説明

タンク式トイレ用液体消臭剤

【課題】
タンク式トイレの汚物タンクからの糞尿臭の消臭効果が優れた、簡便な消臭技術を提供すること。
【解決手段】
(1)ポリフェノール、(2)有機酸および(3)水酸基含有化合物または水酸基含有化合物と水とからなる前記ポリフェノールおよび有機酸を溶解する溶媒を含有することを特徴とするpH1.0〜6.0の液体消臭剤をタンク式トイレの汚物タンクに適用する。さらに前記液体消臭剤含有不凍液を洗浄水として用いると寒冷地でも凍りにくいので、タンク式トイレは使用可能となる。
液体消臭剤に香料を0.1〜10質量%配合するとさらに効果が優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノールおよび有機酸を含有するタンク式トイレ用液体消臭剤に関する。また、それら液体消臭剤を用いたタンク式トイレの消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、汚物タンクに排泄物を一時的に貯留するタイプのトイレは知られている。そのようなタイプのトイレは、汚物タンクの大きさや容量等を適宜変えることができるので、狭い場所にも容易に設置可能であるところから、多くの場所で設けられている。例えば、各種工事現場での仮設トイレやポータブルトイレなどのタンク式トイレは、運搬可能であって簡単に設置できるなどの簡便さなどもあり、多用されている。また、電車等の車両や長距離運行バスにはタンク式トイレが設置され、公園や駅にもタンク式トイレが設置されている。
これらトイレを使用した後の排泄物は、適宜の手段を用いて回収されるまで汚物タンク内に一時的に貯留しておくことになる。あるいは、汚物タンク内の排泄物は新たなタンクと交換されるまでの所定期間汚物タンク内に一時的に貯留しておくことになる。
汚物タンク内に貯留された排泄物は悪臭、特に糞尿臭の発生源となり、貯留された排泄物からの悪臭は汚物タンク内に充満し、さらには汚物タンク外に漏れるなどの恐れがある。とくに、タンク式トイレにおいては、汚物タンクから直接悪臭が吹き上がる可能性があるため、きわめて不快な環境になりやすい。
【0003】
トイレの使用者は悪臭等に悩まされることになる。そこで、汚物タンク内に貯留された排泄物からの糞尿臭を除去する対策等、糞尿臭が感じられないような対策を講じる必要がある。その対策の一つとして、例えば特許文献1、特許文献2には、汚物タンクの内の汚物を微生物処理する技術や加熱処理技術が報告されている。これら文献記載の技術は、広い場所を必要とすること、大掛かりな装置を必要とすることなどの問題点や、屋内で処理することができないなどの不都合さがある。
その点、例えば特許文献3記載の抗菌剤を利用して防臭する技術は上記問題点を解消できるのであるが、抗菌剤で防ぐことができない臭いに対する対策を講じる必要がある。また、例えば特許文献4には、特定の重合体を採用する技術が報告され、特許文献5には過酸化水素水及び有機酸を用いて悪臭を断つ技術が報告されているが、前者は初期の消臭効果に不安があり、後者は薬剤の不安定さなどから消臭効果の安定性が指摘されるなどの不都合さがあり、更なる改善策が求められている。
【0004】
更に、例えば仮設トイレなどタンク式トイレ本体が数多く、しかも広い範囲にわたって設置されている現状では、設置された場所において簡便な方法で消臭できる技術が開発されれば、タンク式トイレの使用者だけではなく、タンク式トイレの管理維持者にとっても有益であることから、タンク式トイレの管理維持者にとっても、簡便な手段・方法であって、前記悪臭を感じられないような技術の提供が望まれる。
なお、特許文献6や特許文献7では、ポリフェノールを含む消臭剤を用い、悪臭をマスキングする技術が報告されているが、強い糞尿臭を常時揮散させる恐れがある排泄物を比較的長期間貯留するタイプ等の特殊なトイレの消臭に適用する考えはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−10949号公報
【特許文献2】特開2002−186998号公報
【特許文献3】特開平10−137735号公報
【特許文献4】特開平11−114040号公報
【特許文献5】特開2003−10300号公報
【特許文献6】特開2004−167218号公報
【特許文献7】特開2007−252543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、すでに知られているマスキング法により前記問題点を解決しようと試みたが、満足できる結果を得ることができなかった。さらに研究を続けるなか、糞尿臭のうちのアンモニア臭は、排泄時はさほど強いものではないが、時間が経過すると排泄物に菌などが関与して、より強い不快臭を発散するようになる特徴があるとの知見を得た。従来から知られている香料などの化学物質を用いたマスキング法により前記不都合さが解決できない理由は、多量の排泄物が前記汚物タンク内に比較的長期間にわたり留まっており、さらに前記汚物タンク内に貯留された排泄物内の化合物、あるいはこの排泄物が貯留されている間に生成する化合物が汚物タンク内で微妙に影響しあい、満足できる結果が得られなかったとの仮定の下、さらに有効な汚物タンクからの糞尿臭に対する消臭技術を開発しようと考えた。しかも、その消臭技術はできるだけ簡便な方法であることを念頭に置いた。
そこで、本発明の課題は前記仮定の下に、有効な消臭技術を提供することにあり、タンク式トイレの汚物タンクからの糞尿臭を消臭することができる技術を提供することにある。しかも、消臭に際しての操作は簡単であり、消臭効果が優れた消臭技術を提供することにある。
さらに寒冷地でタンク式トイレを使用する場合、冬季でも洗浄用の水がトイレ給水タンク内で凍ってしまわないような新たな技術を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意研究する最中、ポリフェノール、有機酸および水酸基含有化合物を含む可溶化溶媒からなる液体消臭剤であって、ポリフェノール含量が高い液体消臭剤を調製し、当該液体消臭剤を予めタンク式トイレの洗浄水タンク内に投入しておき、トイレ使用後に当該洗浄水タンク内の洗浄水を用いて排泄物を汚物タンク内に流し込んだところ、驚くべきことには、汚物タンクからの悪臭が満足できるほど消臭されるとの知見を得た。また、前記液体消臭剤の水酸基含有化合物としてエタノール等の凍結されにくい化合物を用いると、氷点下の環境でも当該洗浄水は凍結されにくく、消臭機能を達成できるとの知見を得た。さらに、前記液体消臭剤の希釈液をタンク式トイレの汚物タンク内に投入しておいたところ、汚物タンクからの悪臭が満足できるほど消臭されるとの知見を得た。それらの知見に基づき本発明者はさらに研究を重ね、遂に本発明を完成させた。
【0008】
本発明はつぎのとおりである。
請求項1の発明は、(1)ポリフェノール、(2)有機酸および(3)水酸基含有化合物または水酸基含有化合物と水とからなる前記ポリフェノールおよび有機酸を溶解する溶媒を含有するpH1.0〜6.0の液体消臭剤を用いることを特徴とするタンク式トイレの消臭方法である。
請求項2の発明は、液体消臭剤をタンク式トイレに備えられた洗浄水タンクに添加することを特徴とする請求項1記載のタンク式トイレの消臭方法である。
請求項3の発明は、液体消臭剤をタンク式トイレに備えられた汚物タンクに投入することを特徴とする請求項1記載のタンク式トイレの消臭方法である。
請求項4の発明は、(1)ポリフェノール、(2)有機酸および(3)水酸基含有化合物または水酸基含有化合物と水とからなる前記ポリフェノールおよび有機酸を溶解する溶媒を含有することを特徴とするpH1.0〜6.0であるタンク式トイレ用液体消臭剤である。
請求項5の発明は、液体消臭剤に香料を0.1〜10質量%配合した請求項4記載のタンク式トイレ用液体消臭剤である。
請求項6の発明は、請求項4または請求項5記載のタンク式トイレ用液体消臭剤0.5〜40質量%および不凍液99.5〜60質量%から構成されることを特徴とする寒冷地で用いるタンク式トイレ用液体消臭剤である。
【0009】
以下、本発明を詳細に記述する。
本発明でいうタンク式トイレとは、排泄物等を一時的にタンク等の容器内に収容しておくトイレを意味する。便器は洋式または和式のどちらでも良い。外部から内部が見えないよう壁や衝立てなどで囲われていても良いが、それらが必須のものではない。
ここでのタンクとは、排泄物あるいは便器の排泄物を流しさる液体と排泄物との共存物等、排泄物を含むものとを一時的に収容されるものであれば、その形状、大きさ、素材等は特に限定されない。具体的には、プラスチック製容器、FRP製容器、コンクリート製容器等を素材として例示できる。
代表的な簡易トイレとしては、各種工事現場等での仮設トイレ、公衆トイレ、電車・列車、船舶、長距離バス等に設置されるトイレ等が挙げられ、その他、所定期間利用予定のユニットハウスに備えたトイレ、災害発生時に使用されるトイレ、介護用のポータブルトイレ等が挙げられるが、それらに何ら限定されない。
【0010】
本発明では、上記トイレの液体消臭剤として、(1)ポリフェノール、(2)有機酸および(3)水酸基含有化合物または水酸基含有化合物と水とからなる前記ポリフェノールおよび有機酸を溶解する溶媒からなる液体消臭剤を使用する点に一つの大きな特徴がある。
本発明で使用されるポリフェノールとは、同一ベンゼン環に二個あるいは二個以上の水酸基が水素原子と置換されている化合物を意味し、その配糖体もポリフェノールとして含む。その中でも、ヒドロキノンおよびo−ジフェノール構造を有するポリフェノールが好ましい。なお、o−ジフェノール構造とはベンゼン環に直接水酸基が置換されており、しかもその水酸基が隣接しているときの構造を意味する。所期の目的を達成できるポリフェノールである限りとくに限定されない。
【0011】
ポリフェノールの具体例としては、例えば、アピゲニン、アピゲニン配糖体、アカセチン、イソラムネチン、イソラムネチン配糖体、イソクエルシトリン、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エスキュレチン、エチルプロトカテキュ酸塩、エラグ酸、カテコール、ガンマ酸、カテキン、ガルデニン、ガロカテキン、カフェ酸、カフェ酸エステル、クロロゲン酸、ケンフェロール、ケンフェロール配糖体、ケルセチン、ケルセチン配糖体、ケルセタゲニン、ゲニセチン、ゲニセチン配糖体、ゴシペチン、ゴシペチン配糖体、ゴシポール、4−ジヒドロキシアントラキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、シアニジン、シアニジン配糖体、シネンセチン、ジオスメチン、ジオスメチン配糖体、3,4'−ジフェニルジオール、シナピン酸、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スピナセチン、タンゲレチン、タキシホリン、タンニン酸、ダフネチン、チロシン、デルフィニジン、デルフィニジン配糖体、テアフラビン、テアフラビンモノガレート、テアフラビンビスガレート、トリセチニジン、ドーパ、ドーパミン、ナリンゲニン、ナリンジン、ノルジヒドログアヤレチック酸、ノルアドレナリン、ヒドロキノン、バニリン、パチュレチン、ハーバセチン、バニリルアルコール、バニトロープ、バニリンプロピレングリコールアセタール、バニリン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸、ビスフェノールA、ピロカテコール、ビテキシン、4,4'−ビフェニルジオール、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、プロトカテキュ酸、フロログルシノール、フェノール樹脂、プロシアニジン、プロデルフィニジン、フロレチン、フロレチン配糖体、フィゼチン、フォリン、フェルバセチン、フラクセチン、フロリジン、ペオニジン、ペオニジン配糖体、ペルオルゴニジン、ペルアグゴニジン配糖体、ペチュニジン、ペチュニジン配糖体、ヘスペレチン、ヘスペレジン、没食子酸、没食子酸エステル(没食子酸ラウリル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル)、マンジフェリン、マルビジン、マルビジン配糖体、ミリセチン、ミリセチン配糖体、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、メチルアトラレート、4−メチルカテコール、5−メチルカテコール、4−メトキシカテコール、5−メトキシカテコール、メチルカテコール−4−カルボン酸、2−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、モリン、リグニン、リモシトリン、リモシトリン配糖体、リモシトロール、ルテオリン、ルテオリン配糖体、ルテオリニジン、ルテオリニジン配糖体、ルチン、レゾルシン、レスベラトロール、レゾルシノール、ロイコシアニジン、ロイコデルフィニジンなどがあげられる。
【0012】
これらのポリフェノールの中でも、ケルセチン、エピカテキン、および、エピガロカテキン等のフラボノイド類及びそれらの配糖体、没食子酸、没食子酸エステル、クロロゲン酸、カフェ酸、カフェ酸エステル、タンニン酸、ピロカテコール、ノルジヒドログアイアレクチック酸、L−ドーパ、4−メチルカテコール、5−メチルカテコール、4−メトキシカテコール、5−メトキシカテコール等のo−ジフェノール構造を有するポリフェノール、および、ヒドロキノンが特に好ましい。
これらのポリフェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
また、上記ポリフェノールは、公知の方法により調製できるが、市販品を購入してもよい。また、合成により調製してもよい。さらには、植物から調製したポリフェノール画分を使用することもできる。
【0013】
本発明では、ポリフェノールの代わりに、含ポリフェノール植物抽出物を使用することもできる。この植物抽出物は公知の方法により調製されたものを使用してもよいし、また市販のものを使用してもよい。
【0014】
前記植物抽出物の例としては、例えば、アロエ、アニスシード、エルダー、エレウテロコック、オオバコ、オレンジフラワー、オールスパイス、オレガノ、カノコソウ、カモミル、カプシカムペッパー、カルダモン、カシア、ガーリック、キャラウエイシード、クローブ、クミンシード、コーラ、コリアンダーシード、五倍子、サフラン、サンショウ、ジュニパーベリー、シナモン、ジンジャー、スター・アニス、セント・ジョーンズ・ウオルト、セロリーシード、セイボリー、セサミ(ゴマ)、ダイオウ、タラゴン、ターメリック、チィスル、デイルシード、ナツメグ、ネットル、ハイビスカス、ハマメリス、バーチ、バジル、ビター・オレンジ、フェンネル、プリムローズ、フェヌグリーク、ベルベナ、ベイローレル、ホップ、ボルドー、ホースラデイッシュ、ポピーシード、没食子、マリーゴールド、マロー、マジョラム、マスタード、ミルフォイル、ミントリーブス、メリッサ、メース、リンデン、リンドウ、ローズヒップ、ローズマリー、マンネンロウ、ひまわり種子、ブドウ果皮、リンゴ、ニンジン葉、バナナ、イチゴ、アンズ、モモ、プラム、パイナップル、ナシ、カキ、サクランボ、パパイヤ、マンゴー、アボガド、メロン、ビワ、イチジク、キウイ、プルーン、ブルーベリー、ブラックベリー、ラスベリー、ツルコケモモ、コーヒー豆、カカオ豆、ブドウ種子、グレープフルーツ種子、ペカンナッツ、カシューナッツ、クリ、ココナッツ、ピーナツ、クルミ、緑茶葉、紅茶葉、ウーロン茶葉、タバコ、シソ葉、ニワタイム、セージ、ラベンダー、スペアミント、ペパーミント、サントリソウ、ヒソップ、メボウキ、マリーゴールド、タンポポ、アーチチョーク、ドイツカミルレ、キンミズヒキ、カンゾウ、アニス、ノコギリソウ、ユーカリ、ワームウッド、香油、シシウド、コロハ、シシトウガラシ、ウイキョウ、トウガラシ、コエンドロ種子、ヒメウイキョウ種子、ウイキョウ種子、ショウガ、西洋ワサビ、マヨラナ、ハナハッカ、カラシ、パセリ、コショウ、セイヴォリー、タラゴン、ウコン、ワサビ、イノンド種子、柑橘果実などから常法により抽出処理して得られる植物抽出物があげられる。これらの植物抽出物を単独、あるいは複数の植物抽出物を組み合わせて使用してもよい。
なお、ポリフェノール化合物と、含ポリフェノール植物抽出物とを併用してもよい。とくに、上記0011で説明するポリフェノール化合物と、上記含ポリフェノール植物抽出物とを併用してもよい。
【0015】
次に、本発明の液体消臭剤を構成する有機酸について説明する。
本発明で使用される有機酸は、所期の目的を達成できる有機酸である限りとくに限定されない。
有機酸の具体例としては、例えば、グリコール酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、酸性アミノ酸、塩化カリウム−塩酸緩衝剤、フタル酸水素カリウム−水素化ナトリウム緩衝剤、クエン酸ナトリウム−水酸化ナトリウム緩衝剤などからなる群から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。前記酸性アミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸などを例示できる。
【0016】
本発明の液体消臭剤を構成する水酸基含有化合物について説明する。前記水酸基含有化合物は、分子量が小さい水酸基を有する有機化合物が好ましく、特に分子量が200程度以下の水酸基を有する有機化合物が好ましい。前記水酸基含有化合物が液体消臭剤中に存在すると前記ポリフェノールの溶解量を高めることができ、有利である。具体的には、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの炭層数が1〜4のモノアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等のポリオールが好ましい。これら水酸基含有化合物の中では、ポリオールを用いると、液体消臭剤の引火点を挙げることができるので、消防法の観点からみても有利である。さらに、可食性の水酸基含有化合物を用いると、安全性の面でも地球環境を汚さないとの点でも好ましい。
本発明の液体消臭剤として、ポリフェノール、有機酸および前記ポリフェノールおよび有機酸の可溶化溶媒を含有する液体消臭剤を使用してもよい。ここでのポリフェノールおよび有機酸は上述のとおりである。前記可溶化溶媒は、前記ポリフェノールおよび有機酸を溶解できる溶媒であれば特に制限されないのであって、具体的な可溶化溶媒としては、前記水酸基含有化合物、アセトン、前記水酸基含有化合物と水やアセトンとの混合物を例示できるが、それらに限定されない。
【0017】
本発明の消臭方法の代表例が、液体消臭剤をタンク式トイレに備わる洗浄水タンク内の洗浄水に添加しておき、タンク式トイレを使用した後、当該液体消臭剤含有洗浄水が便器の排泄物を汚物タンクに流し込ませることを特徴とする。この方法で用いる液体消臭剤は、ポリフェノールの含有量が高い方が好ましいので、高濃度液体消臭剤でもある。また、この方法で用いる液体消臭剤は、希釈して使用するので、濃縮液体消臭剤でもある。以下、高濃度液体消臭剤を濃縮液体消臭剤として記載する。
本発明では前記と異なる消臭方法として、前記液体消臭剤の希釈液を汚物タンクに投入する方法が挙げられる。液体消臭剤を希釈する程度は、汚物タンクの排泄物の量、用いる液体消臭剤の組成などにより変動するので、一概に規定することができないが、例えば50〜500倍程度に希釈して用いてもよい。液体消臭剤を希釈する手段方法としては、例えば水を用いて液体消臭剤を希釈することができるが、本発明においては、最適な手段方法を適宜選択し利用すれば良いのであって、何ら限定されない。
【0018】
本発明の液体消臭剤においてポリフェノールの含有量は、使用するポリフェノールにより前後するが、液体消臭剤全量に対して、10−7〜20質量%、好ましくは10−6〜10質量%とし、さらに10−6〜5質量%とすることが望ましい。また、有機酸の含有量は、使用する有機酸により前後するが、当該液体消臭剤全量に対して、0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%とすることが望ましい。前記範囲よりもポリフェノールや有機酸が少ないときには消臭効果が十分ではなく、前記範囲よりも多い時には、取り扱い性などの点において好ましくない。
水酸基含有化合物の含有量は、ポリフェノール、有機酸や使用する水酸基含有化合物により前後するが、当該液体消臭剤全量に対して10〜95質量%とすることが好ましく、60〜95質量%とすることがより好ましい。
【0019】
本発明においては、ポリフェノール、有機酸、水酸基含有化合物および水を適宜選択使用し、それらを合わせて液体消臭剤とすることができる。
なお、液体消臭剤の酸性度は、使用するポリフェノール及び有機酸により前後するが、pH1.0〜6.0、好ましくはpH2.0〜5.0とすることが望ましい。この範囲内であるなら、臭いを効率よく消臭し、ポリフェノールが安定に存在することができる。
本発明の濃縮液体消臭剤においては、ポリフェノール含有量が高ければ、液体消臭剤の希釈倍率も高くできるので有利である。例えば、ポリフェノール含有量が、液体消臭剤中に2質量%以上存在することが有利であるが、さらに3質量%以上存在することが有利である。ポリフェノール含有量の上限は技術の進歩に応じて高くなるのであって、特に制限されない。本発明の濃縮液体消臭剤においては、有機酸の含有量は、当該濃縮液体消臭剤が希釈されたときに、pHが酸性であるような量だけ存在すればよい。本発明の濃縮液体消臭剤においては、水酸基含有化合物の含有量は、少なくとも液体消臭剤中のポリフェノールが安定に存在できる量であることが好ましい。
【0020】
本発明の液体消臭剤には、洗浄有効成分を含ませておいてもよい。この液体消臭剤は洗浄性も優れているので、洗浄性液体消臭剤でもある。前記洗浄有効成分としては、洗剤で多用されている洗浄有効成分を適宜採用すればよいのであって、例えば、各種界面活性剤を使用することができる。それら洗浄有効成分の量は、液体消臭剤に使用される成分などにより変動するので一概に規定することができない。最適な量を選択すればよい。
なお、本発明の液体消臭剤には適宜配合剤を含ませておいてもよい。
【0021】
本発明の液体消臭剤は、容器に収容し、消臭したいと思うタンク式トイレに運び込み、消臭させることが出来るので有利である。特に濃縮液体消臭剤を容器に収容しておくと、液体消臭剤を効率的に利用でき、管理維持の点や経費の点からも有利である。
容器としては、前記液体消臭剤を収容し、必要に応じて取り出すことが出来る容器であれば特に制限されない。容器素材も液体消臭剤を長い時間保持しても安定な素材であれば特に制限されない。その中でもプラスチック製容器が好ましい。
【0022】
(作用)
本発明が規定するポリフェノール、有機酸および水酸基含有化合物または水酸基含有化合物と水とからなる前記ポリフェノールおよび有機酸を溶解する溶媒を含有する液体消臭剤は汚物タンク内に注ぎ込まれ、汚物タンク内の不快臭を改善する。その機構は解明されたわけではないが、ポリフェノールと有機酸を含有する酸性水溶液が、糞尿から微生物の分解により発生するアンモニアを、中和反応により消臭し、さらに、液体消臭剤中のポリフェノールがトイレ中に新たに発生するアンモニアによって、ポリフェノールキノンラジカルに変換されてメチルメルカプタンなどのメルカプタン化合物の悪臭を効果的に消臭できることによると考えられる。
【0023】
以下、下記実験により検証した。
(タンク式トイレ臭モデルの作製)
10mLのイオン交換水を収めた300mLフラスコに、2.8%アンモニア水50μLと0.50%メチルメルカプタン溶液30μLを加え、パラフィルムで蓋をし、25℃で10分間振とうし、フラスコ内のヘッドスペースにタンク式トイレ臭モデルを得た。
ヘッドスペースのタンク式トイレ臭モデルを検知管に取り込み、悪臭濃度を測定した。測定結果は下記表1のとおりであった。
表1

【0024】
(液体消臭剤の調製)
表2に示す化合物を表2の量割合となるように容器内に加え、混合し、液体消臭剤A、Bを得た。
表2

表中、ポリフェノールパウダーはポリフェノールパウダーGTP90(緑茶抽出物、株式会社あいや製)である。
【0025】
(液体消臭剤添加)
10mLのイオン交換水を収めた300mLフラスコに、2.8%アンモニア水50μLと0.50%メチルメルカプタン溶液30μLを加え、次いで前記液体消臭剤0.1g加えた後パラフィルムで蓋をし、25℃で10分間振とうした。
ヘッドスペースのガスを検知管に取り込み、悪臭濃度を測定した。測定結果は下記表3のとおりであった。
表3

【0026】
(液体消臭剤添加後にアンモニアの発生)
10mLのイオン交換水を収めた300mLフラスコに、2.8%アンモニア水50μLと0.50%メチルメルカプタン溶液30μLを加え、次いで前記液体消臭剤0.1g加えた後パラフィルムで蓋をし、25℃で10分間振とうした。振糖を中止し、さらに2.8%アンモニア水50μLフラスコに加え、再度パラフィルムで蓋をし、25℃で10分間振とうした。
ヘッドスペースのガスを検知管に取り込み、悪臭濃度を測定した。測定結果は下記表4のとおりであった。
なお、前記表2のブランクを前記液体消臭剤の変わりに用い、それ以外は前記と同様に操作し、ヘッドスペースのガスを検知管に取り込み、悪臭濃度を測定した。測定結果は下記表4のとおりであった。
表4

【0027】
(液体消臭剤添加後にアンモニアを発生させ、次いで液体消臭剤の添加)
10mLのイオン交換水を収めた300mLフラスコに、2.8%アンモニア水50μLと0.50%メチルメルカプタン溶液30μLを加え、次いで前記液体消臭剤0.1g加えた後パラフィルムで蓋をし、25℃で10分間振とうした。振とうを中止し、2.8%アンモニア水50μLフラスコに加え、再度パラフィルムで蓋をし、25℃で10分間振とうした。振とうを中止し、前記液体消臭剤0.1gをフラスコに加え、再度パラフィルムで蓋をし、25℃で10分間振とうした。
ヘッドスペースのガスを検知管に取り込み、悪臭濃度を測定した。測定結果は下記表5のとおりであった。
表5

【0028】
本発明のタンク式トイレ用液体消臭剤において、水酸基含有化合物としてエタノール等の凍結されにくい化合物を用いると、当該液体消臭剤あるいは前記液体を含む洗浄水は凍結されにくくなり、しかも消臭機能は保持される。氷点下の環境に設置されたタンク式トイレでも前記液体消臭剤を含む洗浄水は凍結されることなく、しかも消臭機能を達成することができるので極めて有利である。前記液体消臭剤に採用できる凍結されにくい化合物は不凍液として知られている次の化合物、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の水酸基含有化合物が好ましい。それら化合物を液体消臭剤中に99.5〜60質量%となるように配合することが好ましく、95〜60質量%となるように配合することがより好ましい。ここで、寒冷地とは最低気温が0℃よりも低くなる地域を意味する。
本発明では、前記不凍液含有液体消臭剤と水を混合してタンク式トイレの洗浄水とすることができる。前記液体消臭剤の含有量に影響されるが、当該洗浄水は寒冷地において凍らず、しかも、消臭機能は維持されることが分かった。前記液体消臭剤混合物の含有量は、当該洗浄水の使用する地域や液体消臭剤で使われる成分により適宜最適な量を選択すれば良いのであって、一概に規定することができないが、例えば、2重量%以上とすると好ましい結果ができる。
【0029】
本発明においては、上記液体消臭剤に、消臭性能の更なる向上、安定性、香立ちなどの点から、香料を予め配合してもよい。
【0030】
本発明において、液体消臭剤成分に配合される香料は一般に室温で大気中に揮散される有機化合物であって、香料として有効である有機化合物であれば、特に制限されないが、ポリフェノール及び有機酸に安定な香料であることが好ましく、糞尿臭と交じり合っても不快な臭いとならないような香料が特に好ましい。
【0031】
本発明で使用する香料としては、ポリフェノール及び有機酸に安定な香料であって、アルコール系香料、エステル系香料、炭化水素系香料、ラクトン系香料、エーテル系香料、天然香料から選ばれる少なくとも1種以上を配合することが好ましい。それら香料の中では、爽やかさを感じさせるシトラス調やグリーン調の香料、清潔感のある石鹸調やフローラル調の香料、清涼感のあるミント調の香料、嗜好性がよく心地よい香りのフルーツ調の香料が好ましい。
具体的には、例えば、脂肪族アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類、脂肪族エステル、フラン系カルボン酸族エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、テルペン系カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、水素化芳香族ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類及び動物若しくは植物からの天然香料が挙げられる。
下記に、本発明で使用し得る主な香料名を示す。
例えば、アルコール類(イソアミルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、シス−3−ヘキセノール、1−オクテン−3−オール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ベンジルアルコール、ターピネオール、ペリラアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、ネロリドール、ファルネソール、フルフリルアルコールなど);炭化水素類(α- ピネン、リモネン、セドレンなど);エステル類(エチルヘキサノエート、ヘキシルアセテート、シス−3−ヘキセニルアセテート、メチルシンナメート、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート、リナリルアセテート、ゲラニルアセテート、ターピニルアセテート、メンチルアセテート、シンナミルアセテート、フェニルエチルアセテートなど);ラクトン類(γ−ヘキサラクトン、γ−オクタラクトン、γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、シス−ジャスミンラクトンなど);エ−テル類(シネオール、リナロールオキシド、ローズオキシドなど);天然香料(オレンジ油、マンダリン油、イランイラン油、ラベンダー油など)等が挙げられる。
それら香料を配合する量はとくに制限されないが、例えば液体消臭剤を基準として、0.001〜50質量%とすることが好ましく、0.01〜10質量%とすることがより好ましい。
これらの香料を上記液体消臭剤に含有させることにより、夫々安定な調和のとれた香りを保つことができることとなり、使用者に気持ち良い快適な香りを与えることが可能となる。本発明で用いられる香料は所謂調合香料であって、バランスの取れた香質を持ち,使用者に気持ち良い快適な香りを有する香料であることが望ましい。
【0032】
本発明では上記液体消臭剤をタンク式トイレに備えられた洗浄水タンクに添加しておき、トイレの使用者が、トイレを使用後に、洗浄水タンクの洗浄水を用いて便器の排泄物を汚物タンクに流し去ることが出来る。このようにして、便器内の排泄物は汚物タンク内に収まり、洗浄水中の液体消臭剤により、不快臭が改善されるので、次のトイレ使用者は何ら不快感を感じることなくトイレを使用することができる。また、タンク式トイレの管理維持者は本発明の液体消臭剤を収容した容器を仮設トイレなど設置されたトイレまで運び、洗浄水タンクに液体消臭剤を注ぐことにより、簡便な操作で仮設トイレなどを悪臭などの不快感を断ち切ることができるので、その点でタンク式トイレの管理維持者にとっても朗報である。
【0033】
本発明では上記液体消臭剤を、タンク式トイレに備えられた汚物タンクに直接投入して、汚物タンク内の排泄物を消臭してもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、簡単な操作で汚物タンク内の排泄物から揮散される悪臭を著しく軽減させることができる。とくに、尿由来のアンモニア臭および糞便由来のメルカプタン臭を著しく軽減させることができる。本発明の液体消臭剤を構成する成分は地球環境に優しい化合物であり、その点で本発明は優れているといえる。また、液体消臭剤の使用量は少量でよく、しかも十分な消臭効果を達成できるのであり、経済的な点でも有利である。さらに、本発明の濃縮液体消臭剤を容器に収容しておき、当該容器を仮設トイレに運び、必要時応じて希釈し、使用することが出来るので、その点でも有利である。従来から、寒冷地でのタンク式トイレの使用は制限されていたが、本発明により、その問題点も解決できることになり、実用的でもある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1で用いたタンク式トイレの概略外観図である。
【図2】実施例2で用いたタンク式トイレの概略外観図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。本発明はこれらの実施例になんら限定されない。
(実施例1)
(液体消臭剤の調製)
表6に示す化合物を表6の量割合となるように容器内に加え、混合して水溶液とし、液体消臭剤を得た。
【0037】
(タンク式トイレの消臭効果確認試験)
図1で示されるタンク式トイレ3台を用いて人の排泄物に対する消臭効果の確認試験を行った。このトイレは約400Lの汚物用タンクと約70Lの洗浄用給水タンクを装備する据置型ペダル式簡易水洗仮設トイレである。
前記トイレの洗浄用給水タンクに実施例1の液体消臭剤350mLを投入し、更に水を注いで約70Lの洗浄水用給水タンクを満タンにした。この操作により液体消臭剤は約200倍に水で希釈されたことになる。液体消臭剤を洗浄水用給水タンクに投入した日から、トイレを成人男女計10人が毎日使用した。使用回数は1日合計20回とした。1回使用するたびに洗浄水約250mLが便器に流出し、汚物と一緒に汚物用タンクへ流れ込んだ。使用開始から1日後、3日後、7日後に、5人のパネラーにトイレ内の臭いを嗅いでもらい、下記の基準で官能的に評価した。
評価結果を表6に示した。なお、ブランクは液体消臭剤なし、コントロールとして没食子酸を除いたものを使用した。
【0038】
(官能評価基準)
0 悪臭が全く感じられない
1 悪臭がほとんど感じられない
2 悪臭がかすかに感じられる
3 悪臭が明らかに感じられる
4 悪臭が強く感じられる
5 悪臭が強烈に感じられる
【0039】
表6

【0040】
(実施例2、3)
(液体消臭剤の調製)
表7に示す化合物を表7の量割合となるように容器内に加え、混合し、水溶液として、液体消臭剤を得た。
(タンク式トイレの消臭効果確認試験)
図1で示されるタンク式トイレを用いて尿臭に対する消臭効果の確認試験を行った。
実施例2の液体消臭剤350mLを約70Lの水が入っている洗浄水用給水タンクに投入した。この操作により液体消臭剤は約200倍に水で希釈されたことになる。液体消臭剤を洗浄水用給水タンクに投入した日から、トイレを成人男女計10人が小水用に毎日使用した。使用回数は1日合計20回とした。1回使用するたびに洗浄水約250mLが便器に流出し、汚物と一緒に汚物用タンクへ流れ込んだ。使用開始から1日後、3日後、7日後に、トイレ内の臭いを5人のパネラーにより官能的に評価した。
評価基準は前記実施例1と同じである。評価結果を表9に示した。なお、ブランクは液体消臭剤なし、コントロールとして没食子酸を除いたものを使用した。
実施例3の液体消臭剤についても同様に操作した。評価結果を表10に示した。
【0041】
表7

表中、香料はローズ様のフローラル調香料であり、処方は下記表8のとおりである。
DPGはジプロピレングリコールである(以下、同様)。
【0042】
表8 ローズ様のフローラル調香料組成物

【0043】
表9 評価結果

【0044】
表10 評価結果

【0045】
(実施例4、5)
図1で示されるタンク式トイレを消臭剤無しで使用した後、当該トイレに備えた汚物タンクを回収し、その汚物タンクを用いて消臭効果を確認した。
(液体消臭剤の調製)
表11に示す化合物を表11の量割合となるように容器内に加え、水で100倍に希釈して液体消臭剤を得た。
(タンク式トイレの回収後汚物タンクに対する消臭効果確認試験)
前記使用後のタンク式トイレから回収された汚物タンクを用いて糞尿臭に対する消臭効果の確認試験を行った。このトイレは約400Lの汚物用タンクを装備しており、一定期間使用されたのち汚物用タンクに溜まった糞便や尿は、バキュームで吸い取られて処理される。このバキュームで糞尿を吸い取ったあとに回収された汚物用タンクには、汚物がかなり付着しており、非常に強い悪臭を放っている。さらに、回収汚物タンクは再使用されるために、回収先で洗浄作業が行われるが、悪臭を完全に取り去るのはかなり困難であるとされている。
この回収直後の汚物タンクで、悪臭強度が同等のものを選びだし、前記液体消臭剤400gを、タンク内に流し入れる。この時、タンク全体に液体消臭剤がいきわたるようにして、30分間放置した。その後、タンク内の臭いを5人のパネラーにより官能評価した。
評価基準は実施例1と同様である。評価結果を表13に示した。なお、ブランクは液体消臭剤なし、コントロールとして没食子酸を除いたものを使用した。
【0046】
表 11

表中、香料はグレープフルーツ様のシトラス調香料であり、処方は表12のとおりである。
【0047】
表12 グレープフルーツ様のシトラス調香料

【0048】
表 13 評価結果

【0049】
(実施例6)
(液体消臭剤の調製)
表14に示す化合物を表14の量割合となるように容器内に加え、実施例1と同様な操作により、液体消臭剤を得た。
(タンク式トイレの消臭効果確認試験)
トイレ不快臭が著しく、特にアンモニア臭による悪臭が顕著な公衆トイレを再現し、消臭効果の確認試験を行った。すなわち、水洗設備が無く、排泄物を直接汚物タンクに流し込む図2で示されるタンク式トイレを用い、このトイレを1日5回成人男子が使用し、5回目の使用後に、実施例6の液体消臭剤2gを水で100倍に希釈したもの200gを便器に投入し、トイレ内の臭いを5人のパネラーにより官能的に評価した。
評価結果は次の通りであった。
ブランクと比較して、アンモニア臭は殆ど消臭されトイレ不快臭は感じなくなった。なお、ブランクは液体消臭剤なしのものを使用した。
【0050】
表14

【0051】
(実施例7)
(不凍液含有液体消臭剤の調製)
表15に示す化合物を表15の量割合となるように容器内に加え、混合し、表15記載の組成を有する不凍液含有液体消臭剤を得た。
表15 不凍液含有液体消臭剤

表中、香料はローズ様のフローラル調香料であり、処方は上記表8のとおりである。
【0052】
(不凍液含有液体消臭剤の凍結確認試験)
表16記載の量の不凍液含有液体消臭剤に水を加え70Lの洗浄水を調製した。それぞれの洗浄水を−20℃の雰囲気下に放置し、凍結温度を測定した。測定機器は低温恒温器 LU-112T タバイエスペック(株)製を用いた。
その測定結果を表16に示した。
【0053】
表16

表中、− は凍結していないことを示し、「凍結」は該当する温度よりも低温になると、洗浄水が凍結したことを示す。
【0054】
(タンク式トイレの消臭効果確認試験)
図1で示されるタンク式トイレ2台を用いて人の排泄物に対する消臭効果の確認試験を行った。前記トイレの洗浄用給水タンクに実施例7の液体消臭剤6.9Lを投入し、更に水を注いで約70Lの洗浄水用給水タンクを満タンにした。液体消臭剤を洗浄水用給水タンクに投入した日から、トイレを成人男女計10人が毎日使用した。使用回数は1日合計20回とした。1回使用するたびに洗浄水約250mLが便器に流出し、汚物と一緒に汚物用タンクへ流れ込んだ。使用開始から7日後に、5人のパネラーにトイレ内の臭いを嗅いでもらい、実施例1の基準で官能的に評価した。
評価結果を表17に示した。なお、ブランクは液体消臭剤なしのものを使用した。
【0055】
表17 評価結果

【0056】
本発明を次のように記載することができる。
(1)ポリフェノール、有機酸、およびポリフェノールおよび有機酸の可溶化溶媒を含有するpH1.0〜6.0の液体消臭剤を用いることを特徴とするタンク式トイレの消臭方法。
(2)ポリフェノールおよび有機酸の可溶化溶媒が、水酸基含有化合物または水酸基含有化合物と水とからなる前記(1)記載のタンク式トイレの消臭方法。
(3)液体消臭剤中に、さらに、不凍液を含有する前記(1)または(2)記載のタンク式トイレの消臭方法。
(4)液体消臭剤中に、さらに、洗浄成分を含有する前記(1)〜(3)いずれか記載のタンク式トイレの消臭方法。
(5)前記(1)〜(4)いずれか記載の液体消臭剤をタンク式トイレに備えられた洗浄水タンクに添加することを特徴とする請求項1記載のタンク式トイレの消臭方法。
(6)前記(1)〜(4)いずれか記載の液体消臭剤をタンク式トイレに備えられた汚物タンクに投入することを特徴とする請求項1記載のタンク式トイレの消臭方法。
【0057】
(7)ポリフェノール、有機酸、およびポリフェノールおよび有機酸の可溶化溶媒を含有するpH1.0〜6.0であるタンク式トイレ用液体消臭剤。
(8)ポリフェノールおよび有機酸の可溶化溶媒が、水酸基含有化合物または水酸基含有化合物と水とからなる前記(7)記載のタンク式トイレ用液体消臭剤。
(9)さらに、不凍液を含有する前記(7)または(8)記載のタンク式トイレ用液体消臭剤。
(10)前記(9)記載のタンク式トイレ用液体消臭剤を0.5〜40質量%および不凍液を99.5〜60質量%から構成されることを特徴とする寒冷地で用いるタンク式トイレ用液体消臭剤。
(11)さらに、洗浄有効成分を含有する前記(7)〜(10)いずれか記載のタンク式トイレ用液体消臭剤。
(12)ポリフェノール含有量が液体消臭剤中に存在する水の量1質量部に対して0.05〜1質量部である前記(7)〜(10)いずれか記載のタンク式トイレ用液体消臭剤。
(13)液体消臭剤に香料を0.1〜10質量%配合した前記(7)〜(12)いずれか記載のタンク式トイレ用液体消臭洗浄剤。
(14)前記(7)〜(13)いずれか記載のタンク式トイレ用液体消臭剤を収容したプラスチック製容器。
(15)前記(7)〜(13)いずれか記載のタンク式トイレ用液体消臭剤および水から構成されることを特徴とするタンク式トイレ用洗浄水。
(16)前記(12)記載のタンク式トイレ用液体消臭剤を0.5〜10質量%配合した不凍液70〜99%および水1〜30%から構成されることを特徴とする寒冷地用タンク式トイレ洗浄水不凍液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリフェノール、(2)有機酸および(3)水酸基含有化合物または水酸基含有化合物と水とからなる前記ポリフェノールおよび有機酸を溶解する溶媒を含有するpH1.0〜6.0の液体消臭剤を用いることを特徴とするタンク式トイレの消臭方法。
【請求項2】
液体消臭剤をタンク式トイレに備えられた洗浄水タンクに添加することを特徴とする請求項1記載のタンク式トイレの消臭方法。
【請求項3】
液体消臭剤をタンク式トイレに備えられた汚物タンクに投入することを特徴とする請求項1記載のタンク式トイレの消臭方法。
【請求項4】
(1)ポリフェノール、(2)有機酸および(3)水酸基含有化合物または水酸基含有化合物と水とからなる前記ポリフェノールおよび有機酸を溶解する溶媒を含有することを特徴とするpH1.0〜6.0であるタンク式トイレ用液体消臭剤。
【請求項5】
液体消臭剤に香料を0.1〜10質量%配合した請求項4記載のタンク式トイレ用液体消臭剤。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載のタンク式トイレ用液体消臭剤0.5〜40質量%および不凍液99.5〜60質量%から構成されることを特徴とする寒冷地で用いるタンク式トイレ用液体消臭剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−273940(P2010−273940A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130665(P2009−130665)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】