説明

タンク装置、及び、水洗大便器

【課題】内装タンク内の空間を狭くすることなく、現場で設置する際に内装タンクを外装タンク内に収容した状態で便器本体に固定することができるようにする。
【解決手段】内側に便器を洗浄する洗浄水を貯水する内装タンク110と、内側に内装タンク110を収容する外装タンク100と、外装タンク100を便器本体20に固定する固定機構160と、を備えるタンク装置10において、固定機構160は、内装タンク110の外周側底面に保持された固定受部材162と、一端が固定受部材161に固定され、外装タンク100の底面に形成された孔101bを挿通し、他端が便器本体20に固定され、便器本体20とともに内周側底面を挟み込んで固定する固定本体部161と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク装置、及び、このタンク装置が固定される水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に示されているように、便器を洗浄するための洗浄水を貯蔵する内装タンクと、内装タンクを収容する外装タンクとを備えたタンク装置が固定された水洗大便器が知られている。このような構造のタンク装置を家庭等の施工現場で設置する場合には、内装タンクを外装タンク内に収容した状態で施工現場まで搬送し、次に、施工現場にて、内装タンクを外装タンクから取り出し、内装タンクの底部外周面に固定ボルトを取り付け、さらに、固定ボルトが外装タンクの底面に形成された孔を挿通するように内装タンクを外装タンク内に再び収容し、外装タンク底面から突出した固定ボルトにより、タンク装置を便器本体に固定するようにしていた。
【0003】
さらに、例えば、特許文献2(段落[0090]〜[0096]参照)には、内装タンクの底部に固定ボルトを収容するための収容空間を設け、出荷時には固定ボルトをこの収容空間に収容しておき、施工現場において、プッシュボタン等を利用して固定ボルトを収容空間から外部へ押し出して、外装タンクの底面に形成された孔から突出させ、外装タンクの底面から突出した固定ボルトにより、タンク装置を便器本体に固定するようにしたタンク装置も知られている。このタンク装置によれば、内装タンクを外装タンク内に収容した状態で、タンク装置を水洗大便器に固定することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−331228号公報
【特許文献2】特開2000−73428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されたタンク装置においては、内装タンクの出し入れが伴うため、マンションのトイレなどの狭隘な室内における作業に適さないという問題があった。
さらに、特許文献2のタンク装置においては、内装タンクの出し入れを行う必要はないが、内装タンクの底部に固定ボルトを収容する空間を設ける必要があるので、この収容空間の分だけ、内装タンク内の空間が狭くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、内装タンク内の空間を狭めることなく、内装タンクを外装タンク内に収容した状態でタンク装置を便器本体に固定することができるようなタンク装置、及び、水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、便器本体に固定されるタンク装置であって、外装タンクと、この外装タンク内に装着され便器本体を洗浄する洗浄水を貯水する内装タンクと、外装タンクを便器本体に固定する固定部と、を有し、固定部は、内装タンクの底面に予め取り付けられた固定受部と、その上端が外装タンクの底面に形成された孔を介して外側から挿入されて固定受部と嵌合すると共にその下端が便器本体に固定される固定本体部とを備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、外装タンクを便器本体に固定する固定部を設け、この固定部が、内装タンクの底面に取り付けられた固定受部と、その上端が外装タンクの底面に形成された孔を介して外側から挿入されて固定受部と嵌合すると共にその下端が便器本体に固定される固定本体部とを備えているので、内装タンクを外装タンク内に収容した状態であっても、固定本体部の上端を外装タンクの底面に形成された孔を通して内装タンクの底面に取り付けられた固定受部材と嵌合して固定し、さらに、固定本体部の下端を便器に固定して、外装タンクを便器本体に固定することができる。さらに、固定本体部は外装タンクの外部から取り付けるので、内装タンク内に固定本体部を収容する空間を設ける必要がない。
【0008】
本発明は、好ましくは、更に、内装タンクの底面と外装タンクの底面との間隔を所定の距離に保持することにより、固定受部の下面が外装タンクの底面に当接した状態で、固定受部の上面と内装タンク底面との間に隙間を形成する間隔保持手段を有する。
このように構成された本発明においては、外装タンクに横方向の荷重が作用し、外装タンクに傾くようなときでも、間隔保持手段により、固定受部の下面が外装タンクの底面に当接した状態で、固定受部の上面と内装タンク底面との間に隙間が形成されているので、外装タンクの傾きが内装タンクに伝達されず、そのため、内装タンクの傾きが防止され、その結果、内装タンクの底面が変形せず、これにより、漏水の発生を防止することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記間隔保持手段は、前記内装タンクの底面に設けられた脚部である。
このように構成された本発明によれば、簡易な構造により、漏水の発生を防止することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、固定本体部は、ボルト部と、このボルト部に固定されたストッパ部を有し、固定受部は、ボルト部の上端が螺合可能な取付穴を有し、固定本体部のストッパ部は、固定本体部の上面と内装タンク底面との間に隙間を形成するような位置に設けられている。
このように構成された本発明においては、固定本体部の上面と内装タンク底面との間に隙間が形成されているので、横方向荷重が作用して外装タンクが傾いても、固定本体部により内装タンク底面に過度な荷重が作用するのを防止することができる。
【0011】
さらに、本発明は、上述したタンク装置を備えた水洗大便器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタンク装置、及び、水洗大便器によれば、内装タンク内の空間を狭めることなく、内装タンクを外装タンク内に収容した状態でタンク装置を便器本体に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による水洗大便器を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態による水洗大便器を示す左側面図である。
【図3】本発明の一実施形態による便器本体に固定されるタンク装置の内部構造を示す正面断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による水洗大便器の外装タンク、内装タンクおよび便器本体等を展開して示す部品展開図である。
【図5】本発明の一実施形態によるタンク装置の内装タンクを背面下方から見た斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態によるタンク装置における外装タンク、内装タンクおよび便器本体との接続構造を示す部分拡大背面断面図である。
【図7】本発明の一実施形態によるタンク装置における外装タンクを便器本体へ固定する部分を拡大して示す部分拡大背面断面図である。
【図8】本発明の一実施形態によるタンク装置の固定受部材を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態によるタンク装置の固定受部材を示す正面図である。
【図10】本発明の一実施形態によるタンク装置の固定受部材を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態によるタンク装置の固定部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態によるタンク装置及び水洗大便器を説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態による水洗大便器1の全体構成を示し、図1は正面図、図2は左側面図である。図1及び図2に示すように、水洗大便器1は、便器本体20と、便器本体20に固定されたタンク装置10とにより構成される。
【0015】
図3は、本発明の一実施形態による便器本体20に固定されるタンク装置10の内部を示す鉛直断面図である。また、図4は、外装タンク100、内装タンク110および便器本体20等を展開して示す部品展開図である。図3及び図4に示すように、タンク装置10は、外装タンク100と、外装タンク100内に収容された内装タンク110と、外装タンク100の上部に設けられた蓋部120と、内装タンク110に給水を行う給水機構130と、内装タンク110から便器本体20への洗浄水の供給を制御する排水弁機構140と、排水弁機構140を操作する操作機構150と、外装タンク100を便器本体20に固定する固定機構160と、を備える。
【0016】
外装タンク100は、上方が開口した陶器製の容器であって、左側面に形成された給水管孔(図示せず)と、右側面に形成されたハンドル挿通孔(図示せず)と、底面中央に形成された排水管孔101aと、底部の排水管孔101aを挟んだ両側に形成された一対のボルト挿通孔101bを備える。
【0017】
蓋部120は、上面に蛇口(図示せず)および手洗い鉢121が形成された陶器製の部材であり、外装タンク100の上部の開口を覆うように載置される。
【0018】
給水機構130は、外装タンク100の給水管孔を通して外部から延びる給水配管(図示せず)が接続されており、この給水配管を通じて洗浄水が供給される。給水機構130は、排水弁機構140が開放され、内装タンク110内の水位が低下すると、元の水位に達するまで内装タンク110内へ給水を行う。
【0019】
操作機構150は、ハンドル153に加えられた回転力を接続部材155を介して伝達し、スピンドル支持部151により回転可能に支持されたスピンドル152を回転させる。スピンドル152には、第1及び第2の玉鎖156、157の上端が接続されており、ハンドル153の回転方向に応じて、スピンドル152は、第1の玉鎖156のみ、或いは、第1及び第2の玉鎖156、157が引き上げられる。
【0020】
排水弁機構140は、排水量を2段階に設定可能な排水弁装置であり、内装タンク110の開口111aを囲むように設けられた筒体141及び内装タンク110の開口111aを閉鎖する弁体142を備える。また、筒体141の側面には開口141aが形成され、この開口141aには排水量調整弁143が取り付けられている。弁体142及び排水量調整弁143には第1及び第2の玉鎖156、157が接続されており、第1の玉鎖156のみが引き上げられると、大量の洗浄水が排出され(大洗浄)、第1及び第2の玉鎖156、157が引き上げられると、少量の洗浄水が排出される(小洗浄)。
【0021】
図5は本発明の一実施形態によるタンク装置10の内装タンク110を背面下方から見た斜視図である。同図に示すように、内装タンク110は、底面に円形の開口111aが形成された容器状のタンク本体111と、タンク本体111の底面の開口111aの縁に沿って立設された筒状部112とにより構成される。筒状部112の外周面には螺条が形成されている。タンク本体111の外周側底面には、筒状部112を挟んだ両側に、保持部113が形成され、この保持部113により固定受部材162が保持されている。また、底面両縁部の前後にはそれぞれ円柱状の脚部114が表面から突出している。
【0022】
図6は、本発明の一実施形態によるタンク装置10における外装タンク100、内装タンク110および便器本体20との接続構造を示す部分拡大背面断面図である。また、図7は、本発明の一実施形態によるタンク装置10における外装タンク100を便器本体20へ固定する部分を拡大して示す部分拡大背面断面図である。
図6に示すように、内装タンク110は、その底面と筒状部112に締め付けられたつば付きナット200により外装タンク100の底面を挟み込むことにより外装タンク100に固定され、さらに、筒状部112の先端が便器本体20の洗浄水を供給するための供給孔20aに嵌め込まれて固定されている。また、内装タンク110と一体となった外装タンク100が固定機構160により便器本体20に固定されている。以下、この固定構造を詳細に説明する。
【0023】
まず、内装タンク110を外装タンク100に固定する構造について説明する。図4および図6に示すように、内装タンク110は、筒状部112を外装タンク100の排水管挿通孔101aを挿通させた状態で、外装タンク100の外側から筒状部112に環状のつば付きナット200を螺合させて締め付けることにより、外装タンク100に固定されている。さらに、外装タンク100の底面から突出した筒状部112は、便器本体20の洗浄水を供給するための供給孔20aに嵌め込まれている。
【0024】
外装タンク100の外周側底面とつば付きナット200との間、および、内装タンク110の外周側底面と外装タンク100の内周側底面との間には、筒状部112を取り囲むように円環状のパッキン201、202が挟み込まれており、これにより止水性が確保されている。
【0025】
なお、外装タンク100は陶器製であるため、タンク底面が傾斜している可能性がある。このような場合に、内装タンク110を筒状部112において外装タンク100に固定すると、外装タンク100の底面と内装タンク110の底面が近接してしまう虞がある。しかしながら、本実施形態では、内装タンク110の底部に脚部114が設けられており、この脚部114が外装タンク100の底面が当接するため、内装タンク110の外周側底面と、外装タンク100の内周側底面との間に所定の間隔が確保される。
【0026】
この所定の間隔は、後に詳述するように、固定受部材162の下方の板状部172が外装タンク100の底面に当接した状態で、上方の板状部171が内装タンク110の外周側底面に形成された収容部182の上面及び縁部180との間に隙間が形成されるような間隔に設定されている。
【0027】
次に、外装タンク100を便器本体20に固定する固定機構160について説明する。図6及び図7に示すように、固定機構160は、外装タンク100の底面及び便器本体20の上面にそれぞれ設けられたボルト挿通孔101a、21aを挿通する固定部材161と、固定部材161の上端部に固定され、外装タンク100の内周側の底面に当接する固定受部材162と、固定部材161の下端に取り付けられたナット173と、を備える。外装タンク100は、便器本体20と固定受部材162とにより挟み込まれることにより便器本体20に固定されている。
【0028】
図8乃至10は、本発明の一実施形態による固定受部材162の詳細な構成を示し、夫々、斜視図、正面図、断面図である。図8乃至10に示すように、固定受部材172は、内部にナット173を収容するための収容口170aが形成された軸部170と、収容口170aに収容されたナット173と、軸部170の上部に接続された平面視正方形状の上方の板状部171と、軸部170の下部に接続された平面視円形の下方の板状部172とを備える。軸部170に形成された収容口170aの幅はナット173の幅と略等しく、収容口170a内に収容されたナット173は回転が拘束されている。
【0029】
また、固定受部材162には、上下の板状部171、172の中心を結ぶように、貫通孔162aが形成されている。貫通孔162aの下方の板状部172に開口する開口端部には、下方に向かって拡径するような傾斜が形成されている。軸部170に形成された収容口170aは貫通孔162aと連通しており、収容口170aに収容されたナット173の孔173aは貫通孔162aと一直線上に並ぶ。
【0030】
固定受部材162は内装タンク110の外周側底面に形成された保持部113内により保持されている。図5及び図7に示すように、保持部113は、内装タンク110の底面に前後方向に延びる断面矩形状の溝が形成され、この溝の両縁から縁部180が中心に向かって延出してなり、内装タンク110の前後方向に延びる断面略矩形状の収容部182と、縁部180の間に形成されたスリット181とにより構成される。収容部182は、その幅が固定受部材162の上方の板状部171の幅よりもわずかに広い。また、スリット181は、その幅が固定受部材162の軸部の径よりもわずかに広く、固定受部材162の上方の板状部171の幅よりも狭い。また、収容部182は、その高さが固定受部材162の上方の板状部171の厚さに比べて大きい。
【0031】
固定受部材162は、上方の板状部171が収容部182内に収容されることにより、前後方向にスライド可能に内装タンク110の底面に保持されている。また、収容部182の幅が板状部171の幅よりもわずかに広い程度であるため、上方の板状部171の縁が収容部182の内面と係合し、固定受部材162の回転が拘束される。
【0032】
また、上記のように、内装タンク110の脚部114により、外装タンク100の底面と内装タンク110の底面との間に所定の間隔が確保されるため、固定受部材162の下方の板状部172が内装タンク110の内周側底面に当接した状態で、上方の板状部171と収容部182の上面との間、及び、上方の板状部171と縁部180との間に夫々空隙が確保される。
【0033】
図11は本発明の一実施形態による固定部材161の構成を示す図である。同図に示すように、固定部材161は、外周に螺条が形成された金属製のボルト部190と、ボルト部190に固定された円環状のストッパ191とを備える。図7に示すように、ストッパ191は、その上面が外装タンク100の外周側底面に当接した状態で、ボルト部190の上端と収容部182の上面との間に空隙が確保されるような位置に設けられている。なお、ストッパ191の外周には、工具等を用いた締め付けを防止するため、目がかり(凹凸)が設けられていない。
【0034】
図7に示すように、固定部材161は、その上部が外装タンク100のボルト挿通孔101bを通り、固定受部材162の貫通孔162aに挿入され、固定受部材162のナット173と螺合し、ストッパ191の上面が外装タンク100の外周側底面と当接するまで締め付けられている。これにより、固定受部材162の下面も外装タンク100の内周側底面に当接することとなり、ストッパ191及び固定受部材162により外装タンク100の底面を挟み込んで、固定部材161と外装タンク100とが固定される。
【0035】
そして、固定部材161の下部が便器本体20に形成されたボルト挿通孔21aに挿通され、下方からナット163が取り付けられる。これにより、外装タンク100は、その底面が、便器本体20と固定受部材162により挟み込まれることとなり、便器本体20に一体に固定される。
【0036】
外装タンク100に使用者が寄りかかるなどにより横方向荷重が作用すると、外装タンク100に傾きが生じる。内装タンク110の底面に固定受部材162を固定している場合には、外装タンク100とともに内装タンク110も傾くこととなる。しかしながら、内装タンク110は筒状部112が便器本体20の供給孔に嵌め込まれているため、筒状部112に変形が生じ、筒状部112の周囲に隙間が生じて漏水が発生してしまう。
【0037】
これに対し、本実施形態では、固定受部材162の上方の板状部171と、収容部182の上下面との間に空隙が確保されている。このため、外装タンク100に傾きが生じても、内装タンク110は傾くことはなく、筒状部112に変形が生じるのを防止し、漏水の発生を防止できる。
【0038】
さらに、上記の固定受部材162を内装タンク110に固定した場合と同様に、固定部材161の上端が内装タンク110の底面に当接している場合にも、外装タンク100に傾きが生じると、内装タンク110も傾いてしまい、筒状部112において漏水が発生する虞がある。
【0039】
これに対し、本実施形態では、固定部材161のストッパ191により、固定部材161の上端と収容部182の上面との間に空隙が確保されているため、外装タンク100に傾きが生じても、内装タンク110は傾くことはなく、筒上部112に変形が生じるのを防止し、漏水の発生を防止できる。
【0040】
次に、上述したタンク装置を家庭等の施工現場で便器本体へ固定する施工方法を説明する。
以下、例えば、マンションなどの狭隘な室内において、タンク装置10を設置する場合について、上記のタンク装置10の出荷から現場に設置するまでの流れを説明する。
【0041】
出荷段階のタンク装置10は、筒状部112に螺合するつば付きナット200が取り外され、内装タンク110が筒状部112を含めたタンク全体が外装タンク100内に収容されている。すなわち、内装タンク110は、筒状部112が外装タンク100の排水管挿通孔から突出していない状態で外装タンク100内に収容されている。
【0042】
また、例えば、固定部材161や操作機構のハンドル153などの外装タンク100の外部に突出する部材は、取り外されて外装タンク100の内部に収容されている。このように、固定部材161が取り外されており、外装タンク100の底面は平坦であるため、タンク装置10を積載して保管することが可能である。
【0043】
輸送時には、外装タンク100をダンボールの箱などに梱包する。この際、外装タンク100の底面から固定部材161が突出している場合には、この固定部材161を含めて収容可能な大きさの梱包材が必要となる。しかしながら、本実施形態によれば、固定部材161が取り外されているため、外装タンク100を収容可能な大きさの梱包材内であれば、タンク装置10を収容することができ、梱包材の大きさを小型にできる。
【0044】
タンク装置10を設置する際に、まず、外装タンク100から蓋部120を取り外し、外装タンク100内に収容されていた部材を取り出す。
【0045】
次に、内装タンク110の筒状部112を外装タンク100の排水管孔101aに挿通させて外装タンク100の底面から突出させる。なお、予め、出荷前に内装タンク110底面と外装タンク100の底面との間に介装されるべき円環状のパッキン202は、内装タンク110の筒状部112に挿通させておく。そして、外装タンク100の底面から突出した内装タンク110の筒状部112に、円環状のパッキン201を挿通させ、筒状部112につば付きナット200を螺合させて締め付ける。これにより外装タンク100と内装タンク110が一体となる。
【0046】
次に、固定部材161の先端を外装タンク100の底面のボルト挿通孔101bを通して、固定受部材162の貫通孔162aに挿入する。この際、固定受部材162の貫通孔162aの下端に拡径するような傾斜が設けられており、さらに、固定受部材162はスリット181に沿って移動可能であるため、固定部材161の先端をスムーズに貫通孔162aに挿入することができる。
【0047】
次に、かかる状態で固定部材161を回転させ、固定部材161のボルト部190を固定受部材162のナット173と螺合させる。そして、固定部材161のストッパ191の上面が外装タンク100の底面に当接するまで固定部材161を締め付ける。これにより、固定受部材162の下方の板状部材172が外装タンク100の内周側底面に当接し、外装タンク100の底面を固定受部材162とストッパ191により挟み込むこととなり、固定部材161が外装タンク100に固定される。
【0048】
この際、固定部材161のストッパ191の外周には目がかりが設けられていない。このため、工具などにより固定部材161を過度にきつく締め付けてしまい、内装タンク110が破損するのを防止できる。
【0049】
次に、外装タンク100を、底面から突出する固定部材161が便器本体20のボルト孔21aに挿入されるとともに、排水管挿通孔101aから突出する内装タンク110の筒状部112が便器本体20の給水管孔20aに挿入されるように、外装タンク100を便器本体20の上方に設置する。そして、固定部材161の便器本体20のボルト孔21aに挿入した部分にナット163を取り付ける。これにより、外装タンク100の底面が固定部材161を介して固定受部材162と便器本体20に挟みこまれた状態となり、外装タンク100が便器本体20とが固定される。
【0050】
次に、給水配管を外部から給水管孔を通じて外装タンク100内に挿入し、給水機構に接続130する。また、例えば、操作機構のハンドル153など、出荷の段階で取り外していた部材を取り付ける。
以上の工程により、タンク装置10の設置が完了する。
【0051】
本実施形態によれば、予め、内装タンク110の底面に固定部材161を取り付けておき、タンク装置10の設置現場において、外装タンク100の外側から、外装タンク100に設けられたボルト挿通孔101bを通して、固定部材161を固定受部材162に接続することができる。このため、設置現場において、内装タンク110を外装タンク100から取り出す必要がなくなり、狭隘な室内においても容易にタンク装置10の設置作業を行うことができる。
【0052】
また、固定受部材162の上方の板状部171と、内装タンク110の保持部113の収容部182の上面及び縁部180との間に夫々空隙が確保されるため、外装タンク100が傾いても、内装タンク110は姿勢が維持される。これにより、内装タンク110の筒状部112が変形し、筒状部112の周囲に隙間が生じて漏水が生じるのを防止できる。
【0053】
また、固定部材161にストッパ191が形成されていることにより、固定部材161の上端と内装タンク110の底面との間に空隙が確保される。これにより、外装タンク100が傾いても、内装タンク110は姿勢が維持され、筒状部112の周囲に隙間が生じて漏水が生じるのを防止できる。
【0054】
なお、上記の実施形態では、内装タンク110の四隅に脚部を設けることとしたが、これに限らず、例えば、内装タンク110の底面の離間した3箇所に設けることとしてもよく、5箇所以上に設けてもよい。要するに、固定部材161を外装タンク100のボルト挿通孔を通して、固定受部材162に締め付ける際に、固定受部材162の上方の板状部と、保持部113との間に隙間を確保できるような位置に脚部が設けられていればよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、内部にナット163が収容された固定受部材162と、ボルト部190を有する固定部材161とを螺合させることにより固定受部材162に固定部材161を固定することとしたが、これに限らず、例えば、固定受部材内に固定部材を挟み込んで固定する機構を設け、この機構により固定するものとしてもよく、要するに、固定部材161と固定受部材162の固定方法は問わない。
【0056】
また、上記説明した給水機構130、排水弁機構140、及び操作機構150の構成は、一例であり、これに限られず、要求される性能に応じた適宜な機構を採用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 水洗大便器
10 タンク装置
20 便器本体
100 外装タンク
101b ボルト孔
110 内装タンク
111a 開口
113 保持部
114 脚部
160 固定機構
161 固定部材
162 固定受部材
162 貫通孔
163 ナット
190 ボルト部
191 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体に固定されるタンク装置であって、
外装タンクと、
この外装タンク内に装着され前記便器本体を洗浄する洗浄水を貯水する内装タンクと、
前記外装タンクを前記便器本体に固定する固定部と、を有し、
前記固定部は、前記内装タンクの底面に取り付けられた固定受部と、その上端が前記外装タンクの底面に形成された孔を介して外側から挿入されて前記固定受部と嵌合すると共にその下端が前記便器本体に固定される固定本体部とを備えていることを特徴とすることを特徴とするタンク装置。
【請求項2】
更に、前記内装タンクの底面と前記外装タンクの底面との間隔を所定の距離に保持することにより、前記固定受部の下面が前記外装タンクの底面に当接した状態で、前記固定受部の上面と前記内装タンク底面との間に隙間を形成する間隔保持手段を有することを特徴とする請求項1記載のタンク装置。
【請求項3】
前記間隔保持手段は、前記内装タンクの底面に設けられた脚部であることを特徴とする請求項2記載のタンク装置。
【請求項4】
前記固定本体部は、ボルト部と、このボルト部に固定されたストッパ部を有し、
前記固定受部は、前記ボルト部の上端が螺合可能な取付穴を有し、
前記固定本体部のストッパ部は、前記固定本体部の上面と前記内装タンク底面との間に隙間を形成するような位置に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のタンク装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のタンク装置を備えた水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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