説明

タンク底板の最大腐食速度推定方法

【課題】過去に測定して蓄積された標準的なタンクの板厚測定データを利用してタンク底板の最大腐食速度推定方法を提供する。
【解決手段】タンク底板の板厚をランダム、格子状、或いは千鳥状に、500点以上測定し、その測定して得られた各腐食深さ1aを該タンクの使用年数yで除し、且つその値を更に0.03以上且つ0.10以下の範囲の所定値で除して、1を加算した値からなる正規化腐食速度1bを求め、それらの正規化腐食速度1bを大きい順に並べ、各正規化腐食速度1b毎の板厚測定データ数を板厚測定データ総和数で除した該正規化腐食速度1bの上位順からなる上側累積確率1cを求め、該正規化腐食速度1bと、該上側累積確率1cとの両対数グラフ1dを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油の貯蔵タンク等の底板の最大腐食速度推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、国内の貯蔵タンクの8割程度が、建設後30年以上の長期使用タンクであり、腐食減肉による漏洩対策は重要な設備管理上の課題である。特に、目視による全体的(網羅的)な腐食減肉の確認の困難なタンク底板裏面(土壌側)からの腐食減肉は、最も管理の難しいものの1つである。
【0003】
国内貯蔵タンクの底板の腐食減肉管理は、消防法で規定されており、1000kl(キロリットル)以上の特定屋外タンクは、5年から13年以内に開放検査が義務づけられている。
【0004】
従来の消防法における板厚管理は、1000mm間隔等で、離散的に超音波法による板厚測定を行っている。タンク底板の超音波板厚測定は、タンクの内面から超音波を入射し、板厚を透過して裏面から反射(音も光と同じで界面で反射や屈折が起こる)してくる(入射から反射して戻ってくる)時間を測定すれば、音速は物質固有の値であるため、板厚に換算できるものである。
【0005】
そして、実測した最大腐食速度(設計厚さ−最小板厚)と残肉厚から次期開放までに、基準板厚を下回る部分を補修する。
【0006】
タンク底板裏面腐食において、長期使用タンクは局部的に腐食が進行し、上記の離散測定間隔は、この局部腐食の大きさに比べて遥かに大きな間隔であり、実際の最大腐食減肉(以下、「実最大腐食減肉」という)を測定しきれていないのが現状である。
【0007】
このような問題を解決するために、特許第3670525号公報(特許文献1)には、タンク底板全面の板厚を連続的に測定し得る円筒タンク底板の板厚測定装置が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特許第3670525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、個々のタンクの底板全面の板厚を連続的に測定することは、膨大な作業時間がかかり、過去に測定して蓄積された標準的なタンクの板厚測定データを利用してタンク底板の腐食速度を推定できれば効率的であるという要望があった。
【0010】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、過去に測定して蓄積された標準的なタンクの板厚測定データを利用してタンク底板の最大腐食速度を推定できるタンク底板の最大腐食速度推定方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明に係るタンク底板の最大腐食速度推定方法の第1の構成は、タンク底板の板厚をランダム、格子状、或いは千鳥状に、500点以上測定し、その測定して得られた各腐食深さを該タンクの使用年数で除し、且つその値から正規化腐食速度を求め、それらの正規化腐食速度を大きい順に並べ、各正規化腐食速度毎の板厚測定データ数を板厚測定データ総和数で除した該正規化腐食速度の上位順からなる上側累積確率を求め、該正規化腐食速度と、該上側累積確率との両対数グラフを求め、該両対数グラフを直線近似し、その近似直線1eの傾きの絶対値D´を求め、前記タンク底板内に想定した3次元格子ブロックを表面の1点から浸透シミュレーションで所定の浸透確率で浸透が止まるまで浸透させ、これを所定ブロック数まで該浸透シミュレーションを実施し、各3次元格子ブロックの最大浸透深さを求めるとともに、該最大浸透深さから正規化浸透深さを求め、該正規化浸透深さを大きい順に並べ、各正規化浸透深さ毎の3次元格子ブロック数を総浸透シミュレーションブロック数で除した該正規化浸透深さの大きい上位順からなる上側累積確率を求め、該正規化浸透深さと、該上側累積確率との両対数グラフを求め、該両対数グラフを直線近似し、その近似直線の傾きの絶対値D´´を求め、この操作を種々の浸透確率で行い、前記D´と前記D´´とが実質上同じとなる条件を求め、この条件で、タンク底板の総面積を所定の測定面積で除した数を求め、この数まで浸透シミュレーションした値を求め、この値を、該3以上且つ15以下の範囲の所定値で除して、0.03以上且つ0.10以下の範囲の所定値を乗じて最大腐食速度を求めることを特徴とする。
【0012】
尚、前記正規化腐食速度を求める際には、測定して得られた各腐食深さを該タンクの使用年数で除し、且つその値を更に0.03以上且つ0.10以下の範囲の所定値で除して、1を加算した値からなる正規化腐食速度を求めることが好ましく、その中でも測定して得られた各腐食深さを該タンクの使用年数で除し、且つその値を更に0.05で除して、1を加算した値からなる正規化腐食速度を求めることが好ましい。
【0013】
また、前記最大浸透深さを除して正規化浸透深さを求める際には、最大浸透深を、3以上且つ15以下の範囲の所定値で除して、1を加算した値からなる正規化浸透深さを求めるのが好ましく、その中でも最大浸透深を7で除して、1を加算した値からなる正規化浸透深さを求めるのが好ましい。
【0014】
また、最大腐食速度を求める際に除す前記3以上且つ15以下の範囲の所定値としては、7が好ましく、同じく最大腐食速度を求める際に乗じる0.03以上且つ0.10以下の範囲の所定値としては、0.05が好ましい。
【0015】
また、タンク底板の総面積を所定の測定面積で除した数を求める場合には、タンク底板の総面積を所定の超音波測定装置の探触子の面積で除した数を求めれば好ましい。
【0016】
また、本発明に係るタンク底板の最大腐食速度推定方法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記浸透シミュレーションを実施する3次元格子ブロック数Nと、該浸透シミュレーションを実施したときの各3次元格子ブロックの最大浸透深さFとの関係は、
[数1]
F=a×ln(N)
a=α×exp(β×D´)
とした時、αが5.5以上且つ7.7以下の範囲の所定値で、βが−0.16以上且つ−0.14以下の範囲の所定値であることを特徴とする。
【0017】
尚、タンク底板の板厚を実測し、D´を求めるための板厚測定データは、1000点以上が望ましい。また、浸透シミュレーションでD´´を求めるためのブロック数は、500点以上の所定数か望ましく、板厚測定データ数と同じ数のブロック数がより望ましい。また、各3次元格子ブロックの最大浸透深さは格子数とすることでも良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、過去に測定して蓄積された標準的なタンクの板厚測定データを利用してタンク底板の最大腐食速度を推定出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図により本発明に係るタンク底板の最大腐食速度推定方法の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係るタンク底板の最大腐食速度推定方法を説明するフローチャート、図2は浸透シミュレーションを説明するフローチャート、図3(a)は実測により得られたタンク底板の板厚測定データから正規化腐食速度及び上側累積確率を求める様子を示す図、図3(b)はシミュレーションにより得られた各ブロックの浸透深さから正規化浸透深さ及び上側累積確率を求める様子を示す図、図4は代表的浸透条件でのシミュレーション及び代表的な実機タンクの腐食リスク曲線及び正規化腐食リスク曲線を示す図、図5(a)は浸透シミュレーションの浸透モデルを説明する図、図5(b)は浸透シミュレーションモデルの概念図、図6は正規化腐食リスク曲線の傾きD´と深さ方向の浸透確率との関係を示す図、図7は浸透深さと板厚測定データ数との関係を示すと共に、a(a=5.9exp(−0.15×D´))の正規化腐食リスク曲線の傾きD´からの推定方法を説明する図、図8は、a=α×exp(β×D´)の各係数α、βのデータ数との関係を示した図、図9は、浸透シミュレーション結果を実測結果と比較して検証した様子を示す図である。
【0020】
図1のステップSにおいて、例えば、本出願人が開発した特許文献1の板厚測定装置等によりタンク底板の板厚をランダム、格子状、或いは千鳥状に、500点以上測定する。本実施形態ではタンク底板の板厚を実測する板厚測定データを離散的に1000点以上取得したものである。
【0021】
そして、その測定して得られた各腐食深さ(図3(a)の腐食深さ欄1a参照)を該タンクの使用年数yで除し、且つその値を更に0.05(mm/y)で除して、「1」を加算した値からなる正規化腐食速度(図3(a)の正規化腐食速度欄1b参照)を求め、それらの正規化腐食速度を大きい順に並べ、各正規化腐食速度毎の板厚測定データ数を板厚測定データ総和数で除した該正規化腐食速度の上位順からなる上側累積確率(図3(a)の上側累積確率欄1c参照)を求め、該腐食深さの0.1mm以上に対応する該正規化腐食速度と、該上側累積確率との両対数グラフ1dを求め(図3(b)参照)、該両対数グラフ1dを直線近似し、その近似直線1eの傾きの絶対値D´を求める(ステップS)。
【0022】
ここで、正規化腐食速度(図3(a)の正規化腐食速度欄1b参照)を求める際に除した前記「0.05」は、単位[0.05mm/年]としたもので、腐食速度を正規化するための位置パラメータであり、図4(c)における腐食リスク曲線の折曲がり点の横軸上の値を意味するものであり、実質的に使用できる範囲は、図4(c)の横軸上に示す0.03以上且つ0.10以下の範囲であり、最も望ましい値が0.05である。
【0023】
また、前記直線近似において、近似するデータ範囲は、腐食深さ0.1mm以上に限定されるもではなく、直線関係が実質的に成り立つ範囲で近似しても良い。
【0024】
一方、図5に示すように、タンク底板内に想定した3次元格子ブロックを表面の1点から浸透シミュレーションで所定の浸透確率で浸透が止まるまで浸透させ、これを所定ブロック数まで該浸透シミュレーションを実施する(ステップS)。
【0025】
ここで、浸透(パーコレーション)モデルとは、水が浸透する場合を図5(a)の模式図で示すように、浸透サイト3に乱数で確率Prを与え、予め設定した浸透確率Psとの大小関係で浸透するか否かを決定する確率的な浸透モデルである。
【0026】
例えば、Pr≧Psであれば浸透しないとし、Pr<Psであれば浸透するとするものである。ここで、浸透確率Psは、腐食速度に対応したパラメータである。
【0027】
タンク底板の浸透シミュレーションでは、図5(b)に示すように、3次元格子ブロックとなる格子状の浸透ブロック2を考えて、その中央の1点から腐食が進展拡大していくモデルとするものである。
【0028】
ここで、浸透シミュレーションフローを図2に示す。図2において、先ず、ステップS11において、図5(b)のように、複数のサイトから構成される3次元格子ブロックである浸透ブロック2の配列を確保し、3次元格子の特定の表面の中心に浸透起点「1」を入力する(ステップS12)。次にステップS13において浸透確率Psを入力し、ステップS14において、前回の試行で「1」を代入した全ての浸透サイトの検索を行う。次にステップS15において全ての該浸透サイトに隣接する全ての空のサイト3を検索する。
【0029】
次にステップS16において、前記の全ての空のサイト3において、「0〜1」の乱数を発生させ、ステップS17において、前記ステップS16で発生した乱数が浸透確率Psよりも小さい場合には、ステップS18に進んでそのサイトに「1」を代入する。次にステップS19において、「1」を入れた浸透サイトの数をカウントする。尚、前記ステップS17において、前記ステップS16で発生した乱数が浸透確率Ps以上の空のサイト3には何も数値をいれない。
【0030】
次にステップS20において、今回の試行で「1」を入れた浸透サイト3が1つもない場合には、ステップS21に進んで「1」を入れた浸透サイト3の総数、浸透深さ、縦横の広がりを表示する。尚、前記ステップS20において、今回の試行で「1」を入れた浸透サイト3が1つ以上ある場合には、前記ステップS14に進んで該ステップS14〜S20を繰り返す。
【0031】
ここで、図5(b)に示すように、タンク底板の1つの腐食部位を1つの浸透ブロック(クラスター)2と見なし、これを実機タンクの1つの超音波測定データに対応させている。
【0032】
どこまで浸透するかは、浸透確率Psで制御できるが、ある値以上になると無限に浸透(臨界確率)する。ここでは、その臨界確率以内の条件(どこかで浸透が終了する条件)で浸透させ、浸透が止まるまで、図2に示した浸透シミュレーションを行っている。
【0033】
そして、同一浸透確率Ps(同一タンクデータと見なせる)におけるシミュレーションによって取得する浸透ブロック2の数は、望ましくは500点以上、更に望ましくは、対象とする実タンクの測定データ数まで実施する。得られた各浸透ブロック2の最大浸透深さ(図3(c)の浸透深さ欄4a参照)を「7」で除し「1」を加算した正規化浸透深さ(図3(c)の正規化浸透深さ欄4b参照)を求め、該正規化浸透深さを大きい順に並べ、各正規化浸透深さ毎の浸透ブロック2の数を総浸透シミュレーションブロック2の数で除した上側累積確率(図3(c)の上側累積確率欄4c参照)を求め、該正規化浸透深さと、該上側累積確率との両対数グラフ4dを得る(図3(d)参照)。また、図3(d)の全データで、直線近似することで、該近似直線4eの傾きD´´から浸透シミュレーションにおける正規化リスク曲線の傾きD´´を得ることができる。
【0034】
このシミュレーションにおける正規化リスク曲線の傾きD´´および図3(b)に示す実機タンクの正規化腐食リスク曲線の傾きD´は、共に、物理的な次元がなく、その値を直接比較することができる。
【0035】
また、前記直線近似において、近似するデータ範囲は、全データに限定されるもではなく、直線関係が実質的に成り立つ範囲で近似しても良い。
【0036】
ここで、シミュレーションにおける正規化腐食速度(図3(a)の正規化腐食速度欄1b参照)を求める際に除した前記「7」は、浸透深さを正規化するための位置パラメータであり、図4(a)のシミュレーションにおける腐食リスク曲線の折曲がり点で、横軸上の値を意味するものであり、実質的に使用できる範囲は、図4(a)の横軸上に示す「3」以上且つ「15」以下の範囲であり、最も望ましい値が「7」である。
【0037】
そして、この操作を種々の浸透確率で行い、前記D´と前記D´´とが実質上同じとなる条件を求め(図1のステップS)、この条件で、タンク底板の総面積から、連続測定の区画となる25mm×5mmの面積で除した数Nを求め、この数Nまで浸透ブロック2の数を増やし、深さが最大となる浸透ブロック2から想定最大浸透深さdmaxを求め(図1のステップS)、図1のステップSにおいて、この値dmaxを、浸透シミュレーションにおける浸透深さとなる「7」で除して、実機タンクデータにおける正規化のための位置パラメータとなる0.05(mm/y)を乗じて最大腐食速度を求める(図1のステップS10
)。尚、ステップSにおいて、前記D´と前記D´´とが実質上同じとならない場合には前記ステップSに戻って該ステップS〜Sを繰り返す。
【0038】
ここで、連続測定の区画となる25mm×5mmの面積は、これに限定されるものではなく、通常の超音波探触子で面探傷した場合の最大腐食深さを推定する場合は、その測定器の面積も活用可能である。また、実機タンク及びシミュレーションのリスク曲線の折曲がり点で採用している「0.05」および「7」の値は、実質的には、前述した範囲の中での所定の値を用いることができる。
【0039】
ところで、前記の浸透シミュレーションを種々の浸透確率で行った場合、いずれの浸透確率においても、浸透ブロック2からなるデータ数を増すと、より深く浸透する浸透ブロックが存在してくる。また、該データ数と浸透深さとの関係は、それぞれの浸透確率において、最大浸透深さF=a×ln(浸透ブロック2の数からなる腐食データ数)で近似することが出来きる。
【0040】
そして、種々の浸透確率で求めたD´´とaとの間には、図7に示す関係があり、任意のD´´に対するaの値を求めることができる。
【0041】
ここで、D´´は、図7に示すように、D´´を求めるための浸透ブロック2の数(データ数)で変化し、このため、回帰式a=α×exp(β×D´´)と置いたときのαおよびβの値が図8のように変化する。即ち、前記浸透シミュレーションを実施する際には、3次元格子ブロック数Nと、該浸透シミュレーションを実施したときの各3次元格子ブロックの最大浸透深さFとの関係は、
[数2]
F=a×ln(N)
a=α×exp(β×D´´)
とすることが出来、αは、5.5以上且つ7.7以下の範囲の所定値で、βは、−0.16以上且つ−0.14以下の範囲の所定値であり、このときの係数aを求める(図1のステップS)と共に、各3次元格子ブロックの最大浸透深さFを求める(図1のステップS)。
【0042】
ここで、実機タンクとの対応は、上記直接D´´と前記した実機タンクデータで得られるD´とが実質的に同じであることから上記数2式における「D´´」の代わりに「D´」
を代入して、実機タンク条件に対応する最大浸透深さFを求める。即ち、以下の数1式で求められるものである。
【0043】
[数1]
F=a×ln(N)
a=α×exp(β×D´)
【0044】
そして、タンク底板の総面積から、連続測定の区画となる25mm×5mmの面積で除した数Nを求め、この数Nで前記数1式より想定最大浸透深さdmaxとして求め、図1のステップSにおいて、この値dmaxを、浸透シミュレーションにおける浸透深さとなる「7」で除して、実機タンクデータにおける正規化のための位置パラメータとなる0.05(mm/y)を乗じて最大腐食速度を求める(図1のステップS10)。
【0045】
ここで、連続測定の区画となる25mm×5mmの面積は、限定したものではなく、通常の超音波探触子で面探傷した場合の最大腐食深さを推定する場合は、その測定器の面積も活用可能である。また、実機タンク及びシミュレーションのリスク曲線の折曲がり点で採用している「0.05」および「7」の値は、実質的には、前述した範囲の中での所定の値を用いることができる。
【0046】
上記で推定した最大腐食速度と、実測された実最大腐食速度には、図8に示すような相関があり、良好な推定結果を与えていることが検証された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の活用例として、石油の貯蔵タンク等の底板の最大腐食速度推定方法に適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係るタンク底板の最大腐食速度推定方法を説明するフローチャートである。
【図2】浸透シミュレーションを説明するフローチャートである。
【図3】(a)は実測により得られたタンク底板の板厚測定データから正規化腐食速度及び上側累積確率を求める様子を示す図、(b)はシミュレーションにより得られた各ブロックの浸透深さから正規化浸透深さ及び上側累積確率を求める様子を示す図である。
【図4】代表的浸透条件でのシミュレーション及び代表的な実機タンクの腐食リスク曲線及び正規化腐食リスク曲線を示す図である。
【図5】(a)は浸透シミュレーションの浸透モデルを説明する図、(b)は浸透シミュレーションモデルの概念図である。
【図6】正規化腐食リスク曲線の傾きD´と深さ方向の浸透確率との関係を示す図である。
【図7】浸透深さと板厚測定データ数との関係を示すと共に、a(a=5.9exp(−0.15×D´))の正規化腐食リスク曲線の傾きD´からの推定方法を説明する図である。
【図8】a=α×exp(β×D´)の各係数α、βのデータ数との関係を示した図である。
【図9】浸透シミュレーション結果を実測結果と比較して検証した様子を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1a…腐食深さ欄
1b…正規化腐食速度欄
1c…上側累積確率欄
1d…両対数グラフ
1e…近似直線
2…浸透ブロック
3…浸透サイト
4a…浸透深さ欄
4b…正規化浸透深さ欄
4c…上側累積確率欄
4d…両対数グラフ
4e…近似直線
dmax…想定最大浸透深さ
F…最大浸透深さ
Pr…確率
Ps…浸透確率
y…使用年数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク底板の板厚をランダム、格子状、或いは千鳥状に、500点以上測定し、その測定して得られた各腐食深さを該タンクの使用年数で除し、且つその値から正規化腐食速度を求め、それらの正規化腐食速度を大きい順に並べ、各正規化腐食速度毎の板厚測定データ数を板厚測定データ総和数で除した該正規化腐食速度の上位順からなる上側累積確率を求め、該正規化腐食速度と、該上側累積確率との両対数グラフを求め、該両対数グラフを直線近似し、その近似直線の傾きの絶対値D´を求め、
前記タンク底板内に想定した3次元格子ブロックを表面の1点から浸透シミュレーションで所定の浸透確率で浸透が止まるまで浸透させ、これを所定ブロック数まで該浸透シミュレーションを実施し、各3次元格子ブロックの最大浸透深さを求めるとともに、該最大浸透深さから正規化浸透深さを求め、該正規化浸透深さを大きい順に並べ、各正規化浸透深さ毎の3次元格子ブロック数を総浸透シミュレーションブロック数で除した該正規化浸透深さの大きい上位順からなる上側累積確率を求め、該正規化浸透深さと、該上側累積確率との両対数グラフを求め、該両対数グラフを直線近似し、その近似直線の傾きの絶対値D´´を求め、
この操作を種々の浸透確率で行い、前記D´と前記D´´とが実質上同じとなる条件を求め、この条件で、タンク底板の総面積を所定の測定面積で除した数を求め、この数まで浸透シミュレーションした値を求め、この値を、該3以上且つ15以下の範囲の所定値で除して、0.03以上且つ0.10以下の範囲の所定値を乗じて最大腐食速度を求めることを特徴としたタンク底板の最大腐食速度推定方法。
【請求項2】
前記浸透シミュレーションを実施する3次元格子ブロック数Nと、該浸透シミュレーションを実施したときの各3次元格子ブロックの最大浸透深さFとの関係は、
[数1]
F=a×ln(N)
a=α×exp(β×D´)
とした時、αが5.5以上且つ7.7以下の範囲の所定値で、βが−0.16以上且つ−0.14以下の範囲の所定値であることを特徴とした請求項1に記載のタンク底板の最大腐食速度推定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−222395(P2009−222395A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64019(P2008−64019)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000116736)旭化成エンジニアリング株式会社 (49)
【Fターム(参考)】