説明

タンク支持構造及び浮体構造物

【課題】タンク収容部が傾斜部や段差部を有する場合であっても、タンクの熱変形に対応することができ、容積効率を低下させずにタンクを支持することができる、タンク支持構造及び浮体構造物を提供する。
【解決手段】浮体構造物1に形成された収容部2に搭載されるタンク3のタンク支持構造であって、収容部2は、底部に形成された水平部21と傾斜部22とを有し、タンク3は、収容部2の底部形状に沿った底面部(水平部31及び傾斜部32)を有し、水平部21とタンク3(水平部31)との間に配置される支持ブロック体4と、傾斜部22とタンク3(傾斜部32)との間に配置されるとともに収容部2及びタンク3に当接して移動可能な支持移動体5と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク支持構造及び浮体構造物に関し、特に、傾斜部や段差部を有する収容部内において熱収縮又は熱膨張するタンクを支持可能なタンク支持構造及び該タンク支持構造を備えた浮体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、LPG(液化石油ガス)、LNG(液化天然ガス)等の液体貨物を運搬又は貯蔵する運搬船や洋上浮体設備等の浮体構造物では、これらの液体貨物を収容するタンクを浮体構造物から独立させた独立タンク方式のものが広く使用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、コンテナ船、タンカー、一般貨物船、客船等の船舶の推進燃料として液化ガス(例えば、LNG)等の液体燃料を使用することが検討されており、かかる液体燃料を収容する燃料タンクを、前記液体貨物の場合と同様に、船体から独立させた独立タンク方式とすることが計画されている。
【0003】
かかる独立タンク方式では、船体に対してタンクが相対移動可能であることから、航海中や停泊中における船体の動揺に対して、タンクを安定的に支持することが重要である。また、タンクにLNG等の低温の液化ガスを収容した際には、タンクが熱収縮し、液化ガスの収容量の変動によって熱変形(熱収縮及び熱膨張)することとなる。したがって、独立タンク方式のタンク支持構造では、船体動揺及び熱変形を考慮する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されたタンク支持構造は、常温膨張状態において当接する側部支持体と、低温収縮状態において当接する底部支持体とを有し、側部支持体及び底部支持体の当接時にタンクの水平方向の相対移動を阻止するようにしたものである。
【0005】
また、特許文献2に記載されたタンク支持構造は、タンクの重さを支えるための基部支持体と、タンク上に設けられたタンク支持面と、ホールド上に設けられ前記タンク支持面と協働するように構成されたホールド支持面とを有し、タンク支持面及びホールド支持面はタンクの熱移動の方向に向かって延びるように形成されており、これらの支持面によりタンクが熱移動した場合であってもタンクを支持して横方向の移動を抑制するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭50−18206号公報
【特許文献2】特表2010−519480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2に記載されたタンク支持構造では、タンクの垂直荷重は、収容部の底部に配置された支持部材により支持されている。したがって、タンク収容部が、船首部等の幅の狭い部分に配置される場合や、他の機器との配置関係からタンク底部を支持するのに十分な底部面積を確保できない場合には、上述したタンク支持構造を採用することができないという問題があった。仮に、そのまま採用しようとすれば、面積の小さい収容部に合わせてタンクを設計せざるを得ず、容積効率が低下してしまうこととなる。
【0008】
特に、推進用の液体燃料を収容するタンクは、いわゆるタンカー以外の浮体構造物にも使用されることから、収容部の底面部に傾斜部や段差部を有することがあり、タンク底部を支持するのに十分な底部面積を確保できない可能性がある。また、液体燃料として、低温の液体燃料(例えば、LNG等)を使用した場合を考慮すれば、熱変形(熱収縮及び熱膨張)が生じた場合であっても、タンクを支持できるようにしておかなければならない。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、タンク収容部が傾斜部や段差部を有する場合であっても、タンクの熱変形に対応することができ、容積効率を低下させずにタンクを支持することができる、タンク支持構造及び浮体構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、浮体構造物に形成された収容部に搭載されるタンクのタンク支持構造において、前記収容部は、底部に形成された水平部と傾斜部又は段差部とを有し、前記タンクは、前記収容部の底部形状に沿った底面部を有し、前記水平部と前記タンクとの間に配置される支持ブロック体と、前記傾斜部又は段差部と前記タンクとの間に配置されるとともに前記収容部及び前記タンクに当接して移動可能な支持移動体と、を有することを特徴とするタンク支持構造が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、浮力により水上に支持される本体部と、該本体部に形成されるとともにタンクが搭載される収容部と、を有する浮体構造物において、前記タンクのタンク支持構造は、前記収容部が、底部に形成された水平部と傾斜部又は段差部とを有し、前記タンクが、前記収容部の底部形状に沿った底面部を有し、前記水平部と前記タンクとの間に配置される支持ブロック体と、前記傾斜部又は段差部と前記タンクとの間に配置されるとともに前記収容部及び前記タンクに当接して移動可能な支持移動体と、を有するタンク支持構造である、ことを特徴とする浮体構造物が提供される。
【0012】
上述したタンク支持構造及び浮体構造物において、前記支持移動体は、前記タンクの不動点に向かって移動可能に配置されていてもよい。
【0013】
さらに、前記タンクは前記支持移動体を案内するタンク側レールを有し、前記収容部は前記支持移動体を案内する収容部側レールを有し、前記タンク側レール及び前記収容部側レールは、前記タンクと前記収容部との隙間が広がった場合であっても前記支持移動体の当接状態を維持するように、前記不動点に近い側の間隔が前記不動点から遠い側の間隔よりも狭く形成されていてもよい。
【0014】
また、前記支持移動体は、三角形の頂点を構成するように配置された、第一車輪、第二車輪及び第三車輪を有し、前記第一車輪は前記タンクに当接し、前記第二車輪及び前記第三車輪は前記収容部に当接するように構成されていてもよい。
【0015】
さらに、前記第一車輪と前記タンクとの接点である第一接点と、前記第二車輪と前記収容部との接点である第二接点と、前記第三車輪と前記収容部との接点である第三接点と、により構成される三角形は、前記第二接点及び前記第三接点に対する頂角が90°以上180°未満であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明に係るタンク支持構造及び浮体構造物によれば、収容部の水平部に支持ブロック体を配置し、収容部の傾斜部又は段差部に支持移動体を配置したことにより、収容部が傾斜部や段差部を有し、タンクを支持するのに十分な水平部の面積を確保できない場合であっても、支持ブロック体及び支持移動体によりタンクを容易に支持することができる。
【0017】
また、支持移動体は、収容部とタンクとの間で移動可能に構成されていることから、例えば、タンク内にLNGやLPG等の低温の液化ガスが収容された場合に生じる熱変形(熱収縮又は熱膨張)により、タンクと収容部との隙間の大きさが変動した場合であっても、それに追従して支持移動体を移動させることができる。
【0018】
したがって、タンク収容部が傾斜部や段差部を有する場合であっても、タンクの熱変形に対応することができ、容積効率を低下させずにタンクを支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は収容部の平面図、である。
【図2】図1に示したタンク支持構造の拡大図であり、(a)は空載時、(b)は満載時、を示している。
【図3】図2(a)におけるA−A断面図であり、(a)は第一実施形態、(b)は第一変形例、(c)は第二変形例、(d)は第三変形例、を示している。
【図4】図1(b)に示したタンク支持構造の変形例を示す図であり、(a)は第一変形例、(b)は第二変形例、を示している。
【図5】本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、を示している。
【図6】本発明の第四実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は収容部の平面図、である。
【図7】本発明の実施形態に係る浮体構造物を示す図であり、(a)は第一実施形態、(b)は第二実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図1〜図7を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は収容部の平面図、である。図2は、図1に示したタンク支持構造の拡大図であり、(a)は空載時、(b)は満載時、を示している。図3は、図2(a)におけるA−A断面図であり、(a)は第一実施形態、(b)は第一変形例、(c)は第二変形例、(d)は第三変形例、を示している。
【0021】
本発明の第一実施形態に係るタンク支持構造は、図1〜図3に示したように、浮体構造物1に形成された収容部2に搭載されるタンク3のタンク支持構造であって、収容部2は、底部に形成された水平部21と傾斜部22とを有し、タンク3は、収容部2の底部形状に沿った底面部(水平部31及び傾斜部32)を有し、水平部21とタンク3(水平部31)との間に配置される支持ブロック体4と、傾斜部22とタンク3(傾斜部32)との間に配置されるとともに収容部2及びタンク3に当接して移動可能な支持移動体5と、を有している。
【0022】
前記浮体構造物1は、図1(a)に示したように、浮力により水上に支持される本体部11と、本体部11に形成されるとともにタンク3が搭載される収容部2と、を有する。本体部11は、例えば、船体(船舶の外殻)である。また、収容部2は、船体を構成する本体部11と、本体部11に接続され収容部2の上部を気密に覆うタンクカバー12と、本体部11及びタンクカバー12に囲まれた空間を気密に封鎖する隔壁13(図1(b)参照)と、により構成される。本体部11、タンクカバー12及び隔壁13は、例えば、溶接等により気密に接続されており、タンク3から燃料が漏洩した場合であっても、燃料が拡散しないように構成されている。
【0023】
タンク3の上部には、突起部33が形成されており、タンクカバー12の内面には凹部12aが形成されており、凹部12aに突起部33を挿入することにより、タンク3の横揺れを低減したり、横転を防止したりするアンチローリングチョックが形成される。突起部33及び凹部12aは、図1(a)に示したように、例えば、船体中心部に配置されるが、左舷側及び右舷側にずれた位置に配置してもよいし、複数個所に配置してもよい。なお、タンク3は、自立角型タンカーのタンクと同様に、アンチフローティングチョックを有していてもよい。
【0024】
そして、収容部2の底部は、例えば、船体中心線L上に形成される水平部21と、水平部21の両隣に形成される傾斜部22と、により構成されている。水平部21は、傾斜部22と比較して幅が狭く、水平部21だけではタンク3を支持することが困難になっている。なお、収容部2の底部形状は図示した構成に限定されるものではなく、水平部21の片側にのみ傾斜部22が配置されている場合であってもよいし、水平部21の両隣に配置された傾斜部22の角度が異なる場合であってもよい。
【0025】
前記タンク3は、例えば、石油、LPG(液化天然ガス)、LNG(液化石油ガス)等の液体燃料を収容する燃料タンクである。タンク3に収容された液体燃料は、浮体構造物1の推進や浮体構造物1の付属装置の駆動源となる主機(ディーゼルエンジン等)の燃料として使用される。本実施形態では、燃料としてLNGを収容する場合を想定している。LNGは、気体の天然ガスを−163℃以下の温度に冷却して液体にしたものであり、低温に維持する必要がある。そこで、タンク3は、外周が防熱材により被覆されている。防熱材を被覆した状態のタンク3を図では太線で表示している。防熱材は、主として、パネル状の断熱材であり、タンク3の外周面に多数の断熱材が貼付されている。防熱材は、LNGタンカーのLNGタンクと同様の施工方法により貼付される。なお、タンク3から主機に燃料を供給する配管の図は省略してある。
【0026】
前記支持ブロック体4は、例えば、角型の木材により構成される。支持ブロック体4は、図1(b)に示したように、水平部21に形成された複数の支持台41,41m,41n上に載置され、支持台41上で摺動可能に構成されている。また、支持ブロック体4は、タンク3の水平部31に配置された枠体部(図示せず)内に挿入されて係止される。枠体部は、支持ブロック体4の外形と略等しい形状に形成された金属製の枠体であり、水平部31に溶接又はボルト等の固定具によって接続される。なお、支持ブロック体4をタンク3側に固定するか、収容部2側に固定するかは、タンク3の容量、支持ブロック体4の個数、施工のし易さ等を考慮して任意に選択することができる。
【0027】
支持台41は、図1(b)に示したように、長手方向軸M上に配置された支持台41mと、短手方向軸N上に配置された支持台41nと、を含む。そして、タンク3に低温の液体燃料を収容した場合に、タンク3は長手方向軸Mと短手方向軸Nとの交点である不動点Pに向かって熱収縮する。したがって、支持台41m上に載置された支持ブロック体4は、長手方向軸Mに沿って移動し、支持台41n上に載置された支持ブロック体4は、短手方向軸Nに沿って移動する。この移動を案内するために、支持台41mの両側部には長手方向軸Mに沿ったガイド部材(図示せず)が配置され、支持台41nの両側部には短手方向軸Nに沿ったガイド部材(図示せず)が配置される。なお、「不動点」とは、タンク3に熱変形が生じた場合であっても位置が変動しない部分を意味する。
【0028】
上述した支持ブロック体4及び支持台41による支持構造は、基本的に従来の独立タンク方式のLNGタンカーにおける底部支持構造と同様の構成であり、適宜変更して適用することができる。
【0029】
前記支持移動体5は、図1(a)に示したように、収容部2の傾斜部22とタンク3の傾斜部32との間に配置される。また、図1(b)に示したように、支持移動体5は、例えば、短手方向軸Nに沿って移動可能に配置される。なお、図1(b)では、支持移動体5の図を省略してある。
【0030】
図2(a)及び(b)に示したように、タンク3は支持移動体5を案内するタンク側レール3rを有し、収容部2は支持移動体5を案内する収容部側レール2rを有し、タンク側レール3r及び収容部側レール2rは、タンク3と収容部2との隙間が広がった場合(熱変形差Δg)であっても支持移動体5の当接状態を維持するように、不動点Pに近い側の間隔Gnが不動点Pから遠い側の間隔Gfよりも狭く形成されている。また、収容部側レール2rの長手方向の両端部には、支持移動体5の移動を規制するストッパ2sを形成するようにしてもよい。なお、かかるストッパは、タンク側レール3rに形成するようにしてもよい。
【0031】
例えば、タンク側レール3rが均一の高さを有するフラットなレールであった場合に、収容部側レール2rは、不動点Pに近い側の高さhが不動点Pから遠い側よりも高くなるように形成されている。この収容部側レール2rの高さhの変位は、直線的であってもよいし、曲線的であってもよいし、直線と曲線の組合せであってもよい。そして、収容部側レール2rは、図1(b)に示したように、短手方向軸Nに沿って傾斜部22に配置される。このとき、高さhが高い側が不動点Pに近い位置となるように配置される。一方、タンク側レール3rは、傾斜部22に配置された収容部側レール2rと対峙する位置のタンク3の傾斜部32に、収容部側レール2rと平行となるように配置される。
【0032】
また、支持移動体5は、三角形の頂点を構成するように配置された、第一車輪51、第二車輪52及び第三車輪53を有し、第一車輪51はタンク3(タンク側レール3rを含む)に当接し、第二車輪52及び第三車輪53は収容部2(収容部側レール2rを含む)に当接するように構成されている。また、第一車輪51〜第三車輪53は、フレーム54に回転可能に接続されている。
【0033】
ここで、第二車輪52、フレーム54、収容部側レール2r及びタンク側レール3rの位置関係について、図3を参照しつつ説明する。図3(a)に示した第一実施形態では、収容部側レール2r及びタンク側レール3rは凹字形状を有しており、第二車輪52の両側にフレーム54が配置されている。収容部側レール2r及びタンク側レール3rの両側部における突出部は車輪の脱輪を抑制するストッパとしての機能を有する。また、図3(b)に示した第一変形例のように、一枚のフレーム54の両側に一対の第二車輪52を配置するようにしてもよい。
【0034】
図3(c)に示した第二変形例では、収容部側レール2r及びタンク側レール3rは凸字形状を有しており、フレーム54の両側に一対の第二車輪52が配置されており、一対の第二車輪52の間に収容部側レール2rの突出部が配置されている。収容部側レール2r及びタンク側レール3rの中央部における突出部は車輪の脱輪を抑制するストッパとしての機能を有する。
【0035】
図3(d)に示した第三変形例は、収容部側レール2rと収容部2(傾斜部22)との間及びタンク側レール3rとタンク3(傾斜部32)との間に、それぞれ枕木2t,3tを配置したものである。例えば、収容部側レール2rと収容部2(傾斜部22)との素材が異なる場合や、タンク側レール3rとタンク3(傾斜部32)との素材が異なる場合には、熱膨張率(熱収縮率)が異なることにより、レール(収容部側レール2r及びタンク側レール3r)と固定部(収容部2及びタンク3)との間に熱変形差が生じてしまう。
【0036】
そこで、枕木2t,3tは、この熱変形差を吸収するために配置される。例えば、枕木2t,3tの弾性変形により熱変形差を吸収するようにしてもよいし、枕木2t,3tを固定部(収容部2及びタンク3)側に固定し、レール(収容部側レール2r及びタンク側レール3r)を枕木2t,3tに対して相対移動可能となるように接続してもよい。具体的には、レール(収容部側レール2r及びタンク側レール3r)に長孔を形成し、この長孔に摺動可能に係止するスタッドピンを枕木2t,3tに立設することが考えられる。
【0037】
枕木2t,3tは、例えば、固定部(収容部2及びタンク3)と同じ素材により構成してもよいし、支持ブロック体4と同様に木材等により構成するようにしてもよい。なお、レール(収容部側レール2r及びタンク側レール3r)と固定部(収容部2及びタンク3)とが同じ素材で構成されている場合には、熱変形差を生じないことから、レールは溶接やボルト等の固定具により固定部側に接続される。
【0038】
また、支持移動体5は、図2(a)に示したように、第一車輪51とタンク3との接点である第一接点Q1と、第二車輪52と収容部2との接点である第二接点Q2と、第三車輪53と収容部2との接点である第三接点Q3と、により構成される三角形は、第二接点Q2及び第三接点Q3に対する頂角θが90°以上180°未満となるように設定される。頂角θを90°未満とした場合には、支持移動体5が収容部側レール2r上で転倒(第一車輪51がタンク側レール3rから離間)してしまい、支持部材として機能できなくなってしまう可能性がある。
【0039】
なお、支持移動体5又はレール(収容部側レール2r及びタンク側レール3r)に転倒防止機能を配置した場合、例えば、第二車輪52及び第三車輪53を収容部側レール2rに転動可能に係止させた場合や第一車輪51をタンク側レール3rに転動可能に係止させた場合には、頂角θを90°未満に設定してもよい。
【0040】
また、図1(a)及び(b)に示したように、支持移動体5を不動点P側に付勢する弾性体6を配置するようにしてもよい。このように、不動点P側(ここでは下方側)に支持移動体5を付勢することにより、タンク3が熱収縮した場合に、傾斜部32の移動に容易に追従させて支持移動体5を移動させることができるとともに、十分な摩擦力を発生させることができる。また、弾性体6を配置することにより、タンク3からの抗力を弾性体6の弾性力で調整することもできる。
【0041】
弾性体6には、例えば、バネ、ゴム、アクチュエータ(エアシリンダ、油圧シリンダ等)等を使用することができる。弾性体6の弾性力は、支持移動体5を不動点P側に向かって付勢しつつ、タンク3が熱膨張した際における傾斜部32の移動によって支持移動体5が上方に移動可能な大きさに設定される。また、弾性体6は、例えば、一端が支持移動体5のフレーム54に接続され、他端がタンク側レール3rの下方側に接続される。なお、弾性体6の他端は、収容部側レール2rの下方側に接続してもよいし、タンク側レール3r又は収容部側レール2rの上方側に接続するようにしてもよい。
【0042】
ここで、上述した支持移動体5の動作について説明する。図2(a)に示したように、タンク3にLNG等の低温の液化ガスが収容されていない状態、すなわち、空載時には、タンク3は最も熱膨張した状態(熱収縮していない状態)になっている。図2(a)において、タンク3が最も熱収縮した状態を一点鎖線で示せば、タンク3の傾斜部32は、Δgだけ熱変形することとなる。この熱変形差Δgが生じた場合であっても、支持移動体5は収容部側レール2r及びタンク側レール3rに当接している必要があることから、収容部側レール2rの高さhと熱変形差Δgとは、例えば、h>Δgの関係を有する。
【0043】
また、図2(a)に示した空載時には、収容部2(収容部側レール2r)とタンク3(タンク側レール3r)との隙間が狭いことから、支持移動体5は矢印で示したように、上方側に移動した状態で、収容部2(収容部側レール2r)及びタンク3(タンク側レール3r)に当接した状態が保持される。このとき、弾性体6は伸長した状態になっており、移動支持体5を不動点P側に付勢し、車輪51をタンク3(タンク側レール3r)に押し付けるように作用している。
【0044】
そして、図2(b)に示したように、タンク3にLNG等の低温の液化ガスを満載した状態では、タンク3の傾斜部32は、図2(a)に示した空載時と比較して熱変形差Δgを生じる。したがって、収容部2(収容部側レール2r)とタンク3(タンク側レール3r)との隙間が広くなったことにより、支持移動体5はタンク側レール3r上を矢印で示した方向に自重及び弾性体6の弾性力(付勢力)により移動し、下方側に移動した状態で、収容部2(収容部側レール2r)及びタンク3(タンク側レール3r)に当接した状態が保持される。
【0045】
図1(b)に示したように、収容部側レール2r及びタンク側レール3rは、不動点Pを通る短手方向軸Nに沿って配置されていることから、図2(a)及び(b)に示したように、収容部側レール2r及びタンク側レール3r上を移動する支持移動体5は、タンク3の不動点Pに向かって移動可能に配置されていることとなる。
【0046】
また、タンク3に液化ガスを満載した後、液化ガスの移載、自然減少、燃料としての使用等により、収容量が低下した場合には、タンク3は熱膨張することとなる。すなわち、タンク3は、図2(b)に示した状態から徐々に図2(a)に示した状態へと接近する。この場合、支持移動体5は、タンク3の傾斜部32の熱膨張により押し出され、収容部側レール2r上を上方に向かって収容部2(収容部側レール2r)及びタンク3(タンク側レール3r)に当接した状態を維持しながら移動する。
【0047】
上述したタンク支持構造によれば、収容部2の水平部21に支持ブロック体4を配置し、収容部2の傾斜部22に支持移動体5を配置したことにより、収容部2が傾斜部22を有し、タンク3を支持するのに十分な水平部21の面積を確保できない場合であっても、支持ブロック体4及び支持移動体5によりタンク3を容易に支持することができる。
【0048】
また、支持移動体5は、収容部2とタンク3との間で移動可能に構成されていることから、例えば、タンク3内にLNGやLPG等の低温の液化ガスが収容された場合に生じる熱変形(熱収縮又は熱膨張)により、タンク3と収容部2との隙間の大きさが変動した場合であっても、それに追従して支持移動体5を移動させることができ、タンク収容部が傾斜部22を有する場合であっても、タンク3の熱変形に対応することができ、容積効率を低下させずにタンク3を支持することができる。
【0049】
続いて、支持移動体5の他の配置方法について、図4を参照しつつ説明する。ここで、図4は、図1(b)に示したタンク支持構造の変形例を示す図であり、(a)は第一変形例、(b)は第二変形例、を示している。
【0050】
図4(a)に示した第一変形例は、図1(b)に示した支持ブロック体4(支持台41)の個数を減らし、支持移動体5(レール)の個数を増やしたものである。具体的には、支持移動体5を支持する収容部側レール2rは、左右両側の傾斜部22のそれぞれについて、短手方向軸N上に連続して複数配置される。図では、収容部側レール2rを二つずつ配置しているが、三つ以上連続して配置するようにしてもよい。
【0051】
図4(b)に示した第二変形例は、例えば、液体貨物であるLNG等を運搬するための大型のタンク3に支持移動体5を配置する方法を示したものである。具体的には、不動点Pを通る放射方向軸R1,R2を設定した場合、支持移動体5を支持する収容部側レール2rは、左右両側の傾斜部22のそれぞれについて、短手方向軸N及び放射方向軸R1,R2上に配置される。図では、各軸上に収容部側レール2rを一つずつ配置しているが、二つ以上配置するようにしてもよいし、軸ごとに配置数を変更するようにしてもよい。なお、支持ブロック体4を支持する支持台41は、タンク3の満載時における垂直荷重を考慮して、水平部21上に適宜配置される。
【0052】
次に、本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造について、図5及び図6を参照しつつ説明する。ここで、図5は、本発明の他の実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、を示している。図6は、本発明の第四実施形態に係るタンク支持構造を示す図であり、(a)は断面図、(b)は収容部の平面図、である。なお、各図において、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0053】
図5(a)に示した第二実施形態に係るタンク支持構造は、支持移動体5を不動点P側に付勢する弾性体6を省略したものである。このように、弾性体6を省略した場合であっても傾斜部32又は収容部側レール2rが十分な傾斜角度を有する場合には、タンク3が熱収縮した場合であっても、支持移動体5の自重によって追従させることができるとともに、十分な摩擦力を発生させることができる。
【0054】
図5(b)に示した第三実施形態に係るタンク支持構造は、タンク3の熱変形によるタンク3の熱変形差Δgを支持移動体5の第一車輪51をタンク3(傾斜部32)に向かって移動させることによって吸収するようにしたものである。このように、熱変形差Δgを第一車輪51の移動によって吸収するようにした場合には、収容部側レール2r及びタンク側レール3rを省略したり、収容部側レール2r及びタンク側レール3rをフラットに形成したりすることができ、タンク支持構造を簡素化することができる。勿論、支持移動体5の落下防止を考慮して、図2に示した収容部側レール2rのように、傾斜したレールを使用するようにしてもよい。
【0055】
かかる支持移動体5は、例えば、第二車輪52及び第三車輪53を回転可能に支持するフレーム54と、フレーム54に配置され第一車輪51を回転可能に支持する先端部55と、先端部55をフレーム54に対して接近又は離隔可能に支持する加圧部56と、を有する。加圧部56は、例えば、バネ、ゴム、アクチュエータ(エアシリンダ、油圧シリンダ等)等により構成することができる。第一車輪51は、加圧部56により発生する圧力によってタンク3の傾斜部32に押し付けられながら、熱変形差Δgを吸収する。なお、支持移動体5に所定の支持力を発揮させたい場合には、エアシリンダや油圧シリンダ等の圧力制御可能なアクチュエータを使用するようにすればよい。
【0056】
図6(a)及び(b)に示した第四実施形態に係るタンク支持構造は、収容部2及びタンク3が複数の段差部22s,32sを有するものである。例えば、浮体構造物1がコンテナ船のような場合には、本体部11における収容部2は、図示したような段差部22sを備えた多段形状を有している。かかる段差部22sを有する収容部2にタンク3を配置する場合には、タンク3の底部に収容部2の段差部22sに合わせて複数の段差部32sを形成する必要がある。そして、タンク3は、LNG等の低温の液化ガスを収容した場合には、図6(a)に一点鎖線で示したように熱収縮することとなる。
【0057】
そこで、収容部2の段差部22sとタンク3の段差部32sとの間には、上述した支持移動体5が配置される。このとき、タンク3の熱収縮により段差部22s,32sの隙間は狭くなることから、図6(a)に示したように、収容部側レール2rの高さhが高い方を外側(不動点Pから遠い側)になるように配置した方がよいが、必要に応じて、収容部側レール2rの高さhが高い方を内側(不動点Pに近い側)になるように配置してもよい。さらに、段差部22sでは、収容部側レール2r及びタンク側レール3rが略水平状態に配置されることから、支持移動体5は弾性体6を有していた方がよいが、不要な場合には弾性体6を省略してもよい。また、図6(b)に示したように、収容部側レール2rは、各段差部22sにおいて短手方向軸N上に配置される。また、図6(a)に示したように、タンク側レール3rは、収容部側レール2rと対峙するタンク3の底面部に配置され、収容部側レール2r及びタンク側レール3rの間に支持移動体5が配置される。
【0058】
次に、本発明の実施形態に係る浮体構造物1について、図7を参照しつつ説明する。ここで、図7は、本発明の実施形態に係る浮体構造物を示す図であり、(a)は第一実施形態、(b)は第二実施形態、を示している。なお、上述した燃料タンク支持構造と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0059】
図7(a)及び(b)に示した浮体構造物1は、浮力により水上に支持される本体部11と、本体部11に形成されるとともにタンク3が搭載される収容部2と、を有し、タンク3のタンク支持構造は、収容部2が、底部に形成された水平部21と傾斜部22又は段差部22sとを有し、タンク3が、収容部2の底部形状に沿った底面部(水平部31及び傾斜部32)を有し、水平部21とタンク3(水平部31)との間に配置される支持ブロック体4と、傾斜部22又は段差部22sとタンク3(傾斜部32又は段差部32s)との間に配置されるとともに収容部2及びタンク3に当接して移動可能な支持移動体5と、を有するものである。すなわち、かかる浮体構造物1は、上述した第一実施形態〜第四実施形態に係るタンク支持構造を備えている。
【0060】
図7(a)に示した第一実施形態に係る浮体構造物1は、LNG等の液化ガスを液体燃料として収容するタンク3(燃料タンク)を備えたものである。例えば、図示した浮体構造物1は、コンテナ船であり、本体部11内に貨物収容部14を有し、収容部2と貨物収容部14との間には隔壁13が形成されている。収容部2は、本体部11、タンクカバー12及び隔壁13により気密に封鎖されており(図1参照)、タンク3から液体燃料が漏洩した場合であっても、液体燃料が拡散しないように構成されている。貨物収容部14は、一般に、居住区の前方、後方又はその両方に配置されており、収容部2は貨物収容部14内に形成される。また、収容部2は、貨物収容部14以外の場所(例えば、居住区の下部等)に配置するようにしてもよい。なお、図7(a)において、本体部11に積載されたコンテナについては図を省略してある。
【0061】
タンク3は、例えば、図7(a)において一点鎖線で示した部分の一箇所又は複数個所に配置される。隔壁13の一部は、図示したように、浮体構造物1の貨物収容部14の壁面により構成するようにしてもよい。また、図示していないが、機関室の両脇等の船体長手方向に延びた空間をタンク3の収容部2として利用するようにしてもよい。このように、コンテナ船等の船舶に液体燃料用のタンク3を配置する場合には、本体部11の一部にタンク3の収容部2を改造等によって形成することとなるため、収容部2が図1(a)又は図6(a)に示したような傾斜部22又は段差部22sを有することが多い。したがって、収容部2は、タンク3を支持するのに十分な水平部21の面積を確保できないことがある。そこで、傾斜部22及び段差部22sを利用して上述した支持移動体5を配置することにより、タンク3の熱変形に対応しつつ容積効率を低下させずにタンク3を支持するようにしている。
【0062】
なお、浮体構造物1はコンテナ船に限定されるものではなく、LNG等の液化ガスを燃料として使用するものであれば、バルクキャリア、液化ガス運搬船、LNG洋上浮体設備(例えば、FPSO)等であってもよい。
【0063】
図7(b)に示した第二実施形態に係る浮体構造物1は、LNG等の液化ガスを液体貨物として運搬するタンク3を備えたものである。例えば、図示した浮体構造物1は、LNGタンカーであり、本体部11内に収容部2を有し、収容部2は隔壁13により区画されている。このように、液体貨物を運搬する船舶であっても、収容部2の底部に傾斜部22や段差部22sを有する場合には、上述したタンク支持構造を使用することができる。また、図示しないが、上述したタンク支持構造は、狭い空間や直方体の形状を確保できない空間に配置されたタンク3に対しても適宜使用することができる。なお、浮体構造物1は船舶に限定されるものではなく、LNG洋上浮体設備(例えば、FPSO)等の運搬用の液化ガスを一時的に貯蔵するタンク3を有するものであってもよい。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、タンクが熱変形を生じない場合であっても傾斜部や段差部を有する収容部におけるタンク支持構造として使用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 浮体構造物
2 収容部
2r 収容部側レール
3 タンク
3r タンク側レール
4 支持ブロック体
5 支持移動体
11 本体部
21,31 水平部
22,32 傾斜部
22s,32s 段差部
51 第一車輪
52 第二車輪
53 第三車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物に形成された収容部に搭載されるタンクのタンク支持構造において、
前記収容部は、底部に形成された水平部と傾斜部又は段差部とを有し、
前記タンクは、前記収容部の底部形状に沿った底面部を有し、
前記水平部と前記タンクとの間に配置される支持ブロック体と、
前記傾斜部又は段差部と前記タンクとの間に配置されるとともに前記収容部及び前記タンクに当接して移動可能な支持移動体と、
を有することを特徴とするタンク支持構造。
【請求項2】
前記支持移動体は、前記タンクの不動点に向かって移動可能に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のタンク支持構造。
【請求項3】
前記タンクは前記支持移動体を案内するタンク側レールを有し、前記収容部は前記支持移動体を案内する収容部側レールを有し、前記タンク側レール及び前記収容部側レールは、前記タンクと前記収容部との隙間が広がった場合であっても前記支持移動体の当接状態を維持するように、前記不動点に近い側の間隔が前記不動点から遠い側の間隔よりも狭く形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のタンク支持構造。
【請求項4】
前記支持移動体は、三角形の頂点を構成するように配置された、第一車輪、第二車輪及び第三車輪を有し、前記第一車輪は前記タンクに当接し、前記第二車輪及び前記第三車輪は前記収容部に当接するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のタンク支持構造。
【請求項5】
前記第一車輪と前記タンクとの接点である第一接点と、前記第二車輪と前記収容部との接点である第二接点と、前記第三車輪と前記収容部との接点である第三接点と、により構成される三角形は、前記第二接点及び前記第三接点に対する頂角が90°以上180°未満である、ことを特徴とする請求項4に記載のタンク支持構造。
【請求項6】
浮力により水上に支持される本体部と、該本体部に形成されるとともにタンクが搭載される収容部と、を有する浮体構造物において、
前記タンクは、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のタンク支持構造により、前記収容部に搭載されている、ことを特徴とする浮体構造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−79704(P2013−79704A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221089(P2011−221089)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【Fターム(参考)】