説明

タンク車載機構およびタンク搭載車両

【課題】円柱状のタンクを車両ボディーで受けて搭載する場合の汎用性を高める。
【解決手段】プラットフォームFの下方のタンク収納凹部111は、後列の乗員シートSの下方に形成され、陥没溝114を挟んで一対の前方傾斜面112Fと後方傾斜面112Rとを向かい合わせ、この両傾斜面に高圧タンクTの周壁を当接させて高圧タンクTを受ける。タンクバンド140は、陥没溝114からの高さが相違する前方肩部116Fと後方肩部116Rに両端で固定され、高圧タンクTをタンク収納凹部111に押し付けるが、前方肩部116Fの側に高圧タンクTに接触するタンク接触ブリッジ150を有するので、タンクバンド140によるタンク押し付け範囲を、タンク接触ブリッジ150の接触片接触範囲SSからバンド接触範囲BSまで拡張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱状のタンクの車載に関する。
【背景技術】
【0002】
近年になり、燃料電池の開発が進み、燃料電池を搭載した車両が普及しつつある。こうした車両では、燃料電池の燃料ガスとしての水素ガスを充填した高圧ガスタンクを搭載する必要がある。天然ガス等を燃焼燃料として用いる車両にあってもガスタンクが搭載される。タンクを車載する場合、タンクをそのほぼ全周に亘って掛け渡されたバンドを用い、当該バンドを車両ボディーに固定するタンク車載機構が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−219049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンク全周に掛け渡されたバンドを用いた車載機構では、タンクの保持・固定の上から、バンド両端の固定はもとより、バンドの途中においても固定する必要がある。固定箇所の増加は作業の煩雑化を招き易く、部品点数増によるコスト増加も招きかねない。こうした点への対処として、円柱状のタンクを車両ボディーで受け、その受けられたタンクを両端で固定したバンドで押し付けることが想定でき、こうすれば、バンドの固定箇所は少なくなるので、作業の簡便化やコスト低下は可能であるが、次のような問題点が指摘されるに到った。
【0005】
車両ボディーは車両走行に必要な種々の機器の搭載対象や装着対象であったり、車室空間の土台となる等の車両ボディー自体の理由から、車両ボディーで円柱状のタンクを受けることに対しては様々な制約を受ける。その一方、バンドで押し付けられるタンクに対しては、タンクのズレ等を回避することが望まれる。つまり、車両ボディー自体の制約のみならず、タンクのズレ等の回避の実効性を確保するという異なる性質の制約から、円柱状のタンクを車両ボディーで受けるようにする自由度が低い。
【0006】
本発明は、上記した課題を踏まえ、円柱状のタンクを車両ボディーで受けて搭載する場合の汎用性を高めることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
【0008】
[適用1:タンク車載機構]
円柱状のタンクを車載するタンク車載機構であって、
前記タンクを円柱周壁で受けるよう陥没した凹部と、該凹部の開口縁から両側に延びた肩部とを有するタンク受け部と、
該タンク受け部の前記肩部に両端が固定され、前記タンクを前記凹部に押し付けるバンドとを備え、
該バンドは、バンド表面から前記タンクの前記円柱周壁の側に突出したバンド表面突出部材を、前記タンクの前記円柱周壁と前記バンドとの離間部位に備える
ことを要旨とする。
【0009】
上記構成のタンク車載機構では、タンク受け部が有する凹部でタンクをその円柱周壁で受け、凹部へは、当該凹部の開口縁から両側に延びた肩部に両端が固定されたバンドによりタンクを押し付ける。タンクの円柱周壁にバンド自身が接触するバンド接触範囲は、一方の固定端である肩部から延びてタンク周壁に接触した後に他方の固定端である肩部に達するまでのバンドの軌跡で定まる。そして、バンド両端の凹部両側の肩部がほぼ同じ高さであれば、バンド接触範囲はタンクを受けている凹部の底と対向する箇所を境にほぼ均等となるが、凹部両側の肩の高さが相違すれば、バンド接触範囲は肩の高さが低い側にずれ、肩の高い側でタンクはバンドから離れる。このようにバンド接触範囲がずれたままのバンドでタンクを凹部に押し付けると、その押し付けの力が作用する向きが凹部の底に対して傾斜する。これに対処すべく、上記構成のタンク車載機構が有するバンドは、前記肩部の側にバンド表面から前記タンクの側に突出したバンド表面突出部材をタンクの円柱周壁とバンドとの離間部位に備え、このバンド表面突出部材をタンクの円柱周壁に接触させる。
【0010】
凹部両側の肩の高さが相違することでバンド接触範囲が上記したようにずれたとしても、凹部に向けたバンドによるタンクの押し付け範囲は、タンクの円柱周壁とバンドとの離間部位に設けたバンド表面突出部材のタンク円柱周壁への接触により、凹部の両側の肩部の高さの相違に拘わらず、タンクへのバンド表面突出部材の接触箇所からバンド接触範囲にまで拡張する。つまり、凹部の両側の肩部の高さが相違しても、凹部に向けたバンドによるタンクの押し付け範囲を、タンクを受けている凹部の底と対向する箇所の両側に広げることができる。このため、凹部に向けたバンドによるタンクの押し付けは、上記の広がった範囲でなされるので、凹部の底にほぼ対向するような向きでの押し付けとなり、タンクのズレ等の回避の実効性は高まる。その一方、タンク受け部については、凹部の両側の肩部の高さを同じにするという制約を受ける必要はなくなるので、このタンク受け部を車両ボディーに設けることに関しての自由度や汎用性は高まり、車両ボディーへのタンク受け部の配設が促進される。
【0011】
上記したタンク車載機構は、次のような態様とすることができる。例えば、前記タンク受け部を、前記凹部に前記タンクの円柱周壁に当接する傾斜面を対向して有するものとできる。こうすれば、凹部では、対向する傾斜面でタンクを受けることができると共に、対向する傾斜面という単純な構造で、タンクを径方向に簡便に位置決めした上で、タンクを受けることができる。そして、このように径方向の位置決めがなされたタンクに対して、凹部の底、この場合には対向する傾斜面の間の底にほぼ対向するような向きで押し付け力が作用することから、タンクのズレ回避の実効性はより高まる。
【0012】
また、前記タンク受け部を車両ボディーに形成して、前記凹部の両側から水平に延びた前記肩部を車両上下方向で異なる高さとした態様とできる。車両ボディーにおいて、車両床下側に凹部を形成することはできるが、車両ボディーは駆動系機器はもとより懸架装置等の搭載対象や車室空間の土台であること等の理由から、車両床下側の凹部両側の肩部について車両上下方向の高さについてまで同じにできないことがある。ところが、上記の態様では、凹部両側の肩部の高さは車両上下方向で異なっていることから、車両ボディーにおいて車両床下にタンク受け部を形成することが可能となり、車両床下でのタンク搭載の自由度・汎用性が高まる。例えば、車両の乗員シートの下方は、シート設置箇所の前方にシートに座った乗員の足下空間を確保する必要があり、車両床下側において車両ボディーに下向きに開口した凹部を形成しやすい。その反面、車軸もシート設置箇所の近傍に位置することもあって懸架装置の搭載上、凹部両側の肩部を車両上下方向で同じにできないことが有り得るが、上記態様のように、車両の乗員シートの下方に当たる車両ボディーにタンク受け部を形成できる。
【0013】
また、凹部の底からの肩部の高さが高いと、当該肩部の側でのタンク周壁へのバンド接触範囲は凹部でのタンク受け箇所から離れるようになる。よって、前記バンドを、前記凹部の底からの高さが高い側の前記肩部の側に前記バンド表面突出部材を備える態様とすることが望ましい。
【0014】
加えて、バンド表面突出部材を、タンク周壁に倣った形状のタンク接触部を有するものとすれば、タンク周壁との接触が面接触となるので、上記したタンクの押し付け範囲の拡張、延いては、凹部の底にほぼ対向するような向きでの押し付けの信頼性が高まり、タンクのズレ回避の実効性を高めることができる。
【0015】
[適用2:タンク搭載車両]
円柱状のタンクを搭載したタンク搭載車両であって、
車両ボディーに配設され、前記タンクを円柱周壁で受けるよう陥没した凹部と、該凹部の開口縁から両側に延びた肩部とを有するタンク受け部と、
該タンク受け部の前記肩部に両端が固定され、前記タンクの円柱周壁に接して前記タンクを前記凹部に押し付けるバンドと、
前記タンクの前記円柱周壁が前記バンドから離間した部位においてバンド表面に配設され、該バンド表面から前記タンクの前記円柱周壁の側に突出したバンド表面突出部材とを備える
ことを要旨とする。
【0016】
上記構成のタンク搭載車両では、車両ボディーへのタンク搭載の自由度・汎用性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例としての車両10におけるタンク搭載の様子を概略的に示す説明図である。
【図2】高圧タンクTの車載の様子をタンク周辺の構成と共に示す説明図である。
【図3】高圧タンクTの車載の様子をタンク端面の側から見て概略的に示す説明図である。
【図4】タンク接触ブリッジ150の配設位置を変更した形態を示す説明図である。
【図5】タンク接触ブリッジ150に代わるブロック状のストッパを用いた形態を示す説明図である。
【図6】タンク接触ブリッジ150に代わるシャフト状のストッパを用いた形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例としての車両10におけるタンク搭載の様子を概略的に示す説明図である。
【0019】
図1に示すように、車両10は、車両ボディーを構成するプラットフォームFの下方に、高圧タンクTを、タンク長手方向が車両幅方向となるように横置きに搭載する。高圧タンクTは、水素ガスを高圧で貯留する。タンクに貯留された水素ガスは、車両10が搭載した図示しない燃料電池に高圧タンクTからガス配管を経て供給され、ガス供給の際には図示しない減圧弁にて減圧される。高圧タンクTは、後列側の乗員シートSの下方に横置き搭載され、紙面奥側にも並べて横置き搭載することも可能である。
【0020】
高圧タンクTは、樹脂製とされており、長尺で円柱状をなし、タンク一端側に、金属製のバルブベースTVBを有する。このバルブベースTVBは、タンク内充填ガスの流路を備えてタンク一端に装着され、側面の配管コネクタを介して、ガス配管と接続される。
【0021】
次に、上記した高圧タンクTの車載構造と車載の様子について説明する。図2は高圧タンクTの車載の様子をタンク周辺の構成と共に示す説明図、図3は高圧タンクTの車載の様子をタンク端面の側から見て概略的に示す説明図である。
【0022】
図示するように、後列側の乗員シートSの下方のプラットフォームFには、タンク車載機構100が組み込まれている。このタンク車載機構100は、プラットフォームFの下面に車両幅方向に形成されたタンク受け部110と、タンク締結用のタンクバンド140とを備える。タンク受け部110は、高圧タンクTをその円柱周壁で受けるよう陥没したタンク収納凹部111と、その両側の前方肩部116Fと後方肩部116Rとを備える。タンク収納凹部111は、高圧タンクTを既述したように横置き搭載すべく車両幅方向に延び、車両前後に位置して向かい合う前方傾斜面112Fと後方傾斜面112Rとを備え、両傾斜面の間を車両幅方向に延びる陥没溝114とする。陥没溝114を挟んで向かい合う上記の両傾斜面は、高圧タンクTの外周の異なる位置でタンク円柱周壁に当接する。つまり、高圧タンクTがこの前方傾斜面112Fと後方傾斜面112Rに当接するようにされると、横置き状の高圧タンクTは、両傾斜面に支えられることになるので、タンク径方向に位置決めされる。この場合、上記の両傾斜面は、搭載された高圧タンクTの上方側に位置することから、高圧タンクTは、両傾斜面への当接により、上下方向および左右方向(即ち、車両上下方向と車両前後方向)に位置決めされることになる。なお、高圧タンクTの長手方向の位置決めは、バルブベースTVBを利用等することでなされているが、本発明の要旨とは直接関係しないのでその説明は省略する。
【0023】
前方肩部116Fと後方肩部116Rは、タンク収納凹部111の開口縁から両側(車両前後側)に延び、後述のタンクバンド140の固定箇所となる。本実施例では、タンク車載機構100、即ちその有するタンク受け部110が後列の乗員シートSの下方であることから、前方肩部116Fは、乗員シートSに座った乗員の足回り空間を確保できるよう、十分にフロア下まで延びている。後方肩部116Rは、図1にて概略的に示すように後輪RTと近いことから、後輪RTの懸架装置の搭載に備えてフロア下への延出が控えられている。つまり、乗員シートSの下方に位置する前方肩部116Fと後方肩部116Rは、上記した理由からタンク収納凹部111における陥没溝114からの高さが相違するよう、プラットフォームFに形成されている。
【0024】
タンクバンド140は、スチール製とされ、その両端をプラットフォームFへのボルト固定用の前方固定片部141と後方固定片部142とする。これら固定片部は、バンド側面に図示しないリブを装着して補強されている。また、このタンクバンド140は、前方肩部116Fに固定される前方固定片部141の側のバンド表面に、タンク接触ブリッジ150を有する。タンク接触ブリッジ150は、図3に示すように、前後の脚151とバンド接触片152とタンク接触片153とを備え、タンクバンド140によるタンク押し付けの際に、タンク接触片153を高圧タンクTの円柱周壁に接触させる。脚151とバンド接触片152は、薄板鋼板のプレス成型を経て形成され、タンク接触片153の接着領域は高圧タンクTの外径に倣った湾曲形状としている。タンク接触片153は硬質ゴム製のシート材であり、タンク接触ブリッジ150に接着剤にて接着され、接着後においては上記した接着領域に倣って湾曲する。このため、タンク接触ブリッジ150は、タンクバンド140によるタンク押し付けに際して、高圧タンクTの外周壁と面接触する。このタンク接触ブリッジ150は、バンド接触片152におけるスポット溶接やボルト固定等の手法で、タンクバンド140に固定されている。
【0025】
上記した構成のタンク車載機構100を用いて高圧タンクTを車載するには、タンクバンド140の少なくとも一端側、例えば前方固定片部141をプラットフォームFから取り外しておき、横置き状の高圧タンクTを昇降させる図示しないタンクリフタにて、タンク収納凹部111に向けて高圧タンクTを持ち上げる。このタンク持ち上げは、高圧タンクTの円柱周壁がタンク収納凹部111の向かい合う前方傾斜面112Fと後方傾斜面112Rに当接するまで行われる。次いで、傾斜面へのタンク当接後、或いはこのタンク当接と相前後して、高圧タンクTをタンク長手方向と回転方向について図示しない位置決め機構にて位置決めすることで、高圧タンクTは、タンク収納凹部111の上記両傾斜面との当接により、車両上下方向と前後方向に対しても位置決めされる。この状態で、タンクバンド140をその両端でプラットフォームFに固定して、高圧タンクTの車載作業を終える。図3には、車載済みの高圧タンクTが示されている。
【0026】
上記したように本実施例のタンク車載機構100および車両10では、図3に示すように、タンク受け部110が有するタンク収納凹部111、詳しくはその前方傾斜面112Fと後方傾斜面112Rで高圧タンクTをその円柱周壁で受け、この高圧タンクTを、タンク収納凹部111の両側の前方肩部116Fと後方肩部116Rに両端が固定されたタンクバンド140によりタンク収納凹部111に向けて押し付ける。この押し付け状態において、高圧タンクTの円柱周壁にタンクバンド140自身が接触するバンド接触範囲BSは、図3からも明らかなように、陥没溝114からの高さに高低の相違がある低い後方肩部116Rから前方肩部116Fに掛けて固定されたバンドの軌跡で定まる。このバンド接触範囲BSは、タンクバンド140が同じ高さの前後の上記肩部に固定されていれば、高圧タンクTを受けているタンク収納凹部111の陥没溝114と対向する箇所を境にほぼ均等となる。ところが、既述したように前方肩部116Fと後方肩部116Rとは、陥没溝114からの高さが相違するので、バンド接触範囲BSは高さが低い後方肩部116Rの側にずれる。
【0027】
こうしたバンド自体の接触に加え、本実施例のタンク車載機構100および車両10では、タンク収納凹部111へのタンクバンド140による押し付けに際して、タンクバンド140に設けたタンク接触ブリッジ150のタンク接触片153を高圧タンクTの円柱周壁に面接触させている。つまり、本実施例のタンク車載機構100および車両10では、陥没溝114からの高さが相違する前方肩部116Fと後方肩部116Rに両端を固定したタンクバンド140によるタンク収納凹部111への高圧タンクTの押し付け範囲TSを、タンク接触ブリッジ150の接触を経て、タンク収納凹部111の両側の前方肩部116Fと後方肩部116Rの高さの相違に拘わらず、接触片接触範囲SSからバンド接触範囲BSにまで拡張する。このため、タンク収納凹部111の両側の前方肩部116Fと後方肩部116Rの高さが相違しても、タンク収納凹部111に向けたタンクバンド140による高圧タンクTの押し付け範囲TSは、高圧タンクTを受けているタンク収納凹部111の陥没溝114と対向する箇所の両側に広がることになる。よって、タンク収納凹部111に向けたタンクバンド140による高圧タンクTの押し付けは、上記の広がった範囲(バンド接触範囲BSから接触片接触範囲SSに掛けての範囲)でなされるので、その押し付けをもたらす押し付け力は、図3に白抜き矢印Aで示すように陥没溝114にほぼ対向するような向きで高圧タンクTに作用するので、タンク収納凹部111で受けた高圧タンクTのズレ等を高い実効性で回避できる。
【0028】
しかも、本実施例では、タンク接触ブリッジ150の固定位置を調整することで、このタンク接触片153のタンク接触範囲(接触片接触範囲SS)を、後方肩部116Rの側におけるバンド接触範囲BSの端部に一致するようにした。よって、上記の拡張した押し付け範囲は、高圧タンクTを受けているタンク収納凹部111の陥没溝114と対向する箇所の両側に均等に広がるので、高圧タンクTの押し付け力は、タンク収納凹部111(詳しくは前方傾斜面112Fと後方傾斜面112R)で受けられた高圧タンクTに対して、タンク中心を経て陥没溝114に垂直となる向きで作用する。このため、高圧タンクTのズレ等の回避の実効性はより高まる。
【0029】
ところで、仮に、タンク接触ブリッジ150を用いないままタンクバンド140にて高圧タンクTをタンク収納凹部111に押し付けたとすると、タンクバンド140によるタンク収納凹部111への高圧タンクTの押し付け範囲TSはバンド接触範囲BSと同じである。この場合の押し付けは、高さが低い後方肩部116Rの側にずれたバンド接触範囲BSでしかもたらされないので、押し付け力は、図3に点線矢印Bで示すように陥没溝114に対して傾斜する向きで高圧タンクTに作用する。このように作用する押し付け力は、高圧タンクTを図3における右方向に移動させようとする分力を有することから、高圧タンクTのズレ等の回避の実効性を得られないことが危惧される。しかしながら、タンク接触ブリッジ150を有するタンクバンド140にて高圧タンクTの押し付けを行う本実施例のタンク車載機構100および車両10によれば、既述したように高い実効性で高圧タンクTのズレ等を回避できる。
【0030】
また、乗員の回り空間の確保や後輪RTの懸架装置の搭載という制約から、後列の乗員シートSの下方では、高圧タンクTを受けるタンク収納凹部111の両側の前方肩部116Fと後方肩部116Rとを陥没溝114からの高さが相違せざるを得ないので、後列の乗員シートSの下方には高圧タンクTの搭載が進まないデータ。しかしながら、タンク接触ブリッジ150を有するタンクバンド140にて高圧タンクTの押し付けを行う本実施例のタンク車載機構100および車両10によれば、後列の乗員シートSの下方においても、高い実効性で高圧タンクTのズレ等を回避しつつ高圧タンクTを搭載できる。よって、本実施例のタンク車載機構100および車両10によれば、タンク収納凹部111の両側の肩部の高さを同じにするという制約を受ける必要はなくなるので、タンク収納凹部111(タンク受け部110)の設置の自由度や高圧タンクTの搭載の汎用性は高まり、プラットフォームFへのタンク受け部110の配設を促進できる。
【0031】
また、本実施例のタンク車載機構100および車両10では、高圧タンクTをタンク収納凹部111に対向して設けた前方傾斜面112Fと後方傾斜面112Rで簡便および確実に受けることができると共に、対向する傾斜面という単純な構造で、高圧タンクTを径方向に簡便に位置決めした上で、タンクを受けることができる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態を実施例にて説明したが、本発明は上記した実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、タンク接触ブリッジ150の位置やその形状等については、上記した実施例に限られない。図4はタンク接触ブリッジ150の配設位置を変更した形態を示す説明図、図5はタンク接触ブリッジ150に代わるブロック状のストッパを用いた形態を示す説明図、図6はタンク接触ブリッジ150に代わるシャフト状のストッパを用いた形態を示す説明図である。
【0033】
図4では、タンク接触ブリッジ150をバンド接触範囲BSの側にやや近づけた位置に設置しているが、接触片接触範囲SSからバンド接触範囲BSにまで拡張した押し付け範囲TSは、高圧タンクTを受けているタンク収納凹部111の陥没溝114と対向する箇所の両側に広がる。よって、既述した効果を奏することができる。
【0034】
図5にあっては、タンク接触ブリッジ150に代えて三角柱状ブロックのストッパ160を適宜な手法でタンクバンド140に固定している。このストッパ160にあっては、その斜面にて線接触しているが、その接触箇所SPからバンド接触範囲BSに掛けての範囲が上記した押し付け範囲TSとなり、この範囲にあっても、高圧タンクTを受けているタンク収納凹部111の陥没溝114と対向する箇所の両側に広がる。よって、既述した効果を奏することができる。この場合、ストッパ160は、樹脂或いは金属、もしくは硬質ゴムを用いて形成したものとできる。
【0035】
図6では、タンク接触ブリッジ150に代えてシャフト状のストッパ170を用いる。ストッパ170は、先端が半円球状のストッパシャフト171をフランジ172から突出させ、フランジ172を適宜な手法でタンクバンド140に固定している。このストッパ170では、高圧タンクTと点接触するが、その接触箇所SPからバンド接触範囲BSに掛けての範囲が上記した押し付け範囲TSとなり、この範囲にあっても、高圧タンクTを受けているタンク収納凹部111の陥没溝114と対向する箇所の両側に広がる。よって、既述した効果を奏することができる。ストッパ170は、樹脂成型品或いは金属加工品、もしくは硬質ゴムの成型品とできる。
【0036】
また、タンク収納凹部111を下向きとして高圧タンクTを下方からタンク収納凹部111に当接して搭載するようにしたが、上向き或いは横向きに開いたタンク収納凹部111に高圧タンクTを当接して搭載するようにすることもできる。タンク収納凹部111を、円弧形状のタンク受け部を有するものとできるほか、高圧タンクTの搭載方向についても、車両横方向の他、車両前後方向を長手にして搭載することもできる。
【符号の説明】
【0037】
10…車両
100…タンク車載機構
110…タンク受け部
111…タンク収納凹部
112F…前方傾斜面
112R…後方傾斜面
114…陥没溝
116F…前方肩部
116R…後方肩部
140…タンクバンド
141…前方固定片部
142…後方固定片部
150…タンク接触ブリッジ
151…脚
152…バンド接触片
153…タンク接触片
160…ストッパ
170…ストッパ
171…ストッパシャフト
172…フランジ
F…プラットフォーム
T…高圧タンク
S…乗員シート
BS…バンド接触範囲
SS…接触片接触範囲
SP…接触箇所
TS…タンク押し付け範囲
RT…後輪
TVB…バルブベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のタンクを車載するタンク車載機構であって、
前記タンクを円柱周壁で受けるよう陥没した凹部と、該凹部の開口縁から両側に延びた肩部とを有するタンク受け部と、
該タンク受け部の前記肩部に両端が固定され、前記タンクを前記凹部に押し付けるバンドとを備え、
該バンドは、バンド表面から前記タンクの前記円柱周壁の側に突出したバンド表面突出部材を、前記タンクの前記円柱周壁と前記バンドとの離間部位に備える
タンク車載機構。
【請求項2】
前記タンク受け部は、前記タンクの円柱周壁に当接する傾斜面を前記凹部に対向して有する請求項1に記載のタンク車載機構。
【請求項3】
前記タンク受け部は、車両ボディーに形成されて前記凹部の両側から水平に延びた前記肩部を車両上下方向で異なる高さに備える請求項1または請求項2に記載のタンク車載機構。
【請求項4】
前記タンク受け部は、車両の乗員シートの下方に当たる車両ボディーに形成されている請求項3に記載のタンク車載機構。
【請求項5】
前記バンドは、前記凹部の底からの高さが高い側の前記肩部の側に前記バンド表面突出部材を備える請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のタンク車載機構。
【請求項6】
前記バンド表面突出部材は、タンク周壁に倣った形状のタンク接触部を有する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のタンク車載機構。
【請求項7】
円柱状のタンクを搭載したタンク搭載車両であって、
車両ボディーに配設され、前記タンクを円柱周壁で受けるよう陥没した凹部と、該凹部の開口縁から両側に延びた肩部とを有するタンク受け部と、
該タンク受け部の前記肩部に両端が固定され、前記タンクを前記凹部に押し付けるバンドと、
前記タンクの前記円柱周壁が前記バンドから離間した部位においてバンド表面に配設され、該バンド表面から前記タンクの前記円柱周壁の側に突出したバンド表面突出部材とを備える
タンク搭載車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−195279(P2010−195279A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44114(P2009−44114)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(308039414)株式会社FTS (60)
【Fターム(参考)】