部位によってはさらにこの現象が厳しい方向に推移する。
また、内容物が低温液体でLNG(液化天然ガス)の場合、設計指針の規定により漏液圧の2倍の液圧荷重に対して照査する必要があり、防液堤下部には鉛直方向に内引張となる大きな曲げモーメントが発生する(なお、この場合には地震を考慮して地震力との組み合わせは不要である)。
【0003】
従来、内容物の種類や荷重状態に関して向きの異なるこの過大な曲げモーメントによる防液堤鉛直方向の内・外面側に発生する引張力を緩和する対策として、防液堤鉛直方向にPC鋼材などの緊張材を配し、防液堤鉛直方向にもプレストレス力を導入している。しかし、この防液堤鉛直方向に配する緊張材の量は、発生する引張力が最大となる防液堤下端の引張力によって決まるため、防液堤上部では必要のない、または必要以上の鉛直方向の緊張材が配されることになり、防液堤施工上のコストアップをきたすという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、防液堤の施工を鉛直方向に区分し、緊張材を配した防液堤下部を最初に施工し、配した緊張材にプレストレス力を導入後、緊張材のシース管内にグラウトを注入し、所要の強度発現確認の後、防液堤上部を先に施工した防液堤下部の上に構築することが行われている(特許文献1)。
【0005】
また、防液堤下部を防液堤上部より拡幅し、上端から下端に至る防液堤全高の長さを有する鉛直方向緊張材と合わせて、この拡幅した防液堤下部に短い鉛直方向緊張材を配し、プレストレス力を導入することも行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−238697号公報
【特許文献2】特許第3839448号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に基づく発明では、防液堤構築を下部と上部に区分して施工するために、防液堤施工期間が長くることや、これによりコストアップをきたすという問題がある。これはプレストレス力導入が、打設したコンクリートの所要の強度発現を待ってから行う必要があることや、防液堤中段での緊張作業は他の多くの作業中断等、影響が大きいことによる。
【0008】
また、特許文献2の発明では、防液堤下部を拡幅するため防液堤円周方向の断面厚が大きくなり、円周方向のプレストレス力(所要の応力度;単位面積あたりのプレストレス力)導入に必要なPC鋼材量等が多くなる。さらには防液堤下部の拡幅によりコンクリートの量が増えることや、これによりコンクリート打設時の水和熱等にともなう温度ひび割れに対する対策を行う必要があるなど、コストアップをきたすという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鉛直方向緊張材を必要としない防液堤上部に緊張材を配することなく、もしくは防液堤上部の鉛直方向緊張材の量を必要最小限に留め、防液堤構築を下部と上部に区分して施工することなく、また防液堤下部を拡幅する必要のない安価で施工期間の短い防液堤を有するタンクおよびタンクの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、貯留物を貯留する貯留槽と、前記貯留槽の側部に設けられた壁体または防液堤と、を具備するタンクであって、前記壁体または前記防液堤に、周方向を緊張する周方向緊張材を設け、前記壁体または前記防液堤の下方に鉛直方向を緊張する鉛直方向緊張材を設け、前記壁体または前記防液堤の下端から所定の高さに、前記壁体または前記防液堤の外面に突き出た形状の定着部が設けられ、前記鉛直方向緊張材の少なくとも一方の端部は、前記定着部へ定着されることを特徴とするタンクである。ここで、貯留物とは、低温液体、常温液体、高温液体、穀類等の粒状、粉状物質などをさす。また、壁体とは、貯留槽本体の側壁を含む。
【0011】
前記鉛直方向緊張材は、前記壁体または前記防液堤の外側に設けられてもよい。
【0012】
前記壁体または前記防液堤の外側に設けられた前記鉛直方向緊張材は、曲がり部を有さず鉛直方向に形成されてもよい。
【0013】
前記壁体または前記防液堤の外側に設けられた前記鉛直方向緊張材は、外套管で防護されてもよい。
【0014】
前記鉛直方向緊張材は、一方の端部に定着板が設けられ、前記定着板が前記壁体または前記防液堤内部の鉛直方向高さ中央近傍内部に埋設され、前記壁体または前記防液堤下部で曲げられ、他方の端部が前記壁体または前記防液堤上部で定着されてもよい。
【0015】
第1の発明によれば、鉛直方向緊張材は、防液堤下方に設けられ、また、鉛直方向緊張材の端部は壁体または防液堤の外面、内部あるいは下部に設けられた定着部に定着されるので、鉛直方向緊張材へのプレストレス力導入作業は壁体または防液堤を上部まで完全に施工した後や施工中に他の工事を阻害することなく行うことができる。従って、防液堤等の施工を防液堤等下部と上部に区分することなく、防液堤等上部には必要ない緊張材を防液堤等上部に有しない、もしくは防液堤等上部の鉛直方向緊張材の量を必要最小限に留める防液堤等を具備する、低コストで工期の短いタンクを提供することができる。
【0016】
また、定着部は、防液堤等の外面、内部、又は下部に設けられるため、基本的には防液堤等の下部を厚くかつある程度の高さにわたって拡幅する必要がない。従って、防液堤等円周方向の軸剛性の増大が生ぜず、円周方向のプレストレス力導入に必要なPC鋼材量が多くなることはなく、防液堤等下部の拡幅によりコンクリートの量が増加すること、並びにこれによるコンクリート打設時の水和熱等にともなう温度ひび割れに対する対策等も必要なく、低コストのタンクを提供することができる。また、鉛直方向緊張材の一方の端部に定着板を設けて防液堤等内部の鉛直方向高さの中央近傍に埋め込み、防液堤等端部で曲げて他方の端部を防液堤等上方で定着させることで、一本の緊張材がJ字状に設けられ、防液堤等上方には必要以上のプレストレス力を付与せずに、防液堤等下方における鉛直方向のプレストレス力を効果的に付与することができる。更に、防液堤等下方にプレストレス力を付与する鉛直方向緊張材に加え、防液堤等上方にプレストレス力を付与する上方鉛直方向緊張材をJ字状に設けることもでき、この場合、防液堤等上方、下方に必要な本数の上方鉛直方向緊張材及び鉛直方向緊張材それぞれを配置することができる。ここで防液堤等とは、側壁等の壁体を含むものである。
【0017】
第2の発明は、下端から所定の高さに、外面に突き出た形状の定着部が設けられ、内部にシース管が埋設された壁体または防液堤を設ける工程と、緊張材を前記シース管に挿入する工程と、前記緊張材を緊張し、前記緊張材の一方の端部を前記定着部に定着する工程と、前記シース管にグラウトを注入する工程と、を具備することを特徴とするタンクの施工方法である。
【0018】
前記緊張材を、前記壁体または前記防液堤の外側に、曲がり部を有さず鉛直方向に形成してもよい。
【0019】
第2の発明によれば、鉛直方向緊張材を防液堤等下方に設けられるため、鉛直方向のプレストレス力が必要な箇所のみに重点的にまたは必要最小限量のプレストレス力を与えることができ、また、鉛直方向緊張材が曲がり部等を有さず、略鉛直に設けられるため、防液堤に対して曲げモーメントを与えることなく、確実に圧縮力を与えることができ、防液堤等を上部まで完全に施工した後や施工中に他の工事を阻害することなく、鉛直方向緊張材を緊張し、鉛直方向にプレストレス力を導入できるので、防液堤等の施工を防液堤上部と下部に区分する必要がない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、防液堤等の鉛直方向に対してプレストレス力が必要な部位のみに重点的にまたは必要最小限量の緊張材を有し、防液堤等下部を拡幅する必要がなく、防液堤等の下部と上部とを区分することなく一度に施工することが可能な、安価かつ施工期間の短いタンクおよびタンクの施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかる防液堤を具備するタンクの外観図。
【図2】(a)は、タンク1の断面図、(b)はタンク1の防液堤の断面部の詳細図。
【図3】図2の緊張材の配置図。
【図4(a)】図2の定着部の突起を防液堤の円周方向に断続的に設けた図。
【図4(b)】図2の定着部の突起を2段に防液堤の円周方向に連続的に設けた図。
【図4(c)】図2の定着部の突起を2段に防液堤の円周方向に連続的に設けた場合の緊張材の配置図。
【図5】定着部を防液堤の外面に設けたタンクの外観図。
【図6】(a)は、定着部を防液堤の外面に設けたタンクの断面図、(b)は防液堤の断面部の詳細図。
【図7】(a)は、厚肉部71を有するタンク70の断面図で、(b)は防液堤の断面部の詳細図。
【図8】(a)は、定着部を防液堤の内部に設けたタンクの断面図、(b)は(a)の防液堤の断面部の詳細図、(c)は凹部を埋め戻した状態を示す図。
【図9】(a)は、定着部を防液堤の下端の基礎版の下面に設けたタンクの断面図、(b)は、図9(a)の防液堤の断面部の詳細図、(c)は、防液堤の定着部の掘削穴を埋め戻した断面部の詳細図。
【図10】図9の緊張材の配置図。
【図11(a)】定着部を防液堤の下端の基礎版の側面に設けた防液堤の断面の詳細図。
【図11(b)】定着部を防液堤の下端の基礎版の側面に設けた防液堤の掘削穴を埋め戻した防液堤断面詳細図。
【図11(c)】定着部を防液堤の下端の基礎版の側面に設けた防液堤の掘削穴を埋め戻した防液堤断面詳細図。
【図12】防液堤上方に設ける鉛直方向緊張材の設置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる防液堤を具備するタンクの外観図であり、図2(a)はタンク1の断面図を示し、図2(b)は図2(a)のA部拡大図である。タンク1は主に貯留槽3、防液堤5、基礎版7等から構成される。
【0023】
貯留槽3は、主に内槽11、外槽13等から構成され、略円柱状の形状を有する金属製の容器である。貯留槽3の下部は、鉄筋コンクリート製の基礎版7が設けられる。基礎版7は、地面15下に埋設され、または直上に設置される。貯留槽3の周囲には、鉄筋コンクリート製の防液堤5が貯留槽3の側面上部までを覆うように設けられる。防液堤5は、基礎版7と一体構造または連結構造となっている。
【0024】
低温液体を貯留する貯留槽の場合には、低温対応鋼材を使用するなどした金属製の内槽11と外槽13の間に保冷材が配され、一般的に内容液の側面に対する液圧は常時は内槽11にて保持され、防液堤5には作用しない。防液堤5は、貯留槽3に貯留される液体が漏洩した際に、低温液体がタンク1の外部へ流出することを防ぐ。防液堤5は、上部から下端までその厚さがほぼ同じであり、鉛直方向の所定の高さに定着部9を有している。
【0025】
定着部9は、防液堤5下方における鉛直方向のプレストレス力が特に必要な防液堤下端からの高さ範囲の上部に、防液堤5外面に所定の間隔で突き出た形状で設けられる。防液堤5下方における鉛直方向のプレストレス力が特に必要な範囲とは、後述する周方向緊張材10により生じる曲げモーメントにより防液堤5外面下方の鉛直方向に引張力が生じる範囲、もしくは低温液体の漏液圧の2倍を設計荷重として考慮する場合の曲げモーメントにより防液堤5内面下方の鉛直方向に引張力が生じる範囲から決定される範囲である。なお、定着部9は、鉄筋コンクリート製や鋼製等で形成される。なお、図示は省略するが、防液堤5の定着部9よりも上方においても、必要最低限の鉛直方向緊張材を別途設けることが望ましい。防液堤5の強度を考慮すると、防液堤5の上方においても最低限のプレストレス力を付与する必要があるためである。防液堤5の上方に設けられる鉛直方向緊張材についての設置形態については後述する。
【0026】
防液堤5内部には、防液堤5の周方向にPC緊張材である周方向緊張材19が配される。周方向緊張材19は、防液堤5下部ほど密に配されている。周方向緊張材19は図示を省略したシース管等に挿入され、図示を省略した定着部で定着される。周方向緊張材19によって、防液堤5の周方向にプレストレス力が付与されている。
【0027】
シース管21は、防液堤5円周方向に所定の間隔で防液堤5内部に埋設される。シース管21の端部は定着部9から曲がり部23を経て、防液堤5壁内のほぼ中央にほぼ鉛直方向で配される。シース管21の材質は金属製あるいは樹脂製などである。
【0028】
防液堤5を施工中または施工後、埋設されたシース管21にPC緊張材である鉛直方向緊張材17が挿入され、鉛直方向緊張材17が、図2(a)に示すようにX方向に緊張された後、定着部9に定着され、プレストレス力が導入される。なお、シース管21内には、図示を省略したグラウトが注入される。
【0029】
図3(a)は図2に示された埋設された鉛直方向緊張材17の配置を示す図である。鉛直方向緊張材17は、防液堤5の周方向に所定の間隔で設けられる。鉛直方向緊張材17は防液堤5内部に略鉛直方向に設けられ、一方の端部が、防液堤5の外面に設けられた定着部9で定着される。鉛直方向緊張材17は、基礎版7のU字部25で折り返し、もう一方の端部が他の定着部9に定着される。この場合、鉛直方向緊張材17の両端が定着部9で緊張され、定着される。
【0030】
鉛直方向緊張材17を緊張して導入した鉛直方向のプレストレス力は、防液堤5の下部の鉛直方向に圧縮力を生じさせる。また、鉛直方向緊張材17が曲がり部23を有し、防液堤5の外面の定着部9に定着されるため、防液堤5の施工後にプレストレス力を付与することができ、このため、防液堤5の施工を中段部で止めることなく底部から上部までを一度に施工することができる。
【0031】
なお、鉛直方向緊張材17の配置方法は、以上の形態に限られない。例えば、図3(b)に示すように、鉛直方向緊張材17の一方の端部を定着部9へ定着し、他方の端部を防液堤5下方内部(基礎版7内)で固定してもよい。この場合、鉛直方向緊張材17は、略鉛直方向に設けられ、下端はU字部25を有さない。
【0032】
鉛直方向緊張材17を防液堤5内部で固定するには、まず、一方の端部に定着板が設けられた鉛直方向緊張材17がシース管21に挿入される。鉛直方向緊張材17はシース管21とともに防液堤5に埋設される。緊張材先端27には、定着板が設けられているため、定着板が防液堤5(基礎版7内)に固定される。鉛直方向緊張材17の他方の端部は、防液堤5に設けられた定着部9より防液堤5の外部へ導出される。防液堤5を施工後に、定着部9にて、鉛直方向緊張材17を緊張して定着することで、緊張材先端27と定着部9との間の鉛直方向にプレストレス力が付与される。この場合、鉛直方向緊張材17はU字部25を有さないため、U字部25に該当する間の緊張材を削減することができる。
【0033】
また、定着部9の形態は、タンク1の形態に限られない。例えば、図4(a)は定着部9の突起を防液堤5の外面に円周方向に断続して設けられたタンク30を示す図である。定着部9を断続的に設けることで、コンクリートの使用量を削減することができる。なお、この場合でも、鉛直方向緊張材17は図3(a)の如くU字形に配されてもよく、あるいは図3(b)のように直線状に配されてもよい。
【0034】
図4(b)はタンク40を示す斜視図であり、図4(c)は、タンク40の正面透視図である。タンク40は、定着部9が鉛直方向に2段設けられる。防液堤5内部に設けられる鉛直方向緊張材17は、一方の端部が下方の定着部9aに定着され、U字部25で折り返し、もう一方の端部が上方の定着部9bで定着される。なお、図3(b)に示すように、定着部9a、9bそれぞれに鉛直方向緊張材17が直線状に配されてもよい。
【0035】
定着部9を鉛直方向に複数段に設けることで、鉛直方向緊張材17の鉛直方向の定着位置を、複数個所に分けることができる。このため、防液堤5の下方に付与される鉛直方向のプレストレス力の発生する高さが、防液堤5の鉛直方向の一箇所に集中することが無い。また、防液堤5の円周方向の隣り合う定着部9の間隔が広くなり、鉛直方向緊張材17の定着作業が容易になる。
【0036】
本実施の形態にかかるタンク1によれば、防液堤5の施工後に鉛直方向緊張材17を緊張して定着することができるため、防液堤5の施工を定着部9の上下で区分することなく、一度に施工することができ、防液堤5の施工工期を短縮することができる。また、鉛直方向緊張材17は、鉛直方向にプレストレス力が特に必要な範囲に設けられるため、施工が容易であるとともに低コストであるタンク1を得ることができる。
【0037】
また、鉛直方向緊張材17は、防液堤5の壁厚のほぼ中央に設けられるため、防液堤5に付与される鉛直方向のプレストレス力によって、効率よく防液堤5へ圧縮力を付与することができ、鉛直方向緊張材17による曲げモーメントの発生が少ない。また、定着部9部以外は、防液堤5の厚みはほぼ一定であるため、使用するコンクリートを削減できるとともに、コンクリート打設時の厚肉部および近傍におけるひび割れ等の発生も少ないため、補強鉄筋配置などによる補強が不要もしくは少なくてすむ。
【0038】
次に、第2の実施の形態にかかるタンク50について説明する。以下の実施の形態において、図1〜図3に示すタンク1と同一の機能を果たす構成要素には、図1〜図3と同一番号を付し、重複した説明を避ける。第2の実施の形態にかかるタンク50はタンク1と異なり、鉛直方向緊張材17が防液堤5の外側に設けられる。
【0039】
図5は、第2の実施の形態にかかる防液堤5を具備するタンク50の外観図であり、図6(a)はタンク50の断面図、図6(b)は図6(a)のB部拡大図である。タンク50は主に貯留槽3、防液堤5、基礎版7等から構成される。
【0040】
定着部9は、防液堤5下方における鉛直方向のプレストレス力が特に必要な防液堤下端からの高さ範囲の上部に、防液堤5外面に所定の間隔で突き出た形状で設けられる。防液堤5下方における鉛直方向のプレストレス力が特に必要な範囲とは、後述する周方向緊張材19により生じる曲げモーメントにより、防液堤5外周面下方に引張力が生じる範囲である。定着部9は鋼製、鉄筋コンクリート製、鋼とコンクリートの合成構造などから成る。なお、図示は省略するが、防液堤5の定着部9よりも上方においても、必要最低限の鉛直方向緊張材を別途設けることが望ましい。
【0041】
防液堤5内部には、防液堤5の周方向にPC緊張材である周方向緊張材19が配される。周方向緊張材19は、防液堤5下部ほど密に配されている。周方向緊張材19によって、防液堤5の周方向にはプレストレス力が付与されている。
【0042】
シース管21bは、防液堤5円周方向に所定の間隔で定着部9に鉛直方向に設けられる。また、シース管21aは、基礎版7に設けられる。
【0043】
防液堤5を施工中または施工後、埋設されたシース管21a、21bにPC緊張材である鉛直方向緊張材17が挿入され、鉛直方向緊張材17が、図6(b)に示すようにX方向に緊張された後、定着部9に定着され、プレストレス力が導入される。なお、シース管21a、21b内には、図示を省略したグラウトが注入される。
【0044】
鉛直方向緊張材17は、前述の通り、図3(a)に示すようにU字部25を有しても良く、また、図3(b)に示すように、直線状に設けられても良い。シース管21aは、鉛直方向緊張材17がU字部25を有する場合には、U字部25に応じた形状を有し、また、鉛直方向緊張材17が直線状に設けられる場合には、緊張材先端27が固定できるように、固定部まで鉛直に設けられる。なお、防液堤5の外部に露出する鉛直方向緊張材17は、図示を省略する防錆被覆あるいは外套管などで防護される。保護コンクリートを後打設してもよい。
【0045】
第2の実施の形態にかかるタンク50によれば、第1の実施の形態にかかるタンク1と同様の効果を得ることができる。また、鉛直方向緊張材17は曲がり部23を有さず、鉛直方向に設けられるため、鉛直方向緊張材17の緊張および定着作業が容易である。
【0046】
次に、第3の実施の形態にかかるタンク70について説明する。第3の実施の形態にかかるタンク70はタンク1と異なり、防液堤5の下方に厚肉部71が設けられ、鉛直方向緊張材17が防液堤5の厚肉部71に設けられる。
【0047】
図7(a)はタンク70を示す図であり、図7(b)は図7(a)のC部拡大図である。タンク70の防液堤5の下方は、厚肉部71が設けられる。厚肉部71は、定着部9の突起を防液堤5の外面に基礎版7まで一体化されることで設けられる。
【0048】
なお、鉛直方向緊張材17は、前述の通り、図3(a)に示すようにU字部25を有しても良く、また、図3(b)に示すように、直線状に設けられても良い。
【0049】
第3の実施の形態にかかるタンク70によれば、第1の実施の形態にかかるタンク1と同様の効果を得ることができる。また、鉛直方向緊張材17は曲がり部23を有さず、鉛直方向に設けられるため、緊張および定着作業が容易である。また、タンク50のように、鉛直方向緊張材17が外部に露出することがない。更に、鉛直方向緊張材17を、防液堤5の厚肉部71における壁厚のほぼ中央とすれば、偏心が無く、鉛直方向緊張材17により付与されるプレストレス力によって防液堤5の下部に曲げモーメントを生じることがない。
【0050】
次に、第4の実施形態について説明する。図8は、第4の実施の形態にかかるタンク80を示す図であり、図8(a)はタンク80の断面図を示し、図8(b)、図8(c)は図8(a)のD部拡大図である。タンク80は主に貯留槽3、防液堤5、基礎版7等から構成される。
【0051】
貯留槽3の周囲には、防液堤5が設けられる。防液堤5は上部から下端までその厚さがほぼ同じであり、基礎版7と一体構造となっている。防液堤5の鉛直方向の所定の高さには凹部81が設けられる。凹部81は、防液堤5の外側より設けられ、凹部81が定着部9として機能する。
【0052】
定着部9は、防液堤5の鉛直方向の特にプレストレス力が必要な、防液堤下端からの高さ範囲の上部に設けられる。すなわち、凹部81は、防液堤5の鉛直方向のプレストレス力が特に必要な、防液堤下端からの高さ範囲の上部に設けられる。なお、図示は省略するが、防液堤5の定着部9よりも上方においても、必要最低限の鉛直方向緊張材を別途設けることが望ましい。
【0053】
ここで、凹部81は、図8に示す形態に限られず、防液堤5を貫通する穴であっても良い。この場合、防液堤5に設けられた凹部81には、貯留槽3の外槽13が露出する。
【0054】
防液堤5内部には、周方向緊張材19が配され、周方向緊張材19は、防液堤5下部ほど密に配されている。周方向緊張材も図示を省略した定着部で定着され、防液堤5周方向にプレストレス力が付与されている。
【0055】
防液堤5の円周方向に所定の間隔でシース管21が定着部9から防液堤5壁内のほぼ中央を鉛直方向に配される。
【0056】
防液堤5を施工中または施工後、埋設されたシース管21に鉛直方向緊張材17が挿入され、鉛直方向緊張材17が、図8(b)に示すようにX方向に緊張される。その後、鉛直方向緊張材17の端部が定着部9に定着され、防液堤5下部に圧縮力となるプレストレス力が導入される。なお、シース管21内には鉛直方向緊張材が定着後、図示を省略したグラウトが注入される。
【0057】
鉛直方向緊張材17が定着された後、定着部9は、図8(C)に示すようにコンクリート83で埋め戻される。
【0058】
なお、鉛直方向緊張材17の配置はU字形に配し、鉛直方向緊張材17の両端を定着部9で定着してもよく、あるいは鉛直方向緊張材17の一方の端部を定着部9へ定着し、他方の端部を防液堤5内部で固定してもよい。また、図2と図8の形態を組み合わせることで、図2の定着部9の突出部分を小さくすることができ、よりコンパクトにすることが可能となる。
【0059】
第4の実施の形態にかかるタンク80によれば、第1の実施の形態にかかるタンク1と同様の効果を得ることができる。また、鉛直方向緊張材17は曲がり部23を有さず、鉛直方向に設けられるため、緊張および定着作業が容易である。また、タンク50のように、鉛直方向緊張材17が外部に露出することがない。
【0060】
更に、鉛直方向緊張材17が、防液堤5の壁厚のほぼ中央に設けられるため、偏心が無く、鉛直方向緊張材17により付与されるプレストレス力によって防液堤5の下部に曲げモーメントを生じることがない。また、定着部9が防液堤5内部に設けられるため、防液堤5外面に突起形状を有さない。
【0061】
次いで、第5の実施形態を説明する。図9は、第5の実施の形態にかかるタンク90の外観図であり、図9(a)はタンク90の断面図を示し、図9(b)、図9(c)は図9(a)のE部拡大図である。タンク90は主に貯留槽3、防液堤5、基礎版7等から構成される。
【0062】
貯留槽3の周囲には、防液堤5が設けられる。防液堤5は上部から下端までその厚さがほぼ同じであり、基礎版7と一体構造となっている。基礎版7の下面には定着部9が設けられる。
【0063】
防液堤5内部には、周方向緊張材19が配され、周方向緊張材19は、防液堤5下部ほど密に配されている。周方向緊張材も図示を省略した定着部で定着され、防液堤5周方向にプレストレス力が付与されている。防液堤5円周方向に所定の間隔で、定着部9から防液堤5の鉛直方向のプレストレス力が必要な範囲の上部までの間にシース管21が埋設される。
【0064】
防液堤5を施工後、基礎版7の定着部9周辺の地面15が掘削され、掘削穴91が設けられる。防液堤5に埋設されたシース管21に鉛直方向緊張材17が挿入され、鉛直方向緊張材17が、図9(b)に示すようにX方向に緊張された後、定着部9に定着され、防液堤5下部に圧縮力となるプレストレス力が導入される。なお、シース管21内には鉛直方向緊張材が導入、定着後、図示を省略したグラウトが注入される。
【0065】
鉛直方向緊張材17が定着部9に定着された後、掘削穴91は図9(c)に示すように埋め戻される。
【0066】
図10(a)は、タンク90の鉛直方向緊張材17を透視した図である。鉛直方向緊張材17は、定着部9で一方の端部が定着され、上方に向かってU字部25を形成し、もう一方の端部が他の定着部9へ定着される。
【0067】
なお、鉛直方向緊張材17の配置方法は、図10(b)に示すように、鉛直方向緊張材17の一方の端部を定着部9へ定着し、他方の端部を防液堤5内部で固定してもよい。この場合、鉛直方向緊張材17は、略鉛直方向に設けられ、U字部25を有さない。この場合、予め定着版を緊張材先端27に取り付けた緊張材を埋め込んでおく。
【0068】
鉛直方向緊張材17を防液堤5内部で固定するには、まず、一方の端部に定着板が設けられた鉛直方向緊張材17がシース管21に挿入される。鉛直方向緊張材17はシース管21とともに防液堤5に埋設される。緊張材先端27には、定着板が設けられているため、定着板が防液堤5(基礎版7)に固定される。鉛直方向緊張材17の他方の端部は、防液堤5に設けられた定着部9より防液堤5の外部へ導出される。防液堤5を施工後に、定着部9にて、鉛直方向緊張材17を下方に緊張して定着することで、緊張材先端27と定着部9との間の鉛直方向にプレストレス力が付与される。この場合、鉛直方向緊張材17はU字部25を有さないため、U字部25に該当する間の緊張材を削減することができる。
【0069】
また、定着部9の形態は、タンク90の形態に限られない。定着部9を基礎版7の側面に設けてもよい。図11(a)、図11(b)は、定着部9が基礎版7の側面に設けられた場合の施工方法を示す図である。
【0070】
防液堤5を施工後、定着部9周辺の地面15が掘削され、掘削穴91が設けられる。防液堤5に埋設されたシース管21に鉛直方向緊張材17が挿入され、鉛直方向緊張材17が、図11(a)に示すようにX方向に緊張された後、定着部9に定着され、防液堤5下部に圧縮力となるプレストレス力が導入される。なお、シース管21内には鉛直方向緊張材が導入、定着後、図示を省略したグラウトが注入される。
【0071】
鉛直方向緊張材17が定着部9に定着された後、掘削穴91は図9(c)に示すように埋め戻される。このように、定着部9を基礎版7の側面に設ければ、基礎版7の側面周辺だけを掘削すればよく、掘削および鉛直方向緊張材17をシース管に挿入・緊張・定着する作業が容易になる。
【0072】
また、図11(c)に示すように基礎版7の側面に設ける定着部9上部を外ハンチなどでごく部分的に必要最小限だけ拡幅することで鉛直方向緊張材17の定着部の曲がり部23の曲がりが大きくなり、鉛直方向緊張材17をシースに挿入、定着する作業がより容易になる。曲がりの半径を大きくすることで緊張作業に伴う、シース管21と鉛直方向緊張材17の摩擦による緊張力の長さ方向のロス(緊張端からU字部へ向かう方向の導入力の落ち分)が小さくなる。
この他に外ハンチなどを設けないで鉛直方向緊張材17の曲がりの半径を大きくする方法としては、曲がりを貯留槽平面の中心から放射方向に沿って行わずに、ある程度角度を有することで可能となる。
【0073】
第5の実施の形態にかかるタンク90によれば、第1の実施の形態にかかるタンク1と同様の効果を得ることができる。また、鉛直方向緊張材17は曲がり部23を有さなければ、鉛直方向緊張材17の緊張および定着作業が容易である。
【0074】
また、鉛直方向緊張材17が、防液堤5の壁厚のほぼ中央に設けられるため、偏心が無く、鉛直方向緊張材17により付与されるプレストレス力によって防液堤5の下部に曲げモーメントを生じることがない。また、定着部9が防液堤5内部に設けられるため、防液堤5外面に突起形状を有さない。
【0075】
さらに、定着部9が防液堤5の下部の基礎版7に設けられるため、防液堤5に定着部9を別途設ける必要がない。また、緊張及び定着作業等を低い場所で行うことができるため作業性がよい。
【0076】
次に、防液堤5上方へのプレストレス力の付与方法について説明する。図12は、防液堤5の上方へプレストレス力を付与する鉛直方向緊張材の配置例を示す図である。
【0077】
図12(a)に示すように、タンク100は、鉛直方向緊張材101が設けられる。鉛直方向緊張材101は、図示を省略したシース管内に挿入され、防液堤5内部に埋め込まれる。鉛直方向緊張材101の一方の端部(緊張材先端103)には図示を省略した定着板が設けられ、防液堤5内部の鉛直方向中央近傍に埋め込まれる。
【0078】
鉛直方向緊張材101の緊張材先端103から下方に向かう部位は、下方緊張部108であり、防液堤5の下方にプレストレス力を付与することができる。鉛直方向緊張材101は、基礎版7内のU字部105で曲げられて、再度上方に向かう。鉛直方向緊張材101の端部は防液堤5の上部にて定着される。鉛直方向緊張材101のU字部105から上方の定着部までの間は上方緊張部であり、防液堤5の上方へ(下方を含む)プレストレス力を付与する。すなわち、鉛直方向緊張材101はJ字状に配置される。
【0079】
なお、緊張材先端103近傍に定着部9を設ければ、下方緊張部108を前述の鉛直方向緊張材17として機能させることもできる。また、U字部105の方向を互い違いにして、隣接する鉛直方向緊張材101を互いにラップさせることもできる。
【0080】
また、図12(b)に示すように、前述のJ字状の鉛直方向緊張材101を防液堤5の下部まで配置せずに、防液堤5の鉛直方向高さ中央近傍にU字部105を設けて、鉛直方向緊張材101を防液堤5内の高さ中央近傍で曲げることもできる。
【0081】
この場合、鉛直方向緊張材101は、防液堤5の上方のみにプレストレス力を付与し、防液堤5下方へのプレストレス力の付与は、前述の鉛直方向緊張材17を別途設ける必要がある。この場合、鉛直方向緊張材17の上端(定着部9)と鉛直方向緊張材101の下端(U字部105)とは、防液堤5の鉛直方向の高さにおいて一部ラップさせることが望ましい。防液堤5へのプレストレス力を鉛直方向に連続的に付与するためである。
【0082】
なお、防液堤5の上方への鉛直方向緊張材の配置は、防液堤5の上方に必要なプレストレス力を付与することが可能なU字部105を有さない鉛直方向緊張材を、防液堤5の上方から防液堤の下部または中央まで略鉛直方向に別途配置することもできる。また、鉛直方向緊張材101は、鉛直方向緊張材17の設置ピッチの例えば2倍から4倍とすることができ、強度要件に応じて設定することができる。
【0083】
以上のように、防液堤5の下方へプレストレス力を付与する鉛直方向緊張材17に加え、または一部を置換して、上方緊張部109を有する鉛直方向緊張材101を設けることで、防液堤5の上方においても、必要最低限のプレストレス力を付与することができる。
【0084】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0085】
例えば、シース管21に代えて防液堤5にプレグラウト緊張材を埋設し、防液堤5を施工後、プレグラウト緊張材を緊張してもよい。この場合、防液堤5の施工時に、プレグラウト緊張材を埋設し、定着部9に端部を導出しておき、防液堤5施工後に、プレグラウト緊張材定着部9で、緊張及び定着すればよい。プレグラウト緊張材によれば、シース管に緊張材を挿入する必要がなく、グラウトをシース管21に充填する必要も無い。
【0086】
また、前述として鉛直方向緊張材17が、防液堤5の壁厚のほぼ中央に設けられるため、偏心が無く、鉛直方向緊張材17により付与されるプレストレス力によって防液堤5の下部に曲げモーメントを生じることがない、と明記しているが、必要に応じ、任意の設計荷重に抵抗する向きの偏心曲げモーメントを発生させるために、故意に鉛直方向緊張材17を全体あるいは部分的に壁厚の外側もしくは内側に寄せて偏心設置することも可能である。
【0087】
また、各種の実施例を組み合わせることもできる。例えば、図3(a)に示したタンク1に設けられた鉛直方向緊張材17に、図12(a)で示したタンク100に設けられた鉛直方向緊張材101を所定数量だけ追加または置換して配置することもできる。また、防液堤5に代えて、タンクの側壁等の壁体に対しても同様に実施することができ、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0088】
1、30、40、50、60、80、90、100、110………タンク
3………貯留槽
5………防液堤
7………基礎版
9、9a、9b………定着部
11……内槽
13……外槽
15……地面
17……鉛直方向緊張材
19……周方向緊張材
21、21a、21b……シース管
23……曲がり部
25……U字部
81……凹部
83……コンクリート
91……掘削穴
101……鉛直方向緊張材
103……緊張材先端
105……U字部
107……定着部
108……下方緊張部
109……上方緊張部
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液体等を貯留する貯留槽と、その側部に設けられた壁体または防液堤とを具備するタンク及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温液体を貯留する貯留槽の場合、貯留する液体が内側の金属容器から漏洩した際に、貯留槽の外側に設けられる防液堤内面には漏洩した液体により液圧が作用し、液圧は防液堤下端において最大となる。この液体漏洩時の漏液圧に抗するために防液堤の円周方向に緊張材が配され、防液堤円周方向にプレストレス力が導入されている。液圧は防液堤下端ほど大きくなるので円周方向の緊張材は防液堤下部ほど密に、または大容量のものが配されており、円周方向プレストレス力も防液堤下部ほど大きくなる。貯留槽から液体の漏洩がない通常時、防液堤にはこの円周方向のプレストレス力により、防液堤下部には鉛直方向に外引張となる過大な曲げモーメントが発生、地震時には貯留槽の躯体慣性力により、部位によってはさらにこの現象が厳しい方向に推移する。
また、内容物が低温液体でLNG(液化天然ガス)の場合、設計指針の規定により漏液圧の2倍の液圧荷重に対して照査する必要があり、防液堤下部には鉛直方向に内引張となる大きな曲げモーメントが発生する(なお、この場合には地震を考慮して地震力との組み合わせは不要である)。
【0003】
従来、内容物の種類や荷重状態に関して向きの異なるこの過大な曲げモーメントによる防液堤鉛直方向の内・外面側に発生する引張力を緩和する対策として、防液堤鉛直方向にPC鋼材などの緊張材を配し、防液堤鉛直方向にもプレストレス力を導入している。しかし、この防液堤鉛直方向に配する緊張材の量は、発生する引張力が最大となる防液堤下端の引張力によって決まるため、防液堤上部では必要のない、または必要以上の鉛直方向の緊張材が配されることになり、防液堤施工上のコストアップをきたすという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、防液堤の施工を鉛直方向に区分し、緊張材を配した防液堤下部を最初に施工し、配した緊張材にプレストレス力を導入後、緊張材のシース管内にグラウトを注入し、所要の強度発現確認の後、防液堤上部を先に施工した防液堤下部の上に構築することが行われている(特許文献1)。
【0005】
また、防液堤下部を防液堤上部より拡幅し、上端から下端に至る防液堤全高の長さを有する鉛直方向緊張材と合わせて、この拡幅した防液堤下部に短い鉛直方向緊張材を配し、プレストレス力を導入することも行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−238697号公報
【特許文献2】特許第3839448号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に基づく発明では、防液堤構築を下部と上部に区分して施工するために、防液堤施工期間が長くることや、これによりコストアップをきたすという問題がある。これはプレストレス力導入が、打設したコンクリートの所要の強度発現を待ってから行う必要があることや、防液堤中段での緊張作業は他の多くの作業中断等、影響が大きいことによる。
【0008】
また、特許文献2の発明では、防液堤下部を拡幅するため防液堤円周方向の断面厚が大きくなり、円周方向のプレストレス力(所要の応力度;単位面積あたりのプレストレス力)導入に必要なPC鋼材量等が多くなる。さらには防液堤下部の拡幅によりコンクリートの量が増えることや、これによりコンクリート打設時の水和熱等にともなう温度ひび割れに対する対策を行う必要があるなど、コストアップをきたすという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鉛直方向緊張材を必要としない防液堤上部に緊張材を配することなく、もしくは防液堤上部の鉛直方向緊張材の量を必要最小限に留め、防液堤構築を下部と上部に区分して施工することなく、また防液堤下部を拡幅する必要のない安価で施工期間の短い防液堤を有するタンクおよびタンクの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、貯留物を貯留する貯留槽と、前記貯留槽の側部に設けられた壁体または防液堤と、を具備するタンクであって、前記壁体または前記防液堤に、周方向を緊張する周方向緊張材を設け、前記壁体または前記防液堤の下方に鉛直方向を緊張する鉛直方向緊張材を設け、前記壁体または前記防液堤の下端から所定の高さに、前記壁体または前記防液堤の外面に突き出た形状の定着部が設けられ、前記鉛直方向緊張材の少なくとも一方の端部は、前記定着部へ定着されることを特徴とするタンクである。ここで、貯留物とは、低温液体、常温液体、高温液体、穀類等の粒状、粉状物質などをさす。また、壁体とは、貯留槽本体の側壁を含む。
【0011】
前記鉛直方向緊張材は、前記壁体または前記防液堤の外側に設けられてもよい。
【0012】
前記壁体または前記防液堤の外側に設けられた前記鉛直方向緊張材は、曲がり部を有さず鉛直方向に形成されてもよい。
【0013】
前記壁体または前記防液堤の外側に設けられた前記鉛直方向緊張材は、外套管で防護されてもよい。
【0014】
前記鉛直方向緊張材は、一方の端部に定着板が設けられ、前記定着板が前記壁体または前記防液堤内部の鉛直方向高さ中央近傍内部に埋設され、前記壁体または前記防液堤下部で曲げられ、他方の端部が前記壁体または前記防液堤上部で定着されてもよい。
【0015】
第1の発明によれば、鉛直方向緊張材は、防液堤下方に設けられ、また、鉛直方向緊張材の端部は壁体または防液堤の外面、内部あるいは下部に設けられた定着部に定着されるので、鉛直方向緊張材へのプレストレス力導入作業は壁体または防液堤を上部まで完全に施工した後や施工中に他の工事を阻害することなく行うことができる。従って、防液堤等の施工を防液堤等下部と上部に区分することなく、防液堤等上部には必要ない緊張材を防液堤等上部に有しない、もしくは防液堤等上部の鉛直方向緊張材の量を必要最小限に留める防液堤等を具備する、低コストで工期の短いタンクを提供することができる。
【0016】
また、定着部は、防液堤等の外面、内部、又は下部に設けられるため、基本的には防液堤等の下部を厚くかつある程度の高さにわたって拡幅する必要がない。従って、防液堤等円周方向の軸剛性の増大が生ぜず、円周方向のプレストレス力導入に必要なPC鋼材量が多くなることはなく、防液堤等下部の拡幅によりコンクリートの量が増加すること、並びにこれによるコンクリート打設時の水和熱等にともなう温度ひび割れに対する対策等も必要なく、低コストのタンクを提供することができる。また、鉛直方向緊張材の一方の端部に定着板を設けて防液堤等内部の鉛直方向高さの中央近傍に埋め込み、防液堤等端部で曲げて他方の端部を防液堤等上方で定着させることで、一本の緊張材がJ字状に設けられ、防液堤等上方には必要以上のプレストレス力を付与せずに、防液堤等下方における鉛直方向のプレストレス力を効果的に付与することができる。更に、防液堤等下方にプレストレス力を付与する鉛直方向緊張材に加え、防液堤等上方にプレストレス力を付与する上方鉛直方向緊張材をJ字状に設けることもでき、この場合、防液堤等上方、下方に必要な本数の上方鉛直方向緊張材及び鉛直方向緊張材それぞれを配置することができる。ここで防液堤等とは、側壁等の壁体を含むものである。
【0017】
第2の発明は、下端から所定の高さに、外面に突き出た形状の定着部が設けられ、内部にシース管が埋設された壁体または防液堤を設ける工程と、緊張材を前記シース管に挿入する工程と、前記緊張材を緊張し、前記緊張材の一方の端部を前記定着部に定着する工程と、前記シース管にグラウトを注入する工程と、を具備することを特徴とするタンクの施工方法である。
【0018】
前記緊張材を、前記壁体または前記防液堤の外側に、曲がり部を有さず鉛直方向に形成してもよい。
【0019】
第2の発明によれば、鉛直方向緊張材を防液堤等下方に設けられるため、鉛直方向のプレストレス力が必要な箇所のみに重点的にまたは必要最小限量のプレストレス力を与えることができ、また、鉛直方向緊張材が曲がり部等を有さず、略鉛直に設けられるため、防液堤に対して曲げモーメントを与えることなく、確実に圧縮力を与えることができ、防液堤等を上部まで完全に施工した後や施工中に他の工事を阻害することなく、鉛直方向緊張材を緊張し、鉛直方向にプレストレス力を導入できるので、防液堤等の施工を防液堤上部と下部に区分する必要がない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、防液堤等の鉛直方向に対してプレストレス力が必要な部位のみに重点的にまたは必要最小限量の緊張材を有し、防液堤等下部を拡幅する必要がなく、防液堤等の下部と上部とを区分することなく一度に施工することが可能な、安価かつ施工期間の短いタンクおよびタンクの施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかる防液堤を具備するタンクの外観図。
【図2】(a)は、タンク1の断面図、(b)はタンク1の防液堤の断面部の詳細図。
【図3】図2の緊張材の配置図。
【図4(a)】図2の定着部の突起を防液堤の円周方向に断続的に設けた図。
【図4(b)】図2の定着部の突起を2段に防液堤の円周方向に連続的に設けた図。
【図4(c)】図2の定着部の突起を2段に防液堤の円周方向に連続的に設けた場合の緊張材の配置図。
【図5】定着部を防液堤の外面に設けたタンクの外観図。
【図6】(a)は、定着部を防液堤の外面に設けたタンクの断面図、(b)は防液堤の断面部の詳細図。
【図7】(a)は、厚肉部71を有するタンク70の断面図で、(b)は防液堤の断面部の詳細図。
【図8】(a)は、定着部を防液堤の内部に設けたタンクの断面図、(b)は(a)の防液堤の断面部の詳細図、(c)は凹部を埋め戻した状態を示す図。
【図9】(a)は、定着部を防液堤の下端の基礎版の下面に設けたタンクの断面図、(b)は、図9(a)の防液堤の断面部の詳細図、(c)は、防液堤の定着部の掘削穴を埋め戻した断面部の詳細図。
【図10】図9の緊張材の配置図。
【図11(a)】定着部を防液堤の下端の基礎版の側面に設けた防液堤の断面の詳細図。
【図11(b)】定着部を防液堤の下端の基礎版の側面に設けた防液堤の掘削穴を埋め戻した防液堤断面詳細図。
【図11(c)】定着部を防液堤の下端の基礎版の側面に設けた防液堤の掘削穴を埋め戻した防液堤断面詳細図。
【図12】防液堤上方に設ける鉛直方向緊張材の設置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる防液堤を具備するタンクの外観図であり、図2(a)はタンク1の断面図を示し、図2(b)は図2(a)のA部拡大図である。タンク1は主に貯留槽3、防液堤5、基礎版7等から構成される。
【0023】
貯留槽3は、主に内槽11、外槽13等から構成され、略円柱状の形状を有する金属製の容器である。貯留槽3の下部は、鉄筋コンクリート製の基礎版7が設けられる。基礎版7は、地面15下に埋設され、または直上に設置される。貯留槽3の周囲には、鉄筋コンクリート製の防液堤5が貯留槽3の側面上部までを覆うように設けられる。防液堤5は、基礎版7と一体構造または連結構造となっている。
【0024】
低温液体を貯留する貯留槽の場合には、低温対応鋼材を使用するなどした金属製の内槽11と外槽13の間に保冷材が配され、一般的に内容液の側面に対する液圧は常時は内槽11にて保持され、防液堤5には作用しない。防液堤5は、貯留槽3に貯留される液体が漏洩した際に、低温液体がタンク1の外部へ流出することを防ぐ。防液堤5は、上部から下端までその厚さがほぼ同じであり、鉛直方向の所定の高さに定着部9を有している。
【0025】
定着部9は、防液堤5下方における鉛直方向のプレストレス力が特に必要な防液堤下端からの高さ範囲の上部に、防液堤5外面に所定の間隔で突き出た形状で設けられる。防液堤5下方における鉛直方向のプレストレス力が特に必要な範囲とは、後述する周方向緊張材10により生じる曲げモーメントにより防液堤5外面下方の鉛直方向に引張力が生じる範囲、もしくは低温液体の漏液圧の2倍を設計荷重として考慮する場合の曲げモーメントにより防液堤5内面下方の鉛直方向に引張力が生じる範囲から決定される範囲である。なお、定着部9は、鉄筋コンクリート製や鋼製等で形成される。なお、図示は省略するが、防液堤5の定着部9よりも上方においても、必要最低限の鉛直方向緊張材を別途設けることが望ましい。防液堤5の強度を考慮すると、防液堤5の上方においても最低限のプレストレス力を付与する必要があるためである。防液堤5の上方に設けられる鉛直方向緊張材についての設置形態については後述する。
【0026】
防液堤5内部には、防液堤5の周方向にPC緊張材である周方向緊張材19が配される。周方向緊張材19は、防液堤5下部ほど密に配されている。周方向緊張材19は図示を省略したシース管等に挿入され、図示を省略した定着部で定着される。周方向緊張材19によって、防液堤5の周方向にプレストレス力が付与されている。
【0027】
シース管21は、防液堤5円周方向に所定の間隔で防液堤5内部に埋設される。シース管21の端部は定着部9から曲がり部23を経て、防液堤5壁内のほぼ中央にほぼ鉛直方向で配される。シース管21の材質は金属製あるいは樹脂製などである。
【0028】
防液堤5を施工中または施工後、埋設されたシース管21にPC緊張材である鉛直方向緊張材17が挿入され、鉛直方向緊張材17が、図2(a)に示すようにX方向に緊張された後、定着部9に定着され、プレストレス力が導入される。なお、シース管21内には、図示を省略したグラウトが注入される。
【0029】
図3(a)は図2に示された埋設された鉛直方向緊張材17の配置を示す図である。鉛直方向緊張材17は、防液堤5の周方向に所定の間隔で設けられる。鉛直方向緊張材17は防液堤5内部に略鉛直方向に設けられ、一方の端部が、防液堤5の外面に設けられた定着部9で定着される。鉛直方向緊張材17は、基礎版7のU字部25で折り返し、もう一方の端部が他の定着部9に定着される。この場合、鉛直方向緊張材17の両端が定着部9で緊張され、定着される。
【0030】
鉛直方向緊張材17を緊張して導入した鉛直方向のプレストレス力は、防液堤5の下部の鉛直方向に圧縮力を生じさせる。また、鉛直方向緊張材17が曲がり部23を有し、防液堤5の外面の定着部9に定着されるため、防液堤5の施工後にプレストレス力を付与することができ、このため、防液堤5の施工を中段部で止めることなく底部から上部までを一度に施工することができる。
【0031】
なお、鉛直方向緊張材17の配置方法は、以上の形態に限られない。例えば、図3(b)に示すように、鉛直方向緊張材17の一方の端部を定着部9へ定着し、他方の端部を防液堤5下方内部(基礎版7内)で固定してもよい。この場合、鉛直方向緊張材17は、略鉛直方向に設けられ、下端はU字部25を有さない。
【0032】
鉛直方向緊張材17を防液堤5内部で固定するには、まず、一方の端部に定着板が設けられた鉛直方向緊張材17がシース管21に挿入される。鉛直方向緊張材17はシース管21とともに防液堤5に埋設される。緊張材先端27には、定着板が設けられているため、定着板が防液堤5(基礎版7内)に固定される。鉛直方向緊張材17の他方の端部は、防液堤5に設けられた定着部9より防液堤5の外部へ導出される。防液堤5を施工後に、定着部9にて、鉛直方向緊張材17を緊張して定着することで、緊張材先端27と定着部9との間の鉛直方向にプレストレス力が付与される。この場合、鉛直方向緊張材17はU字部25を有さないため、U字部25に該当する間の緊張材を削減することができる。
【0033】
また、定着部9の形態は、タンク1の形態に限られない。例えば、図4(a)は定着部9の突起を防液堤5の外面に円周方向に断続して設けられたタンク30を示す図である。定着部9を断続的に設けることで、コンクリートの使用量を削減することができる。なお、この場合でも、鉛直方向緊張材17は図3(a)の如くU字形に配されてもよく、あるいは図3(b)のように直線状に配されてもよい。
【0034】
図4(b)はタンク40を示す斜視図であり、図4(c)は、タンク40の正面透視図である。タンク40は、定着部9が鉛直方向に2段設けられる。防液堤5内部に設けられる鉛直方向緊張材17は、一方の端部が下方の定着部9aに定着され、U字部25で折り返し、もう一方の端部が上方の定着部9bで定着される。なお、図3(b)に示すように、定着部9a、9bそれぞれに鉛直方向緊張材17が直線状に配されてもよい。
【0035】
定着部9を鉛直方向に複数段に設けることで、鉛直方向緊張材17の鉛直方向の定着位置を、複数個所に分けることができる。このため、防液堤5の下方に付与される鉛直方向のプレストレス力の発生する高さが、防液堤5の鉛直方向の一箇所に集中することが無い。また、防液堤5の円周方向の隣り合う定着部9の間隔が広くなり、鉛直方向緊張材17の定着作業が容易になる。
【0036】
本実施の形態にかかるタンク1によれば、防液堤5の施工後に鉛直方向緊張材17を緊張して定着することができるため、防液堤5の施工を定着部9の上下で区分することなく、一度に施工することができ、防液堤5の施工工期を短縮することができる。また、鉛直方向緊張材17は、鉛直方向にプレストレス力が特に必要な範囲に設けられるため、施工が容易であるとともに低コストであるタンク1を得ることができる。
【0037】
また、鉛直方向緊張材17は、防液堤5の壁厚のほぼ中央に設けられるため、防液堤5に付与される鉛直方向のプレストレス力によって、効率よく防液堤5へ圧縮力を付与することができ、鉛直方向緊張材17による曲げモーメントの発生が少ない。また、定着部9部以外は、防液堤5の厚みはほぼ一定であるため、使用するコンクリートを削減できるとともに、コンクリート打設時の厚肉部および近傍におけるひび割れ等の発生も少ないため、補強鉄筋配置などによる補強が不要もしくは少なくてすむ。
【0038】
次に、第2の実施の形態にかかるタンク50について説明する。以下の実施の形態において、図1〜図3に示すタンク1と同一の機能を果たす構成要素には、図1〜図3と同一番号を付し、重複した説明を避ける。第2の実施の形態にかかるタンク50はタンク1と異なり、鉛直方向緊張材17が防液堤5の外側に設けられる。
【0039】
図5は、第2の実施の形態にかかる防液堤5を具備するタンク50の外観図であり、図6(a)はタンク50の断面図、図6(b)は図6(a)のB部拡大図である。タンク50は主に貯留槽3、防液堤5、基礎版7等から構成される。
【0040】
定着部9は、防液堤5下方における鉛直方向のプレストレス力が特に必要な防液堤下端からの高さ範囲の上部に、防液堤5外面に所定の間隔で突き出た形状で設けられる。防液堤5下方における鉛直方向のプレストレス力が特に必要な範囲とは、後述する周方向緊張材19により生じる曲げモーメントにより、防液堤5外周面下方に引張力が生じる範囲である。定着部9は鋼製、鉄筋コンクリート製、鋼とコンクリートの合成構造などから成る。なお、図示は省略するが、防液堤5の定着部9よりも上方においても、必要最低限の鉛直方向緊張材を別途設けることが望ましい。
【0041】
防液堤5内部には、防液堤5の周方向にPC緊張材である周方向緊張材19が配される。周方向緊張材19は、防液堤5下部ほど密に配されている。周方向緊張材19によって、防液堤5の周方向にはプレストレス力が付与されている。
【0042】
シース管21bは、防液堤5円周方向に所定の間隔で定着部9に鉛直方向に設けられる。また、シース管21aは、基礎版7に設けられる。
【0043】
防液堤5を施工中または施工後、埋設されたシース管21a、21bにPC緊張材である鉛直方向緊張材17が挿入され、鉛直方向緊張材17が、図6(b)に示すようにX方向に緊張された後、定着部9に定着され、プレストレス力が導入される。なお、シース管21a、21b内には、図示を省略したグラウトが注入される。
【0044】
鉛直方向緊張材17は、前述の通り、図3(a)に示すようにU字部25を有しても良く、また、図3(b)に示すように、直線状に設けられても良い。シース管21aは、鉛直方向緊張材17がU字部25を有する場合には、U字部25に応じた形状を有し、また、鉛直方向緊張材17が直線状に設けられる場合には、緊張材先端27が固定できるように、固定部まで鉛直に設けられる。なお、防液堤5の外部に露出する鉛直方向緊張材17は、図示を省略する防錆被覆あるいは外套管などで防護される。保護コンクリートを後打設してもよい。
【0045】
第2の実施の形態にかかるタンク50によれば、第1の実施の形態にかかるタンク1と同様の効果を得ることができる。また、鉛直方向緊張材17は曲がり部23を有さず、鉛直方向に設けられるため、鉛直方向緊張材17の緊張および定着作業が容易である。
【0046】
次に、第3の実施の形態にかかるタンク70について説明する。第3の実施の形態にかかるタンク70はタンク1と異なり、防液堤5の下方に厚肉部71が設けられ、鉛直方向緊張材17が防液堤5の厚肉部71に設けられる。
【0047】
図7(a)はタンク70を示す図であり、図7(b)は図7(a)のC部拡大図である。タンク70の防液堤5の下方は、厚肉部71が設けられる。厚肉部71は、定着部9の突起を防液堤5の外面に基礎版7まで一体化されることで設けられる。
【0048】
なお、鉛直方向緊張材17は、前述の通り、図3(a)に示すようにU字部25を有しても良く、また、図3(b)に示すように、直線状に設けられても良い。
【0049】
第3の実施の形態にかかるタンク70によれば、第1の実施の形態にかかるタンク1と同様の効果を得ることができる。また、鉛直方向緊張材17は曲がり部23を有さず、鉛直方向に設けられるため、緊張および定着作業が容易である。また、タンク50のように、鉛直方向緊張材17が外部に露出することがない。更に、鉛直方向緊張材17を、防液堤5の厚肉部71における壁厚のほぼ中央とすれば、偏心が無く、鉛直方向緊張材17により付与されるプレストレス力によって防液堤5の下部に曲げモーメントを生じることがない。
【0050】
次に、第4の実施形態について説明する。図8は、第4の実施の形態にかかるタンク80を示す図であり、図8(a)はタンク80の断面図を示し、図8(b)、図8(c)は図8(a)のD部拡大図である。タンク80は主に貯留槽3、防液堤5、基礎版7等から構成される。
【0051】
貯留槽3の周囲には、防液堤5が設けられる。防液堤5は上部から下端までその厚さがほぼ同じであり、基礎版7と一体構造となっている。防液堤5の鉛直方向の所定の高さには凹部81が設けられる。凹部81は、防液堤5の外側より設けられ、凹部81が定着部9として機能する。
【0052】
定着部9は、防液堤5の鉛直方向の特にプレストレス力が必要な、防液堤下端からの高さ範囲の上部に設けられる。すなわち、凹部81は、防液堤5の鉛直方向のプレストレス力が特に必要な、防液堤下端からの高さ範囲の上部に設けられる。なお、図示は省略するが、防液堤5の定着部9よりも上方においても、必要最低限の鉛直方向緊張材を別途設けることが望ましい。
【0053】
ここで、凹部81は、図8に示す形態に限られず、防液堤5を貫通する穴であっても良い。この場合、防液堤5に設けられた凹部81には、貯留槽3の外槽13が露出する。
【0054】
防液堤5内部には、周方向緊張材19が配され、周方向緊張材19は、防液堤5下部ほど密に配されている。周方向緊張材も図示を省略した定着部で定着され、防液堤5周方向にプレストレス力が付与されている。
【0055】
防液堤5の円周方向に所定の間隔でシース管21が定着部9から防液堤5壁内のほぼ中央を鉛直方向に配される。
【0056】
防液堤5を施工中または施工後、埋設されたシース管21に鉛直方向緊張材17が挿入され、鉛直方向緊張材17が、図8(b)に示すようにX方向に緊張される。その後、鉛直方向緊張材17の端部が定着部9に定着され、防液堤5下部に圧縮力となるプレストレス力が導入される。なお、シース管21内には鉛直方向緊張材が定着後、図示を省略したグラウトが注入される。
【0057】
鉛直方向緊張材17が定着された後、定着部9は、図8(C)に示すようにコンクリート83で埋め戻される。
【0058】
なお、鉛直方向緊張材17の配置はU字形に配し、鉛直方向緊張材17の両端を定着部9で定着してもよく、あるいは鉛直方向緊張材17の一方の端部を定着部9へ定着し、他方の端部を防液堤5内部で固定してもよい。また、図2と図8の形態を組み合わせることで、図2の定着部9の突出部分を小さくすることができ、よりコンパクトにすることが可能となる。
【0059】
第4の実施の形態にかかるタンク80によれば、第1の実施の形態にかかるタンク1と同様の効果を得ることができる。また、鉛直方向緊張材17は曲がり部23を有さず、鉛直方向に設けられるため、緊張および定着作業が容易である。また、タンク50のように、鉛直方向緊張材17が外部に露出することがない。
【0060】
更に、鉛直方向緊張材17が、防液堤5の壁厚のほぼ中央に設けられるため、偏心が無く、鉛直方向緊張材17により付与されるプレストレス力によって防液堤5の下部に曲げモーメントを生じることがない。また、定着部9が防液堤5内部に設けられるため、防液堤5外面に突起形状を有さない。
【0061】
次いで、第5の実施形態を説明する。図9は、第5の実施の形態にかかるタンク90の外観図であり、図9(a)はタンク90の断面図を示し、図9(b)、図9(c)は図9(a)のE部拡大図である。タンク90は主に貯留槽3、防液堤5、基礎版7等から構成される。
【0062】
貯留槽3の周囲には、防液堤5が設けられる。防液堤5は上部から下端までその厚さがほぼ同じであり、基礎版7と一体構造となっている。基礎版7の下面には定着部9が設けられる。
【0063】
防液堤5内部には、周方向緊張材19が配され、周方向緊張材19は、防液堤5下部ほど密に配されている。周方向緊張材も図示を省略した定着部で定着され、防液堤5周方向にプレストレス力が付与されている。防液堤5円周方向に所定の間隔で、定着部9から防液堤5の鉛直方向のプレストレス力が必要な範囲の上部までの間にシース管21が埋設される。
【0064】
防液堤5を施工後、基礎版7の定着部9周辺の地面15が掘削され、掘削穴91が設けられる。防液堤5に埋設されたシース管21に鉛直方向緊張材17が挿入され、鉛直方向緊張材17が、図9(b)に示すようにX方向に緊張された後、定着部9に定着され、防液堤5下部に圧縮力となるプレストレス力が導入される。なお、シース管21内には鉛直方向緊張材が導入、定着後、図示を省略したグラウトが注入される。
【0065】
鉛直方向緊張材17が定着部9に定着された後、掘削穴91は図9(c)に示すように埋め戻される。
【0066】
図10(a)は、タンク90の鉛直方向緊張材17を透視した図である。鉛直方向緊張材17は、定着部9で一方の端部が定着され、上方に向かってU字部25を形成し、もう一方の端部が他の定着部9へ定着される。
【0067】
なお、鉛直方向緊張材17の配置方法は、図10(b)に示すように、鉛直方向緊張材17の一方の端部を定着部9へ定着し、他方の端部を防液堤5内部で固定してもよい。この場合、鉛直方向緊張材17は、略鉛直方向に設けられ、U字部25を有さない。この場合、予め定着版を緊張材先端27に取り付けた緊張材を埋め込んでおく。
【0068】
鉛直方向緊張材17を防液堤5内部で固定するには、まず、一方の端部に定着板が設けられた鉛直方向緊張材17がシース管21に挿入される。鉛直方向緊張材17はシース管21とともに防液堤5に埋設される。緊張材先端27には、定着板が設けられているため、定着板が防液堤5(基礎版7)に固定される。鉛直方向緊張材17の他方の端部は、防液堤5に設けられた定着部9より防液堤5の外部へ導出される。防液堤5を施工後に、定着部9にて、鉛直方向緊張材17を下方に緊張して定着することで、緊張材先端27と定着部9との間の鉛直方向にプレストレス力が付与される。この場合、鉛直方向緊張材17はU字部25を有さないため、U字部25に該当する間の緊張材を削減することができる。
【0069】
また、定着部9の形態は、タンク90の形態に限られない。定着部9を基礎版7の側面に設けてもよい。図11(a)、図11(b)は、定着部9が基礎版7の側面に設けられた場合の施工方法を示す図である。
【0070】
防液堤5を施工後、定着部9周辺の地面15が掘削され、掘削穴91が設けられる。防液堤5に埋設されたシース管21に鉛直方向緊張材17が挿入され、鉛直方向緊張材17が、図11(a)に示すようにX方向に緊張された後、定着部9に定着され、防液堤5下部に圧縮力となるプレストレス力が導入される。なお、シース管21内には鉛直方向緊張材が導入、定着後、図示を省略したグラウトが注入される。
【0071】
鉛直方向緊張材17が定着部9に定着された後、掘削穴91は図9(c)に示すように埋め戻される。このように、定着部9を基礎版7の側面に設ければ、基礎版7の側面周辺だけを掘削すればよく、掘削および鉛直方向緊張材17をシース管に挿入・緊張・定着する作業が容易になる。
【0072】
また、図11(c)に示すように基礎版7の側面に設ける定着部9上部を外ハンチなどでごく部分的に必要最小限だけ拡幅することで鉛直方向緊張材17の定着部の曲がり部23の曲がりが大きくなり、鉛直方向緊張材17をシースに挿入、定着する作業がより容易になる。曲がりの半径を大きくすることで緊張作業に伴う、シース管21と鉛直方向緊張材17の摩擦による緊張力の長さ方向のロス(緊張端からU字部へ向かう方向の導入力の落ち分)が小さくなる。
この他に外ハンチなどを設けないで鉛直方向緊張材17の曲がりの半径を大きくする方法としては、曲がりを貯留槽平面の中心から放射方向に沿って行わずに、ある程度角度を有することで可能となる。
【0073】
第5の実施の形態にかかるタンク90によれば、第1の実施の形態にかかるタンク1と同様の効果を得ることができる。また、鉛直方向緊張材17は曲がり部23を有さなければ、鉛直方向緊張材17の緊張および定着作業が容易である。
【0074】
また、鉛直方向緊張材17が、防液堤5の壁厚のほぼ中央に設けられるため、偏心が無く、鉛直方向緊張材17により付与されるプレストレス力によって防液堤5の下部に曲げモーメントを生じることがない。また、定着部9が防液堤5内部に設けられるため、防液堤5外面に突起形状を有さない。
【0075】
さらに、定着部9が防液堤5の下部の基礎版7に設けられるため、防液堤5に定着部9を別途設ける必要がない。また、緊張及び定着作業等を低い場所で行うことができるため作業性がよい。
【0076】
次に、防液堤5上方へのプレストレス力の付与方法について説明する。図12は、防液堤5の上方へプレストレス力を付与する鉛直方向緊張材の配置例を示す図である。
【0077】
図12(a)に示すように、タンク100は、鉛直方向緊張材101が設けられる。鉛直方向緊張材101は、図示を省略したシース管内に挿入され、防液堤5内部に埋め込まれる。鉛直方向緊張材101の一方の端部(緊張材先端103)には図示を省略した定着板が設けられ、防液堤5内部の鉛直方向中央近傍に埋め込まれる。
【0078】
鉛直方向緊張材101の緊張材先端103から下方に向かう部位は、下方緊張部108であり、防液堤5の下方にプレストレス力を付与することができる。鉛直方向緊張材101は、基礎版7内のU字部105で曲げられて、再度上方に向かう。鉛直方向緊張材101の端部は防液堤5の上部にて定着される。鉛直方向緊張材101のU字部105から上方の定着部までの間は上方緊張部であり、防液堤5の上方へ(下方を含む)プレストレス力を付与する。すなわち、鉛直方向緊張材101はJ字状に配置される。
【0079】
なお、緊張材先端103近傍に定着部9を設ければ、下方緊張部108を前述の鉛直方向緊張材17として機能させることもできる。また、U字部105の方向を互い違いにして、隣接する鉛直方向緊張材101を互いにラップさせることもできる。
【0080】
また、図12(b)に示すように、前述のJ字状の鉛直方向緊張材101を防液堤5の下部まで配置せずに、防液堤5の鉛直方向高さ中央近傍にU字部105を設けて、鉛直方向緊張材101を防液堤5内の高さ中央近傍で曲げることもできる。
【0081】
この場合、鉛直方向緊張材101は、防液堤5の上方のみにプレストレス力を付与し、防液堤5下方へのプレストレス力の付与は、前述の鉛直方向緊張材17を別途設ける必要がある。この場合、鉛直方向緊張材17の上端(定着部9)と鉛直方向緊張材101の下端(U字部105)とは、防液堤5の鉛直方向の高さにおいて一部ラップさせることが望ましい。防液堤5へのプレストレス力を鉛直方向に連続的に付与するためである。
【0082】
なお、防液堤5の上方への鉛直方向緊張材の配置は、防液堤5の上方に必要なプレストレス力を付与することが可能なU字部105を有さない鉛直方向緊張材を、防液堤5の上方から防液堤の下部または中央まで略鉛直方向に別途配置することもできる。また、鉛直方向緊張材101は、鉛直方向緊張材17の設置ピッチの例えば2倍から4倍とすることができ、強度要件に応じて設定することができる。
【0083】
以上のように、防液堤5の下方へプレストレス力を付与する鉛直方向緊張材17に加え、または一部を置換して、上方緊張部109を有する鉛直方向緊張材101を設けることで、防液堤5の上方においても、必要最低限のプレストレス力を付与することができる。
【0084】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0085】
例えば、シース管21に代えて防液堤5にプレグラウト緊張材を埋設し、防液堤5を施工後、プレグラウト緊張材を緊張してもよい。この場合、防液堤5の施工時に、プレグラウト緊張材を埋設し、定着部9に端部を導出しておき、防液堤5施工後に、プレグラウト緊張材定着部9で、緊張及び定着すればよい。プレグラウト緊張材によれば、シース管に緊張材を挿入する必要がなく、グラウトをシース管21に充填する必要も無い。
【0086】
また、前述として鉛直方向緊張材17が、防液堤5の壁厚のほぼ中央に設けられるため、偏心が無く、鉛直方向緊張材17により付与されるプレストレス力によって防液堤5の下部に曲げモーメントを生じることがない、と明記しているが、必要に応じ、任意の設計荷重に抵抗する向きの偏心曲げモーメントを発生させるために、故意に鉛直方向緊張材17を全体あるいは部分的に壁厚の外側もしくは内側に寄せて偏心設置することも可能である。
【0087】
また、各種の実施例を組み合わせることもできる。例えば、図3(a)に示したタンク1に設けられた鉛直方向緊張材17に、図12(a)で示したタンク100に設けられた鉛直方向緊張材101を所定数量だけ追加または置換して配置することもできる。また、防液堤5に代えて、タンクの側壁等の壁体に対しても同様に実施することができ、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0088】
1、30、40、50、60、80、90、100、110………タンク
3………貯留槽
5………防液堤
7………基礎版
9、9a、9b………定着部
11……内槽
13……外槽
15……地面
17……鉛直方向緊張材
19……周方向緊張材
21、21a、21b……シース管
23……曲がり部
25……U字部
81……凹部
83……コンクリート
91……掘削穴
101……鉛直方向緊張材
103……緊張材先端
105……U字部
107……定着部
108……下方緊張部
109……上方緊張部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留物を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽の側部に設けられた壁体または防液堤と、
を具備するタンクであって、
前記壁体または前記防液堤に、周方向を緊張する周方向緊張材を設け、
前記壁体または前記防液堤の下方に鉛直方向を緊張する鉛直方向緊張材を設け、
前記壁体または前記防液堤の下端から所定の高さに、前記壁体または前記防液堤の外面に突き出た形状の定着部が設けられ、
前記鉛直方向緊張材の少なくとも一方の端部は、前記定着部へ定着されることを特徴とするタンク。
【請求項2】
前記鉛直方向緊張材は、前記壁体または前記防液堤の外側に設けられることを特徴とする請求項1記載のタンク。
【請求項3】
前記壁体または前記防液堤の外側に設けられた前記鉛直方向緊張材は、曲がり部を有さず鉛直方向に形成されることを特徴とする請求項2記載のタンク。
【請求項4】
前記壁体または前記防液堤の外側に設けられた前記鉛直方向緊張材は、外套管で防護されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のタンク。
【請求項5】
前記鉛直方向緊張材は、
一方の端部に定着板が設けられ、前記定着板が前記壁体または前記防液堤の内部の鉛直方向高さ中央近傍内部に埋設され、
前記壁体または前記防液堤の下部で曲げられ、
他方の端部が前記壁体または前記防液堤の上部で定着されることを特徴とする請求項1記載のタンク。
【請求項6】
下端から所定の高さに、外面に突き出た形状の定着部が設けられ、内部にシース管が埋設された壁体または防液堤を設ける工程と、
緊張材を前記シース管に挿入する工程と、
前記緊張材を緊張し、前記緊張材の一方の端部を前記定着部に定着する工程と、
前記シース管にグラウトを注入する工程と、を具備することを特徴とするタンクの施工方法。
【請求項7】
前記緊張材を、前記壁体または前記防液堤の外側に、曲がり部を有さず鉛直方向に形成することを特徴とする請求項6記載のタンクの施工方法。
【請求項1】
貯留物を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽の側部に設けられた壁体または防液堤と、
を具備するタンクであって、
前記壁体または前記防液堤に、周方向を緊張する周方向緊張材を設け、
前記壁体または前記防液堤の下方に鉛直方向を緊張する鉛直方向緊張材を設け、
前記壁体または前記防液堤の下端から所定の高さに、前記壁体または前記防液堤の外面に突き出た形状の定着部が設けられ、
前記鉛直方向緊張材の少なくとも一方の端部は、前記定着部へ定着されることを特徴とするタンク。
【請求項2】
前記鉛直方向緊張材は、前記壁体または前記防液堤の外側に設けられることを特徴とする請求項1記載のタンク。
【請求項3】
前記壁体または前記防液堤の外側に設けられた前記鉛直方向緊張材は、曲がり部を有さず鉛直方向に形成されることを特徴とする請求項2記載のタンク。
【請求項4】
前記壁体または前記防液堤の外側に設けられた前記鉛直方向緊張材は、外套管で防護されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のタンク。
【請求項5】
前記鉛直方向緊張材は、
一方の端部に定着板が設けられ、前記定着板が前記壁体または前記防液堤の内部の鉛直方向高さ中央近傍内部に埋設され、
前記壁体または前記防液堤の下部で曲げられ、
他方の端部が前記壁体または前記防液堤の上部で定着されることを特徴とする請求項1記載のタンク。
【請求項6】
下端から所定の高さに、外面に突き出た形状の定着部が設けられ、内部にシース管が埋設された壁体または防液堤を設ける工程と、
緊張材を前記シース管に挿入する工程と、
前記緊張材を緊張し、前記緊張材の一方の端部を前記定着部に定着する工程と、
前記シース管にグラウトを注入する工程と、を具備することを特徴とするタンクの施工方法。
【請求項7】
前記緊張材を、前記壁体または前記防液堤の外側に、曲がり部を有さず鉛直方向に形成することを特徴とする請求項6記載のタンクの施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図11(c)】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図11(c)】
【図12】
【公開番号】特開2012−215302(P2012−215302A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−170991(P2012−170991)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2007−338742(P2007−338742)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2007−338742(P2007−338742)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
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